戯れ言たれる侏儒
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頸動脈狭窄のスクリーニング検査はリスク者のみに
AHAなどがガイドライン作成
米国心臓協会(AHA),米国脳卒中協会(ASA),米国心臓病学会(ACC)など複数の団体が共同で,頭蓋外内頸動脈閉塞症および椎骨動脈疾患に対する新しい管理ガイドラインをJournal of the American College of Cardiology(2011; 57: 16-94)に発表。
同ガイドラインでは,脳卒中リスクのある者以外は,広範な頸動脈狭窄症スクリーニングやルーチンでのエコー検査が不要であるとしている。

危険因子に基づき判断
頸動脈または椎骨動脈が閉塞すると,脳への血流が減少して脳卒中リスクが上昇する。
そのため,脳卒中リスクの特定に頸動脈狭窄症のスクリーニングが有効とされている。
 
そのような中,脳卒中予防の分野で広く活躍する専門家から成るガイドライン作成委員会は今回,「スクリーニングを普及させることの便益については“エビデンスが不十分”である」との見解で合意した。
 
ただし,同委員会の共同委員長でマウントサイナイ医科大学(ニューヨーク)のJonathan L. Halperin教授は「医師が頸動脈で血流異常を示唆する雑音を聴取した場合や,脳卒中の危険因子(高コレステロール血症,家族歴など)が2つ以上ある患者には,スクリーニングは妥当である」としている。
 
脳卒中の危険因子は,年齢,脳卒中の家族歴,高血圧,高コレステロール血症,糖尿病,肥満,心房細動,身体的不活発,鎌状赤血球病,他の心疾患または血管疾患など多岐にわたる。
 
個別に考慮して手技を選択
共同委員長でメイヨー・クリニック(フロリダ州ジャクソンビル)神経学科のThomas G. Brott教授は,同ガイドラインについて「臨床医にとって,治療の選択に役立つ情報とエビデンスが明記されている」と述べている。
 
ガイドライン作成委員会によると,さまざまな方法が推奨されているが,重度の狭窄動脈における血行再建術として,現在2つの手技が主に施行されている。
半世紀前から実施され,プラークを外科的に除去する頸動脈内膜切除術と,約15年前に登場したステント術である。
ステント術では,バルーンカテーテルを挿入して狭窄部を拡張し,メッシュ状の金属チューブ(ステント)を留置して血管の拡張を保持する。
 
同委員会は両手技を直接比較した最近の試験を含め,過去の研究をレビューした結果,動脈が50%超閉塞している場合は,いずれの手技でも妥当かつ安全で あると結論している。
同教授も「今回のガイドラインでは,ほとんどの患者に対し,これらの頸動脈手術が有効であることを支持している」と述べている。
ただ し「侵襲性の低い治療を望む患者には頸動脈ステント術がより安全な選択肢になるであろうし,動脈の解剖学的な位置関係や状態によってもどちらの手技が有利になるかは異なってくる」としている。
 
Halperin教授は「これらの手技に伴うリスクは大幅に低下しているが,患者は熟練した医師が最新のテクニックを使用しているかどうかを確認する必要がある」と指摘している。
出典 Medical Tribune 2010.6.16
版権 メディカル・トリビューン

 

<私的コメント>
頸動脈エコー検査は非侵襲的検査であり、左程医療費の高い検査でもありません。
この論文のように脳外科領域に限定すれば、正しい見解かも知れません。
しかし、内科医としては簡単にIMTやプラークを定量的に観察出来る頸動脈エコー検査は脳外科医の見方とは違っています。
価値観の相違ということになるのでしょうか。

 

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STICH試験

戯れ言たれる侏儒 / 2011.04.27 00:32 / 推薦数 : 2
この度の東北地方太平洋沖地震により被災されました方々に、心よりお見舞い申し上げます。
犠牲になられた方、そしてご遺族の皆様に対し、深くお悔やみを申し上げます。
また、福島第一原発事案(事故)で避難中の方、そして計画停電中の首都圏の方にお見舞い申し上げます。
また、被災者支援や原発復旧作業などの災害対策に全力を尽くされている作業員の皆様に敬意を表します。
 
 
 
米国心臓病学会(ACC)学術集会2011(2011.4.3~5 米国・ニューオーリンズ)でのLate-Breaking Clinical Trials IIのSTICH(Surgical Treatment for Ischemic Heart Failure)試験の記事で勉強しました。
「虚血性心不全ではCABGが有用である可能性も」というサブタイトルのついた記事です。

 

 

虚血性心不全患者においてCABG+薬物療法は,薬物療法のみの場合と比較し30日後の死亡率が高く,6年後の死亡率にも有意差は得られないことが,STICH試験の結果によって示された。
STICH試験の対象者は,左室駆出率≦35%かつCABGに適した冠動脈疾患を有する1212例。
一次エンドポイントである6年後の全死亡に有意差は示されなかった(CABG+薬物療法群36% vs 薬物療法群41%,ハザード比0.86,95%信頼区間 0.72-1.04,P=0.12)。
ただし,6年後までの心血管死亡率および全死亡+心血管疾患による入院の発生率は,CABG+薬物療法で有意に少ないことが示された。
また,per-protocol解析では6年後までの全死亡率もCABG+薬物療法群のほうが低かったとし,発表者のEric J. Velazquez氏は,「虚血性心不全に対するCABGについての重要な知見である」と述べた。

 

STICH試験についてのミシガン大学医学部外科学のSteven F. Bolling氏先生へのインタビュー記事は

 

STICH試験とPRECOMBAT試験
http://blog.m3.com/reed/20110418/PRECOMBAT_

 

でとりあげました。

 

以下はメイヨークリニック医学校のGersh教授へのインタビュー記事です。

 

CABGは虚血性心不全にも有効,ただし代償も伴う
ニューオーリンズで開催されたACC 2011のLBCTにて,4月4日,CABG関連トライアルであるSTICH試験とPRECOMBAT試験が発表となった。
虚血性心不全に対するCABG について検討したSTICH試験では,一次エンドポイントには薬物療法との有意差がみられていない。
しかし,per-protocol解析ではCABGの有意な死亡抑制効果が示された。
専門家はこの結果をどのように捉えているのか。
メイヨークリニック医学校の Bernard Gersh氏に感想を聞いた。 
 
「冬眠心筋」の概念が土台となったSTICH試験
1960年代,世界的な心臓病学の権威であった故George Birch氏は,虚血性心筋症,つまり心不全で来院した患者が実は冠動脈疾患を有していたという病態について発表しています。
こののち,南カリフォルニア 大学の研究者によって「冬眠心筋」の概念が提唱され,これがSTICH試験の構想の土台となっています。
左室機能障害(LVD)患者では,虚血は強力な予後決定因子です。逆に,
虚血性心疾患患者では,LVDがもっとも重要な死亡予測因子になります。
このように,虚血とLVDの合併には注意が必要であり,バイパス手術が適応されるべきと考えられます。
このことを裏付ける臨床試験はたくさんありますが,そ の多くが古いデータです。
手術の危険も今に比べてかなり高かったため,25年前なら,STICH試験のような患者に手術をするのは「最先端の治療」ではありませんでした。

 

 

CABGによる死亡抑制効果が認められたと捉えるのが妥当
STICH試験では,手術可能な重症虚血性心不全患者を対象にCABG+薬物療法と薬物療法のみの有用性が比較されました。
一次エンドポイントである全死亡は,intention-to-treat解析では有意な群間差は認められませんでしたが,死亡+心血管イベントによる入院の複合はCABGによるはっきりとした抑制効果が示されました。
さらに,今回はper-protocol解析やon-treatment解析も実施され,これらの解析では,CABGによる有意な死亡抑制効果が 明確に示されました。
今回のon-treatment解析の結果は非常に重要だと思います。
CABG群に割り付けられた患者の9%が,実際にはCABGを受けなかったからです。
この試験は,患者の重症度が高く,実施も非常に難しい試験でした。
重症例を試験に組み入れてランダム割付けするのは困難ですし,そもそも手術が可能な重症例であれば,医師は当然,バイパス手術を行って患者を救いたいと考えるでしょうから,割付け可能な患者を見つけること自体が難しかったはずです。

 

 
 
心筋バイアビリティについては解釈が難しい結果
STICH試験の前向きサブスタディであるSTICH Viability試験の 結果は,非常にわかりにくいものでした。
とくに,心筋バイアビリティのある例に比べ,ない例のほうがCABGのベネフィットが大きかったというのは,解釈 が難しい結果です。
ひとつ考えられるのは,心筋バイアビリティがないほどの重症例だからこそ,CABGのメリットが大きかったのではないかということです。
このような厳しい状態にある患者は,心筋梗塞がもう一度起これば致命的になりますから,CABGにより再発を予防できたことが良好な予後につながった のかもしれません。
ただし,これは今回のデータからは検証できません。
現在進行中のさまざまな解析結果もみて,判断していく必要があります。
STICH Viability試験では,同意した患者でのみ心筋バイアビリティの判定を行っており,ランダム割付けが行えなかったため,選択バイアスの可能性もあると考えられます。

 

