Dr. I
Profile

関連リンク

ブログ内検索

カレンダー

<< 2012/02 >>
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29

新着コメント

新着トラックバック

トップページ

Doctors Blog

ブログの購読

< 前のページ

弘前で研修医過労死か

Dr. I / 2011.07.25 23:30 / 推薦数 : 5
2010年の11月下旬。
残念な事に、28歳の若い医師が亡くなられました。

卒業してまだ半年しか経っていない医師が、
毎月、過労死の認定基準以上の労働をし、
急性循環不全でお亡くなりになりました。

7月22日、家族が労災の申請をしたそうです。

『医師の7割超が仲間の過労死など経験』
の記事にも以前書いたように、
多くの医師が仲間の過労死を経験しています。

私も同期の医師が、当直先の病院の当直室で、
冷たくなっていたのを発見された、
という経験をしております。

何年か前から、医療崩壊とか、医師の過労、
という事がメディアに出るようになりましたが。
医療現場は、ほとんど変わっていないと思います。

2004年に、臨床研修制度が義務化されて、
新しくなったので、研修医に関しては、
かなり労働基準法とかも守られるようになって。
逆に中堅の医師が厳しくなったな、
という印象はあったのですが。

最も守られている、そして体力のある若い研修医も、
過労死になってしまったようですね。


出展は、skyteam先生
「医師の過労死:防げない構図の中で何をするべきか?」
からです。
いつもお世話になっております。



研修医死亡で遺族 労災を申請/弘前

弘前市立病院勤務の研修医呂永富さん
=当時28歳=が昨年11月に
急性循環不全のため亡くなったのは、
長時間労働などが原因として、
遺族が22日、弘前労働基準監督署に
労災を申請した。

代理人弁護士によると、呂医師が亡くなる前の
1カ月の時間外労働が140時間を超えるなど、
長期間にわたり過重業務が継続していたとした。

一方、市立病院は時間外労働は最大でも
60時間程度との認識を示し
「指導医の指示の下で業務を行っており、
過重な負担はなかった」としている。

医師は中国出身で2004年に
弘前大学医学部に入学。
10年3月に卒業し、同年4月から
市立病院研修医として勤務していた。

昨年11月29日に呂医師
出勤しなかったことから病院の連絡を受けて
警察が確認し、自宅で倒れている
医師を発見。
解剖の結果、前日に死亡していたことが分かった。
医師に特別な既往歴などはなかった。

22日は群馬県内に住む呂医師の母親(62)と
姉(33)が同監督署に労災を申請。
記者会見した。

代理人弁護士によると、出勤簿や家族からの
聞き取りなどから確認した呂医師
時間外労働時間数は
死亡前1カ月間で142時間43分。
死亡前8カ月間の平均でも136時間余りと
100時間を大きく超えるとした。

また死亡前1カ月の休日が2日だけだったとし、
深夜の呼び出しなど勤務時間も不規則だったとした。

医師の姉は「電話で連絡を取っていたが、
とにかく忙しいと話していた」と話し、
医師が眠れないなど
うつ病気味な話もしていたという。

代理人の川人博弁護士は
「背景には青森県をはじめとする
東北地方における根強い医師不足の問題がある。
日本が多くの留学生を受け入れ、
医師として安心して働いてもらうためには
現在の医療状況の早急な改善が求められる」
と述べた。

一方、市立病院
「研修中は指導医の指示の下で業務を行っており、
過重な負担はなかったと考える。
労働基準監督署から照会などがあれば、
適切に対応したい」とコメントした。

取材に対し、同病院では病院として
把握している時間外労働は多い時でも
月60時間程度で、指導医について
研修を行うため、精神的な負担も
一般の医師に比べ、重くはなかった
との認識を示した。

また入院患者を受け持っているため、
休日も患者の様子を見ることはあるが、
長時間にわたり、勤務をするような
態勢ではなかったとした。


『陸奥新報:2011/7/23』


まあ、過労死かどうかは、過労死と認定されないと
わからないんですけどね、本当は。

でも、いわゆる過労死の認定基準というのは、


発症前1か月間におおむね100時間又は
発症前2か月間ないし6か月間にわたって、
1か月当たりおおむね80時間を超える
時間外労働が認められる場合は、
業務と発症との関連性が強いと評価できること


『「厚 生 労 働 省 発 表」: 過労死新認定基準』


とされていますから。
家族の言い分を聞くと、完全にこれに当てはまります。

>時間外労働時間数は
死亡前1カ月間で142時間43分。
死亡前8カ月間の平均でも136時間余りと
100時間を大きく超えるとした。


ですから。

おかしな病院になると、責任回避のため、
わざと勤務医の時間外労働を把握しないで、
責任を逃れる。
とか、もっと悪いと、時間外手当を払わない、
なんてところもあるんですが。

そこまでではないんでしょうけど、
病院が勤務医の勤務状況をきちんと把握している、
というところは、実際のところ、少ないんですよね。
残念ながら。

一般の企業だったら、そんなのありえないんですよね。
人の命を扱う、医師とか看護師とか、
そういう職業だからこそ、きちんと管理すべきなんですが。
日本の病院は、本当に遅れていると思います。

医師の側で出来る事は、きちんと自分の
労働は自分で管理する、という事と。
病院に改善を申し出ても改善されないなら、
そんな病院なんて辞めてしまう。
という事くらいでしょうかね。

だって、口では「患者様のため」とか、
立派な事を言っていても。
徹夜明けの医者が手術をしたら、
うまくいく確率だって下がるに決まってるし。
そんなの、危なかしくて、しょうがないでしょ。

そんな、最低限の事も出来ない病院からは、
医師も出て行って、患者もそんなとこには行かない。
という事で、淘汰していく。
という時代になったのではないでしょうか。

変な言い訳ばかりしていないで、
きちんと対策を練ってもらいたいものですね。
病院には。

固定リンク | コメント (4) | トラックバック (0)

「生命の危険」でも点滴は違法

Dr. I / 2011.03.07 00:00 / 推薦数 : 8
医療崩壊の原因として、「医療訴訟
というのもある、と言われています。

特に勤務医に多いのですが。
一生懸命に治療をしたのに、
結果が悪かったら、裁判で訴えられる。
という事になるのであれば、
勤務医なんか辞めてしまおう。

って思う人がたくさんいて、
結果、急性期の病院から勤務医がいなくなって、
医療崩壊を招いている、と
も言われています。

もちろん、医療崩壊の原因は
医療費不足とか医師不足とか、
他にもたくさんありますけどね。


ニュースになる医療訴訟は、
ほとんどが医師に関係するものですけど。
看護師や救急救命士が関係する
医療訴訟もあるんですよ。


今回紹介するのは、
医療訴訟ではないんですけど。
救急救命士点滴が「違法だ」
って話です。




救急救命士、「生命の危険」で
患者に違法点滴

愛知県常滑市は6日、同市消防本部の
男性救急救命士(38)が、交通事故負傷者を
搬送中に、救急救命士法に違反する点滴
行っていたと発表した。

同本部は当時の状況をさらに詳しく調査を
したうえでこの救急救命士を処分する方針。

同本部によると、救命士は2月7日、
常滑市内で起きた交通事故現場に出動。
負傷した男性(35)に、救急車内で
血流確保のための輸液を静脈に点滴した。

救命士は「大量出血で意識がもうろうと
していたため、搬送先の常滑市民病院の医師
連絡を取りながら輸液を行った」
と説明したという。

負傷した男性は病院で治療を受け、
現在は快方に向かっている。

救急救命士法の施行規則では、
心肺停止状態の患者に限って医師から
具体的な指示を受けながら、点滴や気管に
チューブを挿入して酸素を送ることができるが、
男性は心肺停止状態ではなかった。

同本部の事情聴取に対し、救命士は
「施行規則のことは知っていたが、
生命の危険があると思ったので輸液を行った」
と話しているという。
救命士は2004年に資格を取得した。

石川忠彦消防長は
「救命のためだったが、違法行為は遺憾。
病院とのやりとりを含めて、
当時の状況を検証していく」
と述べた。


『「読売新聞 :2011年3月6日』


全くの素人で点滴をする技術も
知識もない人が点滴をする。
って事だったら、止めた方が良い。
という事も言えると思いますけど。

心肺停止状態の患者にであれば、
点滴を取ることも出来る、
知識も技術もあって、訓練された人間。
というのが「救急救命士」ですから。

物理的に、点滴をする事は可能なんですよ。


>大量出血で意識がもうろうとしていたため

というのは、いわゆる「外傷性ショック」、
出血性ショック」という状態です。

心肺停止状態ではないんだけど、
このままいったら、血圧もどんどん下がって、
命に関わる状態です。

出血して、ショックになっている状態ですから。
最も良いのは、「輸血」をする事なんですが。
すぐに輸血が出来るわけではないですから、
それまでの間、出来るだけ早く、
たくさん「輸液、点滴」をする。
というのが、命を助ける為に、最も重要です。


医師救急救命士
そんな事はわかっていますから、
ルールがどうのう、とかそんな事よりも、
目の前の命を助けるために、必要な事をした。
という事だと思います。


救急救命士の施行規則では、
救急救命士は心肺停止状態の人以外には、
点滴を行ってはいけない。
という規則があるのは事実だし。
救急救命士がそれに違反した、
という事も事実でしょう。

愛知県常滑市から、そういう発表があった、
という事も事実ですから。
それを報道するな、と言うつもりはありませんが。

でも、「違法だ、違法だ」っていう報道じゃなくて、
規則には違反したけど、そのおかけで助かったとか、
助からなかったけど、すばやく点滴するしか、
助ける方法はないんだ。

規則には違反したけど、この救急救命士
目の前の命を助けようと一生懸命頑張ったんだ。
っていう伝え方をしていただけませんかね。

実際、
>負傷した男性は病院で治療を受け、
 現在は快方に向かっている。


という事なんですから。
もしかしたら、この救急救命士
点滴をしていなかったら、
命を落としていた可能性もある訳ですからね。

なんか、ちょっと寂しいです。

本来であれば、こういうケースは十分
想定できるものですので。
規則が間違っているんだから、
命を助けるために、規則を変えよう。

という報道がされるべきだと思います。

今回の報道をきっかけに、
そういう議論が起こってくれればありがたいです。

固定リンク | コメント (6) | トラックバック (1)

心臓弁膜症手術、青森で提訴

Dr. I / 2011.01.24 22:09 / 推薦数 : 7
民事訴訟を起こす権利は誰にでもありますから。
医療に関してだけは、民事訴訟を起こす事を禁止する
なんて事はできるはずもないし、
そんな事を求めはしないんですけど。

マスコミには、報道する価値のある事だけ報道する、
とい事にしてもらえないものでしょうか。

それに、自分でも何を言っているのか
理解しないで記事にする、
というのは、やめませんかね。

どの新聞とは言いませんけど。
これなんかも、そうじゃないかな。


提訴:71歳男性死亡で遺族が県を訴え 
医師過失」損賠求め /青森

県立中央病院で心臓手術を受けた男性
(当時71歳)が医師の過失で死亡したとして、
遺族が県に慰謝料など約4600万円の
損害賠償を求める訴訟を青森地裁
(貝原信之裁判長)に起こした。

1月21日にあった第1回口頭弁論に県側は
出廷せず、答弁書で争う姿勢を示した。

訴状によると、男性は09年に心臓弁膜症と
診断され、人工弁を付ける手術を受けた。

手術中、心臓からの出血を理由に
約5時間半にわたって心停止状態にされたため、
心機能が低下して死亡したという。
【高橋真志】


『毎日新聞 2011年1月22日 地方版』



記事に書いてある内容が少なすぎて、
議論するにしても、想像の域を出ないんですけど。

ある男性が、青森の県立中央病院で
心臓弁膜症の手術を受けた。

という事は良いですよね。

そして、手術後、残念ながら亡くなった
という事も事実だと思います。

そいで、その理由というのが、
この記事を見る限りでは。

心臓からの出血を理由に約5時間半に
わたって心停止状態にされたため、
心機能が低下して死亡した


という事らしいんですけど。

心臓から出血しているのに、
心臓を動かしたら、助かったんですか?


