戯れ言たれる侏儒
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高血圧と糖尿病。
いずれもCHDのリスクファクターですが、両者の合併が多いことは臨床場面でしばしば経験することです。
困ったことに、両者とも症状がない疾患のため、この合併がいかによくないかということを患者さんに納得していただくことは実際には困難です。
”5分”診療でもほとんど世間話で終わってしまう自分の診療。
大規模臨床試験より得られた”エビデンス”を診察の中で噛み砕いて説明できるといいのですが、実際にはなかなか・・・。

さて話が変わりますが、製薬メーカー提供によるRAS抑制剤に関する座談会。
薬価の高いARBばかりでACEIはすっかり影をひそめています。
このARB。
ACEIに対しての非劣性とか、副作用の少なさ(コンプライアンスの良さ)とかあまりパッとした話もなく「高性能ACEI」の話題もあり、その立場も少しあやしくなっていました。
しかし最近はAT1ブロッカーだけでなくAT2ポテンシエーターといった”Dual effect”や”多面的作用”で土俵の真ん中に押し戻し、さらにはACEIを押し出す勢いです。

私自身、最近まで薬価のことを考え、まずはACEIを処方し、忍容性が悪ければそこでARBというスタンスでした。

しかし、なぜだか最近はいきなりARBを処方することが多くなってしまいました。
もしかして”座談会”の読み過ぎかも知れません(サブリミナル効果?)。

薬価が同じだったり将来的にジェネリックが出たらARBになってしまうような気がします。
その時にはACEIはどうなっているのでしょうか。

さて、きょうはまた”座談会”で勉強しました。

高性能ACEI
http://blog.m3.com/reed/20071023/_ACEI

三塩 清巳「ソーリオ(スイス)にて」 油彩 キャンヴァス6号
http://page12.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/p117349635


特別企画
Round Table Discussion 座談会
高血圧症患者の糖尿病新規発症を抑制する臨床的意義は?

ARBは,血圧を良好にコントロールするだけでなく,糖尿病の新規発症を抑制することも示されている。
これは,欧米だけでなく,日本人の高血圧症患者を対象としたCASE-J試験とHIJ-CREATE試験でも明らかにされている。
そこで,なぜ,高血圧症患者が,糖尿病を新規に発症するのか?
そして,それを抑制することの臨床的意義について討論していただいた。

熊本大学大学院医学薬学研究部 生体機能薬理学 教授
光山 勝慶 氏(司会)
東京医科大学第三内科 主任教授
小田原 雅人 氏
順天堂大学大学院医学研究科 代謝内分泌内科 准教授
綿田 裕孝 氏
小倉記念病院循環器科 部長
横井 宏佳 氏 
(発言順)
 

高血圧症は糖尿病の新規発症リスクとなるのか?

光山 
一般に高血圧症と糖尿病は合併しやすく,それが脳・心血管系イベントの発現リスクを相乗的に高めると言われています。
一方で,ARBなどのRA系抑制薬を降圧療法に用いると,血圧のコントロールとともに,糖尿病の新規発症抑制が得られるとした成績が報告されています。
これは,日本人を対象にした検討でも同様で,カンデサルタンを用いたCASE-J試験やHIJ - CREATE試験で認められています。
これらの事実は,高血圧症から糖尿病が発症する過程において,RA系の活性化が関与していることを強く示唆するものです。
そこで,本日は,高血圧症から糖尿病が発症するメカニズム,そして,糖尿病の新規発症を抑制することの臨床的意義について,意見を交わしたいと思います。
 
まず,小田原先生,高血圧症から糖尿病は発症しやすいと考えてよいのでしょうか。

小田原 
疫学的調査では,糖尿病患者さんで高血圧症を有する割合は,糖尿病でない方の約2倍です。
また,高血圧症患者さんで糖尿病を有する割合は,高血圧症でない方の2~3倍にもなります。
このことからも,両疾患は明らかに関連があると言えます。
 
また,外来高血圧症患者さんの半数以上(54%)が耐糖能異常(IGT)もしくは境界型糖尿病(IFG)であるとの報告もあります。
つまり,高血圧症の治療中に糖尿病が発症する可能性は非常に高く,降圧療法中には,血糖値の変動にも注目する必要があるでしょう。

光山 
確かに,正常血圧(120~129/75~84mmHg)の方に比べて高血圧症の方は,3.3倍,糖尿病の発症リスクが高まるとの成績もあります(図1)。
それでは,なぜ,両者は合併しやすいのでしょうか。

小田原 
ベースとして考えられるのがインスリン抵抗性だと思います。最近は特に,肥満・メタボリックシンドローム(MetS)が増えており,これは同時にインスリン抵抗性が亢進している方が増えていることを意味します。

綿田 
インスリン抵抗性とともに重要なのが,膵臓のβ細胞だと思います。
インスリン抵抗性が亢進した状態であっても,それに対応できるβ細胞機能が保持されていれば,糖尿病は発症しないと考えます。

光山 
心筋梗塞患者さんや慢性心不全患者さんにも糖尿病が多いと聞きますが,いかがでしょう。

横井 
IGTの病態で,もうすでに動脈硬化がかなり進行しています。
そこで,脳・心血管系イベントを予防するためにも運動療法を指導するのですが,心筋梗塞などの致死的可能性がある疾患に遭遇した方は,何事にも慎重になってしまう傾向があります。
そのため,運動量も低下し,IGTから糖尿病へと進展してしまうのかもしれません。
 

RA系の活性化と糖尿病の発症
光山 
肥満・MetSの増加が社会的にも注目されています。
肥満者では,RA系の活性化が亢進しています。
RA系の活性化は,高血圧症を発症する前からすでに亢進しており,それをブロックすることが,後の病態形成抑制に重要であることが,カンデサルタンを用いたTROPHY試験で明らかにされています。
糖尿病の発症に対しても,RA系の活性化は関与していると考えてよいでしょうか。

綿田 
インスリン抵抗性の改善は,多くの降圧薬で認められています。
末梢血管が拡張し骨格筋の血流量が増加すれば,糖取り込みの機会が増えますから,インスリン抵抗性が改善されます。
しかし,RA系抑制薬は,ほかの降圧薬と比較しても糖尿病の新規発症を抑制しており,その機序をインスリン抵抗性改善のみでは説明できません。
 
糖尿病の発症に対しきわめて重要なのが,β細胞機能です。
ただ,β細胞は酸化ストレスに非常に弱く,わずかな酸化ストレスでインスリン遺伝子の発現やインスリン分泌量を調整するグルコキナーゼ遺伝子の発現が低下してしまいます。
この酸化ストレスが生じる引き金になるのが,グルコースでありRA系の活性化です。
実際,糖尿病のモデルラットでは,β細胞のアンジオテンシンII受容体の発現が亢進しています。
そして,肥満2型糖尿病モデルであるdb/dbマウスでは,酸化ストレスの指標である8-OHdGの発現亢進,ミトコンドリアの肥大が認められ,インスリンの分泌も低下します。
しかし,このdb/dbマウスにカンデサルタンを投与すると,酸化ストレスが軽減し,インスリン分泌顆粒やミトコンドリアが正常化し,インスリン分泌も軽度ではありますが,改善します(図2)。
これらのことから,カンデサルタンは,膵β細胞の機能障害改善にも寄与していると思います。

小田原 
大変よい成績ですね。
RA系の活性化と膵β細胞障害との関係を明快に示した成績だと思います。
ARBは,骨格筋でのインスリン抵抗性を直接的に,また,血流改善を介して改善するとされてきました。
それに加えて,膵臓にも作用して,糖代謝を改善するということですね(図3)。

 

糖尿病の合併がイベントリスクを高めるのか?
横井 
横井 
心血管系イベント(CVD)を専門とする者の意見として,やはり,高血圧症と糖尿病が合併することを防ぐ一次予防を,多くの臨床医が心がけるべきだと思います。
なぜなら,私の施設で冠動脈インターベンション(PCI)を施行した患者さんの背景を調べると,高血圧症あるいは糖代謝異常だけというよりも,両者の合併例のほうが,リスクがきわめて高くなるからです。
心筋梗塞は,動脈硬化が徐々に進行して発症するのでなく,血管に形成されたプラークが突然破裂して発症します。
このプラークの破裂は,高血圧症に加えて肥満,糖・脂質代謝に異常を認めるなど,いわゆるMetSの方ほど多いのです。
特に,若年の男性に多いです(図4)。
ですから,リスクを増やさない,可能であればリスクを減らす治療が重要なのです。

光山 
PIUMA研究では,高血圧症の治療中に新たに糖尿病が発症した例のCVDの発症率は,糖尿病合併高血圧症例とほぼ同等であると報告されています。
同様の傾向がCASE-J試験でもみられたと,2007年の欧州高血圧学会で発表されています。

小田原 
CVDの予防において,降圧療法は非常に重要です。
その一方で,糖代謝を悪化させる降圧薬があることも事実です。
これは,諸刃の剣というべきか,血圧を下げるメリットは大きいのですが,糖代謝の異常を助長させる,さらには糖尿病を発症させるのです。
そうなると,長期的な生命予後という観点では,糖代謝を改善する薬剤が投与されている患者さんに比べると,大きな差になって現れてくるでしょう。
 
