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2010.01.13 22:40 |  恋愛 / 結婚  |  スーさん  | 推薦数 : 0

公約と、ぶって姫

公約と、ぶって姫

日本の将来を決めるのは国民であり、その国民の選択を求めるのが選挙である。このような建前民主主義が浸透し、今回の選挙は美技麗句で飾られた公約が新聞紙上を飾った。公約とは国民に対する約束であるが、その約束を守る、守らないは別である。国民は書かれた公約よりも、その公約を掲げた政党の信用度をみていたのである。詐欺師ほど言葉巧みであり、真面目な人ほど言葉少ないことを、国民は感じていたのである。
 ところで日本の離婚率は3割である。神の前で伴侶を幸せにすると誓いながら、結婚した3割は、伴侶だけでなく、神にもウソをつき離婚している。桝添厚労大臣は次期総理との噂があるが、桝添厚労大臣でさえフランス人、片山さつき、現在の妻と3回の結婚歴がある。これをどう評価するかは別であるが、少なくても3度の結婚歴は女性を見る目がなかったからであろう。つまり彼の評価がどれほど高くても、女性を見る目のない者に、国政を任せられるかどうかである。
 夫婦でさえ簡単に離婚する時代に、話したことも、会ったこともない立候者の約束をどのように判断して、投票すすればよいのか。不倫、賭けゴルフの「さくらパパ」の横峯良郎参議院議員。岡山選挙区で「姫の虎退治」で当選した民主党の姫井由美子参院議員の「ぶって姫不倫スキャンダル」。このような人物を投票前に知ることは不可能であり、当選させた選挙民はどのような気持ちでいるのだろうか。この日本の将来を国民の投票によって決めるという間接民主主義は、個々人の中身は見えないままの選択である。今回の選挙で民主党は勝利したが、ぶって姫同様の議員が含まれていないことを祈るだけである。

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2010.01.13 18:26 |  医療事故  |  スーさん  | 推薦数 : 0

銚子市立総合病院閉鎖

銚子市立総合病院閉鎖
 平成20年9月30日、千葉県銚子市民の健康を守ってきた銚子市立総合病院(393床)が、財政難と医師不足から58年の歴史に幕をとじました。病院に 入院していた患者は他の病院に転院を強いられ、外来患者は宛先名のない紹介状を渡され、遠くの病院へ通うことになりました。年間3万人が受診していた病院 を銚子市は廃止したのです。銚子市立総合病院の休止は、同年7月7日、岡野俊昭市長がその方針を発表し、8月22日の市議会で採決の結果、病院存続が 12、反対が13、わずか1票の差で閉院が決定したのです。


1.公約違反
 元中学校校長の岡野俊昭市長は「市立総合病院を必ず残す」と公約して、平成18年の市長選挙で前市長を破り初当選。岡野俊昭氏が13235票、前市長の 野平匡邦氏が12756票、わずかの差の勝利でした。岡野市長が病院存続を公約にしなかったら、当選は困難だったことでしょう。公約違反は市長の市民に対 する裏切りで、政治家にとって公約違反は最大の罪です。岡野市長は病院閉鎖を決めましたが、銚子市では病院存続を求める4万6000人の署名が集められ、 12月21日、岡野市長のリコール(解職請求)に必要な有権者の3分の1を上回る2万5639人の署名が集まり、住民投票の結果市長は解任となりました。


2.市の財政危機
 この数年、銚子市立総合病院は経営難におちいり、累積赤字は18億4000万円に達していました。医師不足から患者が減り、患者減少が収益減となり、経 営がさらに悪化する悪循環に陥ったのです。岡野市長は「市の一般会計から病院を救済する財源がなくなった」と述べましたが、自治体の財政は不明な点が多い のです。銚子市は平成20年に約70億円の借金で市立銚子高校を開校、平成16年には大学進学者が入学定員を下回る時代に、90億円以上を投入して千葉科 学大学を開校させ、さらに220億円をかけて銚子大橋の架け替え工事を行い、このことが銚子市の財政を悪化させ、病院への支援が限界になったのです。市民 にとって最も大切な医療を二の次、三の次にしたのです。岡野市長は夕張市を例に挙げ、「銚子市を救うのか、病院を救うのか」の選択を迫りました。しかし銚 子市の負債を夕張市の膨大な負債と比較することそのものが間違いで、「お金がないから病院を救済できないのではなく、お金はあるが病院には使いたくない」 が本音でした。病院の廃止により看護師や医師など200人以上の退職金、清算業務が発生し、新たに60億円が必要になりました。この金額は病院の累積赤字 の3倍以上になります。


2.医師不足の原因
 銚子市立総合病院は日大医学部の関連病院で、常勤医35人中28人が日大医学部の出身でした。平成16年に新臨床研修制度が導入され、人手不足となった 日大医学部が医師を引き揚げ、このことが医師不足の原因と市は説明しました。しかし日大医学部の片山医学部長は「引き揚げたのではなく、銚子に行きたい医 師が見つからなかった。将来の展望がないと評判が立てば、誰も希望しなくなる。市の責任こそが問われるべき」と反論しました。銚子市立総合病院の佐藤博信 院長が3月の市議会で「市民の健康を守れない病院長は無能だ!」と批判を受け退職、さらに医師の給料を減らしたのです。医師の待遇改善に否定的な病院に医 師が集まるはずはありません。市長と議会は病院を大切にする意識が欠けていました。銚子市は医師給料を引き下げた後、32人いた医師が12人に減り、あわ てて給料を引き上げましたが遅すぎました。


