戯れ言たれる侏儒
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特別企画
「CKD 診療ガイド―高血圧編―」発刊!
そのポイントと上手な使い方を聞く  その2(2/2)

蛋白尿の原因として注目される糸球体足細胞とネフリンの障害
―そもそも,RA系抑制薬によってどうして蛋白尿が減るのでしょう。
「ACE阻害薬やARBの蛋白尿減少機序は,従来,糸球体内圧などの腎血行動態で説明されてきました。アンジオテンシンII(A II)は輸出細動脈を収縮し糸球体内圧を上げ,メサンギウム基質を増やし糸球体硬化を進めますが,ACE阻害薬やARBはこれを抑えるからです。しかし近年,蛋白尿の機序について糸球体足細胞(podocyte)の障害が注目されています」

―足細胞とはどんなものですか。
「足細胞は,基底膜の尿腔側にあって内皮細胞,基底膜とともに糸球体毛細血管で血清蛋白を保持するための障壁を形成します(図3)。

 

糖尿病や慢性腎炎などで糸球体毛細血管の内圧が上がると,足細胞にかかる張力が増大します。これが続くと,足細胞は平坦化しeffacement(消失)と呼ばれる腎生検所見を呈します。これは,足細胞表面のAT1受容体が増え,足細胞がアポトーシスに陥ったためと考えられます。
そして,足突起と足突起の間のスリット膜を構成する分子として,1998年Tryggvasonらがネフリンを同定しました。ネフリンは,足細胞と同様に,糸球体毛細血管の透過選択性の維持に必須の分子です。慢性腎炎患者で尿蛋白量とネフリン発現量の相関をみた結果,両者に負の相関があることも確認されています」

バルサルタンはネフリンを増やし足細胞のアポトーシス抑制(ラット)
―それではARBは,足細胞に対してどのように作用するのですか。
「Mifsudらは,糖尿病性腎症ラットの足細胞を電子顕微鏡で観察しました。糖尿病ラットでは顕著な足細胞のeffacementが見られましたが,ARBバルサルタンを投与しておくとeffacementは正常化しました」

―ネフリンにはどう働きますか。
「ネフリンに関しては,Davisらの興味深い検討があります。彼らは糖尿病ラットの糸球体で免疫染色を行い,ネフリン発現が著明に低下する点を見出しました。ところが,バルサルタンを16週間単剤投与したラットでは,ネフリンは対照と同程度に回復。一方,Ca拮抗薬アムロジピンを併用したラットでは,ネフリンは増加しませんでした(図4)。

 

このとき両群の降圧は同等で,アルブミン尿はバルサルタン群のみ減少していました。以上の結果から,バルサルタンの尿蛋白減少作用にはネフリン回復が強くかかわると推測できます。
このように,腎糸球体の微細構造とARBによる腎保護作用は並行して解明されてきました。Tryggvasonらのネフリン同定以降,ARBの腎保護作用のとらえ方も大きく変化したと言えるでしょう(図5)」

SMART;バルサルタンは高血圧合併糖尿病性腎症のアルブミン尿を抑制
―バルサルタンのそうした腎臓での好ましい作用は,臨床でも確認されていますか。
「バルサルタンが早期腎症患者の微量アルブミン尿を有意に減らすことは,2002年のMARVAL試験ですでに確認されています。
日本でのエビデンスとしては,滋賀医科大学の柏木教授が昨年発表したSMART試験があります。SMARTでは糖尿病性腎症150人をバルサルタン群とアムロジピン群に割り付け,6か月間観察しました。そして,試験終了時のHbA1c,血圧値は2群間で差がなく,両群で131/75mmHgと十分な降圧を達成したにもかかわらず,尿中アルブミン排泄量はアムロジピン群で増加,バルサルタン群で減少。群間差が認められました(図6)。


 

さらに,終了時の収縮期血圧130mmHg未満例と以上例を比べると,バルサルタン群では両方で微量アルブミン尿が同等に減っていました。この結果は,バルサルタンの腎保護作用が降圧に依存したものではないことを示唆しています。
微量アルブミン尿患者は,1年間に2.8%が顕性腎症に進展し,3%がCVDなどで死亡します(図7)。

これこそ,CKDの恐ろしさと早期介入の必要性を端的に表した図ですが,SMARTはその解決策を提示した画期的な臨床試験と言えるでしょう。透析大国と呼ばれる日本の状況も,ARBを活用することで5,6年後には患者数が減少に転じるのではないかと,強く期待しています」

出典 Medical Tribune 2008.8.21
版権 メディカル・トリビューン社

 

読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。
他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
「井蛙内科/開業医診療録(2)」
http://wellfrog2.exblog.jp/?2008.5.21
「井蛙内科/開業医診療録」~2008.5.21 
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最近、某メーカーのMRさんが「CKD診療ガイド-高血圧編-」の小冊子を持ってきてくれました。
しかし、これらのガイドラインは開業医にとって読み込む時間がないので、行間までガイドライン発刊の趣旨を十分に理解することができません。
そんな時に、専門家のコメントに巡り会うと効率よく勉強することが出来ます。
きょう届いた新着のMedical Tribune誌で勉強しました

 

特別企画
「CKD 診療ガイド―高血圧編―」発刊!
そのポイントと上手な使い方を聞く   その1(1/2)
このたび「CKD診療ガイド―高血圧編―」が発行された。
昨年刊行された「CKD診療ガイド」は,CKDキャンペーンに大きな役割を果たしているが,今回の「高血圧編」は降圧療法について詳しく説明した冊子である。
その編集を担当した防衛医科大学校腎臓内科准教授の熊谷裕生氏に,本冊子のポイントと上手な使い方についてお話を聞いた。
そのなかで,CKD患者の高血圧治療では,降圧と同時に尿蛋白減少を追求しなければならないこと,その点では基礎と臨床の両面でARBの有効性が証明されており,とりわけバルサルタンのエビデンスが出揃っていることが示された。

熊谷氏は,ARBの使用量増加が近い将来での透析患者減少に結びつくのではないかと期待を表明している。

高血圧-CKDの悪循環を断ち切れ!
―なぜ今回,「CKD診療ガイド―高血圧編―」を作られたのですか。
「昨年発行されたCKD診療ガイドは高い関心を集め,学会刊行物としては異例のヒットとなりました。ただあのガイドで"降圧療法"に言及したのは3ページに過ぎず,CKD患者の血圧管理について,もう少し詳しく知りたいという声が相次いで寄せられました。そこで今回,日本腎臓学会と日本高血圧学会がCKD対策合同委員会を作り,木村玄次郎委員長を中心にこの課題に取り組むことになったのです」

―CKD患者における血圧管理の重要性は,どこにあるのでしょうか。
「CKDは,心血管疾患(CVD)と末期腎不全(ESRD)の両方の強力な危険因子です。この点が明らかになり,国民的に対策を強化する目的で,CKDのキャンペーンが始まりました。高血圧は,このCVDとESRD,両方の危険因子です。しかも,高血圧はCKDを促進し,CKDは高血圧を悪化させるという悪循環を形成しています。したがって,適切な降圧療法で,この悪循環を断ち切ることが何よりも求められています」

降圧と尿蛋白減少を同時に追求
―では,CKD患者における血圧管理の基本的考え方を教えてください。
「CKD患者の降圧目標は130/80 mmHg未満としました。尿蛋白が1g/日以上の場合,さらに厳格に125/75mmHg未満を目指します。血圧が低いほど腎機能(GFR)低下の進展を抑えられるからです。ただし,血圧値を外来血圧だけで判断してはいけません。外来血圧が125/75mmHgだと,自宅では100/60mmHgといった例もありますから,家庭血圧計を活用し日常での血圧状態の把握に努めてください。
第二のポイントは,尿蛋白抑制の重要性です。滋賀医科大学の荒木らは,糖尿病患者216人を対象に検討を行い,最初の2年間にアルブミン尿が50%以上減った患者は,その後8年間のCVDや腎不全による入院,死亡が著明に低下したと報告しています(図1)。

このデータは,尿蛋白減少がCKD進展とCVD発症をともに予防することを示す,世界に誇りうる成績です。CKDでは降圧と同時に尿蛋白を減らす高血圧治療が求められています。第三に,CKD患者では厳格な降圧が必要ですが,急激な降圧は避けなければなりません。腎機能を低下させるおそれがあるので,2~3か月をかけ,状態を見ながら降圧目標を達成するようにします

第1選択薬はACE阻害薬かARB
―CKD患者の高血圧治療では,どんな降圧薬を用いるべきでしょうか。
「第1選択薬は,RA系抑制薬すなわちACE阻害薬かARBです(図2)。

ACE

阻害薬やARBでは腎保護作用,とりわけ尿蛋白減少作用が明確に認められているからです。CKD患者ではACE阻害薬かARBを用いてしっかりと血圧を下げること,副作用には注意を払いつつ,十分な尿蛋白減少作用が得られるまで,増量することがポイントとなります」

