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 日本の医療は、病院が赤字で、製薬会社と医療機械会社が儲かると思っていたが、この儲けの構造に調剤薬局が加わっていた。このことは昨年の長者番付けで、日本調剤社長の報酬が4億7700万円であったことから明確である。

 病院が経営に苦しみ、医療崩壊が日常語になっているのに、なぜ調剤薬局が儲かるのか、それは、調剤薬局は儲かる仕組みになっているからである。

 薬価は国が決めているので、値引きの必要はない。売れば売るほど儲かる仕組みになっている。病院の前には門前薬局が並んでいるが、調剤薬局の名前は違っていても、それらは個人経営ではなく、セブンイレブンのように大型チェーン店化している。チェーン系列であれば、仕入れ価格、薬剤師確保、在庫調整などのメリットがあるからである。

 調剤基本料が420円、基準調剤加算があればプラス100円、調剤料は1日50円で、2種類の飲み方の薬を7日貰ったら700円となる。さらに目薬と塗り薬が加われば200円プラス。薬歴作成費で220円、指導料で220円、お薬手帳で150円。合計2100円に薬剤費を足して、その3割が患者負担となる。

 毎回、同じ薬なのに、疾患名も知らないのに、「その後、いかがですか?」で指導料220円、薬の写真と説明のプリントは170円である(平成18年から多少改善)。逆に、大勢の前で、大きな声で病状や、住所、電話番号まで聞かれ、プライバシーなどはないに等しい。

 ジェネリック医薬品が話題になっているが、薬局が勧めるのは、薬価と仕入れ価格差の大きな薬品で、必ずしもジェネリッを勧めている訳ではない。調剤薬局の薬剤師が親切なのは、親切にすれば、儲かるからである。

 内科や眼科など複数の科が入居している医療モールが流行しているが、ベンツに乗った調剤薬局が大家で、店子が医師である。調剤薬局は各医院から出される処方箋で儲け、処方箋の少ない店子医師はイヤミを言われるのが現状である。

 医師から薬の説明を受けているのに、薬剤師からの説明は時間の無駄である。インフルエンザで意識朦朧患者も2カ所を回るのだから、患者にとっての利便性はない。

 医薬分業は、厚労省の日本医師会弱体化を目的とした利益誘導政策のひとつであるが、しかし厚労省さんよ、医療崩壊を防ぐには、病院や診療所の診療報酬0.004%の攻防よりも、受診時定額負担100円の議論よりも、まずは調剤薬局の報酬を減らすことではないだろうか。

 

 

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 オリンパスの内視鏡は世界シェアの7割を占め、それだけに今回の損失隠しは、オリンパス製品を世界1と思っていた医師たちを怒こらせた。

 もちろん、経営陣の不祥事と社内研究者は別であるが、経営陣はさらにひどいことを行っていた。つまり実質的に経営(出資)している病院に、内視鏡の押し売りをしていたのである。赤字病院が経営に困ると、オリンパスが出資を申し出て、見返りに、必要のない内視鏡をなどの自社機器を購入させていた。その額は1病院毎月数百万円である。

 この方法は、暴力団が飲食店に高額な鉢植えを毎月買わせていたのと同罪である。

 もちろん、子会社、孫会社を使っての悪行なので、オリンパス本社に訊いても「知らぬ存ぜぬ」の返答であろう。それが、今回の損失隠しの穴埋め、あるいはさらなる悪事の発覚をおそれ、子会社、孫会社はすべて調剤薬局最大手に売却ずみである。優良会社といえども倫理観など微塵もなく、オリンパスはハイエナのごとく 「良心的な病院を金もうけの道具」にしていたのである。

 オリンパスの胃カメラは、東大医学部外科医の宇治達郎、オリンパスの技師者杉浦睦夫と深海正治によって開発された。彼らは腹の中を覗くことで、人類に最大級の貢献をもたらしたが、バブルに浮かれた腹黒い経営陣がそれをぶち壊したのである。

