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<自遊時間>
2011.7.18撮影 


出典 Medical Tribune 2011.7.7多くの製薬メーカー主催の講演会は大なり小なり「販売拡大」 の性質を帯びています。
最近聴いたこの講演は、珍しくこういった性質を帯びていない「箸休め」的な内容で、それだけに新鮮でした。
以下はその講演メモです。
■"Sudden death is more common in those who are naturally fat than in the lean." Hippocrates
■ヒトは進化により何を得たのか?
人類の進化 数百万年 肥満は最近50年の出来事
最近の50年が現代日本にもたらしたもの
テレビ、洗濯機、冷蔵庫、自動車、エレベーター、交通網の発達、TVゲーム、ファーストフード、インターネットなど
↓
運動不足、脂質過剰摂取
↓
肥満
MetSの増加(高血圧、高血糖、脂質代謝異常)
↓
心血管障害
■50年の食生活の変化(昭和35年 → 平成12年)
ごはん:(1日お茶碗約5杯 → 1日約3杯)
牛肉:ステーキ150gに換算すると
(ほぼ2カ月に一度 → 1週間に1度)
サラダ油:1.5L換算で
(4カ月で1本 → 4カ月で3本)
■米国では135kgの人が400万人いる
■平成14年:国民栄養調査
肥満者の割合
男性 30〜69歳で約3割(20年前に比べて1.5倍)
女性 60歳以上で約3割
*男性は年齢に関係なく肥満者が増加
*女性は高齢者で肥満者が増加
■褐色脂肪細胞は16度前後で活性化しやすい。
2時間の寒冷刺激の後、PETにより組織へのフルオロデオキシグルコース(FDG)集積を検討した。
寒冷条件で撮像すると肩部と傍脊柱にFDG集積がみられたが、温暖条件での撮像では集積は認められなかった。
■肥満の現状
•肥満児の頻度は、30年間で約3倍に増加
•7歳の肥満は40%、思春期肥満では70〜80%は成人肥満に移行
•40歳時に「過体重」であれば生命予後は3年短く、「肥満」なら6-7年は短くなる。
■メタボリックメモリー:
初期の段階に血糖コントロールを改善する事が10−20年後の心筋梗塞を予防する。
DCCT/EDICスタディの戦略
1型糖尿病患者をインスリン強化療法群と従来療法群にわけ、より厳格な血糖管理が血管合併症抑制に有効かをみたランドマーク試験
DCCT/EDIC:心血管イベント抑制効果
(従来療法群 vs 強化療法群)
心血管イベント 42%抑制
MACE 57%抑制
出典
DCCT/EDIC Study Research Group N Engl J Med 2005,353,2643-2653
■40〜74歳の男性2人に1人、女性5人に1人がメタボリックシンドロームの疑いまたは予備軍
■ウエストサイズは内臓脂肪の指標である。
↓
「肥満」というより「脂肪」がキーワード
■心疾患を発症する可能性
危険因子の数(心疾患の発症危険度)
0個 (1.0)
1 (5.1)
2 (5.8)
3〜4(35.8)
出典
資料 労働省作業関連疾患総合対策研究班の調査
Nakamura et al/ Jpn Circ J 65:11,2001
■脂肪細胞からは、様々な「アディポサイトカイン」が分泌!
脂肪細胞からは「アディポサイトカイン」が分泌されており、「善玉」と「悪玉」のものがあります。
善玉ディポサイトカイン
動脈硬化に関与 アディポネクチン
悪玉アディポサイトカイン
高脂血症に関与 遊離脂肪酸
糖尿病に関与 TNF-α、遊離脂肪酸、レプチン
高血圧に関与 アンジオテンシノーゲン
動脈硬化に関与 PAI-Ⅰ、HB-EGF
■脂肪機能不全が起こると、「アディポネクチン」はどうなるの?
内臓脂肪の蓄積は、善玉の「アディポネクチン」の分泌を減らし、悪玉のアディポネクチンの分泌を増やす。
その結果動脈硬化が加速する。
<関連サイト>
アディポネクチンと心筋梗塞
http://blog.m3.com/reed/20100729/1
[PDF] 2.肥満とメタボリックシンドローム ―アディポサイトカインから―
http://jams.med.or.jp/symposium/full/124017.pdf
<番外編 その1>
サイトカイン
http://ja.wikipedia.org/wiki/サイトカイン
■ホルモンと似ているが、ホルモンは分泌する臓器があり、比較的低分子のペプチドが多い(しかし、サイトカインとホルモンは、はっきりとした区別があるものではなく、エリスロポエチン (erythropoietin) やレプチン (leptin) など両方に分類されることがある)。
<番外編 その2>
#糖尿病改善するたんぱく質発見 名大と米大など
米ボストン大学と名古屋大学などの国際研究チームは、糖尿病の症状を改善するたんぱく質を発見した。
マウスの実験で効果を確認しており、ヒトでも糖尿病患者はこのたんぱく質が少ないことがわかった。
糖尿病の新しい治療法の開発につながるという。
研究成果は米科学誌サイエンスに掲載された。
ボストン大医学部の大内乗有助教らの成果。
発見したのは脂肪組織で作られる「Sfrp5」というたんぱく質。
正常なマウスと太って糖尿病を起こしたマウスを比べると、糖尿病のマウスでは脂肪組織の中のSfrp5が少ないことがわかった。
糖尿病のマウスにこのたんぱく質を投与すると、血糖値が下がり脂肪肝などの症状が改善した。
このたんぱく質を作れなくした
マウスに、カロリーの高いエサを与えると、血糖値の上昇や肝臓に脂肪がたまるといった糖尿病の症状が出た。
健康なマウスでは、このたんぱく質が糖尿病の発症を予防しているとみられる。
ヒトの脂肪組織でも、糖尿病患者では健康な人に
比べてSfrp5が少ないことがわかった。
Sfrpは血糖値を下げるホルモンであるインスリンの効きを良くしていると考えられるという。
大内助教は「ヒトでのSfrpの働きが詳しくわかれば、肥満による糖尿病を改善する新しい薬剤につながる可能性がある」と説明している。
出典 日経新聞・朝刊 2010.6.30
版権 日経新聞社
SFRP5
Secreted frizzled-related protein 5 is a protein that in humans is encoded by the SFRP5 gene.

