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奈良、たらい回し!の問題点

Dr. I / 2007.08.30 23:55 / 推薦数 : 7

奈良で、妊婦がまた「たらい回し」にされた、
って毎日新聞が騒いでいるようですね。

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病院たらい回し:
妊婦衝突事故後に流産 救急搬送中 大阪

29日午前5時10分ごろ、妊娠3カ月の女性を
搬送中の救急車と、軽乗用車が接触した。
女性は「下腹部が痛い」ために119番通報したが、
約1時間半も受け入れ先の病院が決まらず、
搬送中の救急車内で破水を起し、
その10分後に胎児が死亡した。
妊婦の搬送では、昨年8月に奈良県大淀町の病院を巡る
問題をきっかけに、周産期医療の救急体制の
不備が浮き彫りになった。
調べによると救急隊員は同県立医科大に受け入れを
要請したが、「手術中のため不可能」と回答された。
結局、延べ12件目の病院に決まった。
同消防組合は流産との関連は警察の捜査に委ねたい」
と話している。


Web魚拓:skyteam先生より拝借
『毎日新聞 2007年8月29日 11時48分』


>昨年8月に奈良県大淀町の病院を巡る問題をきっかけに、
 周産期医療の救急体制の不備が浮き彫りになった。


>昨年8月に奈良県大淀町の病院を巡る
 毎日新聞の偏見報道をきっかけに、
 奈良の産科医が大量離脱した。


って事ですよね、事実は。
そこら辺は、何故書かないのでしょうかねー。


ちなみに、これは「たらい回し」ではありませんね。
大淀病院の件でもそうですけど。
毎日新聞は、日本語間違っていませんか?

参照:『大辞泉』

○たらい‐まわし〔たらひまはし〕【×盥回し】
[名]スル

1 あおむけに寝て、足でたらいを回す曲芸。

2 人や物、また権利・地位などを、
 ある限られた範囲内で、順送りにすること。
 「病院を転々と―にされる」「権力の座を―する」


救急車の中で、搬送病院が決まるまで、
待ちぼうけ」をくらってしまったかもしれませんけどね。
実際に病院に行って、そこで断られて、
いろんな病院を転々としたわけではないので。
たらい回し」ではないと思います。


そして、破水に関して。
参照:『goo、ヘルスケア』

前期破水

破水は普通は分娩の途中で起こることが多いのですが、
正期産(妊娠37週~41週末まで)の場合でも
陣痛が始まる前に破水してしまうことが約30%の例でみられます。
したがって前期破水自体はそれほど病的なこととはいえません。


って事ですから。
妊娠3ヶ月じゃあ、破水しないですよねー、普通。
こんなの、医者じゃなくても、出産した事のある人とか、
ちょっと医学に詳しい人だったら、知っている知識なんですが。
最終的に、妊娠7ヶ月だったんですよ、この妊婦

あまりに、いい加減すぎませんかねー、毎日新聞の記事。
読者にインパクトを与えさえすれば、
内容はどうでも良い、って事なんでしょうかねー。


マスコミの偏見報道への意見は、
いろんなブログで書かれているので。
私は、ちょっとそれは置いておいて。
あ、もう書いてるか(笑)

今回の件、ちょっと別な視点で、
もう一つの重要な点を、指摘しておきしましょうかね。


受け入れ難航、妊婦搬送の救急車事故で流産
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070829-00000915-san-soci
『2007年8月29日:産経新聞』

29日午前5時10分ごろ、大阪府高槻市富田丘町の
国道171号交差点で、奈良県橿原市の妊娠3カ月の女性(36)
を搬送中だった中和広域消防組合(橿原市)の救急車と、
大阪府茨木市の宅配業の男性(51)運転の軽ワゴン車が衝突。
女性は高槻市消防本部の救急車で約40分後、
約4キロ離れた同市内の高槻病院に到着したが、
流産が確認された。女性らにけがはなかった。
事故と流産の因果関係は不明だという。

女性は事故の約2時間半前の同日午前2時40分ごろに
橿原市内で腹痛と出血を訴えて119番通報したが、
受け入れ可能な病院が見つからず、そのまま救急車内で待機。
10病院、延べ12番目に問い合わせに応じた
高槻病院へ向けて出発するまで約1時間半かかっていた。
通報現場から病院までは直線距離で約40キロ離れていた。

