戯れ言たれる侏儒
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CKDの脂質管理

戯れ言たれる侏儒 / 2011.11.29 00:43 / 推薦数 : 0
来年に予定されている動脈硬化性疾患ガイドラインの改訂では,CKDを新たな高リスク群として,脂質管理目標値を考慮する因子に追加する方針を打ち出しています。
このことに関する大阪市立大学大学院代謝内分泌病態内科学・庄司哲雄講師へのインタビュー記事で勉強しました。
脂質異常症の管理アップデート CKDの脂質管理
慢性腎臓病(CKD)が,冠動脈疾患(CAD)などの動脈硬化性疾患の高リスク群であることが,種々の疫学調査で明らかになり,またCKDにおける脂質介入試験の結果も明らかになってきた。
こうした状況にかんがみて日本動脈硬化学会では,来年に予定されている動脈硬化性疾患ガイドラインの改訂で,CKD を新たな高リスク群として,脂質管理目標値を考慮する因子に追加する方針を打ち出している。


動脈硬化性疾患の高リスク群としてCKDのより厳重な脂質管理を
 CKDが心血管疾患(CVD)の高リスク群であることについては,国内外の疫学調査で明らかにされてきている。
一方で,脂質代謝障害の機序は原疾患や病期によって異なるため,一様ではないことを踏まえておく必要がある。
さらに,CKDにおける脂質管理の意義についても近年明らかにされてきているが,具体的な目標値の設定には至っていないのが現状だ。
 
少なくとも糖尿病と同程度のリスク意識を
CKDがCVDの高リスク群であることについては,Foleyらが透析患者では一般住民に比べてCVDによる死亡リスクが,55~74歳の年齢層でおよそ10~30倍高いことを報告している〔Am J Kidney Dis 1998; 32(Suppl 3): S112〕。
<私的コメント>
透析患者がCVDの高リスク群であることとCKDがCVDの高リスク群であるというのは違うのでは?

 

また,Goらは,推算糸球体濾過量(eGFR)で評価した腎機能が低いほどCVD発症リスクが高く,古典的危険因子で多変量調節後も有意であり,eGFR 60mL/分/1.73m2(以下単位省略)以上に比べて45~59では1.4倍,30~44では2.0倍,15~29では2.8倍,15未満では3.4倍になることを示した(NEJM 2004; 351: 1296-1305)。
<私的コメント>
「腎機能が低い」原因は何なのでしょうか。
腎細動脈(細小血管)などの内皮障害が原因であるとすれば、腎障害もCVDも同じものを見ているだけになってしまいます。つまり、腎障害が原因でCVDが結果というより両者とも内皮障害の結果ということになります。
このあたりがいつもCKDが理解出来ないところです。
 
わが国のデータでは,まず,CKDが動脈硬化を促進することについて,庄司講師が報告している非糖尿病症例での検討で,健康群に比べて,慢性腎不全保存期症例では内膜中膜複合体厚(IMT)が有意に高値で,維持透析患者と同レベルであることを明らかにした(Kidney Int 2002; 61: 2187-2192)。
Kimotoらも糖尿病性腎症患者では健康群に比べて,脈波伝播速度(PWV)が有意に大きいことを報告している(J Am Soc Nephrol 2006; 17: 2245-2252)。
 
CKDがCVDの高リスク群であることを示したわが国の疫学調査としては,久山町研究,茨城県住民集団研究,NIPPON DATA 90,JALS-ECC,吹田研究などが挙げられる。
その中でも比較的新しい2008年のJALS-ECCでは,2万3,000人以上を7.4年追跡して,eGFR低値とCVDのリスク増大とが関連することが示されている(Circulation 2008; 118: 2694-2701)。
同講師は「JALS-ECCでは,eGFR低値が男性では心筋梗塞のリスク増大と,女性では脳卒中のリスク増大と強く関連しており,腎機能低下とCVDリスク増大との関連に若干の性差があることが示されているのも興味深い」としている。
2009年の吹田研究では,約5,500人を11.7年追跡した結果,やはりeGFR低値とCVDのリスク増大とが関連することが示されている。
ちなみ に,eGFR 90以上と比較したeGFR 50未満の多変量調整後のCVD(心筋梗塞および脳卒中)発症の相対リスクは2.48〔95%信頼区間(CI)1.56~3.94, P<0.001〕となっていた(Stroke 2009; 40: 2674-2679)。
 
CKDがCVDの高リスク群であることは確かであるとして,では,そのほかのリスクと比較したインパクトはどれくらいなのか。
これについて,同講師は 「日本人の高リスク高血圧患者を対象にARBカンデサルタンとCa拮抗薬アムロジピンの予後に与える影響を比較した大規模臨床試験Case-Jの post-hoc解析が1つの参考になる」と言う。
同解析(Yasuno S, et al. J Hypertens 2009; 27: 1705-1712)によると,種々のリスクのCVD発症のハザード比は,糖尿病1.97,虚血性心疾患2.19,脳血管障害2.22,CVD 2.38,左室肥大(125g/m2超)2.59であるが,腎疾患(蛋白尿および/または血清クレアチニン1.3mg/dL以上)では2.82となっている。
 
すなわち,腎疾患のCVD発症リスクのインパクトは糖尿病や,CVD既往よりも大きいことになる。
「これは高リスク高血圧患者だけを対象にした成績であ ることを考慮する必要があるが,少なくともCKDは糖尿病と同程度にはCVDのリスクとしてのインパクトがあると考えた方がよいだろう」というのが,同講師の見解である。

CKDの脂質異常は動脈硬化・CVDリスクと独立した関連CKDに伴う脂質異常は,原疾患や病期などによって異なり,一様ではない。
ネフローゼ症候群の場合には高コレステロール血症も見られるが,GFRの低下した腎不全では高トリグリセライド(TG)血症が中心になる。
リポ蛋白分画では超低比重リポ蛋白質(VLDL)および中間比重リポ蛋白(IDL)は増加し,HDLは低下するが,LDLは不変のことが多い。
そのほか動脈硬化惹起性の強いリポ蛋白(a)〔Lp(a)〕の増加もしばしば見られる。
 
庄司講師によると,「CKDに伴う脂質異常の表現型が複雑なのは,脂質代謝が蛋白尿,腎機能(GFR),糖尿病などにより,複合した影響を受けているからとみることもできる」と言う。
蛋白尿が優位なCKDでは低蛋白血症を来し,肝臓での非特異的な蛋白合成が高まり,VLDL産生が増加して,VLDLや LDLレベルが上昇する。
GFR低下が優位な場合は,末梢組織でリポ蛋白リパーゼ(LPL)や肝性TGリパーゼ(HTGL)の作用低下による異化障害が起こり,VLDLおよびIDLは増加するが,LDL,HDLは低下する。
糖尿病の場合は,肝臓からのVLDL産生亢進とLPLの作用低下によりVLDLは増 加し,HDLは低下する図1)。
 
図表

 
同講師らは,糖尿病患者を「腎症なし」,「微量アルブミン尿」,「顕性アルブミン尿」,「クレアチニン上昇」の4つに層別化し,「非糖尿病」を加えた5 群で,脂質プロファイルを比較検討している。
それによると,腎症のステージが進むにつれてVLDLコレステロール(VLDL-C)とIDLコレステロール (IDL-C)は著明に上昇し,HDLコレステロール(HDL-C)は低下したが,LDL-Cにはほとんど変化がなく,「クレアチニン上昇」ではむしろ 「非糖尿病」のレベルよりも低下していたという(Atherosclerosis 2001; 156: 425-433)(図2)。

 
図表
 
すなわち,糖尿病患者ではLDL-Cだけを測定していたのでは,その脂質異常をとらえられないことになる。
同講師は「糖尿病患者も含めたCKD患者の脂質異常では,LDL-Cよりも,総コレステロールからHDL-Cを減じたnon-HDL-Cを指標として評価する方がよい」と言う。
 
同講師らは非糖尿病性透析患者205例を対象に,リポ分画ごとの動脈硬化惹起性についても検討している。
大動脈PWVとの関連を,年齢,性,血圧,喫煙 で調整した重回帰モデルで解析した結果,VLDL高値,IDL高値,LDL高値はいずれも大動脈PWVの増大と有意に関連していたが,関連の程度の最も強いのはIDLで,次いでVLDLとLDLが同程度であった。
なお,HDLと大動脈PWVとの間には有意な関連は認められなかったという(J Am Soc Nephrol 1998; 9: 1277-1284)。

同講師らはまた,透析患者4万5,000例以上を対象に,non-HDL-CおよびHDL-Cでそれぞれ4分位に層別化し,心筋梗塞発症リスクとの関連を検討している。
その結果,non-HDL-Cは高値の層になるほど,HDL-Cは低値の層になるほど心筋梗塞発症リスクが高いことが示された。
さら に,non-HDL-Cが最も低くHDL-Cが最も高い層でのリスクを1とした場合,non-HDL-Cが最も高くHDL-Cが最も低い層でのリスクは 2.9倍であることも示されたという(Clin J Am Soc Nephrol 2011; 6: 1112-1120)。

 

脂質低下の介入試験でCVDリスクが低下
CKD患者を対象とした脂質低下の介入試験は極めて乏しい。
しかし,いくつかの介入試験の成績や,そのサブ解析の結果から,脂質低下がCKD患者の粥状動脈硬化性CVDリスクを低減することが示唆されている。
 
Die Deutche Diabetes Dialyse(4D)試験は2型糖尿病患者1,255例を対象に,アトルバスタチンによるCVDリスク抑制効果を検討した二重盲検試験である。
結果は,4年の追跡でアトルバスタチン群ではプラセボ群に比べて「心臓死+非致死的心筋梗塞+脳卒中」の発症リスクが8%抑制されていたが,有意差までは認められなかった(NEJM 2005; 353: 238-248)。
 
しかし,庄司講師によると,4Dには
(1)1次エンドポイントに脳出血,不整脈死,心不全死も含まれていたため,真のアテローム動脈硬化抑制効果が希釈 されていた可能性がある
(2)狭心症で経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を実施し成功すれば心筋梗塞や心臓死とは見なされないため,1次エンドポ イントに達したと判定されない
—などの問題点があるという。
同講師の指摘は,虚血性心事故のみの抑制効果を見た場合,アトルバスタチンのリスク抑制効果は18%と有意水準(P<0.05)に達することからも裏付けられた。
 
