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慢性心不全におけるβ遮断薬療法 その1(1/3)
http://blog.m3.com/reed/20071220
慢性心不全におけるβ遮断薬療法 その2(2/3)
http://blog.m3.com/reed/20071221
国立病院機構大阪医療センター循環器科 科長安村良男氏
カルベジロール導入の実際と管理ノウハウ
■禁忌症例
カルベジロール導入に際しては、まず禁忌について知っておく必要がある。
主な禁忌は気管支攣縮と徐脈(50拍/分以下)である。
気管支攣縮の合併がなければ、慢性閉塞性肺疾患の患者にも注意深く投与可能である。
β遮断薬はインスリン抵抗性や耐糖能を悪化させることがあるとされるが、血管拡張作用を併せて持つカルベジロールは大規模臨床試験GEMINIにおいて糖代謝に悪影響を与えず、むしろインスリン抵抗性を改善させることが示されている(Bakris GL, et al:JAMA 292: 2227-2236、2004)。
■導入の実際と留意点
心不全患者に対してβ遮断薬を導入する際は、
導入できない症例がある
導入後は投与量を漸増する
機能の改善には時間がかかる
改善の程度は症例によって差がある
ことなどを医師が良く理解し、患者にも説明して理解してもらう必要がある(図4)。

慢性心不全の病態は必ずしも一様でなく、カルベジロールの使用法や使用量が個々の症例によって異なることを念頭におく。
我々がDCM131例を対象にカルベジロール導入を試みたデータでは、導入成功117例、不忍容14例(徐脈・低血圧11例、心不全3例)であった。
特に心不全による不忍容例の予後は不良であった。
β遮断薬によって血行力学的代償不全が悪化することがある。
すなわち、左室充満圧がf曽加し、心柏出量が減少する症例が存在する。
したがって、血行力学的予備能がない患者ではβ遮断薬の導入は困難である。
実際には、明らかな体液貯留、肺うっ血などの心不全兆候が利尿薬やACE阻害薬、ジギタリス製剤で十分(最低2週間以上)コントロールされている状態で導入するのが原則である。
このような安定した心不全状態で慎重に用量が設定された場合には、β遮断薬は比較的安全に導入でき、従来の試験では約90%以上の患者で継続投与が可能とされている。
カルベジロールは1日2.5mgを分2で導入を開始する。
重症例ではさらに低用量から開始する。
用量依存的にLVEFの改善が認められるため、維持量は1日20mgを目標とする。
投与量を患者の状態(収縮期血圧90mmHg以上、心拍数60拍/分以上が望ましい)をみながら漸増していくのが慢性心不全に対するβ遮断薬投与の最大の特徴である。
初期投与量を約1~2週間毎に倍増し、維持量へと移行していく(図5)。

軽症例では増量までの期間を短縮しても良い。
NYHAⅡ以上では入院での導入が基本である。
症状が落ち着いていれば10mgまでを入院で行い、その後は外来で20mgまで持っていくという方法も可能である。
■導入後の対応のポイント
心不全に対するβ遮断薬療法の効果判定にBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)の測定は有用である。
β遮断薬療法が奏効するとBNPは次第に低下する。
また特に重症例では心エコーから三尖弁逆流量(肺高血圧の指標)を求めることでBNPガイドに近い形でβ遮断薬療法を評価することもできる。
β遮断薬本来の薬理学的作用により心不全の悪化、低血圧、徐脈が発生する可能性がある。
そこで、自覚症状、血圧、脈拍、体重の変化を注意深く観察する必要がある。
β遮断薬導入に際して発生する問題点はNYHA分類の程度にかかわらずみられ、そのほとんどが導入時もしくは漸増時に出現している。
特に投与開始後2週間で半数以上が起こっており、導入時が最も問題がおこる可能性がある時期と言える。
このように症状の改善が得られる前に一過性に症状が悪化することがあるが、しばらくすると症状が安定してくるので、すぐにβ遮断薬を中断しないことを患者も十分理解しておくことが重要である。
体重の1~2Kgの増加や心不全悪化サインが出現した場合は、併用している利尿薬またはACE阻害薬を増量する
(表3)。

