戯れ言たれる侏儒
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昨日の続きです。
きょうの内容は,歯科治療の専門分野に踏み込んだ内容であまり興味が湧かないかも知れません。
抜歯の内容もさまざまで難抜歯の場合にはいろいろ工夫が必要と思います。
照会を受けた時には、局所止血を十分していただくということで抗血小板療法を継続したまま抜歯をお願いするスタンスになるのでしょうか。
現時点で、この方針(抗血小板療法継続)が歯科医と内科医のコンセンサスが得られていないという現状があって両者間の摩擦が心配ですが。

ワルファリンも中止不要という歯科医側の発言は、個人的には心強く感じました。
 

特別企画
第1回
抗血小板薬,抗凝固薬の休薬を考える―それは本当に必要か
抜歯,歯周手術時の抗血栓療法
 

抜歯時の止血;ワルファリン,抗血小板薬服用中も難しくない
矢坂 
とても明快ですね。では,日本での成績はどうなのでしょうか。

矢郷 
現在,私たちは慶應病院においてワルファリン,抗血小板薬とも継続下で抜歯を行っています。
ワルファリン単独58例,抗血小板薬単独27例,両者併用23例で抜歯を行ったところ,後出血を見たのはワルファリン服用の 2例のみ,止血シーネで容易に止血できました。ワルファリンの治療域は日本人では1.6~2.8に設定されています。この範囲では確実な止血処置を行えば,抜歯時の止血にまったく問題はありません。

止血処置は,ワルファリン服用例では,ゼラチンスポンジと縫合,圧迫止血を組み合わせて行います。
抗血小板薬の場合は,縫合と圧迫止血のみです(表 3)。


ほとんどの症例はこれで止血できますが,それでも止血しないときには止血シーネやパックを使用します。
いずれにせよ局所止血処置だけで止血可能で,全身的止血処置が必要になった例はありません。
抜歯後の出血の原因としては,INR値よりもむしろ,局所の炎症,抜歯時の器械操作による周囲組織の損傷,不適切な局所止血処置などが問題となります。

森本 
私たちも,日常的に抗血栓薬継続下で抜歯を行っています。国立循環器病センター歯科と共同で実施した観察研究の成績を紹介します。
抗血栓療法中の270例において計306回の抜歯を行ったところ,後出血を来たしたのは11回,3.6%でした。ワルファリン単独群で4.4%,ワルファリン+抗血小板薬併用群では3.9%で,両群間に有意差はありません。抗血小板薬単独群では2.2%でした(表 4)。


後出血例を解析した結果,INR値より抜歯部位の歯槽膿瘍や歯肉膿瘍などの活動性炎症が影響すると考えられました。

この研究では,全例に酸化セルロース綿を入れて縫合し,ガーゼで圧迫する局所止血処置を施しています。
処置中の止血困難例は滅多になく,出血例の大半が後出血例で,必要であれば電気メスによる凝固止血や止血シーネで対処しています。

以上より,日本人のワルファリン服用例(INR:3.0未満),抗血小板薬服用例では,維持量を継続して抜歯を行っても止血はほぼ可能であることが分かりました。
後出血には局所止血処置,INR値延長例ではその適正化で対応できると考えています。

歯周治療;縫合など適切な局所止血処置がより重要に
矢坂 
森本先生は,歯周治療についても検討されているそうですね。

森本 
歯周病は炎症巣ですので出血しやすく,しばしば止血に苦労します。
抗血栓療法例での歯周治療のエビデンスは乏しいのですが,INR値は抜歯時より0.5?1.0程度低めが妥当とされます。急性歯肉炎や歯周炎があると止血が難しいため,まず急性炎症を治療しなければなりません。
また,抜歯に比べ創の形態が複雑なため単純にガーゼを咬んでも圧迫できない例が多く,工夫が必要です。
出血部位が深い場合,酸化セルロース綿や止血シーネを使います。