心不全患者の手術にはそれなりの代償が伴う
では,STICH試験のこれらの結果を臨床現場でどのように生かせるでしょうか。
まず1つは,心不全患者に対して,医師はその心不全の病因を明らかにし,冠動脈疾患をもつ患者を同定する責任があるということです。
もし冠動脈疾患であれば,STICH試験の結果をふまえてCABGによるベネフィットが期待できることから,さらに手術の適応を判断する必要があります。
具体的には血管造影を行うのがよいでしょう。
もう1つは,治療方法は個々の患者の状況に応じて決定されるべきだということです。
手術を行う患者の選択は慎重に行わなければならず,年齢,腎機能,その他の合併症も考慮しなくてはなりません。
心不全患者の手術には,それなりの代償が伴います。
今回の結果をうけて,患者にできる説明はこのようになると思います。
『CABGを実施した場合は,術後早期に死亡リスクが少し高まりますが,その時期を乗り切れば心不全入院リスクは下がります』
私は,自分の患者にはしかるべき方法で心筋バイアビリティ検査を続けたいと思います。
今回は心筋バイアビリティの判定にドブタミン負荷心エコーと心筋SPECTが用いられましたが,PETや心臓MRIのほうが望ましいと考えられるため,手法に疑問をもつ人もいるでしょう。
MRIを使えば,心筋バイアビリティだけでなく,瘢痕組織,リモデリングの範囲,左室容積などの評価も可能です。
具体的には,もしある患者で心筋バイアビリティがなく,瘢痕組織が 多くみられたとしたら,私は手術には踏み切りません。

 

Profile: Dr. Bernard Gersh, MB, ChB, D.Phil, FRCP, FACC
メイヨークリニック医学校教授。専門は冠動脈疾患,臨床電気生理学,成人先天性心疾患, 心筋症など。Circulation,Journal of American College of Cardiology,European Heart Journalなど25の専門誌の編集委員で,これまでの自身の発表論文は650以上にのぼる。AHA臨床心臓病学部門の元議長,ACCの元評議員であり,現在はWHOの心血管ワーキンググループ議長も務める。
 
http://therres.jp/1conferences/2011/ACC2011/20110411091852.php

 

<関連サイト>
STICH
http://blog.m3.com/reed/20090604/STICH
 
PRECOMBAT試験
http://blog.m3.com/reed/20110418/PRECOMBAT_

 
 
CABGかPCIか,それは病変の位置,数,広がり,複雑性で決まる
(メイヨークリニック医学校Bernard Gersh教授によるPRECOMBAT試験に関するインタビュー記事)
 
 
<番外編>
日本循環器学会が急告、中止の学術集会の夏開催決定
3月に中止決定するも、日程を再調整して7月から8月をめどに開催へ
日本循環器学会は4月13日、総会・学術集会を7月から8月をめどに開催することを発表した。
当初、3月18日から20日の日程で、横浜で開催する予定だったが、東日本大震災の発生を受けて中止を決定していた。
発表演題が2362に上る大きな大会であるために、学術活動の停滞も懸念されるとして4月9日 の理事会で夏に延期しての開催を決定した。
会期を短縮し、災害医療に関する緊急企画を実施するなど、プログラムを再編する方針。 
http://www.m3.com/academy/news/article/135296/?portalId=mailmag&mm=MA110417_111
出典 m3.com

 

<きょうの一曲>  秋桜
山口百恵 秋桜
http://www.youtube.com/watch?v=QJw5i79VIrA&feature=fvwrel
 
Marlene - Cosmos
http://www.youtube.com/watch?v=JYXsbjqibkQ
(シャーリー・バッシーばりに感動的に唱い上げる歌唱力は大したものです。)

秋桜 さだまさし
http://www.youtube.com/watch?v=bbYWo86i6Es&feature=related

秋桜~福山雅治
http://www.youtube.com/watch?v=Gh1wKdxQp9Y&feature=related

徳永英明 / 秋桜
http://www.youtube.com/watch?v=Q4HZvG7BWXI&feature=related

 
 
 
 
渡辺 啓輔  安曇野新緑 F6
http://www.ichimainoe.co.jp/index/watanabe_keisuke.html

 

 

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CABG と動脈グラフト

戯れ言たれる侏儒 / 2011.01.28 00:43 / 推薦数 : 0

CABG の「できる限り動脈グラフト」は正しいか

冠動脈バイパス術(CABG)は,経皮的冠動脈イン ターベンション(PCI)と並ぶ虚血性心疾患の2大治療法の1つであり,予後改善効果が実証された唯一の治療法ともいえる。

 

<私的コメント>

「予後改善効果が実証された唯一の治療法 」という表現はPCIには「予後改善効果が実証されていない」とも読める文脈になってしまいます。

 

1960年代以降,移植血管であるグラフトの種類や術式の両面で進化を遂げてきており,近年分析データが集積されたことにより,エビデンスベースの検討が可能となってきた。

今回,帝京大学心臓外科学講座の真鍋晋講師は,榊原記念病院(東京都)心臓外科の高梨秀一郎部長らとともに同院における手術データからグラフト選択とグラフトデザインを検討した。

その結果,グラフト開存率を高めるには,内胸動脈グラフトを最大限有効に活用しつつもこれにとらわれるべきでないことや,コンポジットグラフトは最小限にすべきなどの知見が得られた

 

90年代以降に動脈グラフト使用の流れ

CABGのグラフト選択については,1990年代初めまで大半が静脈で,その多くは大伏在静脈だった。

その後,静脈グラフトは動脈硬化を起こしやすく,長期開存性に問題があることが明らかになってきたことや,内胸動脈をグラフトとして用いると,術後10~20年を経ても高い開存性を維持できることが報告 されるようになり,動脈グラフトを優先的に使用する機運が一気に高まった。

さらに,グラフト用の動脈の種類も橈骨動脈,胃大網動脈などへと拡大していっ た。

このような経過を経て、CABGでのグラフト選択は動脈グラフトが主流となり,「2本ある内胸動脈と橈骨動脈を最大限に利用する」という方針がCABG の標準的な戦略となった。

デザイン面でも,1本のグラフトから2本以上のグラフトを分岐させる「コンポジットグラフト」が好んで用いられるようになってい た。

 

動脈グラフトに特異的な術後1年以内に生じるグラフト劣化

同院では,従来から可能な限りCABG直後と1年後の2回に造影検査を施行していたが,真鍋講師らは,手術直後は血流がきれいに通っていた動脈グラフトの中にも,1年たつと糸のようにやせて血管機能を果たさない形状(ストリングサイン)を呈するものが結構あることに気付いた。

また,元の冠動脈との間で起 こる血流の競合に負け,グラフトが萎縮したりする現象も報告され,必ずしも動脈がCABG用グラフトとして万能ではない証拠も積み上げられてきた。

そこで同講師らは,同院でのオフポンプCABG後の血管造影所見をすべて集積。

術直後に良好な開存が確認された患者243例のグラフト中,1年後にびまん性の狭窄や閉塞により血流が損なわれた早期不全の血管を有するもののみを抽出し,背景因子を解析した。

遠位吻合部は全体で778カ所で,うち早期不全が認められた107カ所を解析対象とした。

グラフト不全の要因としては,もともとの血管の状態の悪さや縫合技術の低さなどさまざまな背景が考えられる。

同講師らの検討では,術直後の開存度の高いグラフトだけを選抜しているため,グラフト選択以外の要因をあらかじめ除外できている点がポイントといえる。

解析の結果,従来の方針を見直すべき知見が浮かび上がってきたという。

 

狭窄度を考慮,コンポジットグラフトは限定的,2本の内胸動脈を最大限有効に

すなわち,術後1年でグラフトが閉塞したり,ストリングサインを呈する早期不全の発生には,患者の年齢や糖尿病・高血圧といった併存疾患の有無,喫煙歴,また循環器治療薬の投薬の有無といった患者背景の因子とは関係が認められなかった。

一方で,

(1)グラフトの種類

(2)元の冠動脈の狭窄度

(3)コンポジットグラフトの吻合部位の数

—については危険因子として有意な相関関係が認められた(Journal of Thoracic and Cardiovascular Surgery 2010; 140: 1306-1311)。

この結果から,冠動脈狭窄度が低い場合やコンポジットグラフトで吻合部位が多い場合は早期の不全発生率が高く,また,動脈グラフトでも内胸動脈以外では発生率が高くなることが示されていた)。

 

 

真鍋講師は,グラフトが早期不全に至る理由として「リモデリングが起こっているのではないか」と推測。

冠動脈とグラフトとの間に生じる血流量競合によりグラフト内の血流量がある閾値を下回ると,閉塞やストリングサインが生じるのではないかという。

なお,同講師はストリングサインが予後に直接影響しない可能性にも言及した。

バイパス機能が不要になったためにグラフトが早期不全を来すのであり,再び血流が必要になるとストリングサインを来したグラフトに血流が回復するという説もある」と述べた。

<私的コメント>

「グラフトの早期不全 」はリモデリング、「ストリングサイン」は血流低下という考え方です。

リモデリングが短期間に起こるということですが、ストリングサインが血流依存性ならこちらの方が短期間で起こるような気がします。

 

ストリングサインを呈したグラフトの遠隔期の転帰はまだ十分に解明されておらず,今後のさらなる検討が不可欠とい う。

以上から,同講師は現在

(1)2本の内胸動脈を最大限有効に使用

(2)コンポジットグラフトの使用は最小限に

(3)胃大網動脈や橈骨動脈の重症狭窄病変への使用は限定的に

—を新たなCABG戦略としている()。

また従来の動脈グラフト利用を金科玉条とせず,場合によっては静脈グラフトの可能性も考慮しつつ,標的冠動脈の狭窄度を参考に最適なグラフトデザインをすることが重要としている。
 

