ゆうあいクリニック理事長日記
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幸せな一夜

ゆうあいクリニック理事長日記 / 2006.08.31 05:16 / 推薦数 : 0
最近やっとアスベスト被害が大きく取り上げられるようになりましたが、アスベストで悪性中皮腫や肺がん、肺線維症が起こることは数十年前から医療界では「常識」でした。
国会でも、今から14年前の平成4年に、当時の社会党が「石綿製品の規制等に関する法律案」を提出しようとしましたが、いろんな圧力で審議すらされませんでした。

フィブリノゲンなどの薬剤による健康被害についても、やっと裁判で勝てるようになりましたが、その間の患者さんたちのご苦労は大変なものだったでしょう。マスコミで「国の責任が」なんていうことを言いますが、昔からわかっていたんだからその時報道すればいいのに・・・と思います。
年度末になると「医師の年収は高すぎる」なんていう訳のわからないキャンペーンを張って反・医師の世論を醸成し、医療費マイナス改訂をスムーズにするお膳立てをしている暇があったら、まともな報道をしてもらいたいものです。

今でこそ研修医の「無給」はなくなりましたが、それでも月給20万円台、30万円台の医師はたくさんいますし(私もそうでした)、「平均月収227万円」と揶揄された開業医にしても、億の借金を抱えて常に倒産のリスクを背負った個人事業主、いわば「中小企業の社長さん」たちであると考えれば一概に高いとはいえないでしょう。

さて、愚痴はともかくとして本題に戻ります。
おそらくアスベストが原因の重症の肺線維症の患者さん。50代の男性です。

健康な肺を「風船」とたとえるなら、肺線維症の肺は「紙風船」です。
膨らみにくいし(→呼吸不全)、破れやすい(→気胸)という肺は、きちんと管理をしても時に致命的な経過をたどります。
その方も、長い経過ののち両側気胸に肺炎を合併し、残念ながら救命は難しいと考えられました。

個室に入っていただき、奥さんと娘さんが付き添っていました。
それまでの苦しさとうって変わってその夜は非常に調子が良く、お二人のご家族に時に私や看護師さんも加わり、たわいのない話をするのを、本当に嬉しそうな顔でごらんになっていました。

そんな一夜が明けて、その方は亡くなりました。
私も一睡もせず眠かったですが、なにか大事なものをいただいた思いでその日の勤務に入りました。

四十九日をすませてご家族が病院にいらっしゃり、丁重にご挨拶をいただきました。
本当に良かった、とおっしゃっていただきました。
そんなお看取りが毎度できるといいんですが・・・。

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