さて、今回ご紹介および、ここをご覧の皆様にお願いしたいことは、ITSANのウェブサイトで紹介されている陳情(petition)についてです。http://www.itsan.org/の上から二行目の右「SIGN OUR PETITION」をクリックして表示されるページの「CLICK HERE TO SIGN AND SAVE SOMEONE’S SKIN」をもう一度クリックすると陳情の内容が現れます。
すべてのステロイド外用剤のラベルに、5日間以上の連用で、ステロイド外用剤依存の潜在的リスクが生じることを、明記せよ。
私たちは、ESDR(European Society of Dermatological Reserch:ヨーロッパ研究皮膚科学会)、AAD(American Academy of Dermatology:アメリカ皮膚科学会)、APhA(American Pharmacists Association:アメリカ薬剤師協会)、FDA(US Food and Drug Administration:アメリカ食品医薬品局)に対して、ステロイド外用剤依存は現実に存在し、健康問題および社会問題として大きなものになりつつあることを認識すること、および、処方薬であろうと市販薬であろうとすべてのステロイド外用剤のラベルに、重篤な依存を引き起こす可能性があるという警告を表示することを義務付けること、を強く要求する。
私たちはまた、18才未満の子供たちに対しては、このような危険のあるステロイド外用剤の処方を中止し、皮膚のトラブルに対しては、非依存性のより安全な代替薬によって治療することをも要求する。
という内容です。
ご賛同いただける場合には、下の「Sign the petition」をクリックすると、フォームが現れますので、赤い※のついた
First Name:名前
Last Name:姓
Email Address:メールアドレス(注:2行下の「View Privacy Policy here」をクリックして確認すると「あなたのメールアドレスはウェブサイト上に決して表示されません」と出ます)
State,Country or Province:都道府県(注:東京なら「Tokyo, Japan」と書いておけばいいと思います。)
以上、4つの必須項目を記入した上で、Verification Codeを入力し、一番下の「SIGN」をクリックすれば、陳情に参加したことになります。
JoAnne Gonzalasという人が2011年11月から始めて、2012年5月12日現在で259人の署名が集まっているようです。
日本に住んでいる私たちが、アメリカでのこの署名に参加することにどんなメリットがあるのか?というと、それは、この署名がAAD(アメリカ皮膚科学会)をターゲットのひとつに加えている点にあります。以前紹介しましたが、AADは現在アメリカ合衆国版の「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン」を改訂中で、2013年春に公表予定です。AADのガイドラインは日本のガイドラインに強く影響を与えますから、AADのガイドラインでステロイド外用剤依存の問題を取り上げてもらうように、この署名に協力して働きかけることは日本の患者たちにとってもまた大きな意味があります。
わたしはすでに署名しました。ご賛同いただけるかたはよろしくお願いいたします。
☆コメント欄は、承認制となっております。基本的に非公開です。申し訳ございませんが、返信はしない方針です。私自身の健康上の理由です。御諒解ください。(リンクはフリーです。ご自由にどうぞ。
海外(とくにアメリカ)に向けて、ステロイド依存先進国の日本から、アトピー性皮膚炎における「ステロイド依存」についての解説を発信してみようと考え、紙芝居を作ってみました。
「ステロイド依存先進国の日本」というのは、笑えませんが、たぶん事実です。日本は国民皆保険が皮肉にも災いして、ステロイド外用剤をもっとも安価に入手できる国だからです。昭和40年代から平成のはじめにかけては、とくに開業医は薬を処方すればするほど儲かる仕組みになっていました(今は違います)。
せっかく作ったので、英語版だけでなく、日本語版も用意しました。
ただし、海外とくにアメリカ向けなので、ラパポート先生の話がときどき出ます。また、日本ではなじみの薄い「レッドスキンシンドローム」という語も出ます。これらは、海外向けゆえだということをご理解ください。
英語版はこちら。
http://www.youtube.com/watch?v=mJ0IKTSse2E
日本語版はこちら。
http://www.youtube.com/watch?v=v6ks14ZhlQY
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Hi..So I had eczema for quite a while, and I used steroids on my skin for… like five years straight, as soon as I stop using them my skin went crasy. こんにちは。私は長いこと湿疹があったの。それでステロイドを5年前から塗り続けた。止めてみたら大変なことになったわ。 |
「手首のあたりで境界くっきりと止まる」といった症状は、私が見ていた日本人の患者でもよく診ました。昔の私の著書にも記しています(下図)。こういったリバウンドの出方は、アメリカ人でも同じなのだなあと勉強になりました。

(「ステロイド依存」(1999)p38)
このYoutube動画も、ケリーさんの
ttp://addictedskin.com/
によってUPされたようです。参考までに、動画の解説欄の英文も翻訳しておきます。Eczema Sufferers and those with mysterious red skin: |
Youtubeで、「ビバリーヒルズの脱ステ医」(→こちらとこちらとこちら)のところで記したラパポート先生に、フロリダの患者で、ステロイド依存についての啓蒙活動をしているケリーさん(→こちら)が、インタビューしている動画を見つけたので、紹介します。
英語なので、わたしの聞き取れる限りで、文字起こしして訳付けてみました・・もっとも、私は、ヒアリングは苦手なので、だいたいの内容は合っていると思いますが、単語など、あちこち間違いが目に付くかと思います。英語上手な方、誤りをご指摘いただき、コメント欄通じて連絡いただけたら幸いです(返信はしなくて恐縮ですが、逐次訂正して反映させていきます)。