 明日は、胃カメラ開発に至るまでの実話を示そう。乞う、ご期待。

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 刑務所から出所した患者に「刑務所はくさい飯でつらかっただろう」と訊いてみた。すると患者は「病院の食事時より刑務所の方がおいしいですよ、麦飯は仕方ないにしても、麦飯は健康には1番ですから、糖尿病などは一発で治りますよ」と妙なことを自慢げに言い出した。

 そこで調べてみると、刑務所の1食の材料費は393円から423円で、料理の得意な服役者が作り、配膳も服役者が行うので人件費、光熱費はゼロ円である。いっぽう病院の食事は1食640円だが、人件費、光熱費が含まれているので材料費は250円になる。また学校給食の材料費は292円で人件費は別会計なので、たしかに食事のおいしさでは、刑務所、学校給食、病院の順になる。もし患者満足度調査など行うならば、このことを知らしめるべきである。

 また、一般の市中病院に入院すると、入院費(入院医学管理料・入院環境料・看護料・食事療養費)は2週間まで1日13530円、6ヶ月を超えると9180円(老人8870円)である。老人は1割負担なので、3食ケア付き、訴訟の権利付きで、1日1000円でおつりがくる。老人ホームより安い値段で、年金で貯金が出来るので、退院を希望する患者、家族などいるはずがない。

 これで健全な病院経営など、所詮無理である。

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 昨年10月、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)という単語が突然登場し、その内容も分からないまま、賛成、反対が展開された。

 TPPはアメリカとの関税撤廃で、景気低迷に悩む経団連(輸出産業)は賛成、安い農産物の輸入を恐れる農家(農協)は反対という構図になった。

 TPPは「アメリカの利益のために日本を搾取する協定」であるが、国内の議論を待たず、11月13日、野田首相はアジア太平洋経済協力会議(APEC)でTPP交渉参加を表明した。

 野田首相は「すべての品目やサービスを貿易自由化の交渉テーブルに乗せる」と表明したが、国会で追求されると、「表明は事実ではない、このことは米国当局も認めている」と発言、次にこの発言をアメリカが否定する展開となった。つまり野田首相の二枚舌が明らかになった。

 TPPは関税の撤廃だけではなく、重要なのは規制の自由化で、金融、労働、サービス、医療などでの規制の自由化が含まれていることである。つまり日本の医療が大きく変わることが予想される。

 TPPが導入されれば、混合診療が解禁され、医療に株式会社が参入し、国民皆保険制度が崩壊するであろう。医療や介護の規制緩和は、「国民からいかに金を奪うか、弱者から医療と介護をいかに奪うか」が根底にある。

 平成17年、総合規制改革会議がアメリカの医療(混合診療)の導入を叫んだが、TPPも同じである。

 医療では差額ベッド、給食、おむつ代、入れ歯など病気に直接関係のない部分は自己負担になっているが、政府が意図しているのは、患者の生命に関わる部分にも、自己負担を導入することである。つまり特定の診察料、薬剤、検査などを患者の自己負担とすることで、もちろん必要な医療は制限される。

 混合診療の目的は、「混合診療によって誰が儲かり、誰が損をするのか」を考えれば分かる。財政難の国は医療費支出を減らせるので導入を願い、医療で金儲けをしたい保険会社は確実に得をする。そして国民だけが損をする。

 混合診療は自動車の保険に例えればよく分かる。自動車の保険は「強制保険と任意保険」の2本立てであるが、混合診療は医療を自動車と同じように強制保険と任意保険の2本立てにする。強制保険では高度の医療を制限し、それを受けたければ自費にする。自費では払いきれないので民間保険に入る。つまり「国民の苦しみ、保険会社の喜び」が混合診療の本質である。誰でもいずれ病気になるのだから、国民全体が困ることになる。日本人の生命はみな同じであるが、貧富の差により医療の平等性が破壊されることになる。弱者を崖から突き落とす政策である。

 巨大な資本を持つアメリカの保険会社は、医療保険は得意分野のお家芸で、任意の医療保険を独占する可能性が高い。さらには国民皆保険すべてをアメリカの保険会社が民営化する可能性がある。

