戯れ言たれる侏儒
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APPROACH-J Study

戯れ言たれる侏儒 / 2008.08.18 00:04 / 推薦数 : 0

きょうは、日本発のプラバスタチンについての日本発の研究であるMEGA Studyの発展版であるAPPROACH-J Studyについて勉強しました。

「第40回日本動脈硬化学会総会・学術集会ポスターセッション」で発表された記事が教材です。


APPROACH-J Study
日本における脂質低下療法の新たなエビデンス創生に向けて
日本の軽度から中等度高脂血症患者を対象に,動脈硬化性疾患一次予防におけるプラバスタチン投与の有用性が示されたMEGA Studyの結果が記憶に新しいが,現在,日本の脂質低下療法に関するさらなるエビデンスの創生に向けた研究が進行中である。
第40回日本動脈硬化学会総会・学術集会ポスターセッションにおいて,「APPROACH-J Studyのデザインとその意義(The design and rationale for the Affirmation Primary prevention with Pravastatin in Reduction of Occlusive Atherosclerotic Complications in Hypercholesterolemia-Japan Study)」と題し,APPROACH-J Study医学アドバイザーで帝京大学内科学主任教授の寺本民生氏が発表を行った。


APPROACH-J Studyをめぐる背景
一次予防高リスク群に残されたエビデンスの必要性
生活習慣の欧米化に伴い,糖尿病有病率の増加,コレステロール値の上昇など,代謝異常に伴う動脈硬化性疾患の発症頻度の上昇が危惧されている。
そうした状況から,動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年版では,脂質異常を是正すべくリスク別脂質管理目標値が設定された。
冠動脈疾患の既往のない一次予防例においては,LDLコレステロール(LDL-C)値以外の主要危険因子の保有数によって3群に分類し,それぞれLDL-C管理目標値を低リスク群160mg/dL未満,中リスク群140mg/dL未満,高リスク群120mg/dL未満と設定されている(表)。
そしてLDL-C値について20~30%の低下率も治療目標とできる可能性を提言している。
しかしながら,日本人において LDL-C値をどこまで下げるのが有効か,その真のゴールについて現時点では十分なエビデンスが得られていない。
 
一方,治療方針の原則にも記されているように,動脈硬化性疾患の予防は長期にわたる生活習慣の改善が必須である。
そのため,患者自身が治療に対し主体的な意欲を持って取り組むことが治療継続の鍵となる。
近年,こうした患者自身の主体的な服薬遵守意識や生活習慣改善意識といった治療行動"アドヒアランス"がますます重要視されているものの,アドヒアランスを指標に検討された研究報告はいまだ少ない。

APPROACH-J Studyの臨床的意義
脂質低下療法の真のゴールとアドヒアランスが
脂質コントロールに与える影響が明らかに
以上のような背景から企画されたのが,現在進行中のAPPROACH-J Studyである(概要参照)。


本研究に医学アドバイザーとして参画し,研究計画全体の指導に当たっている帝京大学内科学主任教授の寺本民生氏は,次のように解説した。
 
APPROACH-J Studyの対象は,日常診療において薬物療法が選択される頻度の高い,一次予防症例の高リスク群にプラバスタチンを投与した症例である。
その目的は,
(1)脂質コントロールと血管系疾患イベントの発症頻度の関連から,ガイドラインで設定されたLDL-C管理目標値の妥当性を確認し"一次予防高リスク群に対する脂質低下療法の真のゴール"を検討する,
(2)アドヒアランスが脂質コントロールに与える影響を検討する
ことである。
 
本研究は統計学的に有効な解析結果を得るべく5,000例,観察期間は2年間と設定されている。
また,長期観察研究を可能にするために,研究開始1年および2年時点で対象患者の健在確認を行って高いフォローアップ率の確保を目指している。
 
さらに本研究は,患者から文書同意を取得して行う観察研究であり,過去の観察研究では調整が不十分であったバイアスを極力排除するために,LDL-C管理目標値を事前に調査し,管理目標値を考慮した解析を行うこととしているのも特徴である。
 
本研究への登録期間は2008年2月1日~2009年1月31日,調査期間は2011年1月31日までである。
同氏は,「APPROACH-J Studyにより冠動脈疾患一次予防高リスク群の脂質低下療法に関する,より質の高い日本独自のエビデンスが得られることを期待している」と述べ,エビデンス創生のためにも広く本研究への協力を仰いだ。


治療実態に即した研究で残された課題に答えるAPPROACH-J Study
帝京大学内科学主任教授
寺本民生氏コメント
LDL-Cの低下が動脈硬化性疾患の予防に重要であることは,種々の大規模臨床試験により明らかにされている。
一方,一次予防におけるリスク群ごとの脂質管理目標値に対する実証は未だ乏しい。
一次予防高リスク群のLDL-Cは果たしてどの程度低下させるべきか,その答えを得る治療実態下での実践的な研究がAPPROACH-J Studyである。
脂質低下療法を受けた患者をLDL-Cの到達値により分類し,LDL-C到達値と血管系疾患イベント発症との関連を検討することで,ガイドラインで提唱しているLDL-C管理目標値を検証できる。
また,今後アドヒアランスがますます重要視されていくが,研究報告がいまだ少ない。
これについて,アドヒアランスとLDL-Cの到達値との関係などを検討する。
本研究により,真のLDL-C管理目標値やアドヒアランスについて,日常で診療に当たる医師にとって示唆に富んだ結果を得ることができるであろう。
そうした臨床上有用な知見にどこまでアプローチできるかがこの研究の最大の目標である。有用な結果を得るには登録症例のフォローアップが決め手になるため,本研究への積極的なご協力を願っている。

出典 Medical Tribune 2008.8.14
版権 メディカル・トリビューン社

 

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循環器あれこれ 2008.8.9

戯れ言たれる侏儒 / 2008.08.09 02:18 / 推薦数 : 1

コレステロール値の検査はどの程度の頻度で必要か?
How Often Do We Need to Check Cholesterol Levels?

コレステロール値の変動を調査するために、LIPID研究(Long-term Intervention with Pravastatin in Ischaemic Disease、虚血性疾患でのpravastatin長期介入研究)で得られたデータを用いて研究が行われた。
LIPID研究では、冠動脈心疾患を有する患者9,014人(平均62歳、男性83%)がpravastatin(40mg)投与群とプラセボ投与群にランダムに割り付けられた。
単一の検査室で、ランダム化時、6ヵ月後および12ヵ月後に脂質濃度が測定された後、年1回の測定が5年後まで続けられた。
治療前の平均コレステロール値は5.65mmol/Lであった。

1回の測定の個人内短期変動の標準偏差(ランダム化の4週間前に行なわれた測定を基準とする)は、プラセボ群で0.38mmol/L、pravastatin群で0.42mmol/Lであった(平均の変動7%)。
両群とも時間を経るにつれ個人内の変動は微増した。

6ヵ月後から5年後までの、pravastatin群におけるコレステロール値増加の平均は0.14mmol/L(平均の変動は年あたり0.7%)であった。
平均のLDL(low-density lipoprotein)値は経過を通じて同様の分散を示した(ベースライン値と1、3、5年後の値の差の分散は、それぞれ、プラセボ群で0.32、0.42、0.45mmol/L、pravastatin群で0.49、0.53、0.56mmol/Lであった)。

コメント:
この研究により、医師の指示を遵守し、コレステロール値が適切に管理されている患者は3~5年ごとにモニターすればよいということが再確認された。
よく忘れられがちな臨床的なポイントは、コレステロール値は7%の変動を示しうるということである。
このため、治療の決定は1回のみの測定に基づいて行なわれるべきではない。
これらの知見は、より変動の大きいトリグリセリド値には適用されない。

Joel M. Gore, MD
Published in Journal Watch Cardiology May 21, 2008
Citation(s):

Glasziou PP et al. for the Lipid Study Investigators. Monitoring cholesterol levels: Measurement error or true change? Ann Intern Med 2008 May 6; 148:656.
http://www.nankodo.co.jp/JWJ/archive/JW08-0529-04.html

Journal WATCH Online 日本語版  2008 May 29

<コメント>

何だかよくわからない内容でした。

 

 

1日1回の降圧薬は服薬アドヒアランス不良が多い
Poor Adherence to Once-Daily Antihypertensive Drugs Is Common

降圧薬の服薬アドヒアランス不良は、十分な血圧コントロールを妨げる主要な原因である。
この縦断的な研究では、1日1回の降圧薬43種類のうちいずれか1つの処方をうけた4,783人の患者について服用アドヒアランスを検討するため、21件の臨床研究のデータを用いた。

