さあ、前回の謎解きです。
何で、山中先生の発見が遺伝子治療?と思われた方が多いかと思います。改めて、発表内容を見てください。
今回の研究は、マウス体細胞をiPS細胞に巻き戻した4つの因子、すなわちOct3/4、Sox2、c-Myc、Klf4をレトロウイルスベクターを用いて、成人由来の線維芽細胞株HDF-S1c7a1に導入、培養し、5万個の線維芽細胞から10のヒトES細胞様の細胞(ヒトiPS細胞)コロニーを得た。
実は、4種類の遺伝子をレトロウイルスベクターで導入しています。
例えば、今回のiPS細胞から、心筋細胞を作成して、ヒトの心臓に移植する再生医療を行うとします。これは、4種類の遺伝子を用いた遺伝的に修飾した繊維芽細胞による遺伝子治療ともいえるわけです。
従って、いわゆる規制上の観点では遺伝子治療のガイドラインの対象にもなり、iPS細胞による再生医療を促進するには遺伝子治療のガイドラインも簡素化するなどの整備が必要になります。
これは、私どもにとっても大変助かることで、今後iPS細胞の実用化が近づけば、遺伝子治療にとっても大変な朗報です。
また、4種類の細胞の上に、私たちがしているHGFの遺伝子を入れることもできます。
例えば、心筋細胞に分化させ、そこにHGF遺伝子を入れて心臓に移植すれば、単なる心筋細胞より大きな成果が得られます。
また、神経細胞に分化後、HGF遺伝子を導入することで、パーキンソン病に関しても大きな成果が期待できます。
しかし、一方で、このことは今後のiPS細胞の実用化の道が平坦ではないことも示しています。
未だ複数の遺伝子を導入した遺伝子治療は、ヒトでは検討されていません。また、今回の4種類の中にはがん遺伝子も含まれており、ヒトの体内でどう制御するか、大きな問題があります。
まさに、今まで遺伝子治療が悩んでいた問題が、再生利用と共有化されたといっていいでしょう。
今後、iPS細胞の実用化には遺伝子治療で蓄積された技術やノウハウなどが最大限活用される必要があります。
その意味で、私たちの教室の臨床遺伝子治療学という新規融合領域が重要になります(強引な我田引水?という気もしますが・・・)。
また、先進国で最初の遺伝子治療薬の実用化に成功したアンジェスのノウハウも、世界的な競争に日本が勝つ上でも重要になると思います。
今回は、実はiPS細胞による再生医療=遺伝子治療というお話でした。遺伝子治療の夜明けも近い?(既に夜は明けているかもしれませんね)
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