~大豆やナッツ類などの脂質低下食~
低脂肪食よりLDL-C値が大幅に低下
聖ミカエル病院とトロント大学(ともにカナダ・トロ ント)のDavid J. A. Jenkins教授らは,脂質異常症患者を対象とした多施設共同研究を実施し,大豆やナッツ類,植物ステロール,オート麦などの脂質低下効果を持つ食物を 複数組み合わせて6カ月間摂取する方が,低脂肪食を多く摂取するよりもLDLコレステロール(LDL-C)値が大幅に低下するとJAMA(2011; 306: 831-839)に発表した。
24週後のLDL-C値が約13%低下
研究の背景情報によると,これまで脂質低下効果が知られている食物を単独あるいは複数摂取して効果を高める試みがなされてきたが,長期的な効果を従来の食事療法と比較した検討はなされていなかった。
Jenkins教授らは,2007年6月~09年2月に,カナダの4施設における脂質異常症患者351例を対象に,米食品医薬品局(FDA)が脂質値の低下に有効性を認めている脂質低下食(大豆やナッツ類,植物ステロール,オート麦など)を勧める食事指導が,LDL-C値の低下にどのような効果があるのかを検討する多施設共同研究を実施した。
対象患者を
(1)脂質低下食を多く摂取するよう2回指導する通常指導
群(124例)
(2)同様の食事指導を7回行う強化指導群(103例)(3)高繊維 食や全粒穀物などの低脂肪食を多く摂取する
よう指導する対照群(124例)—の3群にランダムに割り付け,食事指導を6カ月間継続した。 その結果,修正治療企図分析(modified intention-to-treat analysis)による対象症例の脱落率は,強化指導群で18%,通常指導群で23%,対照群では26%と3群間で有意差は認められなかった。 また,追跡開始時から24週間後のLDL-C値の変化は,強化指導群で− 26mg/dL(−13.8%),通常指導群で−24mg/dL(−13.1%)だったのに対し,対照群では−8mg/dL(−3.0%)であった。 同教授らは「LDL-C値低下効果を有する食物を複数摂取する食事指導を行うと,低脂肪食を多く摂取するよりもLDL-C値低下率が有意に高かった。また,通常指導群と強化指導群でLDL-C値低下率に有意差は見られなかった」とし,「今回の研究から,脂質低下食を複数摂取することが,潜在的なLDL- C値低下効果を示すことが分かった」と結論している。 さらに「約1時間と40分のわずか2回の指導で13%ものLDL-C値低下が達成できた。従来の食事療法ではLDL-C値低下率が3%にとどまっている ことを考慮すると,通常の食事を摂取している患者の多くに同様の食事指導を行えば,さらに大幅な低下が見込めるのではないか」との考えを示している。出典 Medical Tribune 2012.1.12版権 メディカル・トリビューン社 <関連サイト>
高脂肪食で太る理由を解明? 脳にダメージで食欲を刺激米研究
ダイエットは長続きしない。
特に太れば太るほど,わき上がる食欲に打ち勝つことは難しい。
この原因の1つに,肥満が直接脳に与える影響が取りざた されている。
米ワシントン大学のJoshua P. Thaler氏らの研究によると,脂肪の割合が高い食事を与えられたマウスやラットでは,1~3日以内に脳の視床下部が炎症を起こし,それによる神経の損傷が認められたという。
この神経損傷が食欲を刺激し,さらに高脂肪食を求める悪循環を生み出すようだ。研究の詳細は,J Clin Invest(2012; 122: 153-162)に掲載されている。
出典 MT pro 2011.1.17
版権 メディカル・トリビューン社
高蛋白質の朝食は昼食前の食欲抑制に有効
朝食習慣のない15歳女性対象の米研究
肥満においても“先進国”となっている米国。
その要因の1つは,はんらんする広告宣伝や自動販売機に扇動され,濃い味付けで栄養価の高い食べ物が,空腹 を感じないときでも簡単に手に入る環境にあるという。
そのような中,米ミズーリ大学栄養・運動生理学のHeather J. Leidy氏らが,朝食を取る習慣のない15歳前後の女性を対象にした機能的MRI(fMRI)解析によるパイロット研究を行った。
その結果,蛋白質を多く含む朝食を取った場合の方が,通常の蛋白質量の朝食を取った場合に比べ,昼食直前に感じる空腹感や食欲を示す脳活性反応がより弱いことが分かった(Obesity 5月5日オンライン版)。
