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冠動脈疾患患者さんの予後を考える
~ ARBによる降圧療法への期待 ~ (後編)
金谷
私たちが現在診療している多くの患者さんは,すでに心血管イベントを起こしており,2次予防治療が主体です。
今後は冠動脈疾患の長期予後を考慮すると,動脈硬化の進展予防を考慮した1次予防がさらに注目されるでしょう。
すでに,高血圧や糖尿病の発症早期から薬物介入することの重要性が示された試験も報告されています。
例えばTROPHY試験では,pre-hypertensionの時期からRA系が活性化していることが示されました。
RA系が活性化した状態では,動脈硬化が進行していきますので,高血圧発症早期から薬物介入することが大切です。
木村
より軽症の段階から薬物介入したほうが,治療効果も大きいと考えます。
治療期間が長くなるので,コンプライアンスのよい薬でなければならず,費用対効果も加味して総合的に薬剤を選択し,20年30年先を見据えた1次予防治療が大切でしょう。
角田
2次予防治療では,全身の包括的な治療が必要です。COURAGE試験では,薬物療法をしっかりと行えばPCIを追加施行しても低リスクの安定虚血性心疾患の生命予後が変わらないとし,薬物療法の重要性を示しています。
この試験では5年後の血圧値を,122/70mmHgまで下げており,私たちが考えている以上に血圧は厳格にコントロールしなければいけないのかもしれません。
また,RA系抑制薬は約80%に用いられています。
欧米・日本ともガイドラインにはACE阻害薬が第一選択薬に位置づけられ,CAD患者さんにはRA系抑制薬を用いることが標準治療になっています。
昨年発表されたHIJ-CREATE試験でも,標準治療群の71%にACE阻害薬が投与されていました。
このような状況下でも,カンデサルタン群は腎機能障害(Ccr<60)患者さんの心血管系イベントの発症を21%有意に抑制し,糖尿病の新規発症を63%抑制しました。
忍容性を考えても,ARBが今後のCAD患者さんの降圧療法の中心になると考えています。
また,運動療法がPCIよりも予後を改善することを示した試験もあります。
したがって,CAD患者さんに運動の重要性を認識していただき,心臓リハビリテーション等により運動の機会を作ることも必要でしょう。
いずれにしろ,PCIはあくまでも局所の治療ですので,長期予後を考えると全身の包括的な治療が必要です。
熊本大学の調査では,十分な薬物治療を行ったCAD患者さんの予後規定因子は,心機能の低下,糖尿病,CKDでした。
それぞれエビデンスに基づいて,心機能低下に対してはRA系抑制薬やβ遮断薬,腎機能にはARB,糖尿病にはピオグリタゾンを中心に用い,私たち循環器科医も血圧・血糖・脂質の管理を積極的に行っていくべきだと思います。
山口
HIJ-CREATE試験は,日本人を対象に日本の医療制度の下で実施しているので,私たちの日常診療に非常に反映しやすい試験だと思います。
現在,私たちが実施しているDES留置例の予後を検討する4C trialにも大きな期待を寄せています(図5)。
これまで,1,000例規模でDES留置例の予後を前向きに検討したtrialは報告されていませんので,非常に意義があると思います。
前向き研究では,より精密に詳細なデータを集めることが可能であり,DESのメリット・デメリット以外にも,イベント発症率や血栓症も含め,そこから派生する日本人オリジナルの多くのデータが得られることと期待しています。
年齢別,リスクファクター別に解析することにより,日本の現状を知ることもできるでしょう。
小川
本日は,インターベンションを専門とする先生方から局所の治療だけでなく,標的以外の血管,さらには全身管理の重要性をご指摘いただきました。非常に意義深い座談会であったと思います。
出典 Medical Tribune 2008.9.25
版権 メディカル・トリビューン社
<診察椅子>
ここ数週間前から、頚動脈エコー検査を毎日のようにやっています。
対象の多くは以前から通院していただいている患者さんです。
http://blog.m3.com/reed/20080930/1
毎日のように「知らぬが仏」だった頚動脈病変が見つかり、経験も少ないため思案投げ首です。
要するに、脳外科への紹介がどのあたりからかがわからないからです。
急いで勉強が必要です。

85歳 男性
7
79歳 女性
77歳 男性
<自由時間>
m3.comでは「裁判員制度」についてはあまりとりあげられないようです。
以前に他のブログでとりあげてみましたが、人を裁きたくないという信念を一方的に国が強制的に踏みにじむことに強い違和感を持っていました。
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy/archive/2008/01/20
正直、開業医として休診して出廷することも嫌です。
ところが、昨日所属医師会支部で「開業医は裁判員の対象からはずれる(免除)」という通達がありました。
これって本当でしょうか。
本当なら久しぶりのグッドニュースです。
しかし、それならば免除になる職業は多いはずです。
結局、暇(?)な人が狩り出されるということでしょうか。
<きょうの一曲> "In My Life"
John Lennon Tribute In My Life
http://jp.youtube.com/watch?v=6d8VX8tcgao&feature=related
In My Life a Tribute to George Harrison 1943-2001
http://jp.youtube.com/watch?v=bpLskOEZtEw&feature=related
Jose Feliciano - In My Life ( Beatles - Lennon / McCartney)
http://jp.youtube.com/watch?v=qnOu2lKss14&feature=related
BEATLES - In my life (Acoustic Guitar)
http://jp.youtube.com/watch?v=gqyg1jD2zQc&feature=related
DAVE MATTHEWS - IN MY LIFE - THE BEATLES COVER
http://jp.youtube.com/watch?v=k-YIizsMrSE&feature=related
In my life -Nirvana Tribute
http://jp.youtube.com/watch?v=USeL8KIoWBA&feature=related
In My Life - The Beatles Acoustic Trio - Live -
http://jp.youtube.com/watch?v=27Wx32sS4hQ&feature=related
In My Life (The Beatles) - Allison Crowe performs live
http://jp.youtube.com/watch?v=4hHNUVo9eEM&feature=related
In My Life (The Beatles)
http://jp.youtube.com/watch?v=BT3Q_BIIRJM&feature=related
The Beatles - In My Life
http://jp.youtube.com/watch?v=Ym0x3vTw6yc&feature=related
The Beatles - In My Life (karaoke z www.musicer.net)
http://jp.youtube.com/watch?v=VGpor_gY8hs&feature=related
Beatles - In My Life - karaoke www.timomusic.ch
http://jp.youtube.com/watch?v=EgNjcjk74Zc&feature=related
Beatles - In My Life - karaoke www.timomusic.ch
http://jp.youtube.com/watch?v=EgNjcjk74Zc&feature=related
The Beatles - In My Life (karaoke z www.musicer.net)
http://jp.youtube.com/watch?v=VGpor_gY8hs&feature=related
Sing Along w/ Ramiele Malubay "In My Life" Karaoke
http://jp.youtube.com/watch?v=1vtCLEk6M1s&feature=related
(ダウンロードに時間がかかります)
読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。
他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
「井蛙内科/開業医診療録(2)」
http://wellfrog2.exblog.jp/?2008.5.21~
「井蛙内科/開業医診療録」~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/
があります。
国内での高齢化社会化や食生活や生活習慣の変化によるメタボリックシンドロームの増加により,冠動脈疾患の増加が危惧されています。
冠動脈疾患患者さんの長期予後を改善するための降圧療法はいかにあるべきか。
日本人のエビデンスに基づいた討論がされた座談会の記事で勉強しました。
冠動脈疾患患者さんの予後を考える
~ ARBによる降圧療法への期待 ~ (前編)
司会:
熊本大学循環器病態学 教授
小川 久雄 氏
出席者(発言順):
石川県立中央病院 副院長
金谷 法忍 氏
新東京病院 副院長 兼 心臓血管センター長兼熊本大学心血管治療先端医療講座 客員教授
中村 淳 氏
広島市立安佐市民病院循環器科 主任部長
土手 慶五 氏
日本医科大学循環器内科 講師
高野 仁司 氏
横浜市立大学附属市民総合医療センター心臓血管センター教授
木村 一雄 氏
天陽会中央病院循環器科 部長
山口 浩士 氏
熊本大学心血管治療先端医療講座 特任准教授
角田 等 氏
デバイスの変化は予後を改善したか?