Study of Heart and Renal Protection(SHARP)試験は,CKD患者(保存期6,247例,透析期3,023例)を対象に,シンバスタチンとエゼチミブの併用による動脈硬化性イベントの抑制効果を検討する二重盲検比較試験。4.9年の追跡の結果,1次エンドポイントの「非致死的心筋梗塞+冠動脈死+非出血性脳血管障 害+なんらかの動脈血行再建術」は,プラセボ群に比べて実薬群では17%の有意なリスク低下が示された(Lancet 2011; 377: 2181-2192,図3)。

図表
 
MEGA studyは,CADの既往のない軽度~中等度の脂質異常症患者約8,000例を対象に5年以上追跡し,プラバスタチンによるCVDの1次予防効果を検討した,わが国初の大規模ランダム化比較試験。
CKDステージ3の約3,000例を対象としたサブ解析の結果,プラバスタチンによりCHD,CVD,脳卒 中,総死亡のいずれもが有意に抑制されることが示された(Atherosclerosis 2009; 206: 512-517)。
 
以上のような成績を踏まえて,同講師は「CKDでは原疾患や合併する高血圧の管理が重要であることは言うまでもないが,加えてCVD対策としての脂質管理も重要である」としている。
 
では,CKDにおける脂質管理の目標値はどれくらいに設定されるのが適当なのか。
これについては日本動脈硬化学会も現在までのところ,目標値に関するコメントは発表していない。
しかし,高リスク群ではより厳格な脂質管理を目指すという従来の原則が踏襲されるのであれば,ガイドライン改訂版では厳格な管理目標値が設定されることは間違いない。
同講師は「前述のように,CKDは糖尿病よりもCVD発症に及ぼすインパクトが大きいことが示唆されている以 上,CKDの脂質管理目標値も糖尿病と同じか,それより厳しく設定するのが妥当であろう」と言う。
 
すなわち,少なくともCVDの1次予防ではLDL-Cが120mg/dL未満,2次予防では100mg/dL未満と設定される可能性が高い。
いずれにせ よ,CVDリスクとしてのCKDの意義はますます高まっていることを,すべての臨床家が十分認識しておくべきであるといえる。
 
出典 Medical Tribune  2011.11.24
版権 メディカル・トリビューン社

 

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CAD/CKD患者の冠動脈リスクはレムナントリポ蛋白
冠動脈疾患(CAD)や慢性腎臓病(CKD)を有する患者では、レムナントリポ蛋白が心血管イベントの強力な予測因子になる可能性が新たに指摘された。
フロリダ州オーランドで開催された第84回米国心臓協会・学術集会(AHA2011)で、山梨大学の斉藤幸生氏らが発表した。
 
CKD症例では、冠動脈イベントのリスクとなるトリグリセライド値が高い。
トリグリセライドに富むリポ蛋白は多彩に存在するが、それらの中でどのリポ蛋白が冠動脈リスクになるのかは未だ明らかではない。
今回、斉藤氏らは、レムナントリポ蛋白がCAD患者やCKD患者における冠動脈イベントの予測因子となる可能性についての検討結果を報告した。

対象は、山梨県において冠動脈インターベンションを施行した患者を前向きに連続して登録している多施設共同研究FUJISUN registry(2008年5月開始)から、連続で抽出したCAD/CKD患者229例。

CKDは、糸球体濾過量(GFR)60mL/分/1.73m2未満と定義した。
レムナントリポ蛋白の量的評価では、血漿中のレムナント様リポ蛋白コレステロール(RLP-C)を免疫分離法で定量して指標とした。

対象のうち、46例が冠動脈イベントの既往を有し、183例はイベントを経験していなかった。

両群のベースラインの患者背景では、既往あり群のBMIは24.8±3.3kg/m2で、既往なし群の23.4±3.8kg/m2に比べて有意に高く(P<0.05)、糖尿病罹患率(68% 対 41%)も有意に高かった(P<0.05)。

また、既往あり群ではトリグリセライド値(142±49mg/dL 対 124±54mg/dL)、BNP(287±326pg/mL 対 238±296pg/mL)、血清クレアチニン値(2.98±3.00mg/dL 対 1.69±1.92mg/dL)、RLP-C値(6.2±3.8mg/dL 対 4.3±1.8mg/dL)が有意に高かった(P<0.05)。

一方で、既往あり群のHDL-C値(39±10mg/dL 対 43±10mg/dL)、クレアチニンクリアランス(33±20mL/分/1.73m2 対 42±15 mL/分/1.73m2)は有意に低かったP<0.05)。

試験開始後、心臓死、非致死性心筋梗塞、冠動脈血管再建術を要する不安定狭心症、心不全の発症を記録した。対象をRLP-C値5.7mg/dL以上74例 と5.7mg/dL未満152例に分けて解析すると、18カ月の時点でRLP-C高値群では28例(38%)でいずれかのイベントが生じ、RLP-C低値 群の18例(12%)に比べて有意に多かった(P<0.0001)。

内訳は、心臓死5例 対 0例、心筋梗塞4例 対 2例、不安定狭心症15例 対 14例、心不全4例 対 2例だった。

Kaplan-Meier曲線による4つのイベント非発症率の解析でも、RLP-C高値群は低値 群に比べ、有意に低かった(P<0.01)。

さらに、段階的多変量Cox比例ハザードモデルによる解析では、RLP-C高値が冠動脈イベントの予測因子であることが示唆された(ハザード比1.8、95%信頼区間:1.3-6.9、P<0.01)。

ROC曲線の解析でも、既にリスクとされている加齢、男性、喫煙、糖尿病、LDL-C高値、HDL-C低値、収縮期血圧高値にRLP-C高値が加わると、ROC曲線化面積が0.63から0.76に有意に拡大し、予測値が高まることが示された(P<0.05)。

斉藤氏は以上の結果を踏まえ、「RLP-Cの定量は、CADおよびCKDの患者の冠動脈イベントリスクの層別化にも活用できると考えられる。今後は、実臨 床にRLP-Cの評価をより積極的に取り入れ、エビデンスを蓄積し、パラメータとしての信頼性を確立していきたい」と、さらに一歩踏み込んだ研究を見据え、意欲を示した。

 
出典   NM online 2011.11.22
版権 日経BP社
 

<私的コメント>

少し調べてみると「運動療法が脂質代謝、特に中性脂肪改善効果を通して、腎保護作用をもたらす可能性がある」、「ΔeGFRとΔ中性脂肪が有意な負の相関」といったCKDと中性脂肪の関連をみた論文が見つかりました。さらには「CKD患者において中性脂肪が独立した危険因子である」(Am J Med Sci. 2009;338(3):185-9)、
「高中性脂肪・低HDLがCKDにおける腎機能悪化の条件の一つで、この悪循環を断ち切ることも腎保護につながった可能性がある」(J Am Coll Cardiol. 2008;51(25):2375-84)」といった論文もあります。

論文を読んでいないので両者の関係をどのように考察しているのかわかりませんが、CKDといういわば漠然とした病態概念にTGがどのように関与するのか知りたいところです。

一方、家族性高コレステロール血症においては腎障害の
発症は報告されていないようです。

しかし,健常人における健診時の脂質異常症は,CKD 発症の危険因子であることが示されています。
Physician's Health Study では,健常男性においてTC,非HDLコレステロールの上昇,HDL コレステロールの低下は,CKD 発症の危険因子であることが示されています。
またHelsinki Heart Study では,LDL コレステロー
ル/HDL コレステロール比の上昇がCKD 進行の
危険因子であったと報告されています。

脂質異常症のCKD に対する影響は多くのコホート研究により示されており,TC 上昇,TG 上昇,LDL コレステロール上昇,HDL コレステロール低下は,それぞれCKD
進行の危険因子であったとのことです。

ARIC Study では,CKD におけるTC 上昇とTG 上昇がCVD 発症の危険因子であったということです。
Muntner P, He J, Astor BC, Folsom AR, Coresh J. Traditional and nontraditional risk factors predict coronary heart disease in chronic kidney disease: results from the atherosclerosis risk in communities
study. J Am Soc Nephrol 2005;16:529-538.


臨床というリアルワールドではCKDに対してフィブラート系薬を使用することについては細心の注意が必要となります。
ベザフィブラートとフェノフィブラートの投与はCKDス
テージ3で慎重投与,CKD ステージ4,5 においては原則禁忌とっているからです。



<自遊時間>
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1111/1111016.html
 
  
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1111/1111073.html
 
こういったデモは世界的に流行しています。
開業医と勤務医は同床異夢の部分もあります。
何事もそうですが、どんな組織でも「総意」というものがあっても完全に細部にわたって意見が一致することはありません。
総論賛成、各論反対また逆の場合もあります。
私がこういった組織に深入り出来ないのはこういった理由です。
東京でのデモをされた先生方の多くは病院関連の先生であると想像されます。
この先生方が日本医師会に加入されているのかどうかは知りませんが、日本医師会との関係を断ち切ってのデモなのでしょうか。
彼らは医学部新設を唱えています。
いわば、日本医師会とは立場を異にしています。
この団体に対して、今年は日本医師会の副会長が挨拶のために壇上に上がったとのこと 。
このことにはいささかの違和感を覚えます。
 
<関連サイト>
全国医師ユニオン

全国医師ユニオン - Wikipedia
 
 
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CKD患者の心血管疾患予防

戯れ言たれる侏儒 / 2011.11.12 00:48 / 推薦数 : 0
~シンバスタチン+エゼチミブ併用~
CKD患者の心血管疾患を予防
オックスフォード大学臨床試験サービスユニット(CTSU)のColin Baigent教授らは,脂質異常症治療薬のシンバスタチンとエゼチミブの併用は,中等度~重度の慢性腎臓病(CKD)患者の心疾患リスクを低下させるとする試験結果をLancet(2011; 377: 2181-2192)に発表した。
安全性に対する不安ない
スタチン系薬をはじめとする脂質異常症治療薬は,腎臓に問題のない人の心筋梗塞や虚血性脳卒中のリスクを低下させることが明らかになっている。
しかし,腎機能障害を有する人に対するスタチン系薬の効果については不明な点も多かった。
 
今回,試験統括医であるBaigent教授らが発表したSHARP(Study of Heart and Renal Protection)の結果は,昨年11月に開かれた米国腎臓病学会で最初に報告され,話題になったものである。
試験の結果,シンバスタチン+エゼチミ ブ併用群では非致死性心筋梗塞,冠動脈死,非出血性の脳卒中の発生率,および血行再建術施行のリスクがプラセボ服用群と比べて17%低かった。
さらに重要 な点は,この併用に関連した安全性についての不安がなかったことである。
 
