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◇ 相互利益のある人間関係
ある時、担当患者の治療方針についてベテラン看護師と私の間に意見の食い違いが起こった。私のオーベンからの指示には黙ってしたがう看護師が、オーベンから指示をもらって私から同じことを看護師に伝えると、反論してくることに腹がたった。私は自分が勝つことしか考えておらず、相手の立場を考えずに相手の非ばかりを責めていた。本来、人間関係において互いに協力していくためには個々人がリーダーシップを発揮し、他の人に影響を及ぼす立場であることを認識しなければならない。そこでWin-Winという哲学を紹介したい。Win-Winとは人間関係の一つである。他にWin-Lose、Lose-Win、Lose-Loseがある。Win-Winとは全ての関係において常に相互の利益を求める精神である。人生を競争ではなく協力する舞台とみるパラダイムである。当初それぞれの当事者がもっていた案ではなく全く新しい第三案の存在を信じる考えである。 Win-Loseとは私が陥った罠である。あなたは満足しないかもしれないが私の言うとおりにせよ、というものだ。Win-Loseを考える人は地位・腕力・資格を使ってエゴや自分の意見を押し通そうとする。残念ながら多くの人が生まれたときから家庭、学校、スポーツ、法律社会でこの脚本づけに浸っている。Lose-WinはWin-Loseの反対であり、より質が悪い。Lose-Winを考える人は人に受け入れられ、好かれることに価値を求めている。Lose-Loseは、Win-Loseを考えている者同士がぶつかった結果である。相手を負かすために自分をも傷つけてしまう。敵という相手に依存している状態である。
◇ 自分自身の脚本をもう一度練り直す
こうした人間関係は場面によって適切なタイミングがある。どれか一つだけで正しいというものではない。しかし、多くの場合、Win-Winを考える以外に現実的な方法はない。Win-Winを実行していくのは決して優しい仕事ではない。大いなる勇気と思いやりが自分に対して要求される。Win-Winを行うには基礎的なパラダイム転換も要求される。なぜなら多くの人は手段を管理する習慣を身につけており結果を焦点とする習慣に不慣れだからである。多くの医学生が経験していることだが、医学部の授業や病院実習は手段を重視している側面が大きい。そのため多くの時間と費用の無駄が発生している。卒業してから結果を重視せざるを得ない臨床現場に放り込まれると大抵の場合、研修医は1年間で数年分の勉強を自ら進んで行う。なぜ学生時代から結果を重視しないのだろうか。人と問題を切り離して考え、立場よりも望む結果に集中して相互利益になる第三案を出すこと—これがWin-Winである。自分のこれまでの脚本づけを振り返って欲しい。それはWin-Loseだろうか、Lose-Winだろうか。その脚本からつくられたパラダイムは、君が今現実に直面している問題に十分対応できるものなのかどうか、もう一度振り返ってみるのは如何だろうか。
参考図書: 7つの習慣 スティーブン・R・コヴィー キングベアー出版 1996
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