歯周治療についても,私たちは国立循環器病センター歯科と共同で観察研究を行っています。
対象は抗血栓療法継続中の115例です。局所止血処置は,大半の例で酸化セルロース綿挿入やガーゼによる圧迫を,歯肉剥離掻爬手術では縫合を行いました。
止血困難例では電気メスによる凝固止血や止血シーネを採用。
その結果,ワルファリン服用患者ではプロービングや歯石除去など低侵襲処置はINR:3 未満で,ルートプレーニング,歯周ポケット掻爬,歯肉剥離掻爬手術などの歯周外科処置は,INR:2.5未満で施行可能でした。
抗血小板薬単独服用患者では,すべての歯周治療を問題なく施行できました。
ただ,歯周治療では処置中の止血が困難なケースが多いため,適切な局所止血処置がより重要になることを強調しておきたいと思います。

矢坂 
適切な局所止血処置が重要とのことですが,そうした止血処置は一般の歯科医でも行えるのですか。

矢郷 
テクニック自体は,歯科口腔外科の医師でしたら問題なくできます。
これを一般の歯科医に広げていくには,まず口腔外科でガイドラインを作っておく必要がありますね。

森本 
最近,ワルファリン継続下で抜歯する一般歯科医も徐々に増えています。
しかし,なかには局所止血が十分になされていないため,後出血で来院される例があります。
休薬の危険性だけが独り歩きし,抗血栓療法継続下の正しい歯科治療が浸透していないのが現状です。
休薬の危険性と同時に,局所止血の重要性を訴えていくことが大切でしょう。

今後の方向性;医師と歯科医,共通のガイドライン作成が急務
矢坂 
今後,抗血栓療法継続下での抜歯を広めていくためには,どんな取り組みが必要だとお考えですか。

矢郷 
すでに循環器学会のガイドラインでは抗血栓療法継続の必要性が取り上げられていますが,やはり医師と歯科医の共通のガイドラインが必要です。
抗血栓薬休薬による脳梗塞リスクの増大は医師から歯科医に伝えられたわけですが,歯科医から医師に対して「INR:3程度までなら局所止血処置により抜歯が可能」という情報を伝えていくことが求められています。
現在,私たちはガイドライン作成へ向け,慶應義塾大学循環器内科(小川聡教授)にもご協力いただき「ワルファリン維持量の継続投与下における抜歯の安全性に関する多施設共同研究」を進めています。
日本有病者歯科医療学会(白川正順理事長)でもガイドラインを作り,一般の歯科医に伝えようと取り組んでいます。

森本 
やはり,医師と歯科医の連携が重要になってきます。抗血栓療法を受けている患者の場合,血栓症のリスク評価が知りたいですし,抗菌薬やNSAIDsの使い方などについても情報がもらえれば,円滑な連携が可能になると思います。

矢坂 
私は2004年の日本循環器学会のガイドライン作成に関わりましたが,現在はその改訂作業が進行中です。
そうした作業のなかで,歯科領域でのガイドライン作成の動きとの整合性にも配慮すべきですね。
ガイドラインを普及させるには関連学会が共通認識を持つことが不可欠です。
本座談会が,医師と歯科医師の連携により,抗血栓療法継続下の安全な抜歯と歯周手術を普及させる一助となることを期待したいと思います。

Medical Tribune 2008.3.6
版権 メディカル・トリビューン社 

大久保泰 30号 
http://page9.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/k50546856

<番外編>

β遮断薬についての話題はすっかり影が薄くなっています。

 

β遮断薬は生き残れるか  揺らぐ降圧薬第1選択の座
http://blog.m3.com/reed/20080229

 

2005年の少し古い日経メディカル誌にこんな論文が照会されているのを見つけました。

β遮断剤は第1選択薬に適さず
RCTのメタ解析で明らかに

β遮断薬は脳卒中に対する予防効果が低いため、高血圧治療の第1選択薬として用いるべきではない。
こんな論文がLamcet誌10月29号に発表され、注目を集めた。
日本や欧州の高血圧治療ガイドラインでは、β遮断薬は第1選択薬の1つになっているが、この研究結果により再考を促されるかもしれない。