Hi, I am Kelly Palace and you are at the addicted skin website most likely you found yourself here because your skin is having some issues related with topical steroid addiction. こんにちは、私はケリー・パレス。あなたはステロイド皮膚症のことをネットで調べていてここを見ている、たぶんそれは、あなたの皮膚がステロイド外用剤依存になっているかもしれないと思ったからね。 |
KELLY: Hi, I am Kelly Palace and you are at the addicted skin website. Â Most likely you found yourself here because your skin is having some issues related to topical steroid addiction.
We are here in chilly southern Calfornia at the home of the famous Marvin Dr. Rapaport who has written many articles that have been published in peer review journals on the dangers of topical steroid addiction and how that can cause Red Skin Syndrome. I myself was critically covered  in full body eczema with no relief in sight and was given steroid after steroid after steroid with getting worse and worse until I found his articles.  They basically saved my life. I came here from Florida to southern California. This is my third visit on my healing journey to see Dr. Rapaport.
And here next to me we have Dr. Rapaport and Vica, who is medical doctor that suffered with worsening eczema and Vica is now one hundred per cent cured. Vica you want to give your testimony?
VICA: Yes, some more than two years ago I started eczema and first my dermatologist thought it was insect bites and then he gave me steroids which gave me a temporary relief and then I flared up again. The healing was only temporary, and I got worse, that‘s why I got a second opinion, luckily I found Dr. Rapaport.
It‘s more than year that my whole body is completely clear of eczema. More than half a year that everything disappeared from my face as well. And I have been using just a creams, lubricants and I got a lot of UV light treatment, when I was still suffering from this disease.
KELLY: And now you one hundred percent cured?
RIZA: I know now I am fine.
I don‘t itch. I am itch free.
KELLY: She doesn‘t itch. She is not red. So great.
So now the main hour we can just go right to a Dr. Rapaport  and I‘d like to introduce Dr Marvin Rapaport who has an office Beverly Hills Carfornia and is here with us. Dr. Rapaport give us background to why we develop worsening eczema and how we can be cured.
DR. RAPAPORT: Well, with the thirty years‘ medical practice I have seen probably two thousand patients that initially had eczema either new born to thirteen years earlier to life. Â
Started using cortisone creams on the body on the body parts of affected, and often they needed more and more and more, more steroids more usage all steroids injections in the muscle of steroids resulting in itching redness and some burning of the skin and through the years having followed these patients and evaluating more and more.
Because the training of old disease in medical schools and residency is to understand pathology, and eczema is an entity that shows itself three months of age last a few months, comes back around age five probably last a few years, Â then comes back before the teen years and then disappears.
