2006.06.11 15:57 |  診療  |  研究  |  枕流  | 推薦数 : 0

医療経済学とEBM

ここ1、2年くらいは以前ほど聞かなくなったが、その前の数年間、耳にたこができるくらい聞かされたのが、「医療経済学」と「EBM(Evidence Based Medicne)」という言葉だ。こうした用語は、それまでの医療界に馴染みがなかったので、学会等でもシンポジウムが開かれたり、その道の「専門家」と称する人たちの講演があったりと、ひところはかなりもてはやされ、これからの医療には不可欠のように言われていた。

 

しかし、具体的な内容を聞いてみると、現場の臨床をやっている人間にとって何かプラスになるような内容が含まれていたかというと、殆ど何もなかったというのが現在の実感だ。以前ほど騒がれなくなったのも、用語や考え方が浸透したせいもあるのかもしれないが、やはり中身が殆どなかったためにあまり取り上げられなくなったせいもあるのではないか。

 

まず、医療経済学について言うと、患者に経済的負担をかけないように、安価な薬を使用したりするような配慮は以前からしていたことだし、「薬漬け」との批判は以前からあって、本当に継続が必要な薬かどうか、減らせないかどうかは普段から心がけていたことだ。また、抗生物質などは、逆に漫然と投与すれば耐性菌出現の問題もあり、更に日本では保険審査が過剰なほど厳しい場合もある。したがって、我が国の場合、「医療経済学」と声高に言わなくとも、現行の出来高払い制の元でさえ、一定の歯止めがかかるようにはなっていたといえる。

 

また、EBMについても、確かに実際の証拠がなく漫然と信じられていたり、行われていたことをもう一度再点検して、現実にそぐわない無駄な医療行為を排除する効果はあったと思う。しかし、あることが経験上解っていても、「証明されていないから」といって、その検査や治療行為がナンセンスだと決め付けてしまうのもどうかと思う。今後行われる臨床試験等で、効果が証明されることもあるかもしれないのだから・・・。

 

何が言いたいかというと、この二つに共通するのは、それが殆ど米国の受け売りで、無批判に直輸入されているという点だ。日本で医療をやっている人間に対して、経済用語を一杯駆使して数字の分析をされても、今後それをどういう形で生かして行ったらいいのか、という具体的な提言を、医療経済学の「専門家」の講演から聞いたことは一度もなかった。少なくとも私には、彼らはただ出てきた数字をこねくり回して自己満足しているようにしか見えなかった。また、EBMについても、新たに何かが解ったというよりは、今まで経験上言われていたことを実際証明したというだけで(それはそれで貴重なことなのかもしれないが)、どちらかというと後ろ向きの学問というか、訓詁学のような印象を私自身は持っている。一流と目される雑誌が、そういうものしか取り上げなくなってきている(要するに結論は既に認知されている事柄であるために通りやすい)ような気がするのだが、考えすぎだろうか。

 

目新しい言葉や考え方に飛びつくのは、マスコミならまだしも、学会や専門家の集団が安易にやるべきことではないように思う。雑誌のImpact factorの問題もあり、どうしてもその時のtopicに関心が向かうのは、ある程度やむをえないのかもしれないが、毎年学会に参加して、2,3年周期でコロコロ主題が変わってしまうのを目にしてしまうと、根本的にマスコミと同じではないかと幻滅してしまう。

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