―第2選択薬としては,何を使えばよいのですか。
「第2選択薬としては,利尿薬またはCa拮抗薬を挙げました。体液量過剰の食塩感受性高血圧の場合,利尿薬を用います。この場合,腎機能が正常ならサイアザイド系,腎機能が低下していたらループ利尿薬を選びます。CVDハイリスク例では,Ca拮抗薬が第2選択薬として推奨されます。第3選択薬は,第2選択薬にしなかったCa拮抗薬か利尿薬となります。単剤で130/80mmHgまで降圧することは容易ではありません。ほとんどの臨床試験では,降圧目標を達成するために3~5剤の多剤併用が行われていることを指摘しておきます」

RA系抑制薬開始時は慎重な観察を
―腎機能の低下例では,使用しにくい降圧薬も少なくありませんね。
「腎機能低下例では,用量調節を要する降圧薬も少なくありません。この点から,冊子の末尾に,"腎機能低下時の降圧薬投与量"を付けました。各社の協力を得て,腎機能別に主な降圧薬の投与量をまとめましたので,活用してほしいですね」

―RA系抑制薬の使用に際しては,どんな点に注意すべきですか。
「CKD患者の高血圧ではRA系の抑制が最も重要です。しかし,ときに血清クレアチニン(Cr)上昇や高カリウム(K)血症を生じる例があります。Cr上昇は輸出細動脈の拡張を示す薬理効果なので,投与前値の30%または1mg/dL以内の上昇なら問題はありません。しかし,これを超える上昇を示す場合は,背景に両側性の腎動脈狭窄や心不全,脱水などが潜む例もあり,休薬して腎臓専門医に紹介すべきです。特に高齢者では,夏場の脱水に注意してください。血清Kの上昇もしばしば見られます。この場合も軽度上昇は問題ありませんが,5.5mEq/Lを超す場合は専門医に相談してください()。ACE阻害薬もARBも,使い始めの3か月間は2週に1回程度採血を行い,CrやKに注意を払うことが必要です

出典 Medical Tribune 2008.8.21
版権 メディカル・トリビューン社

 

<コメント1>
「CKDは,心血管疾患(CVD)と末期腎不全(ESRD)の両方の強力な危険因子です。・・・ 高血圧は,このCVDとESRD,両方の危険因子です。しかも,高血圧はCKDを促進し,CKDは高血圧を悪化させるという悪循環を形成しています。したがって,適切な降圧療法で,この悪循環を断ち切ることが何よりも求められています」
・・・いみじくも私達が今まで疑問に思っていた「ニワトリかタマゴか」といった話です。
CKDでわかりにくいのは、腎障害に至った原因(病因、Pathogeny)を問題にしていないところにあると私は思っています。
この疑問は今も私の中で解決されていません。

<コメント2>
「CKD患者の降圧目標は130/80 mmHg未満としました。尿蛋白が1g/日以上の場合,さらに厳格に125/75mmHg未満を目指します。血圧が低いほど腎機能(GFR)低下の進展を抑えられるからです。ただし,血圧値を外来血圧だけで判断してはいけません。外来血圧が125/75mmHgだと,自宅では100/60mmHgといった例もありますから,家庭血圧計を活用し日常での血圧状態の把握に努めてください。」
・・・実地医家としては、「ではどうすればいいの」といいたくなってしまいます。
有名な「久山町研究」でも、健診時の血圧が140mmHg未満では脳梗塞の発生は少なく、しかもそれ以下の降圧はあまり意味がないというデータがあります。
CKDと脳梗塞では違うといってしまえばそれまでですが、学会では久山町を上回るような「CKDと血圧」に関する日本でのエビデンスを把握しているのでしょうか。
そして、ガイドラインの中に書かれている「降圧目標は収縮期139mmHg未満かつ拡張期80mmHg未満である」の記述。
この「かつ」の持つ重みはどれほどあるのでしょうか。
そろそろ拡張期圧の呪縛から解かれたいと思うのは私だけでしょうか。
実際には拡張期80mmHg未満を目指すのに収縮期圧が110mmHg以下となることは十分にありうることです。
きっと患者のQOLと服薬コンプライアンスは・・・。

<参考サイト>  降圧ターゲットはSBP単独に
http://blog.m3.com/reed/20080821/_SBP_

<コメント3>
「腎機能が正常ならサイアザイド系,腎機能が低下していたらループ利尿薬を選びます。・・・この場合,腎機能が正常ならサイアザイド系,腎機能が低下していたらループ利尿薬を選びます。」
・・・CKDについての話ですから、「腎機能が正常なら」という言い方はおかしいと思いました。
逆に、昔々ある学会で、心不全の発表で「NYHA1°は本当に心不全ですか?」と質問されて壇上で炎上した先生がみえました。
さて、降圧利尿剤としてサイアザイド系にこだわる理由がよくわかりません。
サイアザイド系の使用により(潜在性?)腎不全が(顕在性?)腎不全に移行しないという保障があるのでしょうか。
代謝系に悪影響を及ぼすサイアザイド系ではなく、ループ系(たとえばオイテンシン)を最初に使うのはどうしていけないのでしょうか。
私自身が降圧剤を服用するとしても、サイアザイド系は少量でも服用したいとは思いません。
先生方はいかがでしょうか。

読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。
他に
ふくろう医者の診察室
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(一般の方または患者さん向き) 
「井蛙内科/開業医診療録(2)」
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第51回日本腎臓学会学術総会ランチョンセミナー
「腎障害を伴う高血圧の薬物治療」
で勉強しました。
演者の土肥 靖明 先生は新進気鋭の方です。
最近、ベニジピン(商品名コニール)の学術講演を、ある講演会でお聞きし、講演後の懇親会でご本人と少しお話をしました。


現在,日本の透析患者数は26万人と推定されるが,水面下にはその予備軍である糸球体濾過量(GFR)60mL/min/1.73m2未満の患者が約1,926万人,GFR50mL/min/1.73m2未満の患者が約418万人存在するとみられる。
 
慢性腎臓病(CKD)対策が急がれる状況のもと,第51回日本腎臓学会学術総会において,新しい日本人のGFR推算式が発表された。
同総会では,名古屋市立大学大学院医学研究科心臓・腎高血圧内科学准教授の土肥靖明氏が腎障害を伴う高血圧の薬物療法について講演し,CKD治療におけるCa拮抗薬には腎輸出細動脈を拡張し,尿蛋白を減少させる薬剤が推奨されるなか,L型およびT型CaチャネルをブロックするCa拮抗薬ベニジピン塩酸塩(コニールR錠)の位置づけを明らかにした。
 

司会
東北大学大学院医学系研究科 腎・高血圧・内分泌学分野教授
伊藤 貞嘉 氏 
演者
名古屋市立大学大学院医学研究科 心臓・腎高血圧内科学准教授
土肥 靖明 氏

ベニジピンはラットのNO依存性弛緩反応を改善
高血圧の持続により蛋白尿,腎障害・腎不全を来す一方,腎性高血圧にみられるように腎障害が高血圧の原因になることもありうる。
また最近では,微量アルブミン尿が心血管系疾患の危険因子の1つとして認識されるようになった。
このように高血圧と腎障害,心血管系疾患は密接に関連しているが,土肥氏は「いわゆる心腎連関の一部には血管内皮機能低下が絡んでいる」と指摘した。
 
同氏らの研究によると,高血圧自然発症ラットの腎抵抗動脈ではNO依存性の内皮弛緩反応が低下するが,ベニジピンの投与により正常血圧ラットと同レベルにまで改善することが明らかになった。
この効果は,検討したCa拮抗薬のうちベニジピンに特有なことから,同氏は「ベニジピンは,降圧に依存しない血管内皮改善作用を有することが示唆された」と考察している。
 
一方,種々の大規模臨床試験の結果から,心血管死は血圧が高値であるほど増加し,降圧治療により減少することが知られている。
同様に,腎機能は降圧に伴い改善し,とりわけ初期の厳格な降圧が重要であることが明らかになっている。

L型・T型Ca拮抗薬であるベニジピンは尿中アルブミン排泄量の改善に寄与
「高血圧治療ガイドライン2004」では,腎障害患者の降圧目標を130/80mmHg未満とし,一次選択薬としてACE阻害薬またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)を推奨している。またRENAAL研究において,ARBはプラセボに比べ末期腎不全に至るリスクを28%低下させ,腎機能を維持するうえでは厳格な降圧とともにレニン・アンジオテンシン(RA)系の抑制が重要であることを示した。
 
全身血圧の上昇に伴う腎輸入細動脈の自動調節の破綻により糸球体に流入する血流が増加している場合,RA系抑制薬は腎輸出細動脈を拡張して糸球体内圧を低下させ,過剰濾過,尿蛋白を是正する作用が知られている。
しかし,腎障害患者のうちRA系抑制薬単独で降圧目標をクリアできる例は25%に満たないという報告(Chobanian AV, et al: Hypertension 42: 1206-1252, 2003)があり,多くの症例においては複数の降圧薬の併用が求められるのが実情である。
昨年発表されたヨーロッパの「高血圧管理ガイドライン(ESH-ESC 2007)」では,RA系抑制薬との併用薬としてCa拮抗薬,利尿薬が推奨されている。
 
