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昨年10月、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)という単語が突然登場し、その内容も分からないまま、賛成、反対が展開された。
TPPはアメリカとの関税撤廃で、景気低迷に悩む経団連(輸出産業)は賛成、安い農産物の輸入を恐れる農家(農協)は反対という構図になった。
TPPは「アメリカの利益のために日本を搾取する協定」であるが、国内の議論を待たず、11月13日、野田首相はアジア太平洋経済協力会議(APEC)でTPP交渉参加を表明した。
野田首相は「すべての品目やサービスを貿易自由化の交渉テーブルに乗せる」と表明したが、国会で追求されると、「表明は事実ではない、このことは米国当局も認めている」と発言、次にこの発言をアメリカが否定する展開となった。つまり野田首相の二枚舌が明らかになった。
TPPは関税の撤廃だけではなく、重要なのは規制の自由化で、金融、労働、サービス、医療などでの規制の自由化が含まれていることである。つまり日本の医療が大きく変わることが予想される。
TPPが導入されれば、混合診療が解禁され、医療に株式会社が参入し、国民皆保険制度が崩壊するであろう。医療や介護の規制緩和は、「国民からいかに金を奪うか、弱者から医療と介護をいかに奪うか」が根底にある。
平成17年、総合規制改革会議がアメリカの医療(混合診療)の導入を叫んだが、TPPも同じである。
医療では差額ベッド、給食、おむつ代、入れ歯など病気に直接関係のない部分は自己負担になっているが、政府が意図しているのは、患者の生命に関わる部分にも、自己負担を導入することである。つまり特定の診察料、薬剤、検査などを患者の自己負担とすることで、もちろん必要な医療は制限される。
混合診療の目的は、「混合診療によって誰が儲かり、誰が損をするのか」を考えれば分かる。財政難の国は医療費支出を減らせるので導入を願い、医療で金儲けをしたい保険会社は確実に得をする。そして国民だけが損をする。
混合診療は自動車の保険に例えればよく分かる。自動車の保険は「強制保険と任意保険」の2本立てであるが、混合診療は医療を自動車と同じように強制保険と任意保険の2本立てにする。強制保険では高度の医療を制限し、それを受けたければ自費にする。自費では払いきれないので民間保険に入る。つまり「国民の苦しみ、保険会社の喜び」が混合診療の本質である。誰でもいずれ病気になるのだから、国民全体が困ることになる。日本人の生命はみな同じであるが、貧富の差により医療の平等性が破壊されることになる。弱者を崖から突き落とす政策である。
巨大な資本を持つアメリカの保険会社は、医療保険は得意分野のお家芸で、任意の医療保険を独占する可能性が高い。さらには国民皆保険すべてをアメリカの保険会社が民営化する可能性がある。
国民は国民皆保険制度の恩恵を忘れ、医療に対し不満ばかりだが、TPPが導入されれば、患者の自己負担が増え、低所得者は病院を受診できず、入院患者は病院から追い出されることになる。
アメリカの保険会社がオバマに巨額の献金をして、オバマが日本政府に圧力をかけ、TPPを日本が導入すれば、アメリカの保険会社が儲かる構図である。日本政府の特徴は外圧に弱いことであるが、TPPはアメリカの外圧にだまされたふりをして、国家予算から国民医療費を削減することを狙っている可能性が高い。
TPPは国民の負担を増し、国民皆保険を壊しかねない。日本医師会はTPPに反対しているが、なぜ反対しているのか。それは医師のためではなく、国民のためであるが、そのことを国民は分かっていないようである。