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第72回日本循環器学会特集の記事で勉強しました。
メタボリックシンドローム診断基準
高リスク群のウエスト周囲径は男性85cm,女性80cm以上が適切
算出されたウエスト周囲径は統計学的にも有意
東北大学大学院循環器病態学講座の多田智洋氏らは,慢性心不全患者を対象とした大規模追跡試験であるCHART-2の中間報告をもとに,メタボリックシンドローム診断基準におけるウエスト周囲径について検討。
その結果,高リスク群のウエスト周囲径は男性85cm以上,女性80cm以上とすることが望ましいと報告した。
算出されたウエスト周囲径は統計学的にも有意
今回の検討対象は,東北地方25施設が参加して2006年10月に開始された大規模な前向き追跡試験CHART-2の参加者。
米国心臓病学会慢性心不全診断治療ガイドラインにおいてステージB,C,Dの安定期に該当する慢性心不全患者で,2008年2月までに5,791例(男性4,070例,女性1,721例)が登録されている。
登録患者の背景をメタボリックシンドロームの構成因子で見ると,全体に占める糖代謝異常の割合は50.3%,脂質代謝異常は74.0%,高血圧は77.6%であった。
これらメタボリックシンドロームの危険因子保有数の全体の平均は2.02個で,危険因子を2個以上有する患者の割合は全体の74.1%であった。
ウエスト周囲径と危険因子数の相関に関する検討では,ウエスト周囲径が増大するにつれて危険因子数が増加する傾向が認められた。
なお,危険因子を2個以上有する例におけるウエスト周囲径の値は男性85cm以上,女性80cm以上であった。
一方,これらの登録症例で心血管合併症の発症危険度の高い,危険因子数2個以上となる症例でのウエスト周囲径のカットオフ値を受信者動作特性(ROC)曲線で算出すると,男性84.8cm,女性81.8cmとなった。
以上の結果から,心不全で心血管疾患危険因子を2個以上有するメタボリックシンドロームのような高リスク患者でのウエスト周囲径のカットオフ値は,男性85cm,女性80cmが最適なものと考えられたという。
成人男子の大規模追跡研究
体重減少によりすべてのパラメータが改善
名古屋大学大学院循環器内科の近藤隆久氏らは,日本人男性の大規模追跡調査から,体重減少は脂質や空腹時血糖の改善につながり,尿酸や血圧も低下させることを明らかにした。
この効果は年齢や肥満の程度にかかわらず得られるという。
年齢や肥満度に関係なく効果あり
対象は,2001年に18~55歳だった,高血圧,糖尿病,脂質代謝異常症の既往がなく,薬物治療も受けていない男性1万6,844人。
体重,HDLコレステロール(HDL-C),総コレステロール(TC),トリグリセライド,空腹時血糖,尿酸,血圧を5年にわたり毎年測定した。
体重の変化と各検査値との相関を見ると,体重の減少幅が大きくなるほどHDL-C値の上昇幅も大きくなるという有意な正の相関が認められた(相関係数0.36)。
また,体重減少とTC値,トリグリセライド値,空腹時血糖値の変動では相関係数はそれぞれ-0.33,-0.28,-0.16と,いずれも有意な負の相関が示された。
体重減少による各検査値への影響に関しては,とりわけHDL-Cの上昇とTCの低下が著しく,トリグリセライド,空腹時血糖値の低下幅はTCの低下幅に比べれば小さい傾向にあった。
体重減少と尿酸,収縮期血圧,拡張期血圧にもすべて有意な負の相関が認められ,体重減少とともに数値は低下していた。
一方,これらの相関について, BMIのレベルで分けて検討したところ,BMI25未満,BMI25以上30未満,BMI30以上のいずれの群でも,体重減少と各検査値の相関は全体の相関と同様の傾向を示した。
また,年齢別に分けても,30歳未満,30歳以上40歳未満,40歳以上のいずれの群でも全体での相関と同様だった。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41191052&year=2008
出典 Medical Tribune 2008.5.8
