戯れ言たれる侏儒
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~冠動脈疾患初発予防~
日本人でもスタチンの強化脂質管理が有用
欧米では,CHD2次予防患者だけでなく1次予防でも糖尿病などの危険因子を複数有する高リスク例には,LDL-C 70mg/dL未満の厳格な目標を掲げており,日本人でも1次予防の段階からより厳格な脂質管理が求められるか否かが論点となっている。
そのような中,カレスサッポロ北光記念クリニックの佐久間一郎所長が報告したJART試験では,頸動脈内膜中膜複合体厚(IMT)が肥厚しているLDL-C高値例では,1次予防の段階でも強化脂質管理が有用な可能性が示された〔第33回欧州心臓病学会(ESC Congress 2011)〕。
 
1年の中間解析で有意差
同試験は多施設前向きランダム化オープン(エンドポイント遮へい)試験で,全国20施設から20歳以上でIMT最大値が1.1mm以上かつLDL-C 140mg/dL以上の患者348例が登録された。
強化療法群(ロスバスタチン5mg/日)と標準療法群(プラバスタチン10mg/日)にランダムに割り付けられた。目標値は,強化療法群はLDL-C 80mg/dL未満,標準療法群はガイドラインに準じて設定された。
IMTの画像データは順天堂大学に設置されたコアラボ専任検査技師により解析され,総頸動脈2cm間60ポイントの平均値が計測された。
今回,全登録患 者のうち1次予防患者(強化療法群133例,標準療法群132例)の解析結果が報告された。
登録時の頸動脈平均IMT値は強化療法群0.901mm,標準 療法群0.855mmだったが(P<0.049),調整解析(共分散分析)結果で有効性評価に影響がないと判断された。
平均年齢約63歳,高血圧60%程度,糖尿病45%など,患者背景に差はなかった。
 
1次エンドポイントは,頸動脈平均IMT値の2年間の変化率とされ,中間解析に当たる12カ月後の平均IMT値は,強化療法群が0.915mm,標準療 法群が0.891mm,平均IMT変化率はそれぞれ1.78±10.7%,5.44±11.5%と標準療法群の平均IMT増加率が有意に高かった (P=0.011)。
そのため,独立データモニタリング委員会の勧告により試験は早期中止となった。
 
強化療法群ではLDL-Cが166.8mg/dLから84.4mg/dLへと大幅に低減したものの,目標値には達していなかったことから,佐久間所長は 「達成されていれば平均IMT変化率の差はさらに拡大していた可能性が高い」と述べた。
頸動脈IMTはCVDの代替マーカーとして用いられており,「最大 値が1.1mm以上のCVD高リスク群には,日本人においても1次予防の段階から強力なスタチンによる厳格な脂質管理療法が重要であることが示唆される」 としている。
出典 Medical Tribune  2011.10.6
版権 メディカル・トリビューン社

 
<私的コメント>
この内容はすでに2011.9.12の

日本人でのスタチンによる強化脂質管理
でとりあげています。
 
<番外編>
No.4550  2011.7.9  日本医事新報 P87−88
J-CLER通信
JIKEI-HEARTからNAGOYA-HEARTまでー日本のEBMをどうしようというのかー
桑島 巌 先生
■ARBバルサルタンの心血管合併症予防効果を他の降圧薬と比較した大規模臨床試験NAGOYA-HEART StudyとVART試験の結果が、いずれも日本の研究者から相次いで発表された。
■バルサルタンの心血管合併症予防効果を検討した臨床試験としては、2004年に発表されたVALUE試験がつとに有名である。
■VALUE試験は二重盲検法で行われ、結果そのものも適正と考えられる。
しかし、その結果の解釈あるいは発表方法には様々な批判がある。
■日本では東京のJIKEI-HEART、京都のKYOTO-HEART、千葉のVART試験、名古屋のNAGOYA-HEARTとご当地試験が出そろった。
しかし、その結果を見ると同じ薬剤でありながら欧米と日本の試験では大きな隔たりがある。
また、これら国内の試験間にも大きな隔たりがある。
■日本の試験は、担当医も被験者もどちらの群に割り付けられているかが分かるPROBE法というオープンラベルで行われている。
しかし、TIAや心不全による入院など、担当医の意図によって左右されるエンドポイントが設定されているのは大きな問題である。


(以下は痛烈な一撃)
■不思議なことに、日本で行われたバルサルタンの臨床試験はいずれも、高血圧の専門家によるものではなく、ましてや臨床研究に造詣が深い研究者によるものでもない。

基礎研究や血管再生など、莫大な研究費を必要とする大学の教室に大規模臨床試験を依頼していることが大きな特徴である。
バルサルタンを製品化しているこの世界的製薬企業は、日本の臨床をリードすべき大学関係者が、臨床やEBMに疎く、かつ軽視していることを見抜き、ビジネスチャンスの場として利用しているように感じられてならない。
 
以下はJ−CLEAR理事 東海大学 後藤信哉教授のコメント
■JIKEI-HEART Study以来、バルサルタンに関して科学的に意味不明の臨床試験が多数施行されている。
NAGOYA-HEARTも臨床的仮説の根拠が不明な奇怪な臨床試験である。
「名古屋近郊」 の施設にて、オープンラベルの試験を行って、いかなる科学的な臨床的仮説が検証されうるであろうか?
■普遍性を重んじる科学の視点を喪失したデザインの臨床試験の日本からの発表は、日本人の臨床の科学のセンスと能力を疑わせる。
同様の試験が今後出ないことを祈念している。
 
<私的コメント>
これ以上ないというぐらいの批判です。
私もこのブログでJIKEI-HEART StudyとNAGOYA-HEARTの問題点はとりあげて来ました。
 
 
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ZEUS試験

戯れ言たれる侏儒 / 2011.09.27 00:39 / 推薦数 : 1
糖尿病合併例のプラーク退縮で上乗せ効果
ACS患者でスタチンにエゼチミブを併用
順天堂大学循環器内科学の宮内克己先任准教授は,臨床試験ZEUS(eZEtimibe Ultrasound Study)により,ACSでスタチンにエゼチミブを併用すると,糖尿病合併例ではLDLコレステロール(LDL-C)値の低下だけでなく,プラーク退縮においても上乗せ効果が得られる可能性を示唆した。
<私的コメント>

先任准教授は専任准教授の間違いかと思いましたが、
准教授
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%87%86%E6%95%99%E6%8E%88

 に
「順天堂大学では、『准教授』を『先任准教授』に、『講師』を『准教授』にそれぞれ名を改めている」
と書かれていました。

 
ACS全体では上乗せ効果なし
宮内先任准教授らは既に,血管内超音波(IVUS)を用いてスタチンによるプラーク退縮効果を検討した臨床試験(ESTABLISH,JAPAN- ACS)で,スタチンによりACS患者のプラーク容積が著明に減少する成績を得ている。ただし,LDL-C値の低下とプラーク退縮との相関は,コントロー ル群を持つESTABLISH試験では認められたものの,コントロール群のないJAPAN-ACS試験では見られず,糖尿病合併例に限って確認された。
 
そこでZEUSでは,作用機序の異なるエゼチミブをアトルバスタチンに併用し,LDL-C値をいっそう低下させることにより,プラーク退縮効果の増強が認められるか,またその影響が糖尿病合併の有無により異なるかどうかを検討した。
ESTABLISH試験終了後,4年間延長して追跡した Extended-ESTABLISH試験でアトルバスタチン単独群と非投与コントロール群を比較した。
 
同先任准教授によると,LDL-C値は単独群で33%,併用群で53%低下し,エゼチミブの上乗せ効果が認められた。
プラーク退縮率は単独群9%,併用群11%で,両群ともコントロール群に比べて有意であったが,単独群と併用群の間には有意差がなかった
コントロール群も含む全例で,LDL-C低下率とプラーク退縮率との関係を検討すると,有意な相関が認められた。
プラーク退縮に関する因子について多変量解析を行ったところ,LDL-C値の低下だけが有意な因子であった。
コントロール群を除いた場合は,LDL-C低下率とプラーク退縮率の有意な相関は見られなかった。
 
さらに,糖尿病合併の有無で検討すると,LDL-C値の低下については,糖尿病の有無にかかわらずエゼチミブの上乗せ効果が認められたが,プラーク退縮効果は単独群と併用群で有意差がなかった。
糖尿病合併例におけるLDL-C低下率とプラーク退縮率の相関は,コントロール群を含めた場合には有意であった が,コントロール群を除くと有意ではなかった。
 
出典  MT Pro 2011.9.22
版権 メディカル・トリビューン社

 