 

出典 MT Pro 2011.1.27
版権 メディカルトリビューン社 

 

 

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日本冠動脈外科学会では血行再建術が必要な冠動脈疾患患者に対して,PCIかCABGの選択をどうすべきかの指針となりうるガイドラインが作成中です。

第15回日本冠動脈外科学会(会長=近畿大学心臓血管外科学・佐賀俊彦教授・大阪で開催)の日本冠疾患学会合同シンポジウム「冠血行再建のより良いガイドラインに向けて」(座長=日本医科大学心臓血管外科・落雅美教授,近畿大学循環器内科・宮崎俊一教授)では,ランダム化比較試験(RCT)で比較された欧米のSYNTAX試験と日本で唯一の比較調査であるCREDO-Kyotoレジストリーを中心に検討ポイントが説明されました。

きょうは、その記事で勉強しました。
冠動脈血行再建術のガイドライン作成に向けポイントを整理
薬物治療との比較で心筋梗塞予防・生命予後改善示したCABG

最初に登壇した三井記念病院(東京都)心臓血管外科の大野貴之医長は,エビデンスレベルAまたはBの臨床試験を,
(1)狭心症状の改善
(2)将来の心筋梗塞発症予防
(3)生命予後の改善
-の観点で検証した。

まず,PCIが安定慢性冠動脈疾患に上記の効果があるかどうかを検討した複数のメタアナリシスでは,心筋梗塞予防と生命予後改善という点で効果が認められなかった。
積極的薬物治療とPCIを比較したCOURAGE試験でも同様の結果だった。
これらは,ベアメタルステント(BMS)が使用された時代の試験結果に基づくものであるが,近年普及した薬物溶出性ステント(DES)においても,再狭窄率の低下は確認されているが,生命予後の改善効果は認められていない。

一方CABGは,1994年に報告されたメタアナリシス(Lancet 1994; 344: 563)で,左冠動脈主幹部(LMT)病変を含む慢性冠動脈疾患に対して薬物治療よりも死亡率を改善することや,心筋梗塞の予防効果が示された。
SYNTAX試験では,LMTや3枝病変に対してDESよりも心筋梗塞予防効果を有することが示された。

同医長は,外科医の立場でCABGが効果的な患者群の同定を試みた。
CREDO-Kyotoレジストリーでは,糖尿病・低心機能,高齢者,近位左前下行枝病変でCABGの優位性が認められた。
しかし,DES登場後に行われたニューヨーク州のレジストリー(NEJM 2008; 358: 331)では,糖尿病患者のくくりでは有意な効果が認められなかった。
同医長は,自らの検討をもとに,糖尿病でも網膜症を発症した,動脈硬化が進行した患者群でCABGの優位性が認められるのではないかと指摘した。

解剖学的・患者背景リスクを考慮した治療選択を
SYNTAX試験の結果から,昨年,米国心臓協会(AHA)/米国心臓病学会(ACC)ガイドラインは, LMT病変へのPCI適応がクラスⅢからⅡbに変更された。
帝京大学循環器内科の上妻謙准教授は,SYNTAX試験では,解剖学的リスクを見るSYNTAXスコアを活用した患者評価の意義も明らかになったと報告した。

CABGに比べてPCIの再血行再建が高率である点は明らかであるが,死亡・脳卒中・心筋梗塞の回避率は同等とする報告もある。SYNTAX試験でも2年死亡率はPCI群の6.2%に対して,CABG群では4.9%とほぼ同等である。
一方,同試験におけるCABG群の1年以内の脳血管障害発症率は2.2%で,PCIの0.6%よりも有意に高かった。
この差は長期的には埋まっていくものの,「手術で脳梗塞を発症するという点は内科医として気になる」と指摘した。しかし,心筋梗塞の発症率はPCI群のほうが高く,特に1年以降も超遅発性ステント血栓症からの発症リスクが持続する点について,同准教授は「DESの最大の限界点」とした。

SYNTAX試験は,このように両治療の限界点を明らかにしたが,それだけでなく患者個々に選択肢を考えるうえで解剖学的リスクを判別できるSYNTAXスコアの意義が明らかになった点も大きい。
同准教授は,患者背景と解剖学的リスクを組み合わせて事前評価することで,患者個々の治療選択が行いやすくなったとしている。
解剖学的に低リスクな場合のPCI選択と解剖学的に高リスクで患者背景が低リスクの場合のCABG選択はコンセンサスが得られやすい()。

 

 

同准教授は,特にLMTで左回旋枝入口部に狭窄がある病変は「PCIのアキレス腱」と指摘。
この側枝に留置されて良好な成績をもたらしたステントはいまだないとした。
一方で,このような病変を除けば,一概にLMTだからCABGを選択すべきとは言えないとして,さまざまな背景因子をもとに,最適な治療選択を考えていくべきとまとめた。

 


高い日本のoff-pump CABG実施率
日本にRCTがないためSYNTAX試験が参考にされるが,この結果をそのまま日本の状況に当てはめることはできない面もある。
福島県立医科大学心臓血管外科の横山斉教授は,日本のCABGの状況について概説した。

日本冠動脈外科学会は,回答率70%以上を有する経年的なアンケートを実施しており,このなかで1998年には1割にも届かなかったoff-pump CABGの割合がそれ以降急上昇し,2004年以降は6割以上を維持していることが示されている。
治療成績も高水準で,初回の待機的CABGの術後30日死亡率は,2008年の段階で0.6%だった。
また,動脈グラフトによる再血行再建率が高いのも日本の特徴で,すべてのグラフトで動脈が使用されている割合が約4割と高率だった。
日米の比較では,日本のoff-pump CABGの割合の高さと死亡率の低さが際立っているが,1施設当たりのCABG実施件数は,日本の平均が米国専門施設の10分の1であり,国際標準とは言えない状況も指摘されている。

Off-pump CABGについては,RCTのROOBY試験で,on-pumpに対する有意な結果は認められなかったが,高リスク患者が含まれていなかったことや,経験の浅い術者が多く含まれていた点で,同試験の結果については疑問が呈されている。
ただし,同教授は,off-pump CABG施行中に緊急的にon-pumpに移行する症例は死亡リスクが高まるため,注意が必要とした。

SYNTAX試験のCABGでは完全血行再建率が64%と低く,同教授の施設成績に比べて脳卒中や心筋梗塞,再血行再建が高率だった。同教授は「ガイドライン作成においては治療水準の変化や日本の状況が考慮されることが望ましい」と述べた。


 

外科・内科とも患者・社会に説明責任を
CREDO-Kyotoレジストリーは,2000〜02年の患者を対象に実施された。
off-pump CABGが43%,全例にBMSが使用されていた点で,両治療とも現在とは異なる状況で行われ,全体の3年生存率はPCI群89.6%,CABG群91.7%だった。
天理よろづ相談所病院(奈良県)循環器内科の中川義久部長は,薬物治療が進化した時代においての血行再建術という大局的な視点からの見解を述べた。

同部長によると,DESの登場によってPCIの再血行再建率は低率になったが,生命予後の改善は一部のレジストリー調査で示されたのみで,同部長自身「悪化させていない」という認識でいるという。
また,比較試験における両者の差は縮まってきているが,この背景には抗血小板薬やスタチンなど薬物治療の進化が大きく関与していると考えられる。

さらに,LMT分岐部で2本のステントを必要とする病変では,DESを使用してもなお,3年間で3割程度の血行再建率と1割程度の死亡率であることを示し,このような病変においては「CABGが施行できるにもかかわらずPCIを選択することは許されない」と同部長は強調した。

一方,一概に「LMT病変」や「多枝病変」のくくりでPCIを選択肢から外すことも妥当でない,と同部長は主張。
それを見極める鍵は「冠動脈病変の進行度」で,LMT病変であっても限局した入口部病変はDESで良好な成績が得られているほか,冠動脈のすべての動脈で動脈硬化が進行した3枝病変と進行していない病変枝が存在する2枝病変の違いは大きく,2枝病変ではPCIもCABGとそん色のない成績が得られている。
また,DESの遅発性ステント再血行再建(late catch-up)の問題についても,オンラベルでDESが留置された症例では,留置1年後以降もBMSと同等の成績と説明した。

このようにDESの有用性は高いが限界も存在し,薬物治療が進化する時代において,PCIの限界を超える治療を選択する場合には,その選択根拠と成績報告を患者のみならず社会に提示していく必要があり,また,CABGも薬物治療,PCIという選択肢があるなかで,侵襲度の高いCABGを選択させる根拠と説明を尽くしていく必要があるだろうと締めくくった。


 

来年公表予定で検討進む
わが国には「冠動脈疾患におけるインターベンション治療の適応ガイドライン(CABGの適応を含む)-待機的インターベンション」があるが,これは1998〜99年の合同研究班報告に基づくものだ。
日本循環器学会の委員会により作成中の新たなガイドラインが待たれているが,ガイドライン案は年内にまとまる予定で,公表は来年になる見込みだ。

出典 MT pro 2010.9.16
版権 メディカルトリビューン社


<関連サイト>
SYNTAX試験 :重度冠動脈疾患の標準治療
http://blog.m3.com/reed/20090526/SYNTAX___
■術後1年時点の重大な心臓・脳血管イベントの複合エンドポイント発生が、PCIよりもCABGのほうが低く、3枝病変あるいは左冠動脈主幹部病変の標準治療は依然としてCABGであると結論できる