と聞きたいですね、私は。

もしそうであれば、この記事は正しいんですけど。
そんな事、ありえるんでしょうか。

心臓というのは、血液を全身に送り出す
臓器な訳ですから。
心臓から出血しているのに、心臓を動かしたら、
ますます出血がひどくなると思います。

もしそうじゃなくて、心臓から出血しているのに、
心臓を早く動かしていたら、この患者は助かった。
というのであれば、この記事の内容も
正しいのかもしれませんけど。

そんな事、ありえないと思いますけどね。


例えば、明らかにやってはいけない事、
いわゆる「医療ミス」をしたために、
心臓から大出血してしまった。
そのために、患者さんは亡くなった。

という事であれば、そのミスした内容に
過失があるから、訴訟を起こした。
という話だったら、わからないでもないですよ。

手術をして、血が出るのは当たり前ですから。
出血というのは、「医療ミス」ではなくて、
普通は「合併症」なのですけど。

例えば、絶対に使ってはいけない医療器具を
使って、その結果として心臓から大出血した。
とか。

薬の種類を間違えた。
薬の量を10倍とか使ってしまって、
血が止まらなくなって出血した。
とか。
そういうのであれば「医療ミス
という言い方も出来るとは思いますけどね。

でも、心臓から出血が続いている状態で、
人工心肺を回しても、
出血が止まるはずはありませんから。

心臓を止めたまま処置を続ける、
という手技自体は、医療ミスとは言えない
と私は思います。
というか、心臓止めてないと無理でしょ、逆に。

まあ、確かに、心臓弁膜症の手術で、

>約5時間半にわたって心停止状態

というのは、普通の手術に比べて長いな。
とは思いますけどね。
ミスかどうかは別として。

でもだからと言って、心臓からの
出血が続いているのに
心臓を動かせば助かったはず。
というのは、全く見当違いだと思います。



医療だけとは限らないんですけど、
こういう民事訴訟の記事の弱点は、

>「訴状によると」
というように、情報ソースを「訴状」だけに
限定しているからなんですよ。

訴状」というのは、裁判を起こした方が、
一方的に主張している事。
ですからね、簡単に言うと。

両方から意見を聞いたから正しい、
という保障はもちろんないんですけど。
少なくとも、異なる意見を聞いて、
それを検討してから記事を書いた方が、
信憑性は増す、という事は言えると思います。

つーか、2つの異なる情報ソースから
情報を収集してから記事を書く。
というのは、マスコミの基本だと思うんですが。

医療に関して全くわかっていない記者が、
一方からの意見を鵜呑みにして記事を書く。
しかも、医療訴訟のほとんどは、
訴訟を起こすのは、患者や家族など、
医療とは関係ない人たちですから。

医学的にはおかしな話も多い、
というのは当たり前だと思います。
ですから、詳細に検討してから記事を書く、
という事が必要なのではないでしょうか。

医療記事は、専門的な内容が多いんだから、
もうちょっと、きちんと考えてから
やってもらいませんかねー。

やっぱり、無理なのかなー。

新聞と言っても、いろいろありますしね。
やはり、新聞社によっても違うんでしょうか。

固定リンク | コメント (2) | トラックバック (0)

トンデモ判決、減少?

Dr. I / 2010.12.26 21:33 / 推薦数 : 3
最近、医療訴訟とかトンデモ判決で、
ブログのネタになるような記事が
減っているような気がするんですが。

やっぱり、気のせいではないんですね。
年々、医療訴訟の数も減っているし。
トンデモ判決も減っているそうです。

日系メディカルに書いてありましたので、
ちょっと引用させてもらいますね。



日経メディカル2010年11月号「特別対談」(転載)

この10年の医療訴訟のトレンド


今年6月、本誌の好評連載「医療訴訟の『そこが知りたい』」
に掲載した判例を中心に、
注目の47判例を解説した書籍を発刊した。

弁護士7人の執筆陣の中から平井利明氏と
桑原博道氏にご登場いただき、医療裁判史上、
激動の10年間を振り返ってもらった
(前・後編の2回に分けて掲載します)。
(司会は本誌副編集長・豊川琢)

_____________________________________


──連載「医療訴訟の『そこが知りたい』」
が1冊の本になりました。
何か感じた点はありますか。


桑原 古い判決を集めた判例集は
ほかにもありますが、本書は、
ここ10年ほどの裁判例を満遍なく取り上げ、
医療裁判のトレンドを理解できるように
仕上がったと思いました。

世間の医療不信が高まるきっかけとなった
事件も網羅しており、あらためて読んでみて
私も勉強になりました。


平井 医療ミスの有無を争った判例以外にも、
カルテ開示や医師の過労死などに関する
判例も盛り込まれており、医療現場において
それぞれの時代で何が問題になってきたのかを
把握できる書籍になったのではないでしょうか。

そもそも裁判の内容には、その時代の
世間の問題意識が反映されます。
こうした動向を感じ取れると思います。



医師の権威が失墜した10年

──印象に残った判例は。

桑原 やはり、47判例の中でも注目判決として
取り上げた横浜市立大の患者取り違え事件(※1)と、
都立広尾病院の注射器取り違え事件(※2)です。


当時は医療界に限らずあらゆる業界で、
安全と思われていたものが崩れた
時代ではなかったでしょうか。

代表的なところでは、2000年に起きた
雪印乳業の集団食中毒事件(※3)があります。
医療においては、横浜市立大事件と
都立広尾病院事件によって安全神話が完全に崩れ、
医師医療機関の権威が失墜しました。

さらに、患者の権利意識の高まりも加わって、
2000年代前半には医療訴訟件数が
急増していきました。


平井 世間の医療に対する不信を高めた
一因として、マスコミ報道もあるでしょう。

患者の死亡といった悪い結果が生じると、
すぐに医療機関の体質や医師の技量を
問題視し、“医療たたき”に近い報道を重ね、
世間の医療不信に拍車をかけた。

私は、「医療現場の実態が分かっていない」と、
憤りを感じながらいくつかの
ケースの報道を見ていました。

そんな中で医療界の不満が爆発したのが、
04年に生じた福島県立大野病院事件
(※4)だと思います。

産科医が臨床上標準的な医療を行ったのに
業務上過失致死罪に問われたことに対し、
医療団体など医療界全体が抗議しました。

この事件は、産科医が無罪となり検察も
控訴を断念したため、医療界は安堵しました。

実は産科医への刑罰についての判決以上に
われわれが注目したのが、
医師法21条に定められた
警察への異状死の届け出義務に関する
福島地裁の判断でした。

かつては、「医療過誤で
患者が死亡すれば必ず警察に
届け出なければならない」と思っていた
医療者は多かったのですが、
都立広尾病院事件で最高裁は異状死について、
「死体の外表に異状があった場合」と提起した
高裁判決を維持し、一定の方向性を示しました。


ところがそれでも、手術で腹部を切開していれば
「外表の異状」と考え、過誤がなくても
届け出なければならないのかなど、医療者が
判断できない部分が少なくなかった。

それが福島県立大野病院事件で福島地裁は、
患者の死亡の原因を「癒着胎盤」という
疾病と認定し、「過失なき医療行為を
もってしても避けられなかった結果なので、
異状と認められず届け出義務はない」
と、一歩踏み込んだ判断をしました。

つまり、「診療中の患者が診療を受けている
当該疾病によって死亡した場合は
異状死に当たらない」と判示したのです。

編集部注

※1:1999年に、患者2人を取り違えたまま
気付か手術を実施し、医師らの
注意義務違反が問われた事件。

※2:99年に、看護師が誤って消毒液を点滴し、
患者が死亡した事件。
異状死として届け出なければならない
事例の範囲も問題になった。

※3:2000年に雪印乳業の低脂肪乳を
飲んだ子どもらが嘔吐や下痢を
訴えたことで事件発覚。
最終的に約1万5000人が
食中毒になったと認定された。

※4:04年に、産婦が胎盤剥離の際に失血死し、
大量出血の恐れを認識しながら漫然と
胎盤を剥離したとして産科医が
検察に起訴された事件。
裁判所が異状死の
届け出義務についても言及した。



医療側の努力も訴訟減の一因

──福島県立大野病院事件の判決を境に、
医療訴訟の件数が
減少に転じたように感じますが。

平井 以前は、「医療は安全・安心なもの」
という幻想がありました。
そんな中、救急患者の“たらい回し”
事件などを機にマスコミも国民も
医療への不信感を強めたのです。



それが、医師不足など医療崩壊が
起きていることが、徐々に世間に認識されるように
なってきたのではないでしょうか。

実際、福島県立大野病院事件では、
逮捕された産科医が、医師不足のため
1人医長として勤務していた実態
などが広く知られました。
マスコミも一時期に比べると、“医療たたき”を
前面に出した報道をしなくなってきています。


桑原 医療側の医療安全への意識も
全く違ってきています。
横浜市立大事件を機に、医療ミスや診療に関する
患者との認識の違いを減らそうと努力する
医療機関が増えました。

万一医療事故が起これば、院内に調査委員会を
立ち上げて原因を調べる取り組みは
かなり一般的になっています。

患者に診療の方針や経緯を詳しく説明したり、
カルテに診療内容をしっかり書いたりすることも
医師の間に浸透してきました。

結果、「これはひどい」と感じるような医療事故が
減ったほか、医療側と患者側の事故に対する
認識の違いも埋まりつつあり、
訴訟に発展するケースが
少なくなっているように思います。


──患者が提訴する内容にも変化が見られますか。

桑原 裁判の争点は訴えた患者側が
設定することになるのですが、以前は、
医療側が「なぜこれで訴えられるのか」
と感じるおかしな争点がかなり多かった。

そうしたケースが最近ではだいぶ減っています。
患者側の弁護士もカルテを精査したり、
第三者の医師に相談したりして、
医療の実情を勘案して
争点を示すようになりました。

ただ、法曹人口の急増に伴い、医療知識が
あまりない弁護士が弁護を担当する例も増え、
的外れな争点が設定されて、
裁判で不毛な議論が延々と続くことも
依然としてあります。
弁護士の質によって二極化してきているのが
現状でしょうか。