クロード・モネ 睡蓮の池・緑のハーモニー
http://www.kutibue.com/meiga/midori.html
(オルセー美術館展2010.「ポスト印象派」)
その他
「葦の髄」循環器メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/
(内科医向き)
「井蛙」内科メモ帖
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/ があります。
冠動脈アテローム動脈硬化の進行比較: 糖尿病 vs メタボリック症候群
冠動脈疾患患者において、糖尿病(DM)は代謝異常とは独立し、動脈壁に悪影響を与え、プラークの進行と収縮性リモデリングに関与することが、アメリカ、Cleveland ClinicのOzgur Bayturan氏らにより、6月15日号のThe American Journal of Cardiology誌で報告された。
Bayturan氏らは、冠動脈疾患患者3,459人をDM、メタボリック症候群(MS)、又はいずれも認められなかった患者の3群に分け、IVUSによるアテローム動脈硬化の連続評価にてプラーク量、プラークの進行、及び動脈リモデリングを比較した。
3群の中で、MS群の患者は個人における心血管危険因子の数が最も多く、DM群ではアテローム量の割合が高く(DM群40.3±9.0% vs MS群37.6±8.9% vs 非DM/非MS群38.1±9.1%: p<0.001)、総アテローム量が多かった(DM群198.3±85.9mm³ vs MS群190.7±85.0mm³ vs 非DM/非MS群186.3±79.1mm³: p=0.05)。
非DM/非MS群と比較して、MS群は外弾性板の拡張が確認されたが(501.3±174.3mm³ vs 484.4±160.7mm³: p=0.02)、DM群は内腔収縮と関連していた(290.6±111.7mm³ vs 298.1±105.5mm³: p<0.0001)。連続評価では、DM群のみが、非DM/非MS群と比較し、%アテローム量(+0.8±0.3% vs +0.3±0.2% vs +0.1±0.2%: p<0.0001)、及び総アテローム量(-1.0±1.8mm³ vs -3.3±1.8mm³ vs -4.0±1.8mm³: p=0.001)への関与を示し、MS群ではDM群のように疾患進行への影響は確認されなかった。
Bayturan氏らは、「DM群では個人の危険因子の数はMS群よりも少なくと(て?)も、MS群よりもプラークの進行、及び収縮性リモデリングに関連しており、代謝異常とは独立して、DMによる動脈壁に対する悪影響が示された」と、まとめている。
原文
Bayturan O, et al. Am J Cardiol. 2010; 105: 1735-1739
出典 TCROSS Medical News
https://www.tcross.co.jp/details.php?category=medical&no=713&id=1
<コメント>
DMはしばしばMetSを合併します。
MetSの診断基準の中に「FBS高値」があるわけですから当然といえば当然です。
したがって、多くの先生がDM例とMetS例を奇麗に分類することが出来るのかという疑問が湧く筈です。
糖尿病(DM)は代謝異常ではないのか、という問題もあります。
いずれにしろ、この論文は論理的破綻はないのでしょうか。
本当に科学的論文でしょうか。
最近の糖尿病関連の論文は「糖尿病と大血管障害」についてのテーマが多い傾向があります。
この論文も、その一連のものと思われます。
細小血管障害ほどにはいい結果が出ない印象を受けるのは私だけでしょうか。
<番外編>
「スタチンと白内障の関係」は不思議です。
ある論文では白内障のリスク軽減、別の論文ではリスク増加となっています。
動脈硬化のペニシリン“スタチン”の発見と開発―遠藤 章先生に聞く
http://www.jhf.or.jp/shinzo/mth/images/History-37-8.pdf
(開発にまつわる興味深いお話です)
■1950~60年代にかけて,アメリカで開発されたトリパラノールというコレステロール合成阻害薬の事件がありました。
トリパラノールはコレステロール合成の一番最後のところを阻害する薬剤で,日本では塩野義製薬株式会社が導入しましたが,白内障の副作用が出て,1962年に発売中止,回収という大きな騒ぎになりました。
(私的コメント;これはスタチンではありません)
スタチン系薬剤が白内障リスクを軽減
http://www.healthdayjapan.com/index.php?option=com_content&task=view&id=408
■コレステロール低下薬のスタチン系薬剤を服用している高齢患者では、服用していない患者に比べ、水晶体の中央部分に濁りを生じる最も一般的な核性白 内障の発症率が40%低いことが、ある地域の人口集団を対象に行われた観察研究で明らかになった。
白内障発症には酸化ストレスが一部関与しているとされ、 スタチンのもつ抗酸化作用が発症予防に関連していると見られる。
高脂血症治療薬スタチンの継続的服用が白内障発症リスクを低下させる
http://shenq.blogzine.jp/2501/2010/03/post_ed1a.html
■継続的なスタチン使用は、75才未満の男性と女性で、白内障発病率を顕著に低下させた。
(私的コメント;上記サイトと同じソース)
スタチンの継続服用が白内障に保護的に作用
http://cocktail-glass.at.webry.info/201003/article_6.html
■ スタチンの継続服用が75歳未満の男女の白内障発症に保護的に作用するとのデータが,イスラエルのグループによりAnnals of Epidemiologyの2月号に発表された。
スタチンと有害事象・合併症のリスク(英国研究)
http://www.watarase.ne.jp/aponet/blog/100516.html
■スタチン使用と食道がんリスク減少と関係していたが、中等度以上の筋障害、中程度以上の肝障害、急性腎不全、白内障ではリスクが増した。
■白内障のリスクは治療をやめれば、1年で元に戻る。
(私的コメント;「元に戻る」というのも不思議です)
スタチンの利点 リスクを上回る
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy/36456167.html
日本は総人口の21%以上を65歳以上の高齢者が占める「超高齢社会」になりました。