L型Caチャネルのみに作用するCa拮抗薬は,腎輸入細動脈を拡張するものの腎輸出細動脈は拡張しないことから,血圧が十分に低下しない場合はかえって糸球体内圧の上昇を来すと考えられている。
一方,ベニジピンはL型CaチャネルのみならずT型Caチャネルにも作用することから,腎輸入細動脈とともに腎輸出細動脈も拡張し,糸球体内圧を改善する効果が期待される。
実際,ベニジピン投与後は全身血圧が下降するとともに,腎輸入・輸出細動脈が拡張し,糸球体内圧が低下すると報告されている。
また,Dahl食塩感受性ラットを用いた実験では,ベニジピンは単独で同等の降圧効果を示す用量の他のCa拮抗薬と比較して,単独治療,RA系抑制薬との併用治療のいずれにおいても尿中アルブミン排泄量を減少させた(図1)。


以上より,ベニジピンとRA系抑制薬の併用は,他のCa拮抗薬とRA系抑制薬の併用に比べ,より腎機能を改善することが期待されている。

腎保護作用が期待されるCa拮抗薬をRA系抑制薬と併用する
土肥氏らは,微量アルブミン尿が検出された高齢者高血圧患者をベニジピン+ARB群,他のCa拮抗薬+ARB群の2群に分けて血圧および尿中アルブミン排泄量を検討した結果,血圧は両群で同等に低下したが,尿中アルブミン排泄量はベニジピン+ARB群で有意に低下したのに対し,他のCa拮抗薬+ARB群では有意な低下は認められなかったことを示した(図2)。


これらの結果を血圧低下度で補正したところ,ベニジピン+ARB群では降圧効果を超えた腎保護作用が示唆された。
 
以上の結果を踏まえ,同氏は「L型およびT型CaチャネルをブロックするベニジピンとARBを併用することで,腎輸入細動脈に比べ腎輸出細動脈がより拡張し,糸球体内圧が低下して尿蛋白減少効果が示された可能性がある」と指摘した。
また,別の報告では,ベニジピン服用時は,治療前に比べ,糸球体濾過圧が低下することを示唆する結果が得られている。
 
同氏は,最近のメタ解析の結果から降圧薬の臓器保護作用について,
1)脳卒中予防効果はCa拮抗薬がAC E阻害薬に優り,ARBはACE阻害薬と同等,
2)虚血性心疾患予防効果はACE阻害薬がCa拮抗薬,ARBに優る,
3)腎保護効果はRA系抑制薬がCa拮抗薬に優る,
4)降圧効果はCa拮抗薬がRA系抑制薬に優ると考えられるとした。
そのうえで同氏は,腎障害を伴う高血圧の治療についてはRA系の抑制とともに厳格な降圧が重要であると重ねて強調し,「RA系抑制薬で降圧目標に達しない場合,ベニジピンのように強力な降圧効果を示し,腎保護作用が期待されるCa拮抗薬を併用する意義は大きい」と述べ,講演を締めくくった。

出典 Medical Tribune 2008.8.7
版権 メディカル・トリビューン社

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まずは、当院での症例を紹介します。
 

<症例> 64歳、男性
<病名> 糖尿病、本態性高血圧症
H18.9より当院へ通院中。

         血糖   HbA1c  BUN    Creat 尿酸
H19.7.14  176   6.6   21.8   1.10  7.1
H19.11.15 119   6.4   29.0   1.30  8.6
H20.1.12  256   6.4   31.2   1.35  7.9
H20.3.13  231   6.8   26.1   1.36  8.3
H20.6.10    93   7.1   31.5   1.54  10.1 

血圧112~148/72~80mmHg
尿蛋白(++)、尿糖(±)

使用薬剤 
ブロプレス(8)1T、ノルバスク(5)1T、アマリール(1)4T

H20.7.10~変更
ブロプレス(8)1T、アテレック(10)1T、ザイロリック1T、
アクトス(30)1T、メルビン(250)2T

<コメント>
クレアチニンが不気味にじわじわ増加しています。
こういったケースを先生方も数多く経験されているのではないでしょうか。
H20. 6.10時点での推算GFRは37.6でCKDステージ3(腎臓専門医への紹介が望ましい)です。
65歳男性ではCreatが1.2mg/dlを超えると「腎臓専門医に紹介し、連携して治療する」レベルとなるわけですから、本来なら昨年11月には「腎臓専門医」に紹介しなければならないことになります。

外来診療ゆえ、食事指導は十分とはいえません。CKDにおける蛋白制限についてどれだけ意味があるのか、そしてどこまで厳しくするのか、またエビデンスがどれだけあるのか私にはよくわかりません。

自分の治療のどこがいけないか、腎臓専門医の早期介入により腎機能悪化が防止できたのか。

そのあたりを知りたいと思います。

 

開業医は血液検査は、臨床検査センターの「セット検査」でオーダーします。
今回カルテをみていて、この症例ではKなどの電解質が(セットに入っていないため)検査されていないことに気づきました。

まことにもって恥ずかしいことです。
外来での診察中には、細かい(?)チェックは、つい疎かになってしまいます。
この症例でも1日尿蛋白排泄量(定量)、シスタチンC、腎エコー、空腹時IRI、HOMA-Rなどをきちんと検査しなければいけないと反省しています。
私の場合、治験などで後でカルテを見なおしたときに、検査もれがいっぱいあります。

診察終了後に、チェックをすべきとはいつも思うことですが。

先日ある講演会後の懇親会で、昔からよく知っている先生に久しぶりにお会いする機会がありました。
ある病院を定年退職後、循環器専門の外来をオフィス開業でやってみえます。
完全予約制とのことで診察前には、必ず前もってそれらのカルテに目を通しておくとのことでした。
その先生の、昔も今も変わらぬ臨床に対する真摯な態度に頭が下がるとともに、自分のいい加減さを反省した次第です。

さてきょうは、この症例にピッタリの内容を勉強しました。

腎機能の黄色信号の早期発見,早期治療の重要性
意外に多い高血圧患者に潜在する腎機能障害
高血圧治療の目的は,脳,心,腎など重要臓器の合併症や動脈硬化予防にある。
糸球体濾過量(GFR)の低下やアルブミン尿の存在によって診断される慢性腎臓病(CKD)が,心血管疾患(CVD)の独立した危険因子であることが明らかになり,腎機能障害をともなう高血圧症に対しては,JSH2004でも特に厳格な降圧が求められている。
高血圧患者における腎機能障害を見逃さないことは,高血圧管理者の主体であるかかりつけ医にとって重要な役割の1つである。
そこで今回は,高血圧患者に潜む腎機能障害を診断するポイント,腎機能を考慮した降圧療法について,福島県立医科大学第3内科の渡辺毅氏に伺った。

慢性腎臓病(CKD)と高血圧の悪循環
糖尿病によるCKD患者は増加が著しいのですが,高血圧によるCKDはどうでしょうか?
渡辺 
腎臓病の終末像である末期腎不全患者による新規透析導入は年々増加し,1983年頃の約1万人が,2006年には約3万5千人に至っています。
その結果,慢性維持透析患者数は毎年死亡透析患者を差し引いた約1万人増加し,2006年末には約26万5千人となり,今後も増加が見込まれています。
透析導入の原疾患は,かつては慢性糸球体腎炎が首位でしたが,1998年以後は糖尿病性腎症が取って代わり2006年には43%を占めています。
一方,高血圧を病因とする良性腎硬化症は,2006年の新規透析導入の第3位(9.4%)であり,やはり増加傾向にあります。
また,多くの疫学的研究で,高血圧患者は約30%と高頻度に腎障害を合併していると報告されています(図1)。


 

さらに,糖尿病には高血圧,高血圧には糖尿病の合併頻度が高く,糖尿病性腎症や良性腎硬化症などによる慢性腎臓病(CKD)患者ではさらに高血圧の頻度が高まり,高血圧はCKDの増悪因子です。
すなわち,糖尿病と高血圧はおのおのが透析に至るCKDの主たる原因であり,CKDの進行や心血管イベント発症に相乗的な悪循環を形成します図2)。

 

高血圧によるCKDの腎障害機序と降圧の意義は?
渡辺 
腎臓の濾過装置である糸球体の血圧(糸球体内圧)は,多臓器に比較して高圧(60mmHg程度)ですが,さらなる血圧負荷による血管内皮障害を防ぐため,全身血圧が上昇すると輸入細動脈が収縮して糸球体内圧を一定に保つ自己調節機構が働きます
しかし,糖尿病,慢性糸球体腎炎,高血圧などによるCKDでは,この自己調節能が早期から破綻していることが知られています。
さらに,
腎機能(腎濾過:GFR)低下による腎のレニン・アンジオテンシン系(RAS)の活性化によって増加したアンジオテンシンII(AgII)は,輸出細動脈のAgII受容体に作用して収縮させ,さらに糸球体内圧を上昇させます