奈良県では昨年8月、分娩(ぶんべん)中に
意識不明になったTさん=当時(32)=が
19病院から転院を断られた末に死亡しており、
産科医療のあり方が改めて問われそうだ。

高槻署や中和広域消防組合などによると、
女性は知人男性とともに近所のスーパーで
買い物をしている最中に突然、腹痛を訴え出血。
同日午前2時44分、知人男性が
「過去に流産している。今も妊娠しているが、
切迫流産しているかもしれない」と119番した。


女性にかかりつけの医師はなく通報を受けた
同組合が県内の空きベッド情報を確認したところ、
県立医大病院(橿原市)にベッドがあったものの
「手術中で対応できない」と断られたという。

消防組合は大阪府内の病院
受け入れ要請を続けたが、難航。
10病院、延べ12番目に問い合わせに答えた
高槻病院に搬送することが決まった。
その間、救急車はスーパーで待機。
出発できたのは午前4時19分だった。

高槻署によると、救急車は赤色灯をつけて直進、
青信号で進入した軽ワゴン車と接触したという。
救急隊員3人と軽ワゴン車の運転手にけがはなかった。

妊婦の救急搬送をめぐっては、近畿2府4県と福井、
三重、徳島の知事でつくる近畿ブロック知事会議が、
各府県が協力して出産前後の妊婦の搬送や
受け入れ体制を確保することで合意している。



ベッドがあっても、医者がいないと治療できません。
医者手術で手が空かないのですから。
県立医大病院が対応できない、
っていうのはしょうがないです。

ただ、ベッドに横になったら、治る魔法のベッド
ではないんですよ、病院ベッドって。

大淀病院の事件でも、頭のCTを撮ったら助けられた。
とか、って言っている人もいるみたいですけど。
頭のCTって、単なる検査ですから。
撮っただけで治る魔法がかかるわけじゃないんですよ。


まあ、それは今回は置いておいて。
問題なのは、ここ。

>女性にかかりつけの医師はなく

かかりつけ医がいなかった理由は、
よくわかりませんけどね、この記事からは。
経済的な理由なのか。
それとも、それ以外に何か理由があるのか。

妊娠7ヶ月だったら、誰がどう考えても
お腹が大きくなって、妊娠した、ってわかるので。
それでも、病院や診療所にかかっていない
理由はわかりませんけどね。

理由はどうでも良いんですけど。
ここで問題になるのは、
この妊婦には、かかりつけ医がいなかった。
って事なんですよ。

私、奈良の詳しい医療事情は知りませんけど。
今、日本全国で、お産が出来る病院が減っていますよね。
ここ10年ちょっとで、10%以上、1000以上病院で、
お産を中止しています。

福島、大野病院で産婦人科医が刑事事件で
逮捕された後や、大淀病院で産科医がマスコミに
不当に悪者扱いされた後は、
更にお産ができない病院は減っています。

で、お産はできないけど、産婦人科医はいる病院とか、
診療所っていうのは、結構あるんですよ。

そういう所は何をやっているか、っていうと。
お産以外の、不妊症とか、産婦人科系の病気を診たり。
それ以外に、妊婦検診なんかもやっているんですよ。

そういった、自分の所ではお産はできない病院
診療所にかかっている妊婦の場合。
何か緊急事態があったら、この病院に行って。
っていう、提携病院、みたいなのがあるんですよ、普通。


だから、この妊婦の場合。
もし、かかりつけ医がいたら。

元々、お産が出来る病院かかりつけ医だったら、
すぐにその病院に搬送されたでしょうし。
もし、お産ができない病院診療所かかりつけ医でも、
そんなに時間がかからないで、
提携する病院に搬送された可能性があります。

胎児助かったかどうかは、また別の問題ですけどね。


たられば、を言ってもしょうがないので。
ここでは、この「かかりつけ医」に関して。

最近、別の話で「かかりつけ医」って名前を
聞いた事のある人も多いんじゃないですか?