それに反応しない場合には、短時間(12~24時間)だけ経静脈的に強心薬(ドブタミンやPDEⅢ阻害薬)を投与する。
これらの努力によっても改善しない場合はβ遮断薬の減量もしくは中止を検討する。
併用薬の調節を行う前にβ遮断薬の用量を変更すると患者のβ遮断薬への忍容能力を妨げることになる。
心不全におけるβ遮断薬の陰性変力作用、末梢血管拡張作用は通常は時間経過とともに消退する。
特に、右心不全を伴う例、血圧が低い例、NYHA3~Ⅳの例ではβ遮断薬導入期の心不全の出現、悪化に注意を要する。
ふらつき、低血圧はカルベジロールでみられる副作用であるが、カルベジロールを減量するのではなく、これらは併用している利尿薬、ACE阻害薬減量を試みることにより解決することが多い。
しかし、時に遷延することがあるので、その場合にはβ遮断薬を減量する。
いずれにしろ、心不全の増悪、低血圧、徐脈など副作用が消失、安定するまではβ遮断薬の増量を行ってはいけない。症状が軽ければ、低用量で我慢すると最終的に維持量まで
増量できることもある。
β遮断薬中断後の再開に際しては、中断が72時間以内
の場合は中断前の用量で再開可能である。
中断が72時間から7日以内の場合には中断前の半量から再開する。
中断が7日以上の場合は初期量から再開する。
β遮断薬導入後の慢性期に心不全が出現した場合は、β遮断薬による心不全ではなく、貧血や感染などによる二次性の心機能の悪化や、基礎となる心機能の自然歴としての悪化によるものと考えられる。
このような場合はβ遮断薬の減量や中断をするよりも心不全の原因となった因子を取り除くとともに、他の心不全治療薬を強化するほうが良い。
また、心機能が改善したからといってβ遮断薬を中断すると心不全が再発する可能性が高く、場合によっては、突然死の可能性もある。
この点を患者に十分教育しておく必要がある。
心不全の再発や悪化の有無は基礎疾患などによっても異なるが、どの症例が再発するかを判断する基準はない。
■薬物相互作用や有害事象への対応
ACE阻害薬は投与量が多いほどその効果が大きいとの報告もあるが、血圧の点で問題となる場合はACE阻害薬を低用量にして、β遮断薬を時間をかけて導入する。
ジギタリス製剤、アミオダロン、ジソピラミドなどとの併用で徐脈になる場合は可能であれば併用薬を減量するか、β遮断薬を減量する。
高度の徐脈の場合、ペースメーカを植え込んでまでβ遮断薬を導入したほうが良いか否かは不明である。
しかし、QRS幅が延長し心臓の収縮同期不(dyssynchrony)が問題となる心不全例では、両心室ペーシングによCRT(心臓再同期療法)にβ遮断薬を併用する選択肢が考えられる。
カルベジロールがdyssynchronyを改善するとの報告もある(Gastro PF et al. Am J Cardiol 96:267-269, 2005)。
上利 真永 湿原に
http://page14.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/s78509358?u=edelcoltd
まとめ
現在、β遮断薬に対するレスポンダーとノンレスポンダーをめぐって、遺伝子変異(ACE genotype、β受容体の遺伝子多型)の詳細な解析が進行している。
将来的には、あらかじめレスポンダーとノンレスポンダーを知り、治療方針を立てられるようになることが期待される。
いずれにせよ、ここに紹介したような形でβ遮断薬をしっかり導入し、きちんとフォローアップすることが基本となることは言うまでもない。
NIKKEI MEDICAL 2007.12 版権 日経BP社
他に 「井蛙内科/開業医診療録」
http://wellfrog.exblog.jp/ があります。
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慢性心不全におけるβ遮断薬療法 その2(2/3)
国立病院機構大阪医療センター循環器科 科長安村良男氏
亢進した心臓交感神経活性を抑制し、リバース・リモデリングをもたらすβ遮断薬
心不全では心機能の低下を補うために神経体液性因子の亢進を伴う。
心臓交感神経活性は全身の交感神経活性に先んじて亢進することが分かっている。
すなわち、軽症の慢性心不全では既に心臓交感神経活性が亢進しており、交感神経活性の抑制という作用を持つβ遮断薬を心不全の早期から使う意義がここにあると言えよう。