糸球体内圧の上昇は,内皮細胞障害・尿蛋白の増加から糸球体のみならず腎間質の細胞障害・炎症・硬化を引き起こす原因となります。
したがって,CKD患者では,腎障害のない方と比較して厳格な降圧が必要です。
さらに,AgIIは,糸球体内圧上昇と同時にメサンギウム細胞や間質細胞に直接作用して,形質転換やマトリックスの産生を増加し,腎硬化を進行させます。そのため,RAS系の抑制はCKDの治療では特に重要となります。

高血圧患者さんの腎障害を早期発見する意義
高血圧患者さんでの腎障害の早期発見はどうすれば可能か?
渡辺 
CKD患者さんは腎機能が高度に低下しない限り症状や徴候が乏しいのが一般的です。
しかし,糖尿病,慢性糸球体腎炎などの糸球体疾患では,蛋白尿や血尿などの尿異常が比較的早期から出現します。
特に,糖尿病患者さんでは尿中アルブミンの定量(微量アルブミン尿)が早期診断に有用なことは知られています。
一方,高血圧患者さんの良性腎硬化症のような血管疾患(細動脈硬化症)では,蛋白尿は必ずしも陽性ではなく,腎機能が高度に低下した患者さんでも蛋白尿は陰性の方が多いことは知られています。
したがって,腎障害の早期発見には,血清クレアチニン(Cr)値からの推算GFR(eGFR)の評価も必要となります。
日本腎臓学会で2008年に策定した推算式(194×血清Cr値-1.094×年齢-0.287,女性ではさらに×0.739)からeGFRを算出し,腎機能別CKDのステージを評価します(表1)。


すなわち,健診とかかりつけ医によるCKDの危険群(糖尿病,高血圧,メタボリック症候群)を対象とした検尿(糖尿病で蛋白尿陰性なら尿中アルブミン定量)とeGFRを,最低年一回程度は測定することがCKDの早期発見に重要です。

早期に発見して介入すれば,
腎障害は回復(寛解)することが可能なのでしょうか?
渡辺 
CKD患者さんのアルブミン尿をRAS抑制薬の使用で低下させると,腎機能低下速度と心血管イベントの抑制が可能であることが報告されています。
一方,糖尿病,慢性糸球体腎炎,高血圧などの原疾患にかかわらず,CKD患者さんでは降圧と腎機能低下速度の抑制の程度は相関することが証明されています図3)。


しかも,降圧やRAS抑制薬の使用による介入はCKDが進行しないばかりか,アルブミン尿や腎機能の回復(寛解)が起こることが報告されています。
この寛解は,CKDステージが低いほど確率が高く,腎機能の改善もCKD3程度までなら望めることが最近報告されています。
また,それ以後のCKDステージの患者さんでも腎機能低下の抑制は可能ですので,諦めないで末期腎不全への進行を遅延させる努力をすべきと考えます。
この場合,治療効果の指標としては,血圧(家庭血圧を含む)と尿中アルブミン・蛋白量,eGFRが有用です。
また,最近では,腎障害の寛解と心血管イベント抑制のためには,降圧やRAS抑制薬の使用に生活習慣改善(体重管理を含む),脂質管理,アスピリンによる抗血小板療法などを組み合わせた集学的強化療法を早期から行うことが望ましいことも報告されています(糖尿病性腎症)ので,高血圧患者さんでも高血圧以外の危険因子の管理を早期から行うべきと推察できます。

腎障害を合併する高血圧患者さんの管理・治療におけるかかりつけ医の役割
高血圧を合併するCKD患者さんの治療で
かかりつけ医が果たす役割は何でしょうか?
渡辺 
CKDは原発性・二次性腎疾患を包含する一種の症候群であり,病因,臨床経過,合併症,治療法・治療反応性は多様です。
したがって,正確な診断を行い,的確な治療方針を立てるには専門的な腎疾患に関する幅広い知識,技量,経験をもつ腎臓専門医の関与が望ましいと思います。
一方,CKD患者さん(CKD1-5)が約1,380万人と推定されることを考慮すると,全国で約2,800人の認定腎臓専門医のみで全てのCKD患者の治療を担当することは不可能です。
したがって,現実的には健診機関またはかかりつけ医は,CKDが進行し末期腎不全に至る可能性がある患者さんを選別して,腎臓専門医に紹介するべきと考えます。
もちろん,紹介基準に達しないCKD患者さんの管理・治療はかかりつけ医が主体であることは言うまでもありません。
一方,専門医に紹介された患者さんも,専門医によって診断が確定し,危険因子を考慮した治療方針が決定した後には,患者さんの通院の便宜と医療資源の有効活用を考慮するとかかりつけ医に逆紹介し,慢性期の治療はかかりつけ医が担当することが理想的です。
そして,症状や検査データに変化のあったときは定期的に腎臓専門医を受診してコンサルテーションを受けることも望まれます。
すなわち,健診機関,かかりつけ医と腎臓専門医からなる双方向性の医療連携システムが構築されるべきで,かかりつけ医はその中心に位置すると考えます(図4)。

 

高血圧を伴うCKDの治療薬の選択
RAS抑制薬はどのように評価されていますか?
渡辺 
腎臓は,臓器由来のRAS活性が強く,機能的にもRAS依存性が高いという特徴があり,CKDなどの腎障害時にはさらに活性化しています。
大規模臨床試験によると,CKDでは,原疾患を問わずRAS抑制薬によるアルブミン尿・蛋白尿の減少,腎機能保護作用と心不全に対する作用は,脳血管障害や心不全を除く心疾患に対する作用と比較して際立っています。
ARBの腎保護作用を検討した大規模臨床試験としてはロサルタンのRENAALやイルベサルタンのIRMA-2,IDNTなどがあります。
また,ARBはインスリン抵抗性改善作用があり,CKDや高血圧患者に多いとされる糖尿病の新規発症抑制作用も報告されています。
したがって,ARBがCKD患者の降圧薬の第1選択薬のひとつであることは異論の無いところです。
ARBの通常量で降圧目標(130/80mmHg未満,尿蛋白1g/日以上では125/75mmHg未満)を達成できない場合は,長時間作用型Ca拮抗薬や少量の利尿薬などを追加し,降圧目標達成を図るべきと考えます。

患者さんの管理で実際上注意すべき点は何でしょうか?
渡辺 
食塩感受性やメタボリック症候群の患者さんには適切な生活習慣改善は治療の前提として重要です。
薬物療法でも,患者さんのコンプライアンスの確認と血圧自己測定による日内変動に配慮した薬剤の種類,量,投与法の選択をお願いしたいと思います。
これらの点で,患者さんと身近に接している利点をかかりつけ医に活かしていただきたいと思います。

出典 Medical Tribune 2008.7.3
版権 メディカル・トリビューン社

 

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(一般の方または患者さん向き) 
「井蛙内科/開業医診療録(2)」
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「井蛙内科/開業医診療録」~2008.5.21 
http://wellfrog.exblog.jp/ 
 があります。

 

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  • ~ 降圧療法の進め方 ~
    RA系抑制薬で降圧と尿蛋白減少を図る
    高血圧編では, CKD患者における高血圧治療の進め方を図1のようにまとめている。
     

第一選択薬にはRA系抑制薬を推奨。
降圧目標もガイドと同様130/80mmHg(蛋白尿1g/日以上では125/75mmHg)だが,1剤で降圧目標を達成できない場合の第二選択薬として,体液過剰型には利尿薬,心血管疾患のハイリスク型にはCa拮抗薬,第三選択薬は,前者にはCa拮抗薬,後者には利尿薬を推奨。
利尿薬も,腎機能が正常の場合とGFR 30mL/分未満(血清Cr値2.0mg/dL以上)の場合に分けて推奨するなど,きめ細かな指示が加わった。
Ca拮抗薬は輸出細動脈拡張作用を有するタイプを推奨。ACE阻害薬(ACEI)とアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の併用も,通常,利尿薬併用後としたうえで考慮してよいとした。
ただし,腎硬化症,多発性嚢胞腎,間質性腎障害では,降圧薬の種類を問わないとしている。
 
飯野教授は「ACEI,ARBなどRA系抑制薬による腎保護効果についてはエビデンスが確立されている。降圧と尿蛋白減少を目標に,まずACEIまたはARBを第一選択薬として降圧療法を開始する」と指摘する。

厳格な降圧療法でESRDと心血管疾患発症を防ぐ
では,そもそもCKD患者に対して,なぜ厳格な降圧療法が求められるのか。
CKDに対する降圧療法の意義について,大石副科長は「加齢に伴って,GFRは年間1mL/分の割合で低下する。高血圧が加わると,この低下速度が4~8mL/分まで加速される」と指摘する。
CKDは心血管疾患の独立した危険因子でもあり,同副科長らも,通院中の本態性高血圧患者約700例を5年間追跡したNOAH※ studyのサブ解析により,高血圧にCKDを合併する例では非合併例に比べて心血管イベントの発生が有意に多いことを確認している(図2)。