エビデンスが重視されていますが,大規模試験の観察期間は長くても5年程度でしかなく,糖代謝の悪化による影響が明らかになる前に臨床試験は終了してしまいます。
糖尿病の新規発症に関する成績を評価しないという意見もあるようですが,中・長期的な視点で臨むと,糖代謝に好影響を与える降圧薬が,まず選択されるべきだと思います。

横井 
心筋梗塞の再発を防ぐという観点からも,「糖尿病を発症させない降圧療法」は重要です。
糖尿病患者さんは,バルーンだけに限らず,ベアメタルステント,さらには,薬剤溶出性ステント(DES)を用いても,イベントの再発リスクは,依然として高いままです。
PCIは,心筋梗塞を起こした責任病変の治療はできますが,全身の至る所の血管に生じているプラークの破裂を防ぐことはできません。
消防士が火事場で火を消すことはできても,火事を予防できないのと同じです。
そのためにも,全身療法である薬物療法をしっかりと行わなければならず,薬剤の選択にこだわる必要があると考えます。

光山 
イベントの再発を防ぐ降圧療法には,やはり,血管の内皮機能を改善する薬剤,たとえばARBが必要だということですか。

横井 
その通りだと思います。
それは,カンデサルタンのエビデンスを振り返れば明らかです。
いずれも降圧療法が必要な患者さんを対象としていますが,OGAKI研究では,安定期にある虚血性心疾患(CHD)患者さんの心イベントリスクを45%低下させました。
また,HIJ - CREATE試験では,急性冠症候群をも含むCHD患者さんを対象にしており,有意ではありませんが,カンデサルタン投与群のほうがCVDを軽減させています。
現在,DES使用例の予後に対するカンデサルタンの有効性を検討する4C研究も進行中です。
このように,カンデサルタンには,日本人を対象にしたエビデンスがあります。
実は,日本人を対象にしている点が重要で,日本人のプラーク破裂には,スパズムの関与が大きいと言われています。
その予防にはNOを増加させることが重要なのですが,この点は,理論的にはARBよりもACE阻害薬のほうが有利と考えられていました。
しかし,カンデサルタンとACE阻害薬を比較したHIJ - CREATE試験のpost hoc解析では,CVDの発症に全く差が見られません。
それだけ,カンデサルタンは血管内皮機能の改善が優れた薬剤なのかもしれません。
そうなると,ほかのメリットを含めて総合的に考えると,カンデサルタンを用いたほうが効果的であると判断してよいと思います。

 

糖尿病の発症抑制を考慮した降圧療法とは?
小田原 
降圧療法中の糖尿病新規発症を抑制するエビデンスを振り返ってみますと,初めての報告がHOPE試験で,ACE阻害薬が糖尿病の発症を32%も抑制することがわかり,ARBのstudyでも解析されるようになりました。
β遮断薬と比較したLLIFE試験,プラセボが対照のCHARM試験,そしてVALUE試験やCASE - J試験では,Ca拮抗薬と比較しています。
このなかには,糖代謝を悪くする降圧薬と比較した試験もありますが,いずれも,ARB群が糖尿病の新規発症を抑制しています。
ACE阻害薬を用いたDREAM試験では,糖尿病の発症抑制は認められませんでしたが,糖代謝は改善しています。 
高血圧症の治療は,血圧を下げることが第一義です。
一時代前に比べて,降圧効果が優れた薬剤が多い現代では,そのなかで,どのような薬剤をベースにするかが大切で,リスクを1つでも減らすために,糖代謝に好影響を与えるRA系抑制薬は第一選択薬に入るでしょう。
IGTはもちろん,糖尿病をすでに認める方も,その悪化を防ぐためにも,ベース薬として優れています。

光山 
HIJ-CREATE試験では高血圧症を伴う冠動脈疾患患者さんを対象にしていますが,ACE阻害薬と比較しても,カンデサルタンが糖尿病の新規発症リスクを63%も低下させましたね。

小田原
その発表の少し前にネットワーク・メタ解析という方法で各種降圧薬の糖尿病発症リスクが報告されました。
それによると,糖尿病の発症抑制効果は,ACE阻害薬よりもARBのほうがやや優れる傾向にありました(図5)。
HIJ - CREATE試験については,まだ,AHAのlate-breakingで発表になったばかりなので詳細がわかりませんが,もし,投与量などの条件が同等であるとすれば,ARBが優れていることの証明になりますね。
ただ,一番大事なのは,直接比較することですね。

横井 
繰り返しになりますが,現代人のCHDはプラークの破裂によって突然起こります。
それが,心臓突然死にもつながるので,プラーク安定化のためにもリスクを増やさないことが大切です。
糖尿病になりにくい降圧薬があるのなら,患者さんのためにも,それを選択すべきです。
 
もう1つ付け加えたいのが,高血圧症に糖尿病を合併すると腎機能が低下しやすくなります。
腎機能が低下すると,PCIを行う際に,造影剤腎症を懸念しなければいけません。
そして,何よりも院内死亡率が高く,長期予後も悪くなります。

HIJ - CREATE試験の対照群の7割以上には,腎保護のあるACE阻害薬が投与されていたにもかかわらず,カンデサルタンが腎機能低下例のCVDを21%も抑制しました。
非常にインパクトのある成績です。
臨床のあらゆる場面で,カンデサルタンの効果が発揮されると期待できる成績です。

光山  
本日は,糖尿病を専門とされる先生,そして,循環器疾患を専門とされる先生から,高血圧症と糖尿病の合併について興味深いお話を伺うことができました(表)。
糖尿病の新規発症を抑制することは臨床的にも非常に意義深いことを,あらためて実感しました。

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?phrase=OGAKI&perpage=0&order=0&page=0&id=M41160941&year=2008&type=allround
(図表についてはこのサイトで確認下さい)

出典 Medical Tribune 2008.4.17
版権 メディカル・トリビューン社

 

読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。
他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
「井蛙内科/開業医診療録(2)」
http://wellfrog2.exblog.jp/?2008.5.21
「井蛙内科/開業医診療録」~2008.5.21 
http://wellfrog.exblog.jp/ 
 があります。

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皆さん、グーグルスカラーを活用してみえますか。
かくいう私は、恥ずかしながら今日の今日まで知りませんでした。
たまたま、きょう届いた卒業大学の同門誌を読んでいて「グーグルスカラーの検索の入り口には、巨人の肩の上に立てば、つまり先人の研究成果を学べば、遠くが見渡せるという標語が掲げてあります。医学・医療も先人の業績の上に成り立つ科学とその応用ですから、基礎知識は詰め込まなくてはいけない。・・・」という文章に目が止まりました。
えっ。
そんな言葉聞いたたことないんだけど。
早速ググッてみました。
http://scholar.google.co.jp/schhp?hl=ja
http://scholar.google.co.jp/
http://wiredvision.jp/archives/200411/2004111904.html

これからは、このグーグルスカラー。

思いっきり利用したいと思います。 

 

急性冠症候群患者の高血糖に全米規模の検討を
AHAが学術声明
〔米テキサス州ダラス〕米国心臓協会(AHA)は「高血糖と急性冠症候群」と題した学術声明をCirculation(2008; 117: 1610-1619)に発表した。
急性冠症候群(ACS)のため入院した患者の高血糖を巡る問題を取り上げ,全米規模の検討の必要性を強調している。

参考事項としてのガイダンス
今回の声明の執筆委員長でカリフォルニア大学サンフランシスコ校と復員軍人局医療センター(ともにカリフォルニア州フレズノ)心臓病学科長のPrakash Deedwania教授は「ACS患者の4分の1~2分の1は病院到着時に高血糖を呈しているが,高血糖は死亡率上昇に強く関連するにもかかわらず無視されることが多い」と指摘している。
多くの研究は,ACSによる入院中に高血糖が見られる患者では死亡率と院内合併症の発症率が上昇することを示しているが,医師の知識の差が大きい。
 
同教授は「高血糖とアウトカム不良との関連に関するわれわれの理解には欠けている点が多くある」と述べ,ACS患者における血糖値上昇が心筋傷害のマーカーやその原因であるのか否かは不明である点を挙げている。
 
ACS患者の血糖管理に関するエビデンスは現在集積中のため,医療チーム自体が重要な意志決定を強いられる。
AHAが学術声明を発表するのは明確な治療プロトコルが存在する場合であるのが通例だが,今回の分野では決定的なエビデンスに欠けるため,同声明では「一般的な参考事項」と題したガイダンスを示している。
 
同声明では,血糖値の上昇を呈する全ACS患者で院内評価の一環として糖尿病や耐糖能異常の有無を検討し,入院時に著しい高血糖が見られ集中治療室(ICU)で治療中のACS患者では血糖値を90?140mg/dLに維持することを推奨している。

