公共事業には「利権あさり」が付き物。中でも国家レベルの大型の工事となると有象無象の人物が暗躍するというのが相場だ。その代表とも言えるのが政治家である。
東海旅客鉄道(JR東海)が2025年の開業を目指しているリニア中央新幹線のルートをめぐって、沿線候補に名前の挙がっている関係自治体による綱引きが、日に日に激しさを増している。全国的な知名度を持つ政治家の名前も浮上してきている。
JR東海は10月13日、リニア中央新幹線について、東京─大阪間で想定されている三つのルートの所要時間や工事費などを比較した試算(名古屋駅経由で品 川駅と新大阪駅を結ぶと仮定しての試算)を発表した。「南アルプスルート」(東京─甲府─飯田─中津川─名古屋─大阪、路線距離438㌔㍍、所要時間67 分、工事費8兆4400億円)、「伊那谷ルート」(東京─甲府─伊那谷─飯田─中津川─名古屋、498㌔㍍、74分、9兆900億円)、「木曽谷ルート」 (東京─甲府─木曽福島─中津川─名古屋、486㌔㍍、73分、8兆9800億円)である。
周知のようにリニア新幹線計画についてはリニアモーターカーの実用化のため山梨県秋山村─境川村間42㌔㍍区間が実験線ルートに指定された。これは1995年に宮崎県から山梨県へ移った実験線だ。
この実験線の誘致をめぐっては、当時、与野党の政治家が暗躍して巨額の金が動いたといわれる。今なお伝えられている噂では、「ゼネコンの首領」といわれた 地元選出の金丸信衆議院議員一族が事前に関連の土地を買い占め、一説には「400億円のボロ儲けをした」という。後に首相となった竹下登、橋本龍太郎、小 渕恵三、森喜朗、安倍晋三の各衆議院議員をはじめ、運輸族大物の三塚博、梶山静六、武部勤、綿貫民輔、加藤紘一などそうそうたる政治家が「甘い蜜に群がっ た」という。まさに「土建国家、ここに極まれり」である。石原慎太郎東京都知事も衆院議員時代、この新幹線計画に深くかかわり、一時期は主導権を握ってい たという話もある。
しかし、ある労組関係者は「自民党が政権から降ろされたことで、この事業に口を挟む力はなくなった。一方の民主党の国会議員は、利権は欲しいが及び腰。その点、各自治体の役員、県・市議の方が精力的だ。金丸流の国会議員の利権あさりの時代は終わっている」と話す。
ところで、JR東海が想定している南アルプスルートの所要時間は、曽谷ルートと伊那谷ルートに比べて6~7分短く、工事費も5400億円から6500億円 も少なくて済む。維持運営費や輸送需要量についても比較試算されたが、いずれも南アルプスルートの優位性が明らかになっており、3ルートの中では南アルプ スルートに軍配が上がる。
こう見てくると、南アルプスルートに決まりそうな条件がそろっているようにも思えるが、事はそう簡単ではなさそうだ。 鉄道業界誌の関係者は「ルートに挙がっている関係自治体は、さまざまな手を打って地元に呼び寄せたいと必死。それに南アルプスルートにJR東海が決めて も、地元が受け入れるかどうか分からない。本格的な選定作業はこれからなので、及び腰だった国会議員が首を突っ込んでくることも考えられる」とくぎを刺 す。再び「甘い蜜に群がる」ような醜態が繰り広げられるのだろうか。
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日医会長選の前哨戦で「原中ドミノ」
149票対123票──。4月1日の日本医師会(日医)会長選挙の前哨戦として注目された2月14日の大阪府医師会会長選。日医元常任理事の伯井俊明氏 が再選を目指した現職会長の酒井國男氏を26票差で破って初当選した。2年前の選挙でも両者は争い、「疑惑の1票差」で伯井氏が一敗地にまみれている。因 縁の再戦だったが、予想以上の大差がついた。
2 人は高校時代の同級生で、共に植松治雄元日医会長の秘蔵っ子として仲も良かった。植松氏が日医会長に当選した後、酒井氏と伯井氏が大阪府医師会長、副会長 にそれぞれ就任したこともある。しかし、植松氏が郵政民営化への態度を保留したことに小泉純一郎首相(当時)が激怒。4年前の日医会長選で自民党厚生労働 族が唐澤祥人現会長を押し込み、植松氏の再選を阻止した。日医トップの座を1期2年で追われた植松氏にあくまで付き従った伯井氏に対し、酒井氏は唐澤氏側 に立ち、両者の間に溝ができた。
今回の選挙では、2年前の僅差での敗北が伯井氏陣営の結束引き締めにつながったと見られる。だが、死活的に重要だったのは政府・民主党との関係の濃淡だった。
自民党とのチャネルしか持たない唐沢日医執行部は政府・民主党から歯牙にもかけられなかった。象徴的だったのが診療報酬改定。民主党支持への転換を早々に打ち出した歯科や病院の厚遇に比べ、診療所は明らかに差をつけられた結果となった。