平井 そうですね。単に
患者はかわいそうだから助けてあげたい」
という思いから、安易に医療訴訟
弁護を引き受ける弁護士もいます。

裁判の中で病院側が一番困るのが、
不毛な議論です。
医師はただでさえ忙しいのに、
それに付き合わなければいけないことほど
無駄なことはない。

その時間を多くの患者の診療に当ててもらいたい
というのが私の思いです。
弁護士も医療訴訟の弁護を手掛けるのであれば、
経験豊富な弁護士の指導を受けるべきです。


トンデモ判決”は減ってきた

平井 裁判所も、医療者をどん底に陥れるような
理解しがたい判決を下さないでもらいたい。
医療者が「そんなことで裁判に負けるのか」
と思ってしまうと、萎縮医療につながってしまいます。
それはひいては、患者の不利益にもなるわけです。

桑原 雑談していると、
こんなことを言う医師がいます。
「提訴された裁判についての書類が
勤務先の事務部門から届くと、
非常にがっかりしてモチベーションが下がる」と。

本書では、裁判所がどのような根拠に基づいた
診療を重視して判決を下したのかを
分かりやすく解説したつもりです。

多くの医師が本書を読み、
常に「根拠」を意識しながら
診療に携わってもらえるようになれば、
私も執筆にかかわってよかったと思います。

また、医療者の教訓になる裁判例だけでなく、
教訓にならない判決を盛り込んだ点も
役立つと考えています。


──判決内容も以前とは
だいぶ変わってきているようです。

桑原 裁判官が医療側の主張に耳を傾けるように
なりつつあるように感じます。

患者の死亡といった悪い結果や理想論だけから
判断されたら医療側は負けてしまう。

それが最近は、医療側にも何か理由があって
こう判断したのではないかと、考えを巡らす
裁判官が増えているのではないでしょうか。

結果、“トンデモ判決”が
目立たなくなっているようです。


平井 ただ、“トンデモ判決”を下す裁判官は
依然として存在するのは事実です。
こうした裁判官は常に不可解な判決を出すようで、
そういう実態があることも本書には記しました。


──過失と医療事故との因果関係の考え方も、
この10年でだいぶ変わってきました。

桑原 昔は、医療行為が
医療水準に反しているかどうか、
つまり過失があるかどうかが裁判で
重点的に検討されていました。

ただ、過失があったとしても、それが原因で
患者が死亡するといった
悪い結果が生じたのでなければ、医療側は
法的責任を負う必要はありません。

この「因果関係」が認められるには、
過失によって悪い結果が生じたという
「高度の蓋然性」、つまり高い可能性
証明することが従来から求められてきました。

ところが、診療した時点では既に回復しがたい
疾患に侵されていた場合など、
患者側がこの「高度の蓋然性」を
証明するのはかなり困難が伴います。
それができなければ、患者側は全く
損害賠償を請求できなくなります。

そこで2000年代に入り最高裁が判決で
言及し始めたのが、
「相当程度の可能性」という理論です。
過失と悪い結果との間に
「高度の蓋然性」はないが、その可能性が
相当程度あると証明されれば、
数百万円程度の慰謝料を認めるとしたのです。


不可解な「相当程度の可能性」

平井 ところが、この概念が非常に分かりにくい。
「高度の蓋然性」といえば80、90%程度の可能性
と考えられていますが、それでは
「相当程度の可能性」は何%なのか。
20%なのか、50%なのか。
法律家である私たちも分からない。

最高裁は、「相当程度の可能性」を因果関係の
程度ととらえておらず、それ自体を新たな法益
と考えています。

「悪い結果を回避できた高い可能性がなくても、
その可能性があること自体が利益だ」と。

ただ、その利益があることを
どうやって証明するのかと考えると、
結局、過失がなければ悪い結果を回避できた
程度が何%あったのかが必要になっちゃう。


桑原 現実は、裁判所が「エイヤッ」
と決めているような感じですよね(笑)。

平井 医療行為に過失があったら、
それを放置していいのかという、
裁判官の思いもあったのでしょう。

桑原 「相当程度の可能性」理論が出て以降、
「和解を進めやすくなった」
と話していた裁判官がいました。
「落ち度があったのだから、因果関係が
証明できないとしても
多少の賠償をしてくださいよ」と、
医療側に言いやすくなったそうです。


平井 過失と結果の間に確固とした
因果関係がないんだから、
ある意味、感覚論ですよね。

2000年代以前に、適切な医療を受けることを
期待する権利が侵害されたとして、
若干の損害賠償請求を認める「期待権」
理論がありましたが、「相当程度の可能性」
はその理屈を変えた感じでしょうか。
でも、かえって分かりにくくなった
と私は思います。

医療裁判をするときには、
患者側は弁護士費用など
それなりのコストをかけています。
悪い結果との関係はともかく、落ち度のある
医療行為を行った医療側が、その経費を補填しても
いいのではないかという感覚があるようです。


「相当程度」の適用は拡大?

平井 今後は、「相当程度の可能性」
理論がどのような悪い結果まで
適用されるのかが問題でしょう。

桑原 現在は患者が死亡した場合と、
重大な後遺障害が残った場合に適用された
最高裁判例がありますが、
より軽度な後遺障害にまで
対象が広がる可能性もあります。


平井 東京地裁の裁判官が、
「重大な後遺障害に限らず後遺症が発生した
場合でも、『相当程度の可能性』が証明されれば

適用していいのではないか」
と書籍に記しています。

これを考慮すると、医療行為を受けた患者
何かしらの実害があれば適用される
可能性はあると思われます。

ただその場合、後遺障害の程度が
何等級までなら認めるのか、ミスと思わしき
医療行為があったら軽微な後遺障害でも
損害賠償の対象となるのか
──などの問題が残ります。


桑原 適用される範囲に限度が
なくなる可能性もありますね。

──今後のその行方によっては、医療訴訟
件数がまた増えていく可能性はありますか。

平井 軽微な後遺障害であれば、
過失と悪い結果との因果関係が
認められても損害賠償額は
それほど高くはなりません。

だとすれば、仮に「相当程度の可能性」
理論の対象が広がっても、軽微な後遺障害では
患者側の訴訟費用を補填できるほどの
賠償額になるとは考えにくいので、患者側が
提訴しようと考えるのは
どこかで限度があると思います。

しかし、対象範囲があまりにも広がり、
例えば後遺障害が発生しないときでも、
医療側がやるべき医療行為を
しなかったからといって賠償責任が
認められてしまうと、悪い結果の有無を
問わないことになってしまう。

これはかなり恐ろしいことではないでしょうか。
こうした判断をしないように、
裁判官にはお願いしたいと思います
(後編に続く)。

(2010年10月18日東京都内で収録)

『日経メディカル、2010. 12. 9』


記事にも書いてありましたけど。
医療訴訟自体は、昔からあるんだけど。
マスコミ等で全国に広まって有名になったのは、
1999年に起きた横浜市立大事件
都立広尾病院事件の後。

その後、いろんな医療訴訟が起きて。
マスコミの医師叩きもひどくなって、
一番ピークになったのが、2004年の
福島大野病院の事件だと思います。

その後、医師ブログ等で仕方ない、
等の意見が徐々に出てきて。
救急車の「たらい回し」とか、
そういう言葉もはやったんだけど。

結局、原因なのは医師不足とか医療費不足
そういうのもあって、現場は大変なんだ。
という事が徐々にマスコミでも報道されて、
世間にも広まってきた。
そして、医療訴訟トンデモ判決も減ってきた、
という事なんだと思います。


最近は、「某大新聞」 v.s. 「某有名大学」
とか、そういうマニアックな戦いが
一部では盛り上がっているようですが。

それも訴訟がらみではありますけど、
基本的には医療訴訟とは違いますしね。


自宅で分娩していろいろあって、
最後に助けようと思った病院が悪者にされている、
っていう医療ネタはありますけど。
まだ訴訟にはなってないみたいですし。

医療訴訟医療ネタの話というのは、
新聞やテレビ、ネットの記事になっているのを
我々医療関係者が見て、それを解説する。
というのが、医師ブログの基本スタンスなんですけど。

一番ネックになるのは、情報不足なんですよ。
結構、医療関係者のネットワークというのがあるから、
記事になっていない情報が入ってきて、
それも参考にしてブログの記事を書く、
という事もあるんですがね。

それでも、どこまで信用して良いのかわらない、
というのがあって、なかなか難しいんですよね。
自分でも、今更ながら、良く書いてたな、
と思いますね、ホント。

今でも、バリバリ毎日の様に記事を更新している
医師ブロガーもいますけど。
尊敬しちゃいます。
絶対、すごい忙しいと思うのにね。


個人的に、医療訴訟で一番記憶に残っているのは、
福島大野病院」の事件です。

担当の医師が無罪判決を勝ち取ったのは、
約3年前なんですけど。
この時に、裁判には入れませんでしたけど、
福島地裁まで行きましたからね、私。

それと、ブログが炎上した「奈良大淀病院」の件。
今、どうなっているんでしょうか。
ちょっと、良くわかりませんけど。

この2つが個人的には、最も印象に残る
医療訴訟の事件です。

どちらも、医療崩壊が最も進んでいる、
と言われている「産科」の話だ、
というのは偶然ではないと思います。


ちなみに、この記事で取り上げられていた本。
医療訴訟の『そこが知りたい』」
これ、かなりおもしろいので、
皆さんも是非読んでみてね!
ちょっと高いけど。

医療訴訟の「そこが知りたい」―注目判例に学ぶ医療トラブル回避術

固定リンク | コメント (2) | トラックバック (3)

大淀病院、医師に過失なし

Dr. I / 2010.03.02 00:14 / 推薦数 : 6

3年前にマスコミ医師ブログでも
すごーく話題になった「大淀病院事件」。
この民事裁判の地方裁での判決が、
今日出たようですね。

 

人気ブログランキング  応援もよろしく!



Yahooのトップページにも出ていましたが、
遺族側の請求は棄却。
医師には過失なし、という判決でした。

医学の専門科である、まともな医師であれば、
99%は医師の過失なし、という事件なんで。
刑事事件に関しては、不起訴になった事件です。
民事裁判を起こす権利は誰にでもありますから、
それに関して遺族に何か言うつもりはありませんが。
マスコミの報道に関しては、
もう少し、しっかりやって欲しいですね。

あれだけ、医師叩きをやって、
結果的に奈良南部ではお産が出来る病院
全くなくなってしまった
んですから。

医師過失なし
と大きく報道するべきなのですが。
どうやら、そういう報道姿勢ではないようですね。


「重症患者引き受ける体制を」
=搬送拒否で裁判長付言
-遺族請求は棄却・大阪地裁

2006年、分娩(ぶんべん)の際に脳内出血を起こし、
19の医療機関に受け入れを断られ死亡した
奈良県大淀町の高崎実香さん=当時(32)=の遺族が、
町立病院の担当医の診断ミスが原因として
同町などに約8800万円の損害賠償を求めた
訴訟の判決で、大阪地裁の大島真一裁判長は1日、
医師過失はなかった」として請求を棄却した。

同裁判長はその上で「『救急医療』は名ばかりで、
崩壊の危機にあると評される。
実香さんの死を無駄にしないために、
重症患者をとにかく引き受ける体制づくりが必要だ」
と異例の付言をした。

訴えていたのは夫の晋輔さん(27)ら。
原告側は、実香さんが意識を失った直後に
脳の異変を疑い検査すべきだったと主張したが、
同裁判長は「担当医が緊急事態と判断し、
検査より早期搬送を優先したのは合理的。
病態の進行は急激で、最善を尽くしても
救命できなかった」と述べた。