<関連記事>
スタチンとエゼチミブ、フィブラートの併用は、さらなる抗動脈硬化的脂質プロファイルに貢献
 ■スタチン投与は、心血管イベントの強力な抑制効果をもたらすが、未だ単剤では克服できない課題が残存しているのも現状だ。
スタチン単剤に比べ、スタチンと異なる作用機序を持つエゼチミブとコレスチミド、あるいはフィブラートの併用は、さらなる脂質プロファイルの改善に貢献し、動脈硬化の抑制に効果的であることを、2011年9月23日から25日まで神戸市で開催された日本心臓病学会(JCC2011)において金沢大学循環器内科の川尻剛照氏が報告した。
■スタチン投与によって肝臓内のコレステロールプールが減少すると、そのシグナルを感知した肝細胞内の転写因子SREBP2の活性化が起こり、 LDL受容体の発現が亢進する。
その結果、血中からのLDL-Cの取り込みが促進され、強力なLDL-C低下作用がもたらされる。
一方で、この転写因子 SREBP2の活性化を介してLDL受容体の分解を促進するPCSK9の合成も亢進することが分かっている。
つまり、スタチンはLDL受容体の発現を増加させる一方で、受容体を壊す分子も増加させるというわけだ。
■スタチン最大量に比べ、スタチン通常用量とエゼチミブ併用は、有意にLDL-C/HDL-C比を低下させること、スタチン投与により血中PCSK9値が上 昇すること、エゼチミブおよびコレスミドのスタチンへの上乗せはPCSK9値に影響を及ぼすことなくLDL-C値を低下させることが明らかになった。
■スタチンの主なターゲットはLDL-C、フィブラートのターゲットはVLDLやカイロミクロンだ。
そこで両薬剤がリポ蛋白代謝に及ぼす影響を調べるために、III型高脂血症患者6人を2群に分け、アトルバスタチン10mg/日またはベザフィブラート400mg/日のオープンクロスオーバー試験を行い、治療前後のリポ蛋白分画の変化を検討した。
その結果、アトルバスタチンはすべてのアポB含有リポ蛋白分画を低下させたが、HDL分画はほとんど変わらなかった。

一方、ベザフィブラートは小さな粒子 径のLDLを減少させると同時に大きな粒子径のLDLを増やし、HDL分画も増加させた。
このように2剤はリポ蛋白代謝に及ぼす影響が大きく異なることが示された。
■III型高脂血症患者における両剤の併用は、単剤投与に比べ、TCとTGの低下、HDL-Cの増加をもたらすことが示され、両剤は相補的に脂質プロファイルを改善することが明らかになった。
■スタチン単剤に比べ、異なる作用を有する脂質異常症治療薬の併用は、動脈硬化を抑制する脂質プロファイルに貢献する可能性が高い。
中でもPCSK9阻害効果の期待できる薬剤の併用が有用と考えられる
出典  MT Pro 2011.9.26
版権 メディカル・トリビューン社
 
新着の日循機関誌Circulation Journal 
75: October 2011 2497-2504に関連論文が掲載されていました。
Clinical Usefulness of Additional Treatment With Ezetimibe in Patients With Coronary Artery Disease on Statin Therapy
– From the Viewpoint of Cholesterol Metabolism –

http://www.jstage.jst.go.jp/article/circj/75/10/75_2496/_article/-char/ja/
<私的コメント>
Ezetimibe は閉経後女性では薬効が低いと囁かれています。
この論文では男女差の検討、閉経前後の女性の群間比較はされていません。
ちょっと残念でした。

 

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リスクを見極めて薬剤選択や投与法を工夫
大血管障害の予防を目指すためには,患者の心血管危険因子を見極め,それらを悪化させない薬物や改善する薬物を 選択したり,投与法を工夫することが大切だ。
山田センター長の場合,メトホルミン単剤で効果不十分な肥満傾向のある患者への追加薬剤を選択する際に,これ以上の体重増加が危険と思われるような場合に体重を増やさないDPP-4阻害薬,心血管イベントの既往がある人や高リスクの患者には二次予防のエビデンスを有するTZDのピオグリタゾンというような形での使い分けを心がけている。なお,同じTZDでもrosiglitazone(日本未発売)の場合は,ピオグリタゾンとは逆に冠動脈疾患の発症率を高めることが分かっているが,TZDのクラスエフェクトは認められていない。
<私的コメント>
「ピオグリタゾンとは逆に冠動脈疾患の発症率を高めることが分かっているが,TZDのクラスエフェクトは認められていない。」

 「ピオグリタゾンとは逆に冠動脈疾患の発症率を高めることが分かっている。」
の方が読みやすいのでは。
 私はクラスエフェクトというのは「薬効」に使うものと思っていました。
この文章での「クラスエフェクト」も、恐らく薬効のことだと思いますが、ちょっと分かりにくい表現になっています。
ちなみに、「リモデリング」という言葉も 生体にとって防御的な意味なのか、悪い意味なのか分からなくなってしまうことがあります。
「フィードバック」もpositive、negativeと頭の悪い私には苦手な言葉です。

 
<参考>
Class effect
http://www.medicine.ox.ac.uk/bandolier/booth/glossary/class.html
■Class effect is usually taken to mean similar therapeutic effects and similar adverse effects, both in nature and extent. 

 
リモデリング
http://yangt3.blog.so-net.ne.jp/2010-01-06
 
リスクを見極めるための検査としては,定期的に血清脂質値や血圧などを測定することはもちろん,年に1回は心電図と胸部X線像を撮り,ST変化や心拡大の所見を見逃さないようにしている。
 
<私的コメント>
「年に1回は心電図と胸部X線像を撮り」
開業医にとって心電図はまだしも胸部X線はなかなか患者さんに切り出しにくい検査です。
循環器領域からはずれますが、最近こんな症例を経験しました。
症例1.
70代女性。
当院へは骨粗鬆症で通院中(ビスホスフォネート処方)。
休日に発熱。
大病院を受診(多分研修医)。
胸部写真は撮らず、胸部CT検査。
異常影を指摘され、その後の精査で肺がんと診断。
当院では最近胸部X線はしていない。
4年前のレントゲンを出して見てみたが異常影なし。
その後の患者さんの話では、後日CTの後に撮った胸部写真では異常影は指摘出来なかったとのこと。
主治医は「普通のレントゲンでは写らないよ」 と患者さんに説明した由。
何だかすっきりしない結末。

症例2.
70代男性。

半年前から高血圧で通院中の。
「先生、最近ちょっと階段を昇る時に息切れがするんですよ」
聴診器(これも今までに殆どあてた記憶なし)からはVelcro音がはっきり聴取。
あわてて胸部X線をとったら両下肺野に間質性肺炎の像あり。

診療録を見てみたら、胸部X線は一度もとっていない。(冷汗)
あわててKL-6をオーダー。
返って来た検査値は3000オーバー。
降圧剤の副作用かどうかも以前に検査がされていないため知る由もない。
「初診時の検査が大切である」ということで猛省。
高血圧自体についても、初診時に二次性高血圧の否定のためのレニン、アルドステロンや四肢血圧測定(これはCAVIなどで簡単にチェック可能)をしておかなければ「本態性高血圧」といういい加減な(便利な)病名に終わってしまう。
 
さらに同センター長は,初診時には必ず足背動脈に触れ,異常があればABI(Ankle Brachial Index)を測定している。
糖尿病は「血管の老化を15年早める」といわれており,少なからぬ割合でABIの異常が見出されるという。
<私的コメント>  
「血管の老化を15年早める」が真実であっても、血糖のコントロールで大血管障害が予防出来ない(?) ところこそが今回のテーマです。
 
また,低血糖もイベント誘発につながる重要な危険因子だ。
そこで,SU薬を使用している患者には,食事が遅れたときに異常がないかなど入念に問診を行い,服薬指導を徹底することが必要である。
そうした指導にもかかわらず,低血糖が頻回に生じていることが疑われる場合は,SU薬の中止を考慮することも必 要だ。
 
なお,SU薬は経口血糖降下薬の草分けというべき存在であり,承認された当時は,SU単剤で効果不十分な場合に他に併用する薬剤がなかったという経緯もあり,承認用量が高めに設定されている。
多くの選択肢が出そろった今,最大用量のSU薬が必要とされる局面はほとんどなく,最大用量の3分の1~6分の1 程度を用いることが一般的だ。
むやみに増量しても効果の増強にはつながらず,低血糖のリスクを高めるので,慎重な対応が求められる。

 
高血糖予防だけでなく長期的な血糖管理や患者の意識向上にも役立つSMBG

近年,24時間連続して血糖値をモニターできる持続血糖モニター(CGM)が注目されているが,臨床の場で全例に使用することは困難である。
患者自身の 高血糖予防や低血糖を含めた血糖変動を把握できる手段としては,やはり血糖自己測定(SMBG)システムが重要な位置付けとなる。
渥美センター長 は,SMBGを早くから臨床に取り入れ,「1人1人の患者に合った治療戦略」を見いだすことを推奨している。
 
