『先生、わし、もうそんなに長くないやろ。
隠さんでもええ。
わかるから。
先生、ひとつ、お願いがあんねん。
ちょっと遠いところやけど、行きたところあるんや。』
『Bさん、どこまで行くの?』
Bさんが行きたい場所は、病院から新幹線で3時間近くかかる場所でした。
酸素も必要であり、点滴も毎日必要な状態、かつ、体力はかなり落ちています。
正直、厳しい。
『Bさん、不可能ではないけど、厳しいで。絶対行かなあかんところなん?』
『そやな、会わなあかん人がおるんや。チーちゃんに会わなあかんねん。』
『。。。。。Bさん、Bさんが行かなくてもその方に病院にきてもらった方がいいと思うけど。』
『いや、あかんねん。先生、チーちゃんは、来られへんねん。』
正直、どういう状況なのか理解が出来ません。
Bさんもこれ以上は話したくないようでした。
『とりあえず、可能性を探っていきましょう。
もちろん、一人で行けないのはわかってますよね。
娘さんが一緒について行ってくれるなら何とかなるかも知れません。』
『ありがとう。』
娘さんも協力的でした。
1泊で行くことになりました。
泊まるホテルに酸素の手配や点滴をしてくれる病院を探さなければなりません。
娘さんの旦那さんの車で行くことになりました。
出発の日の数日前の事です。
『やっぱり、先生には言わなあかんって思ってたんや。』
Bさんが、涙ながらに語ってくれました。
『実はな、チーちゃんは、ワシの嫁やねん。
今な、刑務所におんねん。
だから、出られへんねん。
あと、1年経ったら出てこれるみたいやけど。
あと、1年経ったら、。。。。。。』
Bさんは、声にならないような声で言いました。
『なんとかならへんのBさん?』
Bさんにたずねました。
『塀の中の人間は、親の死に目にもあわれへんから無理や。やっぱり、ワシが行かな無理やねん。』
そう言ってBさんは、旅立ちました。
我々の心配をよそに、Bさんは大きなトラブルもなく帰ってきました。
帰ってきたBさんは、充実した顔をしていました。
『あえて良かったぁ、先生、ありがとう。』
もちろん、他のスタッフにも大感謝をされていました。
ただ、なぜ塀の中にいるのかは誰も聞くことが出来ませんでした。
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Bさんは、まもなく天国へ旅立ちました。
もちろん、チーちゃんは、塀の中でした。
心から、無理をしてでも人生最大の旅行のお手伝いができてよかったと思います。
『患者と医者をつなぐもの』も読んでね。
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