戯れ言たれる侏儒
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デコイペプチド(HRP)によるプロレニン受容体遮断
藤田
続いてレニン/プロレニン受容体の抑制という話題に移りたいと思います。

Danser
先程、話に出たプロレニン受容体を遮断するデコイペプチド(HRP)に関しては、市原先生と鈴木先生が積極的な研究を続け、重要な論文をご発表になっています。
我々も血管平滑筋細胞でヒトHRPを用いてマンノース6リン酸受容体(M6P)の存在下で検討してみましたが、対照と比べてレニン/プロレニン受容体との結合は十分ではなく、HRPの濃度を上げても変化はありませんでした。
この結果をどう考えるべきでしょうか?

鈴木
ラットのHRPではどうでしたか?

Danser
それは試していません。

鈴木
我々の検討では、ヒトHRPは細胞膜表面にある受容体とのプロレニン結合を抑制しました。
ラットHRPでも同様の知見が得られました。
またヒトのプロレニンがラットのプロレニン受容体に結合すること、ラットのプロレニンがヒトのプロレニン受容体と結合することも確認しています。
(Nabi AHM N et al. Front Biosci 2007;12: 4810-4817)

藤田
今のは基礎研究の話ですが、動物レベルでHRPの有用性は既に示されているわけですか。

市原
我々は、HRPが糖尿病ラットの糸球体硬化を減少させること(Ichihara A etal. J clin Invest 2004;114 1128-
1135)、SHRSPの心肥大を減弱化すること(Ichihara A et al. Hypertension 2006;47:894-900)などを既に報告しています。
しかもこれらの効果は、非蛋白分解の経路を介するものであることを示唆するデータも得ています。

Danser 
AT1aP 受容体が欠損した糖尿病ラットでも同様の結果が得られたと報告なさっていますね(Ichihara A et al. J Am Soc Nephrol 2006;17:1950-1961)。

市原
はい。ですから心肥大や腎硬化といった臓器障害の機序として、アンジオテンシンⅡとは独立した(プロ)レ二ン受容体細胞内伝達機構を介した機序が関与している可能性もあると思います。
 
Danser
また基礎研究の話になりますが、我々も、心筋細胞を用いた検討で、プロレニンがアンジオテンシンⅡとは独立した形で、p38 MAPK(mitogen-activated protein kinase)HSP(heat shock protein)27などの細胞内シグナリングを誘導するとの成績を得ています(Saris JJ et al.Hypertension 2006;48:564-571)。
これはまさにプロレニンがその受容体を介して直接作用を発揮したためと考えられます。
遺伝子解析(microarray approach)でもこのデータを支持する結果が得られており、しかもプロレニンで誘発された遺伝子のレギュレーションは、レニン阻害薬やARBの投与でも抑制できませんでした。

新規薬剤への期待
藤田
これまでのお話を踏まえた上で、レ二ン阻害薬を高血圧などに使う臨床的意義についてはどうお考えですか?

Danser
プロレニン受容体をレ二ン阻害薬で抑制するわけですから、アンジオテンシンⅡの作用をレ二ン・アンジオテンシン系の根元で抑制することができます。
レ二ン阻害薬が、先程ご紹介したような細胞内シグナリングの誘導といった直接作用にどういった影響を与えるのかは今後の検討が必要だと思います。

藤田
ACE阻害薬やARBは、アンジオテンシンⅡ抑制によりネガティブフィードバックが働いて代償的にレ二ン産生を増加させると言われていますが、この点、レ二ン阻害薬はどうなのでしょうか?

Danser
レ二ン系を遮断するわけですから、レ二ン阻害薬でもレ二ン産生は代償的に増加すると思いますが、問題は産生されたレ二ンがどの程度の活性を持っているかだと思います。

鈴木
レ二ン阻害薬投与により、血中のかなりのレ二ンは不活性化されているので、基質であるアンジオテンシノーゲン量は増加しているはずですが いかがですか。

藤田
レ二ン阻害薬への期待は大きいものがあると思います。
しかし、まだ検討すべき色々な課題が残っている
ようですね。

NIKKEI MEDICAL 2007.12              
版権 日経BP社

中町 正男 時のかなたへ  
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<コメント>

レニン阻害薬の発売を待ちたいと思います。

ARBやACEIとの併用でRASのDualないしはTriple Blockという時代が到来するのでしょうか。

完全ブロックにより血中アンギオテンシノーゲン量が増加することが予想されますが、対談の最後がちょっと尻切れトンボになっていたのが残念です。

他に  「井蛙内科/開業医診療録」 
http://wellfrog.exblog.jp/ があります。

 

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昨日の

レニン/プロレニン受容体の機能解明に迫る その1(1/3) http://blog.m3.com/reed/20071223/1

の続きです。

 

座談会
レニン/プロレニン受容体の機能解明に迫る その2
- 臓器保護の新たな視点 -

 

プロレニンの活性化経路をめぐって
藤田
ところで、通常は不活性状態態にあるプロレニンは、どのようにして活性化されるのですか?

