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2010.02.14 03:28 |  その他(医療関連)  |  スーさん  | 推薦数 : 0

富士薬品

富士薬品がはまった不動産投資の底なし沼

 置き薬――配置薬事業といえば、富士薬品。業界首位で知られる企業だ。ここ10年ほどはドラッグストア経営にも力を入れている。関東地区を中心に「ド ラッグセイムス」を多店舗展開するほか、地方のドラッグチェーンの買収やグループ化にも積極的に乗り出している。今やマツモトキヨシ、イオングループに次 ぐ売り上げ2500億円の大手チェーンにまで上り詰めた。

  グループには20033月、「スマイルドラッグ」が参加。046月には「ドラッグユタカ」の看板を掲げる「ユタカファーマシー」と資本・業務提携、 091月には「パワーズドラッグ」を吸収合併し、勢力を拡大している。だが、順風満帆とはいえない側面もある。096月にはユタカファーマシーが富士 薬品を提訴、内情は決して一枚岩とはいえない。大手ドラッグチェーンの内部で何が起きているのだろうか。

 そもそもユタカと富士薬品の04年の提 携の内容は富士がユタカの34%の株式を保有する代わりに株式上場を支援するというものだった。にもかかわらず、富士薬品が必要な指導を行わなかったとい うのが提訴の理由。ユタカは提携を解消すべく株の買い戻しと損害賠償を求めている。グループとの決裂の意思表明だ。

 ドラッグストアは米国発の比 較的新しい業態。国内での歴史は20年ほどだ。ノウハウの蓄積はまだ十分とはいえない。多くのチェーンが食料品・日用品のディスカウント販売で集客し、粗 利益率3割ともいわれる医薬品販売で稼ぐビジネスモデルに頼らざるを得ない。どのグループ内にも構成企業の不満ははびこっており、離合集散は珍しくはな い。

 富士薬品にしても個別の経営指導に特段の技術はないのが実情。ユタカの離反もそうした流動状態にある業界の事例の一つといえる。

まともな企業なら二の足踏む取引

 富士薬品が耳目を集めているのは、本業周辺のトピックばかりではない。過大な不動産投資を行い、トラブルが頻発しているのだ。

  076月、安倍晋三政権下で持ち上がった「朝鮮総連本部ビル売却問題」では、総連の土地建物の買い主として名前が挙がった。詐欺容疑で逮捕・起訴された のは元公安調査庁長官・緒方重威、元不動産会社社長・満井忠男両被告らを含む3人。富士薬品の買い取り宣言を信じて話を進めたところ、事件化を怖れた同社 が前言を翻し、無関係の立場を取ったことから、逮捕まで至った。実際は富士薬品側は乗り気で、成立寸前まで話は進んでいたという。

 東京・六本木 にあった通称「TSKビル」にも富士薬品は関与している。同ビルは暴力団・東声会(現東亜会)の会長であり、実業家でもあった町井久之(本名・鄭建永)氏 がかつて保有していた。町井氏の死後、権利関係が複雑に入り交じり(一部登記もしていなかった部分もある)、利権屋や地上げ屋、事件屋の類が入り乱れてい た。怪文書が乱舞し、いくつもの訴訟も起こされ、暴力沙汰まで起こっている。まさに魑魅魍魎の巣窟だった。後に外資系ファンドが買い取り、083月末に は完全に解体されて更地になった。だが、まだトラブルの火種はくすぶっている。

 まともな企業なら二の足を踏むこの物件に、富士薬品は買収の意欲 を示し、300億円ともいわれる資金を注ぎ込んだ。その金は地上げ資金に投入され、富士薬品が一部の権利を主張することになり、0710月に所有権移転 禁止を求める仮処分を東京地裁に申請した。その際、富士薬品は代理人の辻恵弁護士(現民主党衆議院議員)とも衝突している。

 申請に当たって、富士薬品は辻氏に供託金や弁護士費用として計6億円を預けた。このうち52620万円を仮処分の保証金として供託。地裁は仮処分を認めたものの、東京高裁は086月、決定を取り消す。申し立ては却下され、確定した。

 0910月、富士薬品は供託金の返還を求めて辻氏を東京地裁に提訴。供託金の返還請求権を辻氏が暴力団に譲渡し、故意に回収を困難にしたと主張している。供託金が返還されれば、富士薬品に戻す合意はあった。

  報道によれば、辻氏は詳細に反論。ビルを一時所有していた業者が「仮処分で損害が生じた」として賠償請求訴訟を起こしたため、供託金のうち戻せる金額が確 定できず、請求権を行使できない状態だという。東京法務局に提出された「譲渡証書」には辻氏のものではない印鑑が使われていた。同年9月、辻氏は暴力団関 係者を警視庁に有印私文書偽造・同行使容疑で告訴し、受理されている。

 08年には大阪市に本店を構える地方銀行・関西アーバン銀行(以下アーバ ン)との間に紛争が持ち上がる。アーバンが主導した関西の大規模老人ホームの「飛ばし」に富士薬品は加担。25階建て、567戸という大型老人ホームを 115億円弱の価値があるとして、その受け皿となる特定目的会社に富士薬品が30億円を出資して、保有ないしは転売して利ざやを稼ぐつもりだった。

 だが、これもまた札付きの物件。間にアンダーグラウンド人脈が何人も介在していた。富士薬品が出資し30億円の相当部分もいつの間にかどこかへ消えてしまう。09年に再鑑定してみると物件価値がわずか38億円しかない不良案件だった。

 これに激した富士薬品は損害賠償を求めて、案件を主導したアーバンと開発主体の不動産会社・ゼクスを東京地裁に訴えた。ゼクス側もこれに対抗して富士薬品を訴え、泥仕合と化している。

  富士薬品が絡んだいざこざはまだある。東京・新橋の不動産の地上げに加わり、096月には大手のノンバンクから差し押さえを受けた。抵当権を外さないま まの取得だったことが引き金になった。確かに「危ない物件ほどうまみがある」というのは不動産業界の常識。弊誌では一連の不動産投資について富士薬品広報 部に質問状を送り取材を申し込んだが、期限までに回答は返ってこなかった。

不動産投資は高柳貞夫前会長が唱道

 不動産にま つわるごたごたは混迷に陥りやすく、長期化すれば企業イメージの低下はまぬがれない。まして富士薬品は大手ドラッグストアグループの中核企業。グループを まとめ、率いていかなければならない立場にある。本業以外でダーティーなビジネスに手を染めているとなれば、グループ全体の信用は地に墜ちる。それを承知 の上で訴訟にまい進しているのは、同社の不動産事業が行き詰まっている証左ではないのか。

 一連の不動産投資を指揮していた創業者の高柳貞夫氏は093月に会長から名誉顧問に就任。経営の第一線から退いている。貞夫氏は不動産投資だけでなく、大がかりな仕手戦にもしばしば参加していたという。

 貞夫氏の部下で不動産投資の実務を仕切っていた杉浦理介専務は092月に辞任。6月に自殺を遂げている。不動産投資の全容解明にも影響が及ぶ可能性がある。

 現在のトップは2代目の高柳昌幸氏。数百億円にも上るといわれる不良債権の処理に汲々としている。訴訟沙汰が相次いでいるのはその余波と見る向きもある。

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