SMBGは,インスリン治療中の患者にとって欠くことのできない機器であるが,インスリンを用いていない糖尿病患者に用いられる機会はさほど多くない。
しかし,血糖降下薬による治療中の患者でもSMBGを用いれば,基本的な血糖日内変動を把握できるだけでなく,運動や食事,ストレスなど,日常生活が血糖変動に及ぼす影響を事細かに知ることができる。
どの時点での血糖変動に問題があるのかが明らかになれば,ピンポイントでその修正を図ることも可能だ。
すな わち,SMBGを指標とすることにより,HbA1cを指標とするよりきめ細かな血糖管理が可能となる。
 
短期的な血糖管理が改善されれば,長期的な血糖管理もおのずと改善される。
同センター長が東京大学および都内9施設と協力して行ったSCCT(SMBG Control and Compliance Trial)では,SMBGを用いなかった患者群に比べ,SMBGを用いた患者群ではHbA1cの有意な改善が得られた。
さらに,同研究ではQOLに関する調査もなされたが,QOL全般をはじめ,不安度,教育,行動,理解度,満足度といった項目のすべてに著明な改善が認められ,患者の治療への参加意識が高 まったことが示唆された。
 
SMBGは操作も簡便で,血圧を測定するように,患者自身の手で何度も繰り返し血糖を測定することが可能だ。血圧計の普及が高血圧患者の意識向上に果たした功績についてはあらためて語るまでもない。
同センター長は「これからは血圧計と同じように,SMBGも身近な健康管理ツールとして活用していく時代に なって欲しい」と言う。
なお,米国ではインスリン治療の有無にかかわらず,糖尿病患者のほぼ全例にSMBGの指導がなされるようになってきているという。
糖尿病の治療は,患者本人と医療者の双方が血糖プロファイルの特徴を知るところから始まる。
そして,その特徴に合わせた最良の戦略を両者が協力して考え,継続していくことが大 血管障害の予防にもつながるのではないか。

 
糖尿病治療薬の気になる副作用,注意すべき副作用
糖尿病治療薬の副作用には,欧州市場からの撤退を余儀なくされたrosiglitazone(日本未発売)の冠動脈疾患をはじめ,SU薬やグリニド薬の低血糖,ビグアナイド(BG)薬の乳酸アシドーシス,TZDの心不全など,生命にかかわりかねない重篤な副作用も多い。
また最近では,ピオグリタゾンにより膀胱がんリスクが高まるとの疫学調査結果を受け,フランス医薬品庁は同薬の新規処方の禁止を決定した。
<私的コメント>  
フランスでは、今後糖尿病患者に対してTZDは新規使用が出来なくなるのでしょうか。
それともピオグリタゾン以外のTZDという選択肢はあるのでしょうか。
もし前者ということなら、フランスと他の諸国での処方の差、すなわちTZDの処方の有無による大血管障害の差(TZDがはたして大血管障害を予防できるかどうか)をみる実験モデルとなるのではないでしょうか。
 

しかし,臨床試験のデータに「批判的吟味」が求められるのと同様に,副作用に関する情報についても提示された情報をうのみにせず,その正当性を自分なりに検証することが必要だ。特
に,副作用に関する最近の報道のトーンや各国の行政当局の対応には過剰と思えるものも少なくない。
「ピオグリタゾンと膀胱がんの関連をめぐる一連の報道とフランス政府の対応は,その最たるものだ」と山田センター長は指摘する。
 
発端となった疫学調査のデータを見る限り,ピオグリタゾンを処方された男性患者では,同薬を処方されていない患者に比べて高い頻度で膀胱がんの発症が見 られることは事実であるが,それだけでは両者の因果関係は証明できない。
なぜなら,ピオグリタゾンが処方されやすい患者像(例えば肥満があって心血管リスクが高い人など)に共通するなんらかの未知の要素が存在し,その要素こそが膀胱がんの発症に直接関与しているという可能性が否定できないからだ。
<私的コメント>  
 なかなか鋭いコメントとして首肯せざるを得ません。
しかし、この仮説が正しいかどうかは(後追い調査でも構いませんが)、この疫学調査のデータから簡単に解析出来そうです。
 
同セン ター長は「こうした不確かな情報に基づく処方禁止の決定は時期尚早であり,処方機会を奪われた患者の臨床的メリットを損なう可能性もある」と指摘。
「今しばらく動向を見守るとした米国の判断の方が冷静で理論的だ」と述べた。
<私的コメント> 

冷静ということは分かりますが理論的かどうかは不明です。
 
なお,ピオグリタゾンにおける膀胱がんは事前に予期しえなかった副作用のように指摘されているが,糖尿病治療薬の副作用には低血糖のように血糖降下作用と表裏一体のものや,α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)の消化器症状のように薬剤の作用機序からある程度予想されたものもある。
TZDによる浮腫や心不全もそうした「想定内」の副作用の1つであり,原因はインスリン作用の増強に伴うNa貯留の促進にある。
裏を返せばインスリン抵抗性が改善された人ほど浮腫や水分貯留が起こりやすいといえ,「もともと心機能に異常がある人でなければ,まず心配いらない」ということだ。

 
また,体重増加もTZD使用時にしばしば見られる現象であり,その機序にはTZDの主たる作用である小型脂肪細胞の増加が密接に関与している。
しかし, いくら小型脂肪細胞が増加しても,食事や運動が適切になされていれば,体重増加につながることはない。
つまり,体重増加は上述の浮腫のように容認してよいものではなく,是正すべきものである。
その点を患者にきちんと伝えず,単に「この薬は体重が増えやすい薬ですよ」という言い方をすれば,患者は体重が増加しても「薬のせいだから仕方がない」と誤解し,生活習慣を見直すことのないまま漫然と「体重を増やす治療」を続けてしまうことになりかねない。
TZDの機序は複雑であり,正確に説明することは難しい面もあるが,「少なくとも体重増加を看過すべきでないことはきちんと説明すべきだ」と同センター長は指摘し た。
 
他剤の副作用のうち重篤なものとしては,BG薬による乳酸アシドーシスがある。
しかし,その頻度は極めてまれで,造影剤を用いる際に使用を控えるなど,一般的な注意を遵守すれば危険はほとんどないという。
 
また,DPP-4阻害薬については,オランダから感染症リスクが上昇するとの報告が寄せられており,その動向が気になるところだ。
そもそも,DPP-4 はリンパ球やマクロファージに発現する細胞表面抗原の1つであるCD26と同一の分子であるため,これを標的とするDPP-4阻害薬が免疫系になんらかの影響を及ぼすとしても不思議はない。
しかし,同センター長は「そうした予断があるがゆえに,普段なら『ただのかぜ』と考える程度の症状でも『副作用の疑い例』として報告された結果,実際より頻度が高めとなった可能性もある」と言う。
そのほか,インクレチン関連薬と膵炎・膵がんなどのがんとの関連を示すElashoff氏の報告がGastroenterologyオンライン版に掲載されたが,データの信頼性に乏しいとして一時撤回されたほか,EASDは反論のステートメントを公表した。
同センター長も,現時点でなんら対応の必要はないとしている。
しかし,DPP-4阻害薬は上市からまだ日が浅く不明な点も多いため,これからのデータ集積が待たれる。
<私的コメント>  
後半は「糖尿病治療における大血管障害予防はなぜ難しいのか」というテーマについての内容とはなっておらず些かの隔靴掻痒感があります。
糖尿病の専門家には、糖尿病治療による「大血管障害予防」についてもう少し正面から議論して欲しいものです。
そうでなければ、ただ血糖のコントロールをするという数字合わせにもなりかねません。
実際、糖尿病患者に低血糖を起こさせるのは、糖尿病の専門家の方が多いのではないでしょうか(絶対数ではなく発生率)。
 
 
読んでいただいて有り難うございます。
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高リスク糖尿病の目標LDL-C値100mg/dL未満で変わらず
糖尿病の脂質管理目標値は,わが国では一次予防が120mg/dL未満 ,二次予防で100mg/dL未満と2007年版GLで設定されている。
しかし,欧米ではより厳格になっており,一次予防でも100mg/dL未満,二次予防では70mg/dL未満となっている。
日本でもより厳格な目標値を設定すべきか。
江草玄士クリニック(広島県)の江草玄士院長が解説した。
 
