スタチンによる脳出血リスク,メタ解析発表関連性認められずカナダ・西オンタリオ大学のDaniel G. Hackman氏らは,スタチン投与と脳出血(頭蓋内出血)リスクとの関連性は認められなかったとのシステマチックレビューとメタ解析の結果を,Circulation 10月17日オンライン版に報告した。近年,大規模ランダム化比較試験(RCT)でスタチン投与による脳出血リスクの増加が示唆されていた。 17のデータベースから42報を抽出脂質低下療法のRCTにおいて,スタチンを用いたより強力な治療が心血管イベント発生リスクを低下させたとするCholesterol Treatment Trialists'(CTT)Collaborationのメタ解析(Lancet 2010; 376: 1670-1681)がある一方で,脳卒中例への高用量スタチン投与で脳出血リスクをわずかながら増加させるとの報告(N Engl J of Med 2006; 355: 549-559)もあり,特に脳卒中既往例ではスタチン投与によるリスクとベネフィットが不確かであった。 そこでHackman氏らは,コクラン臨床試験レジストリー,Medline,米国立衛生研究所(NIH),米食品医薬品局(FDA),欧州医薬 品庁(EMEA)などの17のデータベースから,2人の独立したレビュアーが今年(2011年)1月までに,スタチンおよび脳出血の頻度について報告され たRCT 23報と観察研究19報を抽出。スタチンと脳出血リスクとの関連性をDerSimonian-Laird 法により検討した。 なお,スタチン併用による報告および,急性脳梗塞による血栓溶解療法後の出血に焦点を置いた報告は除外した。 心疾患発症抑制のベネフィットに比べリスク小さい42報の全対象者24万8,391例中,脳出血を来したのは1万4,784例。 RCT(追跡期間中央値3.9年)においてスタチン投与の脳出血のリスク比(RR)は1.10(95%CI 0.86~1.41,I2=30%,P=0.67),同等性の絶対リスク増加は0.27%(同-0.042~0.096)であり,脳出血との関連性は認められなかった(図1)。
また観察研究(追跡期間中央値3.0年)のうち,コホート研究(12報)におけるスタチン投与の脳出血のRRは0.94(同0.81~1.10,0%,P=0.67),症例対照研究(6報)では0.60(同 0.41~0.88,66%,P=0.06,図2)であり,いずれも有意差は認められなかった。
Hackman氏らは「スタチンによる脳出血リスクがあるとしても,心疾患発症抑制のベネフィットに比べるとリスクの程度は小さい可能性がある」 と指摘。脳梗塞の危険因子はアテローム動脈硬化性疾患と類似しているため,同氏らは「臨床医は冠動脈疾患イベント抑制のためにスタチン使用を継続すべき だ」と述べている。 (田上 玲子) 出典 MT pro 2011.10.21
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<関連サイト>
昨年,日本脂質栄養学会のガイドライン発行に伴い,コレステロールを低下させる医療の是非についてホットな議論が展開されました。
今回の論文を報告したCholesterol Treatment Trialists'(CTT)Collaborationは,すでに 2005年にランダム化比較試験(RCT)のメタ解析を報告しており,LDLコレステロール (LDL-C)を低下させることにより動脈硬化性疾患(冠動脈死,非致死性心筋梗塞,冠動脈再灌流,脳卒中)を20%程度減らせることを示しています(Lancet2005; 366: 1267-1278)。
脳卒中の結果については今回のCTT Collaborationの介入研究のメタ解析ではスタチン群・積極的スタチン使用群の方が成績が良かったが,PSCの観察研究ではTCと脳卒中死の間に関係性を認めることができなかった。
この差異の説明は困難であるが,PSCでは収縮期血圧の相違によりTCと脳卒中死の関係性が変化していることが示されている。
よって,血圧の影響が介在しており,直接的にコレステロールと脳卒中死の関係を評価できていない可能性がある。
今回のCTT Collaborationのメタ解析は血圧を含めた交絡因子の影響を理論的に除外できる介入研究のみを取り扱っており,この解析でスタチン群・積極的ス タチン使用群の方が脳卒中の成績が良かったことは,そのまま受け取ってよいように思われる。
出典 MT pro 2010.11.16(一部改変)
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石垣定哉「春のセーヌ」6F