CKDの治療目標はESRDと心血管疾患の発症を阻止することにあるが,降圧により腎機能の低下速度を遅らせることで,両者を先送りすることができるという。

※NOn-invasive Atherosclerotic evaluation in Hypertension

血清Cr値30%までの上昇は腎保護作用獲得を示唆
RA系抑制薬には糸球体輸出細動脈の拡張作用があり,糸球体高血圧による糸球体過濾過状態を是正して尿蛋白を減少させ,腎保護効果を発現する。
RA系抑制薬の投与に関して高血圧編では,「特に血清Cr値2mg/dL以上の腎機能低下例では,まれに投与開始時に急速に腎機能が悪化したり,高カリウム(K)血症に陥る危険性があるので,低用量から慎重に投与する」と注意する。
 
大石副科長によると,低用量から投与を開始しても,RA系抑制薬投与開始から1か月程度の早期には,血清Cr値の上昇は起こりうるという。
高血圧編では,治療開始後4か月以内の血清Cr値30%までの上昇(ベース3.0mg/dL未満)は,輸出細動脈拡張を反映しており,むしろ長期的に見た腎保護作用獲得を示唆する早期所見であるとしている。
ただ,非専門医にとっては,やはり血清Cr値上昇への懸念も残る。
 
その意味からも,血清Cr値が多少上昇しても影響が少ないと考えられる時点,すなわち蛋白尿は出現しているがGFRの低下が軽度にとどまっているステージ1,2までの早期の段階から投与を開始することが重要だ。

少量から2週ごとに増量
RA系抑制薬を上手に使いこなすこつについて,大石副科長は「ステージ2までの症例には半量~常用量で投与を開始。腎機能がさらに悪化した段階では8分の1量から投与を開始し,2週ごとに倍量にするステップアップ方式を取っている。また,投与開始時にNSAIDの投与を1か月程度中止してもらい,水分補給を心がけるように指導している。
RA系抑制薬による蛋白尿減少効果には用量依存性が認められるので,忍容できる限り最大用量まで増量することが大切だ」と述べる。
降圧目標の達成は3か月を目標にしているが,もう少しかかることも多いという。
 
また,血清Cr値の30%または1.0mg/dLまでの上昇が認められた場合,増量を中断して,その時点の投与量で1~2か月投与を継続して様子を見る。
「実地医家の方々からRA系抑制薬を中止して患者さんを紹介されることがあるが,いったん投与を中断すると,また少量から投与を開始しなければならない。
高血圧編で指摘されるように,
(1)腎動脈狭窄(特に両側性)
(2)NSAIDやシクロスポリン投与
(3)心不全
(4)脱水
(5)尿路異常
―などの可能性があるときは減量ないし中止の必要があるが,それ以外の場合には,ぜひRA系抑制薬を切らずに紹介してもらいたい」と同副科長は訴える。
血清K値の上昇には,K吸着剤などを用いて対処するという。

血圧低下にはCa拮抗薬追加,尿蛋白減少にはACEI+ARB
一方,併用薬の選択について,大石副科長の方針は,ARBの投与によって血圧はコントロールできたものの蛋白尿が依然として認められる場合にはARBとACEIの併用療法を実施,ARBで蛋白尿は減少したが血圧コントロールが不十分な場合にはCa拮抗薬を追加するというもの。
実際,ARBの最大用量を投与しても蛋白尿が認められる場合,ACEIを併用すると尿蛋白減少が認められる。
 
同科の藤澤智巳講師らの検討では,糖尿病性腎症患者に対し,ARBとACEIを半量ずつ併用したところ,それぞれの最大用量より有意な微量アルブミン尿減少が確認されている。
 
他医から紹介されたCKD患者の16年間の1/Crの経過からは,当初から現在のようにARBとACEIの最大用量を併用するCKD強化療法を実施していたと仮定した場合,従来療法を継続していた場合に比べて透析導入を13年遅らせることができると推測されるという。
このシミュレーションからも,「ステージ1,2の早期CKDの段階から,RA系抑制薬を用いた積極的な降圧療法が重要であることがわかる」と同副科長は強調する。

~ CKD対策の鍵握る診療連携 ~
診療連携の推進で早期治療の普及・徹底を
ところで,新しいGFR推算式に基づく推計では,尿蛋白陽性またはGFR 60mL/分未満のCKD患者数は約1,330万人。
これに対して,腎臓専門医は約3,000人にすぎない。
早期診断,早期介入とともにCKD対策の大きな柱となるのが,実地医家と専門医の円滑な診療連携だ。
事実,透析直前に専門医へ紹介されるケースが25?40%に達するとの報告もあり,実地医家と専門医の協力体制の構築が急務となっている。
CKDの診療には栄養士をはじめとしたコ・メディカル,循環器疾患や糖尿病専門医の協力も不可欠であり,職種や診療科の垣根を越えた連携も求められる。

急激な尿蛋白増加,血清Cr値上昇は紹介のサイン
CKD患者を専門医に紹介するタイミングについてガイドは,検尿異常か腎機能障害があり,
(1)0.5g/gCr以上または2+以上の蛋白尿
(2)eGFR<50mL/分
(3)蛋白尿と血尿がともに陽性(1+以上)
―のいずれかに該当する場合としている。
治療方針について専門医のコンサルテーションを受けた後は,かかりつけ医が治療を継続する。
 
こうした悪化の兆候を見逃さないためにも,定期的なフォローアップが欠かせない。
ガイドでは安定したステージ1~2の患者に対するかかりつけ医でのフォローアップ検査として,尿蛋白,血清Cr,eGFRは3?6か月に1回,糖尿病患者ではHbA1cを1~3か月に1回,血圧は毎診察時にチェックすべきであるなどとしている。
 
飯野教授は「急激な尿蛋白増加や血清Cr値上昇が認められたら,専門医に一度紹介する必要がある。
また,IgA腎症,急激に悪化する抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連腎炎なども,早期であれば完治できるので,ステージ1,2であっても糸球体腎炎,膠原病性腎障害の可能性が疑われれば,早急に腎臓専門医に紹介して欲しい」と注意を促す。
 
現在,CKD診療ガイド改訂版,日本腎臓学会と日本糖尿病学会との共同による糖尿病編,専門医向けのCKD診療ガイドラインの編集も進行中であるという。
「CKD患者は国民の約13%を占める。進展阻止や回復が期待できる早期からの介入を実践し,透析導入,心血管疾患の増加を阻止するためには,診療にかかわるすべての医療関係者が連携・協力して,CKD対策に取り組む必要がある」と同教授は話している。

出典 Medical Tribune 2008.6.26
版権 メディカル・トリビューン社

シャガール「Lovers Over Paris」
http://page7.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/g68306813

<症例提示>(当院通院中)

59歳男性
高血圧症
糖尿病性腎症(インスリン療法中)

H20.7.5時点のデータ 
血圧 134/80
尿蛋白(3+)、尿糖(-)
BS(食後6.5H)116mg/dl、HbA1c 6.7% 
K 5.9mEq/L、BUN36.1mg/dl、Creat 2.09mg/dL
使用薬剤 ルプラック、テノーミン、オルメテック、バイアスピリン、ザイロリック、アクトス(30)、セイブル(50)、アテレック(10)

クレアチニン値の経過(H20)
2/9  2.03
3/8  2.13
4/5  2.27
5/31 2.37
7/5  2.09

5/10 コニール(4)2Tよりアテレック(10)2Tに変更。

 

<関連記事>

血圧管理のみでは不十分
アフリカ系米国人のCKD
〔米メリーランド州ボルティモア〕 ジョンズホプキンス大学(ボルティモア)内科のLawence Appel教授らは,たとえ血圧が最適の降圧薬で厳格に管理されていても,慢性腎臓病(CKD)のアフリカ系米国人患者はいずれ腎機能が悪化するとArchives of Internal Medicine(2008; 168: 832-839)に発表した。
今回の知見から,この人口集団のCKDはこれまで考えられていたよりもはるかに複雑で,血圧管理は治療の一部にすぎないことが示唆された。

血圧が目標値未満でも腎機能が悪化
アフリカ系米国人の腎疾患と高血圧を検討したAfrican-American Study of Kidney Disease and Hypertension(AASK)と呼ばれる今回の研究は,CKD患者の血圧に着目したこれまでで最長のものである。
AASKではCKDのアフリカ系米国人患者1,094例を最長で11年間追跡調査した。
被験者の大半は,降圧薬の併用療法により血圧がCKD患者の目標値である130/80 mmHg以下に維持されていた。
しかし,それでもほとんどの患者では腎機能が徐々に悪化し,しばしば透析,腎移植,あるいは死に至った。
 
Appel教授は「今回の被験者は良好な高血圧治療を受けていたにもかかわらず,腎疾患は驚くべき速さで進行した。血圧は重要だがそれだけではない。
CKD患者に対する最善の治療法の発見まで道のりはまだ長い」と述べている。
 
今回の研究は全米の21医療機関において,高血圧性腎疾患に罹患しているアフリカ系米国人を対象とした。
白人では腎機能が完全に失われる末期腎疾患の約19%は高血圧が原因であるが,アフリカ系米国人では約37%とされる。
 
高血圧がなぜCKDにつながるのかについてはまだ明確な答が得られていない。
現在,一般的には,高血圧により糸球体が酷使されるためだと考えられている。

3分の1がESRDか死亡に至る
Appel教授らは,血圧を低く維持することでCKDの進行を遅延あるいは阻止できるかどうかを検証するため,試験を前期と後期に分けた。
前期は1995年2月~2001年9月,後期は2001年10月~07年6月に行われた。
 