一次予防の糖尿病患者のCADリスクは,J-LIT研究において非糖尿病二次予防患者の3分の1程度であることが示されている。
そのため同院長は,現時点で日本人では糖尿病を二次予防と同等のリスクがあるとする根拠は不十分としている。
<私的コメント> 
糖尿病による大血管障害については、最近注目されている一方、糖尿病専門医の「話題づくり」という一面もあります。
これは腎臓専門医による「CKD」と、ちょっと似た構図といえば言い過ぎでしょうか。
実際、糖尿病による大血管障害については、細小血管障害ほどにはエビデンスがありません。
むしろ、混沌としている、ないしはcontroversialと言った方がいいかも知れません。
糖尿病は高脂血症やMetSを始めとした種々の代謝異常なども合併しており、糖尿病単独で大血管障害との関係を評価することは困難です。
「現時点で日本人では糖尿病を二次予防と同等のリスクがあるとする根拠は不十分 」というコメントも、少し痛快ではあります。


一方で,同研究から糖尿病の厳格な脂質管理の必要性も明らかにされている。
LDL-C値とCVD発症リスクの関係を非糖尿病と糖尿病で比較したところ,糖尿病ではLDL-C値が30mg/dL低い段階で非糖尿病と同程度のイベント発症リスクとなっていたAtherosclerosis 2006; 191: 440)。
 
なお,一次予防でリスクが重積した患者,メタボリックシンドローム合併,網膜症やCKDなど細小血管症合併,PAD,脳梗塞の合併などはCADリスクをさらに高めることが報告されている。
同院長は「欧米のようにCHD既往と同等リスクにあるという認識と対応が必要な症例もあるのではないか」と指摘 した。
 
二次予防の段階はどうか。
JAPAN ACSでは,急性冠症候群(ACS)合併糖尿病患者のプラーク変化率が調査されたが,スタチン治療によるプラーク変化率は非糖尿病患者より糖尿病患者の方が小さかった。
また,サブ解析でも糖尿病ではLDL-C 70~75mg/dLの段階で初めて最大変化率が得られており,より厳格な脂質管理の重要性が示された。
さらに,二次予防患者でも,一次予防患者で示された危険因子合併によりCAD再発リスクがいっそう高まることが示された。
 
2006年の国内調査では,GL管理目標値に達した患者は一次予防患者で半数弱,二次予防患者では3割程度だった。
現在はLDL-C低下効果の高いスタチンやエゼチミブが登場しているものの,同院長は「現在でも目標達成率が不十分な状況にあるのではないか」と推測している。
 
以上から,現時点で糖尿病の管理目標値を変更する必要はないものの目標値に到達することが大前提で,症例によってはさらに厳格な目標値を想定すべき場合もあるとまとめた。
 
現時点で二次予防100mg/dL未満の目標値設定にはエビデンス不十分
わが国のGLにおいても二次予防の段階で欧米並みのLDL- C 70mg/dL未満という厳格な目標値を設定するべきかどうか,順天堂大学循環器内科の代田浩之教授が報告した。
<私的コメント> LDL- C 70mg/dL未満という考え方に一律に拘ることなくL/H比も考慮することは当然のことです。
HDL−C値が30mg/dl と70mg/dlで、同じLDL- C 70mg/dL未満を目指す必要があるのでしょうか。

CAD既往患者のLDL-C目標値は,現行GLで100mg/dL未満となっている。
しかし,2002年に報告されたJ-LIT研究で は,LDL-C値110~119 mg/dLと110mg/dL未満に有意な発症リスクの差は示されておらず,この傾向は追跡を10年間延長したJ-LIT Extension(2008年)でもLDL-C 100mg/dL未満までリスク低下の傾向が認められるものの,介入試験ではMUSASHI AMI以外に,LDL-C 100mg/dL未満を目指す根拠は国内成績では必ずしも十分ではなかった。
 
一方で,わが国のCAD症例での再発率は欧米と比べて低率ではあるが,リスクが重積すると再発リスクが高まることは複数の報告で示されている。
JCAD研究ではリスク2点以下に対する3点以上のCVDリスクハザード比が1.26と有意に上昇。
糖代謝異常がある場合にも1.33と有意に高かった(Circ J 2006; 70: 1256)。
 
また,同教授らはeGFRが低下するほどにACS患者のCVDリスクが増大することを報告している。
<私的コメント> 当然、年齢は考慮されているとと思います。eGFRは、年齢補正(残念ながら体重補正はされていない)がされているので年齢は考慮しなくてもいい、という考え方もあるかも知れません。
しかし、どう考えても高齢者ほどeGFR低下例の割合は増加している筈です。

二次予防の大規模レジストリーとしてはCREDO-Kyotoがあり,昨年,この国内レジストリーと米国テキサス心臓研究所データの比較が報告されている(Am J Cardiol 2010; 105: 1698)。
この研究でも,CAD患者の死亡リスクは米国の方が高いものの,その危険因子には同様の項目が挙げられており,同じCAD症例でもよりリスクの高い症例が存在することは明らかである。
これらの症例には積極的な治療が必要となる。
 
しかし,日本における介入試験の報告は限られている。臨床転帰ではなく動脈硬化の進展度を検証したものとしては,ACSを対象にした ESTABLISH試験とJAPAN ACS試験,慢性期CHD患者対象のCOSMOS試験がある。
これらの試験では,70~85mg/dL程度へのLDL-C低下によるプラークの退縮効果が認められている。
 
二次予防における脂質管理の効果を臨床転帰で検討した介入試験としては, Extended ESTABLISH試験やOASIS試験があるが,サンプルサイズや介入時期などの観点から,確立されたエビデンスというには現時点ではまだ不十分と評価した。
 
これらの結果から同教授は,現時点ではLDL-C値100mg/dL未満を確実に達成することが必要であり,さらなる厳格な低下療法が有効であるかどうかは,現在進行中の介入試験の結果を待って検証すべきとしている。「さらに積極的なLDL-C低下療法については,個々の症例リスクを考慮して主治 医が目標値を判断すべきではないか」とまとめた。
 
実地医家による診断を視野に家族性高コレステロール血症GL作成
高LDL-C血症や若年性冠動脈疾患,腱黄色腫を3主徴としてLDL-C代謝経路に障害を有する遺伝性疾患の家族性高コレステロール血症 (FH)。
 
FHについては
家族性高コレステロール血症 その1(1/2)
http://blog.m3.com/reed/20110827/1
家族性高コレステロール血症 その2(2/2)
http://blog.m3.com/reed/20110829/1

も参照下さい。
 
その発症頻度は,片親から受け継ぐ「ヘテロ型」が500人に1人とされていたが,最近の国内調査では従来考えられていたよりも高い頻度である可能性が指摘されている。
専門家だけでなく実地医家による早期診断の機会が珍しくないと考えられるFHの診断と管理については,現在,FH診療GLが作成中だ。
委員の1人である国立循環器病研究センター(大阪府)病態代謝部の斯波真理子特任部長がその方向性を示した。
 
同センターで診療したFH患者329例のデータから分かるFHの実態は次の通りだ。
CAD発症率が男性48%,女性18%で,平均CAD発症年齢は男性47歳,女性59歳で,男性では40歳未満の発症も多い。
そのような若年発症者は予後も悪い傾向にある。
 
FHの原因遺伝子には,LDL受容体をはじめPCSK9などが挙げられるが,同センターの患者のうち約50%がLDL受容体の変異を有している。
PCSK9の遺伝子変異は2種類同定されているが,両者を併せると患者の1割超に認められている
 
遺伝子解析は,診断的価値だけでなく,予後を推測して治療方針を決める手がかりにもなりうる。
同部長の検討では,LDL受容体とPCSK9両者の変異を有する患者ではCAD発症頻度が半数に上り,変異を有しないかどちらかのみの場合の30%と比べて高頻度であった。
 
なお,GL中の診断基準作成に当たっては多施設調査でFHの実態を調査中だ。
同センターや京都大学,大阪大学から脂質異常症患者661例が登録され,そのうちFH患者は240例に上った。
この後ろ向き解析におけるnon-FHとFH未治療時のLDL-C値から,診断基準案の根拠が示された。
参加者 のLDL-C値の分布から,FHのLDL-C基準値は180mg/dLをカットオフ値とするとFHの9割が含まれるが,non-FHも3割弱含まれることになる。
しかし,190mg/dLをカットオフ値とするとnon-FHの割合は17%に低下するが,FH患者の割合も84%に低下する。
 
そこで,GLではFHを疑うLDL-C値を180mg/dL以上と設定し,身体症状や家族歴も加えた項目のうち2項目が当てはまる場合をFHとすることとなった。
なお,LDL-C値250mg/dL以上の場合,単独でもFHを強く疑うことが明記されている。
また,FH患者では危険因子を2つ以上有するとCHD発症リスクが有意に高くなることから,このような高リスク患者ではLDL-C値100mg/dLまたは50%以上の低下により厳格に管理すべ きことが明記される見込みだ。
 
今回の改訂では,15歳未満の小児FHについても言及される予定で,小児の診断基準はLDL-C値と家族歴で決めることや,薬物治療ではレジンを第一選択薬として,アキレス腱・内膜中膜複合体厚(IMT)肥厚がある場合にスタチンを考慮することが明記される予定だ。
 