そうです。

後期高齢者医療制度」ってところですね。

この記事が、わかりやすく書いてあったので、
ちょっと引用させてもらいますね。


負担と保険料
「後期高齢者(七十五歳以上)」は「上位所得者」が三割、
「一般」は一割と現行と変わりはないものの、
自己負担限度額が引き上げられることになる。

かかりつけ医構想
かかりつけ医に係る報酬体系の新設では、
①登録された後期高齢者の人数に応じた
定額払い報酬の導入
②後期高齢者におけるかかりつけ医の報酬は
出来高払いと定額払いを併用する。
これは、「心身の特性に相応しい診療報酬体系」
を名目に、診療報酬を引き下げ、
受けられる医療が制限される心配がある。

また、かかりつけ医の体制を強化すると謳っており、
医療機関に対するフリーアクセス
(いつでも、誰でも、どこへでも)の中の
「どこへでも」をある程度制限することにより
病診機能が明確になり、効率的な
医療が提供され、真に医療を必要とする人に
必要な医療が提供されるようになるとしている。

しかし、後期高齢者があらかじめ
かかりつけ医を選択し登録する方式は、
かかりつけ医以外の医療機関への
受診行動を制限することにつながり、
医療内容の劣悪化と医療差別を招く恐れがある。


「後期高齢者医療制度の問題点 その1」


要は、75歳以上の高齢者は、
最初に受診するのは、かかりつけ医だ。
それ以外の病院は駄目だ。
っていう、アクセス制限をかける、って話ですね。

これ、もうすぐ導入されますよ、この制度。
〇八年四月からですから。

そいで、今の日本は、医療費削減政策を行っていますから。
医療費減らすのに、一番手っ取り早いのは、
患者のアクセス制限ですから。

まずは、75歳以上の後期高齢者で、導入して。
どんどん年齢を下げていって、日本国民全員に
アクセス制限
をかけようとしているんですよ。
政府のお偉方は。

かかりつけ医とか、総合医って言葉、
やたら聞きますよね、最近。
患者のアクセス制限をして、医療費を削減
しようと思っているからですよ。

ついこの間までは、専門医、専門医
って言っていたのに、突然変わりましたよね、最近。
こういう理由なんですよ。

政府から出た情報を、マスコミは鵜呑みにして、
そのまま報道していますから。
騙されちゃ駄目ですよ。

お偉方は、金と権力を持っているから、
全く困らないのでしょうけどね。


この制度が導入されたら。
経済的な理由とかで、かかりつけ医がいない
患者が急変したら、どうなりますか?

今回と同じ様な事が起きるかもしれないんですよ。
良いんですか、それで。


奈良総合周産期母子医療センターとか、
そんな小さな問題ではないと思いますよ。
この問題の本質は。


他の医者のブログが読みたい人は、これを参考にしてね!
→ 『医者のホンネが丸わかり!』

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私はこういった誤った報道に対して、関係する学会、この場合は産婦人科学会がマスコミを逆に利用して正式見解を出して、もっと政治力をつけるべきだと思います。医師会でもいいのですが期待薄。

国、マスコミやりたい放題の日本社会を変えるには学会、医師の団体がもっと政治力を持って意見を発するべき時代と思います。アメリカに出来て、どうして日本で出来ない?
written by Tai-chan / 2007.08.31 00:19
I先生、始めまして。
前回の「モンスター・ペイシェント」一連の記事読ませていただきました。

「モンスター」を助長している背景には、その一つに、こういった「マスコミによる誤った報道が、医療不信をあおってる」ことがあると考えますが、もう少し、事実関係を検証・整理してから正しい報道がなされるべきだと思います。

妊娠3ヶ月→実は妊娠7ヶ月(24週)だった、は、あまりにもアバウト過ぎます。

日本は、医療にせよ福祉にせよ、すべて御上=国が主導権を取り、管理する形ですから、それを受ける側=医療従事者、当事者(=患者)の実際の声が反映されにくくなっているのではないかと、個人的には考えます。
written by はるる / 2007.08.31 11:15
先生もご指摘の妊婦の自己責任について言及した記事を紹介してもらいましたのでTBさせて頂きます。
written by Tai-chan / 2007.09.01 09:42
>Tai-chan先生
昔の医師会ならできたかもしれませんけどね。
でも、少なくとも、早急に公式見解をマスコミを通して報道すべきですね。

TBもありがとうございました。
本来は、医療の専門家である、医者が書いてもよいかな、って思う事なんですけど。
それやると、叩かれるの目に見えているので。
ブログで書くのは、結構難しいんですよね。
written by Dr. I / 2007.09.01 16:26
>はるるさん
はじめまして。

マスコミの一般人への影響は、かなり大きいので。
そこらへんを自覚して欲しいですよね。
今回の件でもそうですけど。
国に国民の声を届けるには、やはり選挙で投票するしかないのかもしれませんね。
written by Dr. I / 2007.09.01 16:28

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