開けるごとに電子的に日時を記録するピルケースを用いて、アドヒアランスを検討した。
1年の時点で、半数近くの患者が治療を完全に停止していた(服薬中止[nonpersistence])。
どの一日をとっても予定された服薬のうち、約10%が服薬されなかった(服薬不履行[nonexecution])。
全体で95%の患者が少なくとも年に1回服薬を忘れ、半数の患者は月に1回服薬を忘れ、半数近くの患者で少なくとも年に1回、3日以上薬を飲まない期間があった。
服薬の不履行は、4月から9月の間および週末により多くみられた。
朝の服薬は夜の服薬と比較して服薬履行率が高かった。服薬履行の高い患者は服薬の継続率が有意に高かった。

コメント
著者が結論づけているように、服薬をやめてしまうリスクの高い患者には、(中止理由が有害作用でない限り)治療継続するよう支援が必要であり、一方で服薬履行が悪い患者では投与を日々のルーティンに取り込むよう手助けする必要がある。
この所見はまた、朝の投与を推奨し、休暇中や週末の服薬履行の障碍となっているものに取り組むことが必要であることを示唆している。
最後に、これらの結果は、血圧コントロールが十分でない患者に対しては、アドヒアランスをより困難にする処方の追加を行う前に、まず医師が服薬の不遵守について尋ね、指導を行うべきであることを示唆している。

Paul S. Mueller, MD, MPH, FACP
Published in Journal Watch General Medicine June 12, 2008

Citation(s):
Vrijens B et al. Adherence to prescribed antihypertensive drug treatments: Longitudinal study of electronically compiled dosing histories.
BMJ 2008 May 17; 336:1114.
http://www.nankodo.co.jp/JWJ/archive/JW08-0612-03.html
Journal WATCH Online 日本語版  2008 June 12

<コメント>
都会で開業しているため、高血圧の治療もなかなかうまくいきません。
「忙しくて診察が待てない、用事があって急いでいるからきょうは検査が出来ない」
そんなことを、よくいわれます。
その多くは方便です。
当院では前もって次回の検査を予告する用紙を渡しています。
そこまでしてもこんな状態です。
なんだか、最近にそんな患者が多くなって来ました。
逆にいえば、大病院に高血圧で通院するような方は余程暇な人かも知れません。
高血圧の診察こそ、診察室を出て行かれる患者さんが満足感を得られる工夫がいるはずです。
大病院で、特に工夫しているとも思えません。

それはさておき、きのうも「診察はいい。薬さえ貰えればいい」というモンスターペイシャントがいました。
何だか世の中が音を立てて壊れていくようで寂しくなります。
老後は島の診療所で、純朴な患者さんに囲まれた診察をしてみたいと真剣に思う今日このごろです。

医師と患者の信頼関係のない医療。
そんな寂しい医療は嫌です。

 

<追加2008.8.9 AM2:20>
昨夜の北京オリンピックの開幕式の興奮とモンスターペイシャントの悔しさでよく眠れません。
今朝から院内に以下のような貼紙をするためにパソコンで印刷しました。

「お知らせ
受療態度の余りにも良くない方は、他の医療機関への受診をお勧めする場合があります。
これは「診療拒否」とは異なりますので、予めご了承下さい。
   ○○○○    院長」

読んでいただいてありがとうございます。
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私の外来で、いつも患者さんに見せるデータに久山町研究の結果があります。

(当院には福岡市出身の看護師がいます。彼女いわく、久山町は恐ろしいほどの田舎です。はたして本当なんでしょうか?)
検診時点での随時血圧で140mmHg以下を目指すと脳梗塞の発生率が下がる(それ以下ではあまり変わらない)というデータです。
最近のガイドラインでは、目標血圧値がさらに厳しくなって130mmHgとなってきています。
随時血圧でこの数値を目標とすると、降圧剤を服用中では家庭血圧が100mmHg以下となる場合が出てきます。
なかには低血圧症状を訴える方もみえます。
コンプライアンスを考えると現実的には外来では140mmHg以下と患者さんとの間で約束(?)をしています。

また最近、拡張期血圧は無視してよいという論文も出てきました。

Viewpoint:Systolic pressure is all that matters
The Lancet 2008; 371:2219-2221

また元文献を失念しましたが、過度の降圧は心臓によくないという論文もあります。

はたしてガイドラインの厳しい(?)数値目標設定はどこまでエビデンスがあるのでしょうか。

要するにガイドラインでそうなっているからということにも、疑念を持つ必要があるのではないか?

「プライマリケア医」の素朴な疑問です。

そもそも血圧値自体、測定した数だけあるものです。
そのことは残念ながら高血圧の専門家よりも、家庭血圧を実際に測定している患者さんが実感していることです。
血圧値を語る場合には、どのような血圧値で議論しているのか。
その点を明らかにする必要がありそうです。
この点は重要なことと思うのですが、しばしばネグレクトされていることでもあります。

座談会
血圧と脂質の厳格な管理の重要性

脳・心血管イベント抑制のためには,その主要な危険因子である高血圧と高脂血症を十分に管理することが重要である。しかし,最近,全国のプライマリケアの医師を対象に行った調査によると,高血圧,高脂血症ともにガイドラインの推奨する管理目標に達していない患者が多く,管理状態は決して十分とはいえない現状が明らかになった。
高血圧と高脂血症の管理が不十分な要因は何か,より厳格な管理を実現していくためにはどのような方策が可能か。

森下竜一氏(司会)
大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学教授
北風政史氏
国立循環器病センター 心臓血管内科部長
松原弘明氏
京都府立医科大学大学院医学研究科 循環器内科学教授
江頭健輔氏
九州大学大学院医学研究院 循環器内科学准教授 


血圧および脂質の管理が不十分な実態が浮き彫りに
森下 
平成17年の厚生労働省統計情報部「人口動態調査」によると,わが国の主要死因別に見た死亡率の年次推移において,脳血管疾患と心疾患を合わせた割合の高さが示されています。
脳・心血管イベント抑制に向けては,血圧と脂質の管理が重要であることはいうまでもないことですが,実際,それが十分に認識されていない現状が見受けられます。
2006年,全国のプライマリケアの医師500人を対象に,高血圧および高脂血症の治療実態に関するアンケート(J-GAP;Japan Guideline Assessment Panel)が行われており,両者の管理が不十分な実態が浮き彫りにされています。
薬物療法を3か月以上行っている高血圧または高脂血症の患者における,「高血圧治療ガイドライン2004(JSH2004)」「動脈硬化性疾患診療ガイドライン2002(JSA2002)」に準じた管理目標の達成率や,治療に対する医師の満足度などが解析されました。
その結果,
高血圧例の降圧目標達成率は32.9%で,糖尿病・腎障害合併例(降圧目標:130/80mmHg未満)では15.3%(図1),また高脂血症例の管理目標達成率は61.8%で,冠危険因子の数が多くなるほど,この達成率が低下する傾向が認められました。


一方,治療に対する医師の満足度ですが,高血圧例では,降圧目標を達成していないコントロール不良群でも「非常に満足」が15.2%,「まあ満足」が57.5%と,両者を合わせると72.7%が治療に満足している結果です(図2)。

 


高脂血症例でも,管理目標を達成していないコントロール不良群で「非常に満足」が9.9%,「まあ満足」が49.8%となり,両者を合わせると59.7%が治療に満足していることが示されました。

降圧目標はあくまでも“目標”であり,さらなる厳格な管理が望まれる
森下 
このアンケートの結果を見て,先生方はどのような感想を持たれますか。まず,高血圧の治療実態の結果について伺いたいと思います。
北風 
発症者のうち,治療を受けている患者さんの割合が1/2,さらに,治療を受けている患者のうち,血圧がコントロールされている患者の割合が1/2であるという,いわゆる1/2と1/2の法則ということが昔からいわれてきました。
せっかく高血圧治療ガイドラインなどが作成されても,治療実態は大きく改善されていないことが示され,ややがっかりします。さらに啓発していく必要がありますね。

松原 
降圧目標の達成率が全体で32.9%と低いことはもちろん,降圧目標が達成されていないにもかかわらず,満足している医師の割合が多いことにも驚きます。
糖尿病や腎障害などの合併症があっても,収縮期血圧が140mmHg程度になると,それ以下には降圧せず,満足している医師が非常に多いのではないでしょうか。
合併症によっては,140mmHgよりもさらに低い降圧目標を設定し,厳格に管理していくというガイドラインの趣旨が,まだまだ浸透していないように思います。

江頭 
私も,新しいガイドラインがまだ周知されていなく,以前のガイドラインに沿って治療しているプライマリケアの医師が多いと思います。
多くの紹介患者さんでガイドラインの目標が達成されていません。
降圧は,それ自体が目的ではなく,降圧によって脳・心血管イベントの発症を未然に防ぐことが目的であるということを,再度,認識してもらう必要があります。
また,その目的達成のためには,最低限,ガイドラインにある降圧目標まで下げ,それで満足してよいというものではないことも,もっとアピールする必要があるでしょう。