1990年代に計画されたこの長期試験は,最終的に18カ国,9,500例を対象とする大規模試験となり,今回の報告で終了となる。
 
同教授は,今回の研究について「CKD患者は腎疾患の治療以外にも,腎疾患の合併症として発生する心筋梗塞や脳卒中の痛み,不安にさらされている。
さらに,腎疾患患者の半数以上は最終的には腎疾患ではなく,心血管疾患で死亡する。
しかし,今回の試験の結果から,シンバスタチンとエゼチミブの併用が有望であることが明らかになった。
これは,現在治療を受けている世界中の多くのCKD患者にとって朗報となろう」と記している。
 
薬剤は危険とする考えが支配
CKD患者は中年人口の20人に1人程度いるとされ,高齢者ではさらに割合が高い。
CKD患者では脳卒中や心筋梗塞のリスクが高いことが知られているが,これらの合併症予防に有効な治療薬についてはまだ明らかにされていない。
 
共同研究者でCTSUのMartin J. Landray博士は「腎障害は心血管疾患の原因となるが,コレステロール値を下げても予防できないと考える医師もいる。
しかし,今回の試験によって,コ レステロールを下げることによりCKD患者の心血管疾患リスクが確実に下がることが示された」と評価している。
 
Baigent教授はこの試験に対して特に個人的な思い入れがあるという。
というのも,同教授自身30年前に腎疾患を発症し,腎移植を受けるまでは透析 生活を余儀なくされた経験を持つからだ。
「わたしと同時期に透析治療を受けていた若年患者の多くは,既に心血管疾患で亡くなっている」と振り返り,「腎疾患患者の心疾患予防に対する薬物治療の開発は,他の疾患患者群と比べて後れを取っている。これは,薬剤が腎障害患者にとってリスクとなるのではないかとい う懸念がどこかに残っているからだ」と述べている。
 
また,「腎疾患患者の治療が,英国保健サービス(NHS)予算の3%以上を占め,その数字が今後確実に上昇することが分かっている今こそ,腎疾患患者のケアを改善する必要がある。
中でも,特に心血管疾患予防の優先順位を上げるべきだ」と付け加えている。
 
出典 Medical Tribune  2011.11.10
版権 メディカル・トリビューン社
 
 
<関連サイト>
シンバスタチンとエゼチミブの併用で慢性腎不全患者の心血管イベント抑制
SHARP試験から
■スタチンの虚血性心疾患や脳卒中などに対する心血管イベント抑制効果は初発予防,再発予防ともに認められ,例えば心筋梗塞後患者においては,再発予防のためにスタチン投与がガイドラインでも強く推奨されている。
一方,腎障害は心疾患に合併しやすいが,腎疾患合併時におけるスタチンの心血管疾患予防効果については一定の見解が得られていない。
特にAURORA試験では,透析患者においてロスバスタチンは心血管死+非致死性心筋梗塞+非致死性脳卒中のエンド ポイントを抑制しなかった(N Engl J Med 2009; 360: 1395-1407)。
■SHARP試験は,腎疾患患者においてスタチン+エゼチミブの心血管イベント抑制効果を初めて示した試験である(Lancet 6月9日オンライン版)。
■SHARP試験では,シンバスタチン20mg+エゼチミブ10mgは,(1)安全に腎障害患者に投与可能,(2)約30mg/dLのLDL-C低下作用,(3)心血管イベント抑制作用―があることが示された。
■前述したAURORA試験の結果により,腎障害患者にスタチンを投与した場合,心血管イベント抑制効果が認められない懸念もあったが,シンバスタチン+エ ゼチミブ群では特に冠動脈血行再建術の抑制効果が強く認められた。
この2つの試験結果の差は,どのエンドポイントが多く見られたかに左右された可能性がある。
例えば,AURORA試験ではイベントの半数が血管死であるが,SHARP試験では心血管死は少ない。
スタチンの冠動脈イベント抑制作用効果は強い が,心血管死抑制効果はやや劣ると考えると説明がつく。

出典 MT pro 2011.6.11
版権 メディカル・トリビューン社

 

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(一般の方または患者さん向き) 
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21 http://wellfrog.exblog.jp/ 
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ABPMによる血圧測定は心血管・腎リスク予測に有効
ナポリ第2大学(伊ナポリ)のRoberto Minutolo博士らは「自由行動下血圧測定(ABPM)による血圧データは,透析を必要としない慢性腎臓病(CKD)患者の末期腎不全(ESRD),死亡,入院を要する心血管イベントなどのリスクを診療室血圧測定よりも正確に予測できる」との研究結果をArchives of Internal Medicine(2011; 171: 1090-1098)に発表した。
 

夜間DBP≧70mmHgは心血管・腎リスクを予測
ABPM装置は衣服の下に装着して使用し,24時間自動で繰り返し血圧を測定することが可能だ。
収集されたデータは病院で分析される。
ABPMは,来院するだけで血圧が上昇する“白衣高血圧”の軽減に有効とされている。
この現象はCKD患者で特に多い。
さらに,身体的・精神的ストレスなどから解放される夜間の血圧は,患者の実際の血圧と心血管リスクをよく反映することも示されている。
 
そこでMinutolo博士らは今回,イタリアの4つの腎臓病クリニックでルーチンに血圧検査を受けているCKD患者を対象に,ABPM法により測定した血圧(ABPM血圧)と診察室で測定した血圧(診察室血圧)の役割を比較する前向きコホート研究を実施した。
 
2003~05年に436例を登録し,朝の来院時に3回血圧を測定後,ABPM装置を装着。
日中は15分ごと,夜間は30分ごとに測定し,翌日の来院時に診察室でさらに3回測定した。
また,測定データの解釈を助ける手段として,患者にその日の活動について日記を付けてもらった。
その後,重篤な腎イベントと心血管イベントの発現について追跡した。
 
その結果,中央値4.2年の追跡期間中,86例がESRDに至り,69例が死亡した。
また,非致死的な心血管イベントが63件あり,心血管イベントによる死亡は52例だった。
 
腎リスクと心血管リスクは,ABPM法で測定した日中の収縮期血圧(SBP)が135mmHg以上の参加者で最も高かった。
拡張期血圧(DBP)が最高五分位の参加者,夜間SBPが124mmHg以上の参加者でもこれらのリスクは高かった。
さらに,夜間DBP 70mmHg以上は,心血管イベントとESRDの予測因子となることが分かった。
反対に,診察室血圧(SBPとDBP)は心血管イベントも腎イベントも予測しなかった。
今回の研究では,ABPM血圧は,CKD患者における重篤な腎イベントと心血管イベントを予測する上で診察室血圧よりも有益で,その的中率は他の危険因子と独立していることが示された。
 
同博士らは「この高リスク集団を対象に,診察室血圧ではなく,ABPM法による血圧に基づいた介入試験を実施することが早急に求められる」と結論している。

 
心血管・腎リスクは相互に関連
キング保健パートナー・ガイ病院(ロンドン)のDavid Goldsmith博士らは,同誌の付随論評(2011; 171: 1098-1099)で,CKD患者にとって,血圧モニタリングは極めて重要だと強調している。
同博士によると,腎リスクと心血管リスクは相互に関連し,高血圧はそれらに共通する危険因子の1つである。
実際「CKD患者では,透析が必要となるまで 病態が進行して死亡するのと同程度かそれ以上の割合が,心血管疾患が原因で死亡する。透析に至った“生存者”の多くが心血管疾患で死亡する」と説明してい る。
そのため,同博士はABPM法による血圧モニタリングがCKD患者のケアにおいて重要だと指摘。
特に,白衣高血圧の割合が高かったことを考慮すると,ABPM法の重要性はいっそう高まると述べている。
 
出典  MT Pro 2011.8.18
版権 メディカル・トリビューン社

 
<私的コメント>
この論文紹介では、研究対象のCKDのステージ分類別の記載がありません。

以下の関連サイトでは「平均糸球体濾過率は、42.9mL/分 」と記載されています。
しかし、ステージ分類別のリスクやABPMの結果の解析はされているのでしょうか。
「ESRD,死亡,入院を要する心血管イベントなどのリスク」検出にはABPMによる血圧モニタリングが、診療室血圧測定より有用である、というだけの結論のようです。
ステージ別のABPMによるリスク検出能が検討されていれば、もう少し興味深い論文になったのではないでしょうか。
さらには、ABPMによる血圧がCKDのリスク評価が有用ということであれば、CKDの予後は血圧に依存するということになります。
「蛋白尿の有無や程度」と「血圧」では、後者がCKDの予後により大きく関係する、ということも、この論文からはわかりません。
CKDという、特定の集団だからこそこういったABPMの優位性が出たのか、高血圧患者にも同様に、この結論があてはまるのか?
これもわかりません。
 
以前から繰り返し書かせていただきましたが、CKDの概念自体が未だに私にとっては謎です。
体重を考慮しないで、性別と年齢とクレアチン(いずれシスタチンCにとって変わる?)で算出するeGFRも謎です。
(身長を考慮せず腹囲のみで内臓肥満を予測するダメポ健診も同様)
 
<関連サイト>
携帯型24時間血圧モニタリングは腎臓病患者のリスクプロファイリングに有用
http://www.kanematsu-rmn.jp/news/daiichisankyo/news2.php?mode=jpview&num=201106290053526

(今回の論文に関する補足的なものです)
■「この技術を用いれば、夜間に血圧を測定することで、腎臓病の進行リスクと致死的/非致死的心血管事故のリスクが最も高くなる夜間高血圧を有する患者を特定できる。我々の施設では、高血圧を有するCKD患者全員に、年に1度、ABPMを実施している」とDr. Roberto Minutoloは補足した。
■プロスペクティブコホート研究。
■験者の平均年齢は65歳で、42%が女性であり、36%が糖尿病、30%が心血管疾患を発症していた。
平均糸球体濾過率は、42.9mL/分であった。
■日中の収縮期血圧が136~146mmHgの被験者と146mmHg超の被験者では、追跡調査期間中の心血管イベン トの補正後リスクは、それぞれ2.23倍と3.07倍に上昇していた。これら2つの五分位群では、腎死リスクも上昇しており、ハザード比(HR)はそれぞ れ、1.72と1.85であった。
■同様に、日中の拡張期血圧が最高五分位(84mmHg超)であった被験者群では、心血管イベントリスクは2.55倍、腎死リスクは2.67倍に上昇した。
■夜間の収縮期血圧が125~137mmHgである場合は、心血管イベントリスクは2.52倍に上昇しており、夜間の収縮期血圧が137mmHg超の場合、同リスクは4倍に上昇した。腎死に関して両群のHRは、それぞれ1.87と2.54であった。
夜間の拡張期血圧が70~75mmHgまたは75mmHg超の場合は、心血管イベントリスクは、それぞれ2.00倍、2.38倍上昇しており、腎死は、それぞれ1.48倍、1.81倍上昇していた。
■診療所血圧では、収縮期血圧、拡張期血圧のいずれでも心血管イベントも腎イベントも予測されなかった。
■同研究者らは、non-dipperとreverse dipperのサブグループで、両エンドポイントのリスクが有意に上昇することも観察した。
■ABPMを実施するために追加的にかかる時間や手間、費用が正当化される患者群である選択的コホートが存在する。
今回の新規研究により、CKDを有する今回の被験者については、そうした主張がますます説得力のあるも のとなっている。

