もう、ずいぶん前のことです。
Fさんは、年齢よりも若く見えるかわいらしい感じの女性でした。
見た目は、50代といったところでしょうか、実際はプラス10歳くらいだったんですけど。
Fさんは動くと息切れが出てくるようになったと言って受診されました。
気管支鏡検査を行うと、小細胞肺がんという肺がんでした。
しかも、胸水を伴っており予後は非常に悪いことが予想されました。
小細胞肺がんとは、肺がんの中でも非常に進行が早いのです。
ただ、小細胞肺がんは抗がん剤が効きやすいというメリットがあります。
当然ながら、標準的な抗がん剤治療を行いました。
シスプラチンとイリノテカンの併用療法です。
これらの組合せは、副作用が厳しいことでも知られています。
有名な副作用は、シスプラチンの嘔気、嘔吐、腎障害とイリノテカンの下痢です。
特にイリノテカンの下痢は、ひどくなると生命に関わりかねないので適切な対応が必要です。
残念ながら、Fさんにはすべての副作用がきつく出ました。
吐き気予防のガイドラインに沿って十分な吐き気対策はしたのですが、1週間にわたり嘔吐が続きました。
もちろん、その間もいろいろな吐き気に効果のありそうな薬を使ってみましたがあまり効果なさそうでした。
しかも、表情は仮面様になりしんどさで病的とも思われるほど気分の落ち込みを認めました。
うつ状態です。
その上に、イリノテカンの下痢もそこまでひどくはなかったですが追い打ちをかけました。
2コース目投与予定日あたりでようやく、落ち着いてきました。
『Fさん、大変やったね。
そろそろ、2回目の抗がん剤の予定やけどFさんに同じ薬は無理みたいやね。
別の種類の吐き気のかなり少ない薬にかえてやってみようか?』
『先生、もう無理です。
種類をかえてももう無理。
もう、抗がん剤なんてしたくありません。』
Fさんの思いも当然といえば当然です。
かなりの吐き気に悩まされたFさんにとって同じ薬は無理であり、治療効果を考えればカルボプラチンとエトポシドの併用療法なのですがそれもシスプラチンよりは弱いが吐き気が来る人もいる。
それなら、効果は低いかも知れないがアムルビシン単剤ならほとんど吐き気はない。
そのために、アムルビシンをおすすめしたのですが。。。
もういや、家に帰りたいの一点張り。
幸い、入院時の症状はほとんどなくなっていたので退院していただきました。
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続く。
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