森下 
日本のプライマリケアの医師のなかには,未だに過度の降圧による脳卒中の誘発を過剰に心配している医師もいるようです。
収縮期が130mmHg程度になると,とたんに降圧の手を緩めてしまう。
脳・心血管イベントの抑制という観点から,さらに降圧してよいのだということを,もっと徹底させなければいけません。
それと,早期に降圧を図ることが重要だということも,啓発していく必要があると思います。
では,高脂血症の治療実態についてはいかがでしょうか。

松原 
管理目標値をLDL-コレステロール(LDL-C)ではなく,総コレステロール(TC)で判断している医師が多いように思います。JSA2002では原則としてLDL-Cで評価し,TCは参考にすると記載されているのですが,実態は異なっているようです。

北風 
TCは220mg/dL未満が正常というのが浸透していますからね。

森下 
私は,高血圧に比べると高脂血症の治療意義は理解されていないと思っていましたから,管理目標達成率が高血圧より高かったというのは,やや意外です。

松原 
高血圧の場合,十分な降圧のためには2剤以上の併用を必要とするケースがほとんどです。
これに対して高脂血症は,スタチン系薬1剤で改善できる場合が多い。
2剤よりは単剤使用のほうがコンプライアンスは良好ですから,あるいはそれが影響しているのかもしれません。

江頭 
高コレステロール血症の場合は,脂質低下作用の強いスタチン系薬を使えば,管理目標を達成することはそれほど困難ではないと思います。
にもかかわらず,特に冠危険因子の数が多い群で達成率が低下しているのは危惧すべきです。

北風 
日本人医師の特徴として,安全性を重んじる気持ちが強いあまり,積極的な治療ができていないことが,スタチン系薬の使用法についてもうかがわれますね。

江頭 
高血圧と高コレステロール血症の患者さんは,ほかにも糖尿病などを合併していることが多いわけです。
現状では,糖尿病の管理は高血圧や高脂血症より困難だと思われますから,薬物療法で比較的管理しやすい高血圧と高コレステロール血症には万全に対処したいところですね。

より厳格な管理の重要性を啓発することが必要
森下 
高血圧と高脂血症の管理をより厳格に行うためには,どのような手立てが考えられるでしょう。まず,高血圧からいかがですか。

松原 
早朝の血圧コントロールが不良のケースが多いので,私は,それを下げることを1つの治療目標にしています。具体的には,アムロジピンなどの長時間作用型Ca拮抗薬を第1選択とし,それで効果不十分のときにアンジオテンシン II 受容体拮抗薬(ARB)などを併用するようにしています。
 
森下 
長時間作用型Ca拮抗薬は24時間,安定した降圧効果が得られるという特性があり(図3),このことが脳・心血管イベントの抑制に有用なことは,VALUEやASCOT-BPLAなどで証明されています。

 

江頭 
投与の時間帯ですが,私は夕方 -1回,降圧薬と一緒に,必要ならスタチン系薬やアスピリンなども服用するように指導しています。
そのほうがコンプラインスがよいからです。

北風 
私も,夕方1回投与を奨めることが多いですね。

森下 
降圧目標に達したからといって,それで満足するのではなく,さらに積極的に降圧する必要があるということを,医師や患者さんにどのようにしてアピールしていけばよいでしょう。

北風 
降圧治療や脂質低下治療の効果は,例えば抗生物質や解熱剤の効果のように,患者さんにすぐ実感してもらえるというものではありません。
この点が,高血圧や高脂血症の治療に当たる医師のつらいところです。
根気よく,その有用性をアピールしていくしか方法はないのではないでしょうか。
脳・心血管イベントの主要な危険因子をいつくか挙げて,リスクがいくつ重複したら10?20年後のイベント発症率はこれくらいだが,高血圧や高脂血症などのリスクを1つなくすと,イベント発症率はこれくらいまで低下する―といったようなことを,わかりやすい図にまとめて患者さんに提示するというのは,効果があると思います。

江頭 
私は,高血圧の患者さんには,原則として血圧測定は自身でしていただくように指導しています。
血圧管理は患者さん自ら行うもの,という自覚を持ってもらうことが,治療に対するモチベーションを高める意味できわめて重要です。

森下 
長時間作用型Ca拮抗薬は降圧効果に優れるのはもちろん,その他の作用も報告されていますね。

松原 
CAMELOTやそのサブ解析のNORMALIZEによって,血圧コントロールに優れるアムロジピンが冠血流量を増加させ,心筋保護的に作用することがわかっています。

北風 
これらの試験で,アムロジピンはACE阻害薬と比較して心血管イベント抑制に有用性が高い可能性が示されました。
降圧効果だけではないアムロジピンの多面的作用が期待されます。

森下 
脂質管理については一時,マスコミによって,コレステロールを下げ過ぎてはいけない,ということが報道されました。
先生方は,あの報道による悪影響を感じていますか。

北風 
特に女性は脂質を下げ過ぎてはいけない,という報道だったと思いますが,幸い,患者さんたちへの悪影響はそれほどなかったように思います。
いまは患者さん自身で,いろいろな情報を集めて取捨選択し,勉強しようという気運が出てきています。
ですから,一部のマスコミの誤った報道で大騒ぎするということは少なくなったように思います。

江頭 
患者さんに正しい情報をお伝えするという意味でも,医師側が直接主催する,例えば種々の疾患に関する市民公開講座といったものが,もっとあってよいかもしれません。
プライマリケアの医師への講習会も重要ですが,あるいは患者さんへの直接的な情報発信はもっと重要かもしれません。

森下 
先ほど先生方が指摘されたように,現在では高血圧にしても高脂血症にしても,治療をしっかり行えば良好なコントロール状態を達成することは,それほど困難ではありません。
ただ,現実にそれを阻んでいるのは,良好なコントロール状態を達成することの重要性に対する理解不足だと思われます。
脳・心血管イベントとの相関は明らかなので,今後は,この点の是正に向け,私たち専門医がもっと努力する必要があることを確認して,この座談会を終わりたいと思います。

出典 Medical Tribune 2008.6.7
版権 メディカル・トリビューン社

 

<関連ブログ>
循環器あれこれ 2008.6.20  
http://blog.m3.com/reed/20080620/1
 (降圧目標は130/80mmHg未満)


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ezetimibe(エゼチミブ)は新規の薬剤で,スタチンとの併用でLDL-Cの低下作用が格段に上がることが分かっています。
このLDL-Cを低下させることにより、心血管イベントを抑制することはスタチンの一連の試験で明らかにされているわけですが、エゼチミブとの併用がさらなる効果を上げることは当然期待されるところです。
ご承知のように、最近のENHANCE 試験では強力なLDL-Cの低下作用は示したものの,家族性高コレステロール血症(FH)の頸動脈の内中膜肥厚度(IMT)の改善をもたらしませんでした。
この結果が,エゼチミブの有効性を否定するものか否か議論になっているところです。
この試験のデザイン上の問題点については次のようなことが指摘されています。
すなわち、対象者はFHであるが,他の危険因子はほとんどなく,年齢も約46歳で半数が女性であること。
さらにその81%はスタチン治療を受けている患者であり,FHとしては低リスク群といえることです。
その結果もあり、もともとのベースラインの頸動脈のIMTは約0.7mmと正常範囲でした。
そして試験期間は2年であり,正常のIMTの改善を観察するには短期間過ぎたのかも知れません。
2011年に終了する臨床的アウトカムをみるIMPROVE-ITという試験もあるようです。

きょうはバイエル CVRM シンポジウム in 東京
Bayer Symposium on Cardiovascular Risk Management, 2008
さらに重要性を増す心血管リスクの多角的管理戦略

のシンポジウム紹介記事で勉強しました。


特別講演
脂質異常症のUnmet Needsを満たすコレステロール吸収阻害の新戦略
 
演者:
森下 竜一 氏 大阪大学大学院臨床遺伝子治療学教授
座長:
竹下 彰 氏 九州大学名誉教授
 
血清LDLコレステロール(LDL-C)値を下げることにより脳・心血管イベントの発症が抑制されることは,よく知られている。
現在,LDL-C低下療法はスタチンを中心とした合成系の抑制が主流であるが,脳・心血管イベントの抑制効果は30%にとどまっており,いまだunmet needsが存在する。

加えて,食習慣の欧米化により日本人においてもコレステロール摂取量は増加している。
 
こうした状況下,新たに登場したのが,小腸コレステロールトランスポーター阻害剤エゼチミブである。
エゼチミブは単独でLDL-Cを約20%低下させるだけでなく,酸化コレステロールの吸収も抑える。
大阪大学大学院臨床遺伝子治療学教授の森下竜一氏は,エゼチミブによる吸収阻害の臨床的意義を明らかにし,「スタチンとの使い分けあるいは併用によって,より合理的で効率的な脂質低下療法が可能になるだろう」と指摘した。

"今,そこにある危機"
日本人の血清コレステロール値は年々上昇しており,現在ではほぼ米国人と同レベルになっている。
これは,食生活の欧米化に起因するコレステロール摂取量の増加とも深く関連している。
 
