もう、ずいぶん前のことです。
Eさんは、70歳を少し回った男性でした。
肺がんでの闘病生活を送っていました。
どちらかというと少し癖のある患者さんでした。
まあ、医者の仕事をしているとよく経験するのですが、医者の前のナースなど医者以外のスタッフへの態度が全然違うのです。
ただ、その態度の差が激しいのです。
もう、Eさんとのつきあいは1年近くになっていましたので私も、そして病棟のスタッフも心得ています。
ただ、ひとつ違う点があるとするならば、その入院の前まで、Eさんは元気だったのです。
もちろん、ひとりで院内どこでも散歩していましたし、入浴もひとりでこなしていました。
今度入院してきたEさんの足はふらふらしておりひとりで歩くのがおぼつかない状態でした。
原因を探してゆくと、頭(小脳)にある転移が原因でした。
『Eさん、ふらつく原因は、頭にある転移が原因です。
点滴での治療と放射線治療を開始しましょう。』
『わかりました。』
『Eさん、ただ、ひとつ約束して欲しいんです。
ふらつきがなくなるまで、ひとりで歩かないようにしてください。
もし、こけて骨でも折ったりしたら入院が長くなりますよ。』
入院嫌いなのを知っていた私はEさんにそう言いました。
すると
『わかりました。』と返事をされました。
しかし、翌日病棟に顔を出すとナースたちからブーイングの嵐です。
『先生、Eさんにひとりで歩かないようにもうきつく言ってください。
昨日も、声もかけずにトイレに行くし、注意しても「イヤだ、ひとりで行く。」って聞かないんです。』
それから、何度か私からもEさんに説明をしましたが、私の前では『わかりました。』なんて言うのですが、実際は勝手に歩いているようです。
そして、実際に転倒して腕に大きな傷を作りました。
幸い、骨折はしませんでしたが。
再度、Eさんに注意をする頃には放射線治療の効果も出てきておりふらつき症状はなくなっていました。
そして、Eさんは退院していきました。
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もちろん、続きます。
『患者と医者をつなぐもの』も読んでね。
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