3.自治体病院の給料と意識
 自治体病院は民間病院に比べ医師の給料は安く、看護師や事務職員の給料は高くなっています。また「銚子市はヤミ給与発祥の都市」といわれるほど職員の給 料は高かったのです。平成18年の銚子市立総合病院の看護師の年収は614万円(平均41.9歳)、医療技術職678万円(平均43.1歳)でした。看護 師や事務職員の給料は民間病院より3割程度高かったのです。病院の支出に対する人件費の割合は、全国平均は55.5%ですが、銚子市立総合病院は 78.2% と飛び抜けていました。病院職員の給料は、市職員の給料と連動しているので、病院職員の給料は市の職員全体の給料に関わることになります。市職員の給料は 市議会の承諾が必要なので、市議会は労働組合と対立するよりは、病院をつぶしたほうが簡単と考えたのではないでしょうか。自治体病院の事務職員は数年で本 庁に戻るため、コスト意識、経営改善意識が低いのです。納入する薬剤や医療器具を値切ってもご褒美がないので、言い値で買ったほうが楽なのです。書類さえ 揃っていれば公務員としての責任は問われません。一般に自治体病院の薬剤や材料費は民間病院より10%高く、建設費は1.5倍高いとされています。銚子市 長も病院閉鎖の原因として公務員体質を述べました。しかし市長は、市のトップとして改善策を実行すべきなのに、そのトップが公務員体質を述べたというの は、自らの職務怠慢を公表したに等しいことです。


4.医療からの逃げす自治体体質
 各地方自治体はそれぞれ自治体病院をもっていますが、その90%が赤字です。病院の赤字は各自治体の補助金で穴埋めとなるので、自治体の財政を悪化させ ることになります。銚子市に隣接した旭市にはベッド数956床の旭中央病院があります。銚子市は市立総合病院が閉院となっても、銚子市民は旭中央病院へ行 けばよいと考えたのでしょう。このように自治体にとってお荷物である病院を閉院し、隣の市町村の病院にお荷物を背負わせたほうが財政的に楽になるのです。 隣接する市町村が病院を閉院にする前に、自分たちの病院を閉鎖すれば、財政的に勝ち組になります。自治体の「病院から逃げるが勝ち」の現象で、この1年間 だけで26の自治体病院が閉院になっています。

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2010.01.13 18:21 |  医療事故  |  スーさん  | 推薦数 : 7

都立墨東病院妊婦死亡事件

都立墨東病院妊婦死亡事件


 平成20年10月22日、東京都江東区に住む妊婦(36)が7つの病院から受け入れを断られ、出産後に死亡していたことが報道されました。この妊婦は 10月4日の午後6時45分ごろに激しい頭痛、吐き気、下痢を訴え、かかりつけの「五の橋産婦人科(江東区)」に救急車で搬送されました。診察した医師は 緊急の対応が必要と考え、7時ごろ都立墨東病院に受け入れを要請、しかし都立墨東病院は「当直医が1人しかいないので、対応できない」と断ったのです。医 師は対応可能な病院を探しましたが、7つの病院に断られ、7時45分ごろ都立墨東病院に再び受け入れを要請。都立墨東病院の当直医は自宅にいる産婦人科部 長を呼び出し、対応となりました。8時18分、妊婦は都立墨東病院に到着。同9時30分ごろ帝王切開で赤ちゃんを出産、さらに30分後に脳出血の手術を行 いましたが、母親は3日後に死亡しました。医療が充実しているはずの東京都心で、このような痛ましい事件が起きたのです。


1. 総合周産期母子医療センターの医師不足
 都立墨東病院は「総合周産期母子医療センター」として東京都から指定を受けていました。周産期母子医療センターとは重症妊娠中毒症、切迫早産、胎児異常 などのハイリスクの妊婦と新生児の治療を24時間体制で行う高度な医療施設のことです。周産期母子医療センターの指定を受けているのは全国75病院で、ど のような重症の妊婦でも受け入れ可能なはずでした。しかしその指定を受けている都立墨東病院の産婦人科医は。常勤定数が9人ですが医師不足から4人しかお らず、妊婦が搬送された日の産婦人科医の当直医は1人だけ、しかも研修5年目の医師でした。産科医不足は都立墨東病院に限ったことではありません。全国の 周産期母子医療センターの休日当直の約半数が1人当直だったのです。