高齢者では加齢に伴う動脈硬化から腎機能障害が起こるため,慢性腎臓病(CKD)が高頻度に見られます。
CKDは末期腎不全および心血管系疾患(CVD)の発症の重要な危険因子ですが,CKDでは脂質異常症の治療により,CVDのリスク低下だけでなく腎機能低下の抑制も期待できます。
きょうは、「高齢者におけるCKD合併脂質異常症」, 「CKDおよびCVD抑制に関するスタチンのエビデンス」,「高齢のCKD合併例に対する脂質管理の在り方」についての討論の記事で勉強しました。
高齢者におけるCKD合併脂質異常症の治療
司会:
荒井 秀典 氏 京都大学大学院人間健康科学系専攻 近未来型人間健康科学融合ユニット 教授
出席者:
庄司 哲雄 氏 大阪市立大学大学院 代謝内分泌病態内科学 講師
木原 進士 氏 大阪大学大学院 内分泌・代謝内科学 講師
西尾 善彦 氏 滋賀医科大学 糖尿病・腎臓・神経内科 講師
高齢の日本人脂質異常症患者の約40%がCKDを合併
荒井
「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2009」(以下,ガイドライン)によると,臨床的に問題とされる中等度(ステージ3)以上のCKD患者は,日本で1,098万人と推計されています。
CKDの有病率は加齢とともに増加し,70歳以上では推計で約30%以上に達します。
一方,平成18年の国民健康・栄養調査によると,65歳以上の高齢者の40~50%が脂質異常症を有しており,患者数は推計で1,240万人にのぼります。
しかし,このうちの約60%はスタチンによる治療を受けていないと推定されています。
西尾
当施設において調べたところ,糖尿病経過外来では,65歳以上の糖尿病患者のうち,34%がステージ3以上のCKD,60%が脂質異常症を合併しており,糖尿病合併脂質異常症の半分以上の患者が未治療でした。
荒井
脂質異常症がCKDに及ぼす影響は多くのコホート研究で示されており,Physicians' Health Studyでは,健康男性においてベースラインの総コレステロール(TC)値が高いほど,血清クレアチニン値 ≥ 1.5mg/dLの腎機能低下例が多くなることが示されています1)。
このように,脂質異常症とCKDは合併することが多く,プラバスタチン(メバロチン®)の日本のエビデンスであるMEGA Studyにおいても,65歳以上の脂質異常症患者の37.8%が,ステージ3以上のCKDを合併していました。
<CKD合併脂質異常症の病態の特徴について>
庄司
CKD合併脂質異常症は2タイプに分かれます。
1つ目はネフローゼ症候群に合併するタイプで,蛋白尿が多いため,代償的に肝臓での超低比重リポ蛋白(VLDL)の合成が増加します。
VLDLは中間比重リポ蛋白(IDL),LDLへと代謝されるので通常はLDLが増加しますが,この過程に異化障害が生じると,VLDLが増加します。
2つ目は,糸球体濾過量(GFR)の低下による腎不全タイプで,末梢でのVLDLの異化障害が脂質異常症の主因であり,VLDLやIDLは増加しますが,LDLの上昇はありません。
CKD合併例では,LDLコレステロール(LDL-C)が上昇しない場合があるため,LDL-Cのみを基準としていると,脂質異常症を見逃す危険性があります。
以上から,CKD患者における脂質異常症の診断では,LDLだけではなく,VLDLやIDLを含む指標として,TCからHDLコレステロール(HDL -C)を引いた non HDL-Cを指標とすることが望ましいと思います。
<メタボリックシンドローム(MetS)の観点から>
木原
MetSでは腎臓の過剰濾過が起こるので,初期に推算糸球体濾過量(eGFR)はむしろ増加します。
しかし,脂肪細胞から分泌されるアディポネクチンが減少し,アルブミン尿やCKDの進展につながります。
したがって,MetS患者において検尿で蛋白尿がプラスマイナスを示した場合,微量アルブミン尿検査をすることが望ましいと思います。
1)Schaeffner ES, et al. J Am Soc Nephrol 2003; 14: 2084-2091.
CKDを合併した脂質異常症患者に対するスタチン治療の意義が明確に
荒井
スタチンを用いた多くの大規模臨床試験のサブ解析により,スタチンのCKD合併脂質異常症におけるCVD抑制のエビデンスが示されています。
MEGA Study,Prava III,ASCOT-LLA試験におけるステージ3~4のCKD患者を対象としたサブ解析の結果,スタチン群では対照群に比べ,1次エンドポイントであるCVDのハザード比が0.52~0.77と,有意なリスク低下が認められています2)。
特に,中等度CKDを合併した脂質異常症に対するプラバスタチンのCVD発症抑制を検証したMEGA StudyのCKD解析では,食事療法+プラバスタチン併用群は食事療法単独群に比べ,1次エンドポイントである冠動脈疾患(CHD)の発症リスクを48%有意に低下させました。
特に,脳卒中や脳梗塞の発症リスクをそれぞれ73%,82%と有意に低下させました(図1)。

一方,維持透析患者を対象とした4D3),AURORA試験4)のサブ解析では,スタチンによるCVD発症抑制は認められませんでした。
庄司
維持透析患者ではスタチンを投与してもCVDが抑制されなかったことから,CKDの早期からのスタチン治療が重要と言えるのではないでしょうか。
CKD患者を対象にスタチンによる脂質管理を考える場合,CKDステージ3は特に重視すべき対象だと思います。
西尾
CKDステージ3以上の患者などでは,絶対リスクを考えて治療することが重要だと言えます。
荒井
CKDの重症度別にプラバスタチンの血清脂質改善効果を比較したところ, LDL-Cの低下率は約20%とほぼ同等でした(図2)。MEGA Studyの主解析ではプラバスタチンによるCHDの発症リスクが33%有意に低下したのに対し(Log-rank検定:P=0.01)5),CKD解析では48%有意に低下しました。
さらに,1イベントを予防するために必要な治療例数(NNT)も,主解析の119に対しCKD解析では82と少なくなったことから,CKD合併例ではスタチンの治療効果が大きく得られることが示唆されました(図1)。

木原
MEGA Studyが日本人のデータであることは貴重だと思います。
また,マイルドな脂質低下作用によってCVDが抑制された理由として,スタチンのなかでもユニークな水溶性のプラバスタチンはアディポネクチンを増加させるという報告が多く,脂肪組織の機能異常を改善する作用が関与しているのではないかと推察しています。
2)庄司哲雄ほか: 血圧 2006; 13: 411-416.