http://www.umeda-garou.jp/kako2009.htm
アルドステロン高値は脳卒中リスク,日本人の前向き調査で判明
欧州心臓病学会で発表
アルドステロン値の上昇は心疾患リスクにつながることが指摘されているが,脳血管への影響も含めた心血管疾患全体に影響があるのかどうかは明らかにされていない。
そこで,京都第二赤十字病院循環器科の井上啓司氏は,同科の外来患者連続1,268例を対象に,前向きの追跡調査を実施した。
この結果が第33 回欧州心臓病学会(ESC Congress 2011;8月27~31日,仏ロワシー)で発表され,アルドステロン高値と脳卒中リスクの有意な関係が見いだされた。
患者背景調整後もアルドステロン高値群で脳卒中発生が有意に高率
登録患者は男性が758人,女性は510人で,平均年齢は69.5歳だった。
登録時の血清アルドステロン中央値は106.0pg/mLで,それ以上の患者をアルドステロン高値群(高値群,639人),低い患者をアルドステロン低値群(低値群,629人)に群別した。
年齢は低値群の方が有意に低く, 高血圧や心房細動は高値群の方が有意に多かった。
この2群間で脳卒中発症頻度に差があるかどうかを検討した。
追跡期間中央値1,535日で64人(5.1%)が脳卒中を発症,心血管死は59人(4.7)だった。
脳卒中発症率は,高値群7.2%に対して低 値群2.9%と高値群で有意に高かった(P=0.0016)。
また,脳梗塞の発症率も順に6.1%,2.2%と高値群で有意に高かったが (P=0.0016),脳出血については1.3%,0.7%で統計学的に有意な差はなかった。
Coxハザードモデルで患者背景(年齢,性,BMI,血圧,左室駆出率,心房細動)を調整したところ,高値群の脳卒中発症のハザード比は 3.521(P<0.0001)だった。また,高値群では心血管死が有意に増加していた(調整後ハザード比4.253,P<0.0001)。
脳卒中の予防,既存のリスク因子では不完全
井上氏は「減塩指導や降圧治療,心房細動の抗凝固療法やカテーテルアブレ―ションといった先進的治療を最大限駆使し,既存のリスク因子を管理していても,脳卒中の発症を抑制しきれないのがなぜかを明らかにしたかった」と研究動機を説明した。
同氏は今回,レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系 の最終代謝産物であるアルドステロンの影響に着目したが,原発性アルドステロン症では既に脳卒中の発症が多いことが報告されている。
今回の循環器外来通院 患者の検討でも同様に,アルドステロン高値例では脳血管障害・心臓死が有意に多いことが明らかにされたことから,「アルドステロンは,血管内皮や平滑筋や 心筋への作用が指摘されているが,脳卒中発症の面でも重要な因子ではないか」と指摘している。
臨床現場におけるアルドステロン値の活用については,国際的に単位・正常値が異なる点や,測定条件による変動があるため,慎重に活用する必要があ る点を課題として挙げた。
一方で,簡易に評価でき汎用性も高く,臨床的意義も明らかにされてきているため,今後,リスク評価に用いることで心血管疾患予防 への貢献が期待できるとしている。
抗アルドステロン薬による治療が脳卒中予防につながるかどうかは現時点では不明であるが,同氏は少なくとも現在のガイドラインで治療基準に該当する患者については,同薬が確実に投与されるべきではないかとしている。 (田中 かおり)
出典 MT Pro 2011.9.8
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<私的コメント>
同様の内容が、第75回日本循環器学会総会・学術集会(2011.8.3〜4、横浜)で発表されています。
ラウル・デュフィ
ヴァカンス・フォルセ:モンソウヌの私たちの家 木版
http://www.suiha.co.jp/?cat=9&pid=782&aid=19