国家的な努力が不可欠
Deedwania教授らは「米国立衛生研究所(NIH)などの機関は,ACS患者の高血糖に関する重要な疑問点の解明に向けて,適切な大規模ランダム化臨床試験を計画すべきである。こうした試験を実施しなければ,死亡率の低下に向けた治療の開発・実施が不可能である」と指摘。医療の改善が速やかに得られる研究に支援するといったNIHの最近の意向にも沿うとしている。
 
同教授は「われわれは救命と医療費削減について議論しており,これらの重大な問題の解決には国を挙げての努力が必要である」と述べている。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41170132&year=2008

出典 Medical Tribune 2008.4.24
版権 メディカル・トリビューン社

宮下 孝一  「バラ」   F6号   
http://page12.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/p118269878
 

<参考サイト>
■ 高血糖は予後不良の予測因子
救急部の初発急性心筋梗塞は高リスク群に
〔ニューヨーク〕 三軍總醫院(台湾・台北)救急部のChin-Wang Hsu博士らは,3 年間にわたる後ろ向きコホート研究により,「救急部における高い初期血糖値は初発急性心筋梗塞(AMI)患者における短期・長期予後不良の予測因子である。
したがって,救急部における初期血糖値の高い初発AMI患者は高リスク群とみなすべきである」と,詳細をAnnals of Emergency Medicine(2007; 49: 618-626)に発表した。

生存曲線に有意差
Hsu博士らは「高血糖は性,年齢,糖尿病の状態,梗塞部位,再灌流療法とは独立したリスクで,血糖値そのものがAMI後の心機能不良の基本マーカーとなる」と述べている。

中略

高血糖の解釈は慎重に
短期イベント,長期イベントともに救急部における初期血糖値や糖尿病状態との間に有意な関連性は認められなかった。
研究開始時点で糖尿病と診断されていたのは正常群では16%,中間群では24%,高値群では60%であった。また,糖尿病を合併していたAMI患者には高齢者と女性が多かった。
 
糖尿病患者では短期イベントリスクが有意に高かったが(OR 2.25,95%CI 1.25~4.04),長期イベントリスクは有意に上昇していなかった。
 
Hsu博士らは「AMI患者における初期血糖値は糖尿病に交絡されやすく,治療開始前の血糖値は信頼できないため,AMIストレスへの実際の血糖の応答を反映していない。
高血糖症は急性ストレスへの血糖応答として代表的なものではないことから,糖尿病を合併しているAMI患者に対する短期予後ないし院内死亡のマーカーとはならない」と述べている。
 
同博士らによると,高血糖症の短期作用と長期作用の機序は大幅に異なっている。
短期的アウトカムに関しては急性ストレス関連イベントが指摘され,とりわけ重要なのはストレスホルモンにかかわる機序,あるいは梗塞の範囲それ自体である。
ストレスが激しいほど血清カテコールアミン分泌が高まり,血糖応答も刺激される。血漿カテコールアミンはAMI後の心原性ショックリスク上昇に関連していると報告されている。
一方,高血糖症は梗塞規模の大きさの結果で,重度の心筋損傷の範囲を反映している。

基盤に耐糖能異常
一方,長期予後に強く関連するのは高血糖が血栓形成を促進するとともに,側副血行を抑制するため梗塞が広がることである,とHsu博士らは説明している。
 
また,初期血糖値が高かった患者の75%は,糖尿病を有していたことも長期予後に強く関連していた。
同博士らによると,初期血糖値が高かった患者は血糖管理が不良だった可能性があり,もしそうであれば大血管疾患と微小血管疾患の有病率が高まり,長期的に有害な心血管イベントに影響する。
 
しかし,初期高血糖は糖尿病と診断されていなかった患者にも長期的問題を引き起こす可能性がある。
これらの患者の一部は未診断の糖尿病,また一部は糖代謝障害であるかもしれない,と同博士らは示唆している。
 
先行の前向き研究によると,AMI後のグリコシル化上昇は,非糖尿病患者においても,未診断の糖尿病患者においても 4 ~8 週間持続する(Chandalia HB, et al. Lancet 1984; 2: 811-812)。
 
同博士らは,この知見からも今回の研究の知見からも,ストレス性高血糖症は基盤にある耐糖能異常を反映するものであると結論している。
そうであれば,このような基盤となる耐糖能異常が,AMI後の短期的な心臓アウトカムと長期的な心血
管イベント双方のリスク上昇に関連しているはずである。

ストレス性高血糖症の管理は不要
Hsu博士らは「ストレスレベルが低下するまでAMI患者に対してストレス性高血糖症をコントロールする必要はないだろう。耐糖能異常あるいは明瞭な糖尿病が48~72時間または2 ~4 週間持続するなら,長期的な有害心血管イベントを予防するために,高血糖に対する強力な代謝治療が必要となるであろう」と示唆している。
 
今回の研究は,初発AMI中の初期血糖値に焦点を当てた点でユニークであるが,血糖値とAMIとの関係についてはこれまでもよく研究されている。
いくつかの先行研究によると,入院時の高血糖は心不全,心原性ショック,AMI後死亡などの心臓アウトカムの独立した予測因子で,このことは糖尿病患者に関しても非糖尿病患者に関しても実証されている。
 
多くの研究が示すように,入院時高血糖症のAMI患者においては,短期,長期の有害イベントリスクとも高まる。
 
同博士らは「高血糖症は過剰なストレスホルモン応答に関連し,この応答は梗塞範囲にも梗塞規模にも無関係である」との興味深いコメントを寄せている。

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?phrase=%E6%80%A5%E6%80%A7%E5%BF%83%E7%AD%8B%E6%A2%97%E5%A1%9E%E3%80%80%E8%A1%80%E7%B3%96&perpage=0&order=0&page=0&id=M4051861&year=2007&type=allround

出典 Medical Tribune 2007.12.20
版権 メディカル・トリビューン社

■ JACSSの特徴は症例数が非常に多いことで,このため興味深いデータが数多く得られている。その1つが,院内死亡率と血糖値の関係を調べた成績である。入院時の血糖値を6段階に分けて院内死亡率との関係をみたところ,血糖値が高い患者ほど死亡率が高かった。このデータから,急性心筋梗塞患者では,入院時の血糖値が予後に大きな影響を及ぼしていることがわかる。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?phrase=%E6%80%A5%E6%80%A7%E5%BF%83%E7%AD%8B%E6%A2%97%E5%A1%9E%E3%80%80%E8%A1%80%E7%B3%96&perpage=0&order=0&page=1&id=M3830361&year=2005&type=allround
出典 Medical Tribune 2005.7.28
版権 メディカル・トリビューン社


■入院時に血糖値を測定したAMI患者1,253例を検討した結果,血糖値の高い患者ほど,院内死亡率が高かった。このデータからAMI患者では,血糖値が予後に影響を及ぼしていることが示唆された。同氏によると,AMI患者にPCIを施行して冠動脈を開いても,血糖値が高い患者の場合には,No-reflow現象?すなわち血管閉塞が解除された後にも血流が再開しない現象?が発生して,死亡につながるケースが多いという。そのため,ACSの発症予防には,血糖コントロールが重要だと強調した。
出典 Medical Tribune 2006.9.7
版権 メディカル・トリビューン社

<番外編>
80歳以上ではECG標準値の変更を
〔米オハイオ州クリーブランド〕メイヨー・クリニック(ミネソタ州ロチェスター)救急医療学のLatha Stead助教授らは,年1回の定期健診のために同クリニックを受診した80歳以上の患者702例の心電図(ECG)を分析した結果,80歳以上の患者に対しては,ECGを評価する際に標準的なカットオフ値を変更すべきであるとの知見をAmerican Journal of Geriatric Cardiology(2008; 17: 87-91)に発表した。

間隔のカットオフが最大2倍
Stead助教授らは,80歳以上の集団では,ECGのPR間隔,QRS間隔,QT間隔の延長を評価するための平均的なカットオフ値が標準値よりも大きくなることを見出した。
また,参加した331例の男性では,間隔の差が有意に増大していた。
 
被験者の約18%は心疾患の既往を有していたため,標準域は心疾患の既往歴がないか,あるいは心疾患治療薬を服用しているいわゆる「健康な」小集団578例に基づいて設定された。
 
被験女性のECG上の各間隔の平均的なカットオフ値は,文献で報告されている数値よりも高くなっていた。
男性ではその差がさらに大きく,文献にある数値の2倍の例もあった。
 
これらの知見から,同助教授は「80歳以上の患者に対しては,年齢と性の観点からECG所見の標準値を見直したほうがよいだろう」と推奨している。
 
さらに,同助教授は「高齢者の割合が急速に増加している現状を考えると,今回の研究は特に意義深い」とし,「中年の集団には標準であることが,高齢者層では標準になりえない可能性がある」と付け加えた。

出典 Medical Tribune 2008.4.24
版権 メディカル・トリビューン社

 

読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。

他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
「井蛙内科/開業医診療録(2)」
http://wellfrog2.exblog.jp/
2008.5.21~ 「井蛙内科/開業医診療録」 
http://wellfrog.exblog.jp/ 
~2008.5.21
があります。

 

 

