私が尊敬していた人物の一人に、今はもう亡くなられてしまったが、京大教授だった高坂正堯氏がいる。テレビ朝日系列で田原総一郎が事実上のメインキャスターを務める『サンデープロジェクト』に良く出ていた。あの独特の語り口と、鋭い洞察力にはいつも感心させられていた。もし、氏がご存命なら、先の同時多発テロとそれに続くアフガン・イラク戦争、現在の北朝鮮問題をどのように見るだろうと、時々考えることがある。
そんな氏の遺稿とも言うべき本の中に『世界史の中から考える』(新潮選書)がある。その中に、1990年におきた湾岸戦争とフセイン大統領に関する記述がある。少し拾ってみると、
「・・・しかし、彼(フセイン大統領)が非常識な作戦を決定し、それが行われるという事情は、むしろ彼の政権の弱みというべきであろう。それも道徳とか神を持ち出すまでもなく、政治的軍事的に言ってもそうである。・・・(中略)・・・というのは、そのことは独裁者にはその命令を批判したり、逆らう人がいないことを意味する。・・・(中略)・・・(クウェート侵攻以前にも以後にもフセイン大統領は多くの政敵や軍事部門の責任者を更迭・処刑したが)そういう状況でフセイン大統領の命令に逆らう人は出難い。しかし、そのことは、政治的軍事的に見て愚かな作戦を彼が考えたとき、それもまた実行されることを意味する。それは負けを早める。」
金正日とフセイン大統領を単純に同一視することは出来ないし、北朝鮮は後ろに中国がついているから、フセイン大統領のイラクよりも厄介ではある。しかし、独裁者に典型的な負け方、という点で、両者は共通項が多いようにも感じる。今回の北朝鮮のミサイル発射は、その象徴的な出来事になりうるかもしれない。
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