 国民は国民皆保険制度の恩恵を忘れ、医療に対し不満ばかりだが、TPPが導入されれば、患者の自己負担が増え、低所得者は病院を受診できず、入院患者は病院から追い出されることになる。

 アメリカの保険会社がオバマに巨額の献金をして、オバマが日本政府に圧力をかけ、TPPを日本が導入すれば、アメリカの保険会社が儲かる構図である。日本政府の特徴は外圧に弱いことであるが、TPPはアメリカの外圧にだまされたふりをして、国家予算から国民医療費を削減することを狙っている可能性が高い。

 TPPは国民の負担を増し、国民皆保険を壊しかねない。日本医師会はTPPに反対しているが、なぜ反対しているのか。それは医師のためではなく、国民のためであるが、そのことを国民は分かっていないようである。 

 

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 無過失補償制度とは、医療事故で障害を負った場合、医師の過失とは関係なしに、患者に補償金を支払う制度である。患者側にとっては「医師の過失を証明するのは難しく、裁判に時間がかかる」難点があった。また医師側にも「患者のための悪意なき医療行為が、結果によって裁判沙汰になることへの不満」があった。この解決策として無過失補償制度が支持された。

 医療事故による患者と医師を救済するために、まず2009年に出産時に起きる脳性麻痺患者にこの制度が導入された。通常の出産で脳性麻痺になった場合、一時金として600万円、20歳になるまで毎月10万円の計3000万円が支払われることになった。

 この産科医療補償制度は警察への通知義務はなく、保険料3万円は出産祝い金に上乗せされるので、妊婦への実質的な負担はなく、まさに画期的制度とされた。日本の分娩件数は年間100万件、出産時の脳性麻痺は年間500から800件とされていたので、保険料は総額300億円、支出は150億円から240億円とされた。

 この無過失補償制度は一見よさそうに思えるが、運営が日本医療機能評価機構で幹事会社が東京海上日動保険であることから、当初から「悪代官と越後屋」の悪知恵悪行を危惧していた。日本医療機能評価機構は厚労省の天下り団体で、民間保険会社は営利企業だからである。

 では制度が開始された2009年から、これまでの2年間を検証してみよう。2年間で補償が支払われたのは192件である。つまりおよそ500億円が余剰金となっているはずである。しかしこの余剰金について、日本医療機能評価機構と民間保険会社は沈黙を守っている。

 この産科医療補償制度は公的制度である。ゆえに余剰金があればそれを公表し、余剰金を還元すべきである。しかし彼らは余剰金を公表せず、さらに、脳性麻痺だけでなく、すべての医療事故に無過失補償制度を導入しようとしている。もちろん無過失補償制度の拡大は、余剰金の拡大を意味している。

 「日本医療機能評価機構と東京海上日動保険」よ! 早く余剰金を白状し、余剰金を返還せよ! 多分、彼らは、余剰金を「今後の基金のため」などと言うであろう。

 しかし、「やかましぃやい! 悪党ども! おうおうおう、黙って聞いてりゃ寝ぼけた事をぬかしやがって! 悪党どもよ、この桜吹雪、散らせるもんなら散らしてみろぃ!」、彼らの言い分は法律では許されても、庶民の味方、遠山の金さんは許さないであろう。

 

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 病院の職員以外で「日本医療機能評価機構」を知るひとはいないであろう。表面的には「病院の機能を中立的な立場で評価し、問題点の改善を支援する第三者機関」であるが、もっと的確に表現すれば、診療報酬というみかじめ料をえさに、日本の医療をぶち壊した「行政やくざ集団」といえる。

 つまり厚労省が「病院支配と国民医療費抑制」を目的につくった、厚労省よる、厚生官僚のための、厚生官僚の「天下り団体」である。 

 かつての日本の医療費は出来高払い制度で、行った検査や治療はそのまま病院に支払われていた。これを疾病に応じて支払う方法(包括医療)に変えようとしたのである。つまり肺炎で入院したら、検査や治療とは関係なく、病院が得る診療報酬を一定にした。