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INNOVATION試験

戯れ言たれる侏儒 / 2008.06.07 00:37 / 推薦数 : 0

第51回日本腎臓学会
2008年5月30日〜6月1日 福岡

の発表内容で勉強しました。

2型糖尿病患者に対するテルミサルタンの腎症進展抑制効果
降圧以外の機序も関与している可能性−−INNOVATION試験

岡山大腎・免疫・内分泌代謝内科学の槇野博史氏は6月1日、第51回日本腎臓学会のLate Breaking Clinical Trialsにおいて、昨年Diabetes Care誌に発表されたINNOVATION試験の最新解析結果も合わせ報告し、高用量テルミサルタンによる早期腎症抑制作用に「降圧を介さない機序」が関与している可能性を示した。

INNOVATION(Incipient to Overt: AngiotensinII Blocker Type 2 Diabetic Nephropathy)試験は、微量アルブミン尿を認める2型糖尿病患者に対するテルミサルタンの顕性腎症の進展抑制作用をプラセボと比較した無作為化二重盲検試験である。

514例が、テルミサルタン80mg/日群(168例)、テルミサルタン40mg/日群(172例)とプラセボ群(174例)に割り付けられ、最低1年間追跡された(平均1.3年間)。

その結果、テルミサルタン群では用量を問わず、プラセボ群に比べ顕性腎症への移行が有意に抑制された(いずれもp<0.001)。

また、本試験参加者の32%に相当する正常血圧患者のみで検討しても同様で、テルミサルタンは用量を問わずプラセボ群に比べ顕性腎症への移行を有意に抑制していた。

一方、微量アルブミン尿の正常化は、テルミサルタン80mg/日群の21.2%、40mg/日群の12.8%に認められ、いずれもプラセボ群の1.2%に比べ有意に高値だった(p<0.001)。

今回の発表では、試験開始時からの降圧度別に見た「顕性腎症への移行率」が報告された。

収縮期血圧の降圧度4分位別に「移行率」を比較すると、テルミサルタン40mg/日群では降圧度が大きくなるに伴い「移行率」は減少したが、80mg/日群では血圧が低下しなかった患者でもプラセボ群、40mg/日群に比べ「移行率」は著明に減少していた。

「高用量テルミサルタンでは、降圧以外の機序も作用して顕性腎症への移行を抑制している可能性がある」と槇野氏は指摘した。
 
なお、INNOVATION試験のデータを用いた費用対効果解析も紹介され、テルミサルタン80mg/日による治療は、40mg/日に比べ費用対効果は優れているとのデータが示された。
 
コメンテーターを務めた名古屋市立大学心臓・腎高血圧内科学の木村玄次郎氏は、わが国では糖尿病性腎症発症抑制の改善が米国白人に比べ劣っている可能性を指摘し、日本人でこのようなエビデンスが得られている以上、糖尿病患者の腎機能低下早期から積極的に介入すべきだろうと述べた。

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/jsn2008/200806/506685.html
日経メディカル オンライン 2008.6.3

版権 日経BP社

 

 マックナイト シルク 「アリゾナ・ゴルフ」 リト
http://page15.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/t75650003

 

<コメント>
「80mg/日群(高用量)では血圧が低下しなかった患者でも・・・」
何か釈然としません。

高用量でも血圧が下がらなかった。

テルミサルタンについては最近「ONTARGET」が話題になりました。
最近、コメントがボツボツそろってきて動画配信も昨日このブログで紹介させていただきました。
「ONTARGET」の結果が今一つだったので、以前このブログで「製薬メーカーは、このエビデンス(?)をどのように宣伝していくんでしょうか」といった内容のいことを書きました。
きょう届いたMedical Tribune誌に見開き広告にありましたありました。
黄色一色のスタンドの(サッカーの?)観客が、ど派手な馬鹿でかい「ONTARGET」の布を広げている広告。

他の製薬メーカーの広告も振り返って考えてみればいくつエビデンスを作ったかの世界。
結果(内容)については、知る人ぞ知るといったわけです。

なんだそうだったんだ。

 

<参考ブログ>
INNOVATION
http://www.ebm-library.jp/circ/doc/html/c2002507.html
日本人の高血圧および正常血圧の2型糖尿病患者において,AII受容体拮抗薬telmisartanの早期糖尿病性腎症から顕性腎症への進展抑制効果を検討する。
一次エンドポイントは顕性腎症。
二次エンドポイントは尿アルブミン/クレアチニン比(UACR)の変化,早期腎症から顕性腎症進展率,正常アルブミン尿回復,クレアチニン濃度の変化など。

http://www.ebm-library.jp/circ/doc/html/ish2006/INNOVATION.html
2型糖尿病患者において,正常血圧か高血圧かを問わず,telmisartanの40mg,80mg投与は,プラセボに比べ顕性腎症への進展を有意に抑制する腎保護効果を有していることが示された。

<追加>
日本内科学会誌 第97巻 第5号・平成20年5月10日号
P994~1001
に東北大伊藤貞嘉教授が「腎疾患と降圧剤」という総説を書かれています。
昨日の
SMART
http://blog.m3.com/reed/20080606
での伊藤先生のコメントの参考になる説明が図2(腎臓の構造)、図3(Strain vessel)によってわかりやすくされています。
■ 「RA系抑制薬の降圧効果と尿蛋白減少効果に関する用量の間には乖離がみられる」
(Rossing K,et al Kidney Int 68:1190-1198, 2005)
■ 微量アルブミン尿とCVDとの関連は、strain vessel(細小動脈)障害が基盤にあると推定できる。


<番外編>
今朝のNHKのニュースで研修医不足という特集を取り上げていました。
最初に移ったのは企業の就職説明会を思わせる大きな会場。
地方の病院のブースは閑散としています。
医学部自体も都会の大学に人気があるように病院も同じ傾向にあるようです。
医師偏在を象徴するような光景です。

私自身、古い人間なので、就活をしなくていい分医学生はいいなあと以前から思っていました。
しかし、最近は6年生になってからは病院探しで大変なようです。
5年生から病院見学をしているようです。
学生に比べ、採用する病院側の方が大変といった点が学生にとっては救いですが。

研修医が自由に研修先を選ぶことが出来るようになった卒後研修制度。

具体例として今年応募がゼロだった済生会富山病院と定員6人のところ4倍の応募のあった黒部市民病院をとりあげていました。
黒部市民病院では1か月間の海外研修プログラムもあるようです。
そして独自の研修プログラムを作った沖縄の病院も人気のある病院としてとりあげていました。
豊見城中央病院が紹介されていましたが、県内7つの病院で科別のローテートが可能でさらに29施設で研修の提携をしているということでした。

現場を知らない厚労省に医療の生態系を破壊されてめちゃめちゃにされたとぼやいていても仕方がないようです。

何よりも院長自ら説明会に出て勧誘する光景を見て、これって医者のやる仕事って正直思ってしまいました。

まだ開業医でよかったのかも知れません。
しかし開業医の場合には退路がありませんが、院長には・・・。

 

読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。

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昨日の後半です。各分野の先生がこのADVANCE試験についてのコメントを寄せてみえます。

Experts'opinion  ADVANCEの結果から
   
出席者(発言順)
和泉 徹 氏(司会) 北里大学循環器内科学教授
勝谷 友宏 氏    大阪大学大学院老年・腎臓内科学講師
植田 真一郎 氏 琉球大学大学院薬物作用制御学教授
吉村 道博 氏    東京慈恵会医科大学循環器内科学教授

 

和泉 
今回発表されたADVANCEは,ACE阻害薬ペリンドプリルと利尿薬インダパミドの併用による降圧治療の新たなエビデンスとなりました。
 
本日は同試験の結果をもとに,さまざまな角度からご意見を伺っていければと思います。まず,勝谷先生からADVANCEについてご解説いただけますか。

ペリンドプリルとインダパミドの追加治療は 2 型糖尿病患者に多くのベネフィットをもたらす
勝谷 
2 型糖尿病患者では厳格な降圧が心血管疾患の予防に不可欠であることは以前から知られており,UKPDSなどの結果を受けて日本の高血圧治療ガイドラインでも140/90mmHg以上で薬物治療を開始することが勧告されています。
ガイドラインでの目標血圧値は130/80mmHgですが,ADVANCEでは従来の試験で達成されなかったこの数値により近づけるべく,降圧薬の追加治療を行った場合に予後にどのような影響があるかが検討されました。
さらに 2型糖尿病患者が現在受けている血圧・血糖・血清脂質に対する一般的治療にペリンドプリルとインダパミドの常用量が追加されたということで,われわれが日常で実施している治療環境と乖離しないデザインであること,また,糖尿病で最も問題となる大血管/細小血管障害および心血管死が一次エンドポイントに設定されていることが特徴と言えます。
 
試験に参加した 1 万1,140人中,フォローアップを完遂できたのは追加治療,プラセボ群とも全体の90%近くであったほか,対象の 4 分の3は当初割り付けされた状態で試験を終了できていたということで非常に忍容性に優れていました。また,最終的な到達血圧平均値も135.6/73.6mmHgと従来の同種の試験に比べ最も厳格なレベルに達しています。
 