判決によると、実香さんは06年8月7日深夜、
町立大淀病院で分娩の際、意識を失った。

担当医は陣痛による失神と判断し、
けいれんなどの症状が出たため搬送先を探したが、
満床などの理由で相次いで断られた。

8日、国立循環器病センター(大阪府)が
受け入れ、脳内出血が判明。
帝王切開で出産したが、実香さんは
16日に死亡した。

大淀病院の西浦公章院長の話 
さまざまな観点から審理が尽くされた
結果であると受け止める。
今後病院として医療体制の充実に努力していく。
 

「2010年3月1日:yahooヘッドライン」


報道だけでは、はっきりわからないんですが。
この裁判を傍聴しに行った、たまり(ょ)さんが、
傍聴メモを頼りにブログをアップしてくれましたよ。

「大淀町裁判に行ってきました(その2)」


今回の判決だけでなく、最初から最後まで
ずーっと傍聴を続け、ブログでその経過を
報告してくれた方の文章なので。
非常に信頼性が高いと思います。

たまり(ょ)さんのブログ
「お決まりの日々?」


大淀病院事件」だけでなく、
どの裁判でも、最も重要なのは「内容」です。
当たり前ですよね。

具体的には、
1)主文
2)理由
1.事案の概要
2.臨床経過
3.争点に対する判断
 ①臨床経過
 ②大淀病院医師の過失
 ③因果関係
4)結論
5)付言


のうちの、
3.争点に対する判断
 ①臨床経過
 ②大淀病院医師の過失
 ③因果関係
4)結論


の部分ですよ、どう考えても。

たまり(ょ)さんのブログ
から引用させていただくと。


損害賠償請求事件(大淀町事件)
平成19年(ワ)第5886号 の判決文です。

傍聴メモから記憶を頼りに、言葉を埋めているので、
原文とは相違があると思います。
聞き取れていないところもあります。
________________________________

1)主文
1.原告らの各請求は棄却する。
2.訴訟費用は原告負担とする。


3.争点に対する判断
 ①臨床経過
 ②大淀病院医師の過失
 ③因果関係


①臨床経過
・8日0:00頃、突然の頭痛、嘔吐、
血圧上昇があった。

 →この時点で激しい出血が
右脳にあったと認めることができる

・0:14頃、突然の意識消失。
刺激しても意識回復しない。

 →この時点でかなりの量の出血が中脳まで。
脳ヘルニアが進行している状態と考える。

・1:37頃、痙攣発作
 →除脳硬直であると考えられる。
したがって、この時点で、
中脳・橋が両側性に傷害されていることになる。

・1:50頃、瞳孔散大、対光反射:右消失、左わずか 

 →右側脳室のヘルニアは完成、
左側脳室のヘルニアは進行中だが、
完成していない、と考えられる。

・2:00頃、瞳孔散大に加え、過換気で
呼吸障害も起こっていると考えられる。
このような状態では、脳ヘルニアの進行は
通常、非可逆的である。

救命不可能とはいえないが、
午前0:00頃の出血で、
2:00頃には瞳孔散大であった
M香さんの病態の進行は急激であり、
2:00頃から数十分以内に開頭手術を
行わないと救命不可能である。


③因果関係

このようにM医師に過失を認めることはできない。

しかし、M医師らがもっとも適切な
処置を取れたと仮定して、因果関係を検討する。

・0:14頃に、脳内出血の診断は無理なので、
経過観察としたことは相応。

・心因性意識消失は30分以内なので、
0:14頃から30分経過した時点で再び診察し、
意識が戻っていないことから、
脳に何らかの異常が生じていると判断し、
速やかに搬送先を探し始めるというのが、
大淀病院が取りえた最善の措置である。

・0:14から30分余後の0:50頃に
搬送先を探し始めたと仮定すると、
ここから先は、全く仮定の話であるが、
M医師は奈良県立医大に電話したと思われる。

・さらに、奈良県立医大にその時点で、
たまたま受け入れ可能であったと仮定する。
その場合直ちに搬送準備を始めても、
搬送には30分程度はかかり、
救急車の出動要請もあるので、
奈良県立医大到着は1:30頃になると考えられる。

・人的物的設備が整った国循でも手
術開始まで2時間かかっているのだから、
奈良県立医大でもこの程度の準備時間は
必要で、手術開始は3:30頃になったと考えられる。

・しかし、M香さんの病態の進行は急激であり、
2:00頃から数十分以内に開頭手術を
行わないと救命は不可能だったのだから、
3:30に緊急OPをしても救命の
可能性はきわめて低いと考えられる。

したがって、M医師らによって
想定できる最善のことをしても、
M香さんの救命はできなかったといえる。


4)結論

よって、原告らの各請求を棄却することとし、
主文の通りとする。


「大淀町裁判に行ってきました(その2)」


この部分ですよ。
詳細に経過を書いてありますし。
それに関して、
かなり具体的に検討されていて、
ほとんどその通り
だと思います。

結果、医師に過失はなかった」
と言っている訳ですから。

その後の 
5)付言
というのは、その名の通り。
あくまで、ちょっと付け加えた事
っていう事なんで。
本論に比べたら、重要度はかなり落ちます。

しかも、これって一般論ですから。
国の医療制度とか、そういう問題ですからね。
あくまでも、裁判官の思いですし。

客観的な事実。
具体的に、詳細に事実を検討した内容。
そして、医師には過失はなかった。

という事をメインに報道すべきですよ。
絶対に。

おまけの「付言」をメインにしてる場合ではありません。

過失のない医師を不当に叩いて、
その結果、奈良の南部ではお産が出来る
病院がなくなってしまった。
その原因はマスコミである。

という責任を持ってもらいたいものですね。
マスコミには。

そういう考えが少しでもあれば、
あの時の医師叩きは不当だったんだ
という思いが少しでもあれば。
「奈良大淀病院事件、医師に過失なし」
というタイトルになるべきだと思うんですけどねー。



奈良大淀病院事件に関しては、
産婦人科医の、僻地の産科医先生のブログ
「産科医療のこれから」

と、今回紹介させていただいた、
たまりょさんのブログ
「お決まりの日々?」
で、以前から、
かなり詳細に書かれています。

今回も、医学鑑定閲覧結果に関して、
「大淀事件!判決内容概要!」
に書いてありますので。
専門的な話に興味がある人は、
こちらも読んで見てくださいね!


ちなみに、私は循環器内科医で
専門科ではないんですが。
私も大淀病院事件に関しては、
かなり力を入れて記事を書いていたので。
もし良かったら、これらの記事も読んでね!
一般の人が読んでもわかるように、
わかりやすい言葉で書いているんで。


「奈良の産婦人科医」
「奈良の産婦人科医2」
「奈良の産科医、詳細1」
「奈良の産科医 詳細2」
「奈良の産科医 私見」
「大淀病院、分娩中止。マスコミを訴えろ!」
「奈良、大淀病院でお産中止2」
「医師の秘密漏示」
「大淀病院事件、ネットで詳細に2」
「大淀病院、専門家(神経内科医)の意見」
「大淀病院、脳外科的考察」3年前にマスコミ医師ブログでも
すごーく話題になった「大淀病院事件」。
この民事裁判の地方裁での判決が、
今日出たようですね。

Yahooのトップページにも出ていましたが、
遺族側の請求は棄却。
医師には過失なし、という判決でした。

医学の専門科である、まともな医師であれば、
99%は医師の過失なし、という事件なんで。
刑事事件に関しては、不起訴になった事件です。
民事裁判を起こす権利は誰にでもありますから、
それに関して遺族に何か言うつもりはありませんが。
マスコミの報道に関しては、
もう少し、しっかりやって欲しいですね。

あれだけ、医師叩きをやって、
結果的に
奈良南部ではお産が出来る病院
全くなくなってしまった
んですから。

医師過失なし
と大きく報道するべきなのですが。
どうやら、そういう報道姿勢ではないようですね。


「重症患者引き受ける体制を」
=搬送拒否で裁判長付言
-遺族請求は棄却・大阪地裁

2006年、分娩(ぶんべん)の際に脳内出血を起こし、
19の医療機関に受け入れを断られ死亡した
奈良県大淀町の高崎実香さん=当時(32)=の遺族が、
町立病院の担当医の診断ミスが原因として
同町などに約8800万円の損害賠償を求めた
訴訟の判決で、大阪地裁の大島真一裁判長は1日、
医師過失はなかった」として請求を棄却した。

同裁判長はその上で「『救急医療』は名ばかりで、
崩壊の危機にあると評される。
実香さんの死を無駄にしないために、
重症患者をとにかく引き受ける体制づくりが必要だ」
と異例の付言をした。

訴えていたのは夫の晋輔さん(27)ら。
原告側は、実香さんが意識を失った直後に
脳の異変を疑い検査すべきだったと主張したが、
同裁判長は「担当医が緊急事態と判断し、
検査より早期搬送を優先したのは合理的。
病態の進行は急激で、最善を尽くしても
救命できなかった」と述べた。

判決によると、実香さんは06年8月7日深夜、
町立大淀病院で分娩の際、意識を失った。

担当医は陣痛による失神と判断し、
けいれんなどの症状が出たため搬送先を探したが、
満床などの理由で相次いで断られた。

8日、国立循環器病センター(大阪府)が
受け入れ、脳内出血が判明。
帝王切開で出産したが、実香さんは
16日に死亡した。

大淀病院の西浦公章院長の話 
さまざまな観点から審理が尽くされた
結果であると受け止める。
今後病院として医療体制の充実に努力していく。
 

「2010年3月1日:yahooヘッドライン」


報道だけでは、はっきりわからないんですが。
この裁判を傍聴しに行った、たまり(ょ)さんが、
傍聴メモを頼りにブログをアップしてくれましたよ。

「大淀町裁判に行ってきました(その2)」


今回の判決だけでなく、最初から最後まで
ずーっと傍聴を続け、ブログでその経過を
報告してくれた方の文章なので。
非常に信頼性が高いと思います。

たまり(ょ)さんのブログ
「お決まりの日々?」


大淀病院事件」だけでなく、
どの裁判でも、最も重要なのは「内容」です。
当たり前ですよね。

具体的には、
1)主文
2)理由
1.事案の概要
2.臨床経過
3.争点に対する判断
 ①臨床経過
 ②大淀病院医師の過失
 ③因果関係
4)結論
5)付言


のうちの、
3.争点に対する判断
 ①臨床経過
 ②大淀病院医師の過失
 ③因果関係
4)結論


の部分ですよ、どう考えても。

たまり(ょ)さんのブログ
から引用させていただくと。


損害賠償請求事件(大淀町事件)
平成19年(ワ)第5886号 の判決文です。

傍聴メモから記憶を頼りに、言葉を埋めているので、
原文とは相違があると思います。
聞き取れていないところもあります。
________________________________

