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2008.07.03 22:27 |  診療  |  仕事 / 職場  |  生活 / くらし  |  エピソード  |  SAM  | 推薦数 : 0

エピソード9:お迎え

深夜2時、枕元の携帯が鳴った。目覚まし時計には反応しないのに、携帯の音には飛び起きる自分が悲しい。

 

「Iさんのheart rateが下がってきました。今、40台です。」

「呼吸は?」

「10回いかない位です」

「じゃー行くから」

 

昨日と同じ服を手早く着て、目覚ましに顔を洗って、寝癖の部分を手に付けた水で均して、子供の寝顔をみて、玄関をでるまで、約5分。いつもの手順だ。

いつもと違うのは玄関の外の風景。昨日の昼過ぎから珍しく大雪で、地面に積もった雪で靴が埋もれた。

靴を濡らしながら歩いて10分で病院の玄関に到着。病棟に私服のまま上がって、医師控え室の白衣を羽織った。 そこでまた時計をみると、電話から約20分経過。ナースステーションのモニターの音が聞こえるが、音の間隔がかなり間延びしている。恐らく20回/分くらいだろう。ちらっとモニターをみて、病室に入った。

Iさんの顔は生気がすでになく、呼吸は、かろうじて口と顎が動いているが、肺にはほとんど空気は入っていっていない。

 

---少し早かったか

 

ナースステーションでモニターを眺める。一瞬、心拍が0になった。家族の声が聞こえて、Iさんの体を揺さぶると、心拍は再開し、20位まで戻った。しかし、約30秒後、再び心拍は0になり、家族の揺さぶりもむなしく、心拍は戻らない。私は病室にもどり、瞳孔がペンライトに反応しないこと、頚動脈が触れないことを型通り確認、時計をみて、死亡時刻を家族に伝えた。

ナースステーションに戻り、死亡診断書を書く。間違えると、後で役所から電話かかってくるから、慎重に見直すが、眠くて字がかすんで見える。

 

---あとはお迎えの車が早く来てくれればいいけど。

 

医局のソファーでうとうとしていると、1時間後、お迎えが来た。比較的早く来てくれた方だ。

 

午前4時、家に着いた。もう携帯鳴らなければいいけど。すぐにパジャマに着替えて、布団に入るが、なかなか寝付けない。寝付いたのは5時ごろか。7時に目覚まし時計が鳴ったが、無意識で止めてしまったらしい。7:15妻に起こされて、8時にまた玄関をでた。

 

週に2回こういうことがあると、患者さんとご家族には申し訳ないけど、もう嫌になります。

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