① 症状発現後の経過時間が24時間以内で、以下の基準のうちのいずれかに該当するTIA患者に対しては、入院加療を行うことが妥当である。
a. ABCD2スコアが3点以上の場合(クラスⅡa、エビデンスレベルC)
b. ABCD2スコアが0〜2点で、外来診療部における詳細な診断的検査を、2日以内に完了できるか否かが不明な場合(クラスⅡa、エビデンスレベルC)
c. ABCD2スコアが0〜2点で、患者の臨床症状が局所虚血に起因するものであrことを示唆するその他のエビデンスが存在する場合(クラスⅡa、エビデンスレベルC)
AHA/ASA Strole Council:Stroke 2009; 40;2276−2293
②TIAには”T(Take)、I(Immediate)、A(Action)"の対応が求められる。
③ABCD2スコアと2日以内の脳梗塞発症率
0〜3点 1.0%
4〜5点 4.1%
6〜7点 8.1%
④未治療例では2週間以内に10%近くが再発
その50%はTIAから48時間以内
OXVASC, OCSP, UK-TIA, ECSTの4つの大規模試験を解析
Rothwell PM,et al:Neurology 64:817,2005
(以下の<参考>の図1を参照)
⑤Population-Based Study of ABCD2 Score, Carotid Stenosis and Atrial Fibrillation for Early Stroke Prediction After Transient Ischemic Attack
The North Dublin TIA Study
(Stroke.2010:41:844-850)
ABCD2スコアが低値の場合にも脳卒中を繰り返す患者がしばしばいる。
そういった症例では頸動脈狭窄の存在を考える必要がある。
⑥TIAの急性期治療と脳梗塞発症防止
■TIAを疑えば、可及的速やかに発症機序を確定し、脳梗塞発症予防のための治療をただちに開始しなければならない(グレードA)。
■TIAの急性期(発症48時間以内)の再発防止には、アスピリン160〜300mg/日の投与が推奨される(グレードA)。
■非心原性TIAの脳梗塞発症予防には抗血小板療法が推奨され、本邦で使用可能なものはアスピリン75〜150mg/日、クロピドグレル75mg/日(以上、グレードA)、シロスタゾール200mg/日、チクロピジン200mg/日(以上、グレードB)である。
必要に応じて降圧薬(ACE-Iなど)、スタチンの投与も推奨される(グレードA)。
■狭窄率70%以上の頸動脈病変によるTIAに対しては、頸動脈内膜剥離術(CEA)が推奨される(グレードA)。
狭窄率50〜69%の場合は年齢、性、症候などを勘案しCEAを考慮する(グレードB)。
狭窄率50%未満の場合は、積極的にCEAを勧める科学的根拠に乏しい(グレードC1)。
CEA適応症例ではあるが、心臓疾患合併、高齢などCEAハイリスクの場合は、適切な術者による頸動脈ステント留置術(CAS)を行っても良い(グレードB)。
■TIAおよび脳卒中発症予防に、禁煙(グレードA)、適切な体重維持と運動の励行が推奨される(グレードC1)。
飲酒は適量であれば良い (グレードC1)。
⑦National Stroke Association Guidelines Noncardioembolic TIA
非心原性塞栓による一過性脳虚血発作(TIA)
■持続する非心原性塞栓を有する患者においては、脳卒中や他の血管イベントの二次予防として即刻毎日長期間継続する抗血小板療法を処方すべきである。(カテゴリー1)
■さらなる血管イベントを予防するうえで、クロピドグレルはアスピリンよりも有効性が高いと考えられる。(カテゴリー1)
■アスピリンを服用中にアテローム血栓性TIAを発症した患者に対しては、クロピドグレル(毎日75mg)またはアスピリン(25mg)と徐放性ジピリダモール(250mg)1日2回が一般的に推奨される。(カテゴリー3)