2. 受け入れ困難
 都立墨東病院の当直医はいったん受け入れを断りましが、専用端末で受け入れ可能な周産期母子医療センターを探し、妊婦がいる「五の橋産婦人科」に連絡していました。しかし救急隊が受け入れ可能な3病院に連絡をとると、3病院は受け入れを断ったのです。
 日赤医療センター(渋谷区)は救急患者の対応に追われ、順天堂大学病院(文京区)は2人の産科医が出産対応中であること、慈恵医大青戸病院(葛飾区)は 脳神経外科が不在、慶応大学病院(新宿区)は妊婦に下痢症状があったため、感染症に対応する個室が必要と判断、個室が満室だったので断りました。さらに日 大板橋病院(板橋区)、慈恵医大(港区)は新生児集中治療室が満床のため断ったのです。また翌日になり東大病院(文京区)も要請を断っていたことがわかり ました。妊産婦が頭痛を訴えた場合、産婦人科医は当然のこと、新生児に対応する小児科医、脳出血に対応する脳外科医が必要で、ベッドが満床であれば受け入 れは不可能です。このように救急医療の脆弱さが東京都心において露呈したのです。
 東京のような大都市部でも、1センター当たり年間約200件の妊婦の救急搬送を断っており、驚くことにあの聖路加国際病院は東京都から補助金をもらいな がら、救急搬送のすべてを断っていまいた。このように妊婦の搬送を断る理由の9割が、新生児集中治療室(NICU)の満床によるものでした。都内の NICUが満床に近いのは、1500グラム未満の極低出生体重児がこの10年間で約1.3倍に増加し、重い障害のため退院できない新生児が多いからです。 重症の新生児を扱うNICUは看護師1人当たり新生児3人までと配置が義務づけられ、小児科医不足、看護師不足から整備が遅れていたのです。
 いっぽう地方の周産期母子医療センターでは、すべての妊婦を受け入れています。地方の周産期母子医療センターは自分の病院が断れば、妊婦の行き場がない ため、無理にでも受け入れているのです。医療施設の多い都市では、最良の病院を選べる利点が欠点になり、医療施設の少ない地方都市では、最後の砦としてす べてを受け入れている。この違いをどのように評価すればよいのでしょうか。
3. 政治家の認識不足
 この事件に対し、舛添要一前厚労大臣は「週末に当直医が1人しかいない。これで重症の妊婦に対応する周産期医療センターといえるのか、東京都の医療体制 が悪い」と述べました。しかし石原慎太郎都知事は「医師不足が原因であり、東京に任せられないのではなく、国に任せられない。医師不足は国の責任」と反 論。そして舛添前厚労大臣はすぐに医師不足を認めました。つまり厚労大臣でさえ周産期母子医療センターの医師不足を知らなかったのです。さらに11月10 日、二階俊博前経済産業大臣は妊婦死亡事件に関し「医者のモラルの問題、忙しいだの、人が足りないだのというのは言い訳にすぎない」と発言しましたが、二 階前大臣は周産期母子医療センターの医師が年間1人100回当直していることを知っていたのでしょうか。さらに11月19日、医師不足についての見解を求 められた麻生太郎前総理は「医師は社会的常識がかなり欠落している人が多い」と発言しました。この発言は、医療現場で必死に働いている医師に対する最大の 侮辱です。国会議員と医師の犯罪率(逮捕率)を比較すれば、国会議員のほうが社会的常識に欠けている人が多いはずです。いずれにしても政権与党のトップが このような認識だったので、日本の医療はよくならないのです。


4. 救急医療システムの不備
 五の橋産婦人科の救急要請から都立墨東病院到着まで約1時間15分かかっており、「もう少し早ければ助かっていたかもしれない」とのコメントが報道の大 部分を占めていました。しかし東京都の統計では、救急要請から現場到着まで平均5分、救急車到着から病院到着まで平均45分かかっています。つまり今回の 搬送時間は通常より約30分遅れただけで、救急体制の改善を望むのであれば、病院到着まで平均45分かかっていることが問題です。脳出血の経過は発症直後 に決まるものです。搬送が30分遅れても脳出血による結果は避けられなかったと思います。
 救急医療システムの不備を指摘する声があります。救急医療システムとは「コンピュータ画面で受け入れ可能な病院は○、不可能な病院は×と表示されるシス テム」で、都立墨東病院の当直医はコンピュータ画面から受け入れ可能な3つの病院を五の橋産婦人科に伝えましたが、実際には受け入れ不可能でした。救急医 療システムが機能しなかったのは、刻々と変わる受け入れ態勢を入力する職員がいないほど、病院は人手不足だったからです。
5.医師の判断
 都立墨東病院の当直医(研修医)は、1人では対応できないと判断。他の病院を紹介しましたが、この判断は正しいと思われます。研修医1人では手術は困難 です。また下痢や嘔吐の症状から感染症を疑い、そのため専用端末で受け入れ可能な3つの救急病院を五の橋産婦人科に伝えていたのです。さらに他の病院が受 け入れ困難と知った当直医は、自宅にいる産科部長を呼び出し、最終的に患者を受け入れました。都立墨東病院の当直医は医師として最善を尽くしたと思いま す。