Danser
プロレニンはプロセグメントと呼ばれる形で存在しており、この形では活性部位がカバーされていて不活性です。
しかし、蛋白分I解によりプロセグメントが分解されて活性レ二ンに変換されると考えられていました。
一方、最近、レ二ン/プロレニン受容体がクローニングされ、レ二ンおよびプロレニンが非蛋白分解により受容体と結合するとの報告が出て、非常に話題になりました
(Nguyen G etal. J Clin Invest 2002; 109:1417-1427)。
 我々も、プロセグメントは生理的条件下で2%程に非蛋白
 分解の経路を介して構造開存が生じるとの成績を得てい
 ました。
すなわち、プロレニンは2つの異なった経路から活性化されると考えられています(図1)。

 

また、プロセグメントはhandle region peptide(HRP)を持っており、プロレニン受容体遮断を考える上で重要になります。
 
藤田
 HRPというのは何ですか?
 
Danser
本日ご一緒の鈴木先生らがそのペブチド配列を特定したもので、プロレニンがその受容体に結合するのを抑制するデコイペプチドです(図2)。

 


藤田
蛋白分解と非蛋白分解の2つの経路のいずれにせよ、結局、アンジオテンシン産生を促進させるのですね?

Danser
トランスジェニックラットを用いた我々の検討でも、プロレニン受容体が過剰発現している血管平滑筋では、アンジオテンシンI およびⅡの産生が2~3倍高いとの成績が得られました。
プロレニンは細胞表面において、アンジオテンシンI およびⅡの産生を高めているものと思われます(図3)。



市原
図3にあるアンジオテンシノーゲンはどこ由来なのですか?

Danser
大部分は肝由来ですが、間質液や血液の中にも認められます。

市原
そうだとすると局所においてアンジオテンシノーゲンは組織からも供給されているということですか?

Danser
そうです。
ランゲルドルフ灌流心を使って、我々はそのことを確認しています。
今ご紹介したトランスジェニックラットのデータでは、レニン受容体における血管プロレニンの取り込みが増加していること(図4)、レニン受容体が高血圧の進展に関与していることも示されました(図5)。


 

 

またこの実験では、アルドステロンの産生も高まっていました。
アルドステロンのデータについてはどう思われますか?

市原
トランスジェニックラットを用いた我々の検討でも、血漿アルドステロンが高値でしたが、副腎のCYP11B2mRNA量を調べてみても対照と差はなく、その機序を突き止めることができませんでした。

鈴木
副腎のプロレニン受容体の発現状況はどうでしたか?
市原 
我々のトランスジェニックラットでは副腎球状層細胞にヒト(プロ)レニン受容体遺伝子が検出されました。

Danser
我々はまだそうしたデータを得てはいません。
興味ある問題です。

Nikkei  Medical  2007.12       
版権  日経BP社

他に  「井蛙内科/開業医診療録」 
http://wellfrog.exblog.jp/ があります。

 

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降圧剤関連のレニン阻害剤については以前このブログで勉強させていただきました。

組織レニン
http://blog.m3.com/reed/20070914/1        

経口レニン阻害薬アリスキレンhttp://blog.m3.com/reed/20070908/1

 

日経メディカルの最新号で、レニンに関する以下の題の座談会が掲載されていました。

基礎的研究の話が主体なのでかなりアカデミックです。

大規模臨床試験が続いたお口直しにはいいのですが 、なにせアカデミック過ぎて十分理解できません。

 

東山魁夷 湖畔の春  新復刻画  http://page17.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/v36889793?u=;artfolio11
 

座談会
レニン/プロレニン受容体の機能解明に迫る その1
- 臓器保護の新たな視点 -
レニン系の研究が進むにつれ、レニン/プロレニン受容体の機能が次第に明らかになりつつある。
それに伴いレニン/プロレニン受容体の抑制が高血圧や糖尿病における臓器保護を考えるための新しい視点を提供するに到っている。
そして一方では、レニン阻害薬の開発や臨床応用に拍車がかかっている。
そこでこの分野の第一線で研究を続ける内外の専門家の間で、レニン/プロレニン受容体の新しい知見とその臨床的意義をめぐって話し合っていただいた。
ご出席は東京大学大学院医学系研究科内科学教授の藤田敏郎氏(司会)、オランダ.エラスムスメディカルセンター薬理学教授のAH Jan Danser氏、岐阜大学応用生物科学部生物生産科学講座動物生化学分野教授の鈴木文昭氏、慶応義塾大学医学部抗加齢内分泌学講座講師の市原淳弘氏。

解明進むレニン/プロレーン受容体の局在や機能
藤田

本日は、レニン/プロレニン受容体をめぐる研究の現状や臨床的意義などをめぐって話し合いたいと思います。まず、Danser先生から口火を切っていただけますか。

Danser
プロレニンというのはレニンの不活性前駆体ですが、血漿中の全レニンの70~907%以上がプロレニンであることが分かっています
腎臓癌のために両側の腎摘をした症例ではレニンが血中から完全に消失したので、レニンは腎由来であることは確かです。
しかしプロレニンはかなりの濃度を保っていましたの、30~40%は腎以外からも産生されていることが示唆されました。

藤田
プロレニンは腎以外のどの部位から産生されているのですか?