小川
近年,生活習慣の変容や高齢化に伴い,冠動脈疾患(CAD)患者さんの増加が懸念されています。
一方で,わが国のCAD治療は,1981年にPTCAが初めて行われて以降,1993年にはステント,2004年にはDrug Eluting Stent(DES)が認可されるなど,著しく進歩しています。
さらに,RA系抑制薬やチアゾリジン,抗血小板薬,スタチンといった,CAD治療にエビデンスを有する薬剤も登場し,CAD患者さんの再発抑制に対して,器具,手技,薬物療法ともに充実しつつあります。
DESの登場により,従来型ステント(BMS)の問題点であった再狭窄は大きく減少しましたが,長期予後は変わらないことが報告され,新たな問題となっています。
そこで本日は,CAD患者さんの長期予後に関する現状と課題について,循環器を専門とされる先生方からご意見を伺いたいと思います。
金谷
デバイスの進歩により冠インターベンション(PCI)の成功率や安全性が向上した結果,院内死亡率は著しく改善し,また,ハイリスクなCAD患者さんへのPCIも可能になってきました。
しかし,長期予後はDESとBMSで差はなく,さらには,PCIよりも冠状動脈バイパス手術(CABG)のほうがよいとの報告もあります。
このことは,責任病変の治療だけでなく,患者さんの長期予後を改善する全身管理をどのように行うかが重要な課題であることを示しています。
中村
長期予後に大きくかかわる因子は,糖尿病や慢性腎臓病(CKD)だと考えています。
糖尿病を有すると,デバイスの種類にかかわらず予後が悪いこと(図1),また,わずかな腎機能の低下がPCI後の予後を悪化させることが示されているからです。
また,DES特有の遅発性ステント血栓症(VLST)も大きな問題だと考えています。
VLSTの発症率は約0.3%と高くありませんが,その半数が重篤な心血管系イベントを発現し,死亡率が高いのです。
DESにより責任病変における再狭窄の抑制を期待できますが,デメリットも考慮し,症例に応じてデバイスを選択する必要があります。
また,PCIやCABGなどの再灌流療法は局所の治療であり,責任病変以外のイベントを抑制するため,全身血管のコントロールを考えていかないといけないと考えています。
土手
糖尿病はCAD発症のリスク因子ですが,一方でCAD後に糖尿病を発症する方が多いことも事実です。
CAD患者さんは,糖尿病発症リスクが高いと認識し,フォローアップのときにはHBA1Cに注意する必要があるでしょう。また,癌の発現にも留意が必要です。
私たちの病院では,10年間でCAD患者さんの約12%が大腸癌や肺癌,前立腺癌などの悪性腫瘍を発症しています。日本人CAD患者さんの心臓死は40%程度であり,残りは非心臓死であることからも,心臓以外にも目を向ける必要があります。
血糖値,腎機能,さらには癌にも留意することが,日本人のCAD患者さんの長期予後を改善するために重要なポイントになると考えています。
高齢化,メタボリックシンドロームの増加をどう考えるか?
小川
近年,わが国では高齢者や若年者のCAD発症が増加しています。
高齢者は,全身の機能が低下していることが多く,また,若年者は肥満を基盤にリスク因子を重積したメタボリックシンドローム(MetS)の方に多く発症しています。高齢者と若年者のCAD患者さんの予後改善には何が大切でしょうか?
高野
私たちは,急性冠症候群(ACS)を発症した職業運転手の患者背景を年齢別に検討しました。
コントロール群では,高血圧や糖尿病,脂質異常症などの生活習慣病が加齢とともに増加しますが,職業運転手では,これらのリスク保有率は若年者で最も高く,しかも複数のリスクを保有している方が多いのです(図2)。
近年,若年者で増加しているACSは,リスク因子の管理が不十分であることが原因で発症していることを示唆する成績だと考えます。
一方,CAD後の院内死亡を逃れた80歳以上の超高齢患者さんの予後を検討したところ,5年生存率は60%を超え,予後は決して悪くありませんでした。
そして,予後を規定する因子は,多枝病変と腎機能低下でした。さらにQOLも検討したところ,左室駆出率の低下がQOLを悪化させました。
高齢者であっても多枝病変にしないために,生活習慣病の管理を徹底すること,その際に腎機能と心機能に留意することが大切でしょう。
木村
高齢者の健康寿命を延ばすためには,寝たきりを防がなくてはいけません。
寝たきりの原因疾患のトップは脳血管障害ですが,特に日本人は,心疾患よりも脳血管疾患による死亡が多いことからも,最大のリスク因子である血圧をしっかりとコントロールする必要があります。
その際,脳血管疾患にエビデンスのある薬剤を用いて治療することが重要だと認識しています。
山口
高齢者は,腎機能低下例が多く潜在していることを念頭に治療に臨むべきでしょう。
腎機能低下は,心血管系イベントのリスク因子になるだけでなく,造影剤腎症のリスクでもあります。
この心腎連関の悪循環を断ち切るためにも,そのKey Factorとなるアンジオテンシン II をしっかりと抑え,臓器保護を念頭に置いた血圧管理が望まれます。
CASE-J試験でカンデサルタンは強い降圧を示し(図3),70歳以上の高齢者,左室肥大,心疾患,腎機能低下(Ccr<60)を有する患者さんの腎イベントの発現・腎機能悪化リスクを大きく低下し(図4),さらに糖尿病の新規発症も抑制しました。
リスク因子の重積は,CADの病変数を増加,重症化させることからも,この成績は非常に意義があると考えます。
CADの1次予防・2次予防には,血圧,血糖,血清脂質等のリスク因子を重積させないことが重要で,各因子を厳格にコントロールしなければいけません。
同時に,それが冠動脈あるいは脳血管かもしれませんが,全身の血管に存在する不安定プラークを安定化させなければいけません。
そのためには,内服薬で,特にARB,チアゾリジン,スタチン,抗血小板薬等の薬剤を用いて,個々の患者さんの病態に合わせて厳格に管理することが不可欠でしょう。 (続)
出典 Medical Tribune 2008.9.25
版権 メディカル・トリビューン社
<きょうの一曲> いとしのエリー
サザンオールスターズ - いとしのエリー
http://jp.youtube.com/watch?v=1IBwt6_J_6s&feature=related
サザンオールスターズ いとしのエリー
http://jp.youtube.com/watch?v=bFSb_HqdsVQ&feature=related
Itoshi no Elly ~いとしのエリー~
http://jp.youtube.com/watch?v=ptTtkkrJ57k&feature=related
いとしのエリー / SOUTHERN ALL STARS
http://jp.youtube.com/watch?v=2Lt4ICZnL44&feature=related
いとしのエリー 1979
http://jp.youtube.com/watch?v=1oWNd9_F61o&feature=related
サザンオールスターズ いとしのエリー
http://jp.youtube.com/watch?v=bFSb_HqdsVQ&feature=related
いとしのエリー
http://jp.youtube.com/watch?v=sSTS8jMSWC4&feature=related
いとしのエリー 江ノ島 Itoshi no Elly Eno Shima Island
http://jp.youtube.com/watch?v=d_3olD2afFQ&feature=related
サザンオールスターズ~いとしのエリー~
http://jp.youtube.com/watch?v=n8O6PdEiwo0&feature=related
Ray Charles レイ・チャールズ - Ellie My Love (いとしのエリー)
http://jp.youtube.com/watch?v=YWcDI4TU8k8&feature=related
桑田佳祐「いとしのエリー」~音楽寅さんより
http://jp.youtube.com/watch?v=eQKhcrurZxs&feature=related
<自遊時間>
私には医学部6年生の子供がいます。
6年生になってから講義や実習がありません。
卒業試験があるだけです。
最近の医学部はそんな風でしょうか。
私立医大なら「授業料返せ」といったところでしょうし、文部科学省として1年間まるで講義や実習なしで試験だけというカリキュラムを認めていることが不思議です。
自分の6年生の時を思い起こそうとしましたが、遠い昔のことで授業があったかどうか思い出せません。
しかし、どう考えても授業がなかったとは思えないのです。
そんな我が子から今日質問が浴びせられました。
「DCMでⅢ音、HCMでⅣ音が聴取されるのはどうして?」
<関連サイト>
閉塞性肥大型心筋症
http://akimichi.homeunix.net/~emile/aki/html/medical/circulatory/node134.html
拡張型心筋症
http://akimichi.homeunix.net/~emile/aki/html/medical/circulatory/node132.html
臨床実習
http://www.medic.mie-u.ac.jp/student/sinnonn3.html
OSCEなんてこわくない
http://sec.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2000dir/n2392dir/n2392_11.htm
聴診
http://ja.wikipedia.org/wiki/聴診
(Ⅲ音、Ⅳ音について比較的詳しく書かれています)
心不全の発生機序
http://blog.m3.com/reed/20080301/1
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ふくろう医者の診察室
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があります。
ピオグリタゾン の冠動脈硬化進展抑制効果について復習してみました。
ピオグリタゾンは冠動脈硬化の進展抑制効果が高い
2型糖尿病患者における冠動脈アテローム硬化の進展に対するピオグリタゾンとグリメピリドの比較:PERISCOPE無作為化対照試験