6. マスコミ報道
 マスコミは「救急病院をたらい回し、1時間で患者は死亡」、「受け入れ拒否」という表現を使いました。しかし本当は「受け入れ困難、受け入れ不可能」と 書くのが正しいのです。医師は助けたくても、手術中で対応できない、ベッドがないなど受け入れに余裕がなかったからです。このような事件が起きるとマスコ ミは「たらい回し」と表現しますが、それを読んだ読者は「ひどい病院だ」と医療不信に陥ります。しかし、たとえば博多のどんたくに突然行きたくなり、当 日、博多のホテルに電話をしても、空いているホテルなどありません。これをホテルのたらい回しと表現するでしょうか。なぜ病院だけをたらい回しと表現する のでしょうか。マスコミは人の不幸で売り上げを伸ばし、あるいは視聴率を上げるという営利的側面があります。都立墨東病院での記者会見では「断るなんて、 それでも医者か」と病院をつるし上げるような雰囲気でした。この事件で島崎修次杏林大教授(救急医学)は「都内には病院が多いので、他の病院をあてにして 受け入れ拒否が起こりやすい」とコメントを述べました。しかし皮肉なことに、この事件の1ヶ月前の9月、東京都調布市の妊婦(32)が片麻痺、嘔吐を訴 え、杏林大病院の「総合周産期母子医療センター」に搬送を要請。しかし手術中を理由に断られ、3時間後に25キロ離れた都立墨東病院に搬送されていたので す。
 妊婦は右半身の麻痺を訴えていました。この症状だけで脳出血と診断できたはずです。杏林大病院は事件が報道されると、「緊急性があると分かっていれば受 け入れていた」と述べましたが、手術中で対応できないのなら、正直に「対応困難だった」と答えればよかったのです。それとも手術を途中でやめて、対応する つもりだったのでしょうか。この調布市の妊婦は都立墨東病院で意識不明のままです。その杏林大学の教授が他人事のようなコメントを述べたわけですが、あま りに白々しく聞こえます。


7. 合併症としての脳出血
 平成18年8月、奈良県大淀町の大淀病院で妊婦(32)が急変、主治医は手当てが困難と判断、他の病院を探しましたが、奈良県立医大など18の病院から 断られ、19番目の病院が受け入れました。帝王切開で赤ちゃんは無事出産、しかし母親は脳出血で死亡という悲しい結果になりました。妊婦が痙攣で意識を 失った場合、妊娠中毒による子癇と診断するのがこれまでの常識でした。そのため診断が遅れたのです。妊婦が脳出血を発症する確率は0.002%以下で、死 亡率は13.7%とのデータがあります。しかしこのデータは過去のデータで、高齢出産が常識となっている現在では、その頻度はより高くなっています。産婦 人科医は妊婦の新たな合併症として脳出血を疑う必要があります。


8. 最大の教訓
 都立墨東病院で死亡した妊婦の夫(36)は、厚労省での記者会見で「だれをも責める気持ちはありません、裁判を起こすつもりもありません。赤ちゃんを安 心して産める社会にしてほしい。どうすれば安心して子供を産める社会を築けるかについて、医師、病院、都、国が力を合わせ改善してもらいたい。再発防止に 取り組んで頂くことを心からお願いします。妻の死を無駄にしないでほしい」と声を詰まらせながらコメントを述べました。さらに夫は「都立墨東病院の当直医 が傷ついて、病院を辞めて産科医が減ったら意味がありません。産科医としての人生をまっとうし、絶対に辞めないでほしい」と訴えました。ご主人の発言は立 派であり、感動させられました。このご主人こそが、この事件の本質を最も正しく理解していたのです。またマスコミによる医師バッシングを救ってくれたのも ご主人でした。彼の発言を最大の教訓として、赤ちゃんを安心して産める社会を築かなければいけないと思います。

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2010.01.13 15:55 |  生活 / くらし  |  スーさん  | 推薦数 : 0