出典 MT pro 2011.5.27
版権 メディカル・トリビューン社
朝食をしっかり取ると太る? 摂取比率を減らせばダイエットに
独研究
脳の活性化やダイエットなどの観点から,朝食を取った方が良いとする研究結果が報告されているが,その一方でカロリー過多の現代人は朝食を抜いた方がカロリー摂取を制限できるとする説がある。
こうした中,ドイツ・ミュンヘン工科大学のVolker Schusdziarra氏らは,朝食の摂取量に注目。1日のカロリー摂取量において,朝食の比率を減らした方がダイエットにつながることをNutr J1月17日オンライン版に発表した。
出典 MT pro 2011.1.18
版権 メディカル・トリビューン社
埼玉医科大学内分泌・糖尿病内科の片山茂裕教授の,高血圧合併糖尿病患者における血圧管理についての解説で勉強しました。
糖尿病患者の血圧管理
イベント抑制には厳格さが必要だが,過度の降圧には注意
糖尿病患者における高血圧の合併は,心血管疾患の発症率を2~3倍増加させ,また糖尿病腎症の進行を促進する。
一方,血圧を良好にコントロールすることで,心血管疾患の発症や糖尿病腎症の進行を抑制しうる。
近年,アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)+利尿薬など各種合剤が使用可能となり,良好なコ ンプライアンスが期待できるようになり,血圧を厳格に管理しやすくなった。
一方,降圧目標に関して従来の130/80mmHg未満では低過ぎるのではないかとの意見が出され,波紋を呼んでいる。
高血圧合併糖尿病患者では3剤併用が必要なケースが多い
糖尿病患者では,高血圧治療ガイドライン2009(JSH2009)で定める降圧目標である130/80mmHg未満を達成しているケースは 20~30%ではないかといわれる。
その背景として,糖尿病患者では肥満などのため,単剤では降圧目標到達が困難な場合が少なくないことに加え,利尿薬の併用率も低いことが指摘されている。
JSH2009における糖尿病を合併する高血圧の治療計画では,血圧が130/80mmHg以上であれば,生活習慣の修正・血圧管理と同時に薬物療法を 開始し,第一選択薬としてアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬またはARBが推奨されている。
さらに,効果不十分であれば用量を増量するか,Ca拮 抗薬または利尿薬を併用,それでも効果不十分であれば,3剤(ARBまたはACE阻害薬+Ca拮抗薬+利尿薬)を併用すると記されている。
以下、一部略
日本人でARB+利尿薬とARB+Ca拮抗薬の比較試験が実施中
服用する薬剤の数が多くなると,コンプライアンスの低下が懸念される。
近年,ARB+利尿薬やARB+Ca拮抗薬といった合剤が使用可能となり,コンプライアンスの向上が期待できる。
降圧治療では,これまでわが国では利尿薬はあまり使用されていなかったが,ARB+利尿薬の合剤が登場したことで,利尿薬が投与されている患者が増加しつつある。ARBと利尿薬の併用は,両者の作用機序を増幅し,降圧効果の増強が期待できる。また,糖尿病患者では高血糖や肥満,腎機能低下などにより食塩感受性のケースが多い。ARBは圧利尿曲線が緩やかであるが,ARBと利尿薬を併用することで,圧利尿曲線が急峻化し,より高い降圧効果が得られる可能性がある。
米国では,ACE阻害薬+利尿薬とACE阻害薬+Ca拮抗薬の併用による複合イベント発生率を比較したACCOMPLISH studyの成績が報告されている。
わが国でもARB+利尿薬とARB+Ca拮抗薬の心血管イベント抑制効果を比較検討するCOLM studyが現在進行中である。
降圧療法の普及・強化などにより糖尿病患者の透析導入例が減少
降圧療法により心血管疾患の発症や糖尿病腎症の進展が抑制されることは,多くの大規模臨床試験で証明されている。
また,55歳以上の糖尿病患者を対象としたADVANCE試験では,治療中に到達した血圧レベルの低下とともに腎イベント発生率が直線的に減少し,収縮期血圧(SBP)110mmHg未満,DBP 65mmHg未満で最低値となったことが報告されている。
さらに,ROADMAP試験では,ARBが微量アルブミン尿の発症を減少させるとの成績が得られており,降圧療法により糖尿病腎症の進展抑制だけでなく発症予防も可能と考えられる。