無症候性頸動脈狭窄症の脳卒中リスク,2つの超音波検査でより高い予測能国際前向き研究ACES登録患者の解析無症候性頸動脈狭窄症(ACS)患者における脳卒中予測マーカーとしての可能性を検討するため,英ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジの Raffi Topakian氏らは,国際的な前向き観察研究ACESに登録した重症ACS患者435例を対象に,頸動脈および経頭蓋の2つの超音波検査を行い,約2年間追跡した。その結果,同側の脳卒中リスク予測能は,いずれかの超音波検査だけで行うよりも,両方の超音波検査で行う方がより高いことが分かった(Neurology 8月17日オンライン版)。 低輝度型プラーク+ES陽性で同側の脳卒中リスク10倍以上Topakian氏らは,1999年7月〜2007年8月にACESに登録したACS患者から,重症(狭窄度≧70%)で,頸動脈領域および大脳 動脈領域において2年以上無症候であることなどを条件に抽出し,435例(平均年齢71.4歳,男女比およそ7対3)を解析対象とした。 頸動脈超音波検査によるプラーク輝度,および経頭蓋ドプラ超音波(TCD)検査による同側の中大動脈における塞栓信号(ES)を評価した。プラー ク輝度は,低輝度型(echolucent)が164例(37.7%),等〜高輝度型(echogenic)が204例(46.9%),石灰化型が67例 (15.4%)であった。 ESは,TCDによる解析が可能であった423例中73例(17.1%)で1カ所以上で検出された。また,ACSの狭窄度は,228例(52.4%)が70〜79%,124例(28.5%)が80〜89%,83例(19.1%)が90〜99%であった。 なお,ベースラインにおける低輝度型プラークとACSの狭窄度またはESの検出においてはいずれも関連は認められなかった(順にP=0.207,0.867)。 そのほかの脳卒中リスク因子は,高血圧症339例(77.9%),糖尿病91例(20.9%),喫煙は喫煙者64例(14.7%),喫煙歴あり 199例(45.8%),喫煙歴なし172例(39.5%),虚血性心疾患の既往156例(35.9%),心房細動の既往28例(6.4%)であった。 対象患者を平均1.82年にわたり追跡調査し,Kaplan-Meier法解析およびCox比例ハザード回帰モデルにより,低輝度型プラークの脳卒中予測マーカーとしての可能性を検討した。その結果,低輝度型プラークは同側の脳卒中や一過性脳虚血発作(TIA)の発症リスクを有意に高めることが分 かった(表)。
また,低輝度型プラークおよびES陽性の両方に該当した患者が27例(6.3%)いたが,両所見が認められると脳卒中リスクは急増し,同側の脳卒中に対してはハザード比10以上の高い予測能を示した。 これらの結果から,同氏らは「同側の脳卒中リスクは,低輝度型プラークおよびES陽性のいずれにも該当しなかったACS患者の年間リスクが0.8%なのに対し,両方が該当した患者では8.9%と,10倍以上のリスクの上昇が認められた」と結論付けた。さらに,「ACS患者の頸動脈内膜剥離術 (CEA)選択における有用な指針となる可能性がある」と結んだ。 (松浦 庸夫)出典 MT Pro 2011.8.25
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ある日の「プラビックス発売5周年記念講演会」のメモです。①日本の脳卒中患者さんは増え続けている
推計患者数(2010年)
発症者数 291,000人/年
有病者数 約3,100,000人
要介護者数 約1,850,000人
②脳卒中の分類
血管が詰まるタイプ
脳梗塞(TIAは脳梗塞そのものには分類されない)
ラクナ梗塞
アテローム血栓性脳梗塞
心原性脳塞栓
血管が破れるタイプ
脳出血
クモ膜下出血
(私的コメント;脳梗塞=脳血栓+脳塞栓という分類ないしは概念はどうなったのでしょうか)
③治療法と推奨グレード(脳卒中治療ガイドライン2009)
■ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓のいずれも発症3時間以内はt-PA静注はクラスA
(私的コメント;個人的には何となく心原性脳塞栓は3時間以内でもt-PA静注により出血性梗塞が起こるのでは内科と心配です。小渕元総理や長嶋元監督の心原性脳塞栓に対する治療はどうだったのでしょうか。)
■アスピリンはラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓のいずれも発症時間に関係なくクラスA
④脳血管内治療用デバイス
Merel Retriever
Penumgra System
⑤新しいTIAの定義
局所脳虚血、脊髄虚血または網膜虚血に起因する、一過性の神経脱落症状で、急性脳梗塞梗塞の発生を伴わないもの。
AHA/ASA Strole Council:Stroke 2009; 40;2276−2293 ⑥FASTER(Fast assessment of stroke and transuent ischaemic attack to prevent early recurrence);a randomized controlled pilot trial
