戯れ言たれる侏儒
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“最強スタチン対決試験”を読み解く
代田浩之氏,平山篤志氏に聞く
今年(2011年)の第84回米国心臓協会年次学術集会(AHA 2011:11月12~16日,オーランド)で発表され,N Engl J Med2011; 365: 2078-2087)に同時掲載されたSATURN試験。
Study of Coronary Atheroma by InTravascular Ultrasound: Effect of Rosuvastatin Versus AtorvastatiN

冠動脈に20%以上の狭窄がある症候性冠動脈疾患患者約1,000例を対象に,現状考えられる最強度の強化スタチン療法2レジメンを施行し,プラーク退縮効果を比較したものだ。結果は,11月17日に紹介した通り,両群ともに前例のない同等の大きな効果を示した。

そこで,順天堂大学循環器内科学教授の代田浩之氏,日本大学循環器内科学教授の平山篤志氏への取材を基に,SATURN試験をより詳細に読み解き,日本の臨床における意義を探った。
 
TAVはプラークの絶対量を,PAVは血管径をも反映する指標
SATURN試験では,血管内超音波(IVUS)を用いた標的冠動脈に対する評価が行われ,1次評価項目としてプラーク容積率(PAV)の変化 率,2次評価項目として全プラーク容積(TAV)が設定された。
治療104週後,PAVはロスバスタチン群,アトルバスタチン群ともにベースラインに比べ 有意に減少したが,群間差は認められなかった。
一方,TAVも両群ともに著明に減少したが,その程度はロスバスタチン群の方が有意に大きく,TAVの減少 が認められた患者の割合もロスバスタチン群の方が有意に高率だった。

類似しているように見える2つの指標だが,その臨床的意味は異なる。
平山氏によると,近年の臨床試験の結果から,心筋梗塞などの冠動脈イベントのリスクとして,
(1)プラークの不安定性,
(2)プラーク容積の絶対量,
(3)血管径の小ささ
―が提唱されている。
このうち(1)は今回のSATURN試 験では評価の対象外である。TAVは(2)そのものだ。
これに対し,PAVは血管全体に占めるプラーク容積の割合であり,(2)のみならず(3)をも評価 する指標だという。 

PAVとTAVは基本的に相関するが,そうでない場合も存在すると同氏は指摘する。
具体的には,血管径に変化がなくプラーク容積が減少した場合は,PAVもTAVも減少し,血管内腔は拡大している。
しかし,血管径が縮小しプラーク容積が減少した場合ではTAVは減少しても,PAVは減少せず,血 管内腔は拡大していない。

SATURN試験を実施したクリーブランドクリニック(米国)のグループがTAVではなく,PAVを1次評価項目に設定したのは,このようなこと からPAVの方が臨床的意義の高い指標だと判断したためだと考えられる。
同試験の試験統括者で,同クリニック循環器科部長のSteven E. Nissen氏はMT Proの取材に答え,PAVが臨床イベントと最も強い相関があることを強調している。
 

必ずしもPAVの方が有用といえない
ただし,代田氏はTAVに比べPAVが必ずしも臨床的に有用な指標とはいえないと指摘する。

同氏によると,一般にスタチンは,動脈硬化による病的変化である血管のポジティブリモデリングを改善(=血管径を縮小)しながらプラークを縮小させるという。
血管内腔の保持という点だけに注目すると不利な結果をもたらすのだが,スタチンはポジティブリモデリングの改善によって血管やプラークの性状を改善させる
その意味で,PAVはプラーク容積とポジティブリモデリングの両方を評価していることになり,TAVに比べ変動しにくく,PAVを改善することにより大きな意味があるとも言える。

しかし,血管のリモデリングはLDL-Cの低下以外の要因によって規定されている

治療によっては,(血管径を縮小させないで)プラークの性状が改善される可能性も示されており,「PAVとTAVの臨床的意義の差を明確に結論付けられない」とするのが代田氏の見方だ。

なお,両氏とも,ロスバスタチン群でTAVの改善効果が大きかった理由として,同群のほうがLDLコレステロール(LDL-C)の低下が有意に大きく,HDLコレステロール(HDL-C)の上昇が有意に大きかったことを挙げる
その意味では,脂質をより強力に改善することがより強力なプラーク容積の減少に有効であることが示唆される。
 

LDL-Cが高いほどプラークは退縮しやすい
SATURN試験については,PAV変化率に関するサブグループ解析の結果も発表されている。
ひとつには,ベースラインのLDL-Cで層別比較す ると,PAV減少率はLDL-C低値群に比べ高値群で有意に大きく,LDL-C高値群ではロスバスタチン群の方がPAV減少率が有意に大きかった。
LDL-Cが高いほどプラークが退縮しやすいという結果は,誰もが納得できるところだろう。
一方,両氏とも頭をひねるのは,性差に関する層別解析だ。
PAV減少率は男性に比べ女性で有意に大きく,女性ではロスバスタチン群の方が有意に大きい―この結果をどう解釈するのか。

代田氏はスタチンのプラーク退縮効果に性差があることについては,「HDL-Cのレベルでも交互作用の傾向があるので,HDL-Cがより高い群すなわち女性で差が出やすかった可能性があるが,一方SATURN試験参加者における女性の割合は3割弱。この規模の試験のサブ解析では偶然の結果である可 能性も否定できない」と述べる。
平山氏も,このデータだけでは確かなことはいえないという。

日本におけるLDL-C管理目標値の変更には多くの課題
SATURN試験の結果は,日本の臨床においてどのような意味を持つのだろうか。
両氏ともに高く評価するのは,LDL-Cを強力に低下させた(ロスバスタチン群62.6mg/dL,アトルバスタチン群70.2mg/dL)ことで,強力なプラーク退縮を実現したことだ。
SATURN試験が冠動脈疾患高リスク例に対する強化スタチン療法の有用性を裏付ける重要なエビデンスとなることは間違いない。
代田氏は「スタチン単独で約7割の患者においてプラーク退縮効果が得られたことの意義は大きい」と語る。

しかし,両氏ともに「今後の検討課題」と指摘するのは,日本人冠動脈疾患高リスク例に対するLDL-C管理目標(現行ガイドラインでは100mg/dL)を引き下げるべきかどうか,引き下げるとしたらどのレベルまで下げるかだ。

脂質低下とプラーク退縮の関係は明らかになりつつあるが,日本人における検討は不十分だ。
LDL-Cを下げるほどプラーク退縮効果は大きくなるのが,その効果はベースラインのLDL-Cが低くなるほど小さくなり,どこかでプラトーになる。その閾値を明らかにする必要がある」と平山氏。
代田氏は 「厳密な比較ではないが、欧米に比べ日本人のプラークの方が退縮しやすいという可能性も指摘されている。そのことから考えると,日本人のLDL-C管理目標は欧米より若干高めでよいのかもしれない」と述べる。

さらに,両氏とも,プラーク退縮と真の評価項目である冠動脈イベントとの関係についてのエビデンスは欧米を含め不十分だと指摘する。
SATURN 試験で達成された両薬剤のPAV・TAV減少効果,あるいはTAVにおける両薬剤の効果の差がどの程度の臨床イベントの違いに結び付くかは,今後の検討課題となる。
もちろん,日本人において現行より強力なスタチン療法を行う上では,安全性に対する綿密な検証も重要だ。

強化スタチン療法の意義を示したSATURN試験だが,プラーク退縮という観点からLDL-C管理目標値を変更するには,解決すべき多くの課題が残されている。

この分野の新研究成果が注目される。  (平田 直樹)
 
出典 MT pro 2011.12.19
版権 メディカル・トリビューン社  
 
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CAD/CKD患者の冠動脈リスクはレムナントリポ蛋白
冠動脈疾患(CAD)や慢性腎臓病(CKD)を有する患者では、レムナントリポ蛋白が心血管イベントの強力な予測因子になる可能性が新たに指摘された。
フロリダ州オーランドで開催された第84回米国心臓協会・学術集会(AHA2011)で、山梨大学の斉藤幸生氏らが発表した。
 
CKD症例では、冠動脈イベントのリスクとなるトリグリセライド値が高い。
トリグリセライドに富むリポ蛋白は多彩に存在するが、それらの中でどのリポ蛋白が冠動脈リスクになるのかは未だ明らかではない。
今回、斉藤氏らは、レムナントリポ蛋白がCAD患者やCKD患者における冠動脈イベントの予測因子となる可能性についての検討結果を報告した。

対象は、山梨県において冠動脈インターベンションを施行した患者を前向きに連続して登録している多施設共同研究FUJISUN registry(2008年5月開始)から、連続で抽出したCAD/CKD患者229例。

CKDは、糸球体濾過量(GFR)60mL/分/1.73m2未満と定義した。
レムナントリポ蛋白の量的評価では、血漿中のレムナント様リポ蛋白コレステロール(RLP-C)を免疫分離法で定量して指標とした。

対象のうち、46例が冠動脈イベントの既往を有し、183例はイベントを経験していなかった。

両群のベースラインの患者背景では、既往あり群のBMIは24.8±3.3kg/m2で、既往なし群の23.4±3.8kg/m2に比べて有意に高く(P<0.05)、糖尿病罹患率(68% 対 41%)も有意に高かった(P<0.05)。

