今までは、仕事があるから頑張れると仕事を任そうとしなかったのですが、
『そろそろ任せていかないといけないなぁ。』
とつぶやいています。
しかし、どうも会社の重要な部分を他の人に任せることはなかなかできなかったようです。
しばらくして、再び息切れが出てきました。
Mさん自身もだんだんとしんどいと感じていて自身でもそろそろ危ないかもと感じられたのかもしれません。
あるとき
『先生、長くないよな。』
『正直、Mさんに残された時間がどれだけあるのかわかりません。
Mさん、なぜそんなことを?』
『そろそろ、あぶないんやったら仕事を真剣に考えなあかんからなぁ。』
『わかりました。正確な時間はわかりません、ただ、今までの経過を見ると長くはないような気がします。』
『わかったわ、ありがとう。』
考え方の切り替えは非常に早い方でした。
会社の経営をすべて任せてMさんは、Mさん自身のために残りの時間を使おうと考えたようです。
『先生、したらあかんことはある?』
『Mさんがしんどいと感じなければ特にないですよ。』
『ハワイに行きたいけどなぁ。』
『Mさん、今の呼吸状態で不可能ではないけど難しいんじゃないですか。飛行機の上は酸素濃度低いし。』
『無理かな?』
『どうしても、行きたいなら止めないですけど、いつどうなるかわからないのがこの病気だから紹介状は絶対に持って行ってもらいます。
あと、最悪の場合を想定しての話ですけど、むこうで入院して日本に帰って来れないかもしれない覚悟はありますか?』
『・・・・・、少し考えるわ。』
そう言い残してMさんは帰りました。
次にきたとき、
『やっぱ、ハワイは無理やな。やめとくわ。
そのかわり、めいっぱいワガママになるわ。』
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『・・・?』
『残された時間は短いやろ。
めいっぱい好きなことするって意味や。』
それから、Mさんは、旅行を楽しんだようです。
旅行から帰っては次の行き先を探して、何かことあるごとに
『時間がないんや。
今、行かんかったら、もう二度と行かれへん。
今、せえへんかったら、もう二度とでけへん。』
と口癖のように家族にワガママを言ったようです。
また、家族や友人もMさんのワガママに最大限に応えたそうです。
Mさんが、ワガママになってから2ヶ月もたたないある日。
自宅で永眠されたと連絡が入りました。
『患者と医者をつなぐもの』も読んでね。
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