 この包括医療は、安い治療で検査を少なくし、早く退院させれば、病院の経営がよくなる仕組みであった。経営難に苦しむ病院は、1円でも高い診療報酬を得るため、包括医療の導入に踏み切った。しかしそこには、第三者機関から「病院の質が全国レベルとの認定」が必要とする罠があった。この病院の評価を行うのが「日本医療機能評価機構」で、病院はおよそ250万円の審査料を払い、しかも5年毎に更新審査を受けなければいけない仕組みがあった。

 つまり「日本医療機能評価機構」は高い診療報酬を餌に評価を受けさせ。審査の合否によって、病院の生死を選別できる仕組みを作り、厚労省による「病院支配」を成功させたのである。包括医療費の導入時に、診療報酬を高く設定して「バスに乗り遅れては生き残れない」と病院を誘導し、「病院の多くがバスに乗ると」今度は報酬を安く改訂して「病院支配」をさらに強めた。もちろん目的の一つである「国民医療費抑制」にも成功した。

 このように厚労省のもくろみは成功したが、高齢化社会において大きな問題を生じさせた。治療成績(短期入院)のよい病院の医療費を高く設定したため、病院は寝たきり老人の肺炎など、長期入院が予想される患者を入院させないようにしたのである。「身寄りのない老人の門前払い現象」が起きたのである。まさに悪代官の悪知恵の結果である。

 

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2012.01.13 07:06 |  生活 / くらし  |  趣味  |  お金 / 株  |  その他(一般)  |  歴史私観  |  スーさん  | 推薦数 : 1

意外な社名(歴史私観)

 インターネットのyahooを知らない人はいないだろうが、その社名の由来を知る人は少ないであろう。yahooは「ガリヴァー旅行記」に登場する、人間に似た愚かな野蛮人のことである。Yahooの開発者がならず者と自称してこの名前をつけた。

 Googleは社名を10の100乗を意味する「googol(グーゴル)」にするはずだったが、社名登録時にスペルを間違えたのである。Googleは膨大な情報を扱う検索会社の代名詞になっているが、最初の情報が間違っていたのである。

 日本の会社はマツモトキヨシが典型例であるように、多くは創始者の名前に由来する。その中でも石橋正三郎を英語読みにしたブリッジ(橋)ストーン(石)は有名である。また旧社名に由来するものとして、エーザイ(日本衛材)、コクヨ(国誉)、キッセイ薬品(橘生薬品)、イトーヨーカドー (伊藤羊華堂)、SEIKO(精工舎)などがある。

 日本の社名で面白いのは、飲料水メーカーのサンガリアで、この社名は奥の細道の「国敗れて山河あり」からの引用で、「国破れて サンガリア」「いち に サンガリア」のフレーズが宣伝に使われている。

 キヤノンは観音菩薩のKWANON(カンノン)からCANONになったが、CANONは英語では標準、聖書正典、教会法を意味する言葉である。その他、シャチハタは名古屋城のシャチホコと旗から、シャープはシャープペンシルのヒットから、ロッテは「若きウェルテルの悩み」の主人公の名前からである。ヤクルトはエスペラント語でヨーグルトを意味し、花王は顔の石けんから(顔王)、パイロット(水先案内人)万年筆はセーラー万年筆(水夫)に対抗しての命名である。

 日本は物作りの国で、100年以上続いている企業が10万社以上ある。もちろん100年以上続いている企業はアメリカや韓国ではゼロ、ヨーロッパでさえ30社にすぎない。理系の大学生が、目先の利益から、外資系の金融会社に就職する風潮があるが、そもそも金融商品が富をもたらすはずはない。富をもたらすのは人間の知性と労働だけで、金融商品はただの強欲ゲーム、博打にすぎない。

 日本は技術伝承の国で、多くの画期的製品を作ってきた。伝統ある日本の企業に期待するとともに、歴史の浅い政府にお願いしたいのは、優秀な中小企業の邪魔をしないでほしいこと、伝統ある日本の医療を壊さないでほしいことである。