Comparison of pioglitazone vs gIimepiride on progression of coronary atherosclerosis in patients with type 2
diabetes: the PERISCOPE randomized controlled trial
JAMA Nissen SE et al. 2008;299:1561~1573
■背景
糖尿病の薬物療法で、冠動脈アテローム硬化の進展抑制が示されている薬物はない。
経口血糖降下薬としては、インスリン分泌促進薬のスルホニル尿素(SU)薬やインスリン感受性改善薬のチアゾリジン系薬剤が広く用いられている。
■目的
2型糖尿病患者で、インスリン感受性改善薬ピオグリタゾンとインスリン分泌促進薬グリメピリドの冠動脈アテローム硬化の進展に及ぼす影響を比較検討する。
■研究デザイン・設定・参加者
略
■結果
略
■結論
冠動脈疾患を合併する2型糖尿病患者において、ピオグリタゾンはグリメピリドと比較して冠動脈アテローム硬化の進展を有意に抑制した。

「Heart and Kidney - 私たちの近くにあるもの」
制作 Heart and Kidney制作委員会
(シオノギ製薬 配布物)
以下は
九州大学大学院医学研究院病態機能内科学の岩瀬正典准教授の解説です。
ピオグリタゾンは心血管疾患の発症抑制効果が期待される薬剤
近年、動脈硬化治療薬の評価において、血管内超音波法(IVUS)による冠動脈の動脈硬化プラークの測定が広く用いられるようになりつつある。
例えば、強化スタチン療法が動脈硬化プラークを退縮させるという試験成績(REVERASL、ASTEROID試験が報告される一方、ACAT(acyl-CoA:cholesterol O-acyltransferase)阻害薬剤やCETP(cholesteryl ester transfer protein)阻害薬剤が必ずしも冠動脈プラークの退縮に有効でないことが報告され、IVUSを用いて直接動脈硬化プラークを評価することの重要性が明らかになってきている。
本論文のPERISCOPE試験は、冠動脈疾患を伴う2型糖尿病患者にピオグリタゾンまたはグリメピリドを18カ月間投与し、その前後でIVUSを用い冠動脈プラークのサイズの変化を検討した研究である。
ピオグリタゾンはグリメピリドと比較して体重を2kg多く増加させたが、HbA1cを0.2%、インスリンを6μU/mL、中性脂肪を13mg/dL、収縮期血圧を2mmHg、高感度CRPを0.06mg/dL低下させ、HDL コレステロールを5mg/dL上昇させた。
%atheroma volume(PAV)はグリメピリドで0.73%有意に上昇したが、ピオグリタゾンでは変化なく(normalized total ahheroma volume[TAV]は有意に減少)、ピオグリタゾンはグリメピリドと比べ冠動脈プラークの進行を抑制した。
しかし、”atheroma volume in 10-mm most diseased segment"はグリメピリドも有意に減少させ、ピオグリタゾンとの間に有意差を認めなかった。
心筋梗塞は冠動脈不安定プラークの破綻が原因で起こるが、PERISCOPE試験ではプラー クの性状は検討していない。
IVUSで測定されるプラークサイズと心筋梗塞発症の関連は十分には証明されておらず、最終的にはイベント抑制、すなわち、心筋梗塞の発症を抑制することを示すのが今後の課題である。
2型糖尿病患者に動脈硬化性疾患(心筋梗塞)が好発するのは、欧米と比べ心筋梗塞の発症数が絶対的に少ないわが国においても明らかである。
特に糖尿病患者では非糖尿病患者と比べ冠動脈の多枝病変や石灰化病変、無痛性心筋梗塞や心不全の合併が多く、予後が不良である。
2型糖尿病患者の治療で用いられる経口血糖降下薬が心筋梗塞の発症を抑制するかについては多くの研究が行われてきた。
SU薬トルブタミドを用いた1960年代のUGDP研究では心筋梗塞の発症をむしろ増加させた。
90年代のUKPDS研究ではSU薬は心筋梗塞の発症を増加させなかったが、抑制もしなかった。
しかし、ビグアナイド薬のメトホルミンが初めて肥満2型糖尿病において心筋梗塞の発症を抑制することが報告された。
2005年に発表されたPROactive試験でピオグリタゾンは血管障害複合エンドポイントを有意に抑制しなかったが、サブ解析では心筋梗塞の再発を有意に抑制すると報告され、Chicago研究でもピオグリタゾンがグリメピリドに比べ18カ月後の頚動脈内中膜厚(IMT)の増加を有意に抑制することが示された。
ところが、もう1つのチアゾリジン系薬剤であるロシグリタゾン(わが国では未発売)がメタアナリシスによって有意に心筋梗塞の発症を増加させるという研究結果が2007年に発表され、さらに2008年に入りACCORD試験で目標HbA1cが6%以下の強化治療群では標準治療群に比べ心血管死が増加したというショッキングな発表がなされた。
この強化治療群の90%以上にロシグリタゾンが投与されていた。
ロシグリタゾンとピオグリタゾンは同じチアゾリジン系薬剤に属するが、前者はLDLコレステロールを増加させることから、ロシグリタゾンによる心筋梗塞の増加はチアゾリジン系薬剤のクラス効果ではなく、薬剤特異的と考えられている。
このように経口血糖降下薬と心筋梗塞をめぐる混沌とした状況の中、ピオグリタゾンは心血管疾患の発症を抑制することが期待される薬剤である。
わが国の2型糖尿病患者でピオグリタゾンが心筋梗塞の発症を抑制するか、今後の検討が待たれる。
出典 MMJ 2008Vol.4 No.9
版権 毎日新聞社
<番外編>
10月の終わりに、ピオグリタゾンのシンポジウム(東京)に出席を予定しています。
プログラムを見るかぎりでは循環器科とはあまり関係なさそうですが、かえって知らないことが聴けるような気がします。
CKDなどもそうですが、循環器科とかかわりのある他領域(分野)の講演会は意外と面白いものです。
<きょうの一曲> ジェットストリーム(MR. LONELY)
ジェットストリーム(MR. LONELY)城達也
http://jp.youtube.com/watch?v=GNJjki-PCRc
ジェットストリーム 城達也 (夜間飛行・字幕)
http://jp.youtube.com/watch?v=TzCjwjERoxo
ジェットストリーム
http://jp.youtube.com/watch?v=drHHmqr5TeM&feature=related
ジェットストリーム 城達也 (昼間飛行)
http://jp.youtube.com/watch?v=qinyQg3SHpc&feature=related
ジェットストリーム 城達也 (夜間飛行)
http://jp.youtube.com/watch?v=H23Z3wnAjG4
JET STREAM ミスターロンリー(MR. LONELY)城達也
http://jp.youtube.com/watch?v=cERZqzC2Mwk&feature=related
JET STREAM 夢幻飛行 城達也
http://jp.youtube.com/watch?v=eI5Rartoy1k&feature=related
城達也 ジェットストリーム (エンディング)
http://jp.youtube.com/watch?v=LGcGKVZys7E
<番外編>
笑える!機内放送
http://jp.youtube.com/watch?v=kLF7ShCrt_c&feature=related
ヘタクソすぎる着陸
http://jp.youtube.com/watch?v=isU73otTVWA&feature=related
超低空でエアバス旋回すごすぎてワラタ
http://jp.youtube.com/watch?v=oM-XTKpCeEU&NR=1
超危険な旅客機の着陸
http://jp.youtube.com/watch?v=L8vmEIaMOqU&NR=1
A collection of plane crashes「航空機墜落集」
http://jp.youtube.com/watch?v=8xEWzRqhLc0&feature=related
飛行機事故24連発
http://jp.youtube.com/watch?v=KEYVoA5_B1w&feature=related
読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。
他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
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「井蛙内科/開業医診療録」~2008.5.21
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があります。
特異的だが高頻度のSNPの組み合わせが
心血管疾患の独立危険因子に
〔ニューヨーク〕ハーバード大学(ボストン)のSekar Kathiresan博士らは,5,414例を対象に,特異的であるが頻度の高い9個の遺伝子座の一塩基多型(SNP)の組み合わせで構築 される遺伝子型スコアが,心血管疾患リスクに関与するとNew England Journal of Medicine(2008; 358: 1240-1249)に発表した。
コレステロール値に関連
これまでにも,頻度の高いDNA配列の変異と血中のLDLコレステロール(LDL-C)およびHDLコレステロール(HDL-C)とを関連付ける研究は多数あったが,今回の研究では,ベースラインでの脂質値などの共変量で補正したモデルにおいて,遺伝子型スコアが心血管疾患発症と関連付けられた(P<0.001)。
さらに9個のSNPすべてにおいて,LDL-CまたはHDL-Cとの関連性が再現された。
Kathiresan博士らは「LDL-CまたはHDL-Cの変化と関連のあった9 個のSNPの遺伝子型スコアは,心血管疾患発症の独立した危険因子であった」と述べている。
同博士らは9個の遺伝子座の9個のSNPを調査した。追跡期間の中央値は10.6年で,期間中238例に初発心血管イベントが認められた。
その結果,これらのSNPは,初回の心筋梗塞(MI),虚血性脳血管障害,冠動脈疾患(CHD)による死亡リスクと独立した関連性があると判明した。
