「たけしの本当は怖い家庭の医学」にも出ていましたから一般にも知られてきたかと思いますが、「重複がん」という言葉があります。
体の複数の部分に近い時期にがんが発生して育ってしまう現象で、「二重がん」ともいいます。3か所にできれば「三重がん」です。
一か所にできたがんが他の場所にも飛び火してしまう「転移がん」とはちがいます。
以前に勤務していた病院で私たちが担当した患者さんで、こんなケースがありました。
近隣のクリニックからご紹介いただいてはじめて診察した大腸がんの患者さんですが、病歴のお話などを伺ったあとで何気なく脈を取ると、右手親指の付け根から爪にかけて5cmくらいの長さで薄茶色の「しみ」のようなものが広がっていたのです。
その患者さんの「しみ」は、それまで患者さん自身も気にされない程度のものでしたが、私はすぐ「悪性黒色腫」という皮膚がんだとわかりました。
ただちに皮膚科の先生と連絡をとり、大腸と皮膚の同時手術となりました。
PETの仕事をはじめてこのような「重複がん」にはかなり出会うようになりました。
ゆうあいクリニックでは近隣の病院などから多くの患者さんががんの治療前後のPET検査のために紹介されてきます。その人数は年間一万人ほどにもなります。
全身を同時に診ることができるのがPETの大きなメリットですが、あるがんの検査のためにPETを受けた患者さんに不幸にして全く別の場所の重複がんが見つかり、両方の治療をおこなうことになった、というケースにしばしば出会うのです。
PET検査をするかどうかは別として、がんの治療をはじめる前には様々な検査が待ち受けていることと思います。
「どうして胃がんなのに大腸の検査や胸のCTまでするの?」といった質問をいただくことがありますが、主治医の先生は転移がんだけでなく、重複がんの可能性も考えて検査をお勧めになっているのだと思います。しんどいこととは思いますが、ぜひ前向きにたたかっていただけたらと思います。
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