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藤沢周平の「闇の傀儡師」上下2巻を読んだ。
主人公「源次郎」は、筆耕仕事で食いつないでいる元御家人である。長屋に住み、長屋の隣人から「旦那」と呼ばれているが、その実、日雇い職人と変わらない。しかし、たまたま通りすがりに、殺しに遭遇、殺された人間の死に際に遺言を託される。
その遺言を探るうちに、百年以上の昔から将軍家継承に闇で絡んできたといわれる秘密結社八嶽党と、将軍家を守る公儀隠密、それを利用する幕府要人の争いに、源次郎は巻き込まれてしまう。
用心棒日月抄シリーズ、よろずや平四朗、隠し剣シリーズに共通する主人公像は、浪人や下級武士など生活の境遇は極めて厳しく、毎日の糧にも困っているような武士であるが、、後ろを歩く人間の殺気を感じ、剣を構えただけで、相手の剣の筋がわかってしまうような超一流の剣の腕を持っている。その剣で悪を切るというのが話の基本路線であり、敵と剣を交えたときの描写は素晴しい。それに、ささやかな色恋、友情、葛藤などを交えて、時々本線からずれた話も出てくる。ハッピーエンドが基本だが、主人公の恵まれない日々の境遇までがハッピーに変わることは殆どない。
医療現場と、江戸時代の剣士たちの争いは、全く異なるものであり、共通点を探したりは私は敢えてしません。非日常の世界に自分が入り込むことがストレス解消につながると信じています。
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横山秀夫の「看守眼」を読んだ。
ここでの主人公「山名」は警察で働いている。しかし、山名の仕事は県警機関紙の編集である。その原稿を書いてくれない退職間近の警察官「近藤」を追って、自宅にまで行ってしまう。
その準主人公である近藤の仕事は、留置場の看守である。事件とは全く関連のない2人が、本職の刑事が解決できなかった殺人事件をなぜか解明してしまう。
刑事がまっすぐ容疑者を見るのに対し、看守は斜めから見ることができる。
テレビドラマや映画では捜査一課などの刑事が主役であることが非常に多い。しかし、横山秀夫の小説は普段主役にはなり得ない看守や鑑識係などの人物が主人公である。
医療ドラマや医療ドキュメントでは心臓外科医や脳外科医、救命救急医などが取り上げられる。呼吸器内科医が主役のドラマなんて作りにくいに違いない。
横山秀夫の「看守」や、藤沢周平の「下級武士」に共感してしまうのは、僕が呼吸器内科医だからだろう。
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医師はストレスの多い仕事だと思います。
勤務中はもちろん、自宅に帰っても、飲みに行っても、24時間仕事の事を考えています。
病院で完璧に仕事をしたという自信をもって家に帰ってきても、「今日入院した患者はどうなったかな、初期治療は正しかったかな」とやっぱり考えてしまったり、
看護師から夜寝ているときに電話がかかってきて、とりあえず指示を出しても、「大丈夫かな、判断ミスしてないかな」と電話のあとで考え込んでしまったり、
患者を看取って帰宅してきたときは、「少なくとも間違った治療はしてないけど、最善の診療をしてあげられたかな」とか
食事中も、テレビを見ていても、家族と話していても、患者のことをどうしても考えてしまいます。
学生のとき、私は読書をほとんどしなかった人間ですが、医師になってからは読書量が増えました。特に小説が好きです。医療系の小説も読みますが、全く医療と関係ない小説の方が好きです。藤沢周平などの時代小説や、横山秀夫の警察小説、東野圭吾の推理小説、浅田次郎、高野和明、藤原伊織など直木賞作家を中心に何十冊と読みました。なぜなら、小説を読んでいるときは仕事を、患者を忘れられるのです。現実の世界とかけ離れた小説の世界に入ってしまうようです。
地味な趣味ですが、小説は私の精神安定剤です。
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