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長崎心室細動(VF)事件2

Dr. I / 2007.03.12 00:00 / 推薦数 : 3

「長崎心室細動(VF)事件」の続きです。

慢性心不全で入院していた患者が、
病院内(トイレ)で倒れて、心室細動(VF)になりました。
別の患者がそれを発見して、看護師、医師は心肺蘇生法(CPR)
を行った後、電気的除細動をかけたんです。
でも残念ながら、その患者は亡くなったという事があったんです。

遺族は、除細動をするのが遅かったから死んだんじゃないか、
って主張しているのですが。
適切な心肺蘇生法(CPR)を行っているようなので、
それは死因とは関係ないんじゃないか、っていう私の見解でした。

それ以外にも、ちょっと気になった点がいくつかあったので。
細かい話かもしれませんが、それについて書いていきます。
ちょっと専門的な話になりますが。
その都度、医学用語については、解説していきますので。


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医学的疑問点1

慢性心不全について

心不全っていうのは、その名の通り、心臓の動きが悪い病気なんですが。
心不全になる、「元の病気」っていうのが必ずあります。
心筋梗塞で、心臓の筋肉の一部が死んでしまって、
その結果、心臓の動きが悪くなって心不全になる。
心臓弁膜症があって、心臓に負担がかかりすぎて心不全になる。
肥大型心筋症、拡張型心筋症といって、心臓が原因不明だけど、
大きくなって、動きが悪くなる病気や、心臓の筋肉が厚くなって、
広がりにくくなる病気とか。
その他、脈がすごく早い不整脈、脈がすごく遅い不整脈
高血圧甲状腺機能亢進症・低下症等の代謝異常や、
心臓に生まれつき穴が空いている病気(心室や心房の中隔欠損症)。
その他にもいろいろあります。

こういう元になっている病気の事を、
医学用語で「基礎疾患」って言います。

この患者の場合、慢性心不全と記事には書いてありますが。
その元になっている基礎疾患が書いていないんです。
心不全重症度、それに元の病気が何かって事で、
いろいろ変わってくるんですが。
それについては、書いていないのでわからないんです。

自分で歩いてトイレに行っている位だから。
ものすごい重症ってわけではなさそうですがね。
元々、大きな心筋梗塞をやっていて、非常に心機能が悪いとか、
肥大型心筋症や、拡張型心筋症の様に、心室頻拍(VT)
心室細動(VF)のような危険な不整脈が出やすい心不全なのか。
それとも、そうでないのか。
そこら辺が、もっと詳しく知りたいところなんですが。
今の情報では、そこまでわかりません。

元々、危険な不整脈が出やすい病気なのに、
その説明を十分にしていない、という事であれば。
心室細動(VF)に対する処置は適切だとしても、
ちょっと説明不足って事にはなるかもしれませんけどね。


それともう一つ、非常に重要な事なんですが。
主治医が、循環器内科か。
もしくは、前に循環器内科を受診して、きちんと
心エコーなどの検査をやって、
本当に心不全と診断されてるかって事です。

なんだかよくわからないけど、「心不全」って診断が
ついている事って、あるんですよね。
循環器内科にちゃんとかかって、検査してないと。
本当に、病気が「慢性心不全」で良いのか、って事も
実は、まだわかってないんですよね。


医学的疑問点2

心室細動(VF)になった原因疾患

元々心不全があって入院したから。
心不全心室細動(VF)って事でも良いんですがね。
心不全原因疾患がわかってないし。
実は何とも言えません。

それ以外の可能性も、実は高いんじゃないかな、
って個人的には思っています。

1)心筋梗塞
血圧が高くて入院って書いていますので。
おそらく高血圧だったのではないかと思います。
高齢者で高血圧があるので、動脈硬化が進んで
心筋梗塞になるって可能性も十分にあります。

前に心筋梗塞になったかどうか、って事もわかりませんが。
トイレに入って、そこで突然心臓にいく血管が詰まって
心筋梗塞になった。
そして、心室細動(VF)になった、ってストーリーが
可能性としては最も高いように思えます。

