2008.08.07 07:36 |  診療  |  医療制度 / 行政  |  仕事 / 職場  |  よっしぃ  | 推薦数 : 4

福島大野事件の教訓

以前に『ボールペンと福島大野病院事件』でこの事件についてのまとめと現在の状況についてのエントリーをあげました。

もうすぐ、この判決が出ます。

僻地の産科医先生の『産科医療のこれから』で名古屋医療センター 産婦人科 野村麻実先生が投稿したこの事件の総決算ともいうべき記事を見つけました。

他の記事の引用だけのエントリーは出さないでおこうと今までやってきたのですが、非常に完成度が高くこれ以上付け加えるところもないのでそのまま引用してみました。

一度、読んでみてください。


大野事件の判決日、福島に集まりましょう!!!

8月20日、大野事件の判決が出ます。

はじめは加藤先生の応援のために、福島に集まって応援したらどうだろう?
と考えていました。産婦人科関係の方と会ってはならないという保釈条件は判決が出るまでの話ですし、どんな判決が出るにしろよく頑張ったねって声をかけてあげたい人がたくさん全国にいるはずだと思ったからです。
 
でも、いろいろと当時からのことを振り返って勉強していくうちに、考え方が変わってきました。福島大野事件は多くの教訓を残しているからです。

例えば、この事件があるまで、産婦人科はあまり周産期死亡や母体死亡の話をしてこなかった。
どれくらいの数の妊婦さんを医療が救っているのか、それでも亡くなる難しい病気があるって事、あんまりきちんと公表してきませんでした。

学会や医会はそういったことを反省して、さまざまな調査を行い、そして73人の重症患者さんのうち頑張って力を尽くして、72人までの妊婦さんを助けているという調査結果も出しました。

それでも亡くなる方が出る。

『頑張ってもやっぱりゼロには出来ないんです!』っていえるようになってきました。
     
それから、医師の労働条件が必ずしも患者さんにとってよくないことも認めるようになりました。

一人しか産婦人科医のいない病院で外科の先生にお手伝いしてもらって手術をしている状態では、やっぱり危ない時に危険かもしれません。

そこで反省を含めて集約化を始めるようになりました。

(ただこの加藤先生のケースでは、術中エコーもし、胎盤のない部分の子宮体部をU字型に切りこむというかなり注意深い術式を用いており、一人医長であったにもかかわらず、よく勉強されて最新の手法を用いていらっしゃいます。)
     
厚労省も慌てました。反省し、このようなことが二度と起こらないようにと、一生懸命システムを構築しようとしています。
(方向性が間違っているので、私は反対ですが。)

国民の方も「分娩は安全ではない」ことを知り、妊娠中の生活態度の見直しなども始まっています。

そして報道も段々と変わってきました。
  
  
しかし、警察と検察はどうなのでしょうか?
   
県立病院は補償のためミスを認めようとしていたのです。

というのは、自動車事故で保険にお世話になった方なら分かる話ですが、保険会社はお金を出し渋るのです。

たしかに誰が見ても“責任ある”事故であれば、文句なくお金をトトンと出してくれますが、灰色の、あるいはミスのなさそうな、

“そもそも死んでもおかしくない病気じゃないの?”

という病気となるとしつこくミスを認めない限り出してくれません。

ですから亡くなった方の御遺族のために報告書まで作って、(賠償金を落とすために)ミスを認め、すでに謝罪し、主治医の加藤先生は減給処分にまでなった。

でも納得してもらえるならいいと思っていたのでしょう。
  
それが。突然の(ご遺族も頼んでいない)警察の介入によって保険金支払いは
裁判の最終結果が出るまで延期になってしまいました。

それから1年経って突然の逮捕!!!!

もう証拠は全部押さえられてるのだし、

事故調査報告書を作られた時点で

口裏あわせなんてしようがないし、

そもそもそこまで調査して書かないと保険会社だって素直に賠償金を出してくれないような病気。

毎日、きちんと病院に出勤していた産科医を逮捕する理由なんて何一つないのです。
  
逮捕→裁判となれば誰だって闘います。

そうしないと犯罪者にされてしまうから。

医師免許もなくなっちゃう!

ご遺族の方も豹変振りにびっくりされたでしょう。

そして傷つかれたはずです。
      
その2年半の間に、産科の崩壊が加速度的に進み、地方は荒れ、救急医療は萎縮し、影響は全国に及びました。

ヘリコプター搬送なんて映画の話だったのに、いまや現実のものとなっています。

福島県の南会津地方には分娩可能な施設はひとつもなくなりました。

今回の裁判は注目されていたのでさまざまな情報を入手することが出来ました。
有志で毎回傍聴券の難関を潜り抜け、傍聴録をアップしてくださっている方々もいました。

ですからどんな判決でも、私たち産婦人科医は自分たちの判断で無実だと思うだけの話なんです。
(それでもショックで辞める方は続出するでしょうが。)
  
ただ警察はこの介入によって、何を得ようとしたのでしょう?

いたづらに患者さんを傷つけ、求刑はよりにもよって「禁固1年と10万円」。
    
「警察・検察は一体、何を反省したのだろうか?」

「不勉強なまま医療を立件することが、どれだけ患者さん御遺族の心を傷つけただろうか?」

「全国に広がってしまった産科砂漠について、どう考えているのだろうか?」

このまま控訴、あるいは控訴されて、証拠や書類を集めて高裁に送るだけと考えているなら
それはあまりにも無責任すぎやしないでしょうか?
  
ある患者側のご高名な弁護士さんがおっしゃられていました。

「あれだけ、高名なその道の専門医が揃っちゃうとねぇ。。。。」

騒がれない民事訴訟であったならば患者さん側にも勝訴の見込みはあったかもしれません。でもこの裁判の後で患者さん側の鑑定医をつとめる人間がいるとも思えません。

医療不信を植え付けたまま、患者さんの希望をもぺしゃんこに踏みにじっています。
     
ある意味、この事件は冤罪に近いものがあります。

しかも被害は甚大で、産科崩壊も福島の医療崩壊も風評被害を蒙っています。
 
まずこの刑事立件によってどんな弊害が医療界で起きたのか、そして直接市民のみなさまにどのように影響しているのか。
   
この逮捕が正しかったのかどうか。
    
警察と検察が考えないのであれば、評価するのは国民のみなさまです。
    
各地でどのようなことが起こりつつあるのか、刑事立件は事故再発の役に立つのか?

この事件によって何が起こり何を得たのか。

みなさんで考えていきましょう。

8月20日、福島でお会いできることを願って。


本当にこの事件は産婦人科医のみならず、他の科の医者を中心として医療関係者に『明日は、我が身だ。』と非常に大きな危機感を抱かせました。

私は、野村先生の意見にほぼ100%賛成します。

日本の医療のあり方さえ問うている裁判とさえ思います。

皆様は、どのように感じておられるでしょうか?

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なかのひと

『患者と医者をつなぐもの』も読んでね。



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