MIや脳血管障害がなく,多変量Cox回帰分析を行うことができた4,232例のうち,男性137例と女性101例が心血管イベントを発症した(MI 131例,脳梗塞 96例,CHDによる死亡 11例)。
受信者動作特性(ROC)曲線下面積の測定法の1つであるC統計を用いた評価では,遺伝子型スコアによりリスクの識別は改善しなかった。
しかし,個々の被験者における臨床的なリスクの再分類については,遺伝子型スコアによって,標準の臨床的因子と比べてやや改善した。
米国コレステロール教育プログラム成人治療パネル(ATP)IIIで中間リスクに分類された者のうち26%は,遺伝子型スコアを他の共変量に追加したところ,それよりも高い,もしくは低いリスクに再分類された。
当初,ATP IIIで中間リスクに分類された者は9%であった。
脂質値を超えるリスク情報
今回の知見からは以下の3つの重要な原理が明らかにされた。
(1)LDL-CとHDL-Cのような連続的で正規分布の定量的特性については,複数の高頻度アレルが特性の変化に影響する。各アレルが及ぼす影響は小さい
(2)各SNPが及ぼす影響は小さいが,複数のSNPの組み合わせで見ると,全体として脂質値にかなりの影響を及ぼす可能性がある
(3)脂質に関連するSNPは,心血管系リスクに関して脂質値を超える情報をもたらす可能性がある
(3)は特に重要である。
実際の脂質値がもたらす情報は,脂質関連SNPが与える情報と同じではないのはなぜか。
この疑問を説明しうる理由は2つある。
1つは,脂質値の測定が各種の一過性でランダムな因子の影響を受けるのに対して,遺伝子型は経時変化がなく,1回で正確に測定することが可能で,生涯にわたり脂質値に影響を及ぼしうること。
もう1つは,SNPはLDL-CまたはHDL-Cとは無関係の機序により,アテローム発生に影響する可能性があることである。
Kathiresan博士らは「将来は,MIリスクに直接関係するLDL-CまたはHDL-C関連SNPがほかにも同定されるであろう。
そうなれば,SNPパネルがリスク判定や治療標的の特定に有用であることが実証される可能性がある」と述べている。
加重スコアの検討も
Kathiresan博士らは「今回の遺伝子型スコアについては,9個の好ましくないアレルにそれぞれ等しい重みを付けたが,実際にはコレステロールに対する影響力が比較的大きいアレルもあれば,小さいアレルもあるようだ」と説明。
さらに「リスクに対する影響はLDL-CまたはHDL-Cに対する各アレルの寄与と,それらの値および心血管イベントとの関係に基づき,各アレルに重み付けをすることによって,より正確に推定される可能性がある」と述べている。したがって,将来はこの方法での研究も進められる可能性がある。
また,同博士らは「各SNPの心血管疾患リスクに対する影響とコレステロールに対する影響は,正相関しないかもしれない。
他リスク分類法のほうが,今回の研究で用いた方法よりも妥当であることが判明する可能性もある」とも指摘している。
遺伝子型スコア増でLDL-C上昇,HDL-C低下
今回の研究では,遺伝子型スコアの増加とともに,LDL-C値が152mg/dLから171mg/dL(3.9mmol/Lから4.4mmol/L)に上昇し,HDL-C値は60mg/dLから51mg/dL(1.6mmol/Lから1.3mmol/L)に低下した。
遺伝子型スコアは,患者の各SNPについて,患者が有する好ましくないアレルを計算して構築した。
9個のSNPはそれぞれゼロ,1個または 2個の好ましくないアレルを伴っていた。遺伝子型スコアが9以下の患者(43.2%)と比べて,スコアが11以上の患者(33.6%)は心血管イベントリスクが1.63倍高かった(95%信頼区間1.21~2.19,P=0.001)。
各SNPは,個々の関連についての文献報告とゲノムワイド関連研究に基づいて選択した。
5,414例全例が欧州系人種であると自己申告した。対象のSNPのなかには,他の人種集団では多型でないものもある。例えば,PCSK9のrs11591147は,アフリカ系人種では多型性が認められない。
5,414例の平均年齢は58±6歳で,59%は女性であった。脂質低下療法を受けている患者は2.3%にすぎず,MIまたは脳卒中の既往を有する者はわずか2.3%であった。
出典 Medical Tribune 2008.9.11
版権 メディカル・トリビューン社

「Heart and Kidney - 私たちの近くにあるもの」
制作 Heart and Kidney制作委員会
(シオノギ製薬 配布物)
<コメント>
きょうの内容はほとんど理解できませんでした。
何よりも遺伝子解析の結果、が実際の臨床場面でどのように役立てられるのかということがわかりません。
そして
「受信者動作特性(ROC)曲線下面積」
「C統計」
「高頻度アレル」
もよくわかりません。
<関連サイト>
一塩基多型(SNP : Single Nucleotide Polymorphism)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%80%E5%A1%A9%E5%9F%BA%E5%A4%9A%E5%9E%8B
SNPのページ
http://members.at.infoseek.co.jp/bunseiri/
千葉大学大学院 循環病態医科学 ~遺伝子解析~
http://www.m.chiba-u.ac.jp/class/cardio/data/iryo/idenshi.html
(以下、このサイトから引用)
遺伝子多型とテーラーメイド医療
テーラーメイド医療は、個々の患者の遺伝的体質に合わせた処方・治療計画であり、薬物への反応性に対する患者の個体差を考慮した新しい考え方です。
上述した個人個人での薬物に対するresponseの違いの原因として、病態・栄養・生活パターンなどの環境因子とは別に、個人間で身体に発現している蛋白質の量や質が微妙に異なることがあり、これらの大部分は遺伝子の微妙な違いによる遺伝的因子によるものである。
遺伝的因子には人種差も含まれ、個人差ともいうが、動物でも種差や個体差があることも経験することである。
個人個人で微妙に異なる反応性は遺伝子配列の違い(遺伝子多型、Polymorphism)によるものです。
同じ遺伝子のDNAでありながら、個人個人で塩基配列が微妙に異なる場合、きわめてまれな違いはmutation変異ということになるが、一方、人口の1%以上になるものは遺伝子多型と呼ばれています。
これは一塩基多型(single nucleotide polymorphism:SNP)、挿入(Insertion)、欠失(Deletion)、繰り返し配列(マイクロサテライト)の個数などによって決定されますが、ヒトゲノムは30億bp程度から構成され、99.9%は同一ながら、0.1%程度は異なっていることから、300万bp程度に変異があると考えられます。
SNPなどが疾患遺伝子であることは少ないが、病態形成を修飾したり、治療反応性に影響を与えているものと考えられています。
循環器疾患においても多くの遺伝子多型が明らかにされており、将来的には患者の層別化において重要な情報になるものと考えられます。
現状では、遺伝子多型と、薬物に対する反応性の違いに関してはevidenceが多くはありません。
SNPは現在では膨大なデータベースがありますが、どのSNPが具体的に薬物代謝の機能変化と関連するか、疾患の予後や治療法の選択と関連するのかはほとんどわかっていません。
今後、 SNPを含めた多くの遺伝子多型の中から適切なマーカー選択し、診断・治療・予防に役立てていかなければなりません。
特に、循環器疾患は、死亡原因の40%を占める重要な疾患であり、テーラーメード医療の進歩によって、効果のない薬物の使用や副作用が減少することは、膨張する医療費の抑制にもつながるという医療経済学的な効果もあります。
また、高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病の大部分も、一つの遺伝子の異常によって生じる単一遺伝性疾患というよりは、遺伝情報の変化があっても必ずしも発症せず、生活習慣などの因子に修飾されて発症すると考えられています。
Detection, Evaluation, and Treatment of High Blood Cholesterol in Adults (Adult Treatment Panel III)
http://www.nhlbi.nih.gov/guidelines/cholesterol/index.htm
米国高脂血症治療ガイドラインATPIII
http://www.gik.gr.jp/~skj/HL/atp3.php3
心血管疾患の年齢という要因
http://intmed.exblog.jp/6861338/
C統計(C Statistic)について触れられている。
ROC解析の概要
http://misg.umin.ac.jp/netconf/netconf_3/netconf_3_roc1.html
ROC(receiver operating characteristic; 受信者動作特性)解析とは,医用画像を観察者の視知覚系に刺激として入力し, それに対する反応(出力)からROC曲線を求め,その曲線を解析し,信号(病変)検出能や,診断能を評価するものです。 現在,ROC解析は,医用画像システムの信号検出能・診断能を評価する最良の方法として確立され,世界中で活発に利用されております。
[PDF] ROC Curve
http://www.clg.niigata-u.ac.jp/~tsai/home-page/lecture/617-ikai.pdf
スライド形式で解説。
対立遺伝子
http://www.nch.go.jp/genetics/yougo/yougo-allele.htm
対立遺伝子 アレル (続き)
http://www.nch.go.jp/genetics/yougo/yougo-allele2.htm
色体上、あるいは連鎖地図上の、同一の座(座位)を占めることができる遺伝構成要素が複数存在する場合、その一つの型をいう。
最近では、塩基配列レベルでalleleを規定することが多い。訳語に 遺伝子 とあるが、alleleには 機能単位としての gene の概念は(必ずしも)伴わないことに注意が必要。
遺伝子はどのように疾患に影響するのか?