おもな結果については前出の報告記事の通りですが,今回の発表で最も強調されていた点の 1 つに両薬剤を用いた 5 年間の治療によるNNTがあります。
主要血管障害では66,死亡に関しては79,冠動脈疾患は75,腎イベントでは20ということで,そのベネフィットはかなり大きいと評価できます。
 
今回,利尿薬が投与されるということで糖・脂質代謝への影響も注目されたのですが,試験開始から終了時まで特に悪影響は認められませんでした()。

和泉 
対象患者は一般的な治療を受けている方ということでしたが,背景因子についてはどのような印象をお持ちですか。

勝谷 
糖尿病専門外来を受診する患者というより,われわれ循環器内科医あるいは一般内科医が日常診療しているタイプの症例と考えられます。

和泉 
今,ご紹介いただいた通り,ADVANCEでは厳格な降圧が糖尿病における血管合併症および死亡の抑制に直接的な好影響をもたらすことが証明されたわけですが,同試験で用いられた 2 つの治療薬剤が今回の結果にどのように寄与しているのかを話し合っていきます。
既にいくつかの大規模臨床試験により,高血圧性臓器障害に対するペリンドプリルとインダパミドの併用治療の有用性が示されていますが,
ACE阻害薬と利尿薬の組み合わせがよいとされる理由はどういうところにあるのでしょうか。

植田 
MRCやINSIGHT,ALLHATといった臨床試験から,利尿薬の単独・高用量投与は効果・副作用等の面から限界があることが明らかになりました。
特に,ALLHATでは,ハイリスク高血圧患者を対象としていたにもかかわらず,ACE阻害薬と利尿薬を併用できないプロトコールが結果に悪影響を及ぼしたと私は考えています。
その後,PROGRESS,さらにはEUROPAの糖尿病患者によるサブ解析PERSUADEなどでペリンドプリル単独,あるいはペリンドプリルとインダパミドの併用がリスクの大小にかかわらず患者の予後を改善させることが証明されました。
また,ADVANCEに少し似たデザインの試験にCAPPPがあります。
この試験そのものは,封筒法が不完全だったために正当な評価が難しいとされていますが,糖尿病合併高血圧患者を対象としたサブ解析では,ACE阻害薬に利尿薬を追加されている割合が高く,心筋梗塞の発症抑制に優れるとの結果が出されており,今回のADVANCEの結果も全く矛盾しないと言えます。

ACE阻害薬と少量の利尿薬は病態・薬理の両面から合理的な組み合わせ
和泉 
続いて薬理学的な面から 2 つの薬剤の組み合わせがなぜ合理的かを探っていきます。
吉村先生は心・血管の病態生理におけるレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)のご研究をされていますが,その観点からご意見をお聞かせいただけますか。

吉村 
ADVANCEにおいても両薬剤の併用によりアルドステロンの作用がかなりきっちりブロックされていることがよい結果につながったのではないかと推測しています。
アルドステロンがRAASの最終産物であること,また,アルドステロンがNaと水分貯留を介して心不全や高血圧性臓器障害に深く関与していることはよく知られています。
私どもは組織局所のアルドステロンが循環アルドステロンと同様にこれらの病態に関係することを見出したほか,ペリンドプリル等のRA系阻害薬が局所のACEとともに局所アルドステロン合成を抑制することを報告しています(図 5)。


ほかにもACE阻害薬はNOの産生増加などを介して心保護に働くことが知られています。
また,インダパミドはNaの尿中排泄を介してアルドステロンと食塩の相互作用を結果的に減弱させると思われますので,ペリンドプリルとの併用は大変理に適っていると言えるでしょう。
もう 1 つ,糖尿病,特に腎障害併発例ではRA系阻害薬単独投与によるカリウム上昇が懸念されますが,これも少量のインダパミド投与によりカリウム排泄が期待できます。
以上のことから両薬剤の併用は相乗的な降圧効果と好ましくない作用を減弱させることにより,臓器保護の観点からも好ましいと考えられます。

植田 
利尿薬を追加することによって減塩と類似したメカニズムでアルドステロンの毒性を弱めるというのは大変興味深い考えですね。

吉村 
ポイントはアルドステロン単独ではなく,Na貯留と一緒になることで悪影響をもたらすというところで,既にいくつかの報告を出しておりますが,今後も検討を重ねていきたいと思っています。

和泉 
植田先生は薬理学の観点から両薬剤についてどう評価されますか。

植田 
吉村先生も指摘されたように私も以前からACE阻害薬と少量の利尿薬の併用が効果・副作用の面からもよい組み合わせであることを提唱してきました(図 6)。


また,糖尿病ではインスリン抵抗性を介して遊離脂肪酸(FFA)の上昇が起こり,血管内皮機能の低下など生体に種々の悪影響をもたらします。
私どもはペリンドプリルなどがFFA上昇による血管内皮機能低下を改善することを報告しています(図 7)。


利尿薬が血管内皮機能にどういう影響をもたらすかは明らかにされていませんが,私どもの検討ではACE阻害薬単独で十分な降圧が得られない高血圧患者に利尿薬を追加すると,血管内皮機能が改善することがわかっています。
したがって,両薬剤の組み合わせは降圧,臓器保護の観点からも理に適っていると言えます。

和泉 
ありがとうございました。
お二方のお話から,今回の試験結果は従来の臨床試験で得られたエビデンスだけでなく病態・薬理学的な根拠からも裏付け可能であることがわかりました。
同試験で神経ホルモンや酸化ストレスなどによる検討を行えばさらに面白い知見が得られるかもしれませんね。

今後の各種サブ解析にも期待
和泉 
最後にADVANCEの結果をわれわれはどう活かすべきか,また今後どのようなデータを期待されるか等お話いただけますか。

勝谷 
先生方も指摘されていたようにRAAS,Naを意識した治療というのがポイントと考えています。
日本でも高血圧学会が減塩キャンペーンを推進していますが,日本人はもともと食塩感受性がかなり高い民族ですので,普段の減塩等もあわせて心がければ,ADVANCEで実施された治療により,さらなる予後改善が期待できるのではないでしょうか。
また,同試験ではゲノム別のサブ解析も進められており,人種による予後の違い等,今後さらに明らかにされるようですので,注目していきたいと思います。

植田 
試験での投与量が両薬剤とも日本での常用量ですので,われわれにとっても結果解釈がしやすいのがよいですね。
また,糖尿病を合併した高血圧患者の場合,これまで利尿薬が敬遠される傾向にありましたが,同試験では基礎治療がきちんとされていれば,ACE阻害薬に少量の利尿薬を併用した治療で十分な効果と高い安全性が得られたと言えます。
来年以降,血糖管理のアームによる検討結果も発表されるようですが,利尿薬も適切に使えば糖・脂質代謝を損なう可能性は低い,というのは同試験から得られた知見だと思います。

吉村 
同試験では年齢や性別,血圧,これまでの治療歴などに分けて詳細な層別解析が行われましたが,心・腎に関してはあらゆるサブグループで明らかな有用性が確認されており,両薬剤の追加治療がどのようなタイプの患者でも広く効果をもたらすことが期待されます。

和泉 
私自身はQOLに関する検討結果に注目しています。
ペリンドプリルは脳卒中発症後の認知症または認知障害を抑制することがPROGRESSで明らかにされていますし,今回,ADVANCEで対象となった糖尿病患者のなかでも高血圧合併例では認知障害への対策は特に考慮すべき点ですので,ペリンドプリルとインダパミドによる降圧治療が同試験でのQOLにどのような影響をもたらしているかをぜひ知りたいと思っています。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41130481&year=2008
出典 Medical Tribune 2008.3.27
版権 メディカル・トリビューン社

 

<コメント>
楽しみにして読んだわりには少しもの足りない内容でした。
糖尿病患者にあえて(少量とはいえ)降圧利尿剤なのか、インダパミドは非サイアザイドといえるのか、糖尿病に対する影響は担保されるのか、高血圧患者のみでなく正常血圧の糖尿病患者での軽度降圧の意義について触れられていなかったからかも知れません。
何だか自験例に敷衍して、その紹介になっているような印象を受けてしまいました。
 

 

今日届いた「日本心臓病学会誌」1(3):2008 
2008.5.15発行
の広告です。

ペリンドプリル(商品名コバシル)のエビデンスとして
PROGRESS、ASCOT-BPLA、EUROPAそして今回の
ADVANCEをとりあげています。

 

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2型糖尿病に対して積極的に降圧を図ると利益があるかどうかという試験です。
どうやら高血圧の有無にかかわらずペリンドプリル(日本での商品名:コバシル)とインダパミド(日本での商品名:ナトリックス)を併用して使用するというユニークな試験です。
投与量も各々4mmHgと1.25mgと珍しく国内での投与量です。
これは軽度の降圧を狙ったものかも知れません。
高血圧患者の降圧というより、糖尿病患者における降圧(ここでは血圧低下と表現)に主眼がおかれています。
循環器専門医からみると少し奇異な試験です。
当院でも両薬剤を置いてあるため、興味深く読みました。