また、既往あり群ではトリグリセライド値(142±49mg/dL 対 124±54mg/dL)、BNP(287±326pg/mL 対 238±296pg/mL)、血清クレアチニン値(2.98±3.00mg/dL 対 1.69±1.92mg/dL)、RLP-C値(6.2±3.8mg/dL 対 4.3±1.8mg/dL)が有意に高かった(P<0.05)。

一方で、既往あり群のHDL-C値(39±10mg/dL 対 43±10mg/dL)、クレアチニンクリアランス(33±20mL/分/1.73m2 対 42±15 mL/分/1.73m2)は有意に低かったP<0.05)。

試験開始後、心臓死、非致死性心筋梗塞、冠動脈血管再建術を要する不安定狭心症、心不全の発症を記録した。対象をRLP-C値5.7mg/dL以上74例 と5.7mg/dL未満152例に分けて解析すると、18カ月の時点でRLP-C高値群では28例(38%)でいずれかのイベントが生じ、RLP-C低値 群の18例(12%)に比べて有意に多かった(P<0.0001)。

内訳は、心臓死5例 対 0例、心筋梗塞4例 対 2例、不安定狭心症15例 対 14例、心不全4例 対 2例だった。

Kaplan-Meier曲線による4つのイベント非発症率の解析でも、RLP-C高値群は低値 群に比べ、有意に低かった(P<0.01)。

さらに、段階的多変量Cox比例ハザードモデルによる解析では、RLP-C高値が冠動脈イベントの予測因子であることが示唆された(ハザード比1.8、95%信頼区間:1.3-6.9、P<0.01)。

ROC曲線の解析でも、既にリスクとされている加齢、男性、喫煙、糖尿病、LDL-C高値、HDL-C低値、収縮期血圧高値にRLP-C高値が加わると、ROC曲線化面積が0.63から0.76に有意に拡大し、予測値が高まることが示された(P<0.05)。

斉藤氏は以上の結果を踏まえ、「RLP-Cの定量は、CADおよびCKDの患者の冠動脈イベントリスクの層別化にも活用できると考えられる。今後は、実臨 床にRLP-Cの評価をより積極的に取り入れ、エビデンスを蓄積し、パラメータとしての信頼性を確立していきたい」と、さらに一歩踏み込んだ研究を見据え、意欲を示した。

 
出典   NM online 2011.11.22
版権 日経BP社
 

<私的コメント>

少し調べてみると「運動療法が脂質代謝、特に中性脂肪改善効果を通して、腎保護作用をもたらす可能性がある」、「ΔeGFRとΔ中性脂肪が有意な負の相関」といったCKDと中性脂肪の関連をみた論文が見つかりました。さらには「CKD患者において中性脂肪が独立した危険因子である」(Am J Med Sci. 2009;338(3):185-9)、
「高中性脂肪・低HDLがCKDにおける腎機能悪化の条件の一つで、この悪循環を断ち切ることも腎保護につながった可能性がある」(J Am Coll Cardiol. 2008;51(25):2375-84)」といった論文もあります。

論文を読んでいないので両者の関係をどのように考察しているのかわかりませんが、CKDといういわば漠然とした病態概念にTGがどのように関与するのか知りたいところです。

一方、家族性高コレステロール血症においては腎障害の
発症は報告されていないようです。

しかし,健常人における健診時の脂質異常症は,CKD 発症の危険因子であることが示されています。
Physician's Health Study では,健常男性においてTC,非HDLコレステロールの上昇,HDL コレステロールの低下は,CKD 発症の危険因子であることが示されています。
またHelsinki Heart Study では,LDL コレステロー
ル/HDL コレステロール比の上昇がCKD 進行の
危険因子であったと報告されています。

脂質異常症のCKD に対する影響は多くのコホート研究により示されており,TC 上昇,TG 上昇,LDL コレステロール上昇,HDL コレステロール低下は,それぞれCKD
進行の危険因子であったとのことです。

ARIC Study では,CKD におけるTC 上昇とTG 上昇がCVD 発症の危険因子であったということです。
Muntner P, He J, Astor BC, Folsom AR, Coresh J. Traditional and nontraditional risk factors predict coronary heart disease in chronic kidney disease: results from the atherosclerosis risk in communities
study. J Am Soc Nephrol 2005;16:529-538.


臨床というリアルワールドではCKDに対してフィブラート系薬を使用することについては細心の注意が必要となります。
ベザフィブラートとフェノフィブラートの投与はCKDス
テージ3で慎重投与,CKD ステージ4,5 においては原則禁忌とっているからです。



<自遊時間>
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1111/1111016.html
 
  
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1111/1111073.html
 
こういったデモは世界的に流行しています。
開業医と勤務医は同床異夢の部分もあります。
何事もそうですが、どんな組織でも「総意」というものがあっても完全に細部にわたって意見が一致することはありません。
総論賛成、各論反対また逆の場合もあります。
私がこういった組織に深入り出来ないのはこういった理由です。
東京でのデモをされた先生方の多くは病院関連の先生であると想像されます。
この先生方が日本医師会に加入されているのかどうかは知りませんが、日本医師会との関係を断ち切ってのデモなのでしょうか。
彼らは医学部新設を唱えています。
いわば、日本医師会とは立場を異にしています。
この団体に対して、今年は日本医師会の副会長が挨拶のために壇上に上がったとのこと 。
このことにはいささかの違和感を覚えます。
 
<関連サイト>
全国医師ユニオン

全国医師ユニオン - Wikipedia
 
 
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AHA 2011で発表で発表されたSATURN試験についてのNissen先生のコメントが発表されました。

SATURN試験
http://blog.m3.com/reed/20111118/SATURN_

 
スタチンのアンダーユースは世界共通の課題
AHA 2011で発表のSATURN試験についてSteven Nissen氏と一問一答
冠動脈疾患の再発(二次)予防に重要な位置付けを占める2つのストロングスタチンの比較試験SATURNから学ぶべき点は何か―。
試験統括者であり,米クリーブランド・クリニック循環器科部長のSteven E. Nissen氏に聞いた。
同氏はスタチンのアンダーユースは世界共通の課題だと主張している。
 
PAV変化率は最も信頼性の高い評価項目
――なぜ,プラーク容積率(PAV)の変化率が1次評価項目に設定されたのか。
わたしたちは,プラークが進展するほどに臨床イベントは増加すると考えている。
したがって,治療では常に,冠動脈プラークの退縮を目指すことになる。
PAV変化率は最も信頼性の高い評価項目で,また,臨床イベントとも最も強い相関があることが分かっている。
この評価項目を用いることで,患者の予後を推測することができる。

――25%の脱落率は結果に影響を与えていないか。
血管内超音波法(IVUS)という侵襲的なカテーテル検査を評価項目に置く限り,相当数の患者が2回目(試験終了時)のIVUSを希望せずに脱落することは想定しなければならない。
脱落は両群間で同等に起きているので,試験結果にバイアスがかかったということは考えられない。

――最大用量のスタチン治療において安全性の懸念はないか。
この試験で,われわれは最大用量のスタチンを問題なく投与することができ,優れた安全性も担保された。
もちろん,欧州や北米,オーストラリア,南米で実施されているということを考慮すると,スタチンの高用量投与に対してより慎重なアジアでは,最大用量がわれわれの地域よりも低く設定されるだろう。
ただ,スタチンが治療されるべき患者に十分な用量で投与されていないということは,どこでも共通した課題である。
 
高用量スタチンが,少量~中等量スタチンよりも有益な臨床効果をもたらすことをわれわれは証明してきた。
副作用の発現率は確かに多少増えるが,それは,高用量スタチンであっても非常に低い。
今回の試験での副作用発現率を見ると,ロスバスタチンでは蛋白尿が多い傾向に,アトルバスタチンでは肝機能異常が多い傾向にあったが,全体で見ると非常に少ない発現率だ。
2つの薬剤はともに安全性が担保されている。
試験対象は,高リスクの冠動脈疾患患者群であるにもかかわらず,2年間での心血管イベント発生率はわずか7%だった。

――この試験から高用量スタチン療法を推薦されるのか。
高用量スタチンで心血管イベントリスクを低下させることは,複数のエビデンスで既に十分に明らかになっている。
この試験は,それをさらに確実なものにしたといえるだろう。                                      (田中 かおり)
 
出典 MT pro 2011.11.17
版権 メディカル・トリビューン社


<自遊時間>
首相がTPP参加表明をした後になって、日本の医療制度はどうなるのだろうか、といったことがマスコミで取り上げられるようになって来ました。
昨日の某報道番組でも米国の製薬メーカーが薬価引き上げを迫ってくるようなシミュレーションをしていました。
いわゆる医療界に新自由主義が持ち込まれるというものです。
ちょっと古い記事(2008.8.10)になりますが、「日経メディカル オンライン」に「医師すらも貧困層に転落する米国の現実」という記事が出ていました。
永六輔氏の「大往生」(1994年刊)以来の岩波新書の大ベストセラーとなった「ルポ貧困大国アメリカ」の著者・堤未果氏へのインタビュー記事です。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/200807/507412.html