3)Wanner C, et al. N Engl J Med 2005; 353: 238-248.
4)Fellström BC, et al. N Engl J Med 2009; 360: 1395-1407.
5)Nakamura H, et al. Lancet 2006; 368: 1155-1163.
早期からのスタチン治療がCKDに及ぼす影響
荒井
スタチンがCKDそのものに好影響を及ぼすことも報告されています。
MEGA StudyのCKD解析において,プラバスタチン併用群では,食事療法単独群に比べ,eGFRが有意に増加しました(図3)。

<スタチンによる腎保護の機序>
庄司
スタチンの腎保護機序としては,
(1)脂質レベル低下を介する機序,
(2)スタチンが直接的に腎臓の細胞に作用する機序,
(3)心機能改善を介した腎血流・GFR増加の3点が考えられます(表1)。
糸球体上皮細胞保護には(1),(2),糸球体基底膜のスリット膜分子であるネフリン発現に(2)が関与していることが知られています。

西尾
私どもの施設では,糖尿病経過外来における早期糖尿病腎症患者において,4つの基準(HbA1C値<6.5%,血圧<130/80mmHg,TC<200mg/dL,トリグリセライド<150mg/dL)を多く達成した例ほど,腎症の寛解率が高かったことから,CKDでは血糖,血圧,脂質を早期のうちから包括的に管理することが重要だと考えています。
木原
糖尿病を発症してしまった患者については,スタチンはあまり悪影響を及ぼさないと思います。
しかし,糖尿病になっていないレベルの糖代謝異常を有する患者へのスタチン投与は,耐糖能を悪化させる可能性もあり,注意が必要です。
高齢のCKD合併例に対するスタチン治療では,特に安全性を重視
荒井
高齢のCKD合併脂質異常症患者に対するスタチンを用いた薬物治療では,横紋筋融解症など安全性が懸念されますが,先生方はどのように薬剤を選択されていますか。
庄司
高齢者は多剤を併用することが多いため,安全性を重視して薬物相互作用のリスクが低い薬剤を選択しています。
プラバスタチンは水溶性で薬物相互作用が少なく,安全性が評価されている薬剤です。
荒井
MEGA StudyのCKD解析では,食事療法単独群とプラバスタチン併用群とで,肝機能障害,腎機能障害および横紋筋融解症の指標であるクレアチンキナーゼ(CK)上昇の発現率はほぼ同等でした(表2)。

庄司
CKD合併例に対するスタチンの有害事象はあまり公開されていないので,今回のMEGA Study CKD解析において示されたCKD合併例に対するプラバスタチンの安全性データは非常に重視しています。
木原
庄司先生のおっしゃる通りだと思います。
また,耐糖能に影響を与えにくいスタチンという点でもプラバスタチンが有用ではないかと考えています。
西尾
糖尿病患者を中心に診療するなかで,高齢の脂質異常症患者ではCKD合併例が多く,その場合は基本的にスタチンを選択していますが,安全性が評価されたプラバスタチンは使いやすい薬剤だと思います。
荒井
高齢のCKD合併脂質異常症患者に対し,早期からのスタチン治療がCVDの発症抑制はもちろん,CKDの進展抑制に期待できる可能性が示唆されました。
しかし,日常診療では多くの高齢のCKD合併例がスタチン治療を受けていないと推測されるため,今後は高齢者における適切なリスク評価と,安全性を重視したスタチン治療の推進に取り組まなくてはならないという結論になると思います。
出典 Medical Tribune 2010.5.20
版権 メディカルトリビューン社
<番外編>
RAS阻害薬によるAFの予防: メタ分析
レニン・アンジオテンシンシステム(RAS)阻害薬が、心房細動(AF)の一次、二次予防に有効性を示す可能性が、ドイツ、University of Erlangen-NurembergのMarkus P. Schneider氏らにより5月25日号のJournal of the American College of Cardiology誌で報告された。
Schneider氏らは、AFの一次、又は二次予防においてACE阻害薬、又はARBの効果を検証した出版されている全ての無作為試験(23試験、患者87,048人)のメタ解析を行った。
一次予防では、6試験が高血圧、2試験がMI後、3試験が心不全患者を対象とし、二次予防では、8試験が電気的除細動後、4試験が薬剤による再発の予防効果を評価したものであった。
RAS阻害薬は全体でAFのオッズ比を33%低下させることが示されたが(p<0.00001)、試験間で不均一性が認められた。
一次予防においては、RAS阻害薬は心不全、及び高血圧、左室肥大を有する患者において有効性が示されたが、MI後の患者には有効性は認められなかった。
二次予防では、RAS阻害薬は、アミオダロンを含む抗不整脈薬への追加投与が一般的であり、電気的除細動後のAFの再発のオッズをさらに45%低下させ(p=0.01)、薬物療法下にある患者では63%の低下をもたらした(p<0.00001)。
Schneider氏らは、「AFの一次、及び二次予防に対するRAS抑制薬の有用性が示されたが、本分析に用いた一次予防を検証したデータの一部は事後解析であり、特定のRAS抑制薬と抗不整脈薬との相互作用、相乗効果については不明である」と、まとめている。
Schneider M, et al. J Am Coll Cardiol. 2010; 55: 2299-2307
https://www.tcross.co.jp/details.php?category=medical&no=666
その他「葦の髄」メモ帖 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
ある日の講演メモより
糖尿病分野の重鎮の先生の4月に行われた特別講演会の内容をまとめてみました。
■ニューズウイーク2008.4.2号 特集
肥満が犯罪になる日
太り過ぎは社会悪?