酒井氏は「仙谷由人・国家戦略相に電話し、話ができた」と選挙中に喧伝したが、唐澤会長を支えた立場だったため苦境を招いた。一方、伯井氏は茨城県医師会 長の原中勝征氏と親しい間柄で知られる。原中氏といえば、自民党支持一辺倒の唐澤執行部に反旗を翻して民主党を支持する「茨城の乱」を起こした当の本人。 民主党と真の意味で「話ができる」ことが評価され、軍配が上がった。
大阪の結果を受け、日医会長選にはさらに注目が集まっている。再選を目指す唐澤氏のほか、昨年10月に原中氏が対抗馬として立候補を表明。さらに京都府医師会長の森洋一氏も2月1日に参戦した。
大阪府医師会長選では当選した伯井氏は原中氏支持を表明し、敗れた酒井氏は唐澤氏を見限り、京都府医師会長の森氏への同調を打ち出していた。伯井氏の当選は間違いなく原中氏への追い風だ。
関西地区2府4県で構成する近畿医師会連合会(近医連)では森氏支持を決めたばかりだった。その直後、2月4日に行われた滋賀県医師会会長選は森氏支持の細田光蔵氏と、原中氏支持の笠原吉孝氏という副会長同士の争い。20票対11票の大差で笠原氏が圧勝を収めた。
続いて7日に行われた兵庫県医師会長選でも伯井氏の盟友で原中氏支持を表明している川島龍一・神戸市医師会長が山中弘光・県医師会副会長を103票対73票で破っている。
近畿地区では親原中の県医師会が雪崩の如く誕生している。森氏支持を打ち出した近医連では「3月31日までは現職の任期で森氏を支持する」と語っている。だが、選挙結果を無視して森氏支援に固執すれば、批判が噴出し騒動は免れない。
関西の地殻変動で日医会長選の風向きは一気に原中氏有利にふれ始めた。だが、最大の票田である関東甲信越ブロックの現況は予断を許さない。埼玉県医師会会 長の吉原忠男氏は原中氏をかつぐ一人だが、様子見のところが多く、必ずしも原中氏圧勝の見込みは立たないとの声もある。
「大阪で酒井氏が敗れれば、日医会長選への森氏の出馬はない」
そんなうがった見方もあった。陣営には「唐澤氏と組んで原中氏に対抗する」とうそぶく者もいる。具体的に言えば、①執行部と結託し、唐澤氏が立候補を取り やめ、森氏を統一候補とする②唐澤氏の代わりに竹嶋康弘・日医副会長が名乗りを上げ、森氏と連携して打倒原中氏の統一候補となる──などの案取りざたされ ている。
投開票の当日まで、各陣営による水面下での駆け引きが続くが、政府・民主党と昵懇である原中氏の優位は動きそうもない。
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医療事故は裁判で勝っても負けても遺恨は消えません。そのため医療側の過失とは関係なしに、患者や家族を 救済する無過失補償制度を導入すべきと考えていました。たとえば出産で脳性麻痺となった場合、これまでは裁判で医師の過失が争われましたが、平成21年1 月1日から、通常の出産で脳性麻痺となった場合は、産科医療補償責任保険から約3000万円が支払われることになりました。この制度では一時金として 600万円、20歳になるまで毎月10万円、計3000万円が支払われます。
この制度の問題点は、運営が営利目的の民間保険会社であることです。全国の分娩件数は年間約100 万件で、出産時の脳性麻痺は年間500から800件とされています。掛け金は1件につき3万円ですから、300億円の保険料が民間保険会社に入り、支出は 年間500件で150億円、年間800件で240億円となります。しかもこの数値は脳性麻痺の乳児が20歳になるまで全員が生存した場合の金額です。つま り巨大な余剰金をどうするかの議論は曖昧のまま、民間保険会社の利益になる可能性があるのです。また救済制度といいながら、脳性麻痺になりやすい未熟児、 軽症の脳性麻痺、出生時の感染症、先天性脳性麻痺を対象から排除していることに疑問があります。
産科医療補償制度は警察への通知義務はなく、保険料3万円は医療保険の出産一時金に上乗せするので、妊婦 にとって実質的な負担増はありません。この産科医療補償制度は公的なものですから、財務内容を公開させ、余剰金を還元させるべきです。そして無過失補償制 度を医療事故全体に広めてほしいと願っていました。
しかしこの出産事故で無過失補償を受けたのは、昨年の10月まででたった5件だけでした。10か月で5件の認定、では300億円の保険料はどこへいった のでしょうか。必要な制度をつくるのは善いことですが。事務経費にほどんどが使われる制度など何の意味もありません。私たちの弱みにつけ込んだ公的強奪事 件と言われて反論できるのだろうか。このことはニュースにもならないので知っているひとはほとんどいないであろう。