版権 メディカル・トリビューン社
<番外編>
第72回日本循環器学会特集
心不全
mtDNAヘリカーゼTwinkle過剰発現マウスで心筋梗塞予後が改善
九州大学循環器内科の井上敬測氏らは,ミトコンドリアDNA(mtDNA)の複製に必須なヘリカーゼであるTwinkle過剰発現はmtDNAコピー数を増やし,心筋梗塞後の心筋リモデリングを抑制し,生存率を改善したとするマウスでの実験結果について報告。
「Twinkleは心筋梗塞後の心不全を防ぐ新しい治療ターゲットになる可能性がある」と述べた。
心機能低下やリモデリングを抑制
同科では,ミトコンドリア電子伝達系由来の活性酸素により惹起されるmtDNAの機能異常が心筋リモデリングと心不全に関連すること,ミトコンドリア転写因子A(TFAM)の過剰発現マウスではmtDNAコピー数が増加し,心不全におけるミトコンドリア機能障害が改善することなどを報告している。TwinkleはmtDNA コピー数を調節することが知られて おり,今回はマウスを用いて,Twinkle過剰発現による心筋梗塞4週間後の心機能改善効果について検討した。
その結果,野生型(WT)に比べて,Twinkleを過剰発現させたトランスジェニックマウス(TG)ではmtDNAコピー数が有意に増加し,心筋梗塞後の左心機能が有意に改善した〔左室駆出率(LVEF):WT群43.9±1.9%,TG群55.6±1.3%,P<0.05〕。
同様に,TG群では心筋梗塞後の心肥大や心筋リモデリングが有意に抑制され,拡張末期圧(WT群11.6±1.0mmHg,TG群8.0±0.3mmHg),胸水貯留がそれぞれ有意に減少した(P<0.01)。一方,遠隔期に進行性外眼筋麻痺症を発症するTwinkle遺伝子変異マウス(Mutant)では,心筋リモデリングと心不全に対する保護的な作用は認められなかった。
ミトコンドリア機能については, Sham手術後のWT群に比べて,TG群では心筋梗塞後もシトクロム酵素活性が正常に保たれ,非梗塞部位の心筋組織の過酸化脂質が有意に少なかった(P<0.05)。心筋梗塞後の生存率は,WT群,Mutant群に比べて,TG群で有意に改善され,Twinkle過剰発現が心筋梗塞の予後を改善する可能性が示された。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41191061&year=2008
出典 Medical Tribune 2008.5.8
版権 メディカル・トリビューン社
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第57回米国心臓病学会(ACC 2008)/
米国心血管造影インターベンション学会(SCAI)での発表で「t-PA投与後のSTEMI患者にはPCI施行施設へ転送することが必要」「機能性MRに対してクリップを用いた経皮的弁修復術」「VASPガイド治療」の3つについて勉強しました。
~ t-PA投与高リスクSTEMI患者 ~
PCI施行施設へ直ちに転送し追加治療を
〔シカゴ〕経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を施行していない施設へ搬送され血栓溶解療法を受けた高リスクST上昇型心筋梗塞(STE MI)患者に対して,緊急にPCI施行施設へ転送し,6時間以内にPCIを追加すると,標準治療に比べて30日後の虚血イベントのリスクをほぼ半減できることがわかった。
Southlake Regional Health Centre(カナダオンタリオ州)のWarren J. Cantor部長らが,多施設ランダム化試験TRANSFER-AMIにより明らかにしたもので,第57回米国心臓病学会(ACC 2008)と合同で当地で開かれた米国心血管造影インターベンション学会(SCAI)-ACCi2で報告した。
出血増なく虚血イベントが半減
今回の解析対象は,発症12時間以内の高リスクSTEMI患者で,PCIを施行していない施設で組織プラスミノーゲンアクチベータ(t-PA)製剤tenecteplaseのボーラス投与による血栓溶解療法を受けた1,010例。