この研究グループは、既に2004年にβ遮断薬の1つであるアテノロールについてメタ解析を行い、その有効性に疑問を投げかけている。今回は、β遮断薬とほかの降圧薬を比較した13件(総計10万5951人)と、β遮断薬とプラセポまたは無治療を比較した7件(同2万
7433人)のランダム化比較試験(RCT)をメタ解析し、脳卒中、心筋梗塞および総死亡への影響を評価した。

その結果、β遮断薬にはほかの降圧薬と同等の降圧効果があるものの、服用者の脳卒中発症率が相対的に16%高いことが判明
した(図1,95%信頼区間:4~30%)。
一方、心筋梗塞の発症率や総死亡率については、ほかの降圧薬と有意差はなかった。

また、プラセポ群や無治療群との比較では、脳卒中の発症はβ遮断薬群で19%(95%信頼区間:7~29%)低かったが、その効果は以前に報告されたSTOP Hypertension試験の結果の半分程度だった。

以上の結果から著者らは、β遮断薬は
①脳卒中に対する予防効果が低く、本態性高血圧治療の第1選択薬にすべきではない
②今後、降圧薬のRCTを行う際に対照薬として用いるべきではない

と結論付けた(Lindholm LH et al. 2005;366:1545-53)

Nikkei Medical 2005.12
版権 日経BP社

 

他に
「井蛙内科/開業医診療録」 
http://wellfrog.exblog.jp/ 
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
があります。

 

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β遮断薬は生き残れるか

戯れ言たれる侏儒 / 2008.02.29 00:05 / 推薦数 : 2

β遮断薬は生き残れるか  揺らぐ降圧薬第1選択の座

降圧薬としてのβ遮断薬の位置付けが揺らいでいる。
最近の大規模介入試験の結果を根拠に、英国のガイドラインでは第1選択から外された。
一方で反論もなされ、その扱いをめぐって論議が高まっている。

2006年6月に発表された英国の高血圧診療ガイドライン改訂版(NICE/BHS2006)は、世界的な議論のきっかけとなる衝撃的なものだった。
従来の英ガイドラインでは、β遮断薬を55歳未満の第1選択薬の1つに位置付けていた。
だがこの改訂により、β遮断薬の位置付けはステップ4、つまり第4選択まで後退してしまったのだ(図1)。

 

国際医療福祉大熱海病院内科教授の築山久一郎氏は「β遮断薬に退場を迫ったようなもの」と憤慨する。

(注;築山教授はβ遮断薬一筋で研究を続けられた先生です。我が国のβ遮断薬の歴史そのものといっても過言ではありません。「憤慨する」という表現だったので思わず追加させていただきました)
 

翌年の07年9月には、欧州高血圧学会と欧州心臓病学会が合同して作っているガイドラインも改訂された(ESH/ESC2007)。
こちらではサイアザイド系利尿薬、Ca拮抗薬、ACE阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)と並んで、β遮断
薬も第1選択に生き残った。

ただし、降圧薬を併用する際、利尿薬とβ遮断薬の併用は代謝に悪影響を与える可能性があるとして、選択肢にはなるが推奨しないとした。
さらにエビデンスがないα遮断薬との併用も外され、結局β遮断薬の推奨併用薬はCa拮抗薬だけになった(図2)。

 

このようにガイドラインが変わってきた理由は、降圧薬の種類によって効果に差があるかを検討した大規模介入試験で、対照薬に比べβ遮断薬が劣っていたとする結果が相次い
で発表されたためだ。

RCTやメタ解析で負けた
その代表例が、左室肥大を合併した高血圧患者(9193人、平均66.9歳)を対象にARB(ロサルタン)とβ遮断薬(アテノロール)の効果を比較したLIFE試験(2002年)。