ここで少し気になるのは糖尿病患者、に少量とはいえ利尿剤を併用している点です。
「おくすり110番」でインダパミドを調べてみました。


<インダパミド  製品例 : ナトリックス錠 >

チアジド系に近い利尿薬で、作用的にもほぼ同じです。チアジド系利尿薬は、日本では処方される機会が少ないのですが、海外のいくつもの臨床試験で、寿命を延ばすことが証明されています。少量であれば副作用もほとんどなく、併用薬としても優れています。また、古くからある薬で、値段(薬価)が安いというメリットがあります。
チアジド系に比べ、低カリウム血症の副作用が少ないとされます。
http://www.interq.or.jp/ox/dwm/se/se21/se2149012.htm 

ESC2007 ADVANCE試験結果より
2型糖尿病患者に対する積極的な血圧低下がもたらすベネフィットが明らかに
世界糖尿病機構(IDF)によると,糖尿病の新規発症患者は毎年700万人のペースで増え続けており,その大部分は2型糖尿病であるという。
また,2025年までには3億8,000万人,実に世界の全成人の7.1%が糖尿病に罹患するとの予測も出されている。
UKPDS等,各種大規模試験において,2型糖尿病における厳格な血圧・血糖コントロールの重要性が確立されてきた。しかし,血圧値をさらに下げるために治療を追加した場合,それが合併症の発症抑制にどの程度寄与するかは明らかにされていない。
その問題に対するひとつの答えとなる試験,ADVANCE(Effects of a fixed combination of perindopril and indapamide on macrovascular and microvascular outcomes in patients with type 2 diabetes mellitus)が2007年の欧州心臓病学会(ESC)で発表された。
ここではおもな結果とともに,高血圧診療のエキスパートによるディスカッションを紹介する。

ADVANCE・・・2型糖尿病患者における血圧低下の意義を検討した最大規模の無作為化比較臨床試験
ADVANCEでは,現在既に血糖,血圧,血清脂質等に対する治療を受けている 2 型糖尿病患者 1 万1,140例を対象に,アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬ペリンドプリルと利尿薬インダパミドの併用療法が心血管疾患をはじめとする各種合併症の発症にどのような影響をもたらすかについて,無作為化比較試験による検討が行われた(図 1)。
試験には55歳以上の 2 型糖尿病患者で,
1)65歳以上,
2)大血管/細小血管障害の既往がある,
3)糖尿病の確定診断から10年を超える,
4)その他の主要リスク因子を少なくとも 1 つ以上有する,
いわゆるハイリスク症例が登録された。
試験開始前の各群の背景因子に差は見られず,75%の患者が既に降圧薬を服用していた。

平均5.6/2.2mmHgの血圧低下により全死亡・心血管死が有意に抑制
全患者はペリンドプリル 2 mgとインダパミド0.625mgによる導入期間を経て,ペリンドプリル 4 mgとインダパミド1.25mgを投与した実薬群と従来治療を継続したプラセボ群に無作為割り付けされた。
4.3年間のフォローアップ期間中の血圧の平均値はプラセボ群が140.3/77.0mmHgであったのに対し,実薬群では134.7/74.8 mmHgであった。
また,追跡期間中の実薬群とプラセボ群の血圧下降度の差は実薬群で平均―5.6/2.2 mmHgと有意であった(図 2)。
 
一次評価項目である大血管/細小血管合併症の発症は実薬群で有意に低く(15.5% vs 16.8%,相対リスク低下率 9 %,p=0.041),全死亡についても実薬群で相対リスクが14%と有意な低下が認められた(図 3)。
全死亡のうち,血管死あるいは非血管死の死因別解析では血管死において実薬群で18%,相対リスクの有意な低下が見られた一方,非血管死では有意差は認められなかった。

ペリンドプリル+インダパミド追加治療はすべての2型糖尿病患者に有益
また,試験開始時の既往,服用薬剤等の背景因子別解析では年齢,性別,血圧,血糖値,降圧薬や高脂血症治療薬,抗血小板薬の服用等にかかわらず,ペリンドプリルとインダパミドによる追加治療の有益性も明らかにされた(図 4)。
 
同試験の統括責任者の 1 人,オーストラリア・シドニー大学のSteve MacMahon氏は今回の結果について,IDFが指摘する2010から15年の全世界における糖尿病人口のうち,半数がADVANCEで実施されたペリンドプリル+インダパミドによる追加治療で予後改善が期待できるだけでなく,この 5 年間で150万人の死亡が回避可能との試算を示した。
 
同試験では引き続き血糖降下薬グリクラジドの追加により血圧に加え,血糖値のさらなる低下が 2 型糖尿病患者に相乗的な予後改善をもたらすかが検討されており,今後の動向が注目される。

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41130481&year=2008
出典 Medical Tribune 2008.3.27
版権 メディカル・トリビューン社
 

<コメント>

明日は専門家による、突っ込んだディスカッションをとりあげる予定です。

最初に述べたように、この試験がユニークなので私自身明日が楽しみです。

 

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Actos Round table Discussion
循環器領域で期待されるピオグリタゾンの役割
―糖尿病患者の動脈硬化抑制にはたらくメカニズムに迫る

心房細動に対するピオグリタゾンの影響
南野 
心房細動は,高齢者の脳卒中の多くを占める心原性脳塞栓症の原因です。
近年,心房細動は,酸化ストレスや炎症によって,心房の構造的および電気的リモデリングが誘発されて起こる「炎症性」の疾患としてとらえられています。

われわれは,L-NAME(NO合成酵素阻害剤)で高血圧を誘発したラットを用いて,心房細動や心房リモデリングについて検討したところ,ピオグリタゾン投与によって拡張期機能障害や,心房の線維化(構造的リモデリング)が抑制されました。

また,経食道高頻度ペーシングで心房細動を誘発したラットにピオグリタゾンを投与したところ,心房細動の持続時間が短縮し,電気的リモデリングも抑制しました(図4)。


 
ピオグリタゾンには,炎症マーカーを改善するデータがあることから,炎症や酸化ストレスを改善することで,脳卒中の上流にある心房細動を減少させたと考えられます。

Chilton 
こうしたメカニズムが,PROactive試験において,脳卒中の再発を47%減少させたという結果につながった可能性がありますね。

ピオグリタゾンの脂肪組織への影響
Chilton 
脂肪細胞の周囲のマクロファージからは,サイトカインが分泌されます。
ピオグリタゾンは,内臓脂肪を皮下へ移動させることがわかっており,脂肪毒性からの保護作用が示唆されます。
 
さらにTZDには,肝臓や心臓などのTG除去作用も報告されています。肝臓のTG除去は,線維化を抑制し肝機能を改善します。
また,ラットを用いた心臓での検討では,TZD投与によって,心筋のTG除去とともに,心機能改善が認められました。

ピオグリタゾンの心不全への影響
小室 
以上のように,ピオグリタゾンは心血管系に好影響を及ぼすことが示唆されていますが,浮腫と心不全を懸念する医師は少なくありません。
PPAR-γの活性化は,腎臓でのナトリウム再吸収を促進するため,浮腫が起こることがあります。
実際に,複数の臨床試験で,ピオグリタゾン投与群ではコントロール群と比較し,浮腫が多く発現しています。
したがって,ピオグリタゾンは,心不全またはその既往のある患者で投与禁忌,心疾患の合併・既往に対しては慎重投与となっています。
ピオグリタゾンの浮腫・心不全への影響については,どのようにお考えですか?

Chilton 
PROactive試験では,プラセボ群に比してピオグリタゾン投与群で心不全が多くみられましたが,入院に至るケースや,心不全による死亡率はプラセボ群と変わりませんでした。
ピオグリタゾンは,心臓に構造的ダメージを引き起こすのではなく,あくまで体液量に影響を及ぼすと考えています。

小室 
国内のピオグリタゾンの市販後調査PRACTICALによると,心不全発現率は,心不全既往患者で5.2%,心血管イベント既往では1.3%で,心血管イベント既往のない患者では0.04%でした。
ピオグリタゾンは,心不全患者への投与を避けることが大切です。

Chilton 
糖尿病で心機能障害がある場合,体液貯留は心不全のリスクを高めます。
糖尿病患者には拡張期機能障害が見られることが多いことからも,薬剤投与前に心不全の有無を調べることは,非常に重要です。

小室 
臨床症状や身体所見から心不全かどうかの診断は難しいことがあるために,糖尿病医とわれわれ循環器医が策定した,ピオグリタゾンを適正に用いるための
Recommendationでは,BNP測定を勧めています。

Chilton 
たしかに,肥満がある患者などでは,聴診が難しい場合がありますね。
BNPを用いて,心不全をスクリーニングするのはとてもよいことだと思います。
 
そして,ピオグリタゾンの浮腫発現は投与開始直後に多いので,その時期は特に注意深い観察が必要です。
わたしは,ピオグリタゾン投与前にまず患者に食事・運動療法を徹底し,減量を奨めています。
そして,投与後に体重増加が見られた場合には,水分の貯留であることが多いため,利尿剤を併用投与しています。

小室 
糖尿病患者では,心血管だけでなく,心機能にも配慮しながら,適切な薬物投与を行っていくのが大切ということですね。

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41180601&year=2008
出典 Medical Tribune 2008.5.1
版権 メディカル・トリビューン誌