■2006年出版の前著の『報道が教えてくれないアメリカ弱者革命』(海鳴社刊)では、貧困層の高校生が軍にリクルートされ、イラク戦争に行かされている現実など、戦争をテーマに、マイノリティーが国の捨て駒にされている実情を書きました。
出版後も取材を続けていくうちに、大学も出て仕事にもきちんと就いている中間層の人たち、さらには社会的に尊敬されていた医師や教師といった人たちの中にも貧困層に転落し、低所得者食糧配給を受けているケースが少なくないことが分かってきました。

今年(2008年)の『文藝春秋』6月号に医療過誤保険の負担で年収が2万ドル以下になった医師のことを書きましたが、それは決してまれなケースではありません。
なぜ中間層、さらには医師までもが転落するようになってしまったのか。

最大の原因は、競争と規制緩和を推し進めて、これまで政府がつかさどっていた、医療や教育さえも市場原理に任せてしまおうとする新自由主義政策にあります。
新自由主義政策はレーガン政権のころから、大企業を減税し社会保障費を減らすという形で展開されてきましたが、特にそれが顕著になったのはブッシュ政権になってからです。
■中間層がしっかりといるときは、競争原理を入れなくても国内でモノが消費されていく。

ところが、中間層が減り、消費が萎んできたとき、それを喚起させるには、より安いモノを海外から入れなければならない。
すると国内の製造業が駄目になり、そこで働いていた中間層が落ちていく。
そういったことが見えてくると、これはアメリカだけの問題ではなく、国を超えて世界で起きていることではないかと考えるようになりました。
■小泉政権で経済財政諮問会議が混合診療や株式会社の病院経営などの解禁を主張していましたが、その根底にあるのは新自由主義そのものです。
アメリカ人からしてみると、日本の国民皆保険は理想的な制度で、なぜそれをわざわざ壊そうとするのか分からない。
■今、アメリカの医師が置かれた状況はひどいものです。開業医で患者さんをたくさん抱えている人以外、特に病院勤務が中心の医師たちは追いつめられています。
特にひどいのは医療過誤訴訟のリスクが高い産婦人科や心臓外科の医師たちです。

年収20万ドルだった外科医が、保険料が18万ドルになったため差し引き年収2万ドルのワーキングプア・レベルにまで転落、廃業に追い込まれた例もあります。
■さらに、保険会社が病院の経営方針に大きく介入するようになり、効率や採算性を優先するその経営手法が医療現場を激しい競争にさらしています。

過剰労働と十分な治療を患者に提供できない罪悪感などから、心や体を病む医師が増えています。
医師はまだ貧困層じゃないからいいじゃないか、と言う人もいますが、経済的には大丈夫でも、心が壊れていくのです。
今、医師の抗うつ薬の使用量は莫大なものになっています。
■国が守るべき国民の生存権は、単に経済的な要素ばかりでなく、誇りを持って働けるとか、人間らしい働き方ができるといったことも含めてのものだと私は思います。

しかし、かつて国が守ってくれていた医師や教師といった社会インフラの要となる人々ですら、国は守ってくれなくなったのです。
3年以上前の記事ですが、今回のTPP問題をあたかも予見しているような内容だったので取り上げさしていただきました。
以下のブログもご覧下さい。

<TPPを問う> 混合診療、現場に賛否
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy/39186619.html
 
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ビール愛好家には朗報です。
 
ビールにワインと同様の心血管イベント予防効果イタリア・メタ解析でJ字型の関係,蒸留酒では効果なし
ワインに心血管リスクを低下させる効果があることはよく知られているが,ビールや蒸留酒の影響については明らかではない。
イタリアGiovanni Paolo II,Fondazione di Ricerca e CuraのSimona Costanzo氏らはメタ解析を行い,ビールによるアルコール消費量と心血管イベントリスクはJ字型の関係にあり,ワインとほぼ同様の結果だったと発表した(Eur J Epidemiol 2011年11月11日オンライン版)。
蒸留酒ではリスク低減は認められなかった。
「ワインとビールのどちらかを選ぶかではなく,適度に飲むことがより重要だ」としている。

いずれも25g/日のアルコール消費でリスク低下最も大きく
Costanzo氏らは,2011年3月までにPubMedとEMBASEに掲載されたアルコール消費と心血管リスクに関する論文データを検索。
97研究を抽出し,ビール,ワイン,蒸留酒の区別がない研究などを除く欧米,オーストラリアの18研究(前向き研究12,症例対照研究6)を分析した。
 
アルコール消費量を横軸に,心血管イベントの相対リスクを縦軸にとって17研究の集積データを見ると,ワインによるアルコール消費量と心血管イベントリスクとの間にはJ字型の相関関係が認められた。
最もリスクが低いのはアルコール消費量21g/日で31%(95%CI 19~42%)のリスク低減があり,リスク低減がなくなる消費量は72g/日だった。
同様の関連がファンネルプロットにより出版バイアスが示唆された研究や年齢のみで調整した研究を除外した分析でも確認された。
 
また,13研究の解析でビールでもワインと同じ傾向が見られ,43g/日のアルコール消費で42%(同19~58%)の心血管イベントリスクの低減があった。
リスク低減がなくなるのは55g/日であった。

<私的コメント> 
ビール大ビン1本は5.5%のアルコール濃度としてアルコール35gとなります。
いわゆる「治療域」が随分低いので「ほどほど」が難しいですね

ワインとビールそれぞれについて報告がある12研究の分析では,ワインとビールはほとんど重複したカーブを描いた。
特に少量から中等量のアルコール消費ではワインとビールの結果はほぼ同じであり,いずれも25g/日のアルコール消費で最も大きいリスク低減(ワイン32%,ビール33%)を示した。
 
なお,蒸留酒に関する10研究の解析では,心血管イベントリスクとの間にJ字型の相関関係は認められなかった。
 
同氏によれば,同研究はビールとワインで心血管イベントに対する同様の効果があることを明らかにした初めてのメタ解析。
ただし,少量から中等量の 結果が多数の経験的データに基づくのに対し,より多い飲酒量はむしろ数学的な結果であるとことわり,「飲み過ぎの害は常に強調されなければならない」と指摘している。(木下 愛美)
 
出典 MT pro 2011.11.17
版権 メディカル・トリビューン社
 
<私的コメント> 
今回の結果では、ワインとビールの心血管イベントリスクの低減効果はほぼ同じということです。
ポリフェノールの関与(学説)はどうなってしまったのでしょうか。
 
<自遊時間 その1>
こんなサイトはいかがですか?
トマソン・トーキョー
 
<自遊時間 その2
ある講演会に出席して信じられない光景に遭遇しました。
講演も酣(たけなわ)、高齢の参加者が心地よくイビキをかき始めました。
前の席の30代の若い参加者がじっと振り返って睨みつけていました。
その光景自体も異様でしたが、鼾が最高潮に達した時に老医師の席に置いてあったコップをしこたま顔と体に勢いよく浴びせて中途退席しました。
至近距離にいたのですが一瞬何が起こったのか分かりませんでした。
隣席の参加者も、この水を浴びて被害を被りました。
衆人環視のもとで行われたこういった破廉恥な行為に対して誰も注意しない、そして出来ないということがいかにも情けないことです。
医師というものは紳士淑女であるというのが最低条件であり、世間からも一定の評価を受けているというのが暗黙の了解事項です。
昔はこういったこと(はっきりいって暴力行為です)はとても考えられませんでしたが、ドクターの質もここまで落ちてしまっているのです。
全く知らないヒトではありません。
偏見という謗りは甘受してのことですが、「あの大学の出身者ならあり得るというのが、今の直な彼に対する感想(怒り)です。 
後味の悪い講演会になってしまいました。
 
<自遊時間 その3> RPVI
ボストンでVascular Imagingの講習会
Registered Physician in Vascular Interpretation (RPVI)
 
 
 
佐伯祐三(1898~1928)「自画像」(1917年)
http://white.ap.teacup.com/syumoku/300.html

 
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RESOLUTE Japan試験

戯れ言たれる侏儒 / 2011.10.12 00:40 / 推薦数 : 1
第20回日本心血管インターベンション治療学会のLate Breaking Clinical Studyのセッションでされた、Endeavor Resoluteゾタロリムス溶出ステント(R-ZES)に関する研究が報告されました。
 
~RESOLUTE Japan試験~
In-stent LLLで有意に良好な成績
Endeavor Resoluteゾタロリムス溶出ステント(R-ZES)は,わが国で行われた臨床試験RESOLUTE Japanで,ヒストリカルコントールに比べ,In-stent late lumen loss(LLL)が有意に少ない,また1年間でステント血栓症,心臓死ともにゼロという優れた成績が得られたことが,湘南鎌倉総合病院(神奈川県)の齋 藤滋副院長(札幌東徳洲会病院循環器内科センター長兼務)から報告された。
 
日本人にR-ZESは有用
R-ZESは,親水性生体適合性ポリマーを用いて,Endeavorで問題とされた薬剤溶出期間を6カ月に延長させた。
既に世界で多くの臨床試験が行われ,良好な成績が得られている。最も症例数の多いRESOLUTE International(2,349例)では,1年の標的病変不全(TLF:心臓死+標的血管心筋梗塞+臨床上の必要に応じて行った標的病変血行再 建)は約7%と報告されている。
 
齋藤副院長によると,RESOLUTE Japanは,2.5~3.5mmのR-ZESを留置した14施設の100例を対象とし,ヒストリカルコントール(ENDEAVOR Ⅳ試験のTaxus arm)を用いたオープンラベル試験。プロトコルは世界の臨床試験とほぼ同じで,8カ月後に冠動脈造影,IVUSを行い,In-stent LLLを評価した。
2剤併用抗血小板療法(DAPT)は6カ月以上継続した。
 