 
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ACE阻害薬使用中の非糖尿病性腎症患者に追加すべきは、ARBより低塩食
ARB追加に優る蛋白尿・血圧改善効果
非糖尿病性腎症 で、最大用量のアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬を使用していても蛋白尿と血圧のコントロールが不十分な患者に、食塩摂取量の目標値を1日3gに設定した食事指導を行った場合と、最大用量のアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)を追加した場合、さらには 低塩食ARBの 両方を追加した場合で、最も利益を得られるのはどのグループだろうか。
この3つの治療戦略による利益を直接比較する無作為化試験を行った独 Groningen大学医療センターのMaartje C J Slagman氏らは、低塩食にはARB追加に優る蛋白尿、血圧改善効果があることを明らかにした。
論文は、BMJ誌2011年8月6日号に掲載された。

慢性腎臓病のいくつかの治療ガイドラインは、蛋白尿が1.0g/日を超える患者は血圧を125/75mmHg以下に下げ、かつ蛋白尿を1.0g/日以下に するように求めている。レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系を遮断する薬物療法を適用すると、血圧と蛋白尿は改善するが、多くの患者においてこの種の薬剤の単剤投与の効果は十分ではない。
その場合には、増量、異なる種類のレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系遮断薬の併用(dual blockade療法)、減塩指導、利尿薬の追加などの戦略が用いられる。

これまでに行われた研究では、単剤投与中の薬剤の用量調整が 十分に行われていた患者にdual blockadeを行っても、血圧と蛋白尿に対する作用は小さいことが示されていた。

一方で、そうした患者に対する低塩食の効果をdual blockade療法と直接比較した研究はこれまでなかった。

そこで著者らは、非糖尿病性
腎症(ネフロパシー)で、最大用量のACE阻害薬を使用している患者に対する、
(1)低塩食指導、
(2)最大用量のARB投与、
(3)それらの併用、
について、蛋白尿と血圧への影響を調べる多施設無作為化クロスオーバー試験を行った。

06年4月から09年10月に、オランダの医療施設3カ所の腎臓病外来で18歳以上の非糖尿病性腎症患者を登録。

最大用量のACE阻害薬(リシノプリル 40mg/日)を使用していても血圧が125/75mmHg超で、蛋白尿が1.0g/日超、クレアチニン・クリアランスが30mL/分以上の患者を選出した。
安全上の理由から、収縮期血圧が180mmHg以上、拡張期血圧が110mmHg以上の患者は除外した。

条件を満たした54人の患者を登録、全員にリシノプリル40mg/日を投与しながら、下記の4通りの治療を6週間ずつランダムな順番で追加した。薬物療法については二重盲検で、食事療法はオープンラベルで行った。

(1)偽薬+標準食(標準的な塩分摂取量である12g/日を目標値とする)
(2)最大用量のARB(バルサルタン320mg/日)+標準食
(3)偽薬+低塩食(塩化ナトリウムにして3g/日を目標値とする)
(4)最大用量のARB+低塩食

低塩食期間の食事内容については、日常的に利用される食品の塩分含有量を記したリストを配布し、専門的な栄養士が指導を行った。

それぞれ6週の治療期間の終わりに、24時間蓄尿検査と血圧検査、血液検査を実施した。

主要アウトカム評価指標は蛋白尿、二次評価指標は血圧に設定し、4通りの治療を完了した52人を分析対象にした。

 
食事からの塩分摂取の指標である尿中ナトリウム排泄量の平均値は、低塩食期間は106mmol/日(塩分摂取量は塩化ナトリウムにして6g/日)、標準食の期間は184mmol/日(同11g)だった(P<0.001)。
<私的コメント>
この論文はドイツにおける研究ですが、標準食の期間で11g/日低塩食期間で6g/日という数字が意外に多いので驚きました。
これでは日本と余り変わらないのではないでしょうか。
 
尿蛋白排泄量の幾何平均は、偽薬+標準食の期間が1.68g/日(95%信頼区間1.31-2.14)、ARB+標準食の期間は1.44g/日 (1.07-1.93)(P=0.003)、偽薬+低塩食の期間は0.85g/日(0.66-1.10)(P<0.001)、ARB+低塩食の期間は 0.67g/日(0.50-0.91)(P<0.001)だった。

尿蛋白排泄量の減少率は、ACE阻害薬に低塩食を加えた場合が51% (43-58%)で、ARBを加えた期間(21%、8-32%)より有意に大きかった(P<0.001)。

ARBと低塩食の両方を追加した場合には62% (53-70%)低下していたが、ボンフェローニ補正を行うと、低塩食のみを追加した場合との差は有意ではなかった。

収縮期血圧の平均は、偽薬+標準食の期間が134mmHg、ARB+標準食の期間は131mmHg(P=0.12)、偽薬+低塩食の期間は123mmHg(P<0.001)、ARB+低塩食の期間は121mmHg(P<0.001)だった。

ACE阻害薬に低塩食を加えると、収縮期血圧は7%低下した。これはARBを追加した場合(2%)より有意に大きかった(P=0.0003)。

ARBと低塩食の両方をACE阻害薬に追加した期間の収縮期血圧の低下は9%で、低塩食のみを追加した場合との差は有意ではなかった(P=0.14)。

拡張期血圧の平均は、偽薬+標準食の期間が80mmHg、ARB+標準食の期間は77mmHg(P=0.02)で、偽薬+標準食と比べた低下率は4%。同 様の比較で、偽薬+低塩食の期間は73mmHg(P<0.001)で、低下率は8%、ARB+低塩食の期間は71mmHg(P<0.001)で、低下率は 11%だった。

なお、ACE阻害薬に低塩食を加えた期間中には、有意な体重減少が認められた(平均体重は89kgから87kgに減少、P<0.001)。

得られた結果は、非糖尿病性腎症の患者のうち、最大用量のACE阻害薬を使用していても血圧と蛋白尿のコントロールが十分でない人々には、最大用量の ARBを追加しても血圧には有意な影響は見られず、蛋白尿の改善もわずかだが、低塩食を加えればそれらの改善は大きくなること、そこにARBを加えても追加される利益はわずかであることを示した。

著者らは、「今回得られた知見を確認する臨床試験の実施が必要だが、現時点でも、医師と患者が協力して低塩食が 継続できるよう努力することは重要だ」と述べている。

Moderate dietary sodium restriction added to angiotensin converting enzyme inhibition compared with dual blockade in lowering proteinuria and blood pressure: randomised controlled trial

BMJ 2011; 343:d4366 

http://www.bmj.com/content/343/bmj.d4366.full
出典   NM online 2011.8.10
版権 日経BP社
 

<私的コメント>
ドイツ人より日本人の方が食塩感受性の割合は高い筈です。
少なくとも減塩による降圧効果は日本人の方が期待出来ることは用意に想像されます。
しかし、蛋白尿改善効果が降圧効果とパラレル、言い方を変えれば食塩感受性と比例するのでしょうか。
日本ではARBの最大用量は、医療経済的な理由から、そしてACE阻害薬の最大用量は咳という副作用からそれぞれ使用は困難です。
 
<きょうの一曲>  喜歌劇「こうもり」序曲
Vienna New Years Concert 2010, Die Fledermaus Overture, Johann Strauss
http://www.youtube.com/watch?v=QROR4LioU-8&feature=related
 
 
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日本腎臓学会2011の記事で勉強しました。
循環器専門の先生方はこのCKDや心腎連関という概念をどのように評価されるでしょうか。
「高血圧CKD」は、「高血圧に伴う(つまり、結果としての)細小血管障害」と考えると分かりやすいと思うのは私だけでしょうか。

高血圧CKD患者、心腎連関指標の特徴が明らかに
高血圧CKD患者は、高血圧非CKD患者に比べて、体重が軽い、拡張期血圧が低く脈圧が大きい、Augmentation index (AI)が高い、などの特徴があることが示された。JA福島厚生連ヘルスサイエンスリサーチの谷田部淳一氏らが、6月に開催された日本腎臓学会で報告した。

演者らは日本人高血圧患者において、腎機能と心血管指標との関係を検討し、合わせて降圧薬がこれらの指標に与える影響についても解析した。

対象は本態性高血圧患者368人(男性164人、女性204人。年齢32~85歳)。

eGFRが60mL/分/1.73m2未満をCKDと定義した。

368人中CKD群は80人、非CKD群は269人だった。

この2群の患者背景は、年齢がCKD群74.3±7.6歳に対し、非CKD群が68.0±9.2歳とCKD群が高齢だった以外は、著しい差はなかった。

この両群で心腎連関指標を比べたところ、CKD群では、体重が軽い、拡張期血圧が低く脈圧が大きい、AIが高い、Ankle-brachial index(ABI)が低い、脈波伝達速度(PWV)が速い、HDL-Cが低い、ヒト心臓由来脂肪酸結合蛋白(H-FABP)が高い、などの特徴が浮かび上がった。

なお、降圧薬の影響について解析した結果では、ARBまたはACEIによる治療を受けていた患者群の方が、CCBによる治療を受けていた患者群に比べて、有意に尿中アルブミンと8-OhGDが低いことも分かった()。


 

 降圧薬が心腎連関指標に与える影響
 
これらの結果から演者らは、高血圧でCKDを有する患者には、心腎連関の存在を前提にした、より慎重な高血圧診療(私的コメント;原文では「高血圧新涼」)を行う必要があると結論した。
また、その際、ARBまたはACEIを第一選択薬とすることを検討すべきであろうと考察した。