かつて長寿県と言われた沖縄の平均寿命が,全国平均より低下した。
この"沖縄クライシス"は,ハンバーガーに象徴される食習慣の欧米化が沖縄では本土より20年先行した点に起因しており,今後,全国で沖縄と同様の状況が再現される可能性が高い。
森下氏はこうした現状を"今,そこにある危機"と呼び,コレステロール対策の必要性を訴えた。

コレステロールの吸収亢進が脳・心血管イベントと関連
LDL-C低下療法は現在,スタチンによるコレステロール合成の抑制が主流である。
スタチンは初回投与量で確実なLDL-C低下をもたらすが,用量の倍増による増強効果は約6%程度であることが明らかにされている。
さらに,その脳・心血管イベントの抑制効果は,いまだ十分と言えるレベルではない。
 
同氏は,その理由をコレステロールの供給源から説明した。すなわち,血中コレステロールの供給源には肝臓における合成と小腸での吸収の2つの経路がある。
したがって,スタチンで合成系を抑えても,吸収系によるコレステロール供給は残ることになり,十分な効果が得られないわけである。
 
また,合成系を抑制すると,生体反応として代償的に小腸におけるコレステロール吸収が亢進することも報告されており,スタチンの効果が相殺されていることが考えられる。
さらにコレステロール吸収の亢進は,脳・心血管イベントの発症に関係することがDEBATE studyなどのプロスペクティブ研究で明らかになり,にわかに吸収系の制御に注目が集まるようになった(図 1)。

 

 

LDL-C低下療法におけるunmet needsを満たすエゼチミブ
そうしたなか登場したのが小腸コレステロールトランスポーター阻害剤エゼチミブである。
エゼチミブはNiemann-Pick C1 Like1(NPC1L1)蛋白に作用することで,コレステロールの吸収を選択的に阻害する。

国内の臨床試験では,10mg/日単独投与でLDL-Cを18%低下させるだけでなく,中性脂肪を下げ,HDL-Cを上げるなど,血清脂質全般に好ましい影響を与える成績が得られている(図 2)。


 

加えて,悪玉とされるsmall, dense LDLも著明に低下させ,コレステロールの質的な改善効果も期待できる。
また,スタチンにエゼチミブを追加することでLDL-Cはさらに約25%低下し,スタチン単独増量に比べ効率的なLDL-C低下効果が得られるのみならず,血清脂質全般に好ましい影響が認められる。
 
さらに,エゼチミブは食品の調理や保存によって生成する酸化(劣化)コレステロールの吸収をも阻害する。
こうした食事由来の酸化コレステロールは LDLの酸化を早め,動脈硬化を促進することが明らかにされている。
エゼチミブはコレステロールのみならず,その酸化物の吸収をも阻害することで,体内に入る酸化ストレスを抑える。
森下氏は「ここにもエゼチミブの大きな意義がある」と強調した。
 
このように,LDL-C低下療法では,合成系だけでなく吸収制御の臨床的意義が大きい。
とりわけ,コレステロール摂取量が増加している現代日本人の高コレステロール血症患者では重要な位置付けになる。特に,糖尿病,肥満合併例,冠動脈疾患の既往例など,コレステロール吸収が亢進している病態では,エゼチミブの効果が期待されるという。
 
さらに同氏は,メタボリックシンドローム合併例におけるエゼチミブの血管内皮機能やインスリン抵抗性に及ぼす好ましい影響を紹介。
「脂質異常症の治療ではLDL-Cだけでなく,代謝異常全般の治療が求められており,エゼチミブはメタボバスターとして大きな武器になる可能性がある」と締めくくった。

出典 Medical Tribune  2008.6.26
版権 メディカル・トリビューン社

 

<参考サイト>
エゼチミブ(商品名:ゼチーア)
http://blog.m3.com/reed/20070927/1
ENHANCE試験
http://blog.m3.com/reed/20080418/ENHANCE
コレステロール吸収阻害の臨床的意義
http://blog.m3.com/reed/20080115/1
エゼチミブの臨床的有用性を考える
http://blog.m3.com/reed/20080116/1
エゼチミブの臨床的有用性 その1(1/2)
http://blog.m3.com/reed/20080502/1
エゼチミブの臨床的有用性 その2(2/2)
http://blog.m3.com/reed/20080503/2
ENHANCE試験をめぐる論争 その1(1/2)
http://blog.m3.com/reed/20080428/1
ENHANCE 試験をめぐる論争 その2(2/2)
http://blog.m3.com/reed/20080429/ENHANCE__
ENHANCE 
Ezetimibe and Simvastatin in Hypercholesterolemia Enhances Atherosclerosis Regression
http://www.ebm-library.jp/circ/doc/html/c2002764.html
エゼチミブの臨床的位置付け
http://blog.m3.com/reed/20080614/1

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(一般の方または患者さん向き) 
「井蛙内科/開業医診療録(2)」
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エゼチミブ(商品名:ゼチーア)といえば最近ENHANCE 試験が話題になりました。
デザイン上の問題があったもののLDLコレステロール低下療法至上主義に対する警鐘とも考えられます。

スタチンや今回取り上げるコレステロールトランスポーター阻害薬の影に隠れた薬剤。
たとえばEPA。
ひょっとして"beyond lipid lowering effect"があるんではないかと、私はしばしば単独投与ないしスタチンやエゼチミブと併用しています。
はたしてEPAの上乗せ効果をみた治験は現在行われているのでしょうか。
気づいたら、きょうの内容とはすっかりずれてしまいました。

特別企画
コレステロール吸収阻害による新しい脂質異常症の治療戦略
小腸コレステロールとランスポーター阻害剤エゼチミブの臨床的位置付け
LDLコレステロール(LDL-C)低下療法によって脳・心血管イベントの発症が抑制されることは,国内外の臨床試験成績からも明らかである。
しかし,実地臨床においてはさまざまな原因により動脈硬化性疾患予防ガイドラインが推奨するLDL-Cの管理目標値に到達できない場合がある。
わが国のこうした状況は,小腸コレステロールトランスポーター阻害剤エゼチミブの臨床導入によってどのように変わっていくのか。
今回の座談会は,コレステロール吸収阻害の臨床的意義,エゼチミブの臨床的位置づけなどについての討論です。

水野 杏一 氏(司会) 
日本医科大学内科学 主任教授
吉田 雅幸 氏 
東京医科歯科大学生命倫理研究センター 教授
稙田 太郎 氏 
埼玉県済生会栗橋病院健診センター長
長嶋 浩貴 氏 
東京ハートセンター副院長臨床薬理研究所長


Presentation
コレステロール吸収阻害の重要性とエゼチミブの臨床的意義
吉田 雅幸 氏 
東京医科歯科大学生命倫理研究センター 教授
脳・心血管イベントリスクとしてのコレステロール吸収亢進とその臨床像
ライフスタイルの欧米化に伴い,日本人の血清総コレステロール値は年々上昇し,現在では欧米人とほぼ同じレベルに達した。動脈硬化性疾患予防ガイドラインでは患者が保有するリスクに応じ,LDL-Cの管理目標値を設定し,まずは食事療法など生活習慣の改善を推奨している。
食生活の欧米化を背景とした日本人の高コレステロール血症の導入治療法として食生活の改善は非常に重要な位置を占める。
しかしながら,脂質異常症患者と医療従事者を対象とした意識調査では食事療法の継続の困難さがクローズアップされている。
 
さらに,ガイドラインでは生活習慣の改善によってもLDL-Cが管理目標値に到達しない場合には,薬物療法の導入を推奨している。
生体におけるコレステロールの供給源には,肝臓における合成と小腸からの吸収があり,血中のコレステロール値は両者のバランスによって調整されている。
これまでのLDL-C低下療法は,合成抑制が中心であったが,近年,小腸における吸収阻害に注目が集まっている。
 
大規模臨床試験4S(Scandinavian Simvastatin Survival Study)のサブ解析では,コレステロール吸収亢進群で,合成抑制による冠動脈イベント抑制効果が減弱することが示された。
また,DEBATE(Drugs and Evidence-Based Medicine in the Elderly)試験では,LDL-C値は同じレベルであったにもかかわらず,コレステロール吸収が亢進した群では非亢進群に比較して脳・心血管イベントの発生率が有意に高かったことが報告されている。
これらの結果から,脳・心血管イベント抑制において,コレステロール吸収阻害の重要性が示唆される。
どのような病態でコレステロール吸収が亢進しているのかというと,肥満者では胆汁性コレステロールの排泄量が多いため,吸収量が非肥満者に比べて多いとの報告や,2型糖尿病患者では,小腸におけるリポ蛋白の合成に関わるMTP(microsomal triglyceride transfer protein)やコレステロールトランスポーターNPC1L1(Niemann-Pick C1 Like 1)の遺伝子発現が非糖尿病患者に比べて有意に高いことが報告されている。