1年間のフォローアップ率はほぼ100%。DAPT継続率も95%と高かった。In-stent LLLは0.13mmと極めて少なく,Taxus(0.42mm)との間に有意差が認められた。再狭窄率は0%,TLFは1年で4%。ステント血栓症,心 臓死はともになく,主要心血管イベント(MACE)も5%にとどまった。
 
同副院長は「非劣性を検証する試験だったが,むしろ優位性が証明された。日本人におけるR-ZESの有用性が認められたことになる」と結論した。
 
出典 Medical Tribune  2011.9.22
版権 メディカル・トリビューン社
 
<関連サイト>
メドトロニックがResoluteステントを評価するRESOLUTE JAPAN試験の1年成績を発表
https://www.tcross.co.jp/details.php?category=market&no=1310
■メドトロニックは、Resoluteゾタロリムス溶出ステントを評価するRESOLUTE JAPAN試験の良好な1年成績がCVIT 2011にて発表されたことを報告した。
■本試験では、日本の14施設から2つまでのデノボ冠動脈病変に対しResoluteステントで治療を受けた100人を登録し、ENDEAVOR Ⅳ試験のTaxus群と比較した。主要評価項目である8ヶ月のステント内late lossはResoluteステントで小さく(0.13mm)、Taxusステント(0.42mm)に対する非劣性と優性が示された。また、 Resoluteステントの12ヶ月のTLFは非常に低く、ステント血栓症は0であった。
■Resoluteステントは、2007年10月にCEマークを取得しており、現在約100ヶ国で販売されている。
 
Medtronic Resolute® Drug-Eluting Stent Shows Superiority to Taxus® DES in Study of Patients with Coronary Artery Disease
http://jp.advfn.com/news__48561371.html
 
RESOLUTE US:新世代のzotarolimus溶出ステントはステント血栓が少なく標的病変不全率が低い
http://www.doljapan.com/special/acc/2011/html/15.html
 
RESOLUTE US
http://circ.ebm-library.jp/conferences/trial_ACC_2011.html#acc2011RESOLUTEUS
血管径2.25~4mmの固有血管の新規病変を有する米国人コホートにおいて,薬剤を180日間放出する新世代のzotarolimus溶出ステントは1年後の再狭窄率も,死亡や心筋梗塞,ステント血栓症などのイベント発生率も低かった。
■(京都大学大学院医学研究科内科系専攻内科学講座循環器内科・木村 剛教授のコメント) 
Resolute zotarolimus-eluting stent(R-ZES)は従来のzotarolimus-eluting stent(E-ZES)と同じ薬剤,同じコバルトクロムのプラットフォームを用いて,新たな水溶性ポリマーを使用した薬剤溶出性ステント(DES)である。ポリマーの変更により薬剤の徐放性を高め,より強力な新生内膜増殖抑制効果を期待して開発されたDESである。RESOLUTE USはR-ZESをhistorical controlであるE-ZESと比較する,米国のFDA承認試験である。
現在,新しいDES のpivotal試験においては,既承認のDESに対する非劣性の証明が要求されている。
以前にENDEAVOR IV試験において指摘したが,“Bio Creep”という言葉がある。
DESの場合で言うと,late lossの大きなDESが承認された時,次に評価される新しいDESのコントロールとしてこれが使用されるリスクを表現している。
ZESを今後評価される DESのコントロールとして使用することは不適切であると述べた。
新しいDESのpivotal試験は,試験開始時点におけるスタンダードケアのDESを コントロールとして施行されるべきであると考える。
R-ZESの場合は欧州を中心として市販後に行われたRESOLUTE試験で,現時点でのスタンダードケアのDESであるeverolimus-eluting stentとの比較が行われているため,あえて米国では無作為化試験を行わなかったのであろうと推察されるが,新しいDESのpivotal試験は,試験 開始時点におけるスタンダードケアのDESをコントロールとして施行されるべきであるとの基本認識を持つことは重要である。 

<循環器・ひとくちメモ>
胸部大動脈瘤のステントグラフトの主な適応は遠位弓部の一部と下行部。
頸部三分枝のある弓部や腹部主要分枝がある胸腹部などは通常は適応外だが、医師の裁量で使用されることもある。
(出典; Nikkei Medical 2011.10 P31)


 
<きょうの一曲> モーツアルト 弦楽四重奏曲 ハ長調 K465 不協和音
Mozart String quartet "Dissonance" K465 (1)
http://www.youtube.com/watch?v=kjr4DtZfW4Y&feature=related
弦楽四重奏曲 ハ長調 K465 不協和音 第1楽章
http://www.youtube.com/watch?v=yLW8J2ht9r0
(画像は出ませんが演奏と音質が秀逸です)
弦楽四重奏第19番KV465「不協和音」
http://homepage3.nifty.com/tbd-bake6022/midi/fukyou.html
モーツァルトを聴く 怒りに震えるモーツァルト
http://www2.biglobe.ne.jp/~endoy/mztika3.html
モーツァルトの「不協和音」
http://manabi-note.seesaa.net/article/112568484.html
クロール弦楽四重奏団 モーツァルト弦楽四重奏曲「不協和音」K.465ほか
http://blog.goo.ne.jp/romani1988/e/b110dfdd70f924c61ca7e7c51c15177c
K465
http://www1.harenet.ne.jp/~q9427m/K465.htm
 
                                                                             
 
2011.10.10 朝 撮影 標高1650m
長野・蓼科の紅葉ももすっかり色づきました。



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冠動脈石灰化は粥状動脈硬化のプロセスで生じ、正常血管壁には生じないと考えられています。
そのため、冠動脈石灰化を評価することによって冠動脈硬化の存在とその重症度を評価することが出来るとさ
れて来ました。
しかし、MDCTには石灰化部位が冠動脈狭窄部位とは必ずしも一致せず、また、脂質が豊富で不安定な非石灰化プラークの検出などが出来ないという課題もあります。一般には冠動脈石灰化量(CACS)は冠動脈硬化重症度と相関するといわれており、CACSを算出することによって将来的な心血管事故の危険性を推定することができます。
冠動脈CTAで検出された石灰化が高度な症例での冠動脈の狭窄部位の正確な同定には、冠動脈造影法で確かめる必要があり補完的な関係にあります。


冠動脈石灰化スコアと非石灰化プラークの脆弱性所見
冠動脈石灰化スコアの上昇に伴って冠動脈疾患の罹患率は高まったが、非石灰化プラークの脆弱性と石灰化スコアの間には、このような直線的な関連は見られず、石灰化スコアが中等度の群で脆弱性所見が最も多かったという。
広島大学循環器内科学の卜部洋司氏らが、9月23日から25日まで神戸市で開催されていた第59回日本心臓病学会(JCC2011)で発表した。

冠動脈石灰化は、冠動脈硬化の存在および冠動脈プラークの量と相関しており、総死亡および冠動脈イベントと密接に関連することが国内外で報告されている。
その一方で、急性冠症候群(ACS)発症に関連するプラークの病理学的特徴として、大部分は石灰化を認めず、認めたとしても微細な石灰化にとどまるとの報告もある。
卜部氏らは、ACS自験例でも同様の傾向を認めたため、今回、冠動脈石灰化スコアと非石灰化プラークの頻度・性状との関連について検証した。

対象は、2006年1月~2009年6月に、 冠動脈疾患の精査のために64列CTによる冠動脈造影(CCTA)検査を施行した症例から、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)または冠動脈バイパ ス手術(CABG)の既往例と、アーチファクトによるプラーク性状判定困難例を除いた519例とした。

石灰化スコアはAgatston法に基づき、各スライスにおける石灰化部分の最高CT値によって1~4の重み付けを行い、これに石灰化面積を乗じた上で、すべてのスライスにおける同値の総和として算出した。

CCTAによる評価については、同検査で50%以上の狭窄病変を認めた場合を「閉塞性冠動脈疾患(CAD)」と定義した。

その際、石灰化プラークで内腔が視認できない場合も、CADとした。
また、プラークの分類は、石灰化成分のみのプラークを「石灰化プラーク」、CT値120HU以下の成分を1mm2以上含むものを「広義の非石灰化プラーク(NCP)」と定義した。

対象患者の石灰化スコアは、0が150例、1~100が144例、101~400が134例、401~1000が53例、1001以上が38例だった。

各群における冠動脈イベントのリスク因子を解析すると、年齢、男性の割合、高血圧・脂質異常症・糖尿病の合併率、喫煙率が石灰化スコアと相関した。

CAD罹患率については、石灰化スコアの上昇に伴って右肩上がりに高値となった。

だがNCP陽性率は石灰化スコアと直線的な関係は見られず、石灰化スコアが0の群でも28%に認められ、同値が101~400の群で84%と最大になり、それ以上の群では減少傾向にあった。

さらに、NCPの脆弱化因子であるpositive remodeling(PR)、low CT density plaque(LDP)、spotty calcification(SC)の所見陽性率と石灰化スコアとの関連でも、いずれも石灰化スコアが1001以上の群より、同値が101~400、また は401~1000の群で高率だった。