最後に,同部長は「若年早期に診断してCHDの予防を行えば予後を改善できる。疫学調査を見る限り,実地医家で診療されている場合も多いと考えられるので,見逃さないようにしてほしい」と力を込めた。

出典  Medical Tribune 2011.9.1
版権 メディカル・トリビューン社
 
 

ラウル・デュフィ
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SATURN study

戯れ言たれる侏儒 / 2011.09.06 00:20 / 推薦数 : 2
AstraZeneca announces top-line results from SATURN study
http://www.astrazeneca.com/Media/Press-releases/Article/02092011-astrazeneca-saturn-study-results
Friday, 2 September 2011
AstraZeneca today announced top-line results from SATURN (Study of Coronary Atheroma by InTravascular Ultrasound: Effect of Rosuvastatin Versus AtorvastatiN). SATURN was designed to measure the impact of CRESTOR (rosuvastatin) 40 mg and atorvastatin 80 mg on the progression of atherosclerosis in high risk patients.
<私的コメント>
クレストールとリピトールの国内での用量は各々以下のようにSATURN studyより少ない量です。しかも多くが最小用量で処方されているのが現状です。
クレストール   常用量  2.5〜5mg、最大量20mg
リピトール      常用量10~20mg、 最大量40
mg
クレストール40mgやリピトール80mgはちょっと信じられない量であり、 またハイリスク患者が対象といった点も開業医がみる患者と対象の違いがありそうです。
もちろん人種差はありますが、対象患者にもこの試験結果の解釈には配慮が要りそうです。
 
The results for the primary efficacy measure, which was change from baseline in percent atheroma volume (PAV) in a ≥40 mm segment of the targeted coronary artery as assessed by intravascular ultrasound (IVUS), demonstrated a numerically greater reduction in favour of CRESTOR versus atorvastatin but did not reach statistical significance.

For the secondary IVUS measure, which was change from baseline in total atheroma volume (TAV) within the targeted coronary artery, CRESTOR demonstrated a statistically significant reduction compared with atorvastatin.

Tolerability and efficacy of CRESTOR seen in SATURN were in line with previous studies and approved product labelling.
Further data and analyses will be presented by the study’s academic investigators at the American Heart Association Scientific Sessions (AHA) on Tuesday, 15 November.
<私的コメント>
クレストールとリピトールそれぞれのコレステロール低減率や脂質値(TC、LDL−C、TG、HDL、L/H)が記載されていません。
炎症マーカーの変化も興味のあるところです

NOTES TO EDITORS
About SATURN
SATURN is a 104-week, randomized, double-blind, parallel group, multi-center Phase IIIb study of approximately 1,300 patients, investigating the effects of treatment with rosuvastatin 40 mg and atorvastatin 80 mg on atherosclerotic disease burden as measured by IVUS in patients with coronary artery disease.

About PAV and TAV
Percent atheroma volume (PAV) and total atheroma volume (TAV) can be estimated as part of an intravascular ultrasound examination of a coronary artery. PAV and TAV are two different derivatives of the same measurements taken with a tiny ultrasound probe that is inserted inside the coronary artery. In effect, they take the same ultrasound data, but look at the volume of plaques, or fatty deposits, in different ways to represent what is happening in the patient’s artery.
 
 
<関連サイト>
第136号【SATURN試験の成績:クレストールとリピトールの勝負の結果は?】
http://medicinenewsnow.blog27.fc2.com/blog-entry-142.html
■この試験は、世界的に最も売られているリピトールの後発品が市場に出回る前に、クレストールがリピトールよりもベネフィットのある薬剤であることを示すためにアストラゼネカ社が規格した試験でした。
■結果は、プライマリーエンドポイントであるアテローム体積率(percent atheroma volume:PAV)についてアトロバスタチンに比べてロスバスタチンの方が低下が認めれたものの有意な差は認められませんでした。
一方、セカンダリーエンドポイントである総アテローム体積(total atheroma volume:TAV)では、アトロバスタチンに比べてロスバスタチンで有意な低下が認められました。

■ 詳細な解析結果は、11月15日に予定されている
American Heart Association (AHA)にて発表される予定です。

<私的コメント>
ロスバスタチンはアトロバスタチンに対してプライマリーエンドポイント(PAV )で有意差がでなかったことで、たとえセカンダリーエンドポイント(TAV)で有意差が出てもネガティブな結果という捉え方になったようです。
PAV がTAVより臨床的に重要である理由も私には今ひとつ理解できませんでした。
プライマリーエンドポイントとセカンダリーエンドポイントを逆にしたプロトコールが妥当性かどうかはわかりませんが、その場合にはどのように結果が解釈されるのでしょうか。
現段階では、あまり話題になっていない試験ですが、ロスバスタチンを発売しているアストラゼネカ社にとっては大きな意味を持ちます。
本年11月にAHAで発表された後にはいろいろなコメントが寄せられるものと思われます。
 
AstraZeneca Falls as Crestor Study Results Not Significant
http://www.bloomberg.com/news/2011-09-02/astrazeneca-s-crestor-had-some-benefit-over-lipitor-in-study-1-.html
 
<私的コメント>
進行性非小細胞肺がんや前立腺がんでの別の大規模臨床試験で同名のSATURN試験もあるようです。
 
<番外編>
CTTメタ解析
Cnoresterol Treatment Triallist'(CTT) Collaboration.
Lancet.2010:376(9753);1670-1681
http://asc.m3.com/ck9a575b788b92ae92f0bebaf34c5dfd3d16d/contents/crestor_cnc/10/index.html?cid=201106NNDH

LDL-Cを39mg/dL低下させた時のイベントリスク
 すべての心疾患  16%/年減少
 すべての血管疾患 14%/年減少
 全死亡      10%/年減少

全死亡が減少したという結果は以下の理由から重要である。
以前からスタチンなどによる脂質低下療法は、心疾患は減らすが、脳出血や癌を増やすのではないか、という懸念があった。つまり、心疾患だけをみるのではなく、全体として死亡率が減るかどうかもみる必要があった。
コレステロールが低い人は、心疾患は少ないが、脳出血や癌はむしろ多いという疫学調査のデータがあった。

■脳卒中は全体としてみると、スタチン群はコントロール群に比べて、あるいは積極的スタチン療法群は、標準的スタチン療法群に比べて、いずれも有意に少なくなっており、LDL-Cの低下が脳卒中を減らすことが示された。
■出血性の脳卒中は、いずれも有意な増減はなかった。
■試験期間中に起こったさまざまな癌と、LDL-Cの関係を解析したところ、LDL-Cの低下と癌の発症には関係がみられなかった。(LDL-Cを39mg/dL低下させた時のイベントリスク)
■疫学調査と、薬剤を使った介入研究は全く性質が異なる。
疫学調査でコレステロールが低い人はコレステロールが低くなる原因、たとえば癌や肝臓の疾患、低栄養などが考えられまする。
癌細胞が増えるには大量のコレステロールが必要で、血中のコレステロールは低下し、低栄養では脳出血を起こしやすいといわれている。
私的コメント;コレステロールが高い人は癌細胞増殖の材料が多いということで増殖・進行が早いということはないだろうかとふと思いました。)
つまり、コレステロールが低いから癌や脳出血が起きるのではなく、コレステロールが低いことは、他の病気の可能性がある。
■(LDL−Cはどこまで下げればよいか)
このメタ解析でも、はっきりした結論は得られなかったが、投与前のLDL-C値135mg/dl以上と高い人でも、78mg/dl以下と低い人でも、LDL-Cを39mg/dl低下させたときの主要血管イベントのリスク低下率は変わらなかった。
すくなくともこれまでの試験の範囲では、LDL-Cは低ければ低いほど、イベントリスクは低いと言える。
結論
CTTのメタ解析によって、LDLコレステロールを下げることは、心筋梗塞や脳卒中を減らし、癌や脳出血などの発症リスクに影響を与えない。

(私的コメント;最近、抗癌剤の勉強を少ししました。

抗癌剤が抱える4つの宿題  その1(1/2)

その中で腫瘍が増大しない、ないしは縮小して無増悪生存期間(progression free survival:PFS)が延長しても全生存期間(overall survival:OS)が延長しないならば、抗癌剤が有効とはいえない、という考え方があるというコメントがありました。これは至極当然のことと思われます。抗癌剤とコレステロール低下剤を一緒にするわけにはいけませんが、日本人のように心血管イベントが少ない場合には、「全死亡」の方がよりいい結果が出る可能性もあります。それはそれで興味のあることです。)  