出典   NM online 2011.8.1
版権 日経BP社
 
 <私的コメント>
高血圧CKD患者で「体重が軽い、拡張期血圧が低く脈圧が大きい、Augmentation index (AI)が高い」という事象はいずれも高血圧非CKD患者に比較して、高齢であるということで説明がつくのではないでしょうか。
「高齢だった以外は、著しい差はなかった」ということですが、まさしくこの年齢差が問題だと思います。
Age-matchさせてないのが不思議です。
それはさておき、相変わらずCKDに関して「ニワトリとタマゴ」 の疑問は残ります。
循環器医は余り「CKD」に深入りしない方がいいかも知れないと最近になって思って来ました。
 
<きょうの一曲>
ユーモレスク ♬ スークのバイオリン
http://www.youtube.com/watch?v=PmWvfS5x1aM

Heifetz plays Dvorak's Humoresque
http://www.youtube.com/watch?v=uB8mzdO3MnI&feature=related

Josef Suk, A. Dvorak Humoresque
http://www.youtube.com/watch?v=G38Ark5MQE8&feature=related

Dvořák Humoresque Yo Yo Ma, Itzhak Perlman
http://www.youtube.com/watch?v=oBDmAxSFt6A&feature=related

ユーモレスク
http://www.youtube.com/watch?v=G38Ark5MQE8&feature=related
 
ユーモレスク/ドヴォルザーク~名曲スケッチ
http://www.geocities.jp/mani359/mei0504dvorak.html

 
ユーモレスク 第7番 ドヴォルザーク(ドボルザーク) 解説と試聴
http://www.worldfolksong.com/songbook/classical02/humo.htm

 
 

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慢性腎臓病の心房細動リスクはどの程度か?ARIC研究のエビデンス
慢性腎臓病(CKD)の心房細動リスクは、腎機能およびアルブミン尿の悪化に伴い上昇し、両指標が最も悪い人は標準であった人の13.1倍に達することが示された。
米国・ミネソタ大学公衆衛生校のAlvaro Alonso氏らが、米国住民ベース1万人規模のARIC研究コホートから明らかにした。
CKDと、心血管疾患との関連は認められているが、心房細動については増大する可能性はあるものの、これまでの試験では一貫した結果が得られていなかった。
本試験の結果を踏まえてAlonso氏は「腎機能の低下とアル ブミン尿の存在は、他のリスク因子とは独立かつ強く心房細動発生と関連していた」と結論している。
 
GFRcys低値で大量アルブミン尿の人のリスクは13.1倍
Alonso 氏らは、1996~1998年のARIC(Atherosclerosis Risk in Communities)研究に参加した、心房細動を有していない男女1万328人について、シスタシンCベースの推定糸球体濾過量(eGFRcys)および尿中アルブミン-クレアチニン比(ACR)と、2007年末まで確認した心房細動発生との関連を評価した。
評価に際して、 eGFRcysはガイドラインに従って、≧90(標準)、60~89(軽度の腎機能低下)、30~59(CKDステージ3)、15~29(CKDステージ 4)の4つに階層化した[各値単位はmL・min(-1)・1.73m(2)]。ACRは、<30mg/g(標準)、30~299mg/g(微量ア ルブミン尿)、≧300mg/g(大量アルブミン尿)の3つに階層化した。
おもな結果は以下のとおり。
 
●追跡期間中央値10.1年の間に、788例の心房細動発生症例が確認された。
 
● 多変量解析の結果、心房細動の発生は、eGFRcys≧90の腎機能標準群と比べて、60~89の軽度低下群は1.3倍(ハザード比:1.3、 95%CI:1.1~1.6)、30~59のCKDステージ3群は1.6倍(同:1.6、1.3~2.1)、15~29のCKDステージ4群は3.2倍 (同:3.2、2.0~5.0)と、腎機能が低下するほどリスクが上昇した(傾向p<0.0001)。
 
●同様の正の相関がACR についても認められた。<30mg/gの標準群と比べて、30~299の微量アルブミン尿群は2倍(ハザード比:2.0、 95%CI:1.6~2.4)、≧300mg/gの大量アルブミン尿群は3.2倍(同:3.2、2.3~4.5)リスク上昇が認められた。
 
● 心房細動リスクは、特にeGFRcys低値で大量アルブミン尿の人で上昇した。「ACR:≧300mg/g、eGFRcys:15~29」の人の、 「ACR:<30mg/g、eGFRcys:≧90」の人との比較によるハザード比は13.1(95%CI:6.0~28.6)であった。
 
[苅尾教授のコメント]
本研究は地域住民を対象とした観察プロスペクティブ研究であるARIC研究により、慢性腎臓病(CKD)が、早期段階から、他のリスク因子とは独立した心房細動のリスク因子となることを明確に示した。
特に微量アルブミン尿の段階で、将来の心房細動が2倍に増え、通常の蛋白尿が陽性となるマクロアルブミン尿の段階では、実に3倍ものリスクとなる。 
さら に、マクロアルブミン尿を示すeGFR<30未満のCKDステージ4群では、腎機能正常の正常アルブミン尿群に比較して、10倍以上の、極めて強いリスク となっている。
CKDが心房細動を引き起こす機序はいくつか考えられる。 
まず、腎障害による循環血液量の増加により、心臓前負荷が増大することによる左房に用量負荷がかかることである。
さらに、合わせ持つリスク因子である高血圧により、左室収縮末期圧が上昇し、左房へ圧負荷が加わり、左房への伸展刺激によりレニン・アンジオテンシン系の活性化などを介した線維化や電気的リモデリングが生じ、心房細動が引き起こされる可能性がある。
さらに、CKDでは腎臓から中枢への求心線維を介した交感神経活性化が生じている。
この交感神経の活性化が心房細動のリスクを増加させている可能性もある。
本研究より、CKDの進展予防が、心不全や心房細動の発症抑制にもつながることが示唆され、より早期からのレニン・アンジオテンシン系抑制薬をベースにした腎保護治療が望まれる。
  ([監修] 自治医科大学 循環器科 教授 苅尾七臣)

 

出典 Care Net.com  2011.7.11
http://www.carenet.com/news/cardiology/newsnow/det.php?nws_c=22675
(パスワードが必要です)
版権 Care Net

 
<私的コメント>
シスタシンCベースの推定糸球体濾過量(eGFRcys)は、その正確性や再現性から今後クレアチニンにとって替わる指標といわれています。
今回の1996〜1998年のARIC研究で、すでにこの指標が使用されているのはちょっとした驚きです。
さて、紹介された研究では一切考察は紹介されていません。
知りたいのは、そのメカニズムです。
そのことにつては苅尾教授が推論しています。
しかし、軽度低下群ですでに心房細動発生例が増加している説明は、その推論では無理なような気がします。
CKDと心房細動との両者の関係を、心腎連関として捉えるか、はたまたCKD自体を細動脈硬化のサロゲートマーカーと捉えるか、で考え方は全く変わってしまいます。
そして、各群間で、糖尿病、高血圧、年齢、脂質異常症などの交絡因子に差はなかったでしょうか。

 

<番外編>
心房細動の原因ということに関する記述は意外と多くありません。
ちょっと冗長になりますが、そのあたりの記載をピックアップしてみました。
なお、CKDについての記載はみつかりませんでした。

 
心房細動の原因および心房細動発作誘因は何か?
http://www.m-junkanki.com/heart_diseases/atrial_fibril.html#afQ6
あらゆる心臓病や心房の機械的な負担増加は、心房細動の原因となる。
また、血液・ホルモン・電解質・低酸素血症・自律神経調節異常などの心臓外の異常も原因となる。  
心房細動の原因に甲状腺機能亢進症が隠れていることがあることは有名である。
心房細動は心臓病はもちろん、心臓外の病気でも心房に負担をかけると起こりやすくなるので、心臓病以外の異常にも注意を払う必要がある。
心臓疾患では、弁膜症(特に僧帽弁膜疾患)、肥大型心筋症、拡張型心筋症、虚血性心疾患、高血圧性心疾患、心膜炎、種々の原因による心不全などがある。
 
心臓以外の疾患では、甲状腺機能亢進症、肺塞栓症、高度の貧血、動静脈シャント、発熱疾患、低酸素血症、低カリウム血症などがある。
 
生活習慣では、睡眠不足によって、心房細動発作が誘発されることがよくある。
他には運動、アルコール(なりやすい人は少量でも誘発)、過剰のカフェイン、肥満、喫煙などが心房細動を誘発する原因となっている。


心房細動の背景にある疾患は何が多いか?
http://www.m-junkanki.com/heart_diseases/atrial_fibril.html#afQ16
具体的には、高血圧症、僧帽弁弁膜症、三尖弁弁膜症、虚血性心疾患、甲状腺機能亢進症などがある。
発作性心房細動ではそれらの合併症がないこと(孤立性心房細動)が多い。
他方、慢性の心房細動では弁膜症が多い。
なお、虚血性心疾患に合併した心房細動は日本では少ないが、海外では多い。
なお、20年以上前に比べて、近年はリウマチ性弁膜症を背景とした心房細動は激減している。
 
心房細動の原因、基礎疾患
http://www.udatsu.vs1.jp/af.htm
心房細動の基礎疾患としては、加齢、高血圧、糖尿病、虚血性心臓病、心臓弁膜症(ことに僧帽弁狭窄)、特発性心肥大、甲状腺機能亢進症などがあります。
個々の疾患別に見て心房細動の合併率が高いのは、僧帽弁膜症、甲状腺機能亢進症ですが、実際に遭遇する心房細動について言えば、高血圧、虚血性心臓病などが多く認められます。
これは、心房細動は加齢と共に出現率が著しく増加し、高血圧、虚血性心臓病は高年者に多いことに起因しています。
しかし、心房細動の 中には全く基礎疾患がない例が多くあり、「lone atrial fibrillation」(lone=孤独な)と呼ばれ、従来は「白髪現象」に譬えられ、無害な不整脈と考えられていましたが、近年、このような基礎疾 患がない心房細動も心房内血栓形成から脳塞栓を起こす場合が少なくないことが認識され、その予防のための抗凝血薬療法の必要性が認識されるようになりまし た。

 
 
 
 
Pablo Picasso   Fleurs-Flowers,1960
 
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近年,糖尿病患者数は増加の一途をたどっています。
そのため糖尿病患の進行に伴う冠動脈疾患(CAD)の発症をいかに予防するかが大きな課題になっています。
座談会「糖尿病合併高コレステロール血症患者の冠動脈疾患予防を目指して」の記事で勉強しました。
ピタバスタチン(リバロ)を発売している製薬メーカー主催の座談会です。
糖尿病とCADとの関係,糖尿病患者における脂質管理のポイント,ピタバスタチンの最新のエビデンスと現在進行中の臨床試験について討議がされています。
 