http://www.shikoku-cc.go.jp/kranke/support/consul/book/page07.html
遺伝子多型の概要
http://www.signpostcorp.com/pdf/snp070131_ver.1.0.pdf
<きょうの一曲>
Ma solitude
http://jp.youtube.com/watch?v=qSZKO5K2eTE&feature=related
読んでいただいてありがとうございます。
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ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
「井蛙内科/開業医診療録(2)」
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「井蛙内科/開業医診療録」~2008.5.21
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レニン・アンジオテンシン系阻害薬を再考する
Evidence-Based Coronary Interventionを目指して
―これからのPCI専門医に求められる再発抑制治療を考える―(続)
PCI患者の生命予後を改善する内科的治療:
ACE-Iの降圧と独立した冠動脈イベント抑制効果
では,心筋梗塞の二次予防には何が必要か?
図2に示すように,PCIは冠動脈局所の治療,CABGはエリアの治療,薬剤は全身的治療と位置付けられる。
心筋梗塞既往例の生命予後に新規病変の発症が大きく影響しているという事実は,生命予後の改善に全身的治療が重要であることを示している。
PCI患者の薬物療法においてRA系阻害薬は重要な位置を占める薬剤だが,2006年のCirculationに「ARBは心筋梗塞の発症を増加させるのではないか」という衝撃的な論説が掲載された(Circulation 114:838,2006)。
その論旨は「ACE-IはARBよりも心筋梗塞と心血管死を低減するとのエビデンスがある以上,冠動脈イベントのリスクを低減するためには,ACE-Iを第一選択にすべきである」というものである。
この論説の翌年,降圧薬の大規模臨床試験のメタ解析を行っている世界的なプロジェクトBPLTTC(Blood Pressure Lowering Treatment Trialists'Collaboration)が,ACE-IとARBの心血管イベント抑制効果を検証するメタ回帰分析の成績を発表した。
解析対象となった大規模臨床試験は26試験(n=146,838)で,ACE-Iは17試験(n=101,626),ARBは9試験(n=45,212)であった。
解析にあたっては,臨床試験担当責任者から提供された個々の被験者の生データが使用されている。
果たしてその結果は,脳卒中および心不全に関してはACE-IとARBのイベント抑制効果に差がみられなかったものの,冠動脈イベント抑制効果はACE-Iが有意に優れるというものであった(図3)。
両者の差は,対照薬との降圧差(収縮期血圧)が0mmHgであっても,ACE-Iでは9%のリスク減少,ARBでは8%のリスク上昇として現れたことから,ACE-Iは「降圧と独立した冠動脈イベント抑制効果」をもつと考察されている。
このようにACE-Iが「降圧と独立した冠動脈イベント抑制効果」をもたらすメカニズムとしては,ブラジキニン(BK)-NO系,シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2),マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP),プラスミノーゲン・アクチベータ・インヒビター-1(PAI-1)など動脈硬化の進展に関与するさまざまな因子に対し多彩な作用が示唆されている(図4)。
特に最近では,MMPに対し"直接的な"活性阻害作用を有することも明らかにされている(図5)。
心筋梗塞の二次予防には,循環器内科医の総合力が問われる
ACE-Iと同様,ARBもエビデンスが増えてきた。
しかし,エビデンスにはその質に応じたレベルがあり,その代表的なものが米国保健政策研究局(AHRQ)による分類である(表2)。
この基準にあてはめると,BPLTTCは I aに分類されるエビデンスであり,ランダム化された大規模臨床試験はI bとなる。
また,ACE-IはARBに比べ薬価が安く,医療経済の面でもベネフィットが大きい降圧薬だが,わが国における2007年度の降圧薬市場が約1兆円にも上るなか,実にその半分をARBが占めている(図6)。
一方,わが国でのACE-Iの問題点として,通常量が欧米の約半分であることが挙げられよう。
ARBの通常量は国際的な標準投与量とほぼ同じである。ACE-Iの投与量を国際標準にまで引き上げることができれば,その臨床効果をさらに実感できるであろう。
われわれが血行再建の手段としてPCIを選択する理由は,CABGよりも治療成績がよいとか,狭心症の症状がなくなるとか,そういうことだけではなく,患者さんの生命予後を向上させることにある。
そのためには,同時に適切な内科的治療を行い,長期予後を包括的に管理することが重要である。
心筋梗塞の二次予防には,循環器内科医は総合力が問われている。
出典 Medical Tribune 2008.9.11
版権 メディカル・トリビューン社
<コメント>
文中の
「PCIは冠動脈局所の治療,CABGはエリアの治療,薬剤は全身的治療と位置付けられる。」
は私にとってまさに目から鱗(ウロコ)でした。
高リスク患者ではDESに固執しないようにということは
第30回欧州心臓病学会
高リスク冠動脈疾患でDESの非劣性は証明されず
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41370012&year=2008
でも発表されています(今週のMedical Tribune 2008.9.11)。
概略は
左冠動脈主幹部(LMT)病変および3枝病変を対象に,薬剤溶出ステント(DES)と冠動脈バイパス術(CABG)を比較したSYNTAX試験でDESの非劣性が証明できなかった
というものです。
内科循環器医は巨視的な見方で冠動脈疾患を把握し、ただの「風船屋(ステント主体の最近では何というのでしょうか。風船はいずれにしても使うわけです)」にはならないようにしなければなりません。
インターベンション以上に地道な内科治療が重要なことは、国内でもかなり以前から、前虎の門病院循環器病センター医長の西山先生(現 千代田区公庫ビル診療所 西山クリニック院長)が発表されていました。
今からして思うと勇気ある発表だったと思い出させられます。
読んでいただいてありがとうございます。
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(一般の方または患者さん向き)
「井蛙内科/開業医診療録(2)」
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「井蛙内科/開業医診療録」~2008.5.21
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があります。
当院では開業以来、「無散瞳眼底カメラ」で定期的に眼底検査をするように心がけて来ました。
無散瞳のため眼圧などを気にしなくて済むのはよいのですが、撮影の際の光量が大きいため患者さんは再検をいやがります。
そして眼科へ通院中の方も多く、実際は検査をなかなかさせていただけないのが実情です。
開業されている先生ならわかっていただけることですが、今やこちらが頭を下げて患者さんに検査をお願いする時代になってきているのです。
最近、循環器疾患と眼底についての、きわめて臨床的な論文が目に留まりました。
開業医にとっては大規模臨床試験の結果よりインパクトがあるかも知れません。
個人的な話で恐縮ですが、当院のポラロイドによる眼底カメラがポラロイドフィルムの製造中止により近々「おしゃか」になります。
エコー装置、レントゲン装置や胃カメラの装置もそうですが「もとがとれた」頃には装置が使えなくなってしまいます。
眼底カメラについては本体はいたって正常に作動しています。
それだけに不条理を感じてしまいます。
高齢者の網膜細静脈径の拡大が心血管疾患リスクに関与
〔ニューヨーク〕 国立シンガポール大学(シンガポール)のTien Yin Wong博士らは,高齢者における網膜血管径と冠動脈性心疾患(CHD),脳卒中の発生との関係について前向きな住民対象コホート研究を行い,5 年のフォローアップにより,拡大した網膜細静脈径は心血管疾患リスクと独立して関連するとの結論を得た。