3枝病変にはバイパス術?
http://blog.m3.com/reed/20091025/3_1
■Stent or Surgery Trial(SoS試験)では,経皮的冠動脈インターベンション(PCI)群に比べて冠動脈バイパス術(CABG)群で術後6年生存率が有意に高く(死亡率:10.9%対6.6%),再介入を余儀なくされた症例も明らかに少なかった。
■欧米のガイドラインでは,左主幹部狭窄が認められる患者に対するPCIの適用は,CABGが絶対禁忌の場合に限ることを明記している。

 

 

<きょうの一曲>
You don't know what love is - Sonny Rollins
http://www.youtube.com/watch?v=tLFlJIqiMLc&feature=related

 


<きょうの一曲>
フジコ・ヘミング J.S.バッハ 平均律クラヴィーア曲集 BWV846-BWV847
http://www.youtube.com/watch?v=ehkc1jb32Xc


平均律クラヴィーア曲集
http://ja.wikipedia.org/wiki/平均律クラヴィーア曲集


篠田雅典 『富士春色』 日本画
http://www.seikougarou.co.jp/sell/shinodamasanori/1079.html

 

 

 

その他
「葦の髄」循環器メモ帖
http://yaplog.jp/hurst/
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
 井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
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井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/ 
(内科医向き)
「井蛙」内科メモ帖 
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/  
があります。        

 

 

 

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LMT病変

戯れ言たれる侏儒 / 2010.01.02 00:41 / 推薦数 : 0

##LMT病変も成績向上のPCI,普及の前に条件整備を
##日本冠疾患学会で内科医側が提言
左冠動脈主幹部(LMT)や多枝病変に対する血行再建術は,冠動脈バイパス術(CABG)が絶対的な適応であり,特にLMT病変は欧米のガイドラインでもCABGが治療選択に挙げられている。
しかし,近年の血管内治療の技術やデバイスの進化により,これらの病変を経皮的冠動脈インターベンション(PCI)で治療される機会が増えてきており,この是非については内科外科双方からの論議が続いている。

第23回日本冠疾患学会(12月18~19日,大阪市)では,これらの病変に対する血行再建術の治療を巡る討議が行われた。
ここでは,内科医側の提言を紹介する(外科医側の発表はこちら)。
新東京病院(千葉県)副院長の中村淳氏(心臓血管センター長)は,これら難易度の高い病変に対するPCIの治療成績は向上してきているが,その背景には熟練した技術などの裏づけが必須であり,PCI側の治療条件の整備が急務であるとした。

#LMT病変のPCI実施条件を整理すべき
中村氏は,LMT病変のPCI治療には,非常に高度な技術が要求されることを確認したうえで,現在,日本で2,000にものぼる施設で制限なくPCIが行われている現状を指摘。
LMTをはじめとする高難度病変の治療体制について提言を行った。

同氏は,デバイスの進化とともにPCIの治療成績は向上し,同氏自身の成績では1年後の再血行再建率が10%以下にとどまっていると報告。
これはSYNTAX試験(N Engl J Med 2009; 360: 961-972 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/19228612)で示されたCABG群に匹敵する成績であるが,その成績をおさめるためには,熟練した技術とさまざまなデバイスや検査機器を駆使する知識,治療選択が求められていることを強調した。

現在,LMT病変に対する治療選択としては,欧米においてもCABGが標準治療であることには違いなく,PCIはクラスIIbでエビデンスレベルBとなっている。

このような背景から同氏は,日本においてPCIによるLMT病変の治療を安全に,良好な成績で行っていくためには施設や術者の条件設定が不可欠であるとして,その要件について説明を行った。
まず,PCI適応の是非については,心臓外科医と十分に協議して決定すべきであり,表のような術者や患者側の条件が満たされていることが前提となる。
同氏は,これらの要件を満たすインターベンショニストがどの程度いるのか整理したうえで,学会などで条件を整備していくべきであるとした。

出典 Medical Tribune 2009.12.25
版権 メディカル・トリビューン社

##LMT+多枝病変はCABGが標準治療
##外科医側のCREDO-Kyoto Registry分析,日本冠疾患学会で発表
左冠動脈主幹部(LMT)や多枝病変に対する血行再建術は,冠動脈バイパス術(CABG)が絶対的な適応であり,特にLMT病変は欧米のガイドラインでもCABGが治療選択に挙げられている。
しかし,近年の血管内治療の技術やデバイスの進化により,これらの病変を経皮的冠動脈インターベンション(PCI)で治療される機会が増えてきており,この是非については内科外科双方からの論議が続いている。
 
第23回日本冠疾患学会(12月18〜19日,大阪市)では,これらの病変に対する血行再建術の治療選択を巡る討議が行われた。
ここでは,外科医側の発表を紹介する。
京都大学大学院心臓血管外科,探索医療開発部准教授の丸井晃氏は,CREDO-Kyoto Registryのデータを分析し,これらの病変に対しては,CABGがPCIより優れており,特に,人工心肺を使用しないオフポンプバイパス術(OPCAB)で良好な成績となっていることを明らかにした。

#登録調査の患者背景,CABG群がPCI群より高リスク
PCI,CABGによるLMT病変および3枝病変への治療成績を比べたランダム化比較試験のSYNTAXでは,1次評価項目の主要有害心血管イベント(MACE)で有意ではないがCABGがPCIに勝るとする結果が出ている(N Engl J Med 2009; 360: 961-972 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/19228612)。
観察研究では両者に差がないとする報告もあるが,その対象患者の内訳を見ると,CABG群のほうがPCI群よりも高リスク患者が対象となっていたことから,結論付けることはできなかった。

国内30施設が参加した前向き観察研究のCREDO-Kyoto Registryでは,LMTを含まない多枝病変に関しては両群で臨床転帰に大きな差はないものの,患者の内訳ではCABG群が高リスクであることが示されていた(Circulation 2008; 118: S199-209 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/18824755)。
今回の解析対象は,LMTを含む病変への血行再建術施行例(PCI群165例,CABG群742例)で,患者背景を見るとPCI群のほうが高齢で,左室駆出率はCABG群のほうが低かった。
また,糖尿病や脂質異常症はCABG群のほうが多かった。
患者の病変枝数は表の通りで,CABG群のほうが多い傾向だった。


#OPCABでより良好な成績
その結果,総死亡の頻度はCABG群のほうが少ない傾向にあったが,有意差はなかった(P=0.054)。
総死亡,心血管イベント,血行再建術から成る複合評価項目についても,両群で有意差はなかった。
ただし,血行再建術の頻度については,CABG群のほうが有意に少ない傾向にあった。
さらに,病変枝数別に同様の解析を行ったところ,LMTに加え2枝病変以上ある場合は,CABG群で総死亡リスクが有意に低下していたが,複合イベントには有意差がなかった。

近年増加傾向にあるOPCABと従来のオンポンプバイパス術(ONCAB)に分けた解析も行われた。
LMT病変で,かつ多枝病変と糖尿病を有する患者を対象にしたカプランマイヤー曲線による解析では,OPCAB群の成績はONCAB群より優れる傾向にあり,総死亡や複合イベント,再血行再建術の各項目でPCI群より有意に良好な結果を示した。

また,同様の患者群でのCABGとPCIの比較では,複合イベント,再血行再建術の各発生リスクについて,カプランマイヤー曲線による解析ではCABG群のほうが有意に低く,優位性が認められたが,多変量解析で有意差が認められたのは血行再建術のみであった。
この点について,丸井氏は「PCI群が41例と少数に絞られていたためではないか」と分析している。

以上の解析から,丸井氏は「LMT病変ではやはりCABG群のほうが標準療法と言える」とまとめたが,PCI群の症例数が少なかったことや薬剤溶出ステント(DES)の割合が増加傾向にあることを受けて,「今後さらなる検証が必要」とも指摘した。

出典  MT Pro 2009.12.25
版権 メディカル・トリビューン社

<主幹部病変 関連サイト>
CABGかDESか(LMT病変)
http://blog.m3.com/reed/20081118/CABG_DES_LMT_1

SYNTAX試験  3枝病変・左主幹部病変に対する治療
http://blog.m3.com/reed/20090225/SYNTAX___3_

左主冠動脈疾患と遺伝
http://blog.m3.com/reed/20080102/1

DESのLMTへの適応
http://blog.m3.com/reed/20080126/DES_


<医学雑誌 切り抜き帖>
Circulation Journal Vol.70,Suppl.Ⅳ、2006
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004-2005年度合同研究班報告)
「虚血性心疾患に対するバイパスグラフトと手術術式の選択ガイドライン」P1477-1553
■グラフト材料P1487~1490
○左内胸動脈  LITA
LADの血行再建にはLITAを第一選択とするべきである。
LCxバイパスはLADより成績が劣る。
skeletonization(伴走静脈ならびに周囲組織から動脈を剥離)は、グラフト長、流量を増加させる。
○右内胸動脈  RITA
左右両側の使用は術後遠隔期のmortalityとmorbidityをともに
低下させる。
○右胃大網動脈 GEA
主な標的冠動脈はRCAである。
○下腹壁動脈  IEA
○ 橈骨動脈 RA
SVGより開存率が高い。
しびれや感覚障害の合併症は比較的多い。
○大伏在静脈  SVG
10年開存率は60%程度である。

