前回HGFの血管再生作用を見つけたところまで、書いてきました。最初は、ヒト血管平滑筋細胞や内皮細胞を使い、その後ラットやウサギでHGFの強力な血管新生作用を明らかにしてきたわけです。
一番驚いたのは、平滑筋細胞の増殖をさせずに、内皮細胞のみを増殖させるVEGFと同じ作用であることでした。我々にとって都合の良かったのは、VEGFと異なり、浮腫を起こさないことでした。この理由は、HGFは平滑筋細胞の増殖をさせないが、遊走は促進させることによっていました(実際に、その後の臨床研究で我々の仮説が正しかったことが証明されました)。
ここから、臨床研究までの時間は長かったですね。今のようにトランスレーショナル・リサーチという言葉もまだなく、国のグラントも大型が少なくて、費用の賄いも大変でした。
結果的に、2001年から大阪大学で日本で始めての生活習慣病の遺伝子治療を始めることができました。一番難しかったのは、臨床研究のプロトコールで、製薬企業の臨床治験は私も多くしましたが、自分でプロトコールを立てたことはなく、エンドポイントの設定や患者の適応など大変でした。
実は、ここで少し頭を使いました。前回書いた世界で初めての生活習慣病の遺伝子医療をVEGFを使って行ったアメリカタフツ大学のIsner教授と共同研究をすることにしました。彼らも、自分たちの仮説を証明したかったのだと思いますが、非常に好意的で彼らのプロトコールを教えてもらいました。結果的に、アメリカのFDAの基準に合ったInvestigator INDという臨床研究ですが、治験並みの基準をクリアすることができたわけです(実際にこのことは、後でアメリカでHGFの臨床治験を始める際に日本の臨床研究のデータをフェーズI/IIとしてFDAに認めてもらいました)。
その後、Isner教授は、心筋梗塞でなくなってしまいますが、我々にとっては恩人です(余談ですが、医者は意外に自分の専門としている病気で亡くなる方が多いですね)。
固定リンク
|
コメント (1)
|
トラックバック (0)
コメントを頂きましたので、お答えしたいと思います。まさにいわれるとおりで現在と同じ疾病構造では、寂しいですよね。私の予想は、高血圧のワクチン療法などの根治的治療ができてきて、今の対処療法から根治へという流れができるのではないかというものです(このことは新健康フロンティア戦略では述べさせてもらいました)。
もう一つの流れは、予防ではなく若返りにいく運動が大事でしょうね(このことも、新健康フロンティア戦略の分科会では述べさせてもらいました)。予防というのはなんとなく崖の上に踏みとどまるという感じで、常に危ういような印象を受けます。そうではなくて、一歩でも二歩でも後ろへバックして、安全域に逃げ込むのが大事だと思います。即ち、アンチ・エージングですね。最近、私がアンチ・エージングにハマッテいるのもそのせいです(今度、抗加齢医学会の理事になりました。皆さん、入会よろしくお願いいたします。宣伝でした)。
固定リンク
|
コメント (0)
|
トラックバック (1)
やっと佳境に入ってきました。実は、日本への帰国の相談に夏ごろ帰国したのですが、その時に阪大の腫瘍生化学の中村敏一教授にお会いに行きました。
ここでも、実験医学が役に立ちました(別に宣伝をしているつもりはないのですが)。特集で、HGFが載っており、日本で発見されたんだという漠然とした記憶がありました。
前回書いたように、VEGFはパテントで使いにくいので、他の血管新生作用があるものを探そうということで、いくつかの候補を考えていました。たまたま、その中の一つがHGFでしたので、まずはご挨拶とお会いに行った訳です。
中村先生からは快く、帰国後の共同研究を受けて頂き、とりあえずは帰国後試してみようと思っておりました。
ボスには、日本に帰国したら、肝細胞増殖因子という物質を研究したいといったところ、名前が良かったのか?、私は肝臓には興味がないので、それは勝手にしてもよいというお墨付きをもらい、無事帰国後の研究テーマもクリアされました(HGFは血管新生の研究開始当時は、名前で損をしましたが、この時は得でした)。
で、いよいよ帰国後実験してみると、非常に強力な血管新生作用があり、VEGFやFGFよりも強力であることがわかり、大変ラッキーでした。本当は、HGF=Happy Growth Factorであったわけですね(いつも結婚式での挨拶のネタですので、お許しください)。
固定リンク
|
コメント (0)
|
トラックバック (0)