糖尿病合併高コレステロール血症患者の冠動脈疾患予防
を目指して
司会
小川 久雄 氏 
   熊本大学大学院 生命科学研究部循環器病態学 教授
出席
朔 啓二郎 氏 
   福岡大学医学部 心臓・血管内科学 主任教授
廣 高史 氏 
   日本大学医学部内科学系 循環器内科学分野 准教授
 

糖尿病はCADの強力な危険因子

小川(司会) 
現在,わが国の糖尿病患者は増加の一途をたどり,予備群を含めると約2,210万人に達すると推測されています。
糖尿病は CADの発症と密接にかかわっていることが知られており,CADを起こした患者の糖代謝異常の割合を調べると約5割でなんらかの異常を示すことが国内外のデータから示されています。
本日は,糖尿病患者におけるCADの予防戦略を最新の知見を交えて考えていきたいと思います。

 (糖尿病のリスクについて)
日本人の2型糖尿病患者の心血管疾患発症リスクは,疫学調査の結果から非糖尿病患者に比べて約3倍高いといわれています。
 
また,自験データからも,インスリン抵抗性があり,HDLコレステロール(HDL-C)値が低い方は,相乗的にCADの危険率が高まることが示されており,糖尿病を含めた糖代謝異常はCADの危険因子として極めて重要な病態といえます。
 
糖尿病患者の脂質コントロールはより積極的に
朔(CADリスクの高い糖尿病患者の治療のポイント) 
日本人の糖尿病患者を対象に実施されている疫学調査JDCS(Japan Diabetes Complications Study)の9年次報告では,2型糖尿病患者におけるCADのリスクについて検討していますが,最も重要な因子はLDLコレステロール(LDL-C)であることが示されています。
 
こうした結果から,糖尿病患者のCAD発症抑制のためには,血糖管理に加えLDL-Cの管理が重要と考えます。
動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007 年版における糖尿病患者のLDL-C管理目標値は一次予防で120mg/dL未満,二次予防で100mg/dL未満と厳格な目標値が設定されています。
一 方,米国のガイドラインNational Cholesterol Education Program(NCEP)ATPⅢでは,糖尿病はCADに相当するvery high riskに分類され,一次予防であってもLDL-C目標値は100mg/dL未満に設定されています。
糖尿病の危険因子としての重み付けはガイドラインで異なり,いまだ議論の余地があるところと思います。
 
小川 
糖尿病患者においてLDL-Cをどこまで下げればよいかということを明確に示すことは今後の大きな課題の1つと考えられます。
今回, 日本人の急性冠症候群(ACS)を対象としたJAPAN-ACSの糖尿病サブ解析結果から,そのヒントになるような知見が得られたと伺っています。
 

糖尿病患者における冠動脈プラークの特徴
 
われわれが実施したJAPAN-ACSは,日本人のACSを対象にピタバスタチンまたはアトルバスタチンを投与しプラーク容積がどのように変化するかを検討したもので,平均17.5%のプラーク退縮を認めました。
また,この試験の中でプラーク退縮の因子として糖尿病が重要であることが分かり,サブ解析として糖尿病群(全体の約30%)と非糖尿病群を比較したところ,両群間でLDL-C変化率には有意差がないにもかかわらず,プラーク容積 変化率は糖尿病群で有意に低いことが示され(図1,糖尿病患者ではプラークが退縮しにくいことが明らかになりました。

図表
 

 (糖尿病患者のプラークが退縮しづらい理由)
明確な理由は分からないのですが,一般的に糖尿病患者の血管はプラーク量が多く,さらに石灰化しているという特徴があり,こうした性状の違いが関係していると思われます。

小川
 
JAPAN-ACSのサブ解析ではもう一点,興味深い結果が得られているようですね。

 
プラークとLDL-Cの関係について非糖尿病群,糖尿病群に分けて解析したところ,非糖尿病群では,LDL-Cとプラーク容積変化率には有意な相関が認められなかったのですが,糖尿病群では,LDL-Cとプラーク容積変化率に有意な相関が認められました。
つまり糖尿病患者においては,LDL-Cを下げれば下げるほど,プラークが退縮に向かうことが示されました。

小川
 
なるほど。糖尿病の有無によってスタチンの効果が違ってくるのですね。
この知見をどのように解釈したらよいでしょうか。
 
 
スタチンによるプラーク退縮のメカニズムにはLDL-Cに依存するものと依存しないものがあり,その加算によって退縮が決まると推測しています。
糖尿病ではなんらかの影響でLDL-C非依存の部分が抑制されてしまうため,LDL-C依存性の部分が残り,それが前面に出ているのではないかと考えています。
 
小川 
今回の解析から糖尿病患者の脂質管理目標値に関して何か新たな知見は得られたのでしょうか。
 
 
脂質管理目標値については,値が明らかになっているわけではありませんが,糖尿病患者においては積極的にLDL-Cを下げることの重要性を示唆する結果が得られたと考えています。
現在,日本人のCADを対象としたREAL-CADという試験が進行中です(図2)。
この試験は,日本で初めてのストロングスタチンによる積極的脂質低下療法の二次予防効果をみた大規模臨床試験です。
この結果が明らかになれば,LDL-C はどこまで下げるべきなのかについて日本人独自の新たな基準が示されることでしょう。
そしてそのサブ解析を含めて,日本人の糖尿病患者の脂質管理に関する エビデンスが今後次々ともたらされるものと期待しています。

図表
 
 
日本人におけるピタバスタチンの新たなエビデンス
小川
 
このような臨床研究の結果からもやはり糖尿病患者においてはストロングスタチンを用いてLDL-Cをしっかり管理する必要があるわけですが,現在3種類ある中でどのスタチンを使えばよいのでしょうか。
 
 
私たちが行ったPATROL Trialは,そのストロングスタチン3剤を世界で初めて直接比較した試験です。
九州の51施設において高コレステロール血症患者302症例を登録し,ピタバスタチン2~4mg/日,アトルバスタチン10~20mg/日またはロスバスタチン2.5~5mg/日の3群に無作為に割り付け,各薬剤を16週間投与しました。
有効性および安全性について検討した結果,いずれの投与群もLDL-Cが十分に低下し,重篤な副作用もなく忍容性は高いと判断されました。
さ らに詳細に検討していくとピタバスタチンは,HbA1cにほとんど影響を与えませんでした)。
この点についてはクラスエフェクトではなく各薬剤固有の作用(ドラッグエフェクト)が存在する可能性があると考えています。

図表
 
小川 
糖尿病患者の治療では,糖代謝に影響を及ぼさないことが重要と考えられます。
このメカニズムは何が考えられますか。

 
スタチンがHMG-CoA還元酵素を阻害するところにHbA1cが上がるメカニズムが存在すると考えていますが,ピタバスタチンは,HMG-CoA還元酵素阻害作用とは独立してLDLレセプターを効率的に増加させるとのデータがあり,そのような作用がHbA1c上昇を抑制している可能性があります。

同じクラスの薬剤間にも少しずつ特徴に差があり,臨床現場では合併症など患者背景を考慮し,最も適する薬剤を選択することが望ましいと思います。
 
小川 
PATROL Trialの結果は,脂質異常症治療におけるストロングスタチンの使い方を示す重要な知見と思われます。
われわれも,CAD患者を対象にピタバスタチンまたはアトルバスタチンを投与し,HDL-Cと高分子量アディポネクチンを中心に,脂質やhs-CRP,HbA1cに与える影響を検討するCOMPACT- CADを進めています(図3)。
現在データを解析しているところですが,この結果によりスタチンごとの特徴が明らかとなれば,脂質異常症治療に新たな示唆を与えられるのではないかと期待しています。

図表
出典 Medical Tribune 2011.7.7
版権 メディカル・トリビューン社
 
 
<関連サイト>
PATROL試験
http://blog.m3.com/reed/2
0100309/PATROL_
 
2011.7.10 撮影 雲に隠れる蓼科山(長野県)
 
 
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CKD患者でもLDL-c降下薬はイベントリスクを低減
9000人超を対象とした無作為化試験SHARPの結果
慢性腎臓病(CKD)患者にスタチンを投与すると、CKDではない患者と同様に心血管リスクが低下するのだろうか。この疑問に基づき無作為化試験を行った英Oxford大学のColin Baigent氏らは、進行したCKD患者にシンバスタチンとエゼチミブを投与してLDL-コレステロール(LDL-C)値を低下させる治療は安全で、アテローム性動脈硬化イベントを有意に減らせることを明らかにした。
論文は、Lancet誌2011年6月25日号に掲載された。 
 
腎疾患のない人々においては、スタチンを投与してLDL-C値を下げると心筋梗塞、虚血性脳卒中のリスクが低下し、冠動脈血行再建術の必要性も下がることが示されている。
だが、心血管リスクが上昇している中等症から重症のCKD患者にも同様の利益が見られるかどうかは不明だった。   
今回行われた二重盲検無作為化試験SHARPは、そうしたCKD患者に対するシンバスタチンとエゼチミブの併用の有効性と安全性を評価することを目的として行われた。
 
著者らは、腎機能が低下している患者に高用量のスタチンを投与すると筋障害リスクが上昇するという報告に基づき、低用量のスタチンでLDL-Cを約1mmol/L下げることを目標として、介入群にはシンバスタチン20mg/日とエゼチミブ10mg/日を併用した。
心筋梗塞および冠動脈血行再建術を経験していない40歳以上のCKD患者で、これまでに検査で1回以上、血清クレアチニンまたは血漿クレアチニンが、男性で150μmol/L(1.7mg/dL )以上、女性では130μmol/L(1.5mg/dL)以上になった人々9270人(平均年齢62歳)を登録。
うち3023人は維持透析を受けていた。
この試験は当初、シンバスタチン+エゼチミブ、シンバスタチン、偽薬の3通りの治療に患者を割り付けたが、1年経過した時点でシンバスタチン群の患者をシンバスタチン+エゼチミブまたは偽薬に再割り付けしていた。結果的に、4650人がシンバスタチン+エゼチミブ(介入群)、4620人が偽薬(対照群)の投与を受けた。
評価指標は初回の主要なアテローム性動脈硬化イベント(非致死的心筋梗塞、冠疾患死亡、非出血性脳卒中、あらゆる動脈血行再建術)とした。
分析はintention-to-treatで行った。
ベースラインで23%が糖尿病で、15%に狭心症、脳卒中、末梢血管疾患などの血管疾患歴があった。
ベースラインのLDL-c値は2.8mmol/Lだった。
追跡期間は4.9年(中央値)になった。
 