卜部氏は今回の結果から、「石灰化スコアの上昇とCAD増加との間には関連を認めたが、脆弱性因子を有する非石灰化プラークの陽性頻度は石灰化スコアとは乖離していた。その原因の1つとして、現状のCCTAの解像度の限界が考えられる。また石灰化プラークでは、プラークの破綻とは別の機序が総死亡および冠動脈イベントに関連している可能性もある」と考察した。

出典  NM online 2011.9.26
版権 日経BP社


<参考>
CT検査で冠動脈石灰化がみられたら
○動脈硬化プラークが存在する
○冠動脈石灰化が多ければ、動脈プラークも大量に存在
○加齢により頻度が増加
○男性が女性より高頻度
○高度の石灰化があるほど、有意狭窄病変が存在する可能性は高い
○狭窄病変の重症度とは一致するわけではない
○高度の石灰化があると2〜5年以内に心血管イベントが発症する可能性が高い。
○CACS>100点なら2%/年。
 
CT検査で冠動脈石灰化がみられなかったら
○有意狭窄病変の存在も不安定プラークの存在も考えにくい。
○2〜5年以内の心血管イベントが発症する可能性は低い。(0.1%/年)
 Scientific statement from AHA   Circulation  
         2006;114; 1761-1791
 
 
 
 
 
 
血管石灰化 関連サイト>
血管平滑筋細胞の老化で、血管壁石灰化が進む
血管石灰化
PowerPoint プレゼンテーション
血管の老化メカニズムが世界で初めて解明 -老化保護因子(Klotho)の ..
 
<自遊時間>
昨日の診察室でのこと。
ドイツで長期駐在していた商社マンが来院されました。
心筋梗塞を3回繰り返し、3回目の心筋梗塞後に4本ACバイパスを行ったという心房細動の方です。
ライン河沿いの某都市に住んでみえた方で当地の開業医の紹介状を持参されました。
歳がバレてしまいますが私自身、医学生時代ドイツ語で医学を勉強した世代(といっても単語の羅列で日本語とのチャンポン)です。
先生方の多くも、大学での教養課程の第二外国語はドイツ語を選択されたのではないでしょうか。
最近は単位がとり易いということで中国語や、カッコいいからという理由でフランス語を選ぶ医学生もいると聞きます。私は子どもにはフランス語を勧めました。

実は私は、卒業と同時に出身大学を離れ地元に帰りました。
その時初めて、他大学では既にドイツ語は過去の遺物であることを知りました。
研修医を過ごした病院では同期の研修医は全くドイツ語の医学用語勉強していません。
年配の先生はドイツ語でカルテに書き込まれていて、そういった意味ではジェネレーションギャップが当時の研修医との間に生じていました。
 
紹介状に書かれた言葉には。
Befund
Verlauf
Anamnese
Belastungsdyspnoe
等々。
散りばめられたこれらの言葉は非常に懐かしいものでした。


日本の医学はドイツ医学を離れました。
ドイツでは当たり前のことですが(「未だにそして「これからもずっと」ドイツ医学(ドイツ語を使った診療という意味)」です。
しかし、この患者さんに訊くと当地の先生方の多くは論文投稿は英語とのこと。

以前、タイの医師から英文での紹介状をいただいたことがありますが、今回のドイツの開業医の紹介状と同様に極めて微に入り細に入り理路整然と書かれた客観性の強いものでした。
私にはこんな紹介状は日本語ですらとても書けません。
もちろん今回、英語でもドイツ語でも返書は書けません。
情けないです。
 
 
Steve Jobs    1955-2011
 
 
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井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
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ZEUS試験

戯れ言たれる侏儒 / 2011.09.27 00:39 / 推薦数 : 1
糖尿病合併例のプラーク退縮で上乗せ効果
ACS患者でスタチンにエゼチミブを併用
順天堂大学循環器内科学の宮内克己先任准教授は,臨床試験ZEUS(eZEtimibe Ultrasound Study)により,ACSでスタチンにエゼチミブを併用すると,糖尿病合併例ではLDLコレステロール(LDL-C)値の低下だけでなく,プラーク退縮においても上乗せ効果が得られる可能性を示唆した。
<私的コメント>

先任准教授は専任准教授の間違いかと思いましたが、
准教授
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%87%86%E6%95%99%E6%8E%88

 に
「順天堂大学では、『准教授』を『先任准教授』に、『講師』を『准教授』にそれぞれ名を改めている」
と書かれていました。

 
ACS全体では上乗せ効果なし
宮内先任准教授らは既に,血管内超音波(IVUS)を用いてスタチンによるプラーク退縮効果を検討した臨床試験(ESTABLISH,JAPAN- ACS)で,スタチンによりACS患者のプラーク容積が著明に減少する成績を得ている。ただし,LDL-C値の低下とプラーク退縮との相関は,コントロー ル群を持つESTABLISH試験では認められたものの,コントロール群のないJAPAN-ACS試験では見られず,糖尿病合併例に限って確認された。
 
そこでZEUSでは,作用機序の異なるエゼチミブをアトルバスタチンに併用し,LDL-C値をいっそう低下させることにより,プラーク退縮効果の増強が認められるか,またその影響が糖尿病合併の有無により異なるかどうかを検討した。
ESTABLISH試験終了後,4年間延長して追跡した Extended-ESTABLISH試験でアトルバスタチン単独群と非投与コントロール群を比較した。
 
同先任准教授によると,LDL-C値は単独群で33%,併用群で53%低下し,エゼチミブの上乗せ効果が認められた。
プラーク退縮率は単独群9%,併用群11%で,両群ともコントロール群に比べて有意であったが,単独群と併用群の間には有意差がなかった
コントロール群も含む全例で,LDL-C低下率とプラーク退縮率との関係を検討すると,有意な相関が認められた。
プラーク退縮に関する因子について多変量解析を行ったところ,LDL-C値の低下だけが有意な因子であった。
コントロール群を除いた場合は,LDL-C低下率とプラーク退縮率の有意な相関は見られなかった。
 
さらに,糖尿病合併の有無で検討すると,LDL-C値の低下については,糖尿病の有無にかかわらずエゼチミブの上乗せ効果が認められたが,プラーク退縮効果は単独群と併用群で有意差がなかった。
糖尿病合併例におけるLDL-C低下率とプラーク退縮率の相関は,コントロール群を含めた場合には有意であった が,コントロール群を除くと有意ではなかった。
 
出典  MT Pro 2011.9.22
版権 メディカル・トリビューン社

 

<関連記事>
スタチンとエゼチミブ、フィブラートの併用は、さらなる抗動脈硬化的脂質プロファイルに貢献
 ■スタチン投与は、心血管イベントの強力な抑制効果をもたらすが、未だ単剤では克服できない課題が残存しているのも現状だ。
スタチン単剤に比べ、スタチンと異なる作用機序を持つエゼチミブとコレスチミド、あるいはフィブラートの併用は、さらなる脂質プロファイルの改善に貢献し、動脈硬化の抑制に効果的であることを、2011年9月23日から25日まで神戸市で開催された日本心臓病学会(JCC2011)において金沢大学循環器内科の川尻剛照氏が報告した。
■スタチン投与によって肝臓内のコレステロールプールが減少すると、そのシグナルを感知した肝細胞内の転写因子SREBP2の活性化が起こり、 LDL受容体の発現が亢進する。
その結果、血中からのLDL-Cの取り込みが促進され、強力なLDL-C低下作用がもたらされる。
一方で、この転写因子 SREBP2の活性化を介してLDL受容体の分解を促進するPCSK9の合成も亢進することが分かっている。
つまり、スタチンはLDL受容体の発現を増加させる一方で、受容体を壊す分子も増加させるというわけだ。
■スタチン最大量に比べ、スタチン通常用量とエゼチミブ併用は、有意にLDL-C/HDL-C比を低下させること、スタチン投与により血中PCSK9値が上 昇すること、エゼチミブおよびコレスミドのスタチンへの上乗せはPCSK9値に影響を及ぼすことなくLDL-C値を低下させることが明らかになった。
■スタチンの主なターゲットはLDL-C、フィブラートのターゲットはVLDLやカイロミクロンだ。
そこで両薬剤がリポ蛋白代謝に及ぼす影響を調べるために、III型高脂血症患者6人を2群に分け、アトルバスタチン10mg/日またはベザフィブラート400mg/日のオープンクロスオーバー試験を行い、治療前後のリポ蛋白分画の変化を検討した。
その結果、アトルバスタチンはすべてのアポB含有リポ蛋白分画を低下させたが、HDL分画はほとんど変わらなかった。

一方、ベザフィブラートは小さな粒子 径のLDLを減少させると同時に大きな粒子径のLDLを増やし、HDL分画も増加させた。
このように2剤はリポ蛋白代謝に及ぼす影響が大きく異なることが示された。
■III型高脂血症患者における両剤の併用は、単剤投与に比べ、TCとTGの低下、HDL-Cの増加をもたらすことが示され、両剤は相補的に脂質プロファイルを改善することが明らかになった。
■スタチン単剤に比べ、異なる作用を有する脂質異常症治療薬の併用は、動脈硬化を抑制する脂質プロファイルに貢献する可能性が高い。
中でもPCSK9阻害効果の期待できる薬剤の併用が有用と考えられる
出典  MT Pro 2011.9.26
版権 メディカル・トリビューン社
 
