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警備サービス最大手のセコム(本社・東京都渋谷区)は事業の多角化の一環として展開している医療事業を加速させている。事業の中核を担っているのは、セ コムが全額出資しているセコム医療システムだ。会長の小幡文雄氏はセコムの元常務。事業内容は訪問介護、健康食品、会員制健康管理、電子カルテなどと多岐 にわたっている。
そもそもセコムが医療事業に手を出したのは1991年、セコムファーマシーが薬剤提供サービスと訪問看護サービスによる在宅医療サービスをスタートしたことに始まる。
セコムグループの2009年3月期の連結売上高は6784億円と前期比0・6%減となったが、「メディカルサービス事業」は523億円と前期比2・9%増 となっている。セコムの原口兼正社長は雑誌のインタビューの中で「病院などの収入も含めると、医療収入は約900億円」と話している。売上高の6割以上を 占める「セキュリティサービス事業」以外では、メディカルサービス事業は防災サービス事業に次いで大きな柱に育ってきている。
しょせんは警備事業拡大の道具
警備会社と医療事業―― 一見関連がないように思えるが、在宅看護を必要とする家庭は高齢者の1人住まいが多いため、セキュリティサービスを必要とする見込み客にもなるのだ。その ため、セコムの大黒柱であるセキュリティサービス事業の比重は、企業から家庭に移行してきた。
このような経営姿勢に対して、兜町関係者の目は冷ややかだ。「医療などほかの事業は大黒柱をさらに太く強くするための道具であり肥やしであって、言ってみれば『すべての道は警備につながる』というのがセコムのやり方。医療事業もその意味では『ワンノブゼム』でしかない」
この夏、セコムの医療事業に関して新たな動きがあった。セコム医療システムが6月、子会社のセコムフォートウエストを通じ、神戸市内に介護付き有料老人 ホーム「コンフォートヒルズ六甲」を開設した。この施設の特徴は、総合病院を併設している点。セコムグループが運営している高齢者向け施設としては11カ 所目だが、病院との一体運営はここが初めて。併設している神戸海星病院は、セコムが「提携病院」と呼ぶ病院の一つだ。
開業記念の記者会見で、セコムの木村昌平会長は「高齢化社会ではこのビジネス(医療事業)が一番重要になる。我が社は医療を中核事業の一つに位置付けている」と強調、介護と医療を一体化した戦略を明確に打ち出した。
提携病院は現在、北海道札幌市の手稲渓仁会病院、東京都世田谷区の久我山病院、千葉県松戸市の新東京病院、大阪市の友愛会病院など、大都市を中心に全国に16カ所ある。
病院関係者は次のように話す。
「提携病院はもともと経営難のところが多かった。院長が高齢な上、後継者がいなかったり、いても経営能力がなかったりしていた。そんな病院にセコムは『当 社と提携すれば経営支援をするし、医師やスタッフも送り込みます』と声を掛けた。声を掛けられた病院の経営者も、病院の維持、自分の老後の生活、医師免許 や経済力のない子供の今後を考えると、提携話に乗ってしまう」
1948年施行の医療法は、それ以前に企業が開設した病院は例外として、「営利を 目的とする者」の医療機関経営を認めていない。なぜ、企業の参入を認めないのか。その理由として、厚生労働省は①利益追求の結果、適切な治療が行われない 恐れがある②利益が出ないと企業は撤退し、地域医療に影響が出る③医療費の高騰を招く――を挙げる。
セコムの創業者である飯田亮氏(取締役最高 顧問)は小泉政権、その後の安倍政権で政府の「行政減量・効率化有識者会議」座長、「総合規制改革会議」委員などを務めたが、小泉政権下の2004年、規 制改革の一つとして、「病院特区」の認定を受けた地域で株式会社病院・診療所の開設が認められるようになった。しかし、健康保険が使えない自由診療でかつ 高度医療に限るというハードルが高いため、申請は少なかった。
国会で問題視された病院経営
それ故、セコムは「提携病院」 という方法で実質的な病院経営を行おうとしている。ところが、セコムの医療事業が国会で問題視された。07年6月の参議院財政金融委員会で、大門実紀史・ 参議院議員(共産党)がセコムの病院経営について取り上げ、土地・建物の賃貸や人材派遣によって経営権を実質的に掌握している実態を明らかにした。千葉県 船橋市の倉本記念病院(現セコメディック病院)が経営危機に陥った1998年、セコムが土地と建物を買収し、医療法人に貸し付けるリースバック方式で賃貸 料を取っていたという。これに対して大門参院議員は、医療法人による剰余金の配当を禁止している医療法54条に違反していると指摘。また、セコムが理事な どの役員を病院に派遣していることについて、実質的に経営権を握っていることになると、違法性をただした。
セコメディック病院という名称が付い た経緯についても明らかになった。大門議員によると、セコムは当初、「セコム病院」にしたかったが、厚労省が「医療機関の非営利性の確認と名称について」 という通知を出したため、現在の名称になったという。大門議員は、セコムが実質的に経営権を握っていなければ、病院の名称を変えられるわけがないと指摘。 一般企業が医療分野へ進出することによる営利重視の経営や医療格差の拡大に対して懸念を示した。
提携病院の経営実態について、セコムに取材を申し入れたが、「あくまでも提携しているのであって、病院経営については話せる立場にない」という返事だった。
結局、既成事実の積み重ねで、法律上禁止されている一般企業の病院経営が横行しているのが現状だ。ザル法のおかげで医療の質の低下を招いたら、いったい誰が責任を取るのだろうか。(集中ニュースより)
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