これらの対象を,ルーチンPCI群および標準治療群にランダムに割り付けた。
各群の治療方針は,ルーチンPCI群はPCI施行施設へ緊急搬送し,再灌流状況にかかわらず,6時間以内にルーチンにPCI(ステント使用)を追加。
標準治療群は60~90分後に胸痛,ST上昇消失を評価し,再灌流不成功の場合には転送してrescue PCIを施行,一方,再灌流成功例には必要に応じて24時間を超えてから待機的PCIを施行することとした。
登録には42施設が参加,PCIは11センターで実施された。
両群の手技などを標準治療群,ルーチンPCI群の順に比較すると, PCI施行は62%対84%,ステント使用はともに98%,t-PA投与後PCI施行までの時間は18時間対4時間,t-PA投与後6時間以内のPCI施行は実際の施行例中38%対89%で,GPIIb/IIIa受容体阻害薬使用は53%対73%であった。
その結果,一次評価項目の30日後の「死亡,再梗塞,虚血再発,心不全,ショック」を合わせたイベント発生率は,標準治療群の16.6%に対してルーチンPCI群では10.6%と,46.3%の有意(オッズ比0.537,95%信頼区間0.368~0.783,P=0.0013)なリスク減少を示した。
個別には,再梗塞,虚血再発の発生率が,ルーチンPCI群で有意に低かった。
心原性ショックは標準治療群2.6%,ルーチンPCI群4.5%で,両群に有意差はなかった(P=0.11)。
安全性については,頭蓋内出血は標準治療群1.2%,ルーチンPCI群0.2%で両群に有意差はなく,TIMIまたはGUSTOスケールによる出血や輸血にも有意差は認められなかった。
これらの成績から,Cantor部長は「PCIを施行できない施設で血栓溶解療法を受けた高リスクのSTEMI患者に対しては,再灌流が成功したか確認を待つことなく,血栓溶解療法後直ちにPCI施行施設へ転送すべきだ」と結論。
PCI施行施設へのSTEMI患者の迅速な転送を確実にするため,地域連携システムの構築を課題として挙げた。
クリップを用いる経皮的僧帽弁修復術が有望
機能性の僧帽弁逆流(MR)に対して,開胸手術を行わず,経皮的にクリップを装着する経皮的僧帽弁修復術が,新たな治療選択肢となる可能性が出てきた。聖ビンセント心臓センター(インディアナ州)のJames Hermiller部長の報告によると,少数での登録試験ながら,同修復術は1年後のイベント回避率向上,ニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能分類の改善,左室リモデリングの退縮などをもたらしたという。
1年後のイベント回避率は74%
Hermiller部長らは,今回EVER EST試験の一環として,経食道心エコーによる評価で構造上弁欠損が認められない機能性MR患者を対象に,MitraClipRを用いる弁葉修復術の安全性と有効性を検討した。
対象は,
(1)18歳以上
(2)MR III~V度
(3)A2-P2接合不良に起因
(4)僧帽弁外科手術の適応
(5)経心房中隔が実行可能と思われる
(6)垂直弁尖組織2mm以上
―などの条件を満たす機能性MR患者23例。左室駆出率(LV EF)25%未満,左室収縮末期径55 mm以上,腎不全,心内膜炎,リウマチ性心疾患などは除外した。
方法は,鼠径部から経静脈的にカテーテルを挿入,右房から中隔を経て左房へ進めMitraClipRを開き,僧帽弁を通過させて左室側から,いわば"洗濯挟み"のように収縮時に弁尖を挟み込んで留めるというもの(図)。

対象の背景因子は,年齢75歳,心不全の既往87%,心臓手術の既往が43%で,LVEFは50%,左室収縮末期内径は43mmで,NYHA分類III~IV度が83%を占めた。
検討の結果,1つ以上のクリップを植え込み退院時にMR II度以下を達成した急性期手技成功(APS)率は23例中19例(83%)で,クリップを植え込んだもののMR II度超が3例(13%),クリップを植え込まずMR II度超が1例(4%)。
30日後の主要有害イベント回避率は87%であった。