1)主文
1.原告らの各請求は棄却する。
2.訴訟費用は原告負担とする。


3.争点に対する判断
 ①臨床経過
 ②大淀病院医師の過失
 ③因果関係


①臨床経過
・8日0:00頃、突然の頭痛、嘔吐、
血圧上昇があった。

 →この時点で激しい出血が
右脳にあったと認めることができる

・0:14頃、突然の意識消失。
刺激しても意識回復しない。

 →この時点でかなりの量の出血が中脳まで。
脳ヘルニアが進行している状態と考える。

・1:37頃、痙攣発作
 →除脳硬直であると考えられる。
したがって、この時点で、
中脳・橋が両側性に傷害されていることになる。

・1:50頃、瞳孔散大、対光反射:右消失、左わずか 

 →右側脳室のヘルニアは完成、
左側脳室のヘルニアは進行中だが、
完成していない、と考えられる。

・2:00頃、瞳孔散大に加え、過換気で
呼吸障害も起こっていると考えられる。
このような状態では、脳ヘルニアの進行は
通常、非可逆的である。

救命不可能とはいえないが、
午前0:00頃の出血で、
2:00頃には瞳孔散大であった
M香さんの病態の進行は急激であり、
2:00頃から数十分以内に開頭手術を
行わないと救命不可能である。


③因果関係

このようにM医師に過失を認めることはできない。

しかし、M医師らがもっとも適切な
処置を取れたと仮定して、因果関係を検討する。

・0:14頃に、脳内出血の診断は無理なので、
経過観察としたことは相応。

・心因性意識消失は30分以内なので、
0:14頃から30分経過した時点で再び診察し、
意識が戻っていないことから、
脳に何らかの異常が生じていると判断し、
速やかに搬送先を探し始めるというのが、
大淀病院が取りえた最善の措置である。

・0:14から30分余後の0:50頃に
搬送先を探し始めたと仮定すると、
ここから先は、全く仮定の話であるが、
M医師は奈良県立医大に電話したと思われる。

・さらに、奈良県立医大にその時点で、
たまたま受け入れ可能であったと仮定する。
その場合直ちに搬送準備を始めても、
搬送には30分程度はかかり、
救急車の出動要請もあるので、
奈良県立医大到着は1:30頃になると考えられる。

・人的物的設備が整った国循でも手
術開始まで2時間かかっているのだから、
奈良県立医大でもこの程度の準備時間は
必要で、手術開始は3:30頃になったと考えられる。

・しかし、M香さんの病態の進行は急激であり、
2:00頃から数十分以内に開頭手術を
行わないと救命は不可能だったのだから、
3:30に緊急OPをしても救命の
可能性はきわめて低いと考えられる。

したがって、M医師らによって
想定できる最善のことをしても、
M香さんの救命はできなかったといえる。


4)結論

よって、原告らの各請求を棄却することとし、
主文の通りとする。


「大淀町裁判に行ってきました(その2)」


この部分ですよ。
詳細に経過を書いてありますし。
それに関して、
かなり具体的に検討されていて、
ほとんどその通り
だと思います。

結果、医師に過失はなかった」
と言っている訳ですから。

その後の 
5)付言
というのは、その名の通り。
あくまで、ちょっと付け加えた事
っていう事なんで。
本論に比べたら、重要度はかなり落ちます。

しかも、これって一般論ですから。
国の医療制度とか、そういう問題ですからね。
あくまでも、裁判官の思いですし。

客観的な事実。
具体的に、詳細に事実を検討した内容。
そして、医師には過失はなかった。

という事をメインに報道すべきですよ。
絶対に。

おまけの「付言」をメインにしてる場合ではありません。

過失のない医師を不当に叩いて、
その結果、奈良の南部ではお産が出来る
病院がなくなってしまった。
その原因はマスコミである。

という責任を持ってもらいたいものですね。
マスコミには。

そういう考えが少しでもあれば、
あの時の医師叩きは不当だったんだ
という思いが少しでもあれば。
「奈良大淀病院事件、医師に過失なし」
というタイトルになるべきだと思うんですけどねー。



奈良大淀病院事件に関しては、
産婦人科医の、僻地の産科医先生のブログ
「産科医療のこれから」

と、今回紹介させていただいた、
たまりょさんのブログ
「お決まりの日々?」
で、以前から、
かなり詳細に書かれています。

今回も、医学鑑定閲覧結果に関して、
「大淀事件!判決内容概要!」
に書いてありますので。
専門的な話に興味がある人は、
こちらも読んで見てくださいね!


ちなみに、私は循環器内科医で
専門科ではないんですが。
私も大淀病院事件に関しては、
かなり力を入れて記事を書いていたので。
もし良かったら、これらの記事も読んでね!
一般の人が読んでもわかるように、
わかりやすい言葉で書いているんで。


「奈良の産婦人科医」
「奈良の産婦人科医2」
「奈良の産科医、詳細1」
「奈良の産科医 詳細2」
「奈良の産科医 私見」
「大淀病院、分娩中止。マスコミを訴えろ!」
「奈良、大淀病院でお産中止2」
「医師の秘密漏示」
「大淀病院事件、ネットで詳細に2」
「大淀病院、専門家(神経内科医)の意見」
「大淀病院、脳外科的考察」

固定リンク | コメント (2) | トラックバック (1)

延命治療の中止

Dr. I / 2009.12.15 23:41 / 推薦数 : 1

川崎協同病院で1998年にあった、
延命治療中止」の有罪が確定しましたね。

個人的に、家族も本人も希望しないのに、
ずーっと人工呼吸器をつけていたり、
延命治療をするってのには反対です。

人気ブログランキング  応援もよろしく!



でも、今の法律では、一度人工呼吸器
つないでしまったら、どんなに家族が希望しても
下手したら医師が「殺人罪」で捕まる。
という可能性がありますから。
残念ですけど、医師人工呼吸器を止める、
っていうのは出来ないと思います。

最初から本人が延命治療を望まないし、
家族も望んでいない
、という事であれば、
人工呼吸器に繋がない」という事は
もちろん私もやっていないんですけど。

家族の意思も本人の意思もわからない。
という状態で、心不全が悪化しているとか、
肺炎でも喘息でもなんでも良いけど、
呼吸が悪くて人工呼吸器を繋ぐしか
救命できる方法はない。
というような患者は、
救急をやっていれば結構来ます。

ずーと前から、その病院にかかっていて、
何回も入院を繰り返していたりして、
事前に意思確認が出来ている人。
っていうのは、そんなに多くないんですよ。

という事は、それ以外の人はみんな
緊急の時には人工呼吸器を繋いだり、
といった延命治療をせざるをえない。
という事なんですよ。

大半の人が、延命治療をしてもらいたいか、
っていうと、多分そうではないんですけどね。

よくわからない場合は、救命治療のために
人工呼吸器を使うような延命治療をします。
後から、本人は延命治療を望んでいなかったみたいだ、
という事がわかったとしても、
下手したら医者が逮捕されますから。
もう、管を抜いたり、人工呼吸器を止めたり、
という事はできないんですよ。

残念ですけど、それが今の日本の医療の現実です。
これは、不幸な事だと思います。

戻る見込みもないのに、家族も本人も
延命治療を望んでいないのに、
一度人工呼吸器をつけたらはずせない。
というのは、誰にとっても不幸だと思います。
医療費も、相当かかりますから、
医療経済の面からも不経済です。

個人的には、もう戻る見込みがない、
という事が医学的にはっきりしていて。
本人、家族の意思も明確であれば、
仮に人工呼吸器がつながってしまっても、
それを外すのは構わない。
と思います。

でも、実際はそういう場面に遭遇しても、
機械を止める事はしていませんけどね、
もちろん私も。

いわゆる尊厳死に関しては、
私は賛成ですけど。
筋弛緩剤」を使う場合は、
薬で完全に呼吸を止めてしまいますから。
個人的には、ちょっと賛成できません。


医師の中では、川崎協同病院の
延命治療中止」で殺人罪で有罪
っていうのはちょっとおかしい。
という方も、かなり多いとは思うんですが。
私は、医師に関しても結構厳しい方だからなのか、
このやり方には違和感を感じます。

Bamboo先生が私と似たような考え方だったので、
このブログでも紹介させていただきますね。

「医療報道を斬る」、からです。
いつもお世話になっております。



明確な基準を

川崎協同病院の「延命治療中止」の
有罪が確定しました。
何で括弧付きかというと、私は延命中止ではなく、
やはり殺人だと思っていたから。

その根拠は筋弛緩剤の使用。
元気な人を殺す毒薬を使うのは
治療の中止などではなく、積極的な
殺人だという判断です。
でも、これは表面的な見方でした。

延命治療中止、有罪確定へ 
医師の免責、要件示さず 
最高裁が上告棄却 川崎協同病院事件 【1】
09/12/09 記事:共同通信社

川崎市の川崎協同病院で1998年、
昏睡(こんすい)状態の男性患者
=当時(58)=が気管内チューブを抜かれ、
筋弛緩(しかん)剤を投与され死亡した事件で、
殺人罪に問われた医師(55)の上告に対し、
最高裁第3小法廷は9日までに
「法的に許されない」として
棄却する決定をした。
懲役1年6月、執行猶予3年とした
二審東京高裁判決が確定する。

医師による終末期の延命治療中止の
違法性が刑事裁判で争われたのは異例で、
最高裁が判断を示したのは初めて。
医師の免責要件などへの言及はなかった。

決定は7日付。
5人の裁判官全員一致の意見だった。

田原睦夫(たはら・むつお)裁判長は
「必要な検査をせず、回復可能性や
余命を的確に判断できる状況でなかった。
回復をあきらめ、チューブの抜管を
要請した家族も病状の適切な情報が
伝えられておらず、抜管は
男性本人の推定される意思ともいえない。
法律上許される治療中止に当たらない」
と判断。
筋弛緩剤投与と併せて殺人罪の
成立を認めた高裁判決を支持した。

被告側は
「男性の意思を推定できる家族の
強い要請に基づき、チューブを抜いた。
法律上許される」と、無罪を主張していた。

決定などによると、男性は98年11月2日、
気管支ぜんそくの発作による
低酸素性脳損傷で入院。
意識不明となり、被告は同16日、
家族の要請で気管内チューブを抜いたところ、
男性が苦しむ様子を見せたため
看護師に筋弛緩剤を注射させ、
死亡させた。

一審横浜地裁は
「回復可能性があり、本人の意思表示も
家族の要請もなかった」と判断、
懲役3年、執行猶予5年とし、
二審は「家族の要請はあったが
男性の意思表示はなく、
死期も切迫していなかった」と判断した。


これだけ読むと、抜管して苦しんでいる
かのような体動が見られたので
筋弛緩剤を使ったようですが、
『判決文 (pdf)』を読むと、
事はそう単純ではなさそうです。

家族からの強い要請で抜管したら、
そのまま無呼吸ですぐに亡くなる
と思いきや、苦しみだしたので
複数の鎮静薬を投与、でも、
無効だった。

他の医師に相談したら
筋弛緩剤を使うよう示唆された。
そこで筋弛緩剤を使用した。
これが事実認定の内容のようです。

たぶんここはその通りなのでしょう。
一方で、脳波無しには予後の判定は
不能であるかのような判断がありますが、
これは法的脳死判定との混同じゃないでしょうか。

筋弛緩剤の使用は、言わばとどめを
刺す行為ですから、(現状では)
法的に許されないことに異存はありません。

でも、家族や相談に乗った医師には
何のお咎めもなく、何故ひとりの医師だけが
訴追を受けるのでしょうか。

主治医に罪を問うのなら、他の関係者にも
何らかの罪を問うのが筋だと思います。
(そうしろと言っているわけではありません)

判決では抜管自体にも違法性を認めています。
限りある医療資源を有効利用するためには、
死が免れない状況で、単なる延命のために
濃厚治療をすることは避けるべきです。
でも、刑事罰の恐れがあるのであれば、
濃厚治療を続ける他はありません。