新着の日循機関誌Circulation Journal 
75: October 2011 2497-2504に関連論文が掲載されていました。
Clinical Usefulness of Additional Treatment With Ezetimibe in Patients With Coronary Artery Disease on Statin Therapy
– From the Viewpoint of Cholesterol Metabolism –

http://www.jstage.jst.go.jp/article/circj/75/10/75_2496/_article/-char/ja/
<私的コメント>
Ezetimibe は閉経後女性では薬効が低いと囁かれています。
この論文では男女差の検討、閉経前後の女性の群間比較はされていません。
ちょっと残念でした。

 

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リスクを見極めて薬剤選択や投与法を工夫
大血管障害の予防を目指すためには,患者の心血管危険因子を見極め,それらを悪化させない薬物や改善する薬物を 選択したり,投与法を工夫することが大切だ。
山田センター長の場合,メトホルミン単剤で効果不十分な肥満傾向のある患者への追加薬剤を選択する際に,これ以上の体重増加が危険と思われるような場合に体重を増やさないDPP-4阻害薬,心血管イベントの既往がある人や高リスクの患者には二次予防のエビデンスを有するTZDのピオグリタゾンというような形での使い分けを心がけている。なお,同じTZDでもrosiglitazone(日本未発売)の場合は,ピオグリタゾンとは逆に冠動脈疾患の発症率を高めることが分かっているが,TZDのクラスエフェクトは認められていない。
<私的コメント>
「ピオグリタゾンとは逆に冠動脈疾患の発症率を高めることが分かっているが,TZDのクラスエフェクトは認められていない。」

 「ピオグリタゾンとは逆に冠動脈疾患の発症率を高めることが分かっている。」
の方が読みやすいのでは。
 私はクラスエフェクトというのは「薬効」に使うものと思っていました。
この文章での「クラスエフェクト」も、恐らく薬効のことだと思いますが、ちょっと分かりにくい表現になっています。
ちなみに、「リモデリング」という言葉も 生体にとって防御的な意味なのか、悪い意味なのか分からなくなってしまうことがあります。
「フィードバック」もpositive、negativeと頭の悪い私には苦手な言葉です。

 
<参考>
Class effect
http://www.medicine.ox.ac.uk/bandolier/booth/glossary/class.html
■Class effect is usually taken to mean similar therapeutic effects and similar adverse effects, both in nature and extent. 

 
リモデリング
http://yangt3.blog.so-net.ne.jp/2010-01-06
 
リスクを見極めるための検査としては,定期的に血清脂質値や血圧などを測定することはもちろん,年に1回は心電図と胸部X線像を撮り,ST変化や心拡大の所見を見逃さないようにしている。
 
<私的コメント>
「年に1回は心電図と胸部X線像を撮り」
開業医にとって心電図はまだしも胸部X線はなかなか患者さんに切り出しにくい検査です。
循環器領域からはずれますが、最近こんな症例を経験しました。
症例1.
70代女性。
当院へは骨粗鬆症で通院中(ビスホスフォネート処方)。
休日に発熱。
大病院を受診(多分研修医)。
胸部写真は撮らず、胸部CT検査。
異常影を指摘され、その後の精査で肺がんと診断。
当院では最近胸部X線はしていない。
4年前のレントゲンを出して見てみたが異常影なし。
その後の患者さんの話では、後日CTの後に撮った胸部写真では異常影は指摘出来なかったとのこと。
主治医は「普通のレントゲンでは写らないよ」 と患者さんに説明した由。
何だかすっきりしない結末。

症例2.
70代男性。

半年前から高血圧で通院中の。
「先生、最近ちょっと階段を昇る時に息切れがするんですよ」
聴診器(これも今までに殆どあてた記憶なし)からはVelcro音がはっきり聴取。
あわてて胸部X線をとったら両下肺野に間質性肺炎の像あり。

診療録を見てみたら、胸部X線は一度もとっていない。(冷汗)
あわててKL-6をオーダー。
返って来た検査値は3000オーバー。
降圧剤の副作用かどうかも以前に検査がされていないため知る由もない。
「初診時の検査が大切である」ということで猛省。
高血圧自体についても、初診時に二次性高血圧の否定のためのレニン、アルドステロンや四肢血圧測定(これはCAVIなどで簡単にチェック可能)をしておかなければ「本態性高血圧」といういい加減な(便利な)病名に終わってしまう。
 
さらに同センター長は,初診時には必ず足背動脈に触れ,異常があればABI(Ankle Brachial Index)を測定している。
糖尿病は「血管の老化を15年早める」といわれており,少なからぬ割合でABIの異常が見出されるという。
<私的コメント>  
「血管の老化を15年早める」が真実であっても、血糖のコントロールで大血管障害が予防出来ない(?) ところこそが今回のテーマです。
 
また,低血糖もイベント誘発につながる重要な危険因子だ。
そこで,SU薬を使用している患者には,食事が遅れたときに異常がないかなど入念に問診を行い,服薬指導を徹底することが必要である。
そうした指導にもかかわらず,低血糖が頻回に生じていることが疑われる場合は,SU薬の中止を考慮することも必 要だ。
 
なお,SU薬は経口血糖降下薬の草分けというべき存在であり,承認された当時は,SU単剤で効果不十分な場合に他に併用する薬剤がなかったという経緯もあり,承認用量が高めに設定されている。
多くの選択肢が出そろった今,最大用量のSU薬が必要とされる局面はほとんどなく,最大用量の3分の1~6分の1 程度を用いることが一般的だ。
むやみに増量しても効果の増強にはつながらず,低血糖のリスクを高めるので,慎重な対応が求められる。

 
高血糖予防だけでなく長期的な血糖管理や患者の意識向上にも役立つSMBG

近年,24時間連続して血糖値をモニターできる持続血糖モニター(CGM)が注目されているが,臨床の場で全例に使用することは困難である。
患者自身の 高血糖予防や低血糖を含めた血糖変動を把握できる手段としては,やはり血糖自己測定(SMBG)システムが重要な位置付けとなる。
渥美センター長 は,SMBGを早くから臨床に取り入れ,「1人1人の患者に合った治療戦略」を見いだすことを推奨している。
 
SMBGは,インスリン治療中の患者にとって欠くことのできない機器であるが,インスリンを用いていない糖尿病患者に用いられる機会はさほど多くない。
しかし,血糖降下薬による治療中の患者でもSMBGを用いれば,基本的な血糖日内変動を把握できるだけでなく,運動や食事,ストレスなど,日常生活が血糖変動に及ぼす影響を事細かに知ることができる。
どの時点での血糖変動に問題があるのかが明らかになれば,ピンポイントでその修正を図ることも可能だ。
すな わち,SMBGを指標とすることにより,HbA1cを指標とするよりきめ細かな血糖管理が可能となる。
 
短期的な血糖管理が改善されれば,長期的な血糖管理もおのずと改善される。
同センター長が東京大学および都内9施設と協力して行ったSCCT(SMBG Control and Compliance Trial)では,SMBGを用いなかった患者群に比べ,SMBGを用いた患者群ではHbA1cの有意な改善が得られた。
さらに,同研究ではQOLに関する調査もなされたが,QOL全般をはじめ,不安度,教育,行動,理解度,満足度といった項目のすべてに著明な改善が認められ,患者の治療への参加意識が高 まったことが示唆された。
 
SMBGは操作も簡便で,血圧を測定するように,患者自身の手で何度も繰り返し血糖を測定することが可能だ。血圧計の普及が高血圧患者の意識向上に果たした功績についてはあらためて語るまでもない。
同センター長は「これからは血圧計と同じように,SMBGも身近な健康管理ツールとして活用していく時代に なって欲しい」と言う。
なお,米国ではインスリン治療の有無にかかわらず,糖尿病患者のほぼ全例にSMBGの指導がなされるようになってきているという。
糖尿病の治療は,患者本人と医療者の双方が血糖プロファイルの特徴を知るところから始まる。
そして,その特徴に合わせた最良の戦略を両者が協力して考え,継続していくことが大 血管障害の予防にもつながるのではないか。

 
糖尿病治療薬の気になる副作用,注意すべき副作用
糖尿病治療薬の副作用には,欧州市場からの撤退を余儀なくされたrosiglitazone(日本未発売)の冠動脈疾患をはじめ,SU薬やグリニド薬の低血糖,ビグアナイド(BG)薬の乳酸アシドーシス,TZDの心不全など,生命にかかわりかねない重篤な副作用も多い。
また最近では,ピオグリタゾンにより膀胱がんリスクが高まるとの疫学調査結果を受け,フランス医薬品庁は同薬の新規処方の禁止を決定した。
<私的コメント>  
フランスでは、今後糖尿病患者に対してTZDは新規使用が出来なくなるのでしょうか。
それともピオグリタゾン以外のTZDという選択肢はあるのでしょうか。
もし前者ということなら、フランスと他の諸国での処方の差、すなわちTZDの処方の有無による大血管障害の差(TZDがはたして大血管障害を予防できるかどうか)をみる実験モデルとなるのではないでしょうか。
 