詳細はArchives of Internal Medicine(2006; 166: 2388-2394)に発表された。
微小循環の標的化に有用性
Wong博士らは「高齢者において,網膜細静脈径の拡大とCHD,脳卒中との関連,網膜細動脈径の縮小とCHDとの関連を立証した」と述べている。
対照的に,網膜微小血管の局所病変は,CHDと脳卒中のいずれとも関連しないことを見出している。
同博士らは,この知見は次の2点で臨床応用の可能性があると説明している。
(1)高齢者の心血管疾患罹患率と死亡率の低減に関して,微小循環を特異的に標的にすることの有用性を立証している。降圧薬(ACE阻害薬など)には,本来の降圧作用の範囲を超えて微小血管の構造と機能に対して直接的に有益な作用を有するものもあるというエビデンスが増加している。
したがって,このような薬剤は心血管疾患の予防と治療に新たな薬効をもたらすものと考えられる。
(2)今回の研究と他の研究から収集したデータは,網膜写真からの網膜血管径測定により,心血管リスク予測に対する新たな情報が得られる可能性があることを示唆している。
今回の研究は米国の4施設で実施され,69~97歳(平均年齢79歳)の男女1,992例を登録した。
網膜像は視神経乳頭と黄斑との間を中心として撮影した。写真はデジタル化し,コンピュータ支援法を用いて評価した。
評価処理中は品質管理方法を実施した。
フォローアップ開始後5年間にCHDが115例,脳卒中が113例発生した。
網膜細静脈径の最大四分位数と最小四分位数を比較した結果,CHD発生率は,拡大した網膜細静脈径では11.7%,縮小した網膜細静脈径では8.1%であった。
また,脳卒中発生率は,網膜細静脈径の拡大では8.4%,同径の縮小では5.8%であった。
細動脈径はCRP値と関連
多変量解析を行い,年齢,性,人種,細動脈径,収縮期血圧(SBP),拡張期血圧(DBP),糖尿病,血糖値,喫煙,年間喫煙本数,HDLコレステロール値,LDLコレステロール値について調整した。
網膜細静脈径の最大四分位数と最小四分位数を比較すると,網膜細静脈径の拡大がCHD発生とリスク比(RR)3.0で,また脳卒中発生とRR 2.2で関連することがわかった。
C反応性蛋白質(CRP),総頸動脈と内頸動脈の内膜中膜肥厚度に対して付加的な調整を行ったが,これらの関連に対して影響は少なかった。
網膜細動脈径の最大四分位数と最小四分位数の比較を行った多変量解析により,網膜細動脈径の縮小はCHD発生と関連する(RR 2.0)が,脳卒中発生とは関連しない(RR 1.1)ことがわかった。
網膜細動脈径が縮小している第 1四分位数の患者は,比較的高齢であることが多く,高血圧でSBPとDBPがともに高いことが多く,現在喫煙者であることはまれであった。
網膜細動脈径が拡大している第 4四分位数の患者は,比較的若年であることが多く,アフリカ系米国人が多く,SBPは低いがDBPが高く,空腹時血糖値と総コレステロール値が高く,現在喫煙者であることが多かった。
細動脈径の拡大はCRP高値と関連し,細静脈径の拡大もCRP高値と関連していた。
脈径拡大と炎症マーカーに関連
現在利用可能なデータから,虚血が今回の知見と関連性のある重要因子であると解釈すべきではない点が強調されていることは重要である。
「網膜細静脈径の拡大と心血管疾患との関連を示したわれわれの研究と他の研究からの知見を,虚血により説明するのは難しい」とWong博士らは説明している。
ほかに,以前に実施された動物実験と臨床試験から示唆されるように低酸素症,炎症,内皮機能不全が関与する可能性がある。
また,以前の臨床試験では,細静脈径の拡大はCRP値やインターロイキン(IL)-6値などの炎症マーカー値と関連することが明らかにされた。
同博士らは,以前に実施された高齢者におけるCHDと脳卒中の予防に関する調査は,おもに大血管のアテローム動脈硬化や脂質値などの危険因子に集中していたと説明している。
高齢者コホートにおいて,細静脈径の拡大は脳卒中と有意に関連することを最初に立証したのはエラスムス医療センター(オランダ・ロッテルダム)のM. Kamran Ikram博士らの研究である。
今回の研究は,これらの知見をCHD発生に広げ,網膜細動脈径と網膜細静脈径を別々に研究することの重要性を立証し,網膜血管径から高齢者における心血管リスクの予測に関する情報が得られるとする新たなエビデンスを提供している。
出典 Medical Tribune 2007.5.31
版権 メディカル・トリビューン社

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網膜症は糖尿病と同等に冠動脈疾患死のリスクを高める
オーストラリア・シドニー大学視力研究センターのJie Jin Wang氏らは,糖尿病の有無にかかわらず,網膜症そのものが冠動脈疾患(CHD)死の独立したリスクファクターであるとの住民研究結果をHeart オンライン版に報告した。
中等度の網膜症を有する糖尿病患者で死亡リスクは6倍以上,非糖尿病者でも2倍以上に
オーストラリアの住民研究(Heart 2006; 92: 1583-1587 ,Arch Ophthalmol 1998; 116: 83-89)から,糖尿病患者199例,非糖尿病者2,768例のサブグループを抽出し,網膜症の有無と重症度分類(軽度または中等度)別に,CHDによる死亡の動向が12年間追跡された。
追跡期間中におけるCHDによる全死亡者数は353例(11.9%)。各サブグループのうち,糖尿病患者群における網膜症者数は57例(28,6%),非糖尿病者群では268例(9.7%)であった。
解析の結果,網膜症・糖尿病のいずれも呈していない場合のCHD死亡率は0.010/人年であったのに対し,網膜症のみを有する人では0.015/人年で,糖尿病のみを有する人の0.016/人年と同等にCHDによる死亡リスクが増加していた。
また,年齢,性,喫煙歴,高血圧・糖尿病の有無を補正した後においても,糖尿病を合併している場合〔ハザード比(HR)2.21,95%信頼区間(CI)1.20~4.05〕,糖尿病のない場合(HR 1.33,95%CI 1.02~1.83)の双方で網膜症はCHD死亡の独立した予測因子であることが示された。
さらに,中等度網膜症を呈する人では,CHD死亡リスクが糖尿病がある場合で6.68(95%CI 2.24~20.0),糖尿病がない場合でも2.29(95%CI 1.10~4.76)と糖尿病の有無にかかわらず,網膜症によりリスクが高まることが明らかになった。
Wang氏らは「今回の検討から,網膜症はCHDリスク増加の指標となる可能性が示唆された」とコメント。
また,網膜症とCHDの直接の関連は不明としながらも,細小血管の障害と炎症を病態の主体とする網膜症が虚血性心疾患につながる動脈硬化の進展のシグナルとなっているのではないかと考察している。
出典 Medical Tribune 2008.8.12
版権 メディカル・トリビューン社
糖尿病網膜症は心不全発症の独立予測因子
糖尿病網膜症の存在は心不全発症の独立した予測因子であると,オーストラリア,米国,シンガポールの共同研究グループがJournal of the American College of Cardiologyの4月22日号に発表した。
細小血管障害は,糖尿病患者の心不全のおもな原因である糖尿病心筋症の病因に大きなかかわりがあると考えられている。
同グループは,腎機能正常で臨床的に冠動脈疾患や心不全のない中年期の2型糖尿病患者1,021例を前向きに追跡し,糖尿病の代表的な細小血管障害である網膜症が心不全の発症を予測するかを検討した。
被験者のうち125例が網膜症合併例であった。9年間の追跡で106例に心不全の発症が認められ,累積発症率は網膜症のない群が8.5%であったのに対し,網膜症合併群では21.6%と高率であった。
年齢,性,人種,喫煙,糖尿病罹病期間,インスリン使用,血圧,血清脂質,その他の危険因子を調整した結果,網膜症のある群はない群と比べて心不全を発症するリスクが2.5倍以上高かった〔ハザード比(HR)2.71,95%信頼区間(CI)1.46~5.05〕。この関係は血糖コントロール,頸動脈硬化,血管内皮機能障害の血清マーカーを調整後も有意であった(HR 2.20,95%CI 1.08~4.47)。
同グループは「この結果は,糖尿病患者の心不全発症における細小血管障害の関与を支持するものである」としている。
Cheung N, et al. J Am Coll Cardiol 2008; 51: 1573-1578.