世界で「メタボ狩り」が始まった。
一週間で米国民が食べるハンバーガーを図示
■米国成人における肥満(BMI≥30)の頻度
1990年、1999年、2008年の統計では経年的に確実に多くなっている。
(共和党支持者が多い州に肥満が多い傾向?)
出典 CDC Behavial Risk Factor Surveikkance System.
■わが国の2型糖尿病急増の背景
環境因子 インスリン抵抗性
○高脂肪食・運動不足(50年で脂肪量4倍)
○肥満・内臓脂肪蓄積(50年で4倍2300万人)
遺伝因子 インスリン分泌低下
インスリン抵抗性、インスリン分泌低下の両方の結果がインスリン作用不足(→2
型糖尿病発症)
糖尿病患者数1955年と比較し2008年は35倍
糖尿病患者+予備軍
1997 1370万人
2002 1620万人
2007 2210万人
■日本人は欧米人よりも内蔵脂肪を溜めやすい(メタ解析)
(私のコメント;逆にいえば皮下脂肪に溜めにくいともいえる)
Tanaka S.:Acta Diabetol.,40,S302,203
■アジア人は欧米人に比べて小太りで糖尿病を発症する
欧米人 インスリン分泌良好
肥満・・・ 糖尿病
小太り・・・糖尿病予備軍
日本人・アジア人 インスリン分泌不良
小太り・・・糖尿病
標準・・・ 糖尿病予備軍
■日本における糖尿病患者の心血管イベント発症率は欧米並み
(久山町、JDCS、Framingham、UKPDS)
糖尿病患者の心血管イベント発症率は日本で増加傾向、欧米では減少傾向
久山町(1988-2000)<JDCS(1996-2004)
Framingham original-offspring 1950-66>1977-95
■2型糖尿病患者の冠動脈疾患リスクファクター
(UKPDS23 1977~1991)
第1位 LDL−C
第2位 HDL−C
第3位 HbA1c
第4位 収縮期血圧
第5位 喫煙
Turner RC et al:BMJ 316:823,1998
JDCS 1998~2005では
第1位 LDL−C
第2位 TG
第3位 HbA1c
となっている。
(私のコメント;第2位がTGということは最近になってMetSの関与が大きくなっている)
■平均HbA1cと細小血管症・心筋梗塞発症率(UKPDS)
細小血管症発症率と心筋梗塞発症率のいずれも7台までは増加。
細小血管症は10台以上でも発症率は比例関係にあるが、心筋梗塞発症率は8台以降は頭打ちとなる。
BMJ321:405-412,2000)
(私のコメント;非常に興味深いデータでした。糖尿病は大血管障害の関与はあまり強くないということが2000年の時点ですでにはっきりしていたのです)
■血糖コントロールと合併症発症リスクとの関係(JDCS)
Cox単回回帰分析、HbA1c<6.5%をハザード比=1とした場合、HbA1cの上昇に伴い2次曲線的に網膜症、腎症ともに増加。
(私のコメント;このデータも私にとって非常に興味深いものでした。従来腎症が大血管障害か細小血管障害なのか疑問でした。先のデータと合わせると心筋梗塞は大血管障害、網膜症・腎症は細小血管障害ということが疫学的にわかります。演者はその後、網膜症・腎症に比べれば、大血管障害はきわめて弱いHbA1cとの相関関係であることを示されました。それにしても心筋梗塞がどうして「大」血管という表現になるにか未だに不思議です。「中小」血管がなくて「大」血管と「細小」血管だけだからです)
ー未完ー
その他
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メタボ健診が特定健診がスタートして3年目に入ろうとしています。
この健診も最近ではすっかり不人気で、対象者の自宅に電話で受診勧告も始まっています。
この診断基準は最初から問題も多く、健診側も今一つ積極的にはなれません。
そして厚生労働省研究班から、腹囲基準について今頃になってやっと問題提起がされました。
メタボ健診の腹囲基準根拠ゆらぐ
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きょうの論文は、心血管疾患リスクに関してメタボリックシンドロームに該当しなくても肥満だけで十分という内容です。
メタボリックシンドロームについて考え直す必要があるかも知れません。
日本の論文は細かく分類(複雑化)する内容が多く、外国ではこういった単純化する方向性の論文が時々見受けられます。
##肥満なら心血管疾患リスクは増大
##メタボリックシンドローム非該当者
ウプサラ大学病院(スウェーデン・ウプサラ)心血管疫学のJohan Ärnlöv准教授らは,肥満や過体重の中年男性ではメタボリックシンドロームに該当しなくても心筋梗塞,脳卒中,若年死のリスクが高いとする研究結果をCirculation(2010; 121: 230-236)に発表した。
#長期追跡が重要
■Ärnlöv准教授は「これまでの研究で,肥満でも“代謝面で健康”であり心血管リスクが高くない亜群が存在することが示されていたが,そうした集団を長期に追跡すると,代謝面で健康な肥満者など存在しないことがわかる」と述べている。
■メタボリックシンドロームは心疾患や糖尿病発症の危険因子の集積であり,肥満やメタボリックシンドロームの心疾患リスクを検討したこれまでの研究では,メタボリックシンドロームに該当しない肥満者は高リスク群とされていなかった。
しかし,同准教授によると,こうした研究の追跡期間は13年以下で,メタボリックシンドロームに該当しない肥満者のリスクは10~15年経過後に顕著になってくる可能性があるという。
■同准教授らは,1920~24年にウプサラで出生した者を対象に,50歳時点で健康診断を実施し,糖尿病の既往や心疾患入院歴のある者を除く1,758例を30年間追跡した。
■追跡期間中,681例が心血管イベント(心筋梗塞,脳卒中,心不全による死亡または入院)を経験した。
そのうち心血管死は386例であった。年齢,喫煙歴,LDLコレステロール(LDL-C)値で調整後,メタボリックシンドロームの有無とBMIによる肥満/過体重の組み合わせごとに,正常体重でメタボリックシンドロームに該当しない対照群と比較した。
その結果,対照群と比べた心血管疾患リスクの増大率は,
(1)正常体重でメタボリックシンドローム群63%