■チエノピリジン誘導体による治療を開始するTIA患者では、副作用が少なくモニターの必要性も低いのでチクロピジンよりもクロピドグレルを使用すべきである。(カテゴリー4)
■非心原性塞栓によるTIAの患者に対して、クロピドグレルは第一選択薬として、または患者がアスピリン単独あるいはアスピリンとジピリダモールの併用に対して忍容性がないときに処方できる。(カテゴリー4)
(Ann Neurol 2006;60:301-313)
⑧脳卒中治療ガイドライン2009
脳梗塞慢性期 再発予防のための抗血小板療法
非心原性脳梗塞(アテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞など)
■非心原性脳梗塞の再発予防には、抗血小板薬の投与が推奨される(グレードA)。
■現段階で非心原性脳梗塞の再発予防上、最も有効な抗血小板療法(本邦で使用可能なもの)はアスピリン75〜150mg/日、クロピドグレル75mg/日(以上、グレードA)、シロスタゾール200mg/日、チクロピジン200mg/日(以上、グレードB)である。
■非心原性脳梗塞のうち、ラクナ梗塞の再発予防にも抗血小板薬の使用が奨められる(グレードB)。ただし十分な血圧のコントロールを行う必要がある。
⑨CAPRIE試験の紹介
⑩Cilostazol for prevention of secondary stroke(CSPS 2) :an aspirin-controlled, double-blind, randomised non-inferiority trial
⑪脳卒中の登録・観察研究 "EVEREST"
■発症2週間から6ヶ月の脳梗塞患者の再発率を確認したEVEREST研究における脳梗塞再発率は、比較的遠隔期の患者も組み入れられたREACH Registryよりも高い値を示した。
すなわち脳梗塞患者においては最初からOptimal Medical therapyが必要なことが示された。
■ EVERESTとREACH Registryの比較
EVEREST
登録時期 2007〜2008年
対象 軽度〜中等度脳梗塞
1年間の再発率 3.8%(脳梗塞)
REACH Registry
登録時期 2004年
対象 脳梗塞またはTIAの既往
1年間の再発率 2.96%(全脳卒中)
2.77%(非致死性脳卒中)
<参考>
ABCD2, ABCDスコア
見逃すと怖い一過性脳虚血TIA患者に様子見は危険!! (2010.3.19 日経メディカル別冊)
■ 国内ではいまだに「一過性脳虚血(TIA)は軽症で緊急性がない」と考えられているのが現状ですが、実はTIAに対する認識は、この5年ぐらいで大きく変わってきており、専門家たちは、TIAの患者は原則全員入院して、精査・治療を直 ちに行うことを勧めています。
■これは、TIAを放置すれば発症後3カ月以内に10~15%が脳梗塞を発症し、しかも、その半数は48時間以内に起きることが分かってきたからです。
TIAを疑ったら、早急に急性期の脳梗塞に対応できるような施設に送ることが求められるよう になっています。
■脳梗塞とTIAの治療はほとんど同じなので、両者の区別は重要でなくなっている。
心筋梗塞と狭心症が急性冠症候群(acute coronary syndrome)としてまとめられたように、今後、脳梗塞とTIAも一つの疾患群として考えられるようになるのではないか、といわれている。
■ある日突然、片麻痺や半身のしびれ、片眼の視力障害などが出現。
多くは10分前後で消失するが、放置すれば発症後3カ月以内に10~15%が脳梗塞を発症する。
しかも、その半数は48時間以内に起きる─。
これらが一過性脳虚血発作(TIA:transient ischemic attack)の新たな病態だ。
■ TIAとは、局所脳虚血の症状が出現して24時間以内に消失する一過性発作。多くはアテローム硬化性病変や心疾患がベースにあり、動脈由来の微小塞栓、心原性塞栓、血行力学性血流不全などによって脳虚血を起こす。