不健康な健康増進法

不健康な健康増進法
 昭和62年にリゾート法(総合地域整備法)という法律が設定され,日本中が第2のデェズニーランドにあやかろうとした.そしてその結果は,自然破壊と借 金の山を残した散々たるものであった.バブルに浮かれた欲ボケ現象であるリゾート法は,免税などの様々な特典があったがすべてが失敗であった.当時の社会 党も勤労者の余暇活用を名目に法案に賛成したのだからリゾート法の立案責任はあやふやである.また民間企業と第3セクターが共同で経営したため,経営責任 の所在も曖昧のままとなった.このリゾート法は現在でもまだ生きている.法律が生きているということは,リゾート法が今でも正しいと思っているからであ る.このように良かれと思う法律が明らかに悪い結果をもたらすことがある.国全体が幻想という思い込みに包まれながら,悪法が一人歩きをしてしまうから恐 ろしい.
 そして次に危惧されるのが,健康増進法である.この法律は国会審議では全員が賛成,反対者ゼロというから驚きである.そして公共施設,病院,医師会館, 厚労省までもが全面禁煙になろうとしている.これを人間の知恵というのか,浅知恵と言うのかは読者の判断に任せるが,良かれと思っていることでも理屈通り にいかないのが人間の身体である.健康を法律で義務づけること自体に違和感を覚えるが,もしその法律が間違っていたらどうするのだろうか.
 日本人は人権,差別,平等,健康という錦の旗の言葉に無条件に従うという悪い癖がある.そしてこの悪い癖が悪い社会をつくる傾向がある.清潔恐怖症が子供の免疫能力を落とすように,健康増進法はむしろ健康減弱,健康ノイローゼを生む可能性がある.
 フィンランド症候群というものがある.これはフィンランドの保険局が行った実験で,40歳から45歳の管理職1200人を2つのグループに分け健康の推 移を調査したものである.ひとつのグループ600人は定期検診,栄養学的チェック,運動,禁煙,禁酒,塩分制限などの健康管理を厳格におこない.もうひと つの600人グループは目的を説明せずに健康調査のみを行い放置した.この調査開始から15年後,予想とはまったく逆の結果となった.健康管理をしなかっ た放置群のほうが心臓血管系の病気,高血圧,がんの発症,死亡率,自殺率,これらすべてが管理群より少なかったのである.この事実は何を意味しているのだ ろうか.健康を求めることがストレスとなり,健康を考えない無頓着な人間のほうが長生きすることを示している.人間の健康を管理しようとするとその逆の現 象が起きる.これが健康管理のパラドックスである.健康管理がストレスを生み,そのストレスが健康に悪影響を及ぼすと考えられた.
 健康のためには健康を厳格に管理した方が良いという思い込みが強い.しかしフランス人はヨーロッパ人のなかで飲酒もタバコの本数も多いが,ヨーロッパ人 の中では長生きの方である.またモルモン教徒はキリスト教徒の中で最も厳格な生活を行っており,禁煙,禁酒は当たり前,それに加えて浮気厳禁の宗教である が,モルモン教徒の平均寿命が一般人より有意に長いというデータはない.
 健康管理は健康のためにあるべきである.しかし健康のためと称する法律が不健康を招く可能性が高い.健康増進法は予防医学,生活習慣病を少なくして医療 費を抑制しようとする考えが根底にあるのだろうが,健康増進法がはたして国民の健康に結びつくかどうか不明である.禁煙によって増えるのは体重増加による 糖尿病と自殺率というデータがある.
 国民が健康を願うのは当たり前のことである.しかし健康とは健全な肉体と精神に宿るものである.健康ばかりを気にすると不健康な人間が増えそうで恐ろし い.健康については真面目に考えず,ある程度いい加減な部分がないと,健康不安病が増えることになる.「みのもんたの健康番組」が健康狂騒曲であるよう に,健康を求めることが悪い結果をもたらす可能性が強い.法律で無理に禁止すれば,禁酒法と同じでその反動が悪い結果をもたらす可能性がある.
 かつて短命国だった日本は,健康を気にしないうちに世界一の長寿国となった.しかし健康増進法によりこの世界一の長寿国が維持できるかどうか分からな い.ただ言えることは,日本は健康を目指しながら,世界一の健康不安国になることであろう.真に健康的生活を目指すならば,酒,タバコに課税するように体 重に課税したほうがより効果的である.もちろん効果的ではあるが,このような人間の権利を奪うような不健康な法律には反対である.

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2010.01.13 14:40 |  医療制度 / 行政  |  スーさん  | 推薦数 : 0

医は算術でないことを忘れるな

医は算術でないことを忘れるな
 かつて「医は仁術」と高尚に捉えられ、「医は算術」という言葉は軽蔑されてきた。しかしこの10数年は、「医は算術」が跋扈し、「算術のできない病院は 廃院しなさい」と国全体が毒されてきた。政府、官僚、提灯持ち学者、経済界、彼らはそろいも揃って、医を算術と捉え、効率化の名のもとに医療を破壊してき た。医療における効率化は儲けを第一とする営利主義である。診察に1人10分かかるのを、診察料が同じなら5分にすれば2倍儲かる。さらに必要のない検査 をやって儲ける、逆にDPC(包括医療)ではなるべく検査をしないで、中途半端な治療で患者に退院を迫る。救急や小児科は不採算だから止めてしまう。この ように医療のすべてが算術となり、効率化は医師と患者と会話を減らし、医療の信頼性は地に落ちてしまった。暖かな医療、親身な医療を破壊したのが医療の効 率化である。また7割の病院が赤字なのは、赤字になるように診療報酬が低く設定されているからで、10年前の診療報酬に戻すだけで多くの病院は黒字にな る。これほど簡単な改善策がなぜわからないのか。医療経営者なら誰でも知っているはずなのに、診療報酬を元に戻せとは誰も言わない。小学生が高校生になっ たのに、小遣いを下げられ、小さな服のままで、「それがいやなら家を出て行きなさい」、このような鬼のような行政になぜ反対しないのか。総務省は経営効率 化を旗印に自治体病院を廃院に追い込んでいるが、医療を経済で考えること自体が間違っている。医は仁術であり算術でないことを大声で叫びたい。世のお偉方 が全人的医療などと言うのならば、それを阻害している厚労相の前でハンストでもやるがよい。それが出来ないなら、二枚舌医学教育者と言われて反論できるだ ろうか。

 

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2010.01.13 14:34 |  その他(医療関連)  |  スーさん  | 推薦数 : 0

情と法律

情と法律
 妻が腹痛を起こし、胆石の診断で大学病院に入院となった。もちろん私の誤診であったが、妻はもともと私の診断能力を信じていないことが幸いした。近医で超音波検査を受け、手術のため神奈川県の某大学病院に入院、手術は無事に終わった。
 手術翌日のことである。見舞いの帰り、その日は冷たい雨が降っていた。タクシー乗り場にはすでに3人の老婆が闇夜に立っていて、私は4番目だった。そし てやっとタクシーが来たと思ったら、後ろにいた集団がタクシーに割り込んできた。彼らは携帯電話でタクシーを呼び出していたのである。多分、病院の職員な のであろう。このタクシー乗り場での「呼び出しタクシー割り込み」が3回続き、ついに私の脳ミソはブチ切れた。
 タクシーに乗ろうとする若者を引きずり出すと、「お前ら、何のつもりだ。雨に震えるあの婆さんたちが見えないのか」。多分、血圧は200以上、相当の迫力だったのだろう。おびえた若者はタクシーを譲ってくれた。私は3人の老婆を後部座席に乗せ駅まで送ることになった。
 はたして私の行動は間違っていたのだろうか。法的には間違いであろう。もし訴えられれば、もしケンカになっていたら、私は罪人、病院はクビになっていた だろう。しかし法律よりは人情である。もし批判する者がいれば、堂々と責任を取ればよい。法律よりは人間の情、自分の良心に従うべきである。あの3人の老 婆もきっと私の行動に小さな声援を送ってくれたことだろう。