コレステロール吸収を阻害するエゼチミブの臨床的ベネフィット
最近,小腸の粘膜に発現するNPC1L1を特異的に阻害する小腸コレステロールトランスポーター阻害剤エゼチミブの臨床使用が可能となり,新しい治療の選択肢として注目されている。
わが国のエゼチミブ臨床試験では,単独投与によってLDL-C値を約18%低下させ,トリグリセライド(TG)やHDLコレステロール(HDL-C)など血清脂質全般に好影響を及ぼすことが示された。
また,動脈硬化惹起性の高いSmall, dense LDLを減少させることが報告されている(図1)。


さらに,エゼチミブはピュアなコレステロールのみならず,劣化変性した酸化コレステロールの吸収をも抑制することが確認されている。
この酸化コレステロールは,調理などの加熱や長期保存により,劣化変性したコレステロールであり,動物実験では,この酸化コレステロールをわずかに含む脂質負荷により,動脈硬化形成がさらに促進することが確認されている。
 
また,エゼチミブはスタチンとの併用により強力なLDL-C低下効果を示す。エゼチミブをアトルバスタチン10mgに併用することによりLDL-C値は53%低下し,大規模臨床試験EASE(Ezetimibe Add-on to Statin for Effectiveness)では,スタチンにエゼチミブを併用することによってLDL-C値はさらに約25%低下すること,その効果はいずれのスタチンへの併用時にも一貫して認められることが示された(図2)。


この併用による効率的なLDL-C値の低下により,ガイドラインが推奨するLDL-C管理目標値への到達が容易になることが期待される。
LDL-C管理目標値への到達状況を調査したJ-LAP(Japan Lipid Assessment Program)では,糖尿病やリスクを重複するハイリスク群に対するスタチン療法の目標値達成率は約50%,冠動脈疾患既往例では約30%程度との結果であった。
このような背景から,スタチン投与によってもLDL-C管理目標値に到達しないハイリスク群または二次予防群は,エゼチミブ追加療法の良い適応になるといえる*。

Discussion
わが国におけるエゼチミブの臨床的位置付けを考える
継続が難しい食事療法とコレステロール吸収阻害の臨床的有用性
水野 実地臨床におけるLDL-C値の管理状況はどの程度でしょうか。

稙田 
糖尿病患者の血糖管理においては,入院による食事指導は歴然とした効果を発揮しますが,外来における食事指導では管理は難しく,なかなか改善されません。
まずはライフスタイルの改善を目指し,食事・運動療法を指導しますが,ほとんどの症例が1年以内に脱落してしまいます。
コレステロール管理についても,同様のことがいえると思います。

水野 
MEGA Studyでは,食事療法を徹底するために管理栄養士による講習会なども実施しましたが,食事療法だけではLDL-C値は3%程度しか低下しませんでした。
食事療法だけでLDL-C値を下げるのは難しいと実感しています。

吉田 
日本においては,さまざまな食品が,容易に入手できるため,食事療法の遵守というのが難しいのが現状ではないでしょうか。

水野 
コレステロール吸収亢進そのものが独立した危険因子になるのではという指摘もありますね。
コレステロール吸収の亢進は生体にとって有害なことなのでしょうか。

吉田 
小腸からのコレステロール吸収は,われわれが生きていくためには必要なプロセスですが,先述の加熱調理などで生成した酸化コレステロールは動脈硬化惹起性が高いことを考慮すると吸収を抑制することは重要かもしれません。

水野 
このような背景もあり,LDL-C低下療法の新しい選択肢,小腸コレステロールトランスポーター阻害剤エゼチミブが注目されているわけですが,吸収亢進例では,エゼチミブがファーストチョイスになると考えられますね。

稙田 
肥満や糖尿病患者などインスリン抵抗性がある場合にも,小腸からのコレステロール吸収が亢進するのでしょうか。

吉田 
高インスリン血症がコレステロール吸収を亢進させるかどうかについては明らかにされていませんが,吸収が亢進している状態では,インスリンの作用がかなり低下することが予想されます。
われわれの肥満モデルラットを用いたデータでも,そのような病態が認められ,エゼチミブの投与によって改善されることが示されております(図3)。

 

長嶋 
われわれが冠動脈疾患既往例約1,800例を対象に行った調査では,ガイドラインが推奨するLDL-C管理目標値への到達率は30%程度でした。
食事指導にも力を入れ,薬物療法を行っても管理は難しいのが現状です。
肝臓でのコレステロール合成を阻害するだけでは管理目標値へ到達させることが難しいことから,小腸からのコレステロール吸収を選択的に阻害するエゼチミブは魅力的な作用機序を有する薬剤だと思います。

水野 
コレステロール合成を長期間阻害すると代償的にコレステロール吸収が亢進することが報告されていますから,糖尿病やリスク重複例などのハイリスク群や二次予防群でLDL-C管理目標値に到達しない場合には,合成を阻害するのと同時に吸収を阻害することが,治療薬の選択において非常に重要ではないかと思います。

各科領域のエキスパートが語るエゼチミブの臨床使用経験
水野 エゼチミブの臨床での有用性についてはいかがでしょうか。

長嶋 
私はこれまでに十数例にエゼチミブを投与しましたが,確実にLDL-C値は低下し,合併症がある患者さんにも好印象があります。

吉田 
エゼチミブはTGにも好影響を及ぼしますから,LDL-C値だけでなくTG値も高い複合型の患者にはエゼチミブをファーストラインとして使用し,厳格にLDL-C値を下げたい場合には,スタチンを追加するといった使い方もあると思います。

稙田 
糖尿病患者の場合,LDL-CだけでなくTGやHDL-Cの異常が問題になります。
また,Small, dense LDLも高い傾向がありますので,血清脂質全体に好影響を及ぼすエゼチミブは糖尿病合併例に効果が期待できると思います*。

*エゼチミブの使用上の注意:糖尿病合併の患者さんにおいては,空腹時血糖の上昇が報告されており,慎重投与となっております。


Medical Tribune 2008.6.12
メディカル・トリビューン社
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41240701&year=2008

 

<参考サイト>
エゼチミブ(商品名:ゼチーア)
http://blog.m3.com/reed/20070927/1
ENHANCE試験
http://blog.m3.com/reed/20080418/ENHANCE
コレステロール吸収阻害の臨床的意義
http://blog.m3.com/reed/20080115/1
エゼチミブの臨床的有用性を考える
http://blog.m3.com/reed/20080116/1
エゼチミブの臨床的有用性 その1(1/2)
http://blog.m3.com/reed/20080502/1
エゼチミブの臨床的有用性 その2(2/2)
http://blog.m3.com/reed/20080503/2
ENHANCE試験をめぐる論争 その1(1/2)
http://blog.m3.com/reed/20080428/1
ENHANCE 試験をめぐる論争 その2(2/2)
http://blog.m3.com/reed/20080429/ENHANCE__
ENHANCE 
Ezetimibe and Simvastatin in Hypercholesterolemia Enhances Atherosclerosis Regression
http://www.ebm-library.jp/circ/doc/html/c2002764.html
(以下帝京大の寺本先生のコメントです)
ezetimibe(エゼチミブ)は新規の薬剤で,スタチンとの併用でLDL-Cの低下作用が格段に上がることが分かっている。LDL-C低下作用が心血管イベントを抑制することはスタチンの一連の試験で明らかにされているところから,エゼチミブとの併用がさらなる効果を上げることが期待されている。
しかしながら,本試験では強力なLDL-Cの低下作用は示したものの,家族性高コレステロール血症(FH)の頸動脈の内中膜肥厚度(IMT)の改善をもたらさなかった。
この結果が,エゼチミブの有効性を否定するものか否か議論になっている。
本試験の対象者はFHであるが,他の危険因子はほとんどなく,年齢も約46歳で半数が女性である。
さらにその81%はスタチン治療を受けている患者であり,FHとしては低リスク群といえる。
そのためともいえるが,ベースラインの頸動脈のIMTは約0.7mmと正常範囲である。
基本的にはこのような対象者を選択したこと自体に問題があったのではないかと思われる。
しかも試験期間は2年であり,正常のIMTの改善を観察するには短期間過ぎるように思われる。
今後,もう少し,緻密な試験デザインを組むという努力が必要と思われる。
小腸由来のコレステロールの影響をみることができるという期待もあり,2011年に終了する臨床的アウトカムをみるIMPROVE-ITという試験の結果を待ちたい。

(デザイン上の問題を指摘して、寺本先生の立ち位置を教えてくれているようなコメントです)
 

重要性を増す大規模臨床試験JELISへの期待
http://www.mochida.co.jp/dis/jelis/jlnwepm1.html
「エパデール」が糖代謝異常症例において冠動脈イベントを抑制
http://www.mochida.co.jp/news/2007/0920.html
EPA
http://blog.m3.com/reed/20080403
JELIS 臨床試験   EPA 製剤の冠動脈イベントに対する効果
http://tomochans.exblog.jp/2629908/
 

読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。

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ふくろう医者の診察室
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(一般の方または患者さん向き) 
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昨日の続きです。