しかし,臨床試験のデータに「批判的吟味」が求められるのと同様に,副作用に関する情報についても提示された情報をうのみにせず,その正当性を自分なりに検証することが必要だ。特
に,副作用に関する最近の報道のトーンや各国の行政当局の対応には過剰と思えるものも少なくない。
「ピオグリタゾンと膀胱がんの関連をめぐる一連の報道とフランス政府の対応は,その最たるものだ」と山田センター長は指摘する。
 
発端となった疫学調査のデータを見る限り,ピオグリタゾンを処方された男性患者では,同薬を処方されていない患者に比べて高い頻度で膀胱がんの発症が見 られることは事実であるが,それだけでは両者の因果関係は証明できない。
なぜなら,ピオグリタゾンが処方されやすい患者像(例えば肥満があって心血管リスクが高い人など)に共通するなんらかの未知の要素が存在し,その要素こそが膀胱がんの発症に直接関与しているという可能性が否定できないからだ。
<私的コメント>  
 なかなか鋭いコメントとして首肯せざるを得ません。
しかし、この仮説が正しいかどうかは(後追い調査でも構いませんが)、この疫学調査のデータから簡単に解析出来そうです。
 
同セン ター長は「こうした不確かな情報に基づく処方禁止の決定は時期尚早であり,処方機会を奪われた患者の臨床的メリットを損なう可能性もある」と指摘。
「今しばらく動向を見守るとした米国の判断の方が冷静で理論的だ」と述べた。
<私的コメント> 

冷静ということは分かりますが理論的かどうかは不明です。
 
なお,ピオグリタゾンにおける膀胱がんは事前に予期しえなかった副作用のように指摘されているが,糖尿病治療薬の副作用には低血糖のように血糖降下作用と表裏一体のものや,α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)の消化器症状のように薬剤の作用機序からある程度予想されたものもある。
TZDによる浮腫や心不全もそうした「想定内」の副作用の1つであり,原因はインスリン作用の増強に伴うNa貯留の促進にある。
裏を返せばインスリン抵抗性が改善された人ほど浮腫や水分貯留が起こりやすいといえ,「もともと心機能に異常がある人でなければ,まず心配いらない」ということだ。

 
また,体重増加もTZD使用時にしばしば見られる現象であり,その機序にはTZDの主たる作用である小型脂肪細胞の増加が密接に関与している。
しかし, いくら小型脂肪細胞が増加しても,食事や運動が適切になされていれば,体重増加につながることはない。
つまり,体重増加は上述の浮腫のように容認してよいものではなく,是正すべきものである。
その点を患者にきちんと伝えず,単に「この薬は体重が増えやすい薬ですよ」という言い方をすれば,患者は体重が増加しても「薬のせいだから仕方がない」と誤解し,生活習慣を見直すことのないまま漫然と「体重を増やす治療」を続けてしまうことになりかねない。
TZDの機序は複雑であり,正確に説明することは難しい面もあるが,「少なくとも体重増加を看過すべきでないことはきちんと説明すべきだ」と同センター長は指摘し た。
 
他剤の副作用のうち重篤なものとしては,BG薬による乳酸アシドーシスがある。
しかし,その頻度は極めてまれで,造影剤を用いる際に使用を控えるなど,一般的な注意を遵守すれば危険はほとんどないという。
 
また,DPP-4阻害薬については,オランダから感染症リスクが上昇するとの報告が寄せられており,その動向が気になるところだ。
そもそも,DPP-4 はリンパ球やマクロファージに発現する細胞表面抗原の1つであるCD26と同一の分子であるため,これを標的とするDPP-4阻害薬が免疫系になんらかの影響を及ぼすとしても不思議はない。
しかし,同センター長は「そうした予断があるがゆえに,普段なら『ただのかぜ』と考える程度の症状でも『副作用の疑い例』として報告された結果,実際より頻度が高めとなった可能性もある」と言う。
そのほか,インクレチン関連薬と膵炎・膵がんなどのがんとの関連を示すElashoff氏の報告がGastroenterologyオンライン版に掲載されたが,データの信頼性に乏しいとして一時撤回されたほか,EASDは反論のステートメントを公表した。
同センター長も,現時点でなんら対応の必要はないとしている。
しかし,DPP-4阻害薬は上市からまだ日が浅く不明な点も多いため,これからのデータ集積が待たれる。
<私的コメント>  
後半は「糖尿病治療における大血管障害予防はなぜ難しいのか」というテーマについての内容とはなっておらず些かの隔靴掻痒感があります。
糖尿病の専門家には、糖尿病治療による「大血管障害予防」についてもう少し正面から議論して欲しいものです。
そうでなければ、ただ血糖のコントロールをするという数字合わせにもなりかねません。
実際、糖尿病患者に低血糖を起こさせるのは、糖尿病の専門家の方が多いのではないでしょうか(絶対数ではなく発生率)。
 
 
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糖尿病治療における大血管障害予防はなぜ難しいのか
糖尿病と大血管障害の因果関係は明らかであるにもかかわらず,糖尿病治療による心血管イベント抑制効果を検討した近年の大規模臨床試験は,いずれも有意な抑制効果を証明できずに終わった。
特にACCORD試験からは,「HbA1cを絶対視した厳格で画一的な血糖管理」はむしろ死亡リスクを高めることが示唆され,かえって糖尿病治療の難しさが印象付けられたとの感が否めない。
さらに,糖尿病治療薬の副作用をめぐる昨今の報道も,治療現場に迷いを生む要因となっている。

血糖降下療法による大血管障害予防効果はエビデンス上では未確立
東京都済生会中央病院糖尿病臨床研究センター・渥美義仁センター長
糖尿病患者の死因の第1位を占める大血管障害の発症を防ぐことは,糖尿病治療の究極の目的だ。
だが,治療法の進歩にもかかわらず,血糖降下療法により大血管障害が予防できることを1次エンドポイントで証明した試験はまだない
 
1970年代後半に開始されたUKPDSでは,2型糖尿病患者5,102例を食事療法主体の従来療法群と薬物療法主体の厳格治療群に分け,6年以上(中央値10.5年)追跡を行った結果,厳格治療群では従来療法群に比べてHbA1cが0.9%改善するとともに,細小血管障害の発生が25%抑制されたが,大血管障害の有意な抑制は示されなかった。
しかし,全例を対象とした後付け解析では,大血管障害についてもHbA1c低下に依存したリスクの低下が認めら れ,HbA1cが1%低下すれば心筋梗塞は14%,脳卒中は12%減少することが示唆された(図1)。
 

 
UKPDSの結果は,より厳格な治療によって確実にHbA1cを低下させることができれば,大血管障害の予防は可能であるとの期待を抱かせるものであった。
しかしながら,大血管障害を1次エンドポイントに設定したACCORDおよびADVANCEの両試験(2008年)では,いずれの強化療法群とも従来療法群より1%以上低いHbA1cを達成できたにもかかわらず,心血管イベントの発生率は従来療法群と変わりなかった。
特にACCORD試験では,強化療法群において従来療法群を有意に上回る総死亡の発生が認められたため,試験は期間満了を待たずに打ち切りとなった。
さらに,耐糖能異常(IGT)の段階からナテグリニドによる介入を行ったNAVIGATOR試験(2010年)や,早期の2型糖尿病患者に対して血清脂質管理や血圧管理なども含めた多因子介入を行ったADDITION試験(2011年)でも,介入による有意な心血管イベント抑制効果は確認できなかった。
 
“real world”では必ずしも“study world”と同じ結果は得られない
しかし,こうした試験の結果から大血管障害予防における血糖降下療法の有用性を否定することは短絡だ。
臨床試験は特定の背景因子を持つ集団を対象とし,特殊な状況下で治療成績を検討するものであり,渥美センター長は「病態も背景因子も1人1人異なる患者と対峙する“real world”で臨床試験と同様の結果が得られるとは限らないことを心しておくべき」と指摘する。
特に,糖尿病は薬物以外の要素が治療に及ぼす影響が他の疾患以上に大きく,“study world”と“real world”の違いは大きいという。
<私的コメント>
ちょっと理解しにくいコメントです。
糖尿病だけが「病態も背景因子も1人1人異なる」わけではないのです。
「糖尿病は薬物以外の要素が治療に及ぼす影響が他の疾患以上に大きく」 ということは、「薬物」と「薬物以外の要素」とどちらの影響が多いと言っているのでしょうか。
 
試験結果がネガティブであったとしても,すべての患者にその治療の有用性が否定されたわけではない。
「ネガティブだったのは,患者の選択やプロトコルが適切でなかったからかもしれない」と同センター長。
事実,ACCORDでは,短期間で血糖降下を目指すプロトコルの中で低血糖が頻発したことが死亡率の上昇につながった可能性が指摘されている。
 
また,NAVIGATOR試験の対象となった欧米人のIGTは肥満傾向が強く,インスリン抵抗性が基盤にあることが容易に想像できる人がほとんどだ。
山田センター長は「そうした人々に対して速効型インスリン分泌促進薬であるグリニド薬をあえて投与するという設定自体に無理があるのではないかという指摘もある」と言う。
逆に言えば,やせ型でインスリン分泌低下傾向の強い日本人のIGTであれば,グリニド薬の効果が実証されうる可能性もあるわけだ。
<私的コメント>
この山田先生のコメントは示唆的です。
「やせ型でインスリン分泌低下傾向の強い日本人のIGT 」での「グリニド薬の効果」は、果たして期待できるのでしょうか。
他の薬剤介入もあることですし、実際にはなかなか難しい臨床試験になりそうです。
グリニド薬に一定のclass effectが確認されていない限りはnegativeな結果となることが予想されます。
 