やはり立法機関や司法機関が
きちんと基準を作り、現場に
それを示すべきです。
何の基準も示さず判断を現場に丸投げし、
後出しで、事例ごとに判断が変わる
裁判で裁かれるようでは、
現場は安心して仕事が出来ません。


『明確な基準を』



裁判所で認定された事が真実だ、
とは思わないんですけど。
判決文を信じるのであれば、
自分で呼吸していたのに、
筋弛緩剤が投与された、すぐ後に
呼吸が止まっています
から。

やっぱり、これは「尊厳死
とはちょっと言えないんじゃないでしょうか。
安楽死」という言い方もありますけどね。
でも、今の日本では、こういう行為は
ちょっと許されないかな、と思いますよ。
私は。

尊厳死」は認めているけど「安楽死」は認めない。
っていう国、結構ありますけど。
日本は「尊厳死」に関しても、
はっきり言って、まだコンセンサスを
得られていないですからね。


一回、自発呼吸が出て、人工呼吸器をはずして、
管も抜いていますから。
その後に、家族にしっかりお話をして、
再挿管しないで、そのまま
呼吸が悪くなったら亡くなった。
という経過であれば、問題ない。
とは思いますけど。

なんで、もう一回、挿管したんでしょうか。


この医師が有罪になった事に関しては、
賛否両論あるとは思いますが。
最高裁には「医師の免責要件」というか、
どういう状態だったら、人工呼吸器を止めてよいか、
気管チューブを抜いてよいか、っていう
基準」を出してもらいたかったですねー。

それがなかったんで、結局これからも、
無駄な延命治療が行われる事になりますね。
残念です。

固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)

医療崩壊の原因の一つとして、
医療訴訟」というのがあります。

民事訴訟を起こす事自体は、
国民に認められた権利ですから。
これを制限すること自体は難しいのですが。

刑事訴訟に関しては、ちょっと別だと思います。

ほとんどの場合は、遺族から被害届が出て、
それを受けて警察が書類送検する。
という形なのですが。

単なる「合併症」で患者さんが亡くなられて。
病院側も、もちろん合併症であると主張して。
それを、遺族の方達も納得しておられている。
当然、被害届なんかも出していない。

という様なものも、結果が悪ければ全て
書類送検」する、という事では
医療崩壊が加速するのは、間違いないと思います。



 

人気ブログランキング  応援もよろしく! 

 



告訴ないのに医師を送検
医療現場から反発強まる可能性も


食道静脈瘤の内視鏡治療後に患者が死亡した事故で、
近江八幡警察署は6月末、医師2人を書類送検した。

だが病院側は過失を否定している上、
遺族からの被害届もない。
警察の対応には疑問点も多い。

 

問題となった事故は4年前に起こった。
2005年10月、近江八幡市民病院
(現・近江八幡市立総合医療センター〔滋賀県〕)の
消化器内科医が、肝硬変で食道静脈瘤だった
当時69歳の男性に内視鏡的硬化療法・結紮術を行った。

その時、オーバーチューブで
食道入口部右梨状窩を誤って7~8mm損傷した。


主治医は損傷に気付いたが、まずは治療を続け、
瘤の硬化、結紮は成功。梨状窩の損傷に対しては
外科治療と内科治療の選択肢があったが、
患者の肝機能が悪く手術は厳しいと判断。

複数の消化器内科医で話し合った上で
「消化器内視鏡ガイドライン」に従って保存的治療を行った。


その後患者に変化はなかったが、
治療後4時間たって突然呼吸苦を訴え急変。

呼吸不全となり20分ほどで心肺停止に陥った。
心肺蘇生を試みるも午前零時過ぎに死亡。
病院は警察に異状死の届出をした。


翌日、同病院は医療安全管理委員会を開き、
事故をこう分析した。

「梨状窩損傷の事故はあったが不可抗力的なもので、
適切な対応をしており過失はない。
死因については、梨状窩損傷を引き金に
複合的な要因で起きたもので、
創傷治癒の遅延から起きた喉頭浮腫、
または損傷部から出た血液の誤嚥による
窒息死と考えられる─」。

ところが、近江八幡警察署は今年6月、
担当医2人を業務上過失致死の疑いで
大津地検に書類送検した。


医師間でも処置の判断が二分

警察は、司法解剖の結果、事故で生じた
食道上部右側穿通によって左右胸腔へ空気が侵入し、
遷延性窒息が起きたことが死因と発表した。

主治医らは、治療終了後にCT検査を行い
皮下気腫、縦隔気腫を確認したにもかかわらず、
外科・内科両方の治療法がある中で
専門知識を持つ外科医に相談せず
適切な措置を怠った、というのが警察の判断だ。


一方、同病院医療安全管理室主幹の
尾田憲章氏は本誌取材に対して、
「CT検査で縦隔気腫は認めたものの、
気胸はなかった点を確認しており、
気胸による遷延性窒息が死因ではない」
と反論した。


そもそも、損傷部への不適切な対応を指摘した
近江八幡警察も「内科医は保存的治療を推奨し、
外科医はそれでは十分でないとするなど、
医師の中でも判断は分かれ、
非常に難しいケースだった」
と話す。

診療時間外で主治医らが外科医に相談できなかった上、
ガイドラインに従って対応したという点からも、
明確な過失があったかどうかの線引きは難しい。

 
もう一つ、本ケースが異例なのは、
遺族側が告訴していないのに捜査が進んだことだ。

警察庁刑事局刑事企画課の田中勝也氏は、
個別の事件については分からないとしつつも、
「一般的には、警察は患者遺族側からの
被害届が出てから捜査に乗り出すことが多い」
と話す。

同病院の尾田氏は
「事故後すぐ、病院は遺族に説明して謝罪し、
良好な関係を築いていた。
なぜ警察が事件として取り上げたのか腑に落ちない」
と語る。


帝王切開手術を受けた妊婦が死亡し、
担当医が起訴されたものの、08年8月に
無罪となった福島県立大野病院事件以来、
医療過誤に対する捜査はより慎重になったといわれる。

大津地検が今後、医師を起訴する判断を下せば、
こうした“流れ”に逆行することになる。
その場合、医療現場の捜査機関への
反発がぶり返す可能性もある。


「日経メディカル:2009. 8. 5」



書類送検」というのは、「起訴」された訳ではなく。
その名の通り「書類が送られた」ってだけの話なんで。
本当は、ニュースになる問題でもないんですけどね。

やっぱり、既存のマスコミとかで「書類送検
っていう事で報道されちゃうと、

病院や医者が悪い事したんだろ。

という目で、一般の人たちには思われます。

そんな事言うんだったら、お前もブログの記事にするな。
と言われたら、元も子もないんですけどねw


私の周りでも書類送検された医者はいますけど。
そうなると、本人も廻りの医者も、
いろいろ話を聞かれて、日常業務が滞るようです。

医者から聞いた話を、素人の警察が文書にしても、
全然話が違っちゃうみたいなんですよ。

もちろん、内容が違うままにしておいたら、
その内容によって、現場の医師
不利になる場合もあるので。
当然、間違っている所は訂正して。
またやり直してもらっても、やっぱり全然違う。
なーんて事もあるようですからね。

相当、大変だと思います。

ただでさえ、日常の臨床で忙しいのに、
余計な事務仕事がまた増える
っていう事で、医療崩壊が更に進む
っていう面もあるし。

何より「医者だって人間ですから」。
そういう無駄な事に時間と労力を費やされたら、
心が折れる
という事になります。

現場の医師の心が折れて、逃散するから、
医療崩壊が進んでいる。

という現状をきちんと認識して。

医療を始め、専門的な知識を要する事に関しては、
書類送検」をする場合にも、
きちんとしたルールなり、運用方法なりを
作った方が良い
と思いますけどねー。

 

 

「追記」

すいません。
一応、書類送検に関しては、
それなりに知っていたつもりだったんですが。
ちょっと勘違いしていた部分があったので、訂正します。

>「書類送検」というのは、「起訴」された訳ではなく。
その名の通り「書類が送られた」ってだけの話


んで、警察が検察に判断を丸投げするもんだ。

ってとこまでは、私も知っていたのですが。



記事訴訟法や同法規則、国家公安員会規則の
犯罪捜査規範などの法令で、警察が捜査した結果は、
全て例外無く検察に報告して、起訴か不起訴かを
検察に決定して貰わなければなりません。

すなわち書類送検というのは、警察の捜査結果報告書を、
上級庁の検察に送ることです。
この手続は上記の不例規則等により、
警察が捜査した全ての事件について
義務付けられております。

司法解剖が行われたら、被疑者不明だろうが、
起訴処分に否定的な警察の意見が付こうが、
とにかく警察署は捜査結果の書類一式を
検察に送る義務がある。

警察や検察にとっては、法令や規則に基づいた
ルーチン的業務処理なんですが・・・。



という事だそうです。
勉強不足でした、すいません。


警察庁刑事局刑事企画課の被害届云々のコメントは、
読めば分かるとおり本事件の詳細を知った上での
コメントではなく、刑事捜査の一般論としての論評でしょう。


うーん、そうですか。
私も、勘違いしていました。

固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)

労働基準法違反病院、大ブーム

Dr. I / 2009.04.05 23:26 / 推薦数 : 4

いやー、最近は、愛育病院
日赤医療センター等、都内の病院でも
労働基準法違反病院
大ブームですね。

人気ブログランキング  応援よろしく! ポチッ


医師労働基準法違反ってのは、
最近始まったもんではないんですが。
これだけ医療崩壊が騒がれると、
労働基準局
放置する訳にはいかない。
ってとこなんでしょうね。

最近、医者当直
労働基準法違反だ、
っていう事は、マスコミでも報道されて、
結構広まってきましたけど。
これは、ここ1年の話なんですよ。


医師ブログなんかでは、2,3年前から
そういう話はしていたんですけどね。

医師当直労働基準法違反だ。
って事を大手マスコミで、
最初に書いたのは、
私の知る限り、「読売新聞」です。

2007年12月13日に読売新聞

医師 増える過労死 「当直」違法状態

というタイトルで取り上げています。

その時に書いた記事が、これっす。
『医師の当直は労働基準法違反』


医師当直労働基準法違反
って事以外にも、
医者時間外手当を払わない病院
というのも、報道されていますよね。

県立奈良病院は、もう一昔前だけど。
ここ1年位で、
マスコミに報道されたもの。
ざっと思いつくだけで、
東北大学病院、札幌医大病院
佐賀県立病院好生館、県立広島病院
山梨県立中央病院

あたりでしょうかね。

公立病院大学病院
多いんですけど。
これって、公立病院大学病院
労働基準法違反で時間外手当を
医者に払ってない。
でも、民間病院は払ってるよ
って事ではないんです。

民間病院だと、証拠が少ないから
なかなか難しいよ、って話です。

はっきり言って、民間病院の方が
黒字を確保しなきゃいけないですから。
厳しいとこは厳しいんっすよ、実は。


具体的に労働基準局から
是正勧告書が出ている病院
っていうのは、
ちゃんとリストになっていて。

小児科医で時間外労働に関して、
非常に詳しい江原朗先生が、
まとめてくれています。

『小児科医と労働基準』
このHPの左側の
『是正勧告書など』
を見ると、


「是正勧告書など」

1.滋賀県立成人病センター

2.佐賀県立病院好生館

3.筑波大学

4.広島大学

5.県立多治見病院

6.山梨県立中央病院

7.県立広島病院

8.大崎市民病院(宮城)