Discussion
わが国におけるエゼチミブの臨床的位置付けを考える
コレステロール吸収の亢進は脳・心血管イベントの発症と関連

木下 
コレステロール吸収に関する最近の知見と,コレステロール吸収阻害の意義についてお話しいただきました。
報告によると,わが国でも血清コレステロール値は1970年代から年々上昇していることがうかがえますね。

吉田 
食生活の欧米化や運動不足などが大きく影響しているものと思われます。
しかし,1990年以降はほぼ横ばいに推移していますが,その背景には健康管理に関するさまざまな情報発信,啓発活動の蓄積や脂質低下治療薬の発展があると思います。

木下 
脂質異常症の場合,薬物療法を開始する前に食事療法から実施されると思いますが,手応えはいかがでしょうか。

鈴木 
なかなか難しいですね。
患者さんに血清脂質値が高いことを告げると,「脂質類の摂取量は少ないと思う」と回答される方が大半です。
それが本当だとしたら,そうした患者さんではコレステロール吸収が亢進していることになりますね。

森 
血清コレステロール値が高いと脳・心血管イベントの発症リスクが増大することは明らかですから,管理を徹底する必要があります。
しかし,食事療法による管理を継続的に十分に行うことは難しいですね。

鈴木 
古い報告ですが,小腸の部分切除によるコレステロール吸収の抑制で脳・心血管イベントが35%低下する報告もあり,吸収抑制によるイベント抑制効果が期待されます。

森 
コレステロール吸収に関して,食事由来の劣化変性した酸化コレステロールは動脈硬化惹起性が高いので,エゼチミブによるこの酸化コレステロール吸収の抑制がなんらかのイベント抑制に関与している可能性はあります。

コレステロール吸収亢進例はエゼチミブのよい適応
木下 
先生方は既に臨床でエゼチミブを使用されていますね。

寺内 
はい。例えば糖尿病や肥満,高血圧,脂肪肝を合併した高コレステロール血症患者で,生活習慣の改善によってもLDL-C値の低下が不十分であった症例にエゼチミブを単独投与したところ,LDL-C値は1ヵ月目から確実に低下しました*。
また,虚血性心疾患を合併した症例で,スタチンを使用していてもLDL-C値が200mg/dLをなかなか切れなかった方にエゼチミブを併用しました。
その結果,LDL-C値は125mg/dLに低下し,管理目標値への達成まであと少しというところまで改善しています。

木下 
エゼチミブはLDL-C値を低下させるだけでなく,TG値も低下させますから,こうした肥満例では,肝臓への脂肪の蓄積にも影響を及ぼす可能性がありますね*。

森 
私の経験では,糖尿病の有無にかかわらず,エゼチミブの単独投与によりLDL-C値は約20%低下しましたが,非糖尿病例に比べて糖尿病例で有効性が得られやすいという印象があります*。

鈴木 
私の経験でも,糖尿病合併例ではエゼチミブの単独投与によって,LDL-C値は約30%低下しています*。

木下 
糖尿病患者では小腸刷子縁のNPC1L1発現が亢進しており,コレステロール吸収が亢進していると考えられますから,糖尿病を合併した高コレステロール血症患者は特にエゼチミブのLDL-C低下効果が期待できます*。

寺内 
そうですね。わが国での糖尿病患者に対するエビデンスが少ないので,今後,さらにエビデンスを蓄積していくべきと思います。

木下 
今後,エゼチミブをどのような位置付けで使用されますか。

吉田 
エゼチミブは単独でLDL-C値を約20%低下させ,TGやHDL-Cにも好影響を及ぼしますから,メタボリックシンドロームを合併した高コレステロール血症患者にも有用だと考えています。
また,ハイリスク患者ではエゼチミブとスタチンを併用することで,脂質管理は容易になりますので,積極的に使用したいと思っています。

鈴木 
糖尿病や肥満を合併した患者など,明らかにコレステロール吸収が亢進していると考えられる場合には,エゼチミブを単独で使用していきたいと思います*。

森 
エゼチミブは肝臓の薬物代謝酵素による代謝を受けず,その大半が糞便中に排泄されることや,潜在的な腎機能障害を有する高齢者にも使用が可能である点で,臨床的メリットは大きいと思います。

木下 
わが国におけるエゼチミブの臨床的有用性について議論してきました。

糖尿病合併の患者さんにおいては、空腹時血糖の上昇が報告されており、慎重投与になっています。

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41170541&year=2008

出典 Medical Tribune 2008.4.24
版権 メディカル・トリビューン誌

<コメント1>
ENHANCE試験の結果を知ってからこの記事を読むと、単独やスタチンとの併用による臨床的アウトカムの欠如に思い至ります。
コレステロールを下げればMACEが減らせるという呪縛に捉われているような気がします。
スタチンには多面性作用(最近ではARBについてもいわれていますが)が期待できます。
今のところエゼチミブにはそれはないようです(私の不勉強なら申し訳ありません)。
ENHANCE試験の結果もそのあたりが関係しているかも知れません。
ただし、この試験にはコレステロールとの因果関係がより強いと思われる冠動脈を対象とせずに頚動脈で検討しています。
またIMT測定という、「ノミのき○た○八つ裂き」レベルの測定です。

エゼチミブについては今後IVUSによる検討も行われるものと思われます。
それまでは最終的評価は「お預け」になるものと予想されます。
私個人としては梗塞再発予防の際に、抗血小板剤は別としてスタチン以外に併用剤としてエゼチミブを選択するかEPAを選択するかという戸惑いがあります。
CCBの位置付けも気になるところです。
コメントをお待ちしています。

 

Drugs Affecting Lipid Metabolism 2007 WILL Medical Congress Report
http://www.will-medical.com/dalm2007/index.html
スタチン+エゼチミブ併用は体内動態に影響しない
スタチンの登場により脂質低下治療は飛躍的な進歩を遂げた。
しかし一方で, LDLコレステロール低下が十分でない患者は多く取り残されている。
このため,スタチンへの他剤併用の必要が生ずるが,その際薬物相互作用に留意が求められ,以前よりいわれているチトクロームP450(CYP)を介した相互作用だけでなく,排泄に用いられる輸送体への影響,またグルクロン酸抱合に与える影響をも考慮すべきである。
 
エゼチミブはCYPによる代謝を必要とせず,グルクロン酸抱合を経て排泄される。
スタチンにエゼチミブを併用しても体内動態は日内変動を含め,影響しないことが確認されており,現時点でエゼチミブは併用薬として非常に有用な薬剤であると考えられる。
 
一方,フィブラート製剤はスタチンとの併用による副作用の問題があり,実際ゲムフィブロジルによるスタチンの血中濃度の変動が認められている。
その中で,フェノフィブラートがシンバスタチンの体内動態に影響を与えないことがわかっており,現在,2型糖尿病に対するシンバスタチン+フェノフィブラート併用による心血管イベント抑制作用をシンバスタチン単独と比較するACCORD試験が進行中で,2010年には結果が報告される予定である。またエゼチミブ,ナイアシンもそれぞれスタチンと併用時の臨床的有用性を検討する臨床試験が行われており,「脂質低下併用療法のエビデンスの蓄積にともない,選択肢は増えていくだろう」とCorsini氏は結んだ。

エゼチミブは90%近い患者で効果あり
■中等~低リスク例ではエゼチミブによる単剤治療の可能性も
Hoag氏らは2005年9月から2007年4月の間に自施設にてエゼチミブが投与された142例において,服薬前後の血清脂質の変化を調べた。
服薬前値として,処方開始後に最初に行った血清脂質検査値が用いられ,平均服薬期間は28日間(14~185日間)であった。
 
結果,LDLコレステロール(LDL-C)は158.7mg/dLから118.0mg/dLへ有意(p<0.001)に低下したが,LDL-C低下効果に男女差はなかった。
 
次にLDL-C変化率により「0%未満」を「無効」,「0~5%未満」を「反応無し」,「5~20%未満」を「やや有効」,「20~40%未満」を「有効」,「40%以上」を「著効」に分け判定したところ、それぞれ「5.1%」,「7.3%」,「24.6%」,「47.8%」,「15.2%」であり,87.6%がやや有効以上の効果であった。
 
「患者によりエゼチミブへの反応性が異なる以上,早期に薬剤反応性をチェックし,高リスク患者ではスタチン併用の必要性,中等度~低リスク患者ではエゼチミブ単剤治療の可能性も検討できる。また高用量スタチンによる筋障害が懸念される場合,低用量スタチンとエゼチミブの併用は好ましい選択肢だろう」とHoag氏らはまとめた。

エゼチミブとスタチンの併用投与で酸化ストレスが減少
■酸化ストレスおよび酸化LDLはエゼチミブとスタチンの併用投与で有意に低下
対象は40~60歳の高コレステロール血症患者20例。直近3カ月間に脂質低下薬を服用していないことが導入条件であったためLDLコレステロール(LDL-C)平均値は231.4mg/dLという高値であったが,トリグリセリド(TG)は146.0mg/dLと正常範囲内であった。
 
