| 日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 2 | |||||
| 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
| 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
| 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
| 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
| 31 |
昔は綺麗だったに違いないという患者さんに時々出会います。Hさんは、言葉づかいや身振り、顔の構造から、30年前の容姿を失礼ながら想像したくなるようなご婦人でした。Hさんは健康診断で肺に異常影を見つけられ、私の外来を受診しましたが、レントゲンのみで明らかに肺がんを考えるような大きな影でした。
気管支鏡で肺がんと確定診断され、骨転移のあるⅣ期(進行期)でした。更に、PET-CTで腸に異常な集積を認めましたが、まず肺がんの抗がん剤を行う目的に入院してもらいました。入院後、大腸内視鏡を行いました。その結果、大腸にもがんがみつかり、しかも、そのがんは大腸をほぼ閉塞していました。
Hさんの旦那を呼んで、Hさんとともにお話しました。あと少しで大腸がんにより腸閉塞の状態になること、腸閉塞を回避するには手術しかないこと、手術すると肺がんに対する抗がん剤治療を延期しなければいけないこと、延期したために肺がんが進行し治療のタイミングを失うかもしれないこと、を伝えました。
Hさん夫婦はがんが同時に2つも見つかり、どちらも進行した段階で発見されたことに、少なからずショックを受けていました。しかし、旦那さんも聡明な方で、手術のリスクを十分理解した上で、大腸がんの手術を受けることに同意しました。
大腸がんの手術は無事終わり、術後肺炎も起こさず、順調に回復しました。しかし、1ヵ月後、私の外来に来たときには、食欲はあるものの術前と比較すると体重は5kgほど減っていました。抗がん剤治療のリスクは術前より高まっていました。
旦那さんには、Hさんが抗がん剤治療で死亡する可能性もあることを説明しました。それでもHさん夫婦は、「治療してください」と、はっきり抗がん剤治療を希望されました。
抗がん剤治療をするには、risk(危険性)とbenefit(有益性)のバランスを常に考えます。riskがbenefitを上回ると判断したら、患者さんが希望しても決して抗がん剤治療はしません。しかし、その判断は時として非常に難しく、結果的に判断を誤ったと後で思うことがあります。
Hさんは抗がん剤を1回投与した後、副作用を契機に、肺炎で1ヶ月後に亡くなりました。抗がん剤の副作用で亡くなる確率は約1%です。しかし、患者さんにとっては0%か100%のどちらかしかありません。主治医として今から思えば、やはり判断を誤ったのでしょう。(もちろん医療過誤や誤診をしたわけではありません。)
Hさんをお見送りするとき、旦那さんは「お世話になりました。僕が肺がんになったら、またよろしくね」と私にこそっと言って帰っていきました。すこし心が救われた気がしました。
固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)
コメント
コメントはまだありません。
コメントを書く