日本透析医学会の調査では,2010末時点における日本の慢性透析患者数は29万7,126人で,前年度より6,465人増加したが,患者数の増加は鈍化している。
また,糖尿病腎症を原因とする透析導入患者の割合は2008年度に初めて減少し,2010年度も再度減少した。患者数は2010年度に導入された総患者数3万7,532人の43.5%に当たる1万6,326人で,初めて前年度に比べて約600人減少した。
これらは降圧療法の普及・強化によるところが大きいと考えられる。
糖尿病腎症が進行すると血圧管理も難しくなることから,早期から厳格な血圧管理が重要である。
個々の患者の病態を考慮して降圧目標を決定
糖尿病患者における降圧目標は欧米のガイドラインにおいても,日本と同様に130/80mmHg未満とされている。
近年,この降圧目標が低過ぎるのではないかとの意見が出されている。
2010年に発表されたACCORD血圧試験における1次エンドポイント(非致死性心筋梗塞,非致死性脳卒中,心血管疾患による死亡)の年間発生率は厳格管理群(SBP 120mmHg未満を目標,開始4カ月後に119.3 mmHgに到達)1.87%,標準管理群(SBP 140mmHgを目標,開始4カ月後に133.5mmHgに到達)2.09%,ハザード比(HR)0.88で,有意差は認められなかった(ただし,脳卒中発症率はHR 0.59で,厳格管理群で有意に低下した)。
また,冠動脈疾患合併高血圧患者を追跡したINVEST試験では,糖尿病患者のサブ解析が報告された。
到達したSBP値別にイベント(全死亡,非致死性 心筋梗塞,非致死性脳卒中)発生率を比較したところ,厳格管理群(130mmHg未満)のイベント発生率は12.7%で,降圧不良群(140mmHg以 上,19.8%)より低かったものの,通常管理群(130~139mmHg,12.6%)とほぼ同等であった。
厳格管理群を詳細に検討したところ,110mmHg未満で全死亡のリスクが有意に上昇し,Jカーブ現象が認められた。
さらに,前述のROADMAP試験では,心血管疾患の発症率は2.9/1,000人・年と極めて低く,統計学的な検出力が足りず意味はないが,非致死性 心血管疾患発症率はARB群で3.6%(81例)とプラセボ群4.1%(91例)より低かったが,死亡率はARB群0.7%(15/2,232例)とプラ セボ群0.1%(3/2,215例)より高かった。
事後解析の結果,同試験の対象には冠動脈疾患の既往例が約25%含まれており,これらの症例のイベント発生前のSBP値別に解析したところ,122mmHg以下の群で心血管疾患による死亡率が高く,また登録時からイベント発生前までの血圧差が大きいほど死亡率が高い傾向が認められた。
これらの成績から欧州高血圧学会(ESH)は,2007年のガイドラインの再評価という形で,すべての高血圧における降圧は 130~139/80~85mmHgを目指し,できればその下限である130/80mmHgに近づけると記しているが,糖尿病患者については140 /90mmHg以上であれば降圧治療を開始するが,正常高値血圧での治療開始を勧めるエビデンスおよび130/80mmHg未満を降圧目標とするエビデン スとも十分ではなく,また実際の達成率も高くないことから,降圧目標値を明示せず「できるだけ降圧を図る」との表現にとどめている。
米国糖尿病学会(ADA)も2011年のClinical Practice Recommendationsでは,SBPはほとんどの患者で130mmHgを目指すが,個々の患者の病態に応じて決めるとしている(DBPは80mmHg未満を目指す)。
厳格な降圧によるイベント抑制効果について日本人を対象とした成績はないが,現在実施中のJ-DOIT3試験では診察室での随時血圧を指標に,通常治療群(130/80mmHg未満)と強化治療群(120/75mmHg未満)のイベント発生率が比較検討される予定である。日本人を対象とした 試験の結果が待たれるが,とりあえずは130/80mmHg未満を目指し,冠動脈疾患の既往など個々の患者の病態に合わせて血圧管理を行い,過度な血圧低下には十分注意すべきである。
出典 Medical Tribune 2011.11.10
版権 メディカル・トリビューン社