(2)過体重で非メタボリックシンドローム群52%
(3)過体重でメタボリックシンドローム群74%
(4)肥満で非メタボリックシンドローム群95%
(5)肥満でメタボリックシンドローム群155%
であった。
■同准教授は
「正常体重でもメタボリックシンドロームに該当すればリスクが増大し,過体重と肥満の群ではメタボリックシンドロームに該当しなくてもリスクは増大した。医師は喫煙,コレステロール,血圧,体重などを含めた総合リスクを考慮する必要がある。肥満や過体重でも他の危険因子がなければ減量の必要はないと指摘する研究者もいるが,今回の研究結果はこの考え方を支持していない」
と述べている。
#女性の肥満データも蓄積すべき
■今回の研究では,メタボリックシンシンドロームの基準を登録時検診において,
(1)耐糖能異常(空腹時血糖値110mg/dL以上)
(2)高血圧(130/85mmHg以上または降圧薬治療)
(3)トリグリセライド高値(150mg/dL以上)
(4)HDLコレステロール(HDL-C)低値(40mg/dL未満)(5)BMI高値(29.4以上)
―のうち3項目以上の重積と定義した。
通常,腹部肥満の指標としてウエスト周囲(腹囲)がメタボリックシンドロームの診断に用いられるが,今回の対象人口ではデータが入手できなかった。
■また,女性ではこうした因子に関する長期データは存在しないが,Ärnlöv准教授は「医師は女性の体重にも他の心血管危険因子と同様に注意を払うべきである。まだデータがないからといって,メタボリックシンドロームに該当しない肥満女性が安全だと考えるべきではないだろう」と指摘している。
■米国心臓協会(AHA)のスポークスマンでAHA栄養・身体活動・代謝評議会のBarry Franklin議長は「今回の研究結果は意外ではない。肥満が多くの危険因子を深刻化もしくは増悪させることは,以前から知られている。
これまでの研究では,メタボリックシンドロームに該当しない肥満者ではリスクは増大しないことが示唆されていたが,今回の研究と比べると追跡期間がかなり短く,そうした研究結果が覆されたことは興味深い。今回の研究が以前のものと正反対の結果になった最大の理由は長期追跡にあると考えられる」と指摘している。
■今回の研究では,心血管疾患減少における身体的健康(fitness)の役割については論じられていない。
同議長は肥満者に対して「たとえ5ポンド(約2.27kg)の減量でも健康上の有意な恩恵が得られることを認識すべきである」と強く呼びかけている。
出典 Medical Tribune 2010.2.18
版権 メディカルトリビューン社
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BMIや腹囲、ウエスト・ヒップ比などと死亡リスクの関係はメタボリックシンドロームという概念でよく知られている。
デンマークCopenhagen大学病院のBerit L Heitmann氏らは、新たに、大腿囲が中高年男女の死亡と心血管疾患、冠疾患の独立した予測因子であることを示唆する結果を得たという記事(大西 淳子=医学ジャーナリスト)がありました。
大腿囲60cm前後に閾値が存在し、それより下の値であれば、大腿囲が小さいほど死亡やこれら疾患のリスクは高いというものです。
BMJ誌2009年9月26日号に報告されたちょっと前の論文です。
大腿径は腹囲径とどういった違いがあるかということが書かれているか興味があって勉強してみました。
大腿が細い中高年は死亡や心血管疾患のリスクが高い
デンマーク在住の約2800人を対象に行った前向き観察研究の結果
■これまでに、下肢の筋肉量と2型糖尿病リスクの関係を示した報告はあった。
しかし、大腿部の周囲径と健康の間の関係は明らかではなかった。
そこで著者らは、大腿周囲径と心血管疾患、冠動脈疾患、総死亡の関係を調べる前向き観察コホート研究を行った。
■WHOの後援を受けて行われたDanish MONICA(monitoring trends in and determinants of cardiovascular disease)プロジェクトに参加したデンマーク在住の男性1436人(1987〜88年の平均年齢50.1歳)と、女性1380人(49.7歳)を分析対象とした。
これらの男女は1922年、32年、42年、52年に生まれた人々で、ベースラインでは全員が冠疾患、脳卒中、癌の既往を持っていなかった。
■87・88年に、身長、体重、大腿囲(右大腿の殿溝の下を測定)、臀囲(最大値)、腹囲(肋骨弓下縁と前腸骨稜上線の中間点を測定)、体脂肪量(インピーダンス方式による)を測定。
共変数として、身体活動量(4段階)、喫煙歴、学歴(以上は自己申告による)、血圧、総コレステロール値、トリグリセリド値なども調べた。
■死亡については2002年12月9日まで12.5年間、心血管疾患と冠疾患については1999年1月まで10年間追跡した。主要アウトカム評価指標は、12.5年間の総死亡率と10年間の心血管疾患、冠動脈疾患の発生率に設定した。
■12.5年のうちに、男性257人、女性155人が死亡した。
■男性の生存群では、死亡群に比べてベースラインのBMI、体脂肪量、体脂肪率、臀囲、腹囲、年齢、血圧、総コレステロール値、トリグリセリド値、喫煙量などが有意に低かった。
反対に、ベースラインの除脂肪体重、大腿囲、身長は有意に大きかった。
■女性の場合もほぼ同様の結果だったが、BMI、体脂肪量、臀囲、腹囲の差は有意ではなかった。
■男女別に大腿囲のパーセンタイル値(2.5、5、10、25、50、75、90、95、97.5)で登録者を層別化し、50パーセンタイル群を参照群にして、それぞれのグループの死亡のハザード比を求めた。喫煙、身体活動、学歴、体脂肪率、身長、BMI、腹囲で調整したハザード比は以下のようになった。
中略
■10年間に男性263人、女性140人が心血管疾患を発症、男性103人、女性34人が冠疾患を発症した。
男女の心血管疾患、冠疾患発生リスクと大腿囲の間にも、死亡の場合と同様の関係が見られた。
■心血管疾患と冠疾患、総死亡のリスク上昇と大腿囲の間には、明らかな閾値効果が見られた。
総死亡率では、閾値は男女とも62cm。男性では心血管疾患、冠疾患ともに閾値は56cm。
女性では心血管疾患が68cm、冠疾患が60cmとなった。