Just like asthmatics that develop hay fever like this. That is a typical usual story so why are these patients, having on going , unrelenting worsening, widening rashes .
And that are called eczema by doctors. And the story appears to be really quite easy that it is easy more and more steroids closes blood vessels down can fix vessels in the skin and the vessels open and dilated and the skin is red and you can get rashes that is similar to eczema.
And after working with patients looking at this methodology thorough biopsy looking for other diseases he came down to the facts the reason is the steroids that perpetuate the problem. Let‘s  stop steroids, Let‘s stop this addiction and low and behold, by the end of a year to three years later they are cured.
But the process was horrific for a lot of patients. They will swell and they will get red and they will burn, they will ooze they didn‘t function otherwise and scratch like a crazy, Â couldn‘t sleep etc.etc.etc. Â and sure fire the cure is supporting getting through the symptoms. No steroids allowed at all because which has perpetually problem and in my experience probably two thousand patients all cured.
Only cured in just ceasing or have using one very valuable one ground rule, the recession of all steroids . And all the patients serving followed continued because you are the so pleased with the result. I see the other dermatology patients in my office years later who have stayed cured. They have no problems.
So please if the condition is unknown, worsening eczema, strong consideration should be given to you being addicted to the cortisone. And ceasing it is at last a cure.
KELLY: Very good. So that‘s it. Remember Dr.Marvin Rapaport  is a clinical professor at the UCLA. UCLA here in southern Calfornia highly, highly credential and is the thought leader on it. So here you will get a lot of support here in at the website and we wish your happy healing and a great itch free day. Thank you.
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| Topical vitamin D3 and low-calcemic analogs induce thymic stromal lymphopoietin in mouse keratinocytes and trigger an atopic dermatitis Mei Li et al.; PNAS August 1, 2006 vol. 103 no. 31 11736-11741 http://www.pnas.org/content/103/31/11736.full.pdf+html |