 

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2010.01.13 14:32 |  その他(医療関連)  |  スーさん  | 推薦数 : 0

くさい飯

くさい飯
 刑務所に入ったことのある患者に「刑務所はくさい飯でつらかっただろう」と聞いてみました。すると患者は「病院の食事時より刑務所の方がおいしいです よ、麦飯は仕方ないにしても、麦飯は健康には1番ですから、糖尿病などは一発で治りますよ」と妙なことを自慢げに言い出したのです。そこで調べてみると、 刑務所一食の材料費は393円から423円で、料理の得意な服役者が作り、配膳も服役者ですから人件費、光熱費はゼロ円です。いっぽう病院の食事は一食 640円ですが人件費が含まれているので材料費は250円になります。また学校給食の一食の材料費は292円で人件費は別会計ですから、たしかに食事のお いしさは、刑務所、学校給食、病院の順になるのです。

 

 

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2010.01.13 14:30 |  その他(医療関連)  |  スーさん  | 推薦数 : 0

手洗い

手洗い

 手洗いは医療の基本とされています。ある日、トイレから出ようとする医師が手洗いをしないで出ようとしたので注意しました。するとその医師は「トイレに 入る前には手洗いをしますよ。それは自分の一番大切なモノに触るのですですから、でもトイレから出る時には手を洗いません。それは手洗いの蛇口が一番汚い からです。でも心配しないでください、患者さんの診療の前には必ず手洗いをしていますから」たしかに彼の言うとおりかもしれないと悩んでいました。後日、 その医師と食事をしたとき、彼はまた妙なことを言いだしたのです。「先生、レストランのおしぼりは使っては行けません、おしぼりが清潔という証拠はありま せんからね。このおしぼりが昨日風俗店で使われたものかもしれないんですよ」、さらに彼の話は続いた。「あと、ホテルの洗面所で顔を洗ってはいけません よ、ホテルの掃除のおばさんがトイレを拭いたタオルで洗面所を拭いていたのをこのまえ見てしまったのです。

 

 

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2010.01.13 14:19 |  その他(医療関連)  |  スーさん  | 推薦数 : 0

命の価値

コーギー
 子供の情操教育をかねて犬を飼うことにした。都内の犬屋を数軒訪ね、ケージに入った犬を見てまわってみた。かつて捨て犬を飼っていたことがあったので、 犬には慣れていたが、その値段の高さには驚いてしまった。数十万円の犬ばかりでした。店内でどの犬を買おうかと迷っているうるうちに、値段の高い犬が良い だろうと思うようになっていました。物の価値は値段に比例するとわが脳ミソは毒されていたのです。しかし妻はこの犬でなければいやだと一匹の犬を指さし た。それは貧相な顔をしたコーギーでした。コーギーはエリザベス女王が飼っていることで有名になった犬種で30万円前後が相場の犬です。しかしその上目遣 いで見つめるコーギーはなぜか2万円でした。値段の安いものには欠陥があると小声で文句を言ったが、妻は耳を貸さずレジで2万円を払ってしまったのです。 そして帰りの自動車の中で「この犬はあと数日の命だったのよ」と犬を抱きしめながら妻がいったのです。つまり売れ残った犬は値段が下げられ、それでも売れ なければ安楽死にするのがこの業界の常識であることを教えてくれたのです。妻がこの犬を買ったのはこの犬の命を助けたい気持ちからだったのです。この日だ けは妻を尊敬してしまった。そして医師としての基本的姿勢を教えられた気持ちになった。2万円のコーギーは、最近、飼い主に似て凛々しい顔つきになってき ている。

 

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2010.01.13 11:07 |  医療事故  |  スーさん  | 推薦数 : 1

福島県立大野病院事件

福島県立大野病院事件


 平成18年2月18日、福島県警は福島県立大野病院で診察中だった産婦人科医・加藤克彦医師(38)を業務上過失致死、異状死体の届け出義務違反の疑い で突然逮捕しました。逃げも隠れもせず、警察の取り調べに素直に応じていた医師を、まるで凶悪犯と同じように逮捕したのです。この事件が起きたのは、逮捕 の1年以上前の平成16年12月17日でした。帝王切開の手術を受けた経産婦(29)が前置胎盤、癒着胎盤による大量出血で死亡し、このことが刑事事件と なったのです。この事件は従来の医療事故とは違う、日本の医療そのものに関わる大きな問題を含んでいました。前置胎盤とは「胎盤が子宮の出口を覆う状態」 で、全分娩の0.2から1%の頻度でみられます。胎盤が子宮の出口をふさいでしまうので、500mlの濃厚赤血球を用意して帝王切開になりました。手術は 産婦人科医が執刀、外科医が助手、麻酔科医が麻酔をかけ、看護師4人がついて行われました。手術は順調に進み、帝王切開で胎児は無事に生まれました。しか し胎盤が子宮から剥離せず(癒着胎盤)、剥離しようとして大量の出血をきたしたのです。すぐに輸血を行い13分後に胎盤剥離に成功しましたが、その間、蛇 口をひねるような大量の出血がありました。追加の輸血が約40分後に到着、輸血を行いながら子宮全摘術を開始、1時間後に子宮摘出に成功。しかし子宮摘出 から30分後に心停止となったのです。平成20年8月20日の裁判で、福島地裁は加藤医師に無罪判決を下し、検察は起訴を断念して無罪が確定しました。第 1審の裁判で無罪が確定したことは、逮捕、起訴そのものが間違っていたのです。