前期試験で同教授らは,1,094例全例を一般的に用いられている降圧薬のACE阻害薬,β遮断薬,Ca拮抗薬のいずれかに割り付けた。
各患者には,標準的な血圧目標値(140/90mmHg以下)またはより厳格な降圧目標値(130/80mmHg以下)のいずれかを設定。血液検査と尿検査で各患者の血圧,腎機能を評価し,さらに総合的な健康状態を追跡調査した。
 
前期試験の終了時点で,ほぼ全例が目標血圧値を維持していたにもかかわらず,約3分の1の被験者は腎機能の5割以上を失っているか,末期腎不全(ESRD)に至るか,あるいは死亡していた。
残りの被験者のうち759例は引き続き後期試験に組み入れ,前期試験で確認された結果に従い,全例にACE阻害薬を処方した。これは,前期試験でACE阻害薬が他の2剤よりも腎機能維持に有効であることが示されていたためである。

降圧治療の継続は必要
その後5年間,患者の血圧,腎機能,総合的な健康状態を追跡調査した。
しかし,ACE阻害薬による治療にもかかわらず,被験者の3分の1はやはり腎機能の5割以上を喪失するか,ESRDに至るか,あるいは死亡した。
 
Appel教授はこのような結果にもかかわらず,CKD患者が降圧治療をやめるべきではないと述べ,「血圧管理を行っていなかった場合のアウトカムはさらに悪いものになっていたことは間違いない」と説明している。
 
しかし,今回の知見は,CKDの増悪過程には,血圧以外の因子が働いている可能性を示唆するものである。
夜間の急激な血圧上昇,高い塩分摂取量,または鉛や水銀など重金属への曝露が,腎疾患の進行に影響を及ぼしている可能性がある。
同教授は「調べなければならない因子は多数ある」と指摘しており,今後の研究でこれらの因子について検討する予定である。
出典 Medical Tribune 2008.7.3
版権 メディカル・トリビューン社

 

<記事の追加>
Channelopathy
http://blog.m3.com/reed/20070916/Channelopathy
に以下の記事を追加しました。

QT延長症候群関連遺伝子
QT延長症候群の関連遺伝子をわが国で初めて同定
 失神や突然死の原因となるQT延長症候群は,1990年代半ば以降,原因遺伝子が次々と同定され,病態生理が解明されつつある。
これまでに10の関連遺伝子が報告されているが,今回,滋賀医科大学内科学の堀江稔教授がわが国で初めて新規関連遺伝子を同定し,Human Mutation(in press)に報告した。

オーダーメード医療に道
QT延長症候群は,イオンチャネル蛋白の責任遺伝子に異常を認めるチャネル病であり,先天性素因だけでなく薬剤誘発性などの二次性の要因も関係している。
わが国では同症候群の関連遺伝子を3,000?4,000人に1人が保有していると言われているが,堀江教授によると,日本人の1%以上に認められる一塩基多型(SNP)の有無によって,QT延長作用のある薬剤を内服した場合に同症候群を発症しやすくなる可能性があるという。
 
このように,同症候群の発症には複数の遺伝子やその他の要因が絡んでおり,これまでにわかっている関連遺伝子のなかで同症候群患者で発現頻度が高いLQT1型やLQT2型を合わせても原因遺伝子の同定頻度は50%強と言われている。
今回,同教授らが同定したKCNE3については同症候群患者の1%程度に発現しているにとどまるが,関連遺伝子を解明していくことでQT延長作用のない薬剤の開発やオーダーメード医療につながると期待される。
 
わが国で遺伝子診断が可能な施設は同大学や京都大学など,数施設に限られている。
今後,より詳しい病態生理を解明するためにも,同教授らは不整脈専門医による全国ネットワークを構築し,データベース化を推進している。
 
出典 Medical Tribune 2008.6.26
版権 メディカル・トリビューン社

 

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きょうはCKDを再度勉強しました。

以下の文中に 

「原因疾患を問わず糸球体濾過量(GFR)という"共通の物差し"を用いて,腎臓病を一くくりにしたのがCKDの考え方の特徴」ということが述べられています。

私自身そこが一番しっくりいかないところでもあります。

CKDという概念は、おそらくできるだけ早期(?)から腎臓病専門医に紹介することが目的のように思えてしまいます。

最終的な人工透析への導入をできるだけ遅らせることが目的だと思います。

私達腎臓病専門医以外もCKDの治療に関してはある程度の知識をもっています。はたして腎臓専門医は自分達の内科的早期介入に余程自信があるのでしょうか。

じわじわ、ひたひたとクレアチニンが上がる状態。

しばしば経験することですが、非(腎臓)専門医と専門医との治療の差について検討した論文ははたしてあるのでしょうか。

CKDをきたす多くの患者さんは病気は腎臓だけではありません。

CKD対策としての病診連携。

腎臓専門医の患者抱え込みのように思えてしまうのは私がへそ曲がりだからでしょうか。

透析導入の際には専門医にお願いしなければならないのは論を待たないところですが。

 

CKDの概念自体もいかにもアメリカ的に物事を単純化し過ぎているのではないでしょうか。

消化器領域の「胃潰瘍とNUD」のように。

 

CKD早期管理の実際,降圧療法を中心に
早期介入で進展阻止・回復を目指す
米国で提唱された「慢性腎臓病(CKD)」の概念が,わが国でも脚光を浴びている。
最新の推計では,CKD患者は実に約1,330万人に達するという
CKD対策には,腎機能悪化の進展阻止のみならず,回復を期待できる早期介入が欠かせない。
その担い手として,実地医家の役割がクローズアップされており,昨年の日本腎臓学会編の「CKD診療ガイド」(以下,ガイド)発行をはじめ,実地医家と専門医との役割分担,円滑な診療連携の推進を目指す動きが活発化している。
先月末には,CKD対策の柱の1つである降圧療法について,同学会と日本高血圧学会が共同で間もなく発行予定のCKD診療ガイド―高血圧編―」(以下,高血圧編)の概要も発表された。
 
そこで,CKD診療ガイド作成ワーキンググループのリーダーを務めた日本医科大学内科の飯野靖彦教授と,レニン・アンジオテンシン(RA)系抑制薬を駆使して積極的なCKD強化療法に取り組む大阪大学老年・高血圧内科の大石充副科長に,実地医家が治療の主体となるCKDハイリスク群からステージ1~2のCKD早期管理の実際について,高血圧編のトピックスも交えながら,降圧療法を中心に聞いた。

~ CKDとその予備軍を見逃さない評価法 ~
蛋白尿とGFR評価のための血清Cr値をチェック
従来,腎臓病に対しては,糖尿病や慢性糸球体腎炎といった原因疾患別に治療が進められてきた。
これに対し,原因疾患を問わず糸球体濾過量(GFR)という"共通の物差し"を用いて,腎臓病を一くくりにしたのがCKDの考え方の特徴だ。
ガイドでは,
(1)蛋白尿陽性など腎障害の存在が明らか
(2)GFR<60mL/分/1.73m2(以下,mL/分)
―のどちらかが3か月以上持続する場合をCKDと定義している。

パラダイムシフトもたらしたCKDの概念
ガイド作成の経緯について,飯野教授は「CKDという概念は,腎臓病の診療にパラダイムシフトをもたらした。
CKDは末期腎不全(ESRD),透析導入の原因であるばかりでなく,心血管疾患の独立した危険因子でもある。
そこで,実地医家の方々に広く理解を深めてもらい,専門医との診療連携を推進することで,透析患者の増加に歯止めをかけ,心血管疾患を抑制することを目指した」と話す。
 
ガイドでは,CKDをステージ1~5に分類し,ステージ3(GFR 30~59mL/分)までは基本的に「かかりつけ医」が治療を続けるとしており,とりわけステージ2(同60~89mL/分)までは実地医家が主体となる。
ステージ3までであれば治療によって腎機能低下を阻止でき,ステージ2までなら腎機能の回復も可能とされることから,早期CKDの治療を担う実地医家の役割はきわめて大きい。

欠かせない検尿・GFR評価
CKDのスクリーニング・治療の進め方について,飯野教授は次のように話す。
 
まず,CKDの危険因子を有するハイリスク群には年に1度は健診を受けてもらい,検尿で蛋白尿と血尿をチェックし,血清Cr値を測定して推算GFR(eGFR)を求め,腎機能を評価する。
特に,蛋白尿とeGFRのチェックはCKD診断のポイントとなる。
 
eGFRの算出には,先月,日本腎臓学会で正式に発表された新しい「日本人のGFR推算式」を用いる(表1)。

同値は,日本慢性腎臓病対策協議会のホームページ(http://j-ckdi.jp/)で算出できる。eGFRが60mL/分近傍では従来より推算精度が向上したが,30mL/分未満では値に大きな違いはない。
 