 
ラウル・デュフィ 
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無症候性頸動脈狭窄症の脳卒中リスク,2つの超音波検査でより高い予測能
国際前向き研究ACES登録患者の解析
無症候性頸動脈狭窄症(ACS)患者における脳卒中予測マーカーとしての可能性を検討するため,英ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジの Raffi Topakian氏らは,国際的な前向き観察研究ACESに登録した重症ACS患者435例を対象に,頸動脈および経頭蓋の2つの超音波検査を行い,約2年間追跡した。
その結果,同側の脳卒中リスク予測能は,いずれかの超音波検査だけで行うよりも,両方の超音波検査で行う方がより高いことが分かった(Neurology 8月17日オンライン版)。
 
低輝度型プラーク+ES陽性で同側の脳卒中リスク10倍以上
Topakian氏らは,1999年7月〜2007年8月にACESに登録したACS患者から,重症(狭窄度≧70%)で,頸動脈領域および大脳 動脈領域において2年以上無症候であることなどを条件に抽出し,435例(平均年齢71.4歳,男女比およそ7対3)を解析対象とした。
 
頸動脈超音波検査によるプラーク輝度,および経頭蓋ドプラ超音波(TCD)検査による同側の中大動脈における塞栓信号(ES)を評価した。
プラー ク輝度は,低輝度型(echolucent)が164例(37.7%),等〜高輝度型(echogenic)が204例(46.9%),石灰化型が67例 (15.4%)であった。
 ESは,TCDによる解析が可能であった423例中73例(17.1%)で1カ所以上で検出された。
また,ACSの狭窄度は,228例(52.4%)が70〜79%,124例(28.5%)が80〜89%,83例(19.1%)が90〜99%であった。
 
なお,ベースラインにおける低輝度型プラークとACSの狭窄度またはESの検出においてはいずれも関連は認められなかった(順にP=0.207,0.867)。
 
そのほかの脳卒中リスク因子は,高血圧症339例(77.9%),糖尿病91例(20.9%),喫煙は喫煙者64例(14.7%),喫煙歴あり 199例(45.8%),喫煙歴なし172例(39.5%),虚血性心疾患の既往156例(35.9%),心房細動の既往28例(6.4%)であった。
 
対象患者を平均1.82年にわたり追跡調査し,Kaplan-Meier法解析およびCox比例ハザード回帰モデルにより,低輝度型プラークの脳卒中予測マーカーとしての可能性を検討した。
その結果,低輝度型プラークは同側の脳卒中や一過性脳虚血発作(TIA)の発症リスクを有意に高めることが分 かった()。
 
photo
また,低輝度型プラークおよびES陽性の両方に該当した患者が27例(6.3%)いたが,両所見が認められると脳卒中リスクは急増し,同側の脳卒中に対してはハザード比10以上の高い予測能を示した。
 
これらの結果から,同氏らは「同側の脳卒中リスクは,低輝度型プラークおよびES陽性のいずれにも該当しなかったACS患者の年間リスクが0.8%なのに対し,両方が該当した患者では8.9%と,10倍以上のリスクの上昇が認められた」と結論付けた。
さらに,「ACS患者の頸動脈内膜剥離術 (CEA)選択における有用な指針となる可能性がある」と結んだ。 
                 (松浦 庸夫)
出典  MT Pro 2011.8.25
版権 メディカル・トリビューン社
 
 
<関連サイト>
~無症候性頸動脈狭窄患者~
経頭蓋超音波ドプラ法で脳卒中リスクを予測

聖ジョージ医科大学(ロンドン)のHugh S. Markus教授らは,無症候性頸動脈狭窄の患者を対象とした前向き試験で,経頭蓋超音波ドプラ法(TCD)の検査所見と同側性の脳卒中,一過性脳虚血性 発作(TIA)の発生状況との関連を検討し,「TCDは同側性脳卒中およびTIAリスクの高い患者の特定に役立つ」とLancet Neurology(2010; 9: 663-671)に発表した。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtnews/2010/M43480482/
■頸動脈狭窄はマイナーストロークやTIAの原因となる。
■頸動脈内膜切除術は切迫した脳卒中の症状を示す症候性頸動脈狭窄患 者に対して行う標準的治療法で,同側性の脳卒中リスクを最大75%低減することが明らかにされている。
しかし,無症候性患者の脳卒中予防を目的とした同手 術の有用性は明らかにされていない。
■頸動脈狭窄患者の大半では,TIAやマイナーストロークが後遺症を伴う重症脳卒中に先行することは少なく,ほとんどの無症候性頸動脈狭窄患者では手術よ りもライフスタイルの改善など内科的療法を行う方が効果を得やすい。
■脳卒中リスクの低い患者で手術を行うことは,それ自体が脳卒中リスクとなるた め,このような事態を回避するためには,無症状だが脳卒中発現リスクが高く,手術によって便益の得やすい患者を特定することが重要となる。
■無症候性頸動脈狭窄の患者に経頭蓋超音波ドプラ法(TCD)を実施すると,塞栓シグナルの有無により患者の脳卒中リスクを予測できることが示唆された。
同法は,動脈内膜切除術による介入の適応となる患者を特定する際に役立つ。

 
<きょうの一曲>You've Got a Friend
http://www.youtube.com/watch?v=w4mNDS5rIRU&feature=related
 
http://www.youtube.com/watch?v=EiJ0uK8qYXM&feature=related

http://debdylan1966.blog.so-net.ne.jp/2008-02-08
(歌詞です)
 


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井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
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第43回日本動脈硬化学会(2011年7月15日〜16日 札幌)で発表された「通常用量スタチンに比べて、低用量スタチンとエゼチミブの併用の方がIMTの退縮率が高い」よいう興味深い内容の記事で勉強しました。
LDL-Cの低下率は両者でどうだったのでしょうか。

エゼチミブとIMTに関しては、エゼチミブ単独投与では十分な退縮が得られなかったというENHANCE試験が発表されています。
 
ENHANCE試験をめぐる論争 その1(1/2) - の髄から循環器の世界を ...

ENHANCE試験 - の髄から循環器の世界をのぞく Doctors Blog 医師が ...


ENHANCE 試験をめぐる論争 その2(2/2) - の髄から循環器の世界 ...

 
エゼチミブ・シンバスタチン併用めぐる終わりなき論争 - の髄から ...
 



通常用量スタチンに比べて、低用量スタチンとエゼチミブの併用の方が頸動脈IMTの退縮率が高い
スタチンとエゼチミブの併用によりLDLコレステロール(LDL-C)の良好な管理が可能であることが確認されているが、 動脈硬化の進展に及ぼす影響は明らかではない。
福岡赤十字病院総合診療科の澤山泰典氏らは、低用量のスタチンとエゼチミブの併用による治療で頸動脈内幕中膜複合体肥厚(IMT)が退縮することを明らかにし、札幌市内で7月15日から16日まで開催された日本動脈硬化学会(JAS2011)において報告した。

Bモード超音波法で測定した頸動脈IMTは動脈硬化進展のサロゲートマーカーとされており、スタチンを用いた積極的LDL-C低下療法によりIMTは退縮するという報告がいくつかなされている。

そこで澤山氏らは、低用量スタチンとエゼチミブの併用療法における頸動脈IMTへの影響について通常用量スタチンによる治療と比較検討した。

対象は、低用量(5mg/日)のプラバスタチンを投与しても、LDL-C値が120mg/dL以上の高コレステロール血症患者48人。

これらの患者を、エゼチミブ10mg/日を追加投与する群(エゼチミブ併用群、27人)、あるいはプラバスタチンを通常用量 (10mg/日)に増量する群(通常用量スタチン群、21人)に無作為に割り付け、2年以上(平均2.3年)追跡した結果を解析した。

平均年齢、性別、BMIなど、両群間の患者背景に有意差はなかった。

半数以上の患者で喫煙習慣があり、8割前後が高血圧を、2〜3割が糖尿病を合併し、ほぼ全例が動脈硬化性疾患のハイリスク患者であった。

通常用量スタチン群の総コレステロール(TC)値は、221mg/dLから202mg/dLに、LDL-C値は127mg/dLから113mg/dLに、 動脈硬化性リポ蛋白を反映するnon HDLコレステロール(non HDL-C)値は164mg/dLから140mg/dLに、それぞれ有意に低下した(それぞれ、p=0.0050、p=0.0080、 p=0.0003)。

エゼチミブ併用群では、TC値は236mg/dLから201mg/dLに、LDL-C値は145mg/dLから 114mg/dLに、non HDL-C値は176mg/dLから139mg/dLに、それぞれ有意に低下した(いずれも、p<0.0001)。

これらの血清脂質値の低下度は、通常用量スタチン群に比べて良好だった。

なお、トリグリセリド値、HDLコレステロール値、空腹時血糖値、HbA1c値、インスリン抵抗性指標のHOMA-IR、炎症マーカーのhsCRP値には両群ともに有意な変化は認められなかった。

