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それから程なく、Bさんは身のおきどころのないしんどさが出てきました。

Bさんの家族を呼び出し話をしました。

『Bさんのしんどさを取り除くのは難しいです。

ただ、眠たくなるような薬を使うことによってしんどさから解放されると考えられます。

ただし、今まで通りのコミュニケーションはとれなくなりますけど。。。』

このようにセデーションの話をしました。

奥さんは、少し取り乱した感じでした。

『嫌です、わざと眠らせるなんて、わたしの生き甲斐がなくなります。』

『。。。。』

その翌日、奥さんから

『やっぱり、眠たくなる薬を使ってください。

わたしのわがままであの人がつらい思いをしているのですから。。。。』

このようなやりとりがあった後、セデーションを開始しました。

Bさんが眠りについた翌日、奥さんから話がしたいと連絡がありました。

『先生、眠たくなる薬を止めてください。』

『Bさん、またしんどくなりますよ。』

『あのまま、しゃべらないあの人は耐えられないんです。

それに、すぐにあの世に行くような気がして』

『ほんとうにいいんですね。』

『お願いします。』

確かに、Bさんに残された時間がそう長くはありません。

おそらく、1週間もないでしょう。

奥さんの希望通り、薬をやめることにしました。

また、呼吸状態が悪化したときに人工呼吸器をつけるかどうかの説明をしました。

『少しでも長く生きていて欲しいんです。

是非とも使ってください。』

何度か説明しましたが奥さんの意見はかわりませんでした。

薬を止めてしばらくするとBさんの意識ははっきりとしてきてつらくてつらくてたまらないようです。

奥さんもBさんがつらそうなのを見てつらくなってきたようです。

また、やってきて眠る薬を使ってください。とやってきました。

『わかりました。

また、使いましょう。

でもね、奥さん、何のために使うかよく考えてくださいね。

Bさんのためですからね。』

そして、Bさんは再び眠りにつきました。

しばらくして、病室から怒鳴り声が聞こえてきました。

声の主はBさんの息子さんです。

『母ちゃん、また眠る薬を止めて欲しいって、どういうことやねん!

ただの母ちゃんの自己満足やろ!

しんどいから、眠らせてもらってるんやろ!

もう、このまま様子を見ようや。』

そのあと奥さんは何も言わなくなりました。

数日して、Bさんの呼吸が止まりそうになってきました。

『奥さん、人工呼吸器を使うのならそろそろやりましょう。

夕方を過ぎると看護師の数も少なくなるので今からつけた方がよいでしょう。』

奥さんは、目を腫らしながら

『先生、もういいんです。

わたしのわがままだったんです。

少しでも長いことそばにいて欲しかっただけなんです。

わたしは、あの人の事を考えていたわけではなかったんです。

こないだ、息子に怒鳴られるまで気がつきませんでした。

覚悟はできています。

ありがとうございました。』

それから、数時間して安らかに息を引き取りました。

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コメント一覧

やっぱり身近な誰かがきつく言わないと、自分の事しか見えなくなってる奥さんは目が覚めなかったでしょうね。
そういう意味で息子さんというのは最適な人物でしたね。
お母さんの混乱や逡巡も理解できるけど、お父さんの苦痛も取り除いてあげたい。息子さんもぎりぎりまで待っての発言でしょうね。
我が家でも父に延命処置をしてもらわないと決断したとき、
母の背を押したのは兄と私でした。
家族でなければ言えませんね。
written by 通りすがり / 2009.08.08 21:55
>お母さんの混乱や逡巡も理解できるけど、お父さんの苦痛も取り除いてあげたい。息子さんもぎりぎりまで待っての発言でしょうね。

そうなんです。
医療者がいくらそう感じていても、家族でないと言えないんですね。

よい息子さんで本当によかったと思います。
written by よっしぃ / 2009.08.09 12:56
初めてコメントします。
この奥さんの気持ち少しわかる気がします。

私は婚約者が難病とわかり、治る可能性が低いのに彼を1人で海外に行かせてしまいました。
わずかな可能性を信じて...
それは全て私のためです。彼を失った後で後悔したくないから...

