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「お前のカルテ書きは全くなってない、医者を辞めて死ね」これは、私が初めてオーベンを持ったときに言われた言葉である。厚顔無恥な私だったがさすがに考えた。「一体どうしたらいいのだろう」、と。かくして数年間の時が流れた。相変わらずフレッシュマンが入局して躓きながらも独り立ちしていく姿を眺めてきた。しかし、その独り立ちは医学的医療的技術の習得のみであり、人間的成長は個々人の努力に任せられたままなのである。ここで私の疑問は生じる。自分が患者であったとき二人の医師がいたとしよう。一人は技術はさっぱりだが人間的に信頼できる医師である。もう一人は技術はすこぶる振るうが人間的に信用がおけない医師だ。どちらを選んだ方が良いのだろうか。答えはどちらも選べない、だ。医師にとって医学的技術と人格はどちらも同じように大切なものだ。しかし、現在の医学教育では人格教育がすっかり忘れられている。ずっと私はこの問題について考えてきたがやっといくつかの答えにたどり着いたように思う。これから研修医諸君にその幾つかを紹介していきたいと考えている。
金のガチョウという寓話を知っているだろうか。農夫が金の卵を産むガチョウをみつけ、金持ちになるが我慢できずにガチョウの腹を開けてしまう。腹の中は空っぽで農夫は金の卵を手に入れる手段も失ったという話だ。
効果性あるいは成功について多くの人がこの農夫を笑えない立場にいる。黄金の卵だけを考えてガチョウを失ってしまうのである。 真の効果性とは「結果を手に入れることや目標を達成すること」と「その結果を手に入れるために使う資源もしくは目標達成能力」のバランスにある。これはP/PCバランスと呼ばれる。Performance(目標達成)とPerformance Capability(目標達成能力)から名付けられた原則だ。この原則には誰も逆らえない。例えば私は英文を読むのが苦手だった。締め切り前日まで宿題を放棄し、徹夜でどうにかこうにか中途半端な翻訳を作成していた。その結果、このやり方を続けている間、私の英語力は伸びなかったし翻訳作業が楽になることはなかった。また研修医時代、頑張ることが大切だと考えて朝も夜も働いた。しかし、睡眠不足で医療事故を起こしそうになったり、体力がおちて病気になってしまい、何日か休むはめになってしまった。これらは全てバランスの崩壊に基づく結果だ。原則を重視し、バランスを保てば翻訳作業に時間を割くことで私の英語力は増し、翻訳に費やす時間は徐々に減少していっただろう。毎日、必要な休憩をとれば不必要な医療事故未遂も起きなかったし、休んで周囲に迷惑をかけることもなかっただろう。研修医諸君にはP/PCバランスの原則に従うよう心から忠告しておく。
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