■大腿囲の測定値が閾値より下の場合には、値が小さいほどリスクは大きかった。
しかし閾値を超えると、大腿囲がより大きくなってもリスクに変化はなかった。
血圧、コレステロール値、飲酒量などで調整しても結果はほとんど変化しなかった。
■したがって、大腿囲が小さいことは、腹部肥満や全身肥満、ライフスタイル、心血管危険因子とは無関係な、心疾患または早期死亡の危険因子であると考えられた。
■著者らは、大腿囲が小さいことが、その部分の筋肉量が少ないことを意味するとすれば、運動により筋肉をつければリスク低減が可能かもしれない、としている。
■さらに研究を行って今回の結果を確認する必要があるが、大腿囲測定は、一般開業医が心疾患リスクまたは早期死亡リスクの高い人を見い出すために使用できる簡便な方法として有用かもしれない、と著者らは述べている。
原文
Thigh circumference and risk of heart disease and premature death: prospective cohort study
BMJ 2009;339:b3292
http://www.bmj.com/cgi/content/full/339/sep03_2/b3292
出典 NM online 2009.10.8
版権 日経BP社
<関連サイト>
太ももが細いと寿命短い、デンマーク大研究
http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2637672/4533277
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があります。
肥満は周知のように血管病(CVD)危険因子です。
成人のBMIと死亡率の関係については「Uカーブ」を描き,BMIが低くても死亡率が高まることが報告されています。
第82回米国心臓協会学術集会(AHA2009Orlanndo,Florida,November14-18,2009))
での発表をとりあげた以下の記事で勉強しました。
##肥満は長期的な心血管死亡リスク,低体重は非心血管死亡リスクの独立した予測因子:Framingham Offspring Cohortより
http://www.medical-tribune.jp/cgi-local/aha2009.cgi/html/16_1466.html
出典 Medical Tribune Congress News Wave 2009.11.24
版権 メディカル・トリビューン社
この発表はフラミンガム子孫コホートにおける死亡とBMIとの関係を検討したものです。
低BMI層における死亡率の上昇は非CVD死亡の増加に基づくものであり,低BMIはCVD死亡の危険因子ではないという結果でした。
コメンテーターは兵庫県立尼崎病院循環器内科 佐藤幸人部長です。
#極端な低BMI層での総死亡率上昇の原因は非CVD死亡の増加
■フラミンガム子孫コホートに対する観察研究は,1970年代初めに開始された。
今回の検討では,同コホートのうち登録時に癌に罹患していなかった4,609人が対象とされた。登録時の年齢は20〜59歳,51%が女性,CVD罹病歴のある人は1.4%であった。
追跡期間中央値は33年(最長36年)であり,その間に258人(うち女性74人)がCVDにて死亡し,770人(同306人)がCVD以外の原因にて死亡した。
■これらの人々の年齢・性,収縮期血圧値および降圧治療,脂質値(総コレステロール・HDLコレステロール),喫煙習慣の有無,糖尿病の有無,CVD既往歴の有無について補正したFine & Gray競合リスクモデルを用い,CVD死および非CVD死とBMIとの関係を検討した。
■その結果,正常体重層(BMI 20〜25kg/m2)におけるCVD死亡リスクを1とした場合,過体重層(25〜30kg/m2)と肥満層(>30kg/m2)のハザード比(HR)はそれぞれ1.18,1.46と上昇,低体重層(<20kg/m2)のHRは0.81と低下し,BMIとCVD死亡率の間には有意な直線性(linearity)が認められた(P=0.037,linear trend検定)。
■一方,非CVD死亡とBMIの間には直線性は認められなかったが,低体重層のHRは1.44と有意に高かった(P=0.026 vs. 正常体重層)。
すなわち,CVD死亡率はBMIの増加に依存して直線的に上昇する一方,非CVD死亡はBMIのきわめて低い一帯でのみ高くなる。
したがって,両者を併せた総死亡のグラフは図のような「Uカーブ」を描くが,低BMIがCVD死亡の増加をもたらすわけではないことが明らかとなった。

#BMIを是正しても他の危険因子が是正されなければ大きなリスク低下は望めない
■次にPencina氏らは,自らが考案したNet Reclassification Improvement(NRI)という指標を用い,CVD死亡リスクの予測因子にBMIを加えることによって,予測精度がどのように変化するかを評価した。
NRIとは,新たな危険因子候補(この場合はBMI)以外の危険因子の存在状況に基づいて判定されたCVD死亡リスクのカテゴリーが,新たな危険因子候補を加えることによってどう変化するのかをみるものである。
以下 結果は略(表 参照)
■この数字は,CVD死亡の危険因子としてのBMIの独立性は低いことを意味する。さらに,非CVD死亡に対して行った同様の解析では,NRIはほとんどゼロに近く,非CVD死亡の危険因子としての独立性はきわめて低いことが示唆されたという。
■以上により,BMIの増加は将来のCVD死亡リスクを直線的に高めるとともに,極端な低BMIは非CVD死亡リスクを高めるが,たとえこれらの因子が改善されても,併存する他の危険因子が改善されない限り,大きな効果は期待できないことが示唆された。
<佐藤部長のコメント>
■一般住民を対象にした場合,肥満は高血圧,糖尿病,脂質異常症,睡眠時無呼吸,ある種の癌,心血管病変の下地となると考えられている。
■一方で一度心血管病変を発症すると,疫学的に今度は低体重が予後不良因子となるという逆転現象が観察され,obesity paradoxと呼ばれている。
Obesity and cardiovascular disease: risk factor, paradox, and impact of weight loss.