■ 従来から、TIAは脳梗塞発症の前ぶれだといわれては来たが、それは「TIAを起こすと5年以内に3割が脳梗塞を起こす」といった緊急性を感じさせない データに基づくものだった。
そのためか、国内ではいまだに「TIAは軽症で緊急性がない」と誤った認識がなされているのが現状だ。
(プライマリケア医がTIAを拾い上げるためのコツ)
図1 TIA発症者における脳梗塞発症までの期間
■脳梗塞を起こした患者の23%が、以前にTIAを経験しており、そのうち43%が脳梗塞発症からさかのぼって1週間以内に起きていたというデータが報告されている(図1)。TIAを起こした患者は、発症後3カ月以内に10~15%が脳梗塞を発症し、その半数は48時間以内に起きることも分かり、2日以内の脳梗塞発症リスクを評価するスコアも登場した(ABCD2スコア)。
■脳梗塞を起こした2416人のうち23%(549人)が脳梗塞の発症前にTIAを経験。
脳梗塞発症日からさかのぼって7日以内にTIAを起こしていた患者が43%(234人)を占め、中でも前日と当日の発症が多かった(Neurology2005:64;817-20.)。
図1は、14日以内にTIAを発症した患者だけに絞った分布。
図2 TIA患者へ迅速な初期治療を行うことによる脳梗塞発症リスクの変化
■TIA発症後、迅速に診断・治療を行うことで、その後の脳梗塞発症率が大幅に下げられるという複数の大規模臨床試験の結果が報告されている。
■イギリスの研究では、TIAまたは軽度の脳梗塞を発症した患者に対し、発症後1日以内に迅速に評価し、治療を開始した場合、発症から20日後に治療を開始した場合に比べて、90日以内の脳梗塞発症リスクが80%減少することが分かった(図2)。
■ 2つの期間で1278人のTIAおよび軽症脳梗塞患者を追跡調査したもの。
フェーズ1では、家庭医が診察し、TIA・軽症脳梗塞評価は発作の平均3日後、 薬物治療は発作の平均20日後に開始。フェーズ2では、直接専門病院入院とし、評価・治療とも発作の平均1日後に開始。発作後90日以内の脳梗塞発症率 は、前者で10.3%、後者で2.1%だった(Lancet2007:370;1432-42.)。
■フランスの医療機関でも、24時間体制でTIA患者を受け入れるシステムを作り、発症24時間以内に診断・治療を行ったところ、90日以内の脳梗塞発症率は1.24%。予測された発症率に対して80%も低かった。
■2006年のAHA/ASA(米国心臓協会/米国脳卒中協会)ガイドラインでは、既に、治療に関してはTIAは脳梗塞と同様の扱いで対応するよう明記している。
■国内で日本脳卒中学会など5学会が昨年改訂した「脳卒中治療ガイドライン2009」では、TIAを初めて一つの独立した項目として新設。
「TIAを疑えば可及的速やかに発症機序を確定し、脳梗塞発症予防のための治療を直ちに開始しなくてはならない(グレードA)」と早期介入の重要性を強調した。
■ABCD2スコアは、TIA発症48時間以内の脳梗塞発症リスクを評価するために開発されたもの。
年齢や血圧、神経症状などについて点数化し、7点満点で、スコアが高いほど脳梗塞発症リスクが高いことが分かっている(表2)。
■TIA発症後の脳梗塞発症のリスクだけでなく、TIAを疑った場合も、ABCD2スコアが高い方が、よりTIAである可能性が高いともいわれており、プライマリケアの現場で緊急度の高さを判断するために使える。
■2009年に発表されたAHAの声明書では、このスコアによって入院適応が定められている(発症から72時間以内で、ABCD2スコア≧3点、または、 0~2点で2日以内に評価を行うのが困難だと予想されるケース、0~2点でイベントの原因が局所脳虚血であることを示すほかの根拠がある場合)。
■ただし、このスコアの欠点は、項目に心房細動が入っていない点だ。
TIAの2~3割は心疾患から来る心原性塞栓性TIAであり、一度脳梗塞を起こすと非心原性TIAに比べてより重度になりやすい。
心房細動がありTIAが疑われたら、緊急性がさらに高いと考えられる。