長期成績を見ると,APS達成例では1年後も89%がMR II度以下を維持しており,「死亡,僧帽弁手術,MR II度超」を合わせたイベント回避率は74%であった。
APS達成後,手術を施行することなく1年後まで追跡できた12例では,
(1)9例(75%)でNYHA分類がⅠ度以上改善し,2例(17%)は不変,1例(8%)で悪化
(2)左室収縮末期径,左室拡張末期径がともに有意に低下(3)左室拡張末期容積も有意に減少
(4)LVEFは50%から48%に若干低下したが,有意差なし
―などの成績が確認された。
23例中19例(83%)では1年後も外科手術を回避でき,クリップ脱落や塞栓症は認められなかった。
以上から,同部長は「少数例での検討ではあるが,Mitra ClipRは機能性MR患者の僧帽弁逆流を軽減する弁尖接合を容易にした」と述べた。
現在,MR患者280例の登録を目指して,MitraClipRによるクリッピング術と開胸手術の有用性を比較する第II相試験EVEREST IIが進行中であるという(http://www.mitralregurgitation.org/Pages/EVEREST.html中で同修復術のイメージビデオを視聴できる)。
VASPガイド治療でクロピドグレル低反応例の予後が改善
ノルド大学病院(仏)のLaurent Bonello氏らは,vasodilator stimulated phosphoprotein(VASP)指数を用いた血小板反応性のモニタリングにより,クロピドグレル低反応例に対し初期用量を調節するVASPガイド治療と,通常治療の臨床転帰を比較。VASPガイド治療群で,30日後の主要有害心血管イベント(MACE)発生が有意に減少することを示した。
VASP50%未満を目標に追加投与
VASPのリン酸化はクロピドグレルの標的である血小板P2Y12受容体の活性化レベルに依存している。
Bonello氏らは,標準化されたフローサイトメトリーアッセイキット(Platelet VASPR,仏Stago社製)を用いて,VASPのリン酸化状況を反映するVASP指数を求め,経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後のMACE発生は,VASP指数50%以上の群から生じることを報告している。
今回の検討では,急性冠症候群,安定狭心症を伴い,PCI(緊急PCIを除く)施行予定の406例に対し,全例に初期用量としてアスピリン(ASA)250mg,クロピドグレル600 mgを投与した後,VASP指数50%以上であった「低反応例」162例を対象とした。
対象を,対照群およびクロピドグレルの初期用量をVASP指数をもとに調節するVASPガイド治療群にランダムに二分し,後者にはVASP指数が50%未満に低下するまで24時間ごとにクロピドグレル600 mgを3回まで追加投与し,追跡して臨床転帰を比較した。
維持用量として,両群ともに1日ASA 160mg,クロピドグレル75mgを投与した。両群の背景因子に有意差はなかったという。
VASP指数は,ベースライン時には対照群68%,VASPガイド治療群69%で,後者ではVASP指数に基づく調節後には38%まで有意(P<0.001)に低下した。
しかし,3回のクロピドグレル追加投与後(計2,400 mg)も,14%はVASP指数50%以上の低反応にとどまった。
追跡の結果,一次評価項目の30日後の心血管死,心筋梗塞,血行再建を合わせたMACE発生は,対照群の8例(10%)に対してVASPガイド治療群では0例と有意(P=0.007)に低かった(図)。

対照群のMACEの内訳は,心血管死2例,急性・亜急性ステント血栓症4例,血行再建2例で,ステント血栓症の大半は5?7日後に生じた。
安全性については,TIMI大出血が両群で1例ずつ,TIMI小出血は対照群3例,VASPガイド治療群2例で,両群に有意差はなかった。
同氏は「治療後のVASP指数50%未満の達成は,PCI施行患者のMACEを防ぐうえで適切であるようだ」と述べた。
<コメント>
難しくて何だかよくわかりませんでした。
VASP-Pモニタリングによる治療、クロピドグレル耐性例のMACE発生率を減らす