降圧の程度は両群間で有意差はなかったが、複合1次エンドポイント(心血管疾患死、脳卒中、心筋梗塞)発生のリスクはARB群の方が13%、脳卒中に限ると25%も低かった。
また糖尿病の新規発淀のリスクもARB群が25%低くなっていた(いずれも有意差あり)。

さらに、複数の大規模介入試験をまとめたメタ解析でも、β遮断薬に不利な結果が出ている。
LIFE試験も含めた13の試験を対象に、β遮断薬と他の降圧薬で心血管イベント抑制効果に違いがあるか比較したリンドホルムらの解析によれば、脳卒中の発生リスクはβ遮断薬が16%高かったという(ただし心筋梗塞や全死亡では差はなかった)。

埼玉医大腎臓内科教授の鈴木洋通氏は「患者によって至適用量に幅があるなど、β遮断薬は他の降圧薬に比べて使いにくさがあり、現状も降圧薬としての使用は限られている。ガイドラインは非専門医が多く参照するものだけに、特に問題となる合併症がない患者の第1選択薬からβ遮断薬が外れるのは、やむを得ないだろう」と話す。

正当な評価を受けていない
だが、これには反論も多い()。


例えばLIFE試験では、有意差はないがβ遮断薬群の収縮期血圧が約1mmHg高く、得られたイベント発生率の差はその血圧差で説明が付くという。
同じ血圧値まで下げられれば、イベント発生率に差は出なかった可能性があるというわけだ。
また糖尿病の新規発症も、明らかに問題になるのは複数のリスクが集積した患者に限られるとの解析もある。

築山氏は「これまでの大規模介入試験やメタ解析は、β遮断薬を適切に評価できていない。それだけに、現時点で第1選択から外すのは時期尚早」という意見だ。

東京都老人医療センター副院長の桑島巌氏も「高齢者では動脈硬化が進行しβ遮断薬が効きにくいので、特に合併症のない高齢者なら第1選択から外してもいい。だが、青壮
年までと心血管合併症のある高齢者では、第1選択に残る」と指摘する。

ガイドライン絶対視は避ける
β遮断薬は、心不全や心筋梗塞の既往などがあれば積極的に選択すべき降圧薬になる。
特に冠動脈疾患のリスクが高い人ほど、β遮断薬の有用性も高まる。
「ガイドラインの第1選択から外れることで医師の認識が低くなり、必要な患者に使われなくなることを危愼する」と築山氏。

β遮断薬を選ぶべき症例があることは鈴木氏も同意見で、「降圧薬の第1選択から外れても、β遮断薬が全否定されたわけではない」とする。

高血圧を診る医師はガイドラインの読み方も学ぶ必要があるようだ。
循環器の臨床薬理と臨床試験に詳しい、琉球大臨床薬理学教授の植田真一郎氏は「ガイドラインは薬剤に優劣の順番を付けるものではなく、どのような治療が患者にとって利益・不利益になるか、臨床のヒントとなる情報を提供するもの。
過度に絶対視せず、降圧自体が重要という原則を念頭に、自分の臨床経験にガイドラインの内容を加えていくという
姿勢で受け入れればいい」と話す。

日本のガイドラインでも、各降圧薬の得意な分野(積極的適応)と不得意な分野(禁忌)がまとめられている。
「この表を参考に、積極的適応となる薬剤があれば試みてはどうか」と植田氏はアドバイスする。

ちなみに、現状ではβ遮断薬を第1選択薬の1つにしている日本高血圧学会のガイドラインも、今秋に改訂案が発表される。
その内容にも注目したい。  

 

斎藤三郎 油彩4号『娘 エアリ』
http://page17.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/v45901987

他に
「井蛙内科/開業医診療録」 
http://wellfrog.exblog.jp/ 
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
があります。

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