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2006.09.01 18:32 |  診療  |  仕事 / 職場  |  生活 / くらし  |  その他(医療関連)  |  ようさん  | 推薦数 : 0

ステルベン。

あの家族どうしてるのかな。

ようさん、どうしたの?

 

あのね、医者として生きていくために欠かすことのできない

基本となる考え方を教えてくれた家族がいてね。

 

ん~、難しいよようさん。

 

医者になって1週間頃かな、先輩の医者がどうしても行けな

いから、変りに当直に行けって言われてね。超老人病院

から大丈夫、丁寧に看取れば問題なしだからって。それで、

気乗りしなかったんだけど行ったんだ。確か、渋谷の首都高

の近くの病院、まだ医者になって何にもできないからそりゃド

キドキだったんだ。 でも、超老人病院だから.............。

 

「こんばんわ、当直に来ました。」

「は~い。あっ、OO病院の先生ですね。よかった。ひとり危

 ないひとがいるんで、宜しくおねがいしま~す。」

 

えっ!

頭の中は真っ白。うまく看取れるかな?いきなり不安で硬

直。でっ、看護師さんが回診前に患者さんの情報を申し送

り。

肝硬変の患者さんで、ず~っとお腹が痛い痛いと言って

苦しんでます。」

おそるおそる年齢を聞くと

52歳です。」

 

わっ!

なんか突然数日前に来院して、どういうわけか院長がこの超

老人病院に入院させたとのこと。頭の中は真っ白。まだ医者

になって1週間。なにもできないし、終末医療なんかさっぱ

わからない。

看護師に連れられ、患者さんをみにいってさらにびっくり、ほ

とんど青色吐息の状態。側には妻とこども二人が心配そう

に立ち尽くしている。簡単に診察してそそくさと当直室に向か

い、すぐに先輩医師に連絡。

「先生、だめです。若くて危ない患者がいます。ぼく、なにも

できませんよ。」

「あっ、そう。大丈夫だよ、もうだめなんでしょ。ほっといて看

護婦さんに呼ばれたら行けば良いよ。」

で、あっさり電話を切られてしまった。でも、怖くてすぐにもう

一人の先輩医師に連絡し、状況を説明していざと言うときは

指示をしてもらう確約をとって電話を切ったんだ。これで少し

安心したけど地獄はここから始まったんだ。電話を切るのと

ほぼ同時にナースセンターから連絡が。

「先生、患者さんが痛いって大声上げています。」

何にもできない!と言えず取りあえず患者さんの元へ直

するも、

「いたい、いたい!」

の、声にもならないような悲痛な叫びを聞いていたたまれず

に先輩に連絡して指示を仰いだんだ。でも、まったく効果な

し。で、結局麻薬を使用したんだけど怖さが先にたち十分量

が使えなくてね、ず~っと患者さんは呻いてたんだ。ほんとう

はその場から一刻も早く立ち去りたかったんだけど、なんか

離れられなくなって朝まで患者さんの側に居たんだ。それし

かできなかった。

『ごめんなさい、ぼくじゃなきゃもう少し楽になれるのに。』

ず~っと心の中で謝ってたんだ。それと、早く当直時間が終

わってくれよってね。

 

ようさん、それで朝になって逃げるように帰っちゃったの?

 

いや、朝4:00頃亡くなったんだ。痛いって言いながらね。

家族の顔がまともに見れなかった。子供は小学4年生の女

の子小学6年生の男の子。ぼくが居た夜中ず~っとベッ

サイドに立ってたんだ。母親の両脇で静かに泣いてたよ。

死亡確認して当直室に戻って、最後にどうしてももう一度患

者さんに手をあわせたくて病室にもどったんだ。すると、母親

が近づいてきて

「ありがとうございました。こんなにずっと側にいてくれて。

こころ強かったです。これ...........少ないんですけど...

お礼です。すみません、つつみがなくて。」

渡されたのはティッシュペーパーに包まれた10,000円

 

ようさん、受け取ったの?

 

うん、返せなかった。なんか母親の気持ちを無にするみたい

で。母親のぎりぎりの気持ちが詰まってるみたいで。

 

「力になれなくてすみません....................。」

 この一言が精一杯だったんだ。

 

でも、そのとき子供たちが小さい声で呟いたんだ。

「先生、ありがとう。」

って。本当に小さい声だったけどはっきり聞こえたんだ。

ほんとにやりきれなかった。

 

そのあと、医局に帰ってから大変。あの先輩の顔を見たら

怒りが湧いてきて、今にも殴りかからん状態。みんなに

静止されてね。教授、医局長にも呼び出されたけど絶対引

かなかった、いや、引けなかったんだ、あの家族のためにも

こんなこと二度と起こっちゃいけないと思ってね。

 

入局1週間ですでに問題児になっちゃった。

 

でも、止めるのは簡単だけど止めちゃ同じことが医局で繰り

返されると思ってね、死んでも止めないって

 

ようさん、10,000円はどうしたの。

 

ん~、使う気が全くしなくてね、現在までティッシュペーパ

にくるんだままでセカンドバックのポケットに入れてお

いてあるよ。

 

あの家族、若くして大黒柱失ってどんな人生歩んだんだろ

う?幸せになってるかなあって時々思い出すんだ。

 

ぼくは、医者の出だしがああだったから気持ちは絶対抜けな

い、緩めない。だから、患者さんを起こったり、説教したり、話

を聞かなかったりする医者をみるとすぐにキレそうになるん

だ。だって、医者なんて治せる病気には限度があるじゃな

い。だったら、どんなに忙しくてもやさしく話を聞かなくっちゃ。

プロなんだから。

 

ようさん!

 

ん?

 

そのときは医者になり立てで何にもできなかったのわかるけ

ど...................少しはできるようになったの?

 

ん?

匍匐前進かな?いや365歩のマーチかな?

 

もっと精進しなさい。

 

はい。

 

 

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