一方、神経体液性因子の持続的な亢進は心不全の悪化につながる。
特に、血中ノルエピネフリン濃度で代表される交感神経活性の亢進は、慢性心不全患者の強力な予後規定因子である。
心臓交感神経活性の亢進は、心筋細胞での活性酸素産生の増加を介して心毒性に作用するほか、β受容体シグナル伝達系の変化を介して心機能のさらなる低下をもたらす。
すなわち、不全心が不全心を増悪するといえる。
実際に、DCM例で左室駆出率(LVEF)とMIBGシンチグラフイーから求めた洗い出し率(WR)を指標にして心機能と心臓交感神経活性との関係を検討した我々の成績では、心機能が低下している症例ほど心臓交感神経活性が亢進していた。
β遮断薬は交感神経活性の亢進を抑制することでこうした悪循環を断ち切り、左室リモデリングを抑制する。
また、β遮断薬は、左室リモデリングを抑制するのみならず、拡大した左室を小さくし、LVEFの増大をもたらす。
これがリバース・リモデリングである(図2)。

心臓交感神経活性の持続的亢進は心筋細胞の病的変化(遺伝子発現の変化)をもたらし、ひいては左室機能を低下させる。
β遮断薬によるLVEFの改善には心筋細胞の質的変化を伴うことが示されている。
心不全のもとをたどれば不全心にある。
ACE阻害薬やARBは主に血管系にその効果を発揮する。
これに対してβ遮断薬は左室の心機能を改善させる方向に働く。
これがβ遮断薬が慢性心不全の予後を大きく改善させる理由と考えられる。
実際、LVEFの改善は慢性心不全の独立した予後予測因子であるとの報告がなされている。
心不全に対して導入しやすいカルベジロール
これまでに、慢性心不全の予後改善効果ガ認められているβ遮断薬はカルベジロール、メトプロロール、ビソプロロールの3剤であり、β1受容体遮断の確実さ、長時間作用型、脂溶性という共通点がある。
どの薬剤が最も予後を改善するかは明らかではないが、我が国で慢性心不全の適応症が承認されているのは唯一、日本人慢性心不全患者を対象にした臨床試験MUCHAにてエビデンスを持つカルベジロールだけである(図3)。
カルベジロールは血管拡張作用や抗酸化作用などの特徴を併せ持つために導入しやすいという特徴を考えると、心不全に対するカルベジロールの効果はβ遮断薬のClass Effectとは言えないであろう(表2)。
NIKKEI MEDICAL 2007.12 版権 日経BP社
<参考1>
MUCHA
Multicenter Carvedilol Heart Failure Dose Assessment
本試験は本邦で実施された治験である。5mg/日の低用量群でも20mg/日の高用量群と大差のない有効性が認められたが,左室駆出率の改善はMOCHA 試験と同様に用量依存性に増大がみられたため,やはり20mg/日まで増量するのが望ましいと考えられる。
20mg/日でも欧米の投与量の約1/2であり,日本人は少用量でも有効であることを示している。
さらにこの点を検証すべく現在,J-CHE試験が進行中である。 (コメント 堀正一先生)
http://www.ebm-library.jp/circ/doc/html/c2002326.html
<参考2> アーチスト錠1.25mg 他 (第一製薬株式会社)
「次の状態で、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、利尿剤、ジギタリス製剤等の基礎治療を受けている患者:虚血性心疾患または拡張型心筋症に基づく慢性心不全」の効能追加。 (添付文書2006年改訂 より)
<コメント> この適応でみる限り、上記3剤による基礎治療を受けていないと基金が通らないことになります。
亜硝酸剤の血管拡張療法は基礎治療としての条件を満たさないということです。
そして弁膜症による心不全も適応外です。
なんだかしっくりしません。
<コメント>
私自身、在局時代には血中ノルエピネフインの高感度測定に取り組んでいました。
そのころは上記の文中に出てくる心機能が低下している症例ほど心臓交感神経活性が亢進していることも拡大した左室も心不全に対する生体の合目的的現象と考えていました。そして当時の医学界もそういった見解でした。
このことは今でも一部真実のはずです。