出典 Medical Tribune 2008.5.1
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最近、CKDに関する講演会を聴きに行ってきました。
ある公立病院の循環器部長の講演ということで、いつものような循環器専門医とは違う切り口の話が聴けると思ってのことでした。
その中で、「腎機能とビタミンD濃度の関連」「活性型ビタミンDの機能」「ビタミンDのレセプターは体中にあり血圧、インスリン、前立腺、乳腺などと関係している」「ビタミンDとCVD」「ビタミンDと心不全」「血中ビタミンDレベルと総死亡」などの話題は興味深いものでした。
彼自身も今ビタミンDに一番興味を持っているとのことでした。
(参考 http://blog.m3.com/reed/20080902「自遊時間」)
きょうはビタミンDを少し勉強しました。

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制作 Heart and Kidney制作委員会
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ビタミンDの摂取不足はさまざまな死因と関連
グラーツ医科大学(オーストリア・グラーツ)のHarald Dobnig教授らは「大規模研究により,ビタミンD値の低い群では心血管疾患による死亡を含む全死亡のリスクが増加する」との知見をArchives of Internal Medicine(2008; 168: 1340-1349)に発表した。
同教授らは冠動脈造影を行う連続3,258例(平均年齢62歳)を対象に25-ヒドロキシビタミンDと1,25-ジヒドロキシビタミンDの値を調査した。
約7.7年のフォローアップ期間中,737例(22.6%)が死亡した。うち463例(62.8%)はCVDによるものであった。
身体活動度や併存症など他の要因を考慮しても,ビタミンD値が低い群で死亡率は高かった。
ヒドロキシビタミンD値が低いことはC反応性蛋白(CRP)などの炎症マーカーとも関連していた。
今回の知見から,同教授らは「健康状態を維持するためには,血中25-ヒドロキシビタミンD値20ng/mL以上が推奨される」と結論付けている。
出典 Medical Tribune 2008.9.4
版権 メディカル・トリビューン社
未透析慢性腎疾患の生存率が向上
活性型ビタミンD類似化合物による治療
〔ニューヨーク〕バージニア大学(バージニア州シャーロッツビル)腎臓病学のCsaba P. Kovesdy博士らは,血液透析を受けていない3~5期の成人慢性腎臓病(CKD)患者520例を対象に,経口カルシトリオールを用いた活性型ビタミンD類似化合物による治療と死亡率や透析治療への移行率との関連を調べる観察研究を行い,カルシトリオールにより生存率が有意に向上し,透析治療への移行率は低下するとの結果をArchives of Internal Medicine(2008; 168: 397-403)に発表した。
予後悪化因子あっても好成績
今回の研究では,Kovesdy博士らが検証したサブグループ全員に,カルシトリオールによる効果が表れた。
これらのサブグループには,治療前副甲状腺ホルモン(PTH)低値の症例,高カルシウム(Ca)値の症例,高リン(P)値の症例が含まれていた。
同博士らは「カルシトリオール治療を受けた症例には,同治療を受けなかった症例よりも予後が悪化する因子,すなわち高齢,低い拡張期血圧(透析患者の高死亡率に関連),低い推定糸球体瀘過量(eGFR),血清P値の上昇(透析患者とCKD患者の高死亡率におそらく関連)があったにもかかわらず,好成績が得られたのは驚くべきことである」と述べ,これらの悪化因子は維持透析を受けている症例に見られるものと一致すると指摘している。
また,CKD患者は二次性上皮小体機能亢進症(SHPT)を頻繁に発症する。
SHPTは骨疾患,尿毒症性痒症,認知機能障害,性機能不全の症例に見られ,心疾患の罹患率や死亡率を上昇させ,他のさまざまな合併症を引き起こす。
SHPTは維持透析を受けている患者にとって深刻な問題だが,初期のCKD患者にも影響する。
同博士らは「SHPTは腎機能の衰えとともに進行する傾向がある」と述べている。
今回の試験参加者は米国退役軍人の男性520例で,全員が外来患者。平均年齢は69.8±10.3歳,平均eGFRは30.8±11.3mL/分/1.73 m2であった。
効果はより広範囲に
520例中258例に少量のカルシトリオールを経口投与した。1日当たり0.25μgの一定量を投与し,そのうち23例(9%)には途中で投与量を0.5μg/日に増量した。
投与期間(中央値)は2.1年(0.06?6年)であった。
プラセボ投与群に比べて,カルシトリオール治療群は,
(1)高齢
(2)拡張期血圧が低い
(3)P吸着薬を用いる可能性が高い
(4)PTH値が著明に高い(5)GFRが低い(6)血清Ca値が低い―という特徴を有していた。
カルシトリオール治療群では,追跡調査中にPTH値が約33%減少した(P<0.001,反復測定分散分析)。一方,プラセボ投与群では有意な変化は認められなかった(P=0.20,反復測定分散分析)。
追跡期間中,血清Ca値は両群ともに有意な変化はなかった。血清P値はカルシトリオール治療群にわずかな増加が見られたが,プラセボ投与群では変化はなかった。
複数因子を調整したモデル内で治療を受けた症例と受けなかった症例を比較すると,死亡率比は0.35〔95%信頼区間(CI)0.23~0.54,P<0.001〕,死亡と透析開始の複合エンドポイントの罹患率比は0.46(95%CI 0.35~0.61)であった。
Kovesdy博士らは,積極的治療を受けた患者の生存率を上げる作用機序について,「初期の死亡率低下はPTH値の低下によってもたらされた可能性がある」と指摘。
しかし,この説明自体は不十分で,活性型ビタミンDの効果はより広範囲にわたるかもしれないとしている。
動脈の石灰化を抑制
Kovesdy博士は「ビタミンD受容体は偏在しており,活性型ビタミンDは動脈における石灰化やアテロームの形成にかかわるサイトカインの産生を抑制し,心血管系に直接的な影響を及ぼすことが明らかにされている」と説明。
さらに,活性型ビタミンD欠乏は血液透析患者における全死亡率および心疾患による死亡率を上昇させ,1,25ジヒドロキシビタミンD3値が低いと冠動脈の石灰化が増悪することから,ビタミンD値と生存率がPTHには独立した関連があることも示唆されている。
「試験開始前のPTH値が低い症例のサブグループでもカルシトリオール治療は有効で,投与量が少ない(PTH低下効果を制限したかもしれない)にもかかわらずかなりの効果を示したことは,これまでおもにin vitroおよび動物実験で説明されたように,直接的な心血管機序が重要な役割を果たしていることを示唆している。
活性型ビタミンD療法は,SHPTの抑制のみに着目して行うべきか,あるいはおもに心血管への効果を通じて生存期間を延長する手段として行う療法になりうるかが,より大きな問題である」と同博士らは認識しているが,これを調べるにはランダム化比較臨床試験を行う必要がある。
同博士らは,因果関係を検証するためにランダム化比較臨床試験の実施を推奨するとともに,選択的ビタミンD類似化合物による治療や別の治療計画が同等あるいはより優れた効果を示すか否かを明らかにするために,さらなる研究が必要だと指摘している。
出典 Medical Tribune 2008.9.4
版権 メディカル・トリビューン社
<番外編>
ビタミンDはがんの予防効果も報告されています。
ビタミンDにがんの予防効果
〔米オハイオ州クリーブランド〕 ダナ・ファーバーがん研究所とハーバード大学公衆衛生学部(ともにボストン)のKimmie Ng博士とCharles Fuchs准教授らは「結腸直腸がんの患者では,血中ビタミンD値が高いと死亡リスクは低い」とJournal of Clinical Oncology(2008; 26: 2984-2991)に発表した。
がん化学療法との併用も検討中
今回の研究は,ビタミンDが特定の患者群に有益な効果をもたらしたことを示す初の研究である。
しかし,Ng博士らは結腸直腸がん患者にビタミンDのサプリメントをルーチンに処方するには時期尚早であるとしている。同博士らの研究ではビタミンD値の高い患者は,やせていて身体活動が高い傾向にあり,このことによっても今回示された結果の一部を説明可能だからである。
同博士らは長期的な2つの疫学的研究(女性看護師保健研究と医療従事者追跡研究)から,1991~2002年に結腸直腸がんと診断された304例のデータを前向きに分析した。全例で診断の2年以上前に血中ビタミンD値を測定し,2005年まで(それ以前に死亡した場合は死亡まで)フォローアップした。
2005年までに死亡した123例中96例は結腸がんによるものであった。
ビタミンD値が四分位数で最も高い群では,最も低い群に比べて結腸直腸がんを含む全死亡リスクが48%低かった。
同博士らは「この研究は,結腸がんと診断される前の血中ビタミンD値が高いほど,診断された後の全死亡を有意に低下させることも示唆している」と述べている。
同博士らは,今後の研究では結腸直腸がん患者のビタミンDサプリメントの役割について調査すべきであると指摘。