これは、ビタミンDが「リバウンド」を引き起こす、ということなのでしょうか?そうではないです。今回は、そのあたりについての私の現時点での考えを解説します。
まず、基本的なところから整理します。副腎皮質ステロイドの作用機序についてです。
きれいな図があったので、借用します。
ステロイド(Corticosteroid)は細胞膜(Cell membrane)を通って細胞質(Cytoplasm)内に入り、ここでレセプターと結合します(Glucocorticoid Recepter Complex)。これは核(Nucleus)内に入り、
1)NF-κBと結合します。NF-κBは、炎症反応を引き起こす遺伝子(Inflamatory Gene)に結合して炎症性サイトカイン産生に働く蛋白質なので、ステロイドがNF-κBに結合してこれを不活化するということは、炎症性サイトカイン産生抑制に働きます(Inhibition of Cytokine synthesis)。(NF-κBデコイは、この経路に働くわけです、参考までに。)
2)ステロイドとレセプターの結合物は、IκBα遺伝子に結合して、この産生を促進します。IκBαは、細胞質内で、NF-κBと結合してこれを不活化する蛋白質なので、こちらの経路からも、ステロイドはNF-κB抑制、すなわち炎症反応の沈静化へと作用します。
これらは、ステロイドに対する、一個の細胞内での出来事である、という点に注目ください。ステロイドが作用すれば、ONになりますが、ステロイドがいなくなると、速やかにOFFになります。
一方、ステロイドによるJAG1抑制→Jaged1・Notch抑制→TSLP活性化というのは、複数の細胞間の反応です。

複数の細胞間の反応ですから、時差(タイムラグ)が生じます。ステロイドを作用させても、すぐにはTSLPの産生は起きないだろうし、ステロイドがいなくなっても、すぐにはTSLPの産生は低下しないでしょう。
ステロイド使用前、使用中、中止後(リバウンド)の三枚の図で説明します。
ステロイド使用前は、TSLPは抑制されています。
ステロイド使用中は、JAG1が抑えられた結果、TSLPが活性化していますが、その先のランゲルハンス細胞(アトピー性皮膚炎の病勢のマーカーと言われるTARCを産生する)を見てみると、これまたステロイドで抑えられています。この抑制は、ステロイドのランゲルハンス細胞への直接作用です。TSLPのような細胞間の間接作用ではありません。
ステロイド中止後、「リバウンド」の状態というのは、ステロイドがいなくなったあとで、TSLPが抑制されるまでに、時差があるために起こるのだと私は考えます。ランゲルハンス細胞へのステロイドの作用は直接作用なので、ステロイドがいなくなったあとはすぐに解除さます。そして間接作用のためすぐには低下しないTSLPに反応してTARCを産生します。
表題の問いに答えるならば、リバウンドとは時差(タイムラグ)です。ステロイドのリバウンドがきついのは、ステロイドに同時に「炎症を抑える」という作用があるためです。
最初に記した、ビタミンDのTSLP発現作用は、ビタミンDがビタミンDレセプターに結合して、TSLP遺伝子の発現を促すという「直接作用」です。複数細胞間作用と異なり、ONとOFFがはっきりしています。ですから、この場合は「リバウンド」は生じません。時差が生じないからです。
ところで、ビタミンDについては、以前、「ステロイド外用剤の副作用を軽減するようだ」という論文を紹介しました(→こちら)。傷害された表皮バリア機能を修復し、抗菌ペプチドの産生を促すからです。その一方、上記論文からは、TSLPを上昇させるというデメリットもあるということになります。
疫学的な調査では、ビタミンDは、アレルギー疾患を増やす、という結果と、減らす(予防になる)という結果の両方が出ているようです(疫学調査というのは、一定の率(危険率)で誤った結果の可能性がある、ということを前提とした話なので、相反した調査結果が出ていても、おかしな話ではありません)。
たしか、ボンアルファ軟膏(乾癬用のビタミンD軟膏)が出た当時、これをアトピー性皮膚炎の患者に使ってみたという学会発表があったと思うのですが、それでアトピー性皮膚炎が悪化したという話は無かったです。良くなったという話も聞いたことないですが。
ビタミンDが有用かどうかは、1)ステロイドで脆弱化した表皮バリアや抗菌力の回復に働く、というメリットと、2)表皮細胞に直接作用してTSLPを増やす、というデメリット、とを天秤にかけることになると思います。ちょっと難しい判断なので、何かほかの情報を見つけるまで保留とさせてください。
少なくとも、海水浴療法など、日焼けさせて結果としてビタミンDの産生を促すような治療が存在する以上は、ビタミンDがアトピー性皮膚炎にそれほど悪く作用するということは無いような気はしますが・・。
しかし、ひょっとしたら気がつかれていないだけで、海水浴療法で、皮膚(アトピー性皮膚炎)は良くなったけれども、そのあと喘息に移行したというような例が、意外と隠れているのかもしれません・・。うーん、そんな話聞いたこと無いけどあるのかなあ・・。
一応、現時点でのビタミンDについての評価は、「皮膚炎以外にアレルギー素因(家族歴や既往)がない、すなわち、表皮バリアが生来的に弱くて皮膚炎を起こしているようなタイプにおいて、ステロイドと併用するとリバウンド(依存)予防に有用だろう」ということになろうかと思います。①喘息の家族歴や既往がある場合、②リバウンドの最中には、使用しないほうが無難かもしれません。