J Am Coll Cardiol 2009; 53: 1925-1932
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/19460605
The obesity paradox: fact or fiction?
Am J Cardiol 2006; 98: 944-948
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/16996880
■心不全について考えてみると,心不全の発症リスクは肥満の程度が重くなるにつれて増すことが一般住民のデータにより確認されている。
Obesity and the risk of heart failure.
N Engl J Med 2002; 347: 305-313
http://www.medical-tribune.jp/cgi-local/aha2009.cgi/html/16_1466.html
■末期心不全患者は,低体重,低栄養状態となり,癌患者のようにカヘキシー(悪液質)になるために,低体重のほうが予後不良という一見逆の結果になる。
Prognostic importance of weight loss in chronic heart failure and the effect of treatment with angiotensin-converting-enzyme inhibitors: an observational study.
Lancet 2003; 361: 1077-1083
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/12672310
■このような背景からBMIと死亡について循環器領域では混乱が認められている。
本発表では,低BMI層における死亡率の上昇は非CVD死亡の増加に基づくものであり,低BMIはCVD死亡の危険因子ではないことが確認された。
■今後,このような質の高い母集団での長期観察が混乱の解明には必要である。
また,欧米での肥満はBMI 30以上を対象にすることが多いが,日本人はBMIが25程度から耐糖能異常が始まるといわれており,日本人での同様の検討が必要である。
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があります。
心膜脂肪の話題については
心臓周囲の脂肪と心筋梗塞リスク
http://blog.m3.com/reed/20090626/1
心臓周囲脂肪
http://blog.m3.com/reed/20090830/1
でもとりあげました。
それだけのためにCTを撮像することはないのでしょうが、胸部のCTを撮った際には「副産物」として検討できそうです。
そんな研究はきっと国内でも既にされているでしょうが。
心膜脂肪が独立してCHD発症を予測
■心膜脂肪(心臓周囲の脂肪)はBMIを含む既知の危険因子とは独立して冠動脈性心疾患(CHD)の発症を予測すると,米ウェィクフォレスト大学などのグループがAmerican Journal of Clinical Nutrition の9月号に発表した。
■心膜脂肪は,局所での炎症性サイトカイン放出を介して冠動脈硬化プロセスに関係している可能性がある。
同グループは,Multi-Ethnic Study of Atherosclerosisの参加者のうちCHDを発症した147例とランダムに選択したコントロール998例を対象に,心膜脂肪がCHD発症を予測するかどうかを検討した。
■対象の年齢は45〜84歳で,登録時に心臓CTで測定した心膜脂肪量はBMIおよびウエスト周囲径と有意な正の相関を示した(ともにP<0.0001)。
未補正解析の結果,心膜脂肪はCHDのリスク上昇と関係し,1SD増加当たりのハザード比(HR)は1.33であった。
一方,BMIとウエスト周囲径にはCHDとの明らかな相関は認められなかった(HRはそれぞれ1.00,1.14)。
■心膜脂肪とCHDとの関係は,BMIと他の心血管疾患危険因子を補正した後も有意であった(HR 1.26)。
この関係に性差はなかった。
<原著>
The association of pericardial fat with incident coronary heart disease: the Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis (MESA).
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/19571212
Am J Clin Nutr. 2009 Sep;90(3):499-504. Epub 2009 Jul 1.
出典 Medical Tribune 2009.11.12
版権 メディカル・トリビューン
<関連サイト>
MDCTデータを用いた心臓周辺脂肪分布調査
http://www.jstage.jst.go.jp/article/mii/24/2/79/_pdf/-char/ja/
(冒頭でCTによる心臓周囲脂肪の論文について触れましたがやはりすでに発表されていました)
[PDF] MRIにおける Epicardial Fat (心外膜下脂肪)の体積測定
http://www.jsrtkinki.jp/ec/item/kiroku/7469f1730c/14.pdf
■心臓周囲脂肪Pericardial fatは心膜外で縦隔脂肪に連続するPara
cardial fatと心膜内で心筋との間に存在するEpicardial fatから成り立つ。
■Epicardial fatは、内臓脂肪と発生学的に同一(Gut由来)であり、Adipocytokineの分泌源である。
■分泌されたAdipocytokineは直接隣接する冠状動脈に波及し、炎症を起こし、動脈硬化、狭心症、心筋梗塞を引き起こすと考えられている。
(この研究はPericardial fatではなくEpicardial fatのみの体積測定をしようという試みです)
<自遊時間>
横殴りの雨や時折降る霰(あられ)の中での難行苦行でした。

何のためのウオーキングなのかと考えながらの道中です。
「そこに道があるから?」
2009.11.15撮影
写真の詳細については
10mlバイアルの安全性
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy/archive/2009/11/16
の中の<自遊時間>に書かせていただきました。
<きょうの一曲>
Yo-Yo Ma: Elgar Cello Concerto, 1st mvmt
http://www.youtube.com/watch?v=RM9DPfp7-Ck&feature=related
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