もう、ずいぶん前のことです。
Aさんは、近くの診療所から紹介された患者さんです。
検査の結果は、4期の肺癌でした。
『検査結果がそろったので、説明をしたい。家族を呼んでください。』
と病状説明の約束をしました。
その日がやってきました。
『肺癌の可能性があります。きっちり、しらべましょう。』と入院時に話をしていたのでAさんは、なんとなくわかっていたようです。
告知ってにあるようにAさん、Aさんの家族の気持ちを考えながら持っている知識を総動員し、行います。こちらも真剣です。1時間以上かかることもざらです。
病状説明は抗癌剤治療そのものよりも大事だと思えるぐらい重要なものです。
Aさんは、病状説明を真剣に聞き入っていました。
ときどき、Aさんに尋ねます。『ここまでの話は理解できましたか?ここまでで何か質問はありませんか?』
Aさんはうなずきながら、『わかりました。』と答えます。
本当は、Aさんに今までの内容を自身の言葉で説明してもらうのが理想である。と言われてますが、現実にはなかなかそこまで行う余裕がありません。
約1時間かけてすべての話が終わりました。
特に、Aさん、Aさんのご家族ともに取り乱すことなく『わかりました。これから、よろしくお願いします。』と頭を下げられました。
席を立とうとしたとき、Aさんは奥さんに言いました。『おい、写真とって。』
正直、初めての経験でしたのでびっくりしました。
『今、どんな顔してるか記録しておくんや。これから、闘病日記を書いていくから。』とおっしゃられたとたん、Aさんの目から涙がこぼれました。
もらいそうになりました。
そのとき、『先生も一緒にとってください。笑っててくださいね。』
最高の笑顔で写真に写ったつもりです。
宝物の写真です。
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