頸動脈IMTは登録時に比べて両群で退縮したが、エゼチミブ併用群でのみ有意であった(p<0.01)。

また、登録時からの頸動脈IMT変化量(⊿IMT)はエゼチミブ併用群で通常用量スタチン群よりも有意に大きかった(p=0.0142)。

さらに、通常用量スタチン群では、登録時の頸動脈IMTと⊿IMTに有意な相関は認められなかったが、エゼチミブ併用群では登録時のIMTが高い患者ほど⊿IMTは大きかった(p=0.0002)。

これらの結果から澤山氏は、ハイリスクの高コレステロール血症患者では、通常用量のスタチンによる治療よりも、低用量のスタチンとエゼチミブを併用した方が、頸動脈肥厚を改善し、動脈硬化の進展を抑制できると結論した。


出典 NM online 2011.7.18
版権 日経BP社
 
<関連サイト>
エゼチミブ(商品名ゼチーア)

 


2011.8.21 午前9時30分撮影 
「新装なったJR大阪駅構内 」
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異所性脂質蓄積という概念
日本人ではBMIが30以上の肥満者の割合が欧米に比べて低いにもかかわらず,糖尿病の有病率は欧米とほぼ同程度であることが報告されている。
近年では予防医学的な概念からメタボリックシンドロームが登場し,特に日本人では,軽度肥満の段階から内臓脂肪の軽減を目指した生活習慣の是正と医学的介入が必要とされている。
 
そこで最近,益崎教授らが注目しているのが「異所性脂質蓄積図2)」という概念だ。
人間には,有事に備えてエネルギーを体内に保存する機能が備わっているが,日本を含むアジア地域の肥満者では,欧米人に比べて皮下脂肪組織の蓄積能力が弱い
そのため,軽度肥満の状態から,内臓脂肪組織や肝臓,骨格筋,膵臓,血管など,本来は脂肪が蓄積しない部分にたまりやすくなり,これが全身・臓器レベルでの血管病リスクを高めるという概念だ。
こうした異所性脂質の蓄積が起こる場合,通常体重に比べて,耐糖能異常や高血圧,脂質異常症などの発症リスクが2倍に増加する。

 
図表
こうした余分な脂肪が蓄積する理由には,インスリン分泌過多が挙げられる。
沖縄県で増加が問題視されている肥満2型糖尿病に見られるように,インスリン分泌が過剰にもかかわらず,血糖値が下がらないインスリン抵抗性が惹起され,高インスリン状態が続くと異所性の脂質蓄積が進行するという機序が考えられるという。
 
遺伝子操作により脂肪組織への中性脂肪備蓄能力を軽減した遺伝性の肥満db/dbマウスを軽度肥満とし,超肥満のdb/dbマウスと野生型マウスの代謝解析を比較したところ,軽度肥満マウスでは,超肥満マウスよりも脂肪肝が悪化しており,血糖値も著しく上昇していることが示されている(図3)。
こうした軽度肥満マウスでは,皮下脂肪組織に備蓄できない余剰脂質(エネルギー)が脂肪筋や脂肪肝,脂肪血管となって異所性に蓄積し,局所組織での機能障害や炎症,インスリン抵抗性を惹起すると考えられる。
同教授は「これは日本人で起こりやすい現象であり,内臓脂肪型肥満は異所性脂質蓄積を伴っていることが多い」と指摘する。
この改善には,食事や運動療法など生活習慣の是正により,骨格筋細胞内の脂質は大きく減少し,インスリン抵抗性が改善することに加えて,高インスリン状態を引き起こさない薬剤による治療も必要とされる。

 
図表

 

待たれるインクレチン関連薬のエビデンス
最近では,わが国でもジペプチジルペプチダーゼ(DPP)-4阻害薬やグルカゴン様ペプチド(GLP)-1受容体作動薬といったインクレチン関連薬が臨床導入され,糖尿病治療にも変化がもたらされている。
益崎教授によると,先に述べた肥満2型糖尿病が増えている昨今では,必要なときに効果的なインスリンの分泌を促すコンセプトの薬剤が求められており,血糖依存的な作用を示すこれらの新規の薬剤は,食後高血糖の急峻な上昇を抑制し,血糖変動のきめ細かな正常化を目指すのに適した選択肢であるという。
 
一方,これらの薬剤には使用上,注意すべき点もある。
スルホニル尿素(SU)薬との併用時の低血糖リスクの軽減に配慮する必要があること,また,インスリン依存状態にある患者に対しては,インスリンからの切り替えによる高血糖や糖尿病性ケトアシドーシスのリスクに注意する必要がある。
そのため,「個々の患者の状態に適した薬剤選択をしっかり考える必要がある」と同教授。
 
野出教授も,既存の薬剤とは異なる新しい機序を持ち,体重を増加させず,何より低血糖の頻度が少ないことからも,これらの薬剤への期待は大きいという。
また,GLP-1受容体は中枢神経系や胃,心臓,肺などに発現しており,血糖低下作用以外の臓器保護作用を持つ可能性も示唆されている。
しかし,同教授は 「こうした新規の薬剤は今後,有効性と安全性のエビデンスを確立していくべき段階にある」と指摘する。
そこで同教授らは,DPP-4阻害薬のシダグリプチンに着目し,同薬の血管障害に対する効果を検討するPROLOGUE研究を開始。
現在,患者を登録中だ(図4)。
同研究では,シダグリプチン投与群と非投与群で,頸動脈エコーを用いて頸動脈内膜中膜複合体厚(IMT)を測定し,動脈硬化進展抑制効果を比較するとともに,心血管機能や血液バイ オマーカーに及ぼす影響も検討する予定であるという。
同研究をはじめインクレチン関連薬の,特に日本人におけるエビデンスの蓄積が待たれる。
 
出典 Medical Tribune 2011.7.21
版権 メディカル・トリビューン社 

 
<関連サイト>
糖尿病と冠動脈

糖尿病 ~ 血管障害

 

<きょうの一曲>  フォーレ:ヴァイオリンソナタ第1番
First movement
http://www.youtube.com/watch?v=U_AJUmd80J4&feature=related

Second movement
http://www.youtube.com/user/noiresprit2004#p/a/u/1/LdS0greKacU

Third movement
http://www.youtube.com/user/noiresprit2004#p/a/u/1/LdS0greKacU
 
Fourth movement 
 
 
 
2011.7.18撮影 茅野・長野から眺望した八ヶ岳
 
 
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佐賀大学循環器内科学の野出孝一教授と琉球大学大学院内分泌代謝・血液・膠原病内科学講座(第二内科)の益崎裕章教授が, それぞれ循環器・糖尿病専門医の立場から,大血管疾患予防のための糖尿病治療戦略などの最新知見を話された記事で勉強しました。
 
大血管疾患予防を目指した糖尿病治療を考える
ここ10年間で患者総数が倍以上と猛烈なスピードで増え続けている2型糖尿病。
国際的に見られるこの増加傾向はわが国でも著しく,2007年の国民健 康・栄養調査によると,「糖尿病が強く疑われる人」は約890万人,可能性を否定できない人の約1,320万人を合わせると全国で2,200万人を超える人が糖尿病あるいはその予備群と考えられる。
最近では,糖尿病患者では健康人に比べて死亡リスクが高く,心血管疾患の頻度も3~4倍に上るとする報告もあ り,心血管疾患の重大な危険因子と位置付けられるようになってきた。
また,ここ数年でわが国でもインクレチン関連薬が臨床に登場するなど,その治療現場にも変化が生じている。
 
大きく変化するわが国の疾病構造
長らく長寿を誇ってきた沖縄県だが,近年では肥満や冠動脈疾患,糖尿病患者の増加が著しく,日本屈指の肥満県,糖尿病県と呼ばれるまでになっている。
2004年の調査から,同県では,男性の約半数がBMI 25以上との実態も浮かび上がっており,BMI 25~30未満の軽度肥満でも糖尿病の発症リスクは7倍に跳ね上がることから(図1),
由々しき事態に陥っているという。
その特徴は,夜型の生活リズム,一家に3台ともいわれる自動車の普及,身体運動量の低下,高脂肪食の過剰摂取,肉食への高い嗜好性と野菜摂取不足,小児・学童肥満の急増,わずかな気温日較差など多種多様だ。
 
図表
中でも2型糖尿病の増加は,わが国では社会問題にまで発展している。
冠動脈疾患や脳卒中などの循環器疾患患者では,境界型を含めた糖尿病予備群または糖尿病患者が6~7割を占めると報告されており,糖尿病の診断・治療における循環器医の役割も増大している。
益崎教授の経験でも,糖尿病をテーマに講演会や研究会を開催すると,10年前に比べて,循環器科や神経内科,脳外科の医師の出席が多く見られるようになっており,「糖尿病を持つ患者に遭遇する機会が増えてきたことを如実に表している」と言う。
 また,循環器医の立場からも「循環器疾患患者の心血管イベント抑制を目指す上で,残された課題が糖尿病といえるのではないか」と野出教授は指摘する。
<私的コメント>
「残された課題」 については最近とりあげました。
残された血管リスク 講演会メモ その1(1/2)
残された血管リスク 講演会メモ その2(2/2)
 