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/acc2008/200803/505899.html
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=0&order=1&page=0&id=M41210241&year=2008
出典 Medical Tribune 2008.5.22
版権 メディカル・トリビューン社
読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。
他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
「井蛙内科/開業医診療録(2)」
http://wellfrog2.exblog.jp/
2008.5.21~
「井蛙内科/開業医診療録」
http://wellfrog.exblog.jp/
~2008.5.21
があります。
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相も変わらずで申し訳ありません。
またまたARBで勉強しました。
オルメサルタンについてはMR相手に勉強会が5月中旬にあるのでおつきあい下さい。
この勉強会では、こちらからの提案でMRからあらかじめ質問事項を集めました。
主なものは、降圧剤の中のARBの位置づけと各種ARBの使い分けです。
先生ならどのようにお話されるでしょうか。
ARBオルメサルタンの優れた降圧効果と新たな知見
オルメサルタンのメタボリックシンドロームにおけるアディポサイトカインへの影響
メタボリックシンドロームは,新たな動脈硬化性疾患の独立した危険病態として近年注目されており,高血圧の成因論にも大きな影響を及ぼしつつある。
最近,内蔵脂肪の蓄積に伴う代謝異常を,アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)が改善することが報告されている。
今回は船橋氏に,脂肪細胞におけるアディポサイトカイン産生障害に対してARBであるオルメサルタン メドキソミル(オルメテックR)〔以下,オルメサルタン〕が及ぼす影響を検討した成績をふまえ,メタボリックシンドロームと高血圧の関係,メタボリックシンドロームに着目した降圧治療についてご解説いただいた。
なお,聞き手は堀内氏である。
解 説:
船橋 徹 氏(右)大阪大学大学院医学系研究科内分泌・代謝内科学 准教授
聞き手:
堀内 正嗣 氏(左)愛媛大学大学院医学系研究科分子心血管生物薬理学 教授
肥満・代謝異常から起こる高血圧が増加している
堀内
メタボリックシンドロームは,内臓脂肪の蓄積を基盤として高血圧・高血糖・脂質代謝異常などを伴います。
そこで最初に,内臓脂肪の蓄積がなぜ高血圧を伴うのかについてご説明いただけますか。
船橋
そのことを理解するためには,高血圧のタイプが変遷してきたことを認識する必要があります。
かつて高血圧は,低蛋白・低脂肪・高食塩という食事摂取パターンを背景として発症していました。
しかし,最近は逆に過栄養な状態で血圧が上昇する人が増えています。
過栄養と運動不足は内臓脂肪の蓄積をもたらし,脂質代謝や糖代謝の異常を引き起こしますが,同時に血圧も上昇させます。
なぜ血圧が上昇するかですが,まずインスリン抵抗性が起こり高インスリン血症のために腎臓からのナトリウムの再吸収が促進されて食塩感受性高血圧が起こるといわれています。
次に肥満が内臓脂肪の蓄積に伴い,脂肪細胞の分泌機能に異常を来すことも一因といわれています。
脂肪細胞は単に脂肪を蓄積するだけでなく,さまざまな生理活性物質を分泌して全身の生理機能を調節しています。
この生理活性物質はアディポサイトカインと呼ばれていますが,そのなかには昇圧因子であるAIIの前駆物質である,アンジオテンシノーゲンやアディポネクチン,TNF-αなどが含まれています。
アンジオテンシノーゲンの過分泌は血圧を上昇させると考えられています。
私たちがおもに研究しているのはアディポネクチンで,これが低下すると動脈硬化やインスリン抵抗性を惹起する,あるいは食塩感受性による血圧上昇を亢進することなどが明らかになっています。