 

<参考サイト>
■ チアゾリジン系誘導体(TZD薬)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B5%8C%E5%8F%A3%E8%A1%80%E7%B3%96%E9%99%8D%E4%B8%8B%E8%96%AC
TZD薬:PPAR-γ作働薬やインスリン抵抗性改善薬とも呼ばれ、核内受容体PPAR-γに結合しインスリンの抵抗性を悪化させる様々な因子の転写調節をする。
主として末梢組織のインスリン抵抗性改善にあたる。有効性及び安全性に性差を認め、女性で浮腫を来し易い一方で、小用量で血糖降下作用を見る事が多い。
脂肪細胞に作用しブドウ糖の取り込みを増やす事で血糖が低下する。
その代わり肥満を助長しやすくなる。
塩酸ピオグリタゾン(商品名:アクトスR)だけが現在、国内で上市されている。
最初に商品化されたトログリタゾン(商品名:ノスカールR)は肝障害の死亡例が相次ぎ、その原因の一つとして肝臓での薬の代謝に関わるグルタチオン抱合酵素GSTT1とGSTM1の変異が重なると特に副作用の発症率が高い事が示された。類薬ではトログリタゾン程の肝障害は報告されていないが留意して使用するのが望まれる。
副作用として浮腫や貧血を合併することがあるが、腎でのインスリン感受性亢進のため、Naの再吸収を促進するためだといわれている。
脂肪細胞を分化誘導する一方で骨芽細胞の減少により骨折のリスクが増加するのではないかと云われている。

■ PROactive PROspective PioglitAzone Clinical Trial In MacroVascular Events
http://www.ebm-library.jp/circ/trial_2005.html#aha2005PROactive 2型糖尿病患者(5238例)においてインスリン抵抗性改善薬pioglitazone*の大血管イベントに対する効果を検討しているPROactive studyのサブ解析。
心筋梗塞既往のある2型糖尿病において,pioglitazoneは心筋梗塞の再発リスクを28%低下。
無作為割り付け,プラセボ対照,多施設(欧州の19国321施設)
◆追跡期間は2.5年以上。平均追跡期間は2.85年
◆2445例。ランダム化の6ヵ月以上前に
心筋梗塞(MI)を発症。
95%以上が既往のため至適な心臓薬物治療を受けていた。
◆それぞれが受けている糖尿病治療薬に試験薬を追加投与。pioglitazone群1230例,プラセボ群1215例
◆pioglitazone群はHbA1c,トリグリセリド,HDL-Cを改善。pioglitazone群はプラセボ群に比べ致死的および非致死的MIを28%有意に抑制(P=0.045; 3年間のNNTは22)。
さらに同群は急性冠症候群(ACS)を37%有意に抑制し(P=0.035),心臓複合エンドポイント(非致死的および無症候性MI,血行再建術,ACS,心臓死)のリスクを17%低下(P=0.065)。
重篤な有害事象はpioglitazone群47%,プラセボ群51%。pioglitazone群で心不全が増加したが死亡の絶対数に差はなかった(1.8% vs 1.7%)。

他に
「井蛙内科/開業医診療録」 
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(一般の方または患者さん向き) 

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Actos Round table Discussion
循環器領域で期待されるピオグリタゾンの役割
―糖尿病患者の動脈硬化抑制にはたらくメカニズムに迫る
大血管障害の発症抑制は,糖尿病治療において長年果たされずにいた課題であった。
しかし,近年,PROactive試験とCHICAGO試験で,ピオグリタゾンによる心血管イベントの発症抑制と動脈硬化の進展抑制に関する成績が示された。
さらに,ピオグリタゾンの多彩な動脈硬化進展抑制メカニズムが,次々に報告されている。こうした知見やエビデンスを活かしながら,いかに適切にピオグリタゾンを臨床で用いていくか,循環器医による討論が行われた。

千葉大学大学院医学研究院循環病態医科学 教授
小室 一成 氏(司会) 

University of Texas Health Science Center at San Antonio, Division of Cardiology
Robert Chilton 氏 

埼玉医科大学国際医療センター心臓病センター 心臓内科 教授
小宮山 伸之 氏 

順天堂大学大学院医学研究科 循環器内科学 准教授
宮内 克己 氏 

阪大学大学院医学研究科 循環器内科学 講師
南野 哲男 氏 

 

大血管障害の上流にあるインスリン抵抗性
小室 
糖尿病患者は動脈硬化の進展が著しく,冠動脈疾患を有する糖尿病患者の予後は非常に悪いため,われわれ循環器医にとって難しい臨床課題です。
そうした状況の下,ピオグリタゾンは,インスリン抵抗性改善による血糖低下作用(図1)だけでなく,多彩なメカニズムで動脈硬化の進展抑制に寄与することがわかってきました。


本日は,Chilton先生を迎え,ピオグリタゾンを有効に用いる方法を,循環器医の立場から検討したいと思います。

Chilton 
急性心筋梗塞とリスク因子について検討したINTERHEART試験では,糖尿病と肥満が冠動脈疾患発症リスクの重要な因子として挙げられました。
また,メタボリックシンドロームを合併した糖尿病患者では,大血管障害発症のリスクが高いという報告があります。
実際,血管内超音波(IVUS)で観察したメタボリックシンドローム患者のプラークは,脂質が多く肥厚しているのが特徴です。
また,冠動脈狭窄や不安定プラークを有する患者では,糖尿病とまだ診断されていなくても,インスリン抵抗性がみられることを経験しています。

小室 
心血管イベント発症に及ぼす影響という観点から,高血糖とインスリン抵抗性はどちらが重要でしょうか。

Chilton 
高血糖も重要なリスクファクターですが,むしろ代謝異常そしてインスリン抵抗性が重要ではないでしょうか。
内臓脂肪蓄積が引き起こしたインスリン抵抗性が,高インスリン血症や,LDLを構成するアポ蛋白B,Small dense LDL,遊離脂肪酸(FFA)の増加など危険因子を惹起し,動脈硬化の進展を促進させて心血管イベントの発症に至ると考えています。

 

インスリンと動脈硬化
小室 
インスリンが寿命や老化のメカニズム制御に関わっており,血管でも悪玉因子となることが明らかになってきています。
われわれは,動脈硬化巣で増加している老化血管細胞において,インスリンが細胞老化を促進することを見出しました。老化した血管細胞から,炎症性サイトカインや接着分子などが過剰発現することで動脈硬化が進展すると考えています。
 
一方,
ピオグリタゾンはインスリン抵抗性を改善し,インスリンレベルを低下させることから,血管細胞の老化を防ぎ,動脈硬化の進展を抑制すると考えられます。

 

ピオグリタゾンの脂質への影響
小室 
他のチアゾリジン薬(TZD)の副作用が問題になりましたね?

宮内 
そうですね。しかし,JAMAに掲載された,ピオグリタゾンの19の試験16,390例における心血管イベントをみたメタ解析では,総死亡や心筋梗塞,脳卒中の複合エンドポイントが18%減少しました(図2)。


 
その理由の1つに,脂質に対する影響の違いが考えられます。
LDL-Cの1%の増加は,心血管イベントを1.8%増加させるといわれ,LDL-Cは,心血管イベントの発症に重要な役割を果たします。
ピオグリタゾンはLDL-Cに影響を与えませんが,他のTZDではLDL-Cの上昇が認められました。

Chilton 
PROactive試験で,ピオグリタゾンはTGを減少させ,HDL-Cを増加させました。
また,LDL粒子構成を改善させる点も異なります。

 

ピオグリタゾンのプラーク容積や性状に対する影響
小宮山 
われわれは,IVUSを用いて,プラークの容積や構成成分の変化を検討しています。
 
糖尿病を有する,PCIを施行した安定冠動脈疾患患者26例を対象としたPIGEON試験において,ピオグリタゾン群は,対照群と比較して,6ヵ月投与でプラークの退縮が認められています。
また,プラーク性状に関しては脂質が減少し,線維化の成分が増加していました。
今回の検討では,以前われわれが行ったスタチンを用いた試験と同様の結果が得られました。

Chilton 
動脈硬化が進み,被膜が薄く,破綻しやすくなっている糖尿病患者のプラークが,ピオグリタゾンによって安定化したのですね。

 

再狭窄抑制に対するピオグリタゾンの影響
宮内 
われわれは,ブタのステントモデルを用いて,ピオグリタゾンによるステント後の炎症反応と,内膜肥厚の抑制について検討しました。
 
ピオグリタゾン投与群では,ステント留置3日後に,血管内皮への単球接着およびMCP-1が対照に比べて有意に抑制されました。
また,28日後にIVUSを施行したところ,ステント部位の内膜新生が15%も有意に抑制されました
図3)。


 

これは,ピオグリタゾンが初期の炎症反応抑制を通じて,内膜新生を減少させたことを示しています。

Chilton 
糖尿病患者では,ステント後の血管が治癒しにくいのですが,TZDによって,マウスの血管内皮の再構築が促進されるという報告もあります。
 
ピオグリタゾンはBMSで再狭窄の原因となる内膜新生を抑制する一方で,DESの問題点としてクローズアップされてきた内皮機能の低下を改善する可能性があります。

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41180601&year=2008
出典 Medical Tribune 2008.5.1
版権 メディカル・トリビューン誌