心筋梗塞になって、心室細動(VF)になった場合は、
除細動をして、まず心室細動(VF)を止めるって事も、
もちろん重要なのですが。
心臓の血管が詰まった、ってのが原因なので。
そちらの治療をしないと、かなり厳しいです。

心臓の動きが悪くて、さらに心不全も悪化しますので。
緊急でカテーテル検査、治療をしなきゃ駄目なのですが。
心室細動(VF)を起こして、意識もなくなるような
重症心筋梗塞であれば、生存率は非常に低いです
まして、この病院では心臓カテーテル検査はできないようなので。
それができる病院まで送って、それから血管内手術の準備をして、
そしてやっと、検査、治療をするのですから。
そこから、1時間2時間はかかるでしょう。
その位時間が経ってしまったら、仮にすぐに除細動をして
心室細動(VF)を止める事が出来たとしても、
助かる可能性は非常に低いです
おそらく、検査まで間に合わない可能性が高いです。

2)脳出血、くも膜下出血
あくまで一般論なのですが。
家で突然トイレの中で倒れて、意識を失った。
という患者が病院に運ばれて来た場合。
一番可能性が高い病気としては、脳出血くも膜下出血です。

トイレに入って力んで、血圧が上がって。
そいで、脳に行く血管や、脳の表面の血管が破れた、って事です。

この患者の場合。
一応、慢性心不全って診断がついていますので。
まず第一に、心臓が原因って事を考えるとは思うんですが。
慢性心不全って診断は、本当に確かなのか。
それに、心不全だとしても、脳出血くも膜下出血
なる可能性はありますし。
そういった、脳卒中が起きて、そいで呼吸停止して。
心臓に酸素が行かなくなって、心室細動(VF)になる。
そういった可能性もあると思います。

脳卒中が原因で、呼吸が止まって心室細動(VF)になった場合。
原因はですから、そちらの治療をしない限り、
仮にすぐに心室細動(VF)除細動で止めたとしても、
生存できる確率は非常に低いです。

この病院は脳外科もないようですし。
仮にあったとしても、そこまで重症脳卒中であれば、
そもそも手術の適応がないでしょうから。
いずれにしても、ほとんどの場合、助かりません。

3)重症心不全
見た目は非常に元気だけれど。
前に心筋梗塞になっていて、とか拡張型心筋症とかで、
元々心機能が非常に悪い場合
一度、心室細動(VF)になってしまうと、
除細動をかけて止めたとしても、心臓の動きが元々悪いですから。
心不全が悪くって、助からない事もあります。

元々、慢性心不全って病気の様なので。
そういった可能性もあると思います。


それと、前回の記事でも書いたんですが。

>「心室細動(VF)」になった場合。
放っておいて、勝手に心臓が普通に脈打つって事はないんです。
電気的除細動をしないと、戻らないんですよ。


これは、心室細動(VF)になったら、電気的除細動をかけれれば、
必ず戻るって事ではありません。
心室細動(VF)は、電気的除細動をしないと戻りませんが。
電気的除細動をかけたからって、必ず戻るって事ではありません。

除細動されるまでに、電気ショックを何回もかけて、
どんどん電圧を上げて、それでやっと止まるって事もあるし。
それでも止まらない、って事もあるんですよ。

飛行場とかに置いてある、いわゆる「AED(自動体外式除細動器)」だと
同じ電圧でしか、除細動できないんですけどね。

電気ショックの話は、前に書いたこの記事を読んでね!
「集中治療室での一場面」

遺族の主張や、マスコミが書いてある事を見ると、
電気的除細動をかければ助かったはず。
といった、無責任な事を書いていますけどね。
電気的除細動をかけも、洞調律に戻らない事もありますし。
別の疾患が原因で心室細動(VF)になった場合は、
そちらの治療をしないと助からないし。
別の疾患の治療をするのは、非常に厳しい状況だったみたいですから。
適切な心肺蘇生法(CPR)を行って、助からなかったので、
おそらく、ちょっと早く除細動をしても、
この患者は助からなかったと思いますよ。


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