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 この不況時に儲かっているのは製薬会社ぐらいである。学会のランチョンセミナーに並ぶ医師は乞食のようで、高級な背広を着たMR(医薬情報担当者)が腰を低くして整列させている。日本のMRは約6万人で、給料と手当てはサラリーマンの中では最高レベル。労働時間は医師の半分にも満たないであろう。42歳時のMRの年収はエーザイが1112万円、武田薬品が1047万円で、年間6000億円がMRの給与となる。平均年収は医師と同じぐらいであるが、退職金は医師の3から4倍である。まさに江戸時代の貧乏武士と商人である。MRがうらやましい。生まれ変われたら、次はMRになろう。

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一酸化炭素中毒殺人事件(昭和48年)

 昭和48320日の早朝,山形市・釈迦堂の農家の主婦(43歳)が一酸化炭素中毒で死亡するという事件がおきた.練炭による一酸化炭素中毒が原因と思われたが,この事件は夫の横川真一(Y)によって巧妙に仕組まれた殺人事件だった.

 夫から要請を受けた救急車が農家に駆けつけると,母屋の裏にある椎茸栽培用のビニールハウスの中でYの妻が倒れており,すでに死亡した状態であった.ビニールハウスは四畳半ほどの大きさで椎茸が栽培されていて,ビニールハウスの中央に練炭火鉢が二つ置いてあった.外傷もないことから,死因は一酸化炭素中毒で間違いないとされた.警察と医師によって検死がおこなわれたが,とくに疑わしいところはなく妻は事故死とされ,司法解剖はなされずに火葬された.

 一酸化炭素中毒はそれほど珍しい事故ではない.狭い部屋で練炭を使用したり,ガス湯沸かし器をつけっぱなしにしたり,エンジンをつけたまま車内で寝てしまったり,数多くの事故が毎年繰り返されていた.またかつての都市ガスには数%の一酸化炭素中毒が含まれていて,都市ガスによる事故や自殺も多かった.一酸化炭素は無臭のため,本人が気づかないうちに死に至ることが多かった.

 しかしこの主婦の死は一酸化炭素中毒による単なる事故ではなく,Yによる殺人であると噂されるようになった.それは主婦が死亡してから1年後のことであった.Yは死亡した妻に多額の保険金を掛けていたのである.生命保険は山形市だけでなく,茨城,東京,大阪,岐阜など全国各地で加入しており,しかも妻の代わりに女性の替え玉を使い郵便簡易保険や民間保険に加入していたのだった.そして妻の死後10日目に6000万円の簡易保険金を受け取ったのを初めとして,合計8000万円の保険金を受け取っていた.Yは年収とほぼ同じ金額の保険金を払っていたのである.

 当時の郵便貯金や保険会社はコンピュータによる全国のネットはまだ整備されていなかった.他県の窓口で保険に加入すれば何口でも入ることが可能だった.しかしYはここで大きな失敗を犯すことになる.なぜか保険金の請求をすべて地元の郵便局でおこなったのである.そのため不審に思った職員が全国の郵便局を丹念に調べ,巨額の金額が支払らわれている事実をつかんだのである.このちょっとしたミスにより完全犯罪が発覚することになった.

 巨額の保険金,短期間の加入,突然の死亡,このことから保険金目当ての殺人の疑惑がでてきた.捜査は極秘のうちにおこなわれ,警察はYを保険金詐欺罪で逮捕し取り調べることになった.

 Yは事件当時,商品相場に手を出し,また株にも失敗し多額の負債を抱えていた.殺人の動機ははっきりしたが,事故死とされた妻の遺体はすでになく,殺人の証拠はどこにもなかった.Yは保険金詐欺を認めたが殺人については否定した.

 捜査陣は当時と同じビニールハウスを建て実験を繰り返した.妻の死因は一酸化炭素中毒であった.しかし何度実験しても練炭だけではビニールハウス内の一酸化炭素濃度は上昇せず,殺人ばかりか死因さえも証明できないという不合理をみせた.