Danser
副腎・目・精巣・卵巣・胎盤などです。

鈴木
プロレニンはどの臓器で代謝されるのですか?

Danser
我々のデータでは、主に肝で代謝されていました。
しかし、プロレニンからレニンヘの変換の場は腎であると考えられています。

市原 
我々の研究では、腎以外の他の組織での変換は見いだされませんでした。
腎においてのみプロレニンがレニンに変換されていると思います。

鈴木
胎盤にあるプロレニンは、胎芽や血管新生に関わっているのでしょうか?

Danser
詳しいことは分かっていないようですね。
妊娠すると高プロレニンになりますが、大半は何の問題もな
く経過します。
それが何故なのか興味あるところです。

市原
高プロレニン状態によるネガティブフィードバックのために受容体発現が低下し、何の問題も起きないのかも知れませんね。
はっきりしたことは不明ですが…。

Danser
糖尿病患者などのヒトから単離した細胞でプロレニン受容体を測定できないものでしょうか?

市原
ヒトのプロレニン受容体を測定する手段がないので、現伏ではヒトのサンプルを用いることは難しいですね。

鈴木
今ご紹介のあった腎摘後に残っていたプロレニンは心臓や血管などの組織由来のものとは考えられませんか?
心臓のプロレニンのmRNAを測定なさいましたか?

Danser
非常に低値で、機能する濃度ではありませんでした。
いずれにせよ、これまでの我々の研究から、受容体と結合しているのはレニンよりもむしろプロレニンのように思われます。

藤田
プロレニンと糖尿病などとの関連も報告されているようですね。

Danser
糖尿病では、プロレニン値の増加が網膜症の進展と有意に関連することが報告されています。
また、糖尿病では非糖尿病よりも、また、微量アルブミン尿を伴う糖尿病では伴わない糖尿病よりも有意にプロレニン値が高いとの報告もあります(DeniumJ et a. Diabetologial 1999;42:1006-1010)。
ですからプロレニンは、糖尿病などの微小血管障害の優れ
た早期マーカーとなり得る
と考えられます。

Nikkei  Medical  2007.12                 版権  日経BP社 

<参考> 

プロレニンの生化学的研究
http://dspace.tulips.tsukuba.ac.jp/dspace/bitstream/2241/3857/1/A0726.pdf
プロレニンの生化学的研究
http://dspace.tulips.tsukuba.ac.jp/dspace/bitstream/2241/3686/1/B0386.pdf
ラット血漿中におけるプロレニンの存在
http://ci.nii.ac.jp/naid/110000976670
(プロレニンは農学部で今ホットな研究がされているようです。)

<糖尿病合併症>「笑い」に腎症への進行抑える効果
腎臓の働きが悪くなる糖尿病合併症の腎症への進行を笑いが抑える可能性があると、国際科学振興財団バイオ研究所(茨城県つくば市)の研究チームが3日、発表した。

チームは、健常者16人、腎症のない糖尿病患者12人、腎症の糖尿病患者11人の計39人に、吉本興業の協力を得て「ザ・ぼんち」の漫才を40分間観賞してもらい、前後で血液を検査した。

糖尿病患者は、たんぱく質のプロレニンの血中濃度が高くなることが知られており、腎臓の細胞にある受容体とプロレニンが結合すると腎症が進行する。血中濃度を比べたところ、観賞前では健常者の平均が1リットル当たり32.5ナノ(ナノは10億分の1)グラム、腎症のない患者が同93.4ナノグラム、腎症患者が同196.6ナノグラムだったが、観賞後には、腎症のない患者は同60.4ナノグラムに減り、統計的な差が認められた。腎症患者も同166.7ナノグラムと減る傾向があった。

また、腎臓以外の血液中にあるプロレニンと結合する受容体の遺伝子の活動を笑いの前後で比べた結果、健常者はほとんど変わらなかったが、糖尿病患者は遺伝子の働きが約1.5倍、活発になった。同研究所の林隆志主任研究員は「笑いで遺伝子が活発になり、血中の余分なプロレニンが受容体と結びつき濃度が下がるのではないか。笑いが糖尿病合併症への進行を抑制することを示唆している」と話す。毎日新聞 2007年12月3日 20時45分
http://www.mainichi.co.jp/universalon/news/prt/1204m089-400.html
(興味深い研究ですね。)

動物生科学研究室
http://www1.gifu-u.ac.jp/~aob3073/animal_Biochem1.html
腎臓・心臓・松果体
http://www_pharm.u-shizuoka-ken.ac.jp/~bioorg/molphys/chap24/chap24.html

他に  「井蛙内科/開業医診療録」 
http://wellfrog.exblog.jp/ があります。

 

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