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◇ 医療現場のチームワークの実態「休みの日に病院にきてはダメだ」—ある病院に転勤して医長からそう言われたとき、私は始めて医療現場での信頼関係を感じることができた。私が経験したいくつかの病院の小児科で、無言の約束となっていたのが「土日の出勤」であった。「患者は主治医が個人的に診るもの」、というのがその前提となるパラダイムである。患者にとっては一見、福音に見えるシステムのように聞こえるかもしれないが、医師個人にとっては休日出勤で家族に迷惑をかけたり、遠出にでることができなくなったりする。その結果、寝不足が続いたり仕事への集中力がとぎれたりしがちで長期的に見ると、患者にとっても良いシステムとは言えない。一方、その病院では休日には当直医が、忙しくても担当以外の患者を診察した。この「互いに信頼するシステム」のおかげで僕は安心して家族と旅行にでかけることもできるようになり、ますます平日の仕事がはかどるようになった。多くの医師が、他人は信頼できないという教育や脚本づけのために相互依存の原則に対して心を開こうとしていない。これは人生最大の悲劇であり、かつ最大の損失である。その人の本当の可能性が発揮されることも、開発されることもなく、また活用されることもないままに人生を過ごしてしまうからだ。多くの人はスポーツなどで、本当のチームワークの精神を味わった記憶があるだろう。離島の県立病院の院長先生が冗談交じりに「運動部に入っていなかったヤツは雇わない」と話すのを耳にしたことがある。つまり、彼は相互依存の経験をしていない医師はチームワークが必要な医療に貢献できる可能性が低いと言っているのだ。
◇ 感情的反発を省く方策
コミュニケーションのレベルは互いの信頼と協力によって決定される(図)。多くの医療現場では妥協程度のコミュニケーションレベルにとどまっている。それは次のモデルによって説明される。社会学者カート・レビンの「場の分析」というモデルによれば、現在得られている結果は上向きの成長を促す駆動力とそれを防げる下向きの抑止力の均衡であるという。具体的には「駆動力」は正の、合理的、論理的、意識的、経済的なものとされ、「抑止力」は負の、感情的、非論理的、無意識的、社会的、あるいは心理的なものといえる。医療現場の雰囲気を変えたいと思っている人の多くは駆動力を増すことにエネルギーを注ぎ、失敗する。抑止力の反発に出会ってしまうからである。反発に出会ったとき、駆動力を増せば短期的には欲しい結果が得られるだろう。しかし、そこに抑止力が残る限り、改善は徐々に難しくなっていく。その結果「人は変わることができない」と信じるようになってしまう。しかし、相乗効果を発揮すればこれまでの連載中に述べてきたWin-Winを考える、理解してから理解されるスキル、相乗効果を求めるエネルギーを、抑止力を省く方向へ向けることができる。その抑止力となっている問題について安心して話せる雰囲気を創ることが出来る。周りの人も問題の解決に参加し、真剣に取り組み、自らの問題と捉え、その解決の大きく貢献できるようになる。その結果、新しい目標が生まれ、新しい方法によって医療が向上し、その活動によって生まれたエネルギーが新しい組織文化を創り出すことになる。私の夢はすべての医療現場に相乗効果が発揮される未来を創り出すことである。さて、あなたの医療現場は変化を待っているだろうか?

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