Mさんは、数年前にうちの病院に胸部レントゲンで影があると紹介された患者さんでした。
非常に家族思いの方でした。
標準的な治療である抗がん剤治療を行い、腫瘍も小さくなりました。
ただ、副作用も相当きつかったようで2回で治療を拒否されました。
1年くらい前からだんだんと腫瘍は大きくなり始めてきたのですが、Mさんはもう抗がん剤はしたくないとの一点張りです。
肺がんの初回治療は、プラチナ製剤と第3世代抗がん剤を組み合わせて使うのが標準です。
Mさんもその治療をうけました。
ただし、プラチナ製剤は、吐き気が強いのです。
もちろん、吐き気を押さえる薬を使ったのですがなかなか押さえることが出来ませんでした。
その記憶から『もう治療はしたくない。』との事でした。
ですので、2回目の治療としてドセタキセル1種類の治療をオススメしました。
1種類だけだと吐き気の頻度は高くありません。
なんとか、Mさんも納得して抗がん剤治療を始めました。
幸い、前回のような吐き気はなく、順調に治療を続けていました。
腫瘍も小さくなっており、2回目の治療も終了しそろそろ退院しようかという頃、その出来事は起こりました。
Mさんの調子が何かおかしいとナースから連絡を受けました。
『Mさん、Mさん。』
『………。』
反応が鈍すぎるのです。
もしかして、、、、
そうです、医者ならなんとなくピンとくるあのイベントが起こったのです。
『Mさん握手しよ。』
Mさんは、左手を差し出しました。
特に問題はありません。
『Mさん、反対の手は?』
しばらくしても、Mさんの右手は動きません。
バイタルは安定していますが、右半身がほぼ完全に麻痺しています。
すぐにCTを撮ってもらいましたが特に異常を認めません。
おそらく、脳梗塞をおこしたのです。
脳梗塞の初期は、CTで異常を認めないことがほとんどなのです。
脳卒中を専門に扱う病院への転院も考えましたが、MさんとMさんの家族は、できれば転院したくないとのことでした。
翌日再度CTをとりました。
頭の中に広範囲に黒く抜けている部分があります。
結構大きい梗塞でした。
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