 警察の調査の結果,Yは偽名を使い数カ所の薬局から硫酸などの薬品や試験管などの実験器具を購入していることが分かった.そして薬局に残された明細書からYの指紋が検出されたのである.この事件が決定的結末を迎えたのは,山形大学理学部から山形県警への一本の電話であった.以前,Yが理学部の研究室を訪ね,合成した一酸化炭素ガスから臭いを消す方法をしつこく尋ねたという教授の証言だった.一酸化炭素は無臭であるが,しかし化学的に合成した一酸化炭素には強い臭気が残るのが特徴であった.Yは自分で合成した一酸化炭素の臭気を消す方法を山形大学の研究所に聞きにきたのであった.

 山形大学理学部の情報を突きつけられたYは全面的な自供をおこなった.Yは生命保険の契約を結ぶと同時に化学の本を買いあさり偽装殺人の準備を始めた.疑われずに妻を殺すことが出来るかどうかを研究したのである.試験管やフラスコを買い求め,密かに実験を繰り返した.硫酸とギ酸で100%の一酸化炭素を合成できることを知ったが,ギ酸は一般の薬屋では入手できなかった.そこでさらに研究し,Yはシュウ酸と硫酸を加熱して50%の一酸化炭素と50%の二酸化炭素を精製し,50%の二酸化炭素を苛性ソーダで取り除く方法を見いだしたのである.高濃度の一酸化炭素を精製したが,次に強い臭気が問題になった.この臭いを消すためにYは山大理学部に助言をもとめたのだった.理学部ではその脱臭方法は分からないまま,結局よい解答は得られなかった.しかし研究熱心なYは冷蔵庫の脱臭剤を利用することを思いついたのである.高濃度の一酸化炭素をビニール袋にいれ冷蔵庫の脱臭剤を用い無臭化に成功したのだった.そしてネズミを用いた実験では即死に近い結果をえた.

 Yは一酸化炭素中毒の舞台となるビニールハウスを建設,実際に椎茸の栽培を始める,保険金殺人の計画を着々と進めていった.Yは偽装殺人のために防塵用マスクを2つ準備した.

 Yは事件当日の320日の深夜,「ビニールハウスの様子がおかしい」と寝ている妻を起こし,一緒にビニールハウスに行った.そして「一酸化炭素中毒の可能性がある」と言って,防塵用のマスクをつけ,妻にも同じ防塵用のマスクをつけさせた.そして妻が防塵用マスクをつけると同時に,防塵用マスクにつけてあったエチレンの袋のひもをはずし高濃度の一酸化炭素を吸わせたのである.妻は数秒で気を失い,その場に倒れた.Yは妻の防塵用のマスクをはずすと,ビニールハウスの戸を閉めたまま一時間放置し,死を確認した後に救急車を要請したのだった.

 東北大学法医学教室,山形県警ではYの自供とおりの方法で一酸化炭素が精製できること,さらにその一酸化炭素濃度では数秒で卒倒することを証明した.そしてYは第一審で無期懲役の刑を受け,控訴せずに服役することになった.自家製の一酸化炭素による殺人事件はこれが世界で初めての例であった.

 一酸化炭素を吸うと,一酸化炭素が血液中で酸素を運ぶヘモグロビンとすぐに結合する.一酸化炭素のヘモグロビンとの結合力は酸素の約250倍とされ,このため必要な酸素を体内に供給できなくなる.体内の細胞が酸欠状態になり数秒で窒息死状態になる.一酸化炭素は無色,無味,無臭の気体で,皮膚への刺激性もないため,中毒症状が現れるまで予知することはできない.そのため室内での石油ファンヒーター,ガスストーブ、ガス湯沸器などの燃焼器具を使うときは注意が必要がある。軽度の場合の症状は頭重,頭痛,疲労,倦怠感,めまい,悪心などであるが,一酸化炭素の濃度が50%以上になると瞬間的に意識を失い死亡する.治療は高圧酸素療法と高濃度酸素の投与,呼吸管理と全身管理である.最近では車庫の中でエンジンをかけたままの状態で,排気ガスによる一酸化炭素中毒が多い.

 

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