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2010.03.21 06:29 |  診療  |  研究  |  その他(医療関連)  |  昭和 50年代 1  |  スーさん  | 推薦数 : 0

超音波検査

超音波検査(昭和50年)

 画像診断は診断学の中で大きな比重を占めるようになった.そして画像診断の進歩は,患者に苦痛を与えず、病変をより正確に,しかも安全に行うかである.CTの普及とほぼ同じ昭和50年ころから超音波検査法も普及してきた.

 超音波はヒトの聴くことの出来る音(20Hzから2Hz)を越えた高い周波数の音のことである.多くの哺乳類はヒトが聞こえない高い周波数の音を聞くことができ,イヌは8万ヘルツ,コウモリは10万ヘルツ,イルカは17万ヘルツまで聞こえるとされている.この超音波によって仲間どうしで情報をやりとりしているとされている.

 ヒトが耳で聞くことの出来る音は四方に広がるが,超音波は直線的に進みモノにあたると反射する特性がある.そのため超音波はまず海底の地形検査や魚群探知機として,第二次世界大戦では海中に潜んでいる潜水艦を探すソナーとして開発された.世界地図を見ると海の深さが等高線で示されているが,これは超音波によって測定したものである.

 この超音波の特性を人体に応用したのが超音波検査である.皮膚にゼリーを塗り、探触子という超音波を送受診する器具を皮膚にあて,超音波を発射して,各臓器から反射してくる反射度の違いをとらえ画像化する方法である.身体の90%以上が水分なので各臓器からはね返ってくる反射波の違いをコンピュータで処理して臓器の大きさや形を描くことができた。

 超音波は骨や石などの密度の高い組織では反射度が高いが,骨の裏に隠れた部分の観察は困難という欠点があった.また超音波は空気中で散乱するので,空気を含んだ肺や腸の観察には難点があった.しかし患者にとって無痛性で,レントゲンのような被爆がないという安全性の面で大きな長所があった.

 超音波検査が最初に応用されたのは胆石の診断であった.それまで胆石の証明には造影剤を飲むか,血管内に造影剤を注射してレントゲン写真をとる胆嚢造影法が用いられていた.超音波検査は胆嚢造影法よりもはるかに副作用は少なく診断の精度も高かった.

 さらに改良が加えられて精度が増し,肝臓,膵臓,腎臓,婦人科の癌の診断に応用できるようになった.また器機が持ち運び可能なことから,ベッドサイドや外来で気軽に行うことができ,緊急時にもすぐに対応できる利点が大きい.

 超音波検査はX線のような被曝がないことから産婦人科において胎児の観察に大きな貢献をした.産婦人科では胎児の大きさ,胎児や胎盤の位置の異常,胎児の心拍のモニター,出産前の男女の性別判定が超音波検査で可能になった.さらに超音波検査は進歩し,解像度が増し,臓器の形状を正確に映し出せるようになった.腸の観察には適さないと前記したが,現在では腸の炎症の程度を観察することができ,特に虫垂炎の診断に応用されている.

 さらに超音波検査は心臓の検査にも大きな貢献をもたらした.リアルタイムで心臓の動きを動画として観察できるようになり,心臓超音波検査は循環器内科にとって必須の検査法となった。医師は様々な角度から心臓を観察し、心筋の厚さや大きさなどの形態の異常、心臓の収縮の状態からポンプとしての心機能を検査できるようになった。

 また超音波にはドプラー効果という特性がある.ドプラー効果とは近づいてくる救急車のサイレンの音と遠ざかるサイレンの音が違って聞こえるように,対象物のスピードによって跳ね返る周波数が違って測定される現象である.1842 年にオーストリアの物理学者 C. J. ドプラーによって発見されたドプラー効果が超音波検査に応用されたのである.

 身体の血液には赤血球などの有形成分が流れており、血流の方向や速度を超音波のドプラー効果で測定することができるようになった.心臓内部の血流の方向と速度を測定し、血液の逆流の程度から心臓の弁が正しく機能しているかどうかを測定できた.さらに血流の方向や速度をカラー画像で表示することができるカラードプラー法も開発された。

 かつての心臓専門医の診療には,聴診器,心電図が必須であったが,現在では心エコーが必須の医療器機となった.心臓の動きによって心筋梗塞患者の心臓のどの部分が傷害されているかが分かるようになり,心筋梗塞の診断や部位を知ることが可能になった.

 さらに最近では血管内超音波法が開発されている.これは心臓カテーテルの先端に超音波プローブをつけ,冠動脈造影と同じ方法で冠動脈にカテーテルを挿入し,狭窄部,血栓などの血管壁の病変や血流量を測定する方法である.冠動脈造影法では血管の内腔しか検出できないが,血管内超音波法では動脈壁全体の病変を調べることができるようになった.

 超音波検査装置は,昭和50年ごろから日本で急速に普及し,電子工業を得意とする日本の超音波検査装置はアメリカで60%,ヨーロッパで70%,アジアでほぼ100%のシェアを誇っている.

 超音波検査やCT検査は医学にとって革命的な進歩をもたらした。もちろん平成の時代になってMRIが普及してきたが超音波検査やCT検査ほどのインパクトは少ない.MRIは電磁波によって身体の内部を画像化する検査で,超音波やCTでとらえられなかった病変がMRIによりわかるようになった.しかし診療上の有用性を考えた場合,超音波検査やCT検査は欠かせない検査であるがMRIは必須ではない.MRIは値段が高く撮影時間が長く,脊椎の病変には便利であるが,コストパフォーマンスを考えれば超音波やCT検査のほうが有用性は高いと考えられる.それだけ超音波検査やCT検査の登場は医学上画期的出来事であった.

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