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私たちはたとえ元気でも、年齢を重ねれば、いずれ病気になり介護を受けます。若者は老人になり、震災や事故で障害者になる可能性があります。このような運命を背負った私たちにとって、生命の必要経費ともいうべき医療介護の惨状をこのまま放置していてよいのでしょうか。
救急患者のたらい回し事件、医療事故や医療訴訟の多発、勤務医不足と過重労働、相次ぐ産科や小児科の撤退、と病院の閉鎖と入院患者の強制退院による医療 難民の出現。このような悲惨な現実が次々に報道され、多くの人たちは日本の医療の深刻さをある程度理解していると思います。また医療にたずさわる者は、崩 壊しつつある医療を直接肌で感じているはずです。
この危機的状況から脱却するには、原因分析のみならず、分析に基づいた改善を急ぐことです。口先だけの評論家ではなく、実態調査などの時間稼ぎはやめ、改善に向けて目を覚まし、行動しなければなりません。
両親や祖父母のため、先輩や後輩のため、次世代の若者や子供のため、「医療崩壊から医療新生へ、介護危機から安心できる老後へ」、この道しるべをつく り、「不安のない老後、夢のある社会」をつくらなければ、私たちの生活は下からさらに下へ転がり、そして奈落へと沈んでしまいます。
医療に関する論評のなかには、世間や政府に媚びた見当違いの論文、医療崩壊を認めず医療の効率化を唱える論文、医療や介護の古いイメージから脱しない論 文などが混在しています。しかしこのような論文は紙資源の無駄のみならず、改善への道を迷わせることになります。またマスコミは表面的な事例を列挙し、感 情に訴えてきますが、何ら解決策を示していません。行政に任せても、小手先だけの対策では傷を広げるだけです。今、必要なことは医療介護の現場の悲鳴を聞 き、福祉行政の欠陥を指摘し、危機的現状に歯止めをかけ、新たな仕組みをつくり、平等であるべき医療、尊厳ある介護を守ることです。
現在の医療は10年前、5年前、1年前とはまったく別物です。それは「平均寿命がこの40年間で10歳以上延びた」という世界に類をみない急速な高齢 化、それを可能にした医療の進歩、それに対応できない医師不足、必要な財源を出そうとしない国や地方の財政事情。そして世界的な経済危機、さらには自民党 から民主党への政権交代。このように医療や介護を取り巻く環境が刻々と変化しているからです。
この数年間、年金問題は迷走を深め、1億総中流から格差社会へと国民の意識が変わり、医療や介護は壊滅的な状態になりました。そして私たちはそれらを導 いた自民党政権に大きな失望を抱き、平成21年の夏の総選挙で民主党に歴史的勝利を与えました。この総選挙で各政党はバラ色のマニフェストを掲げ、マスコ ミはこの総選挙をマニフェスト選挙と位置づけました。しかし私たちが民主党を選んだのは、マニフェストの行間に書かれた「政官の利権まみれの政治から市民 中心の政治」という理念に賛同したからです。民主党の具体的政策の輪郭はまだ見えませんが、マニフェストは単なる優先課題として、国民にへつらうことな く、誤摩化すことなく、国民のための政治を断行してほしいのです。
さいわいなことに、民主党政府には真面目に政策に取り組む姿勢がみられます。医療や介護についての具体的な内容はまだですが、肝心なことは医療や介護を 従来の「社会保障」という生ぬるい言葉で捉えるのではなく、「国民の生命を守る安全保障」と認識を改め、医長や介護を含む福祉政策を大きく転換し、国民の 切望に答えてほしいのです。本格的な超高齢化社会を目前にひかえ、医療介護をこのまま放置すれば、私たち全員が不幸になるだけでなく、私たちの命さえ危ぶ まれることになるからです。民主党は「医療介護のあるべき姿」を明確にして、泥をかぶってでも日本の将来を明るくしてほしいのです。
子供が夢をもち、若者の瞳が輝き、長生きを喜びとする社会にするには、安心して暮らせる将来保障が前提になります。もはや過去の政治責任を追及している 余裕はありません。むしろこれまでの政治の過ちを検証し、過ちを教訓として改善の道を急ぐべきです。そして患者が求めている医療、高齢者が必要とする介 護、私たちが求める福祉、これらを何としても実現しなければなりません。
私たちは、私たちの1票で、民主党に日本の未来を託しました。任せた以上、民主党の政策を見守ると同時に、私たちも古い考えを捨て、日本再生に参加する 気概が必要です。日本の社会を崩壊させ、自殺大国を導いたのは天災ではなく回復可能な人災といえます。病魔におかされた医療政策からの脱却、心ない介護政 策からの解放、弱者いじめの社会構造の打破。これら人災にメスを入れ、黄昏のなかで沈没寸前の日本を、私たち1人ひとりの力で立て直すことが必要です。
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