1. 癒着胎盤
 癒着胎盤の確率は全分娩の0.02%と極めてまれで、しかも癒着胎盤のすべてが大量出血をきたすわけではありません。癒着胎盤を予測することは不可能 で、どれだけ出血するのかも予測できないのです。「出産時に大量の輸血を準備すべきだった」との意見がありますが、それは不可能です。200mlの輸血の 値段は6000円、今回の癒着胎盤による出血が12000mlならば必要な輸血の値段は36万円になります。輸血を準備していても、使用しなければ輸血は 破棄され、破棄された輸血の費用は病院のもち出しになります。万が一という言葉がありますが、万が一に備え大量の輸血を準備することは物理的にも金額的に も不可能です。


2. なぜ逮捕なのか
 癒着胎盤による大量出血を経験したことのある医師の話を聞いてみました。その医師が勤めていた病院では5人の産科医、10人の他科の医師が呼び出され、 注射器で血液を押し込めるように輸血を繰り返し、手術でやっと救命したということです。起訴された加藤医師は癒着胎盤で出血が続く血の海のなかで、子宮全 摘の手術を行ったのです。多くの産婦人科医は加藤医師が逮捕されたことに驚きました。もし自分が同じ立場だったら、同じように逮捕されると思ったからで す。多くの産婦人科医は加藤医師に同情的で、血の海のなかで子宮全摘の手術を行ったことを腕のよい医師と高く評価したのです。この不幸な事故は、癒着胎盤 による大量出血という不可抗力がまねいたといえます。同じ状況下で何人中何人の産婦人科医が救命できたでしょうか。
 加藤医師は逮捕されましたが、加藤医師は罰を受けるほどの罪人だったのでしょうか。加藤医師に悪意はなく、患者を助けようと最善を尽くしたのです。刑法 35条には「正当な業務による行為は、罰しない」、刑法38条には「罪を犯す意思のない者は、罰しない」とあります。医療過誤とは医療事故を起こした医師 が、医師の平均的治療より明らかに劣っている場合をいうのです。加藤医師がそれに相当するとは思えません。


3.刑事訴訟
 欧米では医師が民事で訴えられても、刑事訴訟は極めてまれです。医療事故が起きた場合、欧米では医療事故を調査する第三者機関があり、専門家が調査し、 医師免許取り消しなどの処分を行いますが、日本にはこのような第三者機関はありません。医療に関して素人の警察が逮捕し、同じ素人である司法が判決を下し ます。また今回の加藤医師の逮捕は福島県の「事故報告書」によるものでした。福島県が加藤医師に責任を押しつけたのは、加藤医師や病院が加入している医賠 責保険から賠償金を出すには、医療ミスであることが必要だったからです。しかし福島県の事故報告書はあまりにいい加減な内容で、裁判の証拠としても採用さ れていません。


4.医療の不確実性
 医療は、医師が医学知識に従って最善の治療を尽くすことで、病気を治すことを約束していません。しかし患者は病院に行けば、それで治ると思っています。 そのため症状が悪化すると医療ミスではないかと疑うのです。医師が故意に患者を傷つけた場合は刑事訴訟も当然です。患者の承諾のない治療は独断的治療と非 難されてもよいでしょう。しかし医師の法的責任は、患者の死そのものにあるのではなく、死に対する過失の程度によるものです。大野病院の加藤医師は妊婦を 助けようと必死で戦いました。「血よ、止まってくれ」と泣きたい気持ちだったと思います。医師の使命は病人を助けること、病気を治すことですが、治療には 不確実性、不可抗力の部分があります。病気をもつ患者の身体は、単純な機械の集合体ではなく、複雑で説明困難な生命体なのです。日本産科婦人科学会、日本 医師会など100を超える医療団体や学会が加藤医師の逮捕、起訴に対し批判声明を出しました。このような批判声明は異例のことで、この逮捕の不当性を全国 の医師が訴えたのと同じことでした。


5.社会的影響
 起訴された加藤医師は福島県立医大から派遣され、大野病院で唯一の産婦人科医師として年間230件のお産を行い、10人の入院患者、30人の外来患者を 毎日1人で診ていました。さらに出産後の新生児の治療まで行っていました。平成17年では日本全体で出産を扱う医療機関3056施設うち、46%の 1401施設が大野病院と同じように産婦人科医が1人です。お産には常に危険がともない、産婦人科医1人では医師は365日24時間拘束され、患者が急変 しても十分な対応はできません。
 県立大野病院に隣接した福島県いわき市では、この事件後、3つの病院が産科を廃止、出産を扱う病院は1つになりました。しかも正常分娩だけで異常分娩は 扱わないのです。また分娩を扱う開業医は12医院から1医院になりました。人口35万人のいわき市では年間3000件以上の分娩がありますが、出産できる 病院が1軒になったのです。医療事故はあってはならないことですが、理不尽な逮捕は医療を萎縮させるのです。