現在,結腸がん患者が術後にがん化学療法と併用してビタミンDサプリメントを摂取する研究が計画されている。
同博士らは「必要なビタミンDの投与量については医師と相談すべきであるが,1日当たりの標準推奨量は50歳未満で200IU,50~70歳で400IU,70歳以上で600IUである」と述べている。
出典 Medical Tribune 2008.9.4
版権 メディカル・トリビューン社
<自遊時間> その1
ごく最近のMedical Tribune誌のリレーエッセイ「続・時間の風景」に、私の学生時代に心電図の講義をしていただいた先生が投稿されていました。
写真入りということで随分懐かしくエッセイを読ませていただきました。
随分高齢となられた筈ですが、昔の面影も残っています。
そして文面からは、昔と少しも変わらないウイットとユーモア(茶目っ気?)が伝わって来ます。。
性格も含めて、人間ってそうそう変わるものではないんだなあと感じ入った次第です。
<自遊時間> その2
昨日の日曜日は所属医師会の休日診療所の出務でした。
結構長い間やっていますが、患者数が確実に減ってきていることが実感できます。
診察中のことです。
受付の事務員が、「○○という方から先生にお電話です」と言って来ました。
私はこれでも結構カンが働くほうなので、「用件をまず聞いてみて」と返事しました。
先生方もピンと来たと思いますが、どうやら節税や資産運用という名目のマンションなどの不動産か先物取引の勧誘を疑ったのです。
案の定、先方は「後でまたかけ直します」といって電話を切ったとのことでした。
ナースによれば、毎週のようにこんな電話がかかってくるとのこと。
会員名簿が手に入りにくくなって、休日診療所の不特定のドクターをターゲットにし出したようです。
嗚呼。
私は少し前から、同門会や医師会の名簿などに自宅の電話番号は載せないようにしています。
おかげで夕食時の不愉快な電話での勧誘はなくなりました。
しかし、こんな新手が現れるとは。
相手も結構やります。アッパレ。
名簿で思い出しましたが、所属医師会の電話帳のような名簿。
何とかならないでしょうか。
役に立ったためしがないばかりではなく、個人情報が入っているので、捨てるにもまったくもって苦労します。
読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。
他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
「井蛙内科/開業医診療録(2)」
http://wellfrog2.exblog.jp/?2008.5.21~
「井蛙内科/開業医診療録」~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/
があります。
新着のメディカル・トリビューンの記事からです。
製薬メーカー主催の座談会では、かなりバイアスのかかった話になっていることがあります。
しかし、多いに役に立つ内容やきらりと光る一言も述べられており、このバイアスに注意さえすれば無料で勉強ができます。
今回のタイトルは、かなり大上段にかまえたものです。
それは、この記事の前書きに
「日本や欧米のガイドラインで,冠動脈疾患(CHD)患者さんの降圧療法にはACE阻害薬を第一選択薬とし,ARBはACE阻害薬の不耐応例と位置付けられている。
一方,日本人を対象にしたHIJ-CREATE試験では,ARBはACE阻害薬に優るとも劣らないことが示された。そこで,ARBがCHD既往高血圧症患者さんの第一選択薬に位置付けられるのかについて討論していただいた。 」
と書かれているように、あたかもガイドラインに挑戦するようなタイトルだからです。
どのような座談会の展開になるのか、出席した教授の中に、はたして御用学者はいないかという観点からの読み方も一興かと思ってとり上げました。
話は変わりますが、ある学術講演会の後の懇親会で、昔在局中に一緒だったある先生からこんな話を聞きました。
「ある教授が、講演や座談会で、年間給料より多い謝礼を貰っていて、教授会で自粛するように言われたらしい」。
その話を聞いたとき、何が問題なのかよくわかりませんでした。
先生方はどのように思われますか?
思い起こせば、「週刊朝日」でもそのようなことが一時期とりあげられていました。
Round Table Discussion 座談会
ARBをCHD既往高血圧症例の第一選択薬に位置付けられるのか?
The Heart Institute of Japan-Candesartan
Randomised trial for the Evaluation in Coronary Artery Disease
熊本大学大学院医学薬学研究部 生体機能薬理学 教授
光山 勝慶 氏(司会)
旭川医科大学第一内科 教授
長谷部 直幸 氏
名古屋大学大学院医学系研究科 循環器内科学 教授
室原 豊明 氏
大阪大学大学院医学系 研究科臨床遺伝子治療学 教授
森下 竜一 氏
群馬大学大学院医学系研究科 臓器病態内科学 教授
倉林 正彦 氏(発言順)
ARBの動脈硬化への影響とそのメカニズム
光山(司会)
わが国では,生活習慣の欧米化に伴い冠動脈疾患(CHD)が著しく増加しています。
近年,薬剤溶出ステント(DES)の登場によりステント内の再狭窄は減少しましたが,生命予後は改善できないことが報告されており,CHDの二次予防として薬物療法の重要性があらためて注目されています。
このようななか,昨年開催された第80回米国心臓協会学術集会(AHA2007)で,アムロジピンと同等の降圧が認められているカンデサルタンを用いて(図1),日本人CHD既往高血圧症患者さんを対象にしたHIJ-CREATEが発表になりました。

本日は,HIJ-CREATEの結果を踏まえて,CHD患者さんにおけるARBの位置付けについて議論したいと思います。
長谷部
現在,CHD既往高血圧症患者さんの降圧療法にRA系抑制薬を用いることが一般的になっていますが,その背景には,数々の大規模臨床試験があります。
その歴史はACE阻害薬のSAVEから始まり,HOPE,EUROPA,PEACE,そしてARBのOPTIMAAL,VALIANTと続きます。
欧米ではCHD既往高血圧症患者さんの二次予防ガイドラインで,ACE阻害薬を第一選択薬としていますが,それはこれらのエビデンスに基づいています。
室原
私は,ARBはACE阻害薬と同様にCHD既往高血圧症患者さんに有用だと考えています。
動脈硬化の進展に大きくかかわる炎症をいずれの薬剤も抑制するからです。
一方,PCI後の再狭窄の抑制は,動物実験ではARB,ACE阻害薬ともに報告されていますが,再狭窄に関連した成績が臨床で認められているのはARBのみです。
例えば,ARBのカンデサルタンを用いたOGAKI Studyでは,冠インターベンション(PCI)施行6か月以上経過後に有意狭窄がないことを確認した患者さんの心血管系イベント(CVD)の発症を有意に抑制しました。
血管内超音波(IVUS)を用いた検討でも,カンデサルタンを用いた降圧療法によりステント留置例の新生内膜の増殖を抑制することを認めています(図2)。

また,PCI後は,骨髄由来の平滑筋前駆細胞の沈着によるプラークの蓄積と不安定化が生じますが,カンデサルタンはそれらを抑制することが認められています。
日本人CHD既往高血圧症患者さんの再発抑制が証明されていることや平滑筋前駆細胞の沈着の抑制からもカンデサルタンに対する期待が高まります。
森下
動脈硬化病変におけるRA系活性化は,健常人の血管と異なっています。
梗塞箇所などの炎症部位では,キマーゼの大きな産生源であるmast cellの発現が亢進し,ACEによらないアンジオテンシンII(A II)の産生が増加します。
したがって,動脈硬化病変が進めば進むほどACE阻害薬が効きにくい可能性が高いのです。
また,血管病変において平滑筋細胞の増殖を抑制したりNOの産生を亢進するなど,血管に対し保護的に働くA II type2(AT2)受容体は,動脈硬化が進行するほど発現が亢進します(図3)。

このことからもAT1-Pathwayを抑制しAT2-Pathwayを活性化させるARBの有用性がうかがえます。
つまり,高血圧症や糖尿病,脂質異常症の罹病期間が長い動脈硬化が進行している症例,あるいは脳・心血管系イベントの既往がある症例ではARBを選択する利点がたくさんあると思います。
血管だけでなく,膵臓のβ細胞でもAT2受容体の関与は大きいと思います。
高血糖により膵臓に酸化ストレスが加わると,膵臓においてもA II type1(AT1)受容体の発現が亢進します。
それにより線維化が進行すると,AT2受容体の発現が亢進することがわかっています。
このことからも膵臓への影響,血糖に対する影響もARBのほうが強いと考えられます。
しかし,糖尿病の新規発症を抑制した試験成績のあるARBもあれば,そのような試験成績のないARBがあることも事実です。
このことからもAT1受容体を強力に長時間ブロックすることが重要なのです。
HIJ-CREATEでは,標準治療群の71%にACE阻害薬が投与されていたにもかかわらず,カンデサルタンが糖尿病の新規発症を63%有意に抑制しました。
降圧薬は,骨格筋の血流改善を介してインスリン抵抗性を改善しますが,カンデサルタンは,インスリン分泌顆粒やミトコンドリアを正常化し,インスリン分泌も改善することが報告されています(図4,5)。