⑦脳梗塞急性期治療の目的のひとつは「再発予防」であり、いち早く抗血小板療法を開始する必要がある。
そのため、プラビックスは経口不能でも経管にて初日から投与する。
⑧プラビックスはADP凝集をしっかりと抑制することが確認されている。
脳梗塞再発の予防は非常に重要であり、もっとも効果の高いプラビックスを最初から単剤にて使用する。
プラビックスは副作用も少なく、使いやすい薬剤であるが、 肝機能のチェックはしっかりと行うことが必要である。
脳血管障害はATIS の一病型であり、血小板の活性化が強く関与するので、全身のケアの意味もこめてプラビックスを選択する。 (続)
<番外編>
座談会 急性期脳血管障害の診断と治療
〜一過性脳虚血発作(TIA)を中心に
http://medical.nikkeibp.co.jp/all/special/sa/tia-plavix/
■TIA発症後90日以内に発症した脳梗塞の約半数は、TIA発症後48時間以内に発症していることがわかり、迅速な評価および治療開始の重要性が指摘sれている。
■英国で行われたEXPRESS(Early use of eXisting PREventive Strategies for Stroke)Studyでは、即時入院とならなかったTIAあるいは軽症脳卒中の患者さんを対象に、抗血小板薬、降圧薬などによる早期治療介入の影響が検討された。
TIAおよび軽症脳卒中発症後、早期に治療介入を行った群では脳卒中発症リスクが約80%も有意に低下した。

■これまでTIAは脳および網膜の虚血症状が24時間以内に完全に消失する病態と定義されていたが、実際には1時間以内に消失するケースが多いことが指摘されている。
■画像診断の進歩に伴い、脳組織の状態を反映したTIAの定義を求める動きも広がっている。
ある検討では、症状が3分間以上持続するケースがほとんどで、数秒で症状が消失する場合はTIAではない可能性が高いと考えられる。
症状の持続時間は1時間以内が約半数を占め、ときには同じ症状を繰り返す。
TIAの場合、受診時には症状が消失していることが多いため、診断に際しては患者さんに発作時の様子をしっかり確認することが大切である。
発作の内容から局所脳神経症状が認められた場合はTIAと診断してよいと思われるが、疑わしい場合は画像診断によって病巣の有無などを確認する。

■TIAは治療しなくても短時間で症状が消失するため、患者さんやその家族のみならず医師からも軽視されることがある。
しかし症状が消失しても原因は残っている。
TIA発症後2日以内の脳梗塞発症リスクは5%、90日以内では10~15%と報告されており、脳梗塞後の再発リスクよりも高いことがわかっている。
脳卒中治療ガイドライン2009では「TIAを疑えば、可及的速やかに発症機序を確定し、治療を直ちに開始(グレードA)」と記載されている。
■専門医が診療した場合、TIA発症後2日以内の脳梗塞発症リスクは0.6%、7日以内では0.9%と非常に低いことが報告されている。
■脳卒中治療ガイドライン2009では、非心原性TIAの脳梗塞発症予防には抗血小板薬のアスピリン、クロピドグレル投与をグレードAとして推奨している。
■ 欧州脳卒中機構(ESO)のガイドラインでは、抗凝固療法を必要としない非心原性の脳梗塞やTIAの場合は、アスピリンとジピリダモールの併用、クロピドグレル単独投与を推奨している。
また、米国心臓病協会(AHA)のガイドラインでは、非心原性脳梗塞またはTIAには、アスピリン単独、アスピリン/ジ ピリダモール合剤、クロピドグレル単独投与を初期治療として推奨している。
■TIAの診断では脳梗塞と同様に、心原性、非心原性といった病型の診断が大切で、治療では非心原性の場合は抗血小板薬、心原性の場合は抗凝固薬の投与が重要である。
読んでいただいて有り難うございます。
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その他
「葦の髄」循環器メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/
(循環器専門医向き)
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21 http://wellfrog.exblog.jp/
(内科医向き)
「井蛙」内科メモ帖
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/
があります