これら20例にシンバスタチン20mg/日とエゼチミブ10mg/日を3カ月併用投与した。
試験期間中,脂質低下薬以外の薬剤および食事療法は変更しなかった。
薬剤投与前後で血清脂質ならびに酸化ストレスのマーカーとして赤血球中のSOD(superoxide dismutase)活性,血清MDA(malondialdehyde)活性,酸化LDLとこれに対する抗体を測定した。
その結果,LDL-Cは115.7mg/dLへ低下し(p<0.001),TGも137.2mg/dLに低下した。
またアポ蛋白Bの濃度も136mg/dLから125mg/dLへ有意に低下した。
HDLコレステロールは56.9mg/dLから63.1mg/dLへ有意に増加していた(いずれもp<0.05)。
 
また,酸化LDL,酸化LDL抗体(Igox LDL)ともそれぞれ42.0%,43.6%有意に減少し,また血中MDA濃度も42.6%,SOD活性は15.1%,いずれも有意に低下し酸化ストレスが著明に抑制された(いずれもp<0.001)。
 
Steinerova氏は「エゼチミブとスタチンの併用投与は脂質代謝の改善だけでなく,LDL-Cの酸化変性の抑制の観点からも有用であると考えられる」と結論した。

スタチンへのエゼチミブの追加投与によりLDLの酸化が抑制
■LDLの酸化がスタチン単独期に比べエゼチミブの追加投与で34%有意に低下
対象患者はシンバスタチンの固定用量による治療で米国脂質管理ガイドラインNCEP ATPIIIのLDLコレステロール(LDL-C)目標値に達していなかった22例。
平均年齢は59歳で,7例に冠動脈疾患,3例に脳血管障害が認められた。
 
これら22例にシンバスタチン20mg/日による治療を6週間継続後,エゼチミブ10mg/日を追加し,さらに6週間治療を行った。
その結果,シンバスタチン単独投与期に131mg/dLであったLDL-C値はエゼチミブの追加投与により101mg/dLへ有意に低下した。
またトリグリセリドも同様に191mg/dLから182mg/dLへ有意に低下した(いずれもp<0.05)。
 
さらに注目されるのは,代表的な酸化LDLの指標であるLDLに含まれるMDA(Malonedialdehyde)の換算量(酸化されたLDLを還元するために必要なMDAの量)がシンバスタチン単独投与期に比べエゼチミブ追加投与期では34%も有意(p<0.05)に低下した点である。
エゼチミブによる抗酸化作用の増強を示唆するデータであるが,事実,LDL酸化のLag timeもシンバスタチン単独投与期の55.9分から82.7分へと著明に延長していた(p<0.05)。
 
「スタチン服用患者にエゼチミブを追加すると,抗酸化作用が増強される」とHussein氏は結論した。
 
 

<コメント2>
外はいいお天気です。
GWとはいえ月初め故自宅にこもってレセプト点検中です。
例年のことといえ開業医のGWはこんなものです。
さて点検中に請求点数を拾ってみました。

ゼチーア(10)1錠 24点

クレストール2.5 1錠 8点
ソルミラン顆粒状カプセル600mg3包 27点
(エパデールの後発品)

ゼチーアの点数が異様に高いのに気づきます。
クレストールの3倍の薬価です。
効果は3分の1に思われるのですが。

他に
「井蛙内科/開業医診療録」 
http://wellfrog.exblog.jp/ 
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)                 があります。

 

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ENHANCE 試験の発表以来何かと話題のエゼチミブ(商品名:ゼチーア)で勉強しました。


エゼチミブ(商品名:ゼチーア)
http://blog.m3.com/reed/20070927/1
 

エゼチミブの臨床的有用性を考える
http://blog.m3.com/reed/20080116/1
 

ENHANCE試験
http://blog.m3.com/reed/20080418/ENHANCE
 

ENHANCE試験をめぐる論争 その1(1/2)
http://blog.m3.com/reed/20080428/1
 

ENHANCE 試験をめぐる論争 その2(2/2)
(リンクがうまくできませんでした。すいません。)


わが国におけるコレステロール吸収阻害の臨床的意義
コレステロールトランスポーター阻害剤エゼチミブの臨床的有用性
高コレステロール血症の治療において基本である食事療法を継続することは容易ではなく,さらに薬物療法によってもガイドラインが推奨するLDLコレステロール(LDL-C)の管理目標値への到達率は満足できるレベルとは言い難い。
こうした状況のもと,わが国においても小腸コレステロールトランスポーター阻害剤エゼチミブが臨床導入された。
今回の座談会では,循環器や内分泌・代謝領域における第一線でご活躍の先生方にお集まりいただき,エゼチミブの登場によってわが国の高コレステロール血症の治療はどのように変わるのか,その臨床的位置付けについて討論いただいた。

帝京大学医学部内科学教授
木下 誠 氏(司会) 

横浜市立大学大学院医学研究科分子内分泌・糖尿病内科学教授
寺内 康夫 氏 

東京都老人医療センター内分泌科
森 聖二郎 氏 

東京慈恵会医科大学臨床検査医学准教授 附属柏病院中央検査部診療部長
吉田 博 氏 

新潟県済生会新潟第二病院代謝内分泌内科
鈴木 克典 氏 

Presentation
エゼチミブによるコレステロール吸収制御の重要性
寺内 康夫 氏 横浜市立大学大学院医学研究科分子内分泌・糖尿病内科学教授
コレステロール吸収の亢進は脳・心血管イベント発症のリスク
生活習慣の欧米化により,わが国においてもコレステロール摂取量が増大し,それに伴い血清コレステロール値も増加傾向にある。
いまや,日本人の血清コレステロール値は米国人とほぼ同レベルに達したと考えられる。
本邦における動脈硬化性疾患予防ガイドラインでは,患者の保有する冠動脈疾患のリスクに応じた血清LDLコレステロール(LDL-C)の管理目標値を設定しており,低リスク例ではまず食事・運動療法をはじめとした生活習慣の改善による脂質管理を行うよう推奨している。
しかしインターネットを用いた食事療法に関する意識調査では,食事療法への取り組みを,患者は高く自己評価しているのに対して,医療従事者では不十分と捉えているなど,双方で認識に相違のあることが明らかとなった。
また,食事療法を継続することは,患者にとって容易なことではないとの結果も得られた。
さらに,薬物療法の実態を調査したJ-LAPの成績から,ハイリスク患者ほどガイドラインが推奨するLDL-C管理目標値への到達率は低いことが明らかとされ,さらなる積極的な介入が必要と考えられる。
 
血中のコレステロール量は肝臓での合成と小腸からの吸収のバランスによって成り立っている。
コレステロール吸収に関しては,冠動脈疾患の既往例,肥満者で亢進していること,糖尿病患者では小腸のコレステロールトランスポーターであるNPC1L1蛋白(Niemann-Pick C1 Like-1)や,コレステロールとトリグリセライド(TG)を会合させリポ蛋白の合成に関与するMTP(Microsomal Triglyceride Transfer Protein)の発現が亢進していることなどが報告されている。
さらに,コレステロール吸収の亢進と冠動脈イベントの発症との関連性を調査した疫学研究が報告されている。
例えば,大規模臨床試験Scandinavian Simvastatin Survival Study(4S)のサブ解析では,コレステロール吸収が亢進している群において,合成抑制による冠動脈イベント抑制効果が減弱すること,冠動脈疾患を有する患者を対象としたDEBATE(Drugs and Evidence-Based Medicine in the Elderly)試験では,LDL-C値が同等であってもコレステロール吸収が高い群では脳・心血管イベントの発症リスクが高いことが報告されている(図1)。


これらのことから,脳・心血管イベントの抑制を目指したLDL-C低下療法には,コレステロール吸収の抑制が重要と考えられる。

高コレステロール血症治療の選択肢を広げるエゼチミブ
新しく開発された小腸コレステロールトランスポーター阻害剤エゼチミブは,小腸の刷子縁に発現するNPC1L1に作用してコレステロール吸収を選択的に阻害する。
わが国における臨床試験成績では,1日1回10mgの単独投与によってLDL-C値は約18%低下し,TGやHDLコレステロール(HDL-C)に対しても好影響を及ぼすことが確認された。  
最近では,エゼチミブは動脈硬化との関連性が高いSmall, dense LDLを低下させ,特にTG値の高い患者ではその低下効果が著しいことが報告された図2)。
                                                     

 

