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ようさん、どうしたの?
ちょっと驚いた。今日、午前中の診察に36歳の男性が来院
したんだ。理由は鼻血が止まらないんで、高血圧と関係が
あんじゃないかと。話を聞くと、15歳で高血圧を指摘されて
からずっと放置してたんだけど、昨年秋に会社の健診でも指
摘されて専門病院で精査したんだって。結果は正常で本態
性高血圧とのことで、クスリを勧められたんだけど、痛くも痒
くもないんで拒否して帰ってきたんだって。でも、3日前から
鼻血がでて止まらないんで心配になって来院したんだ。来
院時の血圧は180/130mmHg p66(NSR)で聴診音も硬
い感じの拍動音でね、鼻鏡で左の鼻粘膜に傷があって出血
源はそこ。鼻血は軟膏で止められそうだけど、小太りだし、
喫煙者だしメタボな彼は要注意。そこで、家族歴も聞いた
んだ。
「家族に誰か高血圧の人いますか?」
「両親が高血圧です。」
「ふむふむ。じゃあ、脳梗塞とかの頭の病気にかかった人い
ますか?」
「姉が.......なんとか出血に.....」
「んっ?脳内出血?くも膜下出血?」
「で、お姉さんは................................」
「えっ?............OOさん36歳だよね。お姉さん幾つで亡く
なられたの?」
ようさん、これに驚いたんだね。
うん、ここから、その時の状況を彼が詳細に教えてくれたん
だ。要約すると..................................
仕事から帰った彼女は気分が悪いと病院に行った。感冒疑
いと診断され「何か変わったことがあればすぐに連絡するよ
うに言われて帰宅。でも、今度は激しい頭痛が出現したんで
再び病院に行き頭部CTを施行される。そこで、くも膜下出
血と診断され頭からその血を抜く管を挿入。しかし、その後、
再び激しい頭痛が出現して暴れはじめ、臥床していたベット
の鉄柵に頭を強く4回打ちつけ、その4回目後からまったく動
かずそのまま息をひきとったとのこと。
ようさん、なんかすごいね。
ん?そうだね。でもこの話をよく考えると...................
SAHが起きました。そこで入院して開頭して動脈瘤をクリッ
プして、ドレナージ(水頭症あり?)して経過をみてたら再出
血してそれが原因で痙攣発作を起こした、って筋道をたてる
んだけど....................................................
これは、医療関係者の考えであって、
「ベットの柵に激しく打ちつけて亡くなった。」
て普通のひとが聞くと、
って、考えてしまうよね。ぼくも一瞬そう思いかけたもの。
ようさん、患者さん側がそう考えるのも無理ないんじゃない
の?
実際、この患者さんも家族会議で
と、なったらしいんだけど「死んだ人は帰らないって」考えて
諦めたそうなんだ。やめたんじゃなくって諦めたんだって。
ようさん、この医者と患者の間にあるのは埋められない溝な
のかな?
そうだね、無理だよね。だって、患者さんは安らかに亡くなら
れてないもの。ただでさえ38歳で亡くなること自体が衝撃的
なことだし、ましてや病院にいるのに患者さん側にとっては
想像してもいなかった亡くなりかたをしたわけだからね。こう
いうことがあり得ると説明されてても、そういう範囲を越えち
ゃってるもの。
ようさん、悲しいね。
ん、でもこの時強く感じたことがあるんだ。当たり前のことだ
けど...................
第3者の医療関係者が遺族の話に簡単に頷いてはいけ
ないってこと。
おさまりかけた火をおこしちゃうから。どちらも不幸になっちゃ
うからね。
ぼくは、この患者さんと信頼関係が築けたら、この時の事を
時間をかけて少しづつ説明するつもりなんだ。とにかく時間
が必要だよね。
そうだね。
医療不信を嘆いているだけじゃ、なんにも生まれないから
ね。これも大事なかかりつけ医の仕事だと思うんだ。
時間がかかるね。
当たり前だよ、なんかみんな焦ってなんかしようとしすぎ
だよ。政治家もマスコミも厚労省も医者もね。もっとみんな自
分自身に自信を持てばいいのにね。
おやすみなさい。
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