なお,ACCORDやADVANCEの対象患者は他の心血管リスクも併せ持つ高リスクな糖尿病患者集団だった。
このような患者には,より早期から脂質や血圧なども含めた多因子の管理が重要になってくる。
それを実践したADDITION試験では,統計学的に有意な抑制効果は認められなかったが,多因子介入群と通常治療群の累積イベント発生率には5年で約17%の開きが生じていた。
同センター長は「生涯にわたる付き合いが予想される糖尿病という疾患の最初の5年でこれだけ差がついたことの意味は大きい」と考えている。
<私的コメント>
統計学的に有意な抑制効果はなかったということはさておいて、多因子介入群で累積イベント発生率が低下したのは、血糖より脂質や血圧のコントロールの重要性を物語っているのではないでしょうか。
糖尿病専門の先生の今回のコメントは、少し我田引水的ではないでしょうか。

 
紋切り型のEBMではなく患者1人1人に適した治療戦略の模索が必要
逆に,試験の結果がポジティブであっても,それがそのまま実臨床に当てはまるとは限らない。
例えばDCCT(1989年)は,1型糖尿病患者に対する厳格な血糖コントロールの有用性を証明した歴史的な研究であるが,同研究の参加希望者には事前に1日4回の尿糖検査をはじめとする2週間の厳しいコンプライアンステストが課され,これをクリアできた約10%の応募者のみが選抜されていた。
つまり,同研究は与えられた指示を厳格に守れる「エリート集団」だからこそなしえた試験であり,同じ治療法を“real world”で試しても同等の効果を得ることはまず無理だと考える方が賢明だ。
 
コンプライアンス不良の原因は怠慢だけでなく,経済的事情や仕事の都合で指示を守れない患者もいる。
「そうしたコンプライアンス不良例は社会的・経済的に恵まれない層ほど多く,その格差は年々拡大している」と渥美センタ―長は指摘する。
そうした事情も勘案し,紋切り型のEBMではなく,1人1人の患者に合った治療戦略を考えていくことが求められる。
 
大血管障害の予防を視野に入れた血糖降下療法には何が必要か
血糖降下療法は,食事療法と運動療法を基本とし,それで十分な効果が得られなければ薬物療法を考慮することになるが,日本糖尿病学会のガイドラインでは,現在6系統ある経口血糖降下薬のどれを第一選択薬として用いるべきかという基準は示されていない。
 
一方,米国糖尿病学会(ADA)と欧州糖尿病学会(EASD)では,2009年に両学会の合同による具体的な治療アルゴリズムを発表。また,英国立医療 技術評価機構(NICE)も,2008年に2型糖尿病診療ガイドラインの改定を行い,新たな治療アルゴリズムを提唱している(図2)。

 
 
2つのアルゴリズムには若干の違いはあるが,どちらもメトホルミンを第一選択薬と位置付け,必要に応じてスルホニル尿素(SU)薬やチアゾリジン誘導体(TZD),DPP-4阻害薬,基礎インスリンなどを追加するという基本的なスタンスは共通している。
 
これらの姿勢には,渥美,山田両センター長ともおおむね賛意を寄せるが,欧米向けのアルゴリズムであるためか「肥満を伴わない糖尿病患者についてあまり考慮されていない感がある」と山田センター長は指摘する。
肥満のない患者には「第一選択薬は少量のSU薬。それで不十分ならメトホルミン,次いでTZDか DPP-4阻害薬を追加する方が好ましい」ということだ。
<私的コメント>
このあたりの理屈は糖尿病専門医でない、われわれ循環器医にも今や常識となっています。
しかし、適応はともかくとして大血管障害予防を含めた生命予後に対する各々の経口糖尿病薬の効果がはっきり分かっていないのが現状ではないでしょうか。
この領域ではclass effectやdrug effect ,さらには
pleiotropic effectの話はほとんど聞かれません。
 
出典 Medical Tribune 2011.9.22
版権 メディカル・トリビューン社

 
 
http://www.wako.ac.jp/art/cn16/Event-Teacher-0901.html

佐藤泰生

 
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耐糖能正常の安定冠動脈疾患患者ではTG値がリスク
心血管イベントのハイリスク例において、空腹時および食後の血清トリグリセリド(TG)値がリスク因子になるかどうかは議論があり、耐糖能異常の有無による検討も行われていなかった。
今回、Homburg Cream and Sugar(HCS)試験から、耐糖能正常の安定冠動脈疾患患者では、空腹時および食後のTG値は心血管イベントのリスク因子となることが判明した。
8月 27日からパリで開催されている欧州心臓学会(ESC2011)で、ドイツ・ザールランド大学のUlrich Laufs氏が報告した。
 
心血管イベントの既往のない被験者を対象とした大規模臨床研究のメタ解析では、空腹時TG値は年齢、性別で補正後も冠動脈疾患のリスク因子となったが、 さらに他のリスク因子で補正すると有意ではなくなった。
また、健常者を対象とした大規模臨床研究では、非空腹時のTG値は心血管イベントの有意なリスク因子だったが、空腹時TG値は有意な因子ではなかった。

こうした状況の中でUlrich氏らは、冠動脈疾患患者を対象に、伝統的なリスク因子および耐糖能異常に加えて食後TG値を評価することで、心血管イベントの予測能が改善するかどうかを検討するために本試験を行った。

<私的コメント>
「伝統的なリスク因子」には当然HDLが含まれる筈です。
TG値が上昇すればHDLが減少すると考えるのが一般的です。
このHDL値は「非空腹時」TG値と空腹時」TG値のどちらに(逆)相関が強いかが興味の持たれるところです。
いずれにしろ、非空腹時(食後)」TG値よりHDL値の方が「心血管イベントの有意なリスク因子」という結果であれば身も蓋もないことになってしまいます。
いずれにしろ、この論文ではHDLについて一切触れていないことが不思議です。
 
対象は安定冠動脈疾患患者514人で、脂質75gを含むクリーム250mLを経口摂取する脂質負荷試験を行い、5時間後までの血清TG値の変化を測定した。
さらに糖尿病治療歴のない患者では経口TG負荷3時間後に75g糖負荷試験を実施し、負荷2時間後の血糖値で耐糖能異常の有無を判定した。
<私的コメント>
「経口TG負荷」の具体的方法は示されているところでしょうが知りたいところです。
「経口TG負荷3時間後に75g糖負荷試験を実施 」と連続に行った意義は何なんでしょうか。
 
主要複合アウトカムは18カ月後の心血管死および心血管疾患による入院とした。
<私的コメント>
「主要複合アウトカム」が「心血管死および心血管疾患による入院」ということですが、「入院」は客観的なアウトカムにはなり得ないのではないでしょうか。
主治医は血清TG値や75gOGTTの結果を知っている筈です。
心血管疾患には、不安定狭心症、心筋梗塞、症状発症に伴う予定外の冠血管造 影、心不全、虚血性脳卒中、一過性脳虚血発作、血行再建術を要する血管疾患、心肺蘇生を要する不整脈、緊急の心デバイス留置を含めた。

ベースラインの患者背景は年齢66.4歳(男性比率82.9%)、血圧126.7/74.6mmHg、空腹時血糖値120.7mg/dL、HbA1c値 6.17%、LDLコレステロール値105.1mg/dLだった。

また、耐糖能正常が24.5%、耐糖能異常が29.2%、糖尿病が46.3%、メタボリックシンドロームが53.7%を占めた。
主な治療薬の服用率は、抗血小板薬97.3%、レニン・アンジオテンシン系抑制薬95.5%、β遮断薬 93.5%、利尿薬43.9%、スタチン94.6%などだった。

食後TG値から対象者を198mg/dL未満群、198~305mg/dL群、305mg/dL超群の3群に層別し主要複合アウトカムの発生を比較したが、その発生に統計学的な有意差は認められなかった(p=0.22)。

一方、空腹時TG値から対象者を106mg/dL未満群、106~150mg/dL群、150mg/dL超群の3群に層別して同様に主要複合アウトカムの発生を比較したところ、150mg/dL超群でその発生が有意に高率だった(p=0.04)。

また、耐糖能異常/糖尿病群では耐糖能正常群に比べて、経口TG負荷試験後の血清TG値は空腹時から高値だったが、空腹時からの増加率は、この2群間で同等だった。

さらに、耐糖能異常/糖尿病群では、空腹時および食後のTG値は主要複合アウトカムの予測因子ではなかった。

これに対して耐糖能正常群では、空腹時および 食後のTG値は主要複合アウトカムの予測因子となっており、その傾向は空腹時TG値が高い場合でも食後TG値が高い場合でも一貫して認められた。

Ulrich氏は、本試験の限界として、負荷試験後のTG値を5時間までしか測定していないこと、対象の95%がスタチンの投与を受けていたこと、遺伝的 背景は加味していないこと、対象は白人が大半を占めたことなどを指摘した上で、「耐糖能正常の冠動脈疾患患者では、空腹時TG値および食後TG値は、それぞれ冠動脈イベントの発症を予測する独立した因子である」とした。

出典  NM online 2011.8.30
  (日経メディカル別冊編集)
版権 日経BP社
 
 
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