介入群で割り付け薬またはそれ以外のスタチンを使用していた患者は、1年目の終わりが77%。4年目の終わりは68%だった。
対照群でスタチンを使用していた患者はそれぞれ3%と14%だった。
割り付け後26〜31カ月では介入群71%と対照群9%で、この時点のLDL-C値は、介入群ではベースライン から1.00mmol/L低下、対照群では0.15mmol/L低下しており、両群間の差は0.85mmol/L(SEは0.02)だった。
追跡期間中に主要なアテローム性動脈硬化イベントを経験したのは、介入群の526人(11.3%)と対照群の619人(13.4%)で、率比は 0.83(95%信頼区間0.74-0.94、ログランク検定のP=0.0021)となり、介入によるイベントリスクの17%減少が示された。
主要な血管イベント(主要なアテローム性動脈硬化イベント+非冠動脈関連心臓死亡+出血性脳卒中)は、介入群701人(15.1%)と対照群814人(17.6%)に発生、率比は0.85(0.77-0.94、P=0.0012)になった。
主要な冠動脈イベント(非致死的心筋梗塞または冠疾患死亡)は介入群213人(4.6%)と対照群230人(5.0%)で、率比は 0.92(0.76-1.11、P=0.37)。このうち非致死的心筋梗塞の率比は0.84(0.66-1.05、P=0.12)、冠疾患死亡は率比 1.01(0.75-1.35、P=0.95)で、いずれも有意差がなかった。
介入群における非出血性脳卒中の率比は 0.75(0.60-0.94、P=0.01)、虚血性脳卒中の率比は0.72(0.57-0.92、P=0.0073)と有意なリスク低下を示した。出 血性脳卒中については率比1.21(0.78-1.86、P=0.4)で有意差はなかったが、あらゆるタイプの脳卒中は率比 0.81(0.66-0.99、P=0.04)で差は有意だった。
動脈血行再建術施行も率比は0.79(0.68-0.93、P=0.036)で有意差を 示した。
サブグループ解析でも、介入の影響は全体の分析結果と同様であることが示唆された。
透析患者と透析を受けていない患者の間にも差は見られなかった。
あらゆる重症度の筋障害はまれで、両群間の差は有意ではなかった。
加えて、介入群に肝炎や胆石、癌のリスク上昇は認められなかった。非血管疾患による死亡リスクの上昇もなかった(介入群668人〔14.4%〕、対照群612人〔13.2%〕、P=0.13)。
介入は腎疾患の進行には有意な影響を及ぼしていなかった。
ベースラインで透析を受けていなかった6247人のうち、維持透析を開始、または腎移植を受けた患者は介入群33.9%と対照群34.6%で、率比は0.97(0.89-1.05、P=0.41)だった。
広範な進行CKD患者へのシンバスタチンとエゼチミブの併用は安全にLDL-C値を低下させ、主要なアテローム性動脈硬化イベントのリスクを下げることが示された。
         (大西淳子 医学ジャーナリスト)
原文
The effects of lowering LDL cholesterol with simvastatin plus ezetimibe in patients with chronic kidney disease (Study of Heart and Renal Protection): a randomised placebo-controlled trial
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2811%2960739-3/abstract
出典 NM online 2011.7.5
版権 日経BP社

 

<私的コメント>
シンバスタチン(日本での商品名;リポバス)は米国ではZocor(Merck/Schering-Plough)として発売されており、FDAでは80mgまで認可されています。
しかし2010.3に、最大用量で横紋筋融解症の発症が多いという警告がFDAから出されました。
国内での最大使用量が20mgですから、80mgはかなりの高用量ということになります。

さて、今回の結果についてですが、意地悪く解釈すれば CKDという概念が、ある意味で否定されかねない結果ともいえます。
何故なら、CKDに一定の臨床的意味があるのならLDL−C降下剤が無効の方が好都合だからです。
発表者の初期の予想(期待)はどうだったのでしょうか。
同様の利益が見られるかどうかは不明だった」だけでは面白くありません。   
このあたりも発表者はきちんと考察に書いているのでしょうか。
いささか興味のあるところです。
また、シンバスタチンは脂溶性とはいえ一部に腎排泄もあるはずです。
CKD患者でシンバスタチンやエゼチミブの血中濃度が高かった(効果が出やすかった)ということはないのでしょうか。

 

ご存知のように、スタチンには水溶性と脂溶性の2種類があります。
水溶性はメバロチン、脂溶性はリポバス・リピトール・ローコール・リバロです。
肝細胞は、水溶性でも脂溶性でも細胞内に取り込みますが、肝臓以外の一般的な各種臓器・筋肉の細胞には脂溶性しか取り込みません(細胞膜は脂質でできている為、水溶性スタチンは通過しにくい)。
スタチンはコレステロールの合成阻害をすると同時にCoQ10の合成も阻害します。
このCoQ10はミトコンドリアでのATP産生に重要な補酵素として働きます。
生体内で一番ATPが作られ、消費される組織は筋肉です。
脂溶性スタチンは筋肉にも取り込まれCoQ10の合成が阻害されATP産生が抑えられる為に筋肉痛・筋炎・横紋筋融解症が起こる原因の一つと考えられています。
また、虚血性心疾患を持っている人が脂溶性スタチンを服用するとATP産生が抑えられ心臓のポンプ機能が低下する可能性があります。 

高脂血症患者にスタチンを使用する最終目的は、血中コレステロールを下げることではなく、循環器疾患の危険因子である動脈硬化を防止し、虚血性心疾患の発生を予防することといえます。
しかし、血中コレステロールを下げることを目的にスタチンを使用すると心疾患を予防するという本来の目的を見失う可能性があります。

余談になりますが、スタチンによる筋肉痛に対してユビキノンを投与したところ2~3日で筋倦怠感は消失し、筋炎の再発が防止できたという報告もあるようです。
スタチン投与中に起こる筋肉症状にはノイキノン(ユビデカレノン・CoQ10)が有効かも知れません。

脂溶性スタチンにはノイキノンを併用、という考えはあるのでしょうか。

<参考>
水溶性と脂溶性スタチン 
http://blog.livedoor.jp/ketamai/archives/51643092.html
http://blog.livedoor.jp/ketamai/archives/51643106.html

 
<関連サイト>
ZETELD:スタチン+ゼチーア>スタチン増量
http://intmed.exblog.jp/10065401/
ゼチーア錠10mg
http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/2189018F1027_1_07/2189018F1027_1_07?view=body
健康成人男性(外国人8例)に14C-エゼチミブカプセル20mgを単回投与したとき,投与後240時間までの放射能排泄率は糞中に78%,尿中に11%であった。
健康成人男性(各6例)に本剤10,20,40mgを単回投与したとき,投与後72時間までのエゼチミブ(非抱合体)としての尿中排泄率は0.05%未満であり,尿中総エゼチミブ(非抱合体+抱合体)排泄率は8.7%~11%であった。
シンバスタチン 腎排泄 13%
FDA Drug Safety Communication: Ongoing safety review of high-dose Zocor (simvastatin) and increased risk of muscle injury
http://www.fda.gov/Drugs/DrugSafety/PostmarketDrugSafetyInformationforPatientsandProviders/ucm204882.htm

 

<番外編>
エゼチミブに関しては、担当MRが「閉経後の女性には効果が低い」と言い切っていました。
そんなことは講演会でも聞いたことはありません。
添付文書にも出ていません。
その間の事情に詳しい先生には是非コメントをいただきたく思います。
<2011.7.7追加>
件のMRさんが今日の昼、別件で来院しました。
このこと(「閉経後の女性には効果が低い」件)を再度確認しました。
「閉経後でも肥満傾向の女性なら効果はある」という返事。
よく勉強しているMRさんなので、私は彼のいうことを信用していますが、一度関連した文献でも取り寄せようか、と思っているところです。
 
この論文( SHARP試験)についてはCare Net.comでも紹介されていました。

 

慢性腎臓病に対するLDL-C低下療法、動脈硬化イベントを低減
■慢性腎臓病は心血管疾患のリスクを増大させるが、その予防についてはほとんど検討されていない。
■スタチンを用いたLDLコレステロール(LDL-C)低下 療法は、非腎臓病患者では心筋梗塞、虚血性脳卒中、冠動脈血行再建術施行のリスクを低減させるが、中等度~重度の腎臓病がみられる患者に対する効果は明ら かではないという。
■ 著者は、「シンバスタチン20mg/日+エゼチミブ10mg/日は、進行性の慢性腎臓病を有する広範な患者において、高い安全性を保持しつつ主なアテロー ム性動脈硬化イベントの発生率を有意に抑制した」と結論し、「腎臓病のない集団と同様に、LDL-C値低下の絶対値に基づくイベント低下率は年齢、性別、 糖尿病、血管疾患の既往、脂質プロフィールにかかわらず同等であったことから、SHARP試験の結果は慢性腎臓病のほとんどの患者に適応可能と考えられ る」と指摘している。
 http://www.carenet.com/news/det.php?nws_c=22665

 

 


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5,000人が参集し,腎臓病領域の最新知見について意見を交わした世界腎臓学会議(WCN 2011)がカナダで開かれました。(主催;国際腎臓学会、ISN)

この学会でのLate-Breaking Studiesの記事で勉強しました。 
 
CKDの新たな治療法探る試験相次ぐ
慢性腎臓病(CKD)が世界的に増えている背景には,人口の高齢化や,糖尿病・高血圧といった生活習慣病の増加がある。
CKDは進行すると透析や腎移植が必要な末期腎不全(ESRD)に至るが,透析となった場合,患者の生命予後は不良だ。
また,CKDは心血管疾患の強力な危険因子であることも明らかとなっている。
したがって,CKDは早期に発見し,適切な治療を行い,腎障害を進展させないことが極めて重要となる。
<私的コメント>
CKDの概念が提唱された時もそうでしたが、未だに私はこのCKDがよく理解できません。
「心血管疾患の『強力な危』険因子 」といわれてもピンと来ないのです。
「蛋白尿」も「動脈硬化(糸球体硬化)」の結果かも知れません。
すなわち、腎の糸球体高血圧が続いた結果、腎臓の細動脈の動脈硬化(糸球体硬化)が生じます。
更に、この糸球体硬化が蛋白尿を生じると考えると、たとえ「蛋白尿が尿細管への負荷となる」といわれても原因と結果が逆ではないかと思ってしまうのです。
蛋白尿が動脈硬化の原因ならばネフローゼ患者では、とりわけ動脈硬化が進行しているはずです。
しました

 