9.三田市民病院(兵庫)

10.市民病院(横浜市)

11.長崎大学

12.広島市安佐市民病院

13.福井県立病院

14.鹿児島大学病院

15.群馬大学

16.三重大学

17.信州大学

18.九州大学

19.香川大学

20.都立府中病院

21.島根大学

22.長崎大学医学部・歯学部附属病院

24.都立墨東病院

29.東北大学病院

30.都立駒込病院

31.北九州市立医療センター

32.国立帯広病院



こんなにあるんですねー。
やっぱ、公立の病院が多いんですか。
これを見ても。

労働基準法違反病院はマスコミや
労働基準局でも
大ブームになってるけど。
医師ブログでも、ブームみたいなんで。
私も、これに便乗してみまーす。

ざっとあげてみると。

「うろうろドクター」
『時間外診療体制の問題は最優先課題だ。』

「新小児科医のつぶやき」
『日赤医療センター 労基署への挑戦』

「産科医療のこれから」
『年俸制だから、時間外手当は要らない。』

ここらへんでしょうか。
この中でも、うろうろドクター先生の
ブログ
が一般の人たちにも
わかりやすい内容だったので、
引用させてもらいますね。



医師を増やせば
医療崩壊は止まる? 」
政策ビジョン研究センター
准教授  中島 勧


昨今、医療政策上の問題として、
医療崩壊という現象が
取り上げられることが多くなっています。

医療崩壊とは、主に病院に勤務する
医師が退職したことをきっかけとして
ある地域の医療体制が維持できなくなる
現象を指しています。

原因としては、若い医師
きつい医療現場を避けるように
なったためとか、医療訴訟が増
えているからとか、
医療事故を原因として
逮捕された医師がいたため
などと言われています。

しかし崩壊していると言われる
医療機関や診療科を見ると、
上記の原因以上に、
時間外診療体制の運営が
不適切であること、
具体的には当直制度により
維持されていることの方が
大きな原因になっている
ようにも思えます。
そこで今回は医師の当直制度に
ついて問題提起させていただきます。


当直とは労働基準法では
宿日直と呼ばれています。
一般的に宿直という言葉で
想起されるのは、
「非常事態に備えて、職場に泊まって
手持ち無沙汰に時間を過ごす役回り」
であり、日直は休日日中の
当直に相当します。

これが労働基準法の
宿日直に相当する業務です。

正確に言えば、
労働者が通常の勤務終了後、
引続き翌日の所定始業時刻まで、
事業場内の定時的巡視、
文書および電話等の収受、
非常事態の発生に備えて
勤務するものであり、
勤務時間中に相当の
睡眠時間が設定され、
常態としてほとんど労働する
必要のない勤務を指しています。

回数も宿直が週に1回まで、
日直が月に1回までと制限があるため、
宿日直合わせて 1ヶ月に
5~6回以下でなくてはなりません。


それでは医療の世界では
どうなっているかと言えば、
「宿日直」すなわち「当直」は、
通常の勤務時間終了後から
朝の始業時までに生じる
すべての業務を担当しています。

もちろん通常の勤務が
免除されることはありませんから、
当直を担当する日には、
朝の勤務開始から
翌日の勤務時間終了までの
1日半が勤務時間と言うことになります。

さらに日中の通常業務に加えて、
救急外来の診療も含まれています。
時間外に受診される患者さんは、
状態が不安定な場合が多い上に、
診療体制が限定されていることから、
診療を担当する医師にとっては
大変な負担となります。
また回数制限が有名無実化している
医療機関も少なくありません。


実際、このコラムを読んで
いる方の中にも、「当直医」の業務は
夜間診療だと思っていた方も
多いかもしれませんし、
医師の間でもそういう認識が
一般的だと思います。

その証拠として、非常勤医師
求人情報では
当直医募集、救急外来5~10名、
救急車2~3台、病棟管理」
というようなものが多く見られます。

常勤医の募集でも、民間病院なら
まだしも公立病院常勤医でさえ、
当直回数が月に10回以上あることが
明示されている場合があります。
少し前まではテレビや新聞の報道でも、
当直医が夜遅くまで通常業務を
続けながら救急外来の患者を
診察して朝を迎えたとか、
家に帰った途端に呼び出されて
朝日を見ながら家に帰った
などというものを見ることが
できましたが、特に
問題視されていませんでした。


そうは言っても、勤務時間外に
医療が必要な緊急事態があれば、
医師が対応することは
当然のことであるため、
止むを得ない場合に限り法律上も
時間外手当の支給を要件として
実施可能とされています。

しかし実際には、時間外診療が
行われた場合でも、時間外手当が
支払われないことが多く、
さらに深夜に呼び出された時の
交通費さえ払ってもらえないことが
多かったのです。

最近では、そのような医療機関は
報道されなくなりましたが、
それは問題点が解消されたためではなく、
その状態自体が違法であることを
自覚しているため、報道されることで
労働基準監督署から睨まれることを
恐れて、医療機関が取材を
受けなくなったため
と言われているのです。

時間外診療が当直医により
維持される状態を放置して来た
厚生労働省が、労働基準法に基づいて
当直医による時間外診療の提供を
禁じているというのであれば、
一体誰がこの状態を改善するのでしょうか。


近年、医療崩壊と呼ばれる現象の
報告が多数あり、その原因として
前記のように訴訟の増加や
医療事故に対する逮捕などが
挙げられていますが、
これは急激に進行する医療崩壊の
説明としては不十分です。

実際には医師達は、これまで
時間外の奉仕的労働、
特に当直制度の名を借りた
夜勤体制に何とか耐えてきたものの、
その上、民事訴訟ばかりか
逮捕までありうるという現状に
耐えられなくなってきた可能性が
高いと思われます。

実際に医療崩壊が起こっているのは、
診療科としては小児科や産婦人科が多く、
それ以外の診療科でも都市部以外の
基幹病院を中心に多数報告されています。

いずれにおいても時間外診療の
需要が高いために当直医の負担が
過大になりがちであり、時間外診療の
負担が過大な医療機関
(多くは地元の基幹病院)の医師
次々と退職しているのです。


そうは言っても、当直制度を適切に
運用することは、現在の診療体制や
医師数では全く不可能です。

最近になって医師養成数を増加させる
という方針が政府により立てられる
ようになっていますが、その目的は、
漠然と医師が足りないから
というだけで、時間外診療体制の
整備とか当直制度の適切な運用
とはされていません。

慢性疾患を中心とした日常診療と、
緊急対応を要することの多い
時間外診療を一緒にして
医師数の過不足を語る
べきではありません。

医師数が足りないか
どうかという問題はスケジュールの
立て方や評価方法によって
変わる可能性がありますが、
当直医による現状の
時間外診療体制は明らかに
労働基準法違反であり、
患者さんにとっても、疲れて
判断力の低下した医師に診療を
受けることになってしまうのです。

時間外診療体制の問題は、
医師・患者の双方のために
早急に解消されなくてはならない
問題であり、医療政策の
現場においては最優先で
取り上げていただくことを
期待しています。


(参考文献)
都市部民間二次救急病院
現状と課題、
「医学のあゆみ」
Vol.226 No.9 pp.708-713、2008年

『東京大学 政策ビジョン研究センターのコラム』



当直医による現状の
時間外診療体制は明らかに
労働基準法違反であり、
患者さんにとっても、
疲れて判断力の低下した医師
診療を受けることになってしまうのです。

まったくその通りです。
今すぐに完璧に労働基準法を
遵守する体制作りは無理ですが、
このまま労働基準法違反を放置して
その場しのぎを続けていては、
医療崩壊は取り返しがつかない
状況になることでしょう。


『時間外診療体制の問題は最優先課題だ。』



どんなに優秀な医者だって、
36時間連続勤務をしていたら、
集中力がなくなるんですよ。
医者だって人間なんだから。

そんな状態で、
命に関わる手術や治療を
行ってもらいたいですか。
それが、患者さんの
ためになるんですか?


個人的には、医者
給料
をもっと上げろ、
という主張をするつもりはありません。

でも、医師に時間外手当を払わない、
っていう事が当然になると、病院は、
医者に仕事をやらせた方が安いから、
なんでも医者にやらせろ」

って事になる。

医療秘書や事務員、
看護師にできる事も、
全部医者に押し付けて。
結局、医者が過労になる

そしたら、やはり患者さんに最高の
治療を提供できない、

っていう事になりますよ。

だから医者にだけは、
時間外手当を払わない、
っていう事は許される事では
ないと思います



はっきり言って、これだけ問題に
なっているにも関わらず、
医者の身分「医長」、「課長」という名前をつけて、
管理職」という名の下、
時間外手当を払わない病院
というのは、とてもたくさんあります。

ちょっと前に問題になった、
名ばかり管理職」ですよ、こんなの。


でも、こんな事が続いたら、
医療崩壊はますます進む
って事がやっとみんなわかってきた。

それで、労働基準局も
やっと動くようになった、
という事なんでしょうね。


この動きが、全国的にもっと広がれば、
最終的には患者のためになるので。
是非そうなって欲しいですね。


『「大学病院のうそ」 ~現役医師(Dr. I)が暴露する、大学病院の秘密』

固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)

東京女子医事件、高裁も無罪

Dr. I / 2009.03.27 23:35 / 推薦数 : 6

東京女子医大、心臓手術事件」で
不当逮捕された、佐藤一樹先生
無罪判決が出ましたよー。

人気ブログランキング  応援もよろしく!



平成13年に東京女子医大
心臓手術を受けた12歳の女児が
心臓手術中に死亡した、
東京女子医大、心臓手術事件

この事件で、
トカゲのしっぽ切りにあい、
罪を被せられ、逮捕、勾留されて
訴えられた先生が、
佐藤一樹先生です。

佐藤一樹先生は、
『紫色の顔の友達を助けたい』
というブログを書かれていて、
『名誉毀損で医師が勝訴!』
『紫色先生、名誉毀損でまた勝訴』
など、このブログでも何回か、
紹介した事がありますね。


東京女子医大、心臓手術事件」が
一般の人達に有名になったのは、
「カルテ改ざん」のせいですね。
「カルテ改ざん」は当然、違法行為ですから、
もちろん私も、それを行う医師
許すつもりはありません。

ただ、「東京女子医大事件」
逮捕、勾留、起訴されて、
今日まで裁判で争っていたのは、
「カルテ改ざん」ざんを行った医師とは
別の医師なんですよ。
結構、勘違いされてる人いますけど。


「カルテ改ざん」を行った医師は、
悪い事をしていますから。
罪を認めていたので、
逮捕されてない
んですけど。

佐藤一樹先生は、手術中に
工心肺の機械を扱っていただけで、
何も悪い事をしていないから、
罪を認めなかったんですよ。

否認をしたから、警察に逮捕され、
長いこと留置所、拘置所に入れられた。


しかも、その逮捕の根拠となったのが、
病院の内部報告書なのですが。

この内部報告書っていうのが、
心臓の手術にも関わらず、
心臓血管外科医が入らないで、
人工心肺の事がわかる人が
1人もいない。
そういう、専門家が1人もいない
チームが書いた内部報告書ですから。
内容は、いい加減この上ない物なんです。