4月に始まった特定健診の必須検査項目に尿蛋白は含まれたものの,血清Cr値は除外された。
この点については,同学会としてもエビデンスを蓄積しつつ特定健診に盛り込まれるよう厚生労働省に働きかけていくという。

血圧,血糖の管理が要に
CKD発症・腎障害進行の危険因子として,ガイドには高血圧,耐糖能異常・糖尿病,肥満,脂質異常症,メタボリックシンドローム,喫煙など,いわゆる心血管疾患の危険因子に加え,高齢,CKD家族歴,膠原病,全身性・尿路感染症,尿路結石,非ステロイド抗炎症薬(NSAID)などの常用薬の服用歴,急性腎不全の既往などが挙げられている。
GFRは90mL/分以上だが,こうした危険因子を有するのが,CKD予備軍であるハイリスク群だ。
 
したがって,CKDの発症・進展を防ぐため,ハイリスク群,CKD患者に対しては,まず心血管疾患の危険因子の軽減を図る生活指導・治療を行う(表2)。


減塩(6g/日未満),禁煙は必須で,ステージ3以降は蛋白質制限(0.6~0.8g/kg/日)も開始する。
 
なかでも血圧と血糖のコントロールはCKD対策の要であり,血圧は130/80mmHg未満,蛋白尿1g/日以上では125/75mmHg未満に,血糖は糖尿病腎症ではHbA1c 6.5%未満を目指す。
LDLコレステロール値は120mg/dL未満が目標だ。
最近では,スタチンによる蛋白尿軽減効果も明らかになってきた。
メタボリックシンドロームの対策も,今後,重要性が増すと予想される。もちろん,CKDの原因疾患の治療も並行して進める。

出典 Medical Tribune 2008.6.26
版権 メディカル・トリビューン社

 

<自遊時間>
最近、プライマリケアとかアーリーエクスポジャーとかいうことで実地医家(開業医)への医学生の実習依頼が、医師会を通して大学医学部からあります。
先生方も経験されておみえになるのではないでしょうか。
私も医学教育に少しでも役に立てればと思ってここ数年協力して来ました。
年間3名ぐらいの医学部専門3年生(5年生?医学部の場合どう言っていいのか、いつも迷います)が実習に来ていました。
少しでもいい臨床医に育って貰えればというささやかな願いを込めてのことでした。
私自身、医学生の頃は決して真面目な学生とは言えませんでしたが、教えていただいた先生方のことは忘れません。
そんなこともあって毎年、医師会を通してエントリーして来ました。
しかし、昨年たまたま医学部教務課のミス、そして今年は医師会のミスでいずれもエントリーから外れてしまいました。
いずれの年もエントリーされていないことは医学部在学中の我が子から聞きました。
理由は、先程述べたように、先方の事務的ミスによるものでした。
今までは、いかにも国立大学らしい、もったいをつけた1年間の限定つきの「臨床講師に任命する」という紙切れ1枚が送られてきていました。
開業医もそれほど暇でもありません。
純粋な気持ち(ボランティア)でやっていたのが踏みにじまれる思いでした。

事務はきちんとやって初めての事務です。
そういえば、この医学部の事務は数年前にある件で新聞を賑わせたことがありました。

今後は一切、この手(開業医の医学生教育への協力)のボランティアには協力しない覚悟を決めました。
お人好しにも限界があります。

「仏の顔も3度まで」 

私は仏ではないので2度まででした。

 

読んでいただいてありがとうございます。
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ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
「井蛙内科/開業医診療録(2)」
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第72回日循総会  腎機能

戯れ言たれる侏儒 / 2008.06.12 00:01 / 推薦数 : 0

第72回日本循環器学会特集の記事で「腎機能」を勉強しました。

第72回日本循環器学会特集
腎機能  ~心血管イベントリスクの予測~
高齢者ではeGFR 50mL/分/1.73m2未満に

慢性腎臓病(CKD)は心血管疾患発症の危険因子であることが知られている。
推算糸球体濾過量(eGFR)60mL/分/1.73㎡未満が3か月以上持続すればCKDと診断されるのが一般的だが,札幌医科大学公衆衛生学講座・内科学第二の大西浩文講師らは大規模追跡調査試験の結果から,「高齢者の心血管疾患リスクを予測するにはeGFR50mL/分/1.73㎡未満がカットオフ値として適切と考えられる。
ただし,今後より詳細な検討が必要」と述べた。

eGFR 50未満で有意にリスク上昇
大西講師らは,北海道の端野町(現・北見市),壮瞥町で1991~92年に登録し,最大8年間経過観察した男性762人,女性1,014人を対象(2型糖尿病患者を除く)に血清クレアチニン値からeGFR(mL/分/1.73㎡)を算出。
そして,65歳以上の高齢者群(599例)と65歳未満の非高齢者群(1,177例)に分けてeGFRと心血管疾患発症との関係を検討した。
 
eGFR値は非高齢者群で70以上25.7%,60以上70未満40.7%,50以上60未満28.1%,50未満5.4%であり,高齢者群では70以上6.2%,60以上70未満30.6%,50以上60未満48.6%,50未満14.7%であった。
 
平均5.7年の経過観察中に確認された心血管疾患は155例で,内訳は脳梗塞22例,脳出血10例,くも膜下出血12例,種類不明脳卒中13例,狭心症53例,心筋梗塞22例,心不全16例,心突然死を含むその他7例。
 
年間1,000人当たりの心血管疾患発症率を試算すると,非高齢者群はeGFR 60以上で7.70,50以上60未満13.16,50未満22.88。同じく高齢者群では,eGFR 60以上25.40,50以上60未満23.21,50未満44.18であった。
 
一方,Kaplan-Meier曲線による累積生存率を見ると,非高齢者群ではeGFRカットオフ値を50,60のいずれに設定しても,eGFR低値群で有意な生存率の低下が見られるが,高齢者群ではeGFRカットオフ値を50にした場合のみ,50未満の群で50以上の群と比べて生存率が有意に低いという結果が得られた。
 
さらに種々の交絡要因で調整したCoxのハザード比でも,高齢者群において
eGFR 50未満で有意な結果となった。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41191081&year=2008
 

出典 Medical Tribune 2008.5.8
版権 メディカル・トリビューン誌

 

<参考ブログ>

日本初、高齢者の高血圧治療に関する
大規模臨床試験「JATOS」の最終結果発表について
http://www.shionogi.co.jp/ir/news/detail/061019.pdf

CKDの早期発見・早期介入 その1(1/2)
df
http://wellfrog.exblog.jp/d2008-02-18
CKDの早期発見・早期介入 その2(2/2)
http://wellfrog.exblog.jp/d2008-02-19

日本初、高齢者の高血圧治療に関する
大規模臨床試験「JATOS」の最終結果発表について
http://www.shionogi.co.jp/ir/news/detail/061019.pdf

CKDの早期発見・早期介入 その1(1/2)
df
http://wellfrog.exblog.jp/d2008-02-18
CKDの早期発見・早期介入 その2(2/2)
http://wellfrog.exblog.jp/d2008-02-19


<コメント>
日本腎臓学会編の「CKD診療ガイド」2007年9月8日発行第1版第1刷を読み返してみました。
高齢者の腎機能についての記載があるのか確かめてみたらP44に「13.高齢者CKDの診断」という項目がありました。
その中で「加齢に伴い腎機能(GFR)が低下し、GFR50mL/min/1.73㎡未満では、GFR60以上70mL/min/1.73㎡未満に比べて2倍以上のスピードで腎機能が低下し、末期腎不全(ESRD)に陥る危険性が高まる」という記載があります。
これはGFR50mL/min/1.73㎡未満ではESRDに陥るスピードが早まると述べたのに留まり、心血管疾患発症について言及したものではありません。
そして「高齢者」の年齢的な定義もされていません。
P48にQ&Aの形式で「65歳では、男性30%、女性40%以上にCKDが認められます」と記載されています。
65歳以上でCKDが、このように高頻度にみられることは驚くべきことでもありますが、女性に多いことに興味を持ちました。
理由は何なんでしょうか

 

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SMART

戯れ言たれる侏儒 / 2008.06.06 00:13 / 推薦数 : 0

糖尿病性早期腎症に対するバルサルタンの腎保護効果
ACE阻害薬併用群での最新解析も発表−−SMART研究

微量アルブミン尿を認める2型糖尿病患者の腎保護作用は、アムロジピンよりバルサルタンが上回るとしたSMART(Shiga Microalbuminuria Reduction Trial)研究の最新解析を、滋賀医大内科学講座の柏木厚典氏が6月1日、第51回日本腎臓学会のLate -Breaking Clinical Trialsにおいて報告した。

SMART研究は2型糖尿病患者の微量アルブミン尿に対する改善作用をバルサルタンとアムロジピンで比較した多施設共同無作為化試験である。
アムロジピンでは18%アルブミン尿が増加したのに対し、バルサルタンでは32%低下し、2群間には有意差があった(p<0.001)。

一方、到達血圧値別の解析では、アムロジピンは降圧した群のみアルブミン尿を改善したのに対し、バルサルタンのアルブミン尿改善作用には「降圧」と「降圧に依存しない作用」があることが昨年のDiabetes Care誌ですでに報告されている。