急激なかつ急速な心不全の改善をβ遮断薬に望めないだろうしまた望んではいけないと個人的には思います。
あくまでもバイスタンダーという位置づけと思うのですが。
そして効果判定もこまめにかつ慎重に行うべきでしょうが、実際にきちんとモニターされているかというとその点もいささか疑問ではあります。
従来の心不全治療法がおろそかにならないことを祈るばかりです。
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古い循環器内科医にとって心不全にβ遮断薬を投与するなど、とんでもないことでした。
25~30年前くらいにDCMに限定したβ遮断薬の使用が欧米から発表され、そんな治療もあるもんだとたまげたことがありました。
大学の在局時代、 リンパ球を用いたβレセプターの研究を少ししていました。
いわゆるアップレギュレーション、ダウンレギュレーションの概念の世界です。
現在ご存知のように、標題のごとく慢性心不全に対するβ遮断薬の使用が脚光を浴びています。
しかし意外と心エコー、胸部レントゲンやBNPなどでの心不全マーカーでのきちんとしたチェックがされているかというと、いささか疑問でもあります。
さて、きょうから3回にわたってこのテーマについて勉強したいと思います。
慢性心不全におけるβ遮断薬療法 その1(1/3)
国立病院機構大阪医療センター循環器科 科長安村良男氏
β遮断薬が収縮機能の低下した心不全の予後を改善
慢性心不全にしてβ遮断薬を投与することにより、患者
の予後が改善するというエビデンスが蓄積されている。
例えば虚血性心疾患を約70%含むNYHAⅢ~Ⅳの重症慢性心不全患者2,289例を対象とした大規模臨床試験COPERNICUSでは、カルベジロール群でプラセボ群よりも有意に総死亡の改善が認められた(Packer M et al. N Eng J Med 2001;344:1651-1658)。
同試験では、カルベジロール群で心不全などによる入院率も有意に減少しており、患者の罹患率に対しても好影響を与えることが示されている(Packer M et al.N Eng J Med 2002;106:2194-2199)。
これらの大規模臨床試験ではβ遮断薬が突然死を抑制することも示されている。
こうしたエビデンスに基づき、β遮断薬は収縮機能の低下した有症状の慢性心不全治療において、禁忌がないかぎり必須の薬剤であり、特に、NYHAⅢ、Ⅳでその予後改善効果が大きい。
NYHAⅠ(無症候性)でも大規模臨床試験CAPRICORNにおけるエビデンスがあり(Dargie HJ.Lancet 357:1385-1390,2001)、心筋梗塞の既往があれば投与すべき
である(表1)。

実際、我が国の「慢性心不全治療ガイドライン」(2005 年改訂版)や米国の「ACC/AHA心不全ガイドライン」
(2005年改訂版)でも、無症候性(前者はNYHAI、後者
はstage B)からのβ遮断薬の早期投与が推奨されている
(図1)。
図1 慢性心不全のステージ別治療 
日常臨床の経験において、心筋梗塞既往に限らず、NYHAIからの投与により後述するようなリバース・リモデリングが期待できる。
拡張型心筋症 (DCM)に対するβ遮断薬療法の有用性
は高い。
ハイリスク高血圧患者や拡張機能不全では、その有用性はまだ確立はしていないが、特に、狭心症・心房細動・心肥大の合併例で期待できる。
NIKKEI MEDICAL 2007.12 版権 日経BP社
<コメント>
NYHAⅠ(無症候性)という言葉を聞く度にドキッとします。
OO年前の大学在局時代のこと。
ある循環器系の全国学術集会での同僚の発表の際の出来事。
心不全と体液因子に関する発表で、フロアから NYHAⅠは心不全といっていいのかという鋭い質問が演者に。
同僚は壇上で立ち尽くしてしまいました。
私にとっても今でもトラウマになっています。
アップレギュレーションの考え方から、気管支喘息に選択性の少ないベータ遮断剤を少量使用するという方法は呼吸器領域でないのでしょうか。
もちろん非発作時のことですが。
またリンパ球のベータ受容体数の測定は、結局のところ臨床には応用されなかったようです。
他に 「井蛙内科/開業医診療録」
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