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I am telling my story and experience with Corticosteroid Addiction and Red Skin Syndrome in the hopes that it will help someone else who has not yet found the answer to their skin problem. Hopefully this website can be a resource for those that need it. |

わかりやすいように、紙芝居にして、youtubeにUPしました。
(画像または→こちらをクリック)
ご笑覧ください。
このお話のキモは、「ステロイドは表皮細胞に作用して、JAG1抑制を介して、TSLP産生を亢進する」という点にあります。
TSLPがアレルギーを悪化させることは、たとえば、アトピー性皮膚炎の皮膚から産生されるTSLPによって喘息が発症する可能性があるという「アレルギーマーチ」のメカニズム解説によく引用されますが、上記の事実は注目されていません。
TSLPのお話にステロイドをくっつけると、こういうことになって、「リバウンド」のメカニズムを説明できそうだ、というのが、youtubeの私の紙芝居です。
追記)English version作りました。
(画像または→こちらをクリック)
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| moto先生勉強させていただいています。 私は数年前から「乳児湿疹にはボディソープの使用をやめ、お湯だけで洗う。どうしても臭いとか汚れた時だけ全成分が石けんの泡だけで軽く洗う。外用剤は最初からステロイドを使用しない。プロペとかワセリンをタップリと頻回に使う」という指導をしており、良好な結果を得ています。先生がお示し下さった論文を拝見して、私の指導が間違っていないと心強い思いです。産婦人科でリンデロンVGを出されたり、皮膚科標榜の泌尿器科で、マイザーなどを出された乳児湿疹の治りが悪いように感じていますが、その理由も納得できました。 少なくとも新生児にはステロイド外用剤は使って欲しくないですね。 |
| Atopic dermatitis-like disease and associated lethal myeloproliferative disorder arise from loss of Notch signaling in the murine skin Dumortier A, PLoS One. 2010 Feb 18;5(2):e9258 (http://www.plosone.org/article/info:doi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0009258で無料で読めます) |





| Novel genomic effects of glucocorticoids in epidermal keratinocytes: inhibition of apoptosis, interferon-gamma pathway, and wound healing along with promotion of terminal differentiation. Stojadinovic O et al. J Biol Chem. 2007 Feb 9;282(6):4021-34 |
マイクロアレイという手法を用いています。私はこういった新しい実験方法に詳しくはないのですが、GeneChipというものを使います。

このチップ一枚に最大で650万以上のDNAプローブを搭載できるようです。表皮細胞をステロイド添加/無添加の条件で培養して、RNAを抽出し、これに対応する標識した相補的DNAを作成し、それをチップにかけて、チップ上の多数のプローブと結合させ、結合した証拠である標識色素を測定することで、ステロイド添加によりどのような遺伝子(mRNA)が発現されたかを一気に明らかにしてしまうもののようです。すごいなあ・・。
論文には、副腎皮質ステロイドホルモンが表皮細胞に直接作用して、実に様々な遺伝子を発現したり(upregulate)抑制したり(downregulate)することが記されています。その中から、表皮の分化や角化など、表皮バリアに関係ありそうなところを拾って紹介します。
1.TGFβ1、TGFβ2(真皮の繊維芽細胞に作用してコラーゲンを産生させる)を発現を抑制する。
これは、表皮バリアとは関係ないですが、ステロイドによる皮膚の萎縮は真皮のコラーゲンに及ぶことが知られており、ステロイドが直接真皮の繊維芽細胞に作用するほかに、表皮を介するメカニズムもありそうな点が興味深いです。
2.TGM1(transglutaminase1)、LCE2B、FLG(filaggrin)、CDSN(corneidesmosin)、SULT2B1(sulfotransferase type2 isoformB1)、KLF4を増加させる。