■LADは、最も高い遠隔期グラフト開存率を期待できる冠動脈である。P1493

 

その他
ふくろう医者の診察室 
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
 井蛙内科/開業医診療録(3)
~2009.10.15
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井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
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ROOBY試験 

戯れ言たれる侏儒 / 2009.11.17 00:05 / 推薦数 : 0

ROOBY試験。
内科の循環器医にはあまり耳慣れない臨床試験かも知れません。
これはRandomized On/Off Bypass Study の略です。
結論としては
At 1 year of follow-up, patients in the off-pump group had worse composite outcomes and poorer graft patency than did patients in the on-pump group.
ということでオフポンプのオンポンプとの同等性(または非劣性)は証明されずオンポンプが良かったということです。
兵庫県立尼崎病院循環器内科 佐藤幸人先生による、CABGを行う際にオフポンプかオンポンプかという論文の解説で勉強しました。

論文はN Eng J Med 2009; 361: 1827-1837です。

On-pump versus off-pump coronary-artery bypass surgery.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/19890125

 

オフポンプCABGはオンポンプCABGより優れているのか?
ROOBY試験で短期・長期成績が明らかに
背景:日本で施行比率が上昇するオフポンプCABG

■2008年度の単独初回待機手術におけるオフポンプCABG割合は65%。
日本冠動脈外科学会
http://www.med.nihon-u.ac.jp/jacas/result2008.html

■オフポンプCABGとオンポンプCABGを短期合併症,長期予後の視点から多人数で比較検討した試験は少ない。

■今回の米国のROOBY試験では,短期合併症,長期グラフト開存率,術後の認知能力について比較検討された。

#研究のポイント:短期合併症に差がなく,長期予後はオフポンプ群で不良
■2,203例がオンポンプCABG群,オフポンプCABG群に割り付けられた。短期一次エンドポイントは30日後の(死亡+再手術+機械補助の使用+心停止+昏睡+脳卒中+透析を要する腎不全),長期一次エンドポイントは1年後の(総死亡+再血行再建+非致死性心筋梗塞)とした。
■二次エンドポイントは完全血行再建,1年後のグラフト開存,術後認知能力とした。術中に輸血を要した症例はオフポンプ群で低かった(オフポンプ52.0% vs. オンポンプ56.2%,P=0.05)
■その結果,短期エンドポイント発生率について両群間に差は認められず(オフポンプ群7.0% vs. オンポンプ群5.6%,P=0.19),長期エンドポイント発生率はオフポンプ群で有意に悪かった(オフポンプ群9.9% vs. オンポンプ群7.4%,P=0.04)。
■オフポンプ群では予定していたグラフトよりも少ない本数で終了することも有意に多かった(グラフト数:オフポンプ群2.9本 vs. オンポンプ群3.0本,P=0.002,予定より少ないグラフト数で終了した症例の割合:オフポンプ群17.8% vs. オンポンプ群11.1%,P<0.001)。
1,371例のフォロー冠動脈造影により得られた結果ではグラフトの長期開存率もオフポンプ群で有意に低かった(オフポンプ群82.6% vs. オンポンプ群87.8%,P<0.001)。
総死亡には両群間で有意差が認められなかった(図,P=0.25)。

 

佐藤幸人先生による考察:臨床導入15年,そもそもの目的は人工心肺による合併症減少だったが…
■オフポンプCABGは15年ほど前から臨床に導入され,そもそもの目的は人工心肺を使用することによる合併症を減らすことであった。
しかし,今回の結果を詳細に見ても,両群とも手術時間,術後集中治療室での治療日数,術後退院までの日数,人工呼吸時間にも全く有意差が認められず,手術に関連した脳卒中の発生,術後の認知能力にも有意差が認められていない。
むしろ,長期では総死亡については有意差が認められないものの,オフポンプ群のほうが心臓死(オフポンプ群2.7% vs. オンポンプ群1.3%,P=0.03)も含めてイベントの発生が有意に増加した。
■グラフトの長期開存の検討では,内胸動脈-左冠動脈グラフトの開存率はオフポンプ群95.3%,オンポンプ群96.2%(P=0.48)と,オフポンプ群も素晴らしい成績であるが,静脈グラフトでは順に76.6%,83.8%(P<0.001)とオフポンプ群で著明に悪くなっている。
■今回の試験では,患者をオフポンプCABGとオンポンプCABGに強制的に割り付けており,その結果オフポンプ群はオンポンプ群よりも悪い結果であった。
しかし,小血管,駆出率(EF)低下例などオフポンプ群に不利な症例は除かれており,オフポンプからオンポンプへ術式を変更した症例も12.4%あった。
オフポンプには向いていない患者がオフポンプに強制的に割り付けられた可能性は比較的低いようである。

出典 MT pro 2009.11.10
版権 メディカル・トリビューン社

 

<関連サイト>
第14回日本冠動脈外科学会  
〜2008年CABG施行例の全国調査〜
■2008年の1年間に施行された冠動脈手術症例について,全国409施設にアンケート調査票を送付し,284施設(69.4%)から得られた回答を分析した。
CABGは1万4,035例に行われ,うち1万1,053例が単独手術だった。
単独手術のうち初回待機手術が9,301例,それ以外が1,752例。off-pump手術の割合は初回待機手術で65%,それ以外でも54%と半数を超え,off-pump手術がスタンダードな術式として定着していることが確認された。
■術式別の死亡率は,off-pumpで0.64%(完遂例で0.62%),on-pumpの心停止下で0.90%,心拍動下で1.81%,off-pumpからon-pumpに移行した症例(移行率は前回の3.7%から2.4%に低下)で1.34%と,前回1.54%であった心拍動下を除き,いずれも前回を凌駕する成績が得られた(図1)。

■バイパス本数は平均2.95本。4枝以上の手術でも60%近くがoff-pumpで行われ,多枝症例でもoff-pump手術を選択する傾向がより顕著となった。
■後脳血管有害事象の術式別の頻度はopp-pump完遂1.03%,on-pump心拍動下1.50%,on-pump心停止下0.72%,off-pumpからon-pumpへの移行1.68%で,4群間に有意差は見られなかった。

出典 Medical Tribune 2009.9.17
版権 メディカル・トリビューン社

2007年CABG全国調査
Off-pump CABGの割合がさらに上昇,単独手術の死亡率は過去最低を更新
■近年,人工心肺を使用しないOff-pump CABGが急速に普及しつつあるが,単独初回待機手術における割合は前年比5ポイント増の66%に達した。
2004年に60%を突破してからは3年間横ばい状態が続いていただけに,今回の結果から再上昇の気配もうかがえる。

出典 MT pro 2008.7.16
版権 メディカル・トリビューン社

<新聞切り抜き帖>
朝日新聞・夕刊 2009.11.16 「窓」
■今年で25回目となる稲盛財団の京都賞の先端技術部門は、その生みの親である赤崎勇名大特別教授に贈られた。
■赤崎さんの成果は、他の研究者が諦める中、15年gかりの粘り強い研究の末に生まれた。
■高く飛ぶには、それだけ長い助走が必要だ。
赤崎さんの受賞は、改めてそう教えてくれる。
<コメント>
『高く飛ぶには、それだけ長い助走が必要』
研究者を勇気づける言葉です。
しかし跳ぶなら飛ぶということになると鳥に例えるなら少なくとも飛べる鳥でなければなりません。
多くの研究者は自分が飛べない駝鳥やペンギンではないかと怯えつつ研究を続けているのです。

<飛べない鳥 関連サイト>
飛べない鳥たち
http://eda.s68.xrea.com/archives/000115.php
■飛べない鳥たちはモアのように既に絶滅したり、絶滅危惧に瀕している場合が多い。
(飛べない研究者は絶滅するのでしょうか)

ゆず - 飛べない鳥
http://www.dailymotion.com/video/x3n63n__music


<自遊時間>

撮影 2009.11.15
高地のため紅葉はすでに終わっていました。
この場所にだけ紅葉が残っていました。
何故だろうと思いましたがこのすぐ下には露天風呂がありました。
背景の滝は「日本の滝100選」の一つです。

日本の滝百選(地図)
http://滝.biz/
マピオン>日本の滝100選特集
http://www.google.co.jp/search?hl=ja&q=日本の滝100選&btnG=Google+検索&lr=&aq=f&oq=&aq=f&oq=

 

その他
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 井蛙内科/開業医診療録(3)
~2009.10.15
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井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
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井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
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(内科医向き)
があります。
               

 

 

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##3枝病変にはバイパス術を 冠動脈疾患治療に関する議論が再燃
薬剤溶出ステント(DES)の使用成績が期待通りではなかったことが契機となり,冠動脈疾患に対する至適治療を巡る議論が再燃している。
ベルン大学病院心血管外科のThierry Carrel教授らは「バルーン拡張術適用症例の増加とともに,不適切と考えられる症例にまで同術が適用されるケースも増えており,依然として治療選択に関する患者への十分な情報提供がなされていない」とTherapeutische Umschau(2009; 66: 293-300)で指摘した。

#左主幹部狭窄もバイパス術が基本
最新の知見から,特に重度の冠動脈疾患患者(左主幹部狭窄または3枝病変を有する患者)では,外科的血行再建が長期的観点からは優れていることが明らかにされた。
 