堀内
つまり,内臓脂肪が蓄積すると脂肪細胞からのアディポネクチンの分泌が低下するのですね。
船橋
そうです。
また,そのほかにも炎症促進因子であるTNF-αの分泌を亢進してインスリン抵抗性を惹起したり,血栓形成をもたらすPAI-1の分泌を増加させることも明らかにされています。
堀内
血圧上昇がもたらされる機序として,どのような因子が関与しているのでしょうか。
船橋
もちろんアンジオテンシノーゲンは重要と考えられています。アディポネクチンとの関係ではIwashimaらが血圧値とアディポネクチンとの関係を検討していますが,その結果によると,インスリン抵抗性の有無にかかわりなく,血圧とアディポネクチン値が逆相関することが明らかにされています(図1)。

この血圧の上昇に対するアディポネクチンの関与ですが,アディポネクチンによる血管内皮機能の障害が影響を及ぼしているようです。
血管内皮はNOやPGI2などの血管拡張物質を産生していますが,アディポネクチン欠損マウスではそれらの血管拡張物質の産生が低下することもわかってきました。
オルメサルタンは肥満マウスのアディポネクチン低下を抑制する
堀内
メタボリックシンドロームではアディポサイトカインの分泌異常が起こるということ,そのなかでも特にアディポネクチンの分泌低下も高血圧発症に一部関与しているというお話でしたが,それをどのようにして治療したらよいのでしょうか。
内臓脂肪を減らすことはもちろんですが,薬物療法はどのように考えたらよいのでしょうか。
船橋
私たちが最初にアディポネクチンの分泌を上昇させる働きがある薬剤として見出したのは,チアゾリジン誘導体です。
その後,レニン・アンジオテンシン(RA)系抑制薬がアディポネクチン濃度を上昇させるという臨床成績が報告されました。
肥満者の脂肪細胞ではRA系の活性が亢進している可能性があることからも,RA系抑制薬を使用する意義はあると思います。
このようにRA系抑制薬はアディポネクチンの増加を示しましたので,私たちはそのメカニズムを動物実験で,RA系抑制薬としてオルメサルタンを使用し検討しました。
まず,マウスの脂肪組織におけるAT1受容体の遺伝子発現量を検討したところ,心臓と同程度であることが明らかになりました。
ですから,脂肪組織でも相当量のAT1受容体が発現しているといえます。
そして次に肥満マウスと正常マウスのアディポネクチン分泌量の観察と,それに対するオルメサルタンの影響を検討しました。今回の検討に用いたのは,非肥満マウス(C57BL/6Jマウス)と肥満発症遺伝子をもちメタボリックシンドロームのモデル動物といわれるKKAyマウスです。
それぞれのアディポネクチン濃度を8週齢と20週齢で比較したところ,C57BL/6Jマウスではほとんど変化は認められませんでしたが,KKAyマウスの場合は,肥満が進行するとアディポネクチン濃度の低下が認められました。
そしてこれらのマウスに対し,21週齢からオルメサルタンを投与したところ,C57BL/6Jマウスのアディポネクチン濃度には影響を及ぼしませんでしたが,KKAyマウスに対してはアディポネクチンの低下を有意に抑制しました(図2)。

このことは,アディポネクチンのmRNA発現量を測定した結果からも示されています。
堀内
つまり,肥満マウスでのみアディポネクチンが低下し,それをオルメサルタンが抑制するということですね。
ちなみにほかのアディポサイトカインへの影響はどうでしたか。
船橋
KKAyマウスではC57BL/6Jマウスと比べて,TNF-α,PAI-1,MCP-1などのmRNA発現量が上昇しましたが,オルメサルタンを投与するとこれらは有意に低下しました。
ARBオルメサルタンの優れた降圧効果と新たな知見
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M4028621&year=2007
Medical Tribune 2007.7.12
版権 メディカル・トリビューン社
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