 
循環器医の治療目標は,第一に総死亡の減少,そして循環器疾患の再発・初発予防が続き,最近では患者のQOL向上も大きな潮流とされる。
これらを目指すには,高血圧や脂質異常症,そして糖尿病の包括的な管理が必須となるが,特に糖尿病は病態解明も治療薬の開発もまだまだ途上であるにもかかわらず,急激な患 者数の増加が見られることが,重要な治療ターゲットとされるゆえんであるという。
近年では,耐糖能異常が見られる前糖尿病の段階で,既に心筋梗塞や脳卒中のリスクが上昇しており,糖尿病の進行とともにこれらのリスクがさらに上昇する “Cardio-Diabetes”という概念が広まりつつある。
益崎教授は「それがここ10年間で臨床風景が大幅に変わった現象。明らかにわが国の疾病 構造が大きく変化してきていることを実感している」と印象を話す。
 
大血管疾患の予防には血糖変動パターンの評価を
糖尿病を治療・管理する上で,最も注意を払うべきは合併症の併発だ。
糖尿病では,網膜症や神経障害,腎症といった細小血管障害だけでなく,冠動脈疾患や脳血管障害といった大血管障害の抑制が,その治療の最大目標となる。
では,大血管疾患の予防を目指した糖尿病治療とはどのようなものなのか。
EBMの側面から見ると,まずは1998年のUKPDS試験が挙げられる。
同試験から,積極的な血糖管理は細小血管合併症を予防することが示された一方で,大血管障害の抑制効果については明らかにされなかった。
一方,2008年に報 告されたACCORD試験とADVANCE試験からは厳格な血糖管理の意義に矛盾する結果が得られ,大きく注目を集めたことは記憶に新しい。
 
日常診療に浸透しつつあるEBMだが,益崎教授は「大血管疾患の予防は,血糖だけで語れるほど単純なものではない」と強調する。
近年では,食後高血糖が 大血管イベントのリスクとなることや,過度な血糖降下により引き起こされた低血糖が死亡につながることが示されており,大血管障害の発症は,空腹時血糖値 や平均HbA1c値だけでは説明できないことが明らかにされてきた。
 
そのリスクの1つが,最近注目されている「血糖変動」だ。
空腹時血糖値や食間血糖値が正常でも,食後30分の急峻な血糖値の上昇や低下を示すパターン に,心血管リスクが高い患者が隠されており,こうした血糖変動をいかに正常化させるのかが重要となる。
「食後高血糖が見過ごされた高リスク集団が,今後, ますますクローズアップされていくと考えられる」とする同教授は,沖縄県でいち早く持続血糖モニター(CGM)を導入。
24時間の血糖変動を記録することで,個々の患者の病態に合わせた治療を実践しているという。
 
また,野出教授は,血糖変動の幅が大きい患者ほど不安定プラークが形成されやすく,急性冠症候群(ACS)が発症しやすいとするデータに着目。
ACS患 者約30例を対象に,低血糖を起こさずに血糖変動幅を抑えることが心血管イベント発生に影響を及ぼすのかどうか検討する予定だ。
この際,CGMに並行して ホルター心電図を記録することで心拍変動の解析も実施し,交感神経活性と血糖変動の関連性も解析する予定であるという。
 
全身的な血管評価と管理が重要
では,循環器医が糖尿病の診療を担う上での課題とは何か。
野出教授は「これまで同科の診療では,大血管イベントの予防に目が向けられがちだったが,今後 は網膜症や腎症,神経障害などの細小血管障害を含めて,頭から足指の先まで全身的な血管を評価し,スクリーニングする,すなわち全身の動脈硬化の進行度や 血管病態を把握することが重視される」と述べる。
「“血管糖尿病(vascular diabetes)”という表現もあるように,血管と糖尿病は密接に関連した病態だ」との考えを示す同教授は,「将来的には,高血圧や脂質異常症のよう に,糖尿病も合併した危険因子の種類や数に応じて,血糖降下目標値を設定する時代が来るのではないか」と展望する。
 
また,2型糖尿病患者の大血管障害リスクとして,最近では尿酸や睡眠時無呼吸(SAS),脂肪肝(NASH)などが重積する複合リスクを考慮することが 不可欠とされる。
益崎教授も「これまでの臓器別,領域別に細分化されていた時代から,全身の臓器連関を見据えた総合内科学を目指さなければ,糖尿病における大血管疾患の予防はなしえない時代に入っている」と強調する。
そこで求められるのは,看護師や栄養士,運動療法士など多種職で構成されるチーム医療の実践だ。
また,血糖変動などのリスクは一般や職場の健康診断では発見されにくいのが実状であるため,あらゆる医療スタッフに限らず,一般市民も含めた幅広い人々に正しい知識を啓発していくことも求められるという。

出典 Medical Tribune 2011.7.21
版権 メディカル・トリビューン社

 

 

 
2011.7.20撮影  鱧鍋
出所不明の松茸も入っていました。

 

 
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ALPS-J試験

戯れ言たれる侏儒 / 2011.06.04 00:07 / 推薦数 : 0
新着のJapan Medicine MONTHLY誌にALPS-J試験が紹介されていました。
ご存知の先生方も多いかと思いますが、この試験はDHP 系CCBの抗動脈硬化を血管内のプラーク体積の変化をIVUSで検討したものです。
この研究結果は、Circulation Journal 2011.4.25で発表されました。
 

対象;
高血圧を合併し待機的PCI施行後にCCB(アゼルニジピン16mg/日またはアムロジピン5mg/日)を投与した199例。
主要評価項目;
ベースライン値からのプラーク体積減少率。
PCI施行直後と施行48週間後のプラーク体積を比較。

試験デザイン;
PROBE法

結果;
アゼルニジピン群、アムロジピン群の2群間でプラーク体積減少率(私的コメント;両群とも有意な減少かどうか一番重要な部分の記載がない)と血圧の低下率(両群とも有意な低下)に差がなかった。

結論;
アゼルニジピンは、アムロジピンと同様に抗動脈硬化作用を持つ。
 
代表研究者の順天堂大学循環器内科の代田教授は「CCBでプラーク退縮を認めた世界で初めての試験となった」と述べた。
 
 
ALPS-J
Azelnidipine Anti-Coronary Atherosclerotic Trial in Hypertensive Patients by Serial Volumetric IVUS Analysis(ALPS-J)
 
 
<参考資料>
Japan Medicine MONTHLY 2011.5.25
 
<関連サイト>
ALPS-J 待機的PCI施行患者におけるアゼルニジピンによる抗動脈硬化作用の検討
http://www.jhf.or.jp/josei/studies/number/167.html
http://circ.ebm-library.jp/trial/doc/J0053.html

 

 

<私的コメント>
虚血性心疾患の薬物治療では,冠血管拡張作用,降圧作用,抗動脈硬化作用の3つが重要であると考えるならCCBはこのすべてを満たす薬剤ということになります。
高血圧合併例では尚更です。
さて、CCBの動脈硬化抑制作用(抗動脈硬化作用)を検討した試験にはELSA試験(European Lacidipine Study on Atherosclerosis)というトライアルがあります。
この試験は冠動脈ではなく頸動脈壁で肥厚抑制をラシジピンという長時間作用型CCB(国内未発売)で検討したものです。
対象薬はβ遮断薬のアテノロールで、4年間の追跡の結果ラシジピン群ではアテノロール群に比べ、Bモードエコー法を用いて測定した頸動脈肥厚の有意な進展抑制が認められました。
さらに、エコーの輝度から組織の性質を判断するUTC法での頸動脈壁のプラークの観察で、ラシジピン群ではアテノロール群に比べプラーク数が少なく、「より高いプラーク退縮率」と「より低いプラーク進展率」を認めたということです。
随時血圧は両群間で差がなく、24時間血圧はむしろアテノロール群で有意に低下していたということからラシジピンには、血圧とは独立した抗動脈硬化作用が強く示唆される
、と結論付けています。
イタリアMilano大学のA. Zanchetti氏が発表したもので、このZanchetti氏の名前は随分久しぶりです。

(高血圧ガイドライン作成で著名なイタリアの重鎮)
また、アムロジピンの抗動脈硬化作用のメカニズムの基礎的な研究成果は以下のサイトで見ることができます。
http://ds-pharma.jp/medical/gakujutsu/view/articles/d_00107.html

 

 

 

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