Stent or Surgery Trial(SoS試験)では,経皮的冠動脈インターベンション(PCI)群に比べて冠動脈バイパス術(CABG)群で術後6年生存率が有意に高く(死亡率:10.9%対6.6%),再介入を余儀なくされた症例も明らかに少なかった。
過去2年間に実施された6件の大規模試験でも,3枝病変患者について同様の結果が得られている。
 
ただし,Carrel教授は「PCIよりCABGのほうが優れているかどうかは術後数年経過後に初めて評価可能となるが,選択患者を対象とした前向き比較試験の多くでは,その点の検討が不十分なままである」と研究上の問題点についても指摘している。
 
外科的手技が優れている理由は明らかで,単一の病変を対象とするカテーテル治療とは異なり,バイパス術では標的とした領域内で発見された新規病変に対しても処置を施すことができ,確実に血行を再建できる。
長期成績も良好で,例えばバイパス血管として内胸動脈を使用した場合の開存率は,手術の10〜15年後でも90%を上回っている。
 
これらのデータを根拠として,欧米のガイドラインでは,左主幹部狭窄が認められる患者に対するPCIの適用は,CABGが絶対禁忌の場合に限ることを明記している。

#インフォームド・コンセントが重要
しかし,医療現場ではこうしたガイドラインの勧告内容が遵守されないことも多く,欧州では左主幹部狭窄患者の約3割にPCIが施行されている。
しかも,これらの多くは3枝病変などの危険因子を抱えた患者である。
Carrel教授は「現在ではPCIもCABGも安全性に関してはほぼ同等で,術後早期死亡率はCABGでも0.6〜1%程度にとどまっている。したがって,もはや手技の安全性を理由にPCIを選択することはできない」と強調している。
 
治療選択肢が複数存在する場合には,いずれの方法についてもその長所と短所を詳しく説明し,患者が自身の考えで決断を下すことができるようにしなければならない。
 
同教授は「例えば,冠動脈造影検査を受けた患者が冠動脈インターベンションを専門とする心臓内科医の意見だけを聞いた場合,果たしてそれで十分なインフォームド・コンセントが保証されるのかどうか疑問である。心臓内科医と心臓外科医の双方が参加する学際的な症例検討会を導入する必要がある」と主張している。

出典 Medical Tribune 2009.10.22
版権 メディカル・トリビューン社

<関連サイト>
SYNTAX試験  3枝病変・左主幹部病変に対する治療
http://blog.m3.com/reed/20090225/SYNTAX___3_
■完全血行再建率はCABG群のほうがPCI群よりも有意に高かった。
退院時処方ではPCI群で抗血小板薬の使用が有意に多かった。
CABG群では15.0%が人工心肺不使用であり,97.3%に動脈グラフトが使用された。
PCI群では14.1%がPCIを2期的に行う必要があり,63.1%が分岐部病変であった。
■観察12か月後において,総死亡,総死亡+脳卒中+心筋梗塞については両群間に差が認められなかった。
しかし,主要心脳血管イベントの発生はPCI群で有意に高率であった。
その理由はおもに,再インターベンションの施行率がPCI群で有意に高かったことによる
■一方,脳卒中にだけ注目すると,CABG群で発症率が有意に高かった。
症状を伴ったCABG群のグラフト閉塞率(3.4%)とPCI群のステント血栓症(3.3%)の発生率は同等であった。
■病変部の複雑さを示すSYNTAXスコア別に解析した結果では,CABG群では病変部が複雑になりSYNTAXスコアが上昇しても主要心脳血管イベント発生率は変化がなかったが,PCI群では病変が複雑になるにつれ主要心脳血管イベント発生率が上昇し,CABG群との間に有意差が認められるようになった。
■LMT病変の患者だけで検討すると,12か月後の主要心脳血管イベント発生率はCABG群13.7%,PCI群15.8%と両群間で同等であった。
PCI群では再インターベンション施行率が有意に高かったが,これはCABG群で脳卒中発症率が有意に高かったことで,危険度が相殺されたことによる。
■LMTのみに限ると主要心脳血管イベント率に差が認められておらず,LMTのみの患者ではPCIが簡便ですぐれている可能性が高い。
またQOLの観点からは脳卒中の発症は重要であり,さまざまな試験においてCABG群で常に有意に発症頻度が高いことは考慮されるべきである(2%以上)。
そういう意味では今回もCABG群,PCI群ともに一長一短という結果とも取れる。
■病変がLMT単独,もしくはLMT+1枝病変であれば,PCIの成績はCABGのそれに劣るものではなかったり,また糖尿病を持っているかどうかで分けて見てみると,糖尿病のない患者では同じようにPCIの成績がCABGに劣っていなかったことなど,病変,患者の持つバックグラウンドなどを考慮すれば,PCIは許容される部分がある。
■最終的にはPCIのCABGに対する非劣性は認められず,DES時代の現在でもLMT,多枝疾患の冠動脈疾患患者のスタンダードな治療としてはCABGに優位性があることが証明される結果となった。
■デバイスや技術の進歩が速いPCIの分野ではエビデンスが実情に追い付かないという側面がある。

■PCIは狭窄部位,閉塞部位に直接挑む治療であるのに対して,CABGは病巣部に手を付けず別の血流路を創るという全く別の治療法である。
■現段階でPCI側が追い風としているのが多枝病変を対象としたオープンラベル試験のARTS IIである。
このARTS IIはもともとはベアメタルステント(BMS)とCABGのRCTであるARTS I と似通った症例にDESを施行した群との比較のため,症例背景も違い単純比較はできないが,3年目まですべての項目で差がなく,一般的には,PCI がバイパスに追い付いたことを示す成績と解釈されている。
■シロリムス溶出ステントを用いたSIRIUS試験の成績をもとに,糖尿病合併例ではPCIが適さないとされているが,既に理論的にその知見を否定することが可能だという。
SIRIUS試験は18mmのステントしかなかった当時の研究だが,種々の長さのステントを選択できるようになって以降はPCIの劣勢を指摘するデータはあまり見られない。
要はステントがしっかりと動脈硬化巣をカバーできているかが重要であり,血管超音波ガイド下のDES留置がびまん性を除いた糖尿病症例に有用である。
■ハイリスクの代表として透析患者が挙げられるが,透析に関しては,わが国のJapan PMSやJ-CypherからDESの成績が良好でないことは明らかである。
このため,現時点ではCABGで治療されるべきと言えるが,透析患者に対するCABGは感染症や脳卒中の頻度が高いのも事実で,透析に関しては現状では内科・外科ともによい答を出せない状況と捉えるべきである。


CABGかDESか(LMT病変)
http://blog.m3.com/reed/20081118/CABG_DES_LMT_1
j-Cypher registryの解析結果
■LMT群と非LMT群を比べると,LMT群では高齢者やショック,心不全,腎不全,Euro score高値を有する症例が有意に多かった。
■死亡率は,これら併存疾患で調整する前はLMT群で有意に高かったが,調整後は差がなくなった。
LMT病変に対するPCI施行例の予後を規定するのはおもに併存疾患であり,デバイスの影響は小さいことが示唆された。
■LMT群の成績をサブ解析すると,分岐部やtwo stentingは,補正後死亡率には有意な影響を及ぼさなかったが,標的病変再血行再建(TLR)率を有意に高くすることがわかった。
ステントテクニック(T-stenting,culotte法,crush法)によるTLR率の差は認められなかった。
■DESは,再狭窄がMACEにつながりかねないLMT病変の治療法として高い有用性が期待されている。
しかし,現時点では長期にわたって抗血小板薬を服用しなければならず,ステント血栓症を起こした場合には致命的になる可能性が高い。
「CABGかDESか」を追求する際には,ベアメタルステント(BMS)も含めて検討すべきである。 LMT病変へのBMS植え込みでは,CABGリスクが低くかつ解剖学的に植え込みに適した症例で良好な長期予後が期待できる。


 

その他
ふくろう医者の診察室
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 「井蛙内科/開業医診療録(3)」
~2009.10.15

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##冠動脈疾患/糖尿病合併例と高齢患者ではPCIよりもCABGで死亡率低い
スタンフォード大学(米カリフォルニア州スタンフォード)のMark A. Hlatky教授らは,多枝病変を有する冠動脈疾患(CAD)患者における観血的冠動脈バイパス術(CABG)と経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の比較研究を行い,糖尿病合併例や65〜75歳の高齢患者ではPCIに比べてCABGのほうが死亡率が低いことがわかったとLancet(2009; 373: 1190-1197)に発表した。
同教授らは「このような患者では,カテーテル,バルーン,ステントを用いる低侵襲性のPCIよりCABGのほうが好ましい選択肢である可能性が高い」としている。

#糖尿病合併例では30%低い
観血的手術で回復に長期間を要するCABGについては,多くのランダム化比較試験(RCT)で低侵襲PCIとの比較が行われてきたが,年齢,性,CADの程度などによって,患者のアウトカムが左右されるか否かについて検討できるほど大規模な試験はこれまで行われていなかった。
 
そこでHlatky教授らは,全患者と各サブグループについて,これら2つの治療法を比較検討するために,10件のRCTにおける研究者の協力を得て,患者7,812例の長期アウトカムを評価した。
PCIは,全試験のうち6試験でバルーン血管形成術,4試験でベアメタルステントが用いられた。
 
約6年間(中央値)の追跡後,全死亡率はCABG群(15%)とPCI群(16%)で同等であった。
しかし,糖尿病合併例の死亡リスクについては,PCI群に比べCABG群で30%低かった。同様に,65〜75歳の患者の死亡リスクは,PCI群に比べCABG群で18%低かったが,55歳未満の患者では25%高かった。
 