その1
PREDIAN試験
pentoxifyllineがeGFR低下を抑制
糖尿病腎症はESRDに至る最大の原因だ。
レニン・アンジオテンシン系(RAS)抑制薬による恩恵はあるものの,ESRDに進展する患者は依然相当数に上る。新たな治療法を探るべく,pentoxifyllineを用いて行われたランダム化比較試験(RCT)では,2年後の推算糸球体濾過量 (eGFR)低下が有意に抑制されたことが判明した。カンデラリア聖母病院(スペイン・サンタクルス・デ・テネリフェ)腎臓研究室のJuan F. Navarro-González氏が報告した。

RAS抑制下での上乗せ効果確認
Pentoxifyllineには,腫瘍壊死因子(TNF)αをはじめとした各種炎症性サイトカインの活性を修飾する作用がある。これまでに行われた複数の少数例での検討では,同薬に抗蛋白尿効果があることが示されている。
 
PEDIAN(Pentoxifylline for REnoprotection in DIAbetic Nephropathy)と名付けられた今回の試験は,カルロスⅢ世保健研究所(スペイン科学・技術革新省)から資金提供を受け,研究者主導で実施されたもの。
2型糖尿病患者462 例がスクリーニングされ,うちCKDの病期(ステージ)が3~4の患者169例がランダムに対照群(87例)と実薬 (pentoxifylline;1,200mg/日)群(82例)に割り付けられた。
同薬は最初の1カ月は1日1回600mgの徐放剤を夕食時に服用させ,その後は1日2回服用させた。
なお,同試験の組み入れ基準の1つが,6カ月間以上,ACE阻害薬またはアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)を推 奨最大量服用していることである。
 
対象の平均年齢は69歳,糖尿病罹病期間15年。
CKDステージ3が69%,ステージ4が31%で,eGFRは37mL/分/1.73m2,尿中アルブミン1.39g/日,血圧142/86mmHgだった。
両群間で患者背景や腎機能,炎症プロファイルに差は見られなかった。

同試験は今年2月に終了したばかりであり,Navarro-González氏は「部分的で完全なものではない」と断った上で,結果について説明した。
 
ベースライン時と比べて2年後の尿中アルブミン排泄量は,対照群では6.5%有意に増加していたのに対し,実薬群では15.1%有意に低下しており,両群間の差も有意であった。
 
1次評価項目に設定された「2年後のeGFR低下度」を見ると,対照群の0.32mL/分/1.73m2/月に対し,実薬群では0.11mL/分/1.73m2/月と小さく,両群間の差は有意であった。

eGFRの低下度が0.20mL/分/1.73m2/月を超える者を「進行例」と定義すると,対照群の73.5%に比べて,実薬群では24.3%と有意に少なかった。
また,全体を進行群と非進行群に分けて比較したところ,進行群で尿中アルブミンや尿中TNFαが有意に多いことも分かった。

消化不良や胃痛,吐き気/嘔吐,下痢は実薬群では対照群の2~3倍多かったが,いずれも最初の1カ月に起きた一過性のものであり,重篤な副作用は認められなかった。
実薬を中止したのは1例のみであった。
 
以上のように,RAS抑制薬を使用している2型糖尿病合併CDK患者へのpentoxifylline投与により,上乗せの抗蛋白尿効果が認められるとともに,eGFR低下も有意に抑えられることが明らかとなった。
 
最後に,同氏は「半量での開始,徐放という剤形,そして食事とともに服用する方法を取ったことで,同薬は良好な忍容性が得られた」と付言した。
 


その2
~厳格な降圧療法のメタ解析~

蛋白尿ある患者でESRDリスク低減

最近のガイドラインでは,CKD患者に対しては腎機能保護のため,より低い血圧目標値を勧告している。
シドニー大学ジョージ国際保健研究所(オース トラリア・シドニー)のVlado Perkovic氏は,メタ解析の結果から,蛋白尿を呈するCKD患者では厳格な降圧療法によりESRDのリスクが低減されるが,蛋白尿のないCKD患者ではこうした効果は見られなかったことを明らかにした。
 
心血管イベントや死亡は減らず
Perkovic氏らはまず,Medline,Embase,コクランライブラリーをシステマチックに検索し,1950~2010年4月に掲載された RCTを抽出。
そのうち,CKD患者に対して異なる血圧目標値を設定していて,転帰として腎不全や心血管イベント,総死亡について報告している9試験を今 回のメタ解析の対象とした。
 
9試験のCKD患者は総計6,713例。1,244件の腎イベント(血清クレアチニンの倍化/GFRの半減,またはESRD)と234件の心血管イベント,644件の死亡が確認された。
 
通常降圧群と厳格降圧群との血圧の差は9.5/5.2mmHgであったが,厳格な降圧によるESRDリスク低減効果は有意とはならなかった〔ハザード比(HR)0.82,95%信頼区間(CI)0.67~1.01,P=0.061〕。
 
ベースライン時の蛋白尿の有無で分けてサブグループ解析を行ったところ,蛋白尿(0.3g/日以上またはそれ相当値)を呈した患者群では厳格な降圧によ りESRDリスクが29%有意に低下することが判明(HR 0.71,95%CI 0.59~0.85,P<0.001)。
一方,蛋白尿のなかった患者群ではリスク低減効果は得られなかった(HR 1.12,95%CI  0.66~1.90,P=0.679)。
 
心血管イベント〔相対リスク(RR)1.09,95%CI 0.84~1.42,P=0.535〕および死亡(RR 0.94,95%CI 0.84~1.05,P=0.242)に関しては,厳格な降圧による効果は認められなかった。
 
同氏は,今回の解析の限界として,対象としたRCT間に不均一性が見られたことや蛋白尿のない患者群で一致しない結果だったことなどを挙げた上で,「蛋 白尿を呈するCKD患者に対して厳格な降圧療法はESRDリスクを低減させる」と結論。
「降圧はESRDという“重荷(burden)”を減らすための重 要な戦略だが,さらなるデータが必要だ」と締めくくった。
 
 
その3
~LDL-C低下療法~
腎疾患進展は抑制できず

CKD患者9,000例余りを対象にLDLコレステロール(LDL-C)低下療法の効果を検討した大規模臨床試験SHARP
Study of Heart and Renal Protection)。
動脈硬化性イベントが17%有意に抑制されたとの結果は既に昨秋の米国腎臓学会(ASN)で発表されているが,事前に設定された腎エンドポイントに関しては効果がなかったことが判明。
オックスフォード大学(英オックスフォード)臨床試験サービス・疫学研究室のDavid Lewis氏が報告した。

効果得られるサブグループない

Lewis氏によると,CKDではない患者を対象としたRCTのメタ解析では,LDL-C低下療法により腎疾患進展が多少抑えられることが示されたが,進行したCKD患者において同療法により臨床的に意味のある効果が得られるかどうかは不明だった。

 
そこで,SHARPでは腎の評価項目として,「ESRD(=透析導入または腎移植)」,「ESRDまたは死亡」,「ESRDまたは血清クレアチニンの倍化」の3つが事前に設定された。
 
同試験の参加者9,270例のうち,開始時に透析導入されていなかった6,247例が今回の解析対象とされた。
CKDステージは3が36%,4が 43%,5が20%。
尿中ACR(mg/g)は30未満(正常アルブミン尿)が20%,30以上300未満(微量アルブミン尿)が38%,300以上(蛋 白尿)が42%という患者集団だった。
 
中央値4.9年の追跡で「ESRD」に至ったのは,LDL-C低下療法群33.9%,プラセボ群34.6%で,両群間に有意差はなかった(RR 0.97,95%CI 0.89~1.05)。
ちなみに,ESRDとなった患者の約4分の1は透析導入される前に腎移植を受けていた。
 
死亡もLDL-C低下療法群20.4%,プラセボ群20.3%と全く差がなく,2つ目の腎評価項目である「ESRDまたは死亡」もそれぞれ47.4%,48.3%と有意差は認められなかった(PR 0.97,95%CI 0.90~1.04)。
 
血清クレアチニンが倍化した割合は,LDL-C低下療法群が11.9%と,プラセボ群の13.3%に比べて低い傾向にとどまり,「ESRDまたは血清ク レアチニンの倍化」もそれぞれ38.2%,40.2%で有意とはならなかった(RR 0.93,95%CI 0.86~1.01)。
 
eGFRや尿中ACRのレベルで分けてサブ解析を行っても,LDL-C低下療法によりERSD進展抑制効果が得られたサブグループはなかった。
 
eGFRの変化率に関しても解析を試みたが,LDL-C低下療法群とプラセボ群で有意差は認められなかった。

出典 Medical Tribune  2011.6.16
版権 メディカル・トリビューン社

<eGFRに関する私的コメント>
日本腎臓病学会編「CKDガイド」の「推算GFR値」早見表を患者さんに見せながら説明していて、アッと気付いたことがあります。
それは男女で差はあるものの(女性は男性のeGFR値に0.739という係数を掛ける) 、Cr以外では年齢だけが変数であるということです。
要するに体重に対する配慮がないのです。
最近、体格の良い高齢の女性でCrが高めに出るケースをしばしば経験しました。
周知のように、クレアチニンの量は筋肉量や運動量と関係しているといわれます。そのため、一般に女性より男性のほうが高値に出るというわけですが、男性より体格のよい女性もいくらでもいます。
このことが気になって、あるMRさんに学術に訊いてもらいました。
次回の改訂ではシスタチンCが用いられるようになるのではないか、ということ。
 
 
<シスタチンC 関連サイト>
腎機能評価にシスタチンC
筋量に影響されるクレアチニン(Cr)に比べ、糸球体濾過量(GFR)を正確に反映する。現在、シスタチンCを基にしたGFR推算式の作成も進行中。
分子量が小さく全て腎糸球体で濾過されるため、血中濃度はGFRに依存し、腎機能の低下に伴って血清シスタチンCの濃度は上昇する。
基準範囲はおよそ0.5~1.0mg/Lで、その産生は生涯を通してあまり変動せず、年齢や性別の影響を受けにくい。
シスタチンCはCrに比べて腎機能低下の影響を早期から受けるという特徴を持つ。
2006年から国内でも、3カ月に1回の検査が保険適用となり、腎臓内科を中心に利用が広がっている(点数は130点)。
CKDの進行をより正確に予測する新しい検査法
eGFRに代わる腎機能の簡便な指標
シスタチンC

 

 

その他
「葦の髄」循環器メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/
(循環器専門医向き)
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21 http://wellfrog.exblog.jp/ 
(内科医向き)
「井蛙」内科メモ帖 
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/  
があります
 
 

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