それを知りながら彼は今、1人で闘病しています。
私の為に必ず元気になって帰ると、毎日治療しています。

病気になった本人が一番辛いのは理解しています。
ただ、自分は元気なのに最愛の人が治らない病気になるのも、凄く辛いです。

長々と失礼しました。
written by 匿名 / 2009.08.10 00:59
はじめまして。

>それは全て私のためです。彼を失った後で後悔したくないから...
お互いにわかっているのであればいいのではないでしょうか。

ただ、未来のことは誰にもわからない。
していることが本当にベストなことでも、まだよりよい方法があったのではなんて考えてしまいますよね。

また、遊びに来てください。
written by よっしぃ / 2009.08.10 22:10
私もこの奥様の気持ちはわかります。
私も相棒が入院中毎日病院に通っていました。
それを見た相棒の友人が「オマエは幸せだな〜」と言うと、相棒は「俺は看病してもらえて幸せ、マーボーは看病が出来て幸せなんだよ!」と言っていました。

冷静に考えれば、お薬で苦しみを取る事が良いとは思いますが、この奥様が「死んで欲しくない」と言う思いが、このご主人にとっての心のお薬であった様にも思えます。

奥様が色々と逡巡した時間は無駄ではなかったと思います。


匿名さん・・・辛いですね・・・。
「彼を失った後で後悔したくないから』・・・当たり前の事だと思います。
でも、彼は貴女の為だけに海外で闘病している訳ではありませんよ。
自分が生きていたいから、行ったのだと思いますよ。
可能性を信じましょうよ!
離れているけど心はきっと一緒に居るでしょう?
良くなる事を祈ってます。

よっしー先生、久しぶりに来て、勝手にコメントに返事まで入れちゃってゴメンナサイ・・・





written by マーボー / 2009.08.10 22:32
マーボーさん、お久ぶり、横から失礼します。
「心のお薬」に感動して、出てきちゃいました。

>奥様が色々と逡巡した時間は無駄ではなかったと思います。

私も最近看取りを経験し、この奥様と同様色々と逡巡しちゃったので、冷静になるほどに後悔することが増えていました。ですので、マーボーさんにこう言っていただけるのは、匿名さんのみならず、同じ体験をした人にとってはなんだかホッとします。

「人生いろいろ」では、読み手として登場人物の非合理的な行動におかしみを感じることでも、主人公は懸命にがんばっていることであります。彼らは心の薬を目指し、悪戦苦闘しているんだなあなんて思ったりします。

人間は紆余曲折するのが人間らしい、ということで自己満足させていただきますw
written by christmas / 2009.08.11 00:59
>マーボーさん
お久しぶりです。

>冷静に考えれば、お薬で苦しみを取る事が良いとは思いますが、この奥様が「死んで欲しくない」と言う思いが、このご主人にとっての心のお薬であった様にも思えます。
あとは、程度の問題もあるんですね。

>心の薬
よい言葉ですね。

しんどいしんどいと何とか言えるレベルからしんどくてモノも言えないレベル、さらにしんどくてじっとしていられないレベル(ここまで来たらこころの薬も何もないんですね。)まで、患者さんの家族はほとんどがどのような経過になるのか知らない場合が多く(もちろん我々だって予想できない経過の場合もありますし)、できれば冷静に病状を見極めてまだ、家族の方が患者さんにわがまま言える程度なのかもう言っちゃいけないのか。

難しいですね。

>christmasさん
私は、医師としての看取りの体験は豊富です。
しかし、家族の看取りは祖父など少し離れているのでそこまでのこころの葛藤などを経験したことがありません。

皆さんの看取りの経験を教えてもらい非常に勉強になっています。
やはり、立場が違うと受け取り方が違うんで。

>人間は紆余曲折するのが人間らしい。
はい、拍手させていただきます。
written by よっしぃ / 2009.08.11 12:53
よっしぃ先生、マーボーさん、christmasさんありがとうございます。
苦しかった心が少し楽になりました。

彼の病気を知ったとき、彼の心配より、自分の心配しかできなくて情けなかったです(泣)

彼と物理的な距離はありますが、心はいつもすぐ隣にいます。
異国の地で1人闘病中の彼に『心の薬』を届けられるよう、希望を持ち続けて頑張ります。


ありがとうございました。
written by 匿名 / 2009.08.11 23:48

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