同教授らは「多枝病変を有するほとんどのCAD患者では,CABG後とPCI後で長期死亡率は同等である。したがって,治療の選択は他のアウトカムに基づき患者の希望に沿った形で行われるべきであろう。糖尿病合併例と65歳以上の患者では,CABGで死亡率が低いことから,同法がより好ましい選択肢かもしれない」と結論している。
#短期的にはPCIが好ましい場合も
ジョン・ラドクリフ病院心臓外科顧問でオックスフォード大学(ともにオックスフォード)心血管外科のDavid P. Taggart教授は,同誌の付随論評(2009; 373: 1150-1152)で「より重度のCAD患者,特に糖尿病を合併している患者では,良好な生存率と再インターベンションの回避という点でCABGのほうが優れている。
しかし,別に行われたSYNTAX試験では,CABGの適応がない,または拒否する患者にとっては,PCIが短期的には好ましい選択肢であることが示されている」と述べている。

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view/perpage/1/order/1/page/0/id/M42290241/year/2009

出典 Medical Tribune 2009.7.16
版権 メディカル・トリビューン社

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第73回日本循環器学会(大阪・2009.3.20~22)でのシンポジウム「冠動脈疾患」の記事で勉強しました。

 

CHDの長期予後改善目指す治療の現状
わが国の経皮的冠動脈インターベンション(PCI)は年間約20万件。冠動脈バイパス術(CABG)の10倍以上行われており,冠動脈疾患(CHD)治療の中心的な存在と言える。
しかし,薬剤溶出ステント(DES)によってもCABGを上回る成績が得られていない長期予後に関して,各治療法の意義をより積極的に検討し,改善策を確立する必要性がある。
シンポジウム「冠動脈疾患の治療戦略~PCIかCABGかあるいは薬剤治療か?」(座長=東北大学大学院循環器病態学・下川宏明教授,京都大学大学院心臓血管外科・坂田隆造教授)では,わが国の新しい研究データが示され,注目を集めた。

~左主幹部AMIに対するPCI~
生存退院例の予後はCABGと差なし

左冠動脈主幹部急性心筋梗塞(LMCAMI)症例の30日死亡率はPCI群がCABG群より高かったが,生存退院例の長期予後は差がなかったとするデータが,大阪大学大学院循環器内科学の宇佐美雅也氏らにより明らかにされた。

30日死亡率はPCIで2倍以上
LMCAMIは多くないが,予後が悪い。
宇佐美氏によると,大阪急性症候群研究会(OACIS)に登録された急性心筋梗塞(AMI)約8,000例の検討で,LMCAMIは全体の2.2%にすぎないが,院内死亡率は50%,長期観察(平均2年半)での死亡率も57%と,AMI全体の6%,11%に比べて著しく高い。生存退院例に限っても長期生命予後は不良だ。
しかし,ランダム化比較試験(RCT)が難しいこともあり,適切な治療法などの検討は十分行われていない。
 
同氏らは今回,2006年12月までにOACISに登録されたLMCAMI 178例を対象に,急性期治療と予後との関係を検討した。急性期治療は全例に再灌流療法が行われ,132例(74%)にPCI,40例(22%)にCABGが選択された。
PCI群とCABG群の患者背景を比べると,PCI群でより高リスク症例(ST上昇型,クレアチニンキナーゼ高値,経皮的心肺補助使用など)が多かった。
治療法を来院時のKillip分類別に調べると,心不全のない I 度ではPCIとCABGがほぼ半々だったが,II~IV度の心不全例では86%がPCIだった。
 
30日死亡率はPCI群42%,CABG群18%と,PCI群で2倍以上有意に高かった。
PCI群で高リスク症例が多かったことの影響と考えられた。
しかし,生存退院例の長期観察では,両群の退院後死亡や退院後死亡+心不全よる再入院+再梗塞に有意差は認められなかった。

~LMT例除く多枝例へのCABG~
PCI例より長期予後が良好
左冠動脈主幹部(LMT)病変例を除く多枝CHD患者の生存率は,PCI施行例よりもCABG施行例で良好な傾向を示し,特に糖尿病合併例,低左心機能例,高齢者でその傾向が強いとする多施設共同レジストリ研究CREDO-Kyoto(Coronary Revascularization Demonstrating Outcome Study in Kyoto)の結果が,神戸市立医療センター中央市民病院循環器内科の古川裕氏から報告された。

5,000例以上を3年半追跡
CREDO-Kyotoは,わが国の実地診療における冠血行再建術の現状や長期成績を明らかにする目的で,ベアメタルステント時代に当たる2000?03年に全国30施設で初回冠血行再建術(PCI,CABG)を施行された9,877例(AMI除く)の経過を平均3.5年間追跡した研究(2年以上の追跡率96%)。
今回は,LMT病変例を除く多枝疾患患者5,420例(PCI群3,712例,CABG群1,708例)で両治療を比較した。
 
両群の生存率は,背景因子で補正しない場合には差がなかったが,補正後はCABG群で良好な傾向が認められた(P=0.06)。サブ解析すると,糖尿病合併例,低左心機能例(左室駆出率40%以下),75歳以上例において,CABG群の生存率がPCI群を上回った。
75歳で分けてサブ解析を行うと,75歳未満例では背景による差が明確ではなかったが,75歳以上例では糖尿病合併例,低左心機能例においてCABG群の生存率が良好だった。
なお,退院時の処方薬剤と予後との関係を見ると,抗血小板薬,スタチン,硝酸薬が良好な予後と関連していた。
 
古川氏は「冠血行再建術が低侵襲を志向するなか,PCIよりもCABGに適した症例を正しく選択することが重要」と述べるとともに,「すべての冠疾患患者に対して,スタチン,アスピリンを中心とした二次予防のための薬物療法が必須である」と強調した。

~わが国のOPCAB長期予後~
on-pump CABGとそん色ない
京都府立医科大学心臓血管・呼吸器外科の夜久均教授らは,同科でoff-pump CABG(OPCAB)を施行した約700例の長期予後を検討。
on-pump CABG施行例とそん色ない成績が得られたことを報告した。

欧米ではon-pumpより不良
わが国では近年,OPCABが急速に進歩,普及し,CABG全体の約6割を占めるまでになった。
一方,欧米ではその割合は1割程度でしかなく,グラフト開存率や長期予後はon-pump CABGに比べて悪い。
グラフト開存率はon-pump CABGではほぼ100%だが,OPCABではそれより約10%低いというデータも報告されている。
しかし,動脈グラフトを積極的に用い,開存率も高いわが国に,欧米の報告をそのまま当てはめることはできない。
 
夜久教授らは,2008年までの10年間に同科で行った単独CABG例をOPCAB群(707例)とon-pump CABG群(259例)に分けて検討した。
グラフト開存率は両群とも約97%と高かった。
OPCAB群はon-pump CABG群に比べ,年齢が高く,脳血管障害合併例や腎機能障害合併例が多く,緊急手術例は少なく,左心機能はやや良好だった。
早期成績を比較すると,OPCAB群では心筋逸脱マーカーが低く,人工換気時間が48時間を超える症例,輸血量,術中脳血管障害が少なく,集中治療室(ICU)入室日数が短かった。さらに長期予後を検討したところ,全死亡,心臓死,PCI施行,主要心血管イベントのいずれも両群とも良好で,有意差は見られなかったという。

~低リスク安定CHD~
最初からPCIを行ったほうが予後良好
低リスク安定CHDの治療は,わが国では一般的に最初からPCIを行うが,欧米では薬物療法を先行させる。
岐阜大学第二内科の西垣和彦准教授は,わが国のランダム化比較試験(RCT)であるJSAP(Japanese Stable Angina Pectoris) studyで,最初からPCIを行ったほうが予後良好とする成績が得られたと同シンポジウムで報告した。

狭窄度高い病変を安定化か
安定CHDは,左冠動脈主幹部(LMT), 左冠動脈前下行枝(LAD)近位部または3枝病変で生命の危険性が高い高リスク例と,それ以外の1~2枝病変などの低リスク例に分けられ,後者が約8割を占める。高リスク例に対しては日本,欧米とも,CABGまたはPCIと薬物療法が行われる。
一方,低リスク例の治療は,欧米では薬物療法から開始し,改善がない場合にPCIの追加が推奨されている。
最近のRCT(COURAGE)でも,当初からのPCIによる予後改善は認められないと報告された。
これに対して,日本では最初からPCIを行う施設が多いが,その根拠はこれまで不十分であった。
 
西垣准教授によると,JSAP studyでは,全国78施設から登録された低リスク安定CHD患者384例をランダムに,各種薬物療法を先行させる群と最初からPCIと薬物療法を行う群に分け,予後を3.3年にわたって観察した。
その結果,死亡では差がなかったが,死亡と急性冠症候群(ACS),脳血管障害(CVA)あるいは緊急入院を組み合わせると,いずれもPCI+薬物療法群の予後が薬物療法先行群に比べて良好であった()。

 


 
こうした結果が得られた理由について,同准教授は「先行PCIがPCIのターゲットとなる比較的狭窄度の高い病変を安定化させたためではないか」との見方を示した。

~糖尿病合併例へのOPCAB~
特に腎障害例で長期予後不良
岩手医科大学心臓血管外科の岡林均教授は,約1,600例のoff-pump CABG(OPCAB)施行例の分析から,糖尿病合併例,特に腎障害を有する症例における生命予後がきわめて不良であることを指摘した。