さらに,ニュージーランド白ウサギに対して,ピュアなコレステロールのみを投与した場合と,加熱処理して5%のみ酸化コレステロールを含むコレステロールを投与した場合,同じ濃度のコレステロールであっても,加熱処理をした酸化コレステロールを取った場合には,動脈硬化面積が約2倍になると報告されている。
エゼチミブは食物の調理や保存によって劣化変性した酸化コレステロールの吸収をも阻害することが報告されており,体内のコレステロール代謝において質的に好影響を及ぼし動脈硬化の進展を抑制する可能性が示唆されている。
エゼチミブはスタチンとの併用時には強力なLDL-C低下効果を発揮する。                                                海外で行われた大規模臨床試験EASE(Ezetimibe Add-on to Statin for Effectiveness)では,スタチンにエゼチミブを併用することによってLDL-C値はさらに約25%低下し,その効果はスタチンの種類や用量の違いにかかわらず一貫して認められている図3)。

また,TGやレムナント様リポ蛋白コレステロール(RLP-C),炎症マーカーである高感度CRPなどが相加的に低下することも報告されている。
 
このようにエゼチミブは,さまざまな病態の高コレステロール血症の薬物治療において単独投与,スタチンとの併用など,治療の選択肢を広げる有用な薬剤であると考えられる。

 

わが国におけるコレステロール吸収阻害の臨床的意義
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41170541&year=2008

出典 Medical Tribune 2008.4.24
版権 メディカル・トリビューン誌

 

<番外編>Ca拮抗薬、BNP
BNP(brain natriuretic peptide,脳性ナトリウム利尿ペプチド)は心室で合成分泌され、心不全の重症化(左室拡張末期圧上昇、拡張末期溶積増大、左室駆出率低下、左室肥大など)とともに、合成と血中への放出が亢進する。
 
Ca拮抗薬投与中に下肢浮腫をしばしば経験するが、ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬(ニフェジピン、アムロジピンなど)で高頻度に認められる末梢浮腫は細動脈が拡張するのに、細静脈の拡張が伴わず、これにより毛細血管圧が上昇することにより生じた浮腫である。
つまり全身的な水分貯留を伴わず、心不全による浮腫とは異なる機序であり、一般的にBNP値は変動しない。
 
一方、非ジヒドロピリジン系、拮抗薬であるベラパミル、ジルチアゼムは陰性変力作用を有するため、下肢浮腫が出現した場合には心不全の増悪を念頭に置くべきであり、BNP値は一般に高値を示す。
また、インスリン抵抗性改善薬ピオグリタゾンの場合にも、浮
腫とともにBNPが上昇するような場合には心不全の出現に注意す
べきである。
   
日本医科大学千葉北総病院内科・循環器センター
福島正人・清野精彦 先生A

出典 日本医事新報 No.4383 2008.4.26p86
版権 日本医事新報社


NT-proBNPについて(2007.9.6)
http://blog.m3.com/reed/20070906/NT-proBNP
というタイトルでの当ブログで以下のようなコメントをいただきました。

以前BNPの臨床研究に携わった事がある者です。
「今のところ、BNPがNT-proBNPに優る点がイメージできません。」とのことですが、私は逆にNT-proBNPがBNPに勝るところが見つかりにくいと感じています。

というのは、NT-proBNPは100%腎臓で代謝されるため、あまりにも腎機能の影響を軽度の腎機能低下の時から受けてしまうので心臓の検査としては特異性が低くて使えないという印象があります。その点、BNPは受容体による代謝メカニズムがあるので腎機能にはあまり依存しません。

また、両者の相関を見ると、本来は合うはずなのにNT-proBNPの方がはるかに高い値をとってしまうことが多く、しかも患者によって両者の関係がかなり異なることが分かりました。すなわち、相関係数が悪かったのです。そして、その理由が腎機能だけでは説明がつきませんでした。

検査結果が早くわかることは大切なメリットですが、検査として臓器特異性がかなり劣るものはちょっと使い辛いし、患者の誤診につながるものと心配しています。
written by kazu / 2008.03.12 22:50

昨年、このブログを書いた時点では私自身ちょうどBNPからNT-proBNPに切り替えた時でした。
その後、データが集積して来るとNT-proBNPがとんでもなく高い患者さんもいて、NYHA分類との相関も怪しいのではないかという印象をもつようになりました。
3月に kazu 氏にコメントをいただき納得出来た次第です。
現在はBNPに戻して検査を行っています。
(恥を忍んで告白しますが、ワーファリンのコントロールの指標として、ごく最近までTTを用いていていました。1年前よりやっとINRに切り替えました。未だに慣れないせいもありますが何だかピンときません。)

 

 

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ENHANCE試験

戯れ言たれる侏儒 / 2008.04.18 00:08 / 推薦数 : 0

ONTARGETもそうですがENHANCEもセンセーショナルな話題をまき起こしています。
先日MRさんとの面会の際に、発売元のシェリングプラウのMRさんが
N. Engl J Med2008 April 3; 358(14): 1431-43.
の抄録(日本語訳)を私に恥ずかしそうに差し出しました。
頚動脈内膜中膜肥厚の平均変化量(±SE)がシンバスタチン単独群で0.0058±0.0037mm、シンバスタチンとエゼチミブ併用群で0.0111±0.0038mm(p=0.29)ということです。
この検査法自体の精度、そしてこの数字は実際測定出来るような数字ではなくあくまでも計算上の数値であることが気になりました。
私自身不勉強で、頚動脈内膜中膜肥厚が脂質異常症と血圧のどちらの影響を多く受けるかを知りません。
血圧の要因の検討がされていない点も少し気になりました。
いずれにしろ米国内ではかなりショッキングな結果だったようで株価やTV広告にも影響が出たとのことです。

以下は
http://www.watarase.ne.jp/aponet/topics/0801topics/080117.html
での、この試験の概略の紹介です。

このENHANCE試験は、家族性高コレステロール患者720人をシンバスタチン80mg投与群、シンバスタチン80mgとエゼチミブ10mg(日本名:ゼチーア)の合剤(米国では“Vytorin”という名前で合剤が承認され、広く使われている)を投与した群に分けて効果を調べた二重盲検ランダム化試験です。
合剤を投与した群でLDL-C値の低下が認められたものの、心臓病の発症リスクなどは有意差が認められなかったとする結果が得られました。

特に今回の結果では、LDL-Cの低下があっても動脈硬化の指標となる頚部動脈の内膜-中膜の厚さ(intima-media thickness)に大きな差が見られなかったことから、エゼチミブの有用性だけではなく、LDL-C値の低下を目的としたスタチンの有用性についての議論が巻き起こっています。
http://www.watarase.ne.jp/aponet/topics/0801topics/080117.html

 

コレステロール低下薬で大論争
「効果は薄い」と製薬会社を非難する声上がる
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20080125/145406/
Drugs Do Any Good?
Research suggests that, except among high-risk heart patients, the benefits of statins such as Lipitor are overstated (BuicessWeek 2008.1.17)
http://www.businessweek.com/magazine/content/08_04/b4068052092994.htm


2008.01.28 コレステロール低下薬の有用性で波紋(米国)
http://www.watarase.ne.jp/aponet/topics/0801topics/080117.html
今回の発表を受けて両社の株価は下降、またVytorinの処方数の急減、Vytorin、ZetiaのTV広告の一時停止などの影響が広がっている他、米FDAは今回の発表に関して、今後6ヶ月かけてデータを詳しく分析するとするEarly Communicationを出して、国民に冷静な対応をするよう呼びかけています。

 

最後にケアネットの記事からの紹介です。

エゼチミブの動脈硬化抑制効果は確認できず
日本では昨年発売となった高脂血症治療剤エゼチミブ(国内商品名:ゼチーア錠)。
スタチン系薬剤シンバスタチンとの併用でのアテローム性動脈硬化症に対する効果について、臨床試験「ENHANCE」の結果が公表された。
Academic Medical Center(オランダ)John J.P. Kastelein氏らによる試験結果の公表は米国心臓学会で席上と同時に、同日発行のNEJMオンライン版(2008年3月30日付)で世界に伝えられた。
本誌では2008年4月3日号にて掲載。

家族性高コレステロール血症患者720例を2年間追跡
「ENHANCE」は北米、西欧、南アフリカの18施設で2002年8月から2006年4月の間に、家族性高コレステロール血症患者720例が参加した。
各対象者には24ヵ月間にわたり連日、シンバスタチン80mg+(エゼチミブ10mgまたはプラセボ)を併用投与し、効果を比較する二重盲検無作為試験で、頸動脈壁と大腿動脈壁の内膜中膜の厚さをBモード超音波検査法によって評価した。

主要評価項目は頸動脈内膜中膜厚の平均値の変化。
左右の総頸動脈と頸動脈球部、内頸動脈それぞれの遠位壁における内膜中膜厚を測定し、各平均値の平均を主要評価項目と定義付けた。

LDL-C値は低下したが頸動脈壁の厚さに有意差なし
主要評価項目である頸動脈内膜中膜厚の平均値(±SE)の変化は、シンバスタチン単独群では0.0058±0.0037mmだったが、シンバスタチン+エゼチミブ併用群では0.0111±0.0038mm(P=0.29)。

頸動脈に大腿動脈も含めた内膜中膜厚の他の変数からなる副次的評価項目