もう、ずいぶん前のことです。

Bさんと初診外来で出会いました。

第一印象は、正直、ガラ悪そうな人やな。でした。

予想どおり、入院していろいろ調べましょうと話をしても

『入院はできない。仕事があるから』の一点張りでした。

肺がんの疑いがあると言うとようやく真剣に入院を考えてくれました。

入院して調べるとやはり、肺がんでした。

病状説明をしたいから家族を呼んで欲しいと言っても

『ワシだけで十分や』と言って呼んでくれません。

肺がんである旨を説明し、治る可能性が低い事を説明し、ようやく娘さんにも病状を説明することができました。

奥さんは、いるとのことですがどうしても来ることはできないの一点張りで奥さんに病状を説明する機会はありませんでした。

そうこうして、抗がん剤と放射線の治療をはじめようとすると

『お金がないから早く帰りたい。』と訴えるようになりました。

『Bさん、何の仕事をしてるの?』とたずねると

『ブローカー』などと明るく言う憎めない人でもありました。

(何のブローカーなのかは、聞きませんでしたが。)

いろいろ相談した結果、Bさんには生活保護を受けてもらうこととなり抗がん剤治療がはじまりました。

幸いにも抗がん剤治療はある程度効果があり初回治療を終了しました。

そして、いままでの仕事に復帰したようです。

その間、一度も奥さんに会うことはありませんでした。

しばらくして、残念ながらBさんの腫瘍は再び大きくなってきました。

2回目の抗がん剤治療を行いました。

前回ほどの効果は認めませんでした。

Bさんといろいろ相談した結果、現時点で抗がん剤治療をしない。
そして、また状況を見て考えることとしました。

この時も、Bさんの奥さんはあらわれませんでした。
しばらくしたある日、Bさんが外来にやってきました。

腫瘍が明らかに、大きくなってきています。

少し、だるさもあるようです。

『Bさん、また、入院しましょうか?』

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なかのひと

『患者と医者をつなぐもの』も読んでね。




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