これらは、いずれも、表皮細胞の文化の最終段階(角化)の際に働く蛋白質です(→こちらで以前少し解説しています)。
とても興味深い事実だと思うのですが、副腎皮質ステロイドは表皮細胞の角化を抑制しない、むしろ亢進させるようです。
唯一、involucrinのみは、抑制します。しかし、それも基底層近くにおいての話で、顆粒層以降の分化の終末になると、発現してきます。
ステロイド(GC)外用前後の表皮のインボルクリン(INV)およびフィラグリン(FIL)発現の様子。インボルクリンは基底層付近で抑制されており、フィラグリンは角層で亢進している。
3.JAG1(jagged1蛋白質をコード)を抑制する。
JAG1(jagged1)は、早い(若い)時期の表皮細胞の分化を促進します。副腎皮質ステロイドは、JAG1の発現を抑制し、一方で2.に示したように、角化を促進しますから、結果として、その間の表皮細胞、すなわち有棘層の細胞数を減らし、表皮を薄くします。
これら1~3は、組織学的なステロイド外用後の表皮の変化(→こちら)
と一致します。ステロイド外用の結果、表皮は薄くなり、真皮のコラーゲン繊維は細く少なくなっています。
2.から考えると、ステロイドを外用すると、フィラグリンなどが増加して、角層機能は改善しそうな気がします。しかし、実際はそうではありません、それは、2003年のDr.Kaoの実験が示しています(→こちら)。
ステロイド外用後の角層は、粘着テープを貼って剥がすという操作によって簡単に機能を無くしてしまうもろいものとなっています。ステロイド外用によって、角層を構成する主だった蛋白質は過剰供給されているにも関わらずです。どこか機能的に欠陥のある不完全な角層が生じているということです。
あるいは、先回(→こちら)記したように、コルネオデスモゾームの破壊に働くプロテアーゼ(SCCE=KLK7など)が、間接的(二次的)に亢進しているためかもしれません。ステロイドによって角層の成熟が促進される結果、ネガティブフィードバックが働き、プロテアーゼ機能が高まるというのはありうる話です。さらにこれに対するネガティブフィードバックとしてプロテアーゼインヒビターも産生促進されて、先回記した(→こちら)2007年の小松先生の実験の結果のようなことになっているのかもしれません。
以上から考えると、ステロイド依存、すなわちステロイド外用剤長期連用後の表皮バリア破壊の分子生物学的メカニズムとしては、
1)角層機能の脆弱化(角層を構成する蛋白質合成自体は亢進している。なぜ脆弱化するのかは不明)
2)JAG1抑制と角化関連遺伝子の促進によって表皮(有棘層)が薄くなった結果
の二つが考えられると思います。
陰股部など、皮膚が元々「薄い」ところではステロイド依存は起きやすいです(これを否定するひとはいないでしょう)。ステロイド外用剤が、1)まず表皮を薄くし(これは表皮細胞への直接作用です)、次いで、2)角層機能が脆弱化(これは表皮細胞への直接作用ではなく、二次的あるいは間接的作用であろうと考えます)した結果、表皮バリアが破壊されて、ステロイド依存となる、という順番であろうと、私は現時点では考えます。
(解りやすいように私の考えを図示してみました)
ビタミンDや紫外線は、角層のプロテアーゼを亢進させるにも関わらず、リバウンドは生じさせず、むしろその抑制に働きます(→こちらとこちら)が、これはステロイドホルモンと異なり、1)の「表皮を薄くする」という作用がないためではないか?と考えます。有棘層の段階でしっかりと成熟したのちに表皮が角化すれば、プロテアーゼ機能が亢進していても、それは生理的なものであり、リバウンドにはつながらないのでしょう。
もし、私の上記考えが正しければ、JAG1遺伝子の発現を高めるような薬剤が、ステロイド依存を防止し、ステロイド外用剤と併用することで、ステロイドをより安全に使うことができるようになるのかもしれません。
また、フィラグリンの産生を高めるような薬剤(またはローズマリーなどの生薬の類→こちら)は、乳児などに用いてアトピー性皮膚炎の発症予防に努めるには良いかもしれませんが、ステロイド依存の予防効果は無いと思われます。ステロイド外用剤自体がフィラグリンを増加させる作用を既に有しているからです。
乳児に「ステロイドを外用してフィラグリンを増加させ、アトピー性皮膚炎の発症を予防しよう」という考えかたは、必ずしも間違っているとは言い切れませんが、ステロイドが長期連用→依存につながりやすい薬剤であることを考えると、避けたほうが無難です(乳児へのステロイド外用剤の使用は短期であくまで炎症を抑える目的に限るべきだと思います)。フィラグリンを増加させることが目的なら、ローズマリーなど無難なものがいろいろあるだろうからです。

難しい内容だったかもしれませんが、ここまで読んで下さったかた、ありがとうございます。
A merry Christmas for you.
わたしは今日もクリニックで仕事です。手術の合間に論文を読んだりネットで検索したりして、昔を思い出しながら、このブログの文章を書いています。
☆コメント欄は、承認制となっております。基本的に非公開です。申し訳ございませんが、返信はしない方針です。私自身の健康上の理由です。御諒解ください。(リンクはフリーです。ご自由にどうぞ。
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