透析例ではさらに予後不良
岡林教授は,これまで多数例にOPCABを実施しているが,近年「治療成績をより向上させるには,外科医も関連疾患や薬物療法に決して無関心ではいられない。
特に,予後の悪い糖尿病合併例の治療でその意識が強くなった」という。
 
今回,2006年秋まで在籍していた小倉記念病院(福岡県)におけるOPCAB 1,604例(男性1,163例,女性441例,平均年齢68歳)の長期成績を糖尿病の有無などにより比較。糖尿病合併は752例(47%)。心臓手術のリスク評価指標Logistic Euro Scoreは約6点で高リスク例が中心だった。
 
まず,5年生存率を見ると,糖尿病群80.7%,非糖尿病群87.0%と,糖尿病群で有意に悪かったが,心臓死,心事故では有意差はなかった。
そこで,さらに糖尿病の治療や合併症について調べたところ,インスリン使用糖尿病群は全死亡および心臓死において,非糖尿病群に比べて予後不良だった。
また,腎障害を有する糖尿病群ではいっそう悪化し,非糖尿病群に比べ全死亡が39%,心臓死が19%,心事故が27%高率。透析例ではさらに予後不良であった。
 
以上から,同教授は「関連各科との協力による糖尿病やその合併症に対する治療,特に腎機能温存が長期予後改善に重要である」とした。

~冠攣縮性狭心症の多施設観察研究~
薬物療法とその継続の重要性を示唆
冠攣縮の病態を全国規模で明らかにする目的で進められている冠攣縮研究会(CSA)による多施設共同レジストリ観察研究の中間解析結果が,東北大学大学院循環器病態学の安田聡・准教授から報告された。

減量・中断でイベント9倍
同研究は,全国66のCSA参加施設から登録された冠攣縮性狭心症症例の心血管イベント発生などを観察するもの。2007年9月~08年12月に1,525例(男性1,166例,女性359例,年齢65±11歳)が登録された。
処方薬はCa拮抗薬が92%と圧倒的に多く,以下,硝酸薬49%,抗血小板薬47%,スタチン32%,アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬/アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)24%,β遮断薬4%。Ca拮抗薬処方例では単独処方例と硝酸薬との併用例がほぼ半々であった。
 
平均34か月の観察で認められた心血管イベントは87例(6%)。内訳は狭心症再発入院68例,非致死的心筋梗塞8例,心臓死6例,心不全入院5例。心血管イベントの回避率は6年で93%。発生率を患者による薬剤の減量・中断の有無に分けて検討すると,減量・中断あり群では46%で,なし群の5%に比べて約9倍有意に高率だった。
 
この成績から,安田准教授は「冠攣縮性狭心症の治療における薬物療法とその継続の重要性があらためて示唆された」と述べた。
さらに,
心血管イベントの発生は器質的有意狭窄(75%以上)がある群では10%と,ない群に比べて2倍有意に高かった。

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view/perpage/1/order/1/page/0/id/M42170791/year/2009

 

 

他に
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「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21~
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があります。

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昨年のLancet誌に掲載された記事で勉強しました。
虚血プレコンディショニング(IPC)は1986年に提唱されたということで、20年以上前からの概念ということになります。
ここでは右側上腕を虚血状態にする"remote"なIPCを行っています。
術者に影響を与えることのない簡単な方法で、かつ片側の上腕だけという少ない虚血暴露のみで良好な心筋保護が得られたというものです。
PCIにも応用しようという考えは誰にも浮かぶアイデアですが、無効であると「解説」には書かれています。
 

冠動脈バイパス術施行患者の心筋障害に対するリモートプレコンディショニングは有益(無作為化対照試験)
Effect of remote ischaemic preconditioning on myocardial injury in patients undergoing coronary artery bypass graft surgery:a randomised controlled trial

背景
リモートプレコンディショニング(遠位虚血曝露;ある臓器の長時間の虚血イベントによる障害を防ぐため、遠隔臓器を虚血・再潅流状態に短時間曝露すること)が冠動脈バイパス術施行患者に有益かどうかはわかっていない。
リモートプレコンデイショニングがこれらの患者で心筋障害を減らすかどうかについて、無作為化単盲検化対照試験において検証した。
方法 
待機的冠動脈バイパス術を受ける成人患者57人を麻酔導入後、リモートプレコンデイショニング群(n=27)もしくは対照群(n=30)に無作為に割り付けた。
リモートプレコンディショニングとして右側上肢に5分間の虚血曝露を3回実施した(上腕に自動加圧式カフを装着し、200mmHgまで加圧し5分間虚血、カフを減圧し5分間再灌流)。
血清卜ロポニンT値を術前、術後6,12,24,48,72時間目に測定した。
解析はintention-to-treatに基づいて行った。
結果 
リモートプレコンディショニングにより、術後6,12,24,48時間すべてで血清トロポニンT値が有意に低下した(図)。
血清トロポニンT値の総曲線下面積は、対照群に比較してリモートプレコンディショニング群では43%減少した(P=0.005)。
結論
1カ所の3次医療施設で待機的冠動脈バイパス術を受けた成人患者において、上肢の一過性虚血によるリモートプレコンディショニングは有益な効果をもたらす可能性が示された。

 

 

中島千波 「晴和三春の瀧櫻」
http://page9.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/k50877363
解説
大きな利点のある療法だがさらなる知見が必要
加賀重亜喜(助教).松本雅彦(教授)
山梨大学医学部第2外科
”虚血プレコンディショニング(IPC)”は1986年にMurryらが最初に提唱した概念であり、先行する短時間の心筋虚血によってその後に生じる致死的な虚血性心筋障害が抑制される現象である。
内因性心筋保護作用として重要と考えられており、G蛋白を介したアデノシン受容体やカ
リウム感受性ATP(KATP)チャネルの関与が示唆されている。
IPCの臨床応用は、開心術時の間欠的大動脈遮断法や体外循環を用いない冠動脈バイパス術(CABG)時の一時的冠動脈遮断法として一部で行われてきたが、動脈硬化が強い場合には、間欠的大動脈遮断に伴う脳合併症のリスク上昇やバイパス血管吻合前の一時的冠動脈遮断の手技が侵襲的であるという問題がある。

今回実施された”リモートプレコンディショニング”はPrzyklenkが1993年に最初に報告した手法である。
イヌの冠動脈左回旋枝でIPCを実施した後、左前下行枝を1時間虚血後に再灌流した結果、非虚血プレコンディショニング心筋である左前下行枝領域の梗塞範囲が、対照群に
比べ小さくなり、心筋保護効果が認められた。
その後の研究で、心臓以外の臓器・組織(腎、腸、骨格筋)に短時間の虚血・再灌流操作を繰り返した場合にも同様な効果が示されている。
臨床応用では、小児の開心術時に下肢に巻いた血圧測定用カフの加圧・減圧(下肢筋組織の虚血・再灌流)により心筋保護効果が示された。
効果発現機序としてアデノシン、ブラジキニンなどの体液物質や神経系を介したシグナル伝達の関与が示唆されているがいまだ明らかではない。

本研究は待機的CABG患者をリモートプレコンディショニング(RIPC)群と対照群に分け、術後のトロポニンT値を測定し効果を評価したものである。
除外基準は80歳以上、不安定狭心症、左主幹部病変、肝・腎・肺疾患、上肢の閉塞性動脈疾患合併例である。
RIPCは麻酔導入後、執刀前に行っている。
RIPCは上腕に巻いた血圧測定用カフの加圧・減圧という簡便かつ非侵襲的な方法で行っている。
執刀前にRIPC操作が終わっているため手術手順に影響を与えず、外科医にとって受け入れやすい方法といえる。
IPCに関する最初の報告から約20年たち、実験的・臨床的に膨大な研究成果が得られてきたにもかかわらず、いまだに臨床面での普及がみられていない。
その理由として以下があげられる;
①間欠的大動脈遮断法に伴う脳合併症のリスク
②IPC操作による手術時間の延長
③プレコンディショニング作用のある薬物・麻酔剤の存在(薬理的プレコンデイショニング)
④高齢者では効果が弱い
⑤信頼性の高い臨床研究による一貫したエビデンスの不足
⑥臨床的に最も有効なIPC方法が確立していない。

低リスクのCABG施行患者では、心筋障害の指標となる術後のトロポニンT値、CKMB値の上昇は軽微であることが多く、本研究でも同様であったが、術後のトロポニンT値は対照群に比べRIPC群で有意に低くRIPCの効果が明らかとなった。
一方、その他の指標の推移はどうなのだろうか?
CKMB値の記述はないが、有意差があったのだろうか?
術後急性期の血行動態・心機能や中期・遠隔期の心事象(イベント)への好影響はみられたのだろうか?
本研究におけるプレコンデイショニングの方法は本研究におけるプレコンディショニングの方法はきわめて簡便で非侵襲的であるという大きな利点がある。
しかし、同様のプレコンディショニング法がPCI(経皮的冠動脈形成術)症例で無効だったとの報告もある。
開心術時の標準的な心筋保護手段として本法が定着するためには、まだ多くの知見が必要であろう。

原著  Hausenloy DJ,et al. Lancet 2007; 370: 575-579.
和訳ならびに解説 MMJ vol.4 No.2 2008

 

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