6.異状死体の届け出義務違反
 医師法21条では、異状死体の届け出を医師に義務づけています。しかし今回の「異状死体の届け出義務違反」という罪状も納得できません。医師法21条は 明治7年に設定された法律に遡るもので、本来、犯罪捜査に協力する観点からつくられたものです。今回の事故は癒着胎盤による出血死であることは明白で、こ のことは警察にも報告し、事情も説明しています。正当な医療行為が不幸な結果を生んだとしても、因果関係が明確なものがなぜ異常死なのでしょうか。これで は「死亡のすべてを警察に報告しろ」というようなものです。福島地裁の裁判長は「診療中の患者が、診療を受けている疾病によって死亡した場合は、異状死の 要件を欠く」と述べました。この解釈は、正当な診療行為に関連した死亡を「異状死」に含めないとする考えでした。


7.国家権力
 福島県警は逮捕の情報を事前にマスコミに流し、犯人扱いにされた加藤医師が手錠をかけられ、連行される姿を大々的にテレビで放映させました。そして新聞 には「医療過誤、手術ミスで医師逮捕」の大見出しの記事が掲載されたのです。加藤医師は警察の主張を認めなかったため1ヶ月間拘留され、妊娠中の加藤医師 の妻は、加藤医師の立ち会いもなく出産しました。
 さらに保釈から無罪の判決が出るまで、加藤医師は接見禁止という処分を受けました。接見禁止とは事件の関係者、つまり福島医大の産婦人科教授や医局仲 間、大野病院の関係者と電話もできず、自宅謹慎と同じ処分を受けたのです。有罪、無罪が確定していないのに、無罪判決が出るまで接見禁止としたのは、国家 権力による不当な処分といえます。医師は人間であり、神に近づこうと努力しても、医療の限界の前には無力なのです。それを逮捕し、拘留し、起訴し、接見禁 止という極悪人同様の扱いに日本の医師たちは強い怒りを覚えました。
 加藤医師を逮捕した富岡署は「職権乱用」に匹敵すると思いますが、富岡署は医師逮捕の功績により福島県警から表彰を受けていました。刑事責任は明らかな 犯罪行為や常識からかけ離れた医療行為に限定するべきです。懸命に救命を行った医師に手錠をかけることが社会正義といえるのでしょうか。


8大野事件の真相は?
 福島県立大野病院における癒着胎盤妊婦死亡をめぐる裁判で婦人科医が無罪となり、医師バッシングも一段落したと思うが、ここで考えておきたいことがあ る。この事件は癒着胎盤による出血死とされ、出血死であることは誰もが認めていた。しかし本当にこの妊婦の死因が出血死だったのか疑問なのである。また、 もし出血死だとしたら、誰の責任が最も問われるべきだったかである。
 術中出血量は、福島県の事故報告書では5L、麻酔科医は8L、報道によっては12L、検察側は20.5Lとなっている。大出血で現場は修羅場になり、病理解剖をしていないのだから出血量がそれぞれ違っているのは仕方ないにしても、大量出血があったことは間違いない。
 ここで問題にしたいのは、手術時、麻酔科医は緊急輸血のため病院職員から血液を集めたが、GVHDを恐れて輸血しなかったことである。GVHD (graft versus host disease)とは、臓器移植における合併症のひとつで、移植臓器を本人が異物と認識しての免疫応答によって攻撃する病態ある。輸血におけるGVHDは 他人の血液中のリンパ球が、本人の組織を異物として破壊する疾患で、その頻度はまれである。まれな合併症ではあるが、死亡例も報告されており、そのため緊 急輸血はほとんど行われなくなり、輸血はほとんどが保存血であり、さらに保存血に放射線を当てリンパ球を取り除いている。しかしGVHD防止のために保存 血に放射線を当てるようになったのは、平成9年からで、それまでは輸血によるGVHDはあまり問題にされていなかった。
 この事件で麻酔科が病院職員から集めた新鮮血を輸血しなかったのは、GVHDを恐れたことが表向きの理由であるが、本当は死に至るほどの出血量ではな かったのではないだろうか。手術中の出血量の把握は麻酔科医の役目であり、麻酔科医の8Lの出血証言は信頼できると思う。また実際に日赤の保存血を輸血 し、あらたな保存血が到着するまでの薬剤や輸液の投与をみると、麻酔科医の臨床レベルはきわめて高いと思われる。その麻酔科医がなぜ新鮮血を輸血しなかっ たのか理解できない。
 ここで出血が死因でなかったと仮定すれば、なぜ術後20分後に妊婦の心臓が止まったのだろうか。羊水塞栓症、肺血栓塞栓症など疾患を否定できるのだろう か。このように、説明のできない心停止という現象は存在するのである。家族の本当の死因を知りたいという希望は理解できるが、それならばなぜ遺族が病理解 剖に同意しなかったか。大野事件だけでなく、真実が分からないものを裁判で争っても、医学的に絶対的な因果関係の説明は不可能である。このことを知って欲 しい。



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