<参考サイト>
INTER-HEART
世界中における初発心筋梗塞(MI)を評価する観察研究MIの最も重要なリスク因子は喫煙,アポリポ蛋白B/A-1比の上昇。
その他の独立したリスク因子は,糖尿病,高血圧,低心理的・社会的スコア,腹部肥満。心臓保護因子は身体活動,フルーツ,野菜の摂取,適度なアルコール。
これらの因子を合わせるとpopulation attributable riskは90.4%。
http://www.ebm-library.jp/circ/trial_2004.html#INTERHEART

PIGEON試験
http://www.ebm-library.jp/circ/doc_japan/J0073.html

PROactive
http://www.ebm-library.jp/circ/doc/html/c2002425.html
2型糖尿病の合併症として大血管イベントが注目されている。
しかし,SU剤等の治療では細小血管症は予防できても大血管イベントについては十分な効果が示せないことが問題であった。
そこで,インスリン抵抗性を背景とした2型糖尿病において,インスリン抵抗性改善薬であるピオグリタゾン(PIO)の効果が期待されていた。
本試験で一次エンドポイントに有効性は示せてはいないが,各種エンドポイントならびに二次エンドポイントに有効性を示したことは,インスリン抵抗性が2型糖尿病の大血管イベントの要因になっていることを示唆するものである。

PROactive
http://www.ebm-library.jp/circ/trial_2005.html#aha2005PROactive
心筋梗塞既往のある2型糖尿病において,pioglitazoneは心筋梗塞の再発リスクを28%低下。 

 

<自遊時間>
大学の同窓会報が届きました。
例年、新入生の氏名と出身高校が紹介されています。
受験生の医学部志向もまだまだ続いているようです。
当大学でも東大合格者ベスト10の出身校生の数が年々増えてきている印象です。
まだまだ医学部は人気のようです。
そんな様子をみていると「昨今医者ってそんなにいい仕事でもないよ」って思わず彼らに声をかけたくなってしまいます。
せっかく夢を抱いて入学してくる新入生に、まさかそんな言葉はかけられませんが・・・。

さて、今年の内容で驚いたことがあります。
それはなんと女子の入学生が41%を占めていたのです。
最近の医学部卒業生は専門を皮膚科、精神科、眼科などの時間に縛られない科を選択するといいます。
実際それらの科に入局者が殺到しています。
彼女らが将来どのような科を選び、結婚後はどのような形で医療に取り組んでいくか。
このあたりを厚労省はきちんと考えているのでしょうか。
私自身、娘が現在医学生です。
女性医師の勤務しやすい労働条件の整備には大いに関心のあるところです。

この先は爆弾(不規則)発言です。
私学助成金が憲法違反かどうかは別として、私学の医学部には莫大な助成金が交付されています。
我が国には女性医師養成の医科大学があります。
記憶間違いでなければ、この大学には全国の大学の助成金ランキングでもベスト10に入る高額な助成がされています。
かつて女性のみを募集する新設歯科大学がありましたが、数年後には共学となりました。
女性医師養成のこの医科大学はいまや医歯学関係で唯一の大学です。
ただでさえ優秀な女子受験生に男子が締め出しをくっている昨今。
これって男女差別じゃありませんか。
この大学も国策のためにも女性専用車両を撤回していただけると有難いのですが。 

  

他に
「井蛙内科/開業医診療録」 
http://wellfrog.exblog.jp/ 
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)     

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PERISCOPE試験

戯れ言たれる侏儒 / 2008.04.06 00:30 / 推薦数 : 2

いよいよピオグリタゾンの2型糖尿病患者さんを対象としたPERISCOPE試験の結果が2008.3.31のACCで発表されました。 

日本国内では衛星ライブ中継がT薬品主催で全国各地で行われました。私も招待を受けましたが忙しい時期なので欠席しました。

以下はその結果です。

ちょっと勉強してみました。

PERISCOPE試験の結果について
アクトスが2型糖尿病患者における冠動脈血管内プラークの進展を抑制

米国時間3月31日、シカゴで開催されている第57回米国心臓病学会 (ACC: American College of Cardiology Annual Scientific Session 2008) において、アクトス(一般名:塩酸ピオグリタゾン)の2型糖尿病患者さんを対象としたPERISCOPE[※]試験の結果が報告され、アクトスが冠動脈プラーク体積を減少し、冠動脈の動脈硬化進展を抑制するデータが発表されました。

[※]Pioglitazone Effect on Regression of Intravascular Sonographic Coronary Obstruction Prospective Evaluation

<PERISCOPE試験の概要>
PERISCOPE試験は、糖尿病治療薬として、初めて冠動脈における動脈硬化の進展抑制効果を血管内超音波法(IVUS: intravascular ultrasound)により評価した試験です。
543名の2型糖尿病患者さんを対象に、米国、カナダ、ラテンアメリカにおける97施設で実施された、無作為二重盲検比較試験(アクトス群とスルフォニル尿素剤(SU剤)であるグリメピリド群の比較)です。
IVUSによって測定された冠動脈内に蓄積されたプラークは冠動脈硬化の指標となりますが、PERISCOPE試験では、このIVUSによる冠動脈血管内プラーク体積の変化率を主要評価項目としています。

<解析結果>
1)主要評価項目
冠動脈プラークの変化率(%)は、グリメピリド群では増加しましたが、アクトス群では減少し、アクトスはグリメピリドと比較して有意に動脈硬化の進展抑制効果を有することが認められました。
2)安全性
・心血管イベントの発現頻度は、アクトス群5例(1.9%)、グリメピリド群6例(2.2%)となっており、両群間に有意差は認められませんでした。
・CHF(うっ血性心不全)による入院の発現数はアクトス群、グリメピリド群において有意差は認められませんでした。
・グリメピリド群では低血糖と狭心症がより頻度が高く、アクトス群では浮腫、骨折の頻度が高くみられました。
2型糖尿病患者さんでは、アテローム動脈硬化の進展が認められ、心血管病や死亡の主な原因となっています。
アテローム動脈硬化の進展抑制と、体積減少が心筋梗塞の再発率を低下させるという報告があります。

今回の試験結果では、CHICAGO試験と同様に、アクトスの動脈硬化進展抑制効果が認められました。
また、PRO active試験および過去10年にわたる、16,000名以上の患者さんを対象とした短期および長期の前向き試験や観察研究と同様に、心筋梗塞、脳卒中や心血管死のリスクを増加させないという知見が得られました。

武田薬品の100%子会社である武田グローバル研究開発センター株式会社社長のDavid P. Reckerは「PERISCOPE試験により、アクトスの心血管に対する新たなデータが得られたことを嬉しく思います。2型糖尿病患者さんの動脈硬化進展を抑制することで心血管リスクを減少させるという、従来の試験結果と共通の結果が得られました」と述べています。

<CHICAGO試験の概要>
CHICAGO試験(Carotid intima-media tHICkness in Atherosclerosis using pioGlitazOne)は、462名の2型糖尿病患者を対象としたシカゴ地区の多施設における無作為二重盲検試験(アクトス群とスルフォニル尿素剤(SU剤)であるグリメピリド群の比較)で、投与期間は18ヶ月です。頚動脈内膜中膜の肥厚(CIMT)を主要評価項目とし、比較検討しています。
CIMTは動脈硬化の指標とされており、CHICAGO試験においても今回のPERISCOPE試験と同様に動脈硬化の進展を抑制する結果が得られています。

<PROactive試験の概要>
PROactive試験(PROspective PioglitAzone Clinical Trial In MacroVascular Events)は、無作為割付け、二重盲検、プラセボ対照大規模臨床試験であり、心血管疾患の既往のある5,238名の2型糖尿病患者を対象として、糖尿病および循環器疾患の標準治療にアクトスを最大45㎎まで追加投与することによる大血管障害に対する進展予防効果を、次の2つの項目で評価しました。
・主要評価項目
無作為割り付け後、大血管障害の発症、介入治療の実施、あるいは全死亡(全ての原因による死亡)など7つのイベントのうち、いずれかが最初に起きるまでの期間
・最重要副次評価項目
無作為割り付け後、心筋梗塞、脳卒中の発症、あるいは全死亡のうち、いずれかが最初に起きるまでの期間

主要評価項目では、プラセボと比較して統計学的に有意差は認められませんでしたが、最重要副次評価項目では、アクトス群では心筋梗塞、脳卒中の発症、全死亡を有意に減少させました。

PERISCOPE試験の結果について
http://www.takeda.co.jp/press/article_26553.html

<参考サイト>
Pioglitazone Effect on Regression of Intravascular Sonographic Coronary Obstruction Prospective Evaluation (PERISCOPE)
http://www.clinicaltrial.gov/ct2/show/NCT00225277?spons=

Systematic Review: Comparative Effectiveness and Safety of Oral Medications for Type 2 Diabetes Mellitus
http://www.annals.org/cgi/content/