佐藤一樹先生のブログから引用すると、

本件における検察官の主張、立証は、
医学的水準に立脚した
事実の解明にほど遠いものであった。

検察官は、非科学的な東京女子医大
報告書に安易に立脚し、その論理と
結論を無批判に受け入れた。

このことは、学会で全く
支持されることがなかった
「吸引ポンプの回転数を上げたことが
陽圧をもたらした」との結論、
さらには物理学の初歩も弁えない
「圧の(不)等式」が東京女子医大
報告書と検察官の冒頭陳述要旨だけに
現れていることからも明白である
(報告書〔甲17添付〕14頁、
12頁、冒頭陳述要旨6~7頁)。

医学の水準を無視し、それどころか
自然科学の考え方すら無視するという
非科学的な捜査、起訴


です。

病院が、1人の末端の医師に、
罪を押し付けるために書いた
内部報告書

これのみを元に逮捕した警察。
そして起訴した検察。

医療関係者にとっては、
こちらの方で有名な事件です。
東京女子医大、心臓手術事件」は。


早速yahooヘッドラインにも
出ているようですね。



人工心肺誤操作の
東京女子医大医師 
2審も無罪
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090327-00000559-san-soci


東京女子医大病院(東京都新宿区)で
平成13年、心臓手術中に
人工心肺装置の操作を誤り、
小学6年の平柳明香さん=当時(12)=
を死亡させたとして、
業務上過失致死罪に問われた
元同病院医師、佐藤一樹被告(45)の
控訴審判決公判が27日、
東京高裁で開かれた。

中山隆夫裁判長は、無罪とした
1審・東京地裁を支持、
検察側の控訴を棄却した。


17年11月の1審判決は、
人工心肺装置の
フィルターの目詰まりから
血液の循環が悪化、女児が重い
脳障害となり、死亡したと認めた上で
「危険性を予見できなかった」と判断。
被告の過失を否定した。

フィルターの目詰まりをめぐり、
控訴審で検察側は
「装置を適切に操作しないことが
患者の死亡に
つながることは予見できた」
として、1審の事実誤認を主張。
「十分な配慮をして操作していれば
事故を避けられた」と、
1審判決の破棄を求めた。

弁護側は「当時の医学水準として、
フィルターが水滴などで詰まる
可能性を予見できなかった」
と改めて無罪を主張した。

佐藤被告は13年3月、
人工心肺装置を不適切に操作し、
脳障害で死亡させたとして
14年6月に逮捕され、
翌月、起訴された。


『2008年3月27日:産経新聞』



まあ、記事にはなっていますけど。
これ、名誉毀損で訴えられますよ。

地裁でも高裁でも、「無罪」判決が出て、
人工心肺誤操作ではない。
っていう事が裁判で
明らかになっていますから。

>人工心肺誤操作の
 元東京女子医大医師


って何ですか?
完全に「誤報」ですね、これ。

今だにこういう報道がされる、
って事が残念でなりません。


他の新聞社も報道していますから、
比べたい人は、くらいふたーん先生
ブログを読んでみてね!
『サッカーと地域医療の部屋:無罪判決』


まともな医療関係者から見たら、
当たり前の結果なのですが。
無罪の結論が出るまで、6年半という
長い年月がかかってしまいました。

地裁でも無罪判決
出ているのですが、
検察が無謀にも控訴したため、
こんなに時間がかかったんです。


法律判断ではなく、事実認定で
2度目の無罪を勝ち取ったからには、
法律判断しか出来ない上告には
もう意味がないと思います。
であれば、実質的には、
これで終わりでしょう。


判決文は、うろうろドクター先生が、
途中まで書いてくれているみたいなので。
詳しく知りたい人は、
こちらを読んでくださいね!

『東京女子医科大学事件、高裁判決文です。』


主文:
本件控訴を棄却する。

理由の要旨:
控訴を申し出た
検察官の控訴の趣意は、
事実誤認の主張である。

結論:
以上の次第であって、
本件事故に関し被告人に
過失責任を問うことはできないから、
被告人に対し、無罪を言い渡した
原判決は、総論において、正当であり、
事実誤認をいう所論は、理由がない。


「手術中の脱血カニューレの
位置不良等により上大静脈からの
脱血が相当な時間にわたって不良となり、
その間送血は続けられていたため、
頭部に鬱血が生じたことによる
可能性が高いとの結論に達した。」

と認定したことが1審との大きな変化です。




判決後に開かれた記者会見の様子が
m3.comで書かれていますね。

m3の会員しか読めないみたいなので、
一部コピーさせていただきますne。


◆控訴審も医師無罪
東京女子医大事件
(2009年3月27日配信のMR君より)

「一審の無罪判決後、
ブログで主張してきたことが
ほぼ100%認められた判決。

医療事故においては、原因究明と
再発防止が非常に
重要になってきますが、
そこまで踏み込んで
判決を書いていただいて、
いい判決文だと思っています。

裁判長が最後に
『医療事故にかかわった一人として、
またチーム医療の一員として、
この事故を忘れずに
今後を考えていただきたい』
とおっしゃいました。

この再発防止については
ブログでも書いており、
また今年10月の日本胸部外科学会の
医療安全講習会の講師を私は務めます。
院内調査報告 書がテーマで、
心臓外科医として死因はどうであったか、
今後の再発防止にはどうすればいいかを
学術的にも発表していきます」


最後に、「遺族への思い」を
記者から聞かれた
佐藤氏のコメントをご紹介します。

「なぜ亡くなったのかを知りたい
という思いを、裁判所が
示してくれたことは、
ご家族への礼儀に
なったのではないかと思います。

女子医大が作成した
(事故調査原因に関する )
内部報告書は、患者さんの死因を
科学的に考えなかった、
あるいは根拠なく書いてしまった。

その態度を女子医大に
反省していただきたい。
僕も同じ病気(心房中隔欠損症)
だったのであり、
子供を亡くす親の気持ちは
計り知れないものがあります。
せめて今回、死因が
分かったということに
関してはご家族にも
ほんの一部ですけれども
納得ができたので は
ないかと思っています」




佐藤一樹先生
今日はお疲れでしょうから、
ゆっくり休んで下さい。
近々詳細をブログに書いてくれるでしょう。


無罪だったので明日、
お父さんのお墓参りに行くのかな。
詳しく報告してあげてください。

本当に、お疲れ様でした。



この事件の概要を知りたい人は、
日経メディカル2008年7月号を
読んでくださいね!
『「200807.pdf」をダウンロード』

固定リンク | コメント (2) | トラックバック (3)

大学病院から救急撤退、鳥取

Dr. I / 2009.02.04 23:33 / 推薦数 : 9

鳥取県では救急
壊滅しそうなんですが。
今のところ全国ニュースには
なっていないようですね。

鳥取大学医学部付属病院
救急専属医、四人が
三月末で全員退職
するそうですよ。

 

応援もよろしくね!

→ 人気ブログランキング



地方の病院で、内科医が
数人辞めるとか。
24時間救急ができなくなりました。
っていう話だったら、ここ数年で
いやってほど聞きましたが。

さすがに、大学病院救急で、
教授含め全員辞める。
っていうのは、全国ニュースに
なっても良いネタだと思うんですが。

鳥取なら、そんなに
インパクトないって事なんでしょうか。



鳥大医学部付属病院 
4月以降救急専属医不在に

中海圏域を中心に山陰両県の
救命救急医療を支える
鳥取大学医学部付属病院
(米子市西町)救急災害科の
八木啓一教授(54)ら
救急専属医四人が三月末で
全員退職し、四月以降、
同院の救急専属医
不在となる期間が生じる
可能性もあることが三日、
山陰中央新報社の取材で分かった。

八木教授
医師流出と負担増の悪循環で
体力、気力ともに限界。
救急医療の窮状を
認識してほしいの思いもあり、
昨年末、辞表提出に踏み切った」
としている。

 
同科の救急専属医は、
八木教授と四十代の准教授
卒後五、六年目の二人の
若手医師の四人。
三人が救急専門医の資格を持つ。

八木教授は二〇〇四年十月に
救命救急センターが
開設されて以降、
同センター長も務める。

同センターは、交通事故による
多発外傷や心停止など
最重症の三次救急患者を
年間約九百人受け入れている。

同科は、医学生への教育と
卒業後の臨床研修において
必須のコアカリキュラムとされる
救急医学の教育を担当。
さらに学外でも、県消防学校での
教育や県内各地での
救命講習などの役割を担う。

後任教授の確保について
豊島良太病院長は
「四月一日にすぐ着任できる
方向で検討している。
規則的には可能」と話す。

病院長によると今回は
通常の公募でなく、病院側が
一人または複数の
候補者を指名し、受諾した
候補者を学内の選考委員会で
審査する異例の
ノミネート方式で選ぶ予定。

教授以外の救急専属医
公募するが、確保のめどは
たっていない状況で
「万一、救急専属医不在が
生じれば、救命救急センターでの
応援経験がある他科の医師
対応することになる」
という。

島根大学医学部付属病院
(出雲市塩冶町)でも〇八年七月、
救急部の坂野勉教授(57)が
辞表を提出しており、
三月末で退職する。

後任は未定だが、既に
後任教授の公募は終了しており
教授不在期間は長くても
一カ月程度だと思う」(同教授)。

同院では四月以降も、
教授と講師ら三人の
救急専属医は残る。


『山陰中央新報:2009.2.4』




私は鳥取周辺の事は
全くわからないのですが。

鳥取近辺の知り合いの
医師によると。


鳥取県には大きい病院(500床以上)
ってのは大学のみだそうですよ。

他の病院はないんです。

という事です。

だから、本来ならば3次救急は、
大学病院以外では不可能なんです。


その大学病院から、
救急医が全員撤退。


という事なので。
これは、結構衝撃的だと思うんですが。


東京なら、大学病院もいっぱいあるし。
それ以外の大きな病院も、
たくさんあるので。
一つの病院救急撤退したとしても、
なんとかなりますよ。

きっと大騒ぎはすると思いますけどね。
もっと。

でも、この地域で唯一
と言っても良い大学病院から、
救急専門の医師が全員辞めた。
鳥取県の救急は壊滅するかも。

というのに、全然報道しないんですねー。

しかも、地味ーに隣の島根県でも、
救急部の教授辞表
出してるし。

この地域、かなりやばいんじゃないw


そもそも。

>鳥大医学部付属病院 
 4月以降救急専属医不在に
 教授救急専属医四人が
 三月末で全員退職し


って。

4人で救急全部やろう、っていうのが
無理な話なんですよね。

そりゃあ、辞めるわな、普通。

教授含めて4人ですよ。
いったい、当直何回やってるんでしょうかね。
労働基準法違反どころか、
過労死認定基準の2倍くらい
働いているんじゃないでしょうか。
下の二人は、たぶん。

教授も4人しかいなかったら、
余裕で当直とか
やらされてるんだろーなー。

嫌ですねー。
大学教授にもなって、
救急当直
やるなんて。

ただの寝当直でも、
出来ればやりたくないわー。
俺だったら。

明日になっても、ニュースにも
ならないのかなー。
鳥取救急壊滅ネタ


医療崩壊について知りたい人は、
これ読んでね!
→ 医療崩壊―「立ち去り型サボタージュ」とは何か

固定リンク | コメント (10) | トラックバック (2)