小ネタ続きだったんで今日は、小ネタでないものを。
高齢者の治療はいつも考えさせられます。
ここでは、いつものように、高齢者肺がんについての話しです。
さて、高齢者の定義は何でしょうか?
1999年に70歳以上を対象とした臨床試験で1種類での薬剤で治療した群が、無治療の群より生存期間の延長とQOLの改善を認めた。
と言う内容の論文が発表されました。
この論文は、肺がん領域で高齢者を対象にして抗がん剤治療がいいとの結論がでた非常に有名なものです。
ここで、疑問があります。70歳以上が高齢者なのでしょうか?
今の、日本社会、70歳でも高齢者と言うにはあまりにも元気な方がたくさんいらっしゃいます。
一般的に、抗がん剤治療の適応を決めるのは、年齢、全身状態(見た目のこと)、合併症、臓器障害などです。
上記の臨床試験も、年齢は70歳以上なのですが、全身状態が比較的いい患者さんで、臓器障害、合併症がほとんど問題にならない患者さんばかりを登録して試験を行っています。
じゃあ、75歳以上で臨床試験をすればいいのか?
75歳でも若く見える人はどうする?
80歳以上の臨床試験?
登録できるかんじゃさん自体が少なすぎないか?臨床試験として成り立たない?
全身状態の悪い人だけで臨床試験する?
ちなみに、全身状態の指標はPS(Performance Status)であらわします。
PS0:無症状、1:軽度の症状があるが軽労働はできる。(家事、事務など)
2:歩行や身の回りの事ならできるが、時に介助がいる事もある。
3:身の回りの事はある程度できるが、しばしば介助が必要、日中の50%以上は就床している。
4:終日就床を必要とする。
PS3、4の人に抗がん剤を使用するのは倫理的に難しいですよね。しかも、判断にかなり主観が入りますよね。
ある臨床試験では、PS、臓器障害より年齢の方が延命効果に寄与したとの報告もあるようです。
どんなに考えても高齢者の標準治療ってものはなさそうです。
個々に主治医が判断するしかないなって思います。
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ちなみに、それ以後も高齢者には全身状態がよければ抗がん剤治療をした方がいいとの論文が出ています。
ガイドライン上は、
75歳未満で全身状態が良好な患者(PS0、1)に化学療法を行うよう強く勧められる。(グレードA)
75歳以上でも全身状態が良好な患者(PS0、1)に化学療法を行うよう勧められる。(グレードB)
となっております。
最終的には、ご本人さんの意志が大切なんですけど。
家族の方の意志と異なる事があるのでさらに、難しいですね。
高齢者ほど、治療関連死のリスクは高いですしね。
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Effects of vinorelbine on quality of life and survival of elderly patients with advanced non-small-cell lung cancer. The Elderly Lung Cancer Vinorelbine Italian Study Group.
J Natl Cancer Inst. 1999 Jan 6;91(1):66-72.
これです。
Pubmedのアドレスを載せておきます。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez?Db=pubmed&Cmd=ShowDetailView&TermToSearch=9890172&ordinalpos=432&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.Pubmed_RVDocSum
論文まで調べようとするのは、凄いです。
イタリアの研究班によるナベルビン単剤の延命効果(ステージ3Bか4の70歳以上、PS0-2を対象告)の報告だったのですね。確認させて下さい、下記に理解してよろしいのでしょうか? 掲示板のノリになっちゃいましたが、再度よろしくお願い致します。
・ナベルビン投与群は、肺がんの症状はほとんど出ず、むしろ薬の副作用の方が強く出た。
・生存期間の中央値は、無治療群が21週、ナベルビン投与群が28週。
・対象患者の国籍、平均年齢、性別は不明
だいたいあってますよ。
ナベルビン投与により、肺がんによる症状が出にくくなり、つまりQOLがよくなり、延命効果を認めた。
という内容です。
抗がん剤使ったから副作用がでるのは、あたりまえです。副作用が出ても、QOLがよくなり、延命効果があったからお勧めですね。
というように理解してください。
ここはインターネットです。ある読者が、専門家なら誰でも知っている有名な論文を、自分も知りたいと思ったとしたら、その人の後ろには何百何千人もの同じ考えの人がいますよん。
個人的には、医師が「えびでんすに沿った治療をすることになってるもん」っておっしゃるのなら、そのえびでんすを患者にきちんと示してちょ、と思います、、、でも実際に、混み合う診察室で詳細をお尋ねするのは無神経な患者になりかねません。。。
というわけで、こういったブログで(強引に)お尋ねできることは、大変なメリットに思います。サイレント読者の皆様に代わり、よっしぃ先生の丁寧なご回答・ご親切に感謝いたします。
お知り合いのおばあちゃまは、80過ぎて検査で肺ガンが発見されましたが、長引く検査入院に嫌気がさし、お元気に退院されました。
その後、3年位は無治療でお家で普通の生活を送られ、しだいに弱って行かれましたが、最後の一週間を肺炎の為入院されただけで、とても穏やかに亡くなられました。
私も同じ立場であったら、そうありたいと思うのですが、お医者さんの立場としてはご高齢の患者さんを目の前にして「老化の一つですね」とは言えないですよね。
もちろん、老化の一つとは言えません。
ただし、抗がん剤などの積極的な治療を行うかどうかは個人個人の考え方によりかわるものだと思っています。
治療を行うにせよ行わないにせよ。それぞれの選択肢のメリット、デメリットがあるわけですから、そのメリット、デメリットを十分理解した上でどうするのか選択して欲しいと思います。
知り合いのおばあちゃまのように、無治療でも3年程元気で過ごしている方はいらっしゃいますからね。そのかたは、治療してたら逆に短くなってた可能性もあると思います。難しいです。ホントに。
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