今回新しく報告されたのは、SMART研究登録患者150例中、試験開始時にACE阻害薬を服用していた72例におけるPost-hoc解析のデータである。
尿中アルブミンの変化をアルブミン/クレアチニン比(ACR)で比較すると、「バルサルタン+ACE阻害薬併用」群(34例)では26%減少したが、「アムロジピン+ACE阻害薬併用」群(38例)では増加傾向を示し、両群間の差は有意だった(p<0.01)。
このことから、ACE阻害薬を併用している患者のみで比較しても、バルサルタンによる微量アルブミン尿改善作用はアムロジピンを上回っていたといえる。 

なお、ACE阻害薬を併用していなかった76例で比較しても、バルサルタン単独群(39例)ではACRが39%低下したのに対し、アムロジピン単独群(39例)では逆に26%増加し、群間に有意差が認められた(p<0.01)。

この結果に対しコメンテーターとして登場した東北大腎高血圧内分泌科の伊藤貞嘉氏は、全身血圧の影響を受けやすい傍髄質糸球体とは異なり、表層糸球体ではレニン・アンジオテンシン(RA)系による輸出細動脈収縮が糸球体高血圧を来す場合も多いとし、SMART研究では後者による微量アルブミン尿が多かったため、ARBが奏効したのではないかとコメントした。
ただし、腎保護における積極的降圧治療の有用性が否定されたわけではないと注意も促した。

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/jsn2008/200806/506688.html
日経メディカル オンライン 2008.6.3
版権 日経BP社

 

<コメント> 

このSMARTは、2型糖尿病性早期腎症に対するARBとCCBの比較を十分な降圧下に実施した試験がなかったということで行われた試験です。

「十分な降圧」についての追加
これまで腎臓病の進展予防を目的に130/80mmHg未満を降圧目標として、RAS抑制剤の効果を検証した臨床研究はなかったとのことです。
ちなみにMARVAL試験での目標血圧は135/85mmHg。
SMARTは130/80mmHgを目標に、最終観察時の平均血圧は131/75mmHgでした。

SMART
Shiga Microalbuminuria Reduction Trial
http://www.ebm-library.jp/circ/doc_japan/J0032.html
Rationale and Design for Shiga Microalbuminuria Reduction Trial
http://clinicaltrials.gov/show/NCT00202618


<参考サイト>

糖尿病学会腎臓学会合同シンポを初めて開催
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?phrase=SMART++%E8%85%8E&perpage=0&order=0&page=0&id=M4026161&year=2007&type=allround
早期腎症は 6 年間で約50%,顕性腎症は 7 年間で約30%,ネフローゼ症候群は 7 ~ 8 年間で約25%のremissionが可能であると考えられる

 

糖尿病性腎症では降圧目標値130/80mmHg未満を厳格に達成すべき
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/jsn2008/200806/506691.html
糖尿病性腎症を治療するためには降圧目標値130/80mmHg未満を厳格に達成する必要があり、RA系抑制薬の最大量までの増量や降圧薬多剤併用とともに、副作用を回避して安全、確実に治療が進むようチームで協力する必要がある──。社会保険横浜中央病院副院長兼腎・血液浄化療法科部長の海津嘉蔵氏(写真)は、第51回日本腎臓学会総会のシンポジウム「糖尿病性腎症の成因と治療」で、同院が2004年から取り組み始めた「腎機能改善外来」で行っている診療の詳細を発表した。

CKD講演会
http://blog.m3.com/m/magic/show_entry?entry_id=39782&_session_id=41a4ba2f276b2f10f69955dc4d6e8b86
(しっかり講演会で勉強されています。感心します。)


SMART試験は同じ名前で気管支喘息、バイパスグラフト関連の試験もあるようです。

 

 <番外編>
ONTARGETの評価が動画で配信されました。

専門家に聞くONTARGETの評価
ONTARGETの結果発表を受けて、その評価を専門家にうかがいました。今回収録しました方々は以下です。

 
愛媛大学大学院医学系研究科分子心血管生物・薬理学教授
堀内正嗣氏
 
九州大学大学院医学研究院循環器内科学教授
砂川賢二氏
 
愛媛大学大学院医学系研究科病態情報内科学教授
檜垣實男氏
 
千葉大学大学院医学研究院循環病態医科学教授
小室一成氏
 
京都府立医科大学大学院医学系研究科循環器内科学教授
松原弘明氏
 
大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学教授
森下竜一氏
 
カナダLaval大学
Gilles R. Dagenais氏
http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/search/j02/0011.jsp


ONTARGET
http://on-target.jp/

日経メディカル オンライン 2008. 4. 11

注目の降圧薬臨床試験 ONTARGET
http://blog.m3.com/reed/20080404
ONTARGETの結果を考察する
http://blog.m3.com/reed/20080412
糖尿病医から見たONTARGET
http://blog.m3.com/reed/20080413

 

読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。

他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
「井蛙内科/開業医診療録(2)」
http://wellfrog2.exblog.jp/
2008.5.21~
「井蛙内科/開業医診療録」 
http://wellfrog.exblog.jp/ 
~2008.5.21

があります。

 

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昨日の続きです。 

一方,腎髄質では傍髄質糸球体の輸出細動脈から分枝した直血管より血流が供給されますが,腎髄質のなかでも腎皮質に隣接する髄質外帯には太いヘンレ係蹄上行部が位置しており,元来,低酸素状態に陥りやすく,腎臓のなかで最も障害を受けやすい部位と言えます。
また,
皮質表在糸球体では傍髄質糸球体の輸入細動脈に比べアンジオテンシンII(A II)の作用をより強く受けることから,RA系の亢進による障害を受けやすいことが知られています。

以上から,微量アルブミン尿がCVDの予測因子と考えられるのは,微量アルブミン尿が腎臓に限らずその他の臓器においても,最初に血管障害が現れるであろう"Strain Vessel"の傷害を結果的に反映するためと考えています。
また,腎臓では高血圧とRA系の亢進により障害を受ける主たる部位がそれぞれ異なるということも重要です。
つまり,腎保護のためには厳格な降圧とRA系の抑制の両方が不可欠であると言えます。

オルメサルタンによる抗炎症および抗酸化への関与
筒井 
私たちは高血圧患者13例を対象にオルメサルタン20mg/日を開始用量として12週間投与し,冠動脈における内皮依存性の血管拡張反応について検討しました。
PETを使って寒冷昇圧試験前後の心筋血流を測定した結果,オルメサルタンによる血管抵抗の有意な低下が認められました。

また,種々の生化学マーカーについて検討した結果,オルメサルタンは炎症マーカーである血中IL-6を低下させるとともに,抗酸化作用を有するスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)を増加させ,SODの増加と冠血管抵抗の減少には有意な相関が認められました図3)。


以上の結果から,A IIによる活性酸素種の産生が血管内皮機能障害に関与していると見られ,オルメサルタンがこれを改善したと考えられます。

Ruilope 
欧州で実施された臨床試験EUTOPIAでも,高血圧患者において
オルメサルタンが種々の炎症マーカーを低下させており(図4),筒井先生の臨床研究の結果とも合致していると思います。

 

微量アルブミン尿に関する臨床試験ROADMAP―オルメサルタンの優れた降圧効果とRA系抑制作用
伊藤 
オルメサルタンは,ARBのなかでもAT1受容体への結合が強く,降圧効果に優れた薬剤です(図5)。


CKDの視点からCVDの抑制を考えた場合,特に適した薬剤と思われますが,いかがでしょうか。

Ruilope 
オルメサルタンの効果を検証するために欧州では現在,臨床試験ROADMAPが進行中です。
ROADMAPは,心血管系危険因子を少なくとも1つ以上有する正常アルブミン尿の2型糖尿病患者4,400例を対象にオルメサルタン40mg/日またはプラセボを投与し,微量アルブミン尿の発症,さらに心血管系イベントの発生がどの程度抑制されるか否かについて検討しています。
ACE阻害薬による同様の臨床試験にBENEDICTがありますが,その際は必ずしも十分な降圧は得られませんでした。ROADMAPではオルメサルタンの優れた降圧効果とRA系抑制作用のダブル効果が期待されており,理論的には従来を超える結果が予想されます。
糖尿病患者ではCKDが多いことが知られていますが,それは,腎臓のRA系が亢進していることや高血圧の合併例が多いためで,伊藤先生のご説明とよく合致します。

伊藤 
2型糖尿病患者においてARBが微量アルブミン尿から顕性腎症の進展を抑制することはすでに報告されていますが,微量アルブミン尿の発症自体をエンドポイントとするROADMAPは,"Cardio-renal Continuum"の初期の段階で危険因子を抑制した場合の有用性を問うものであり,微量アルブミン尿だけでなく,それに続くほかの標的臓器障害の保護という意味も含んだ非常に重要な試験と考えます。

オルメサルタンについては,このROADMAP以外にも,2型糖尿病患者における顕性腎症の進展抑制への影響を検証するORIENTが日本人を主とするアジア人で現在進行中であり,ともに結果が期待されます。

Medical Tribune 2008.2.21
版権 メデ