異所性脂質蓄積という概念 日本人ではBMIが30以上の肥満者の割合が欧米に比べて低いにもかかわらず,糖尿病の有病率は欧米とほぼ同程度であることが報告されている。近年では予防医学的な概念からメタボリックシンドロームが登場し,特に日本人では,軽度肥満の段階から内臓脂肪の軽減を目指した生活習慣の是正と医学的介入が必要とされている。 そこで最近,益崎教授らが注目しているのが「異所性脂質蓄積(図2)」という概念だ。人間には,有事に備えてエネルギーを体内に保存する機能が備わっているが,日本を含むアジア地域の肥満者では,欧米人に比べて皮下脂肪組織の蓄積能力が弱い。そのため,軽度肥満の状態から,内臓脂肪組織や肝臓,骨格筋,膵臓,血管など,本来は脂肪が蓄積しない部分にたまりやすくなり,これが全身・臓器レベルでの血管病リスクを高めるという概念だ。こうした異所性脂質の蓄積が起こる場合,通常体重に比べて,耐糖能異常や高血圧,脂質異常症などの発症リスクが2倍に増加する。
こうした余分な脂肪が蓄積する理由には,インスリン分泌過多が挙げられる。沖縄県で増加が問題視されている肥満2型糖尿病に見られるように,インスリン分泌が過剰にもかかわらず,血糖値が下がらないインスリン抵抗性が惹起され,高インスリン状態が続くと異所性の脂質蓄積が進行するという機序が考えられるという。 遺伝子操作により脂肪組織への中性脂肪備蓄能力を軽減した遺伝性の肥満db/dbマウスを軽度肥満とし,超肥満のdb/dbマウスと野生型マウスの代謝解析を比較したところ,軽度肥満マウスでは,超肥満マウスよりも脂肪肝が悪化しており,血糖値も著しく上昇していることが示されている(図3)。 こうした軽度肥満マウスでは,皮下脂肪組織に備蓄できない余剰脂質(エネルギー)が脂肪筋や脂肪肝,脂肪血管となって異所性に蓄積し,局所組織での機能障害や炎症,インスリン抵抗性を惹起すると考えられる。同教授は「これは日本人で起こりやすい現象であり,内臓脂肪型肥満は異所性脂質蓄積を伴っていることが多い」と指摘する。この改善には,食事や運動療法など生活習慣の是正により,骨格筋細胞内の脂質は大きく減少し,インスリン抵抗性が改善することに加えて,高インスリン状態を引き起こさない薬剤による治療も必要とされる。 
待たれるインクレチン関連薬のエビデンス 最近では,わが国でもジペプチジルペプチダーゼ(DPP)-4阻害薬やグルカゴン様ペプチド(GLP)-1受容体作動薬といったインクレチン関連薬が臨床導入され,糖尿病治療にも変化がもたらされている。益崎教授によると,先に述べた肥満2型糖尿病が増えている昨今では,必要なときに効果的なインスリンの分泌を促すコンセプトの薬剤が求められており,血糖依存的な作用を示すこれらの新規の薬剤は,食後高血糖の急峻な上昇を抑制し,血糖変動のきめ細かな正常化を目指すのに適した選択肢であるという。 一方,これらの薬剤には使用上,注意すべき点もある。スルホニル尿素(SU)薬との併用時の低血糖リスクの軽減に配慮する必要があること,また,インスリン依存状態にある患者に対しては,インスリンからの切り替えによる高血糖や糖尿病性ケトアシドーシスのリスクに注意する必要がある。そのため,「個々の患者の状態に適した薬剤選択をしっかり考える必要がある」と同教授。 野出教授も,既存の薬剤とは異なる新しい機序を持ち,体重を増加させず,何より低血糖の頻度が少ないことからも,これらの薬剤への期待は大きいという。 また,GLP-1受容体は中枢神経系や胃,心臓,肺などに発現しており,血糖低下作用以外の臓器保護作用を持つ可能性も示唆されている。しかし,同教授は 「こうした新規の薬剤は今後,有効性と安全性のエビデンスを確立していくべき段階にある」と指摘する。そこで同教授らは,DPP-4阻害薬のシダグリプチンに着目し,同薬の血管障害に対する効果を検討するPROLOGUE研究を開始。現在,患者を登録中だ(図4)。同研究では,シダグリプチン投与群と非投与群で,頸動脈エコーを用いて頸動脈内膜中膜複合体厚(IMT)を測定し,動脈硬化進展抑制効果を比較するとともに,心血管機能や血液バイ オマーカーに及ぼす影響も検討する予定であるという。同研究をはじめインクレチン関連薬の,特に日本人におけるエビデンスの蓄積が待たれる。
出典 Medical Tribune 2011.7.21
版権 メディカル・トリビューン社
<関連サイト>
糖尿病と冠動脈
糖尿病 ~ 血管障害
Fourth movement
2011.7.18撮影 茅野・長野から眺望した八ヶ岳