戯れ言たれる侏儒
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高血圧性網膜症の進行で心血管疾患リスクが高まることはこれまでに明らかにされていたが,軽度の段階から,また一般住民でもリスクとなるのかは未解明であった。
そこで,獨協医科大学公衆衛生学講座の西連地利己准教授らが,茨城県健康研究の住民コホートを調べたところ,軽度網膜症の段階から総死亡や心血管 疾患死亡リスクが上昇していた。
この傾向は正常血圧者でも示され,正常血圧段階からのリスク上昇の原因解明が期待される結果となった。
調査の詳細はCirculation(2011; 124: 2502-2511)に発表された。
 
約10万人の一般住民から得た眼底所見を分類・解析
茨城県健康研究(Ibaraki Prefectural Health Study;IPHS)は,1993年から茨城県と同県総合健診協会が主体となって健診事業とともに進めているもので,西連地准教授も同協会の研究員の1 人として,健診の実施やデータ解析を進めてきた。
 
健診は9万7,042人(うち男性3万3,130人)が受け,健診項目には眼底所見も含まれていた。
所見の評価法について指導を受けた医師が Keith-Wagener-Barker分類に基づき4段階(網膜細動脈に軽度の狭窄や硬化が認められるグレード1,それらが進行したグレード2,さら に浮腫が認められるグレード3~4)で網膜症の進行を評価した。
 
今回の検討では,8万7,890人について,1993年のベースラインで網膜症の所見がない正常群(2万2,444人)とグレード1群 (6,117人),グレード2群(1,356人)に分け,2008年までのデータを解析した。
データが不完全な4,067人と脳卒中・冠動脈疾患既往を有 する4,996人,さらに同分類でグレード3以上だった89人は除外された。
 
対象集団の患者背景は,男性の平均年齢が正常群58.5歳,グレード1群64.7歳,グレード2群66.2歳。同様に男性の収縮期血圧(SBP) は順に133.7mmHg,142.5mmHg,151.2mmHgで,グレードが上がるにつれて心血管危険度が強まる傾向が示された。
これは女性でも同様だった。
 
軽度網膜症例の心血管疾患死リスクは正常血圧であっても高い
平均14.1年の追跡の結果,総死亡は1万2,946人で,そのうち心血管疾患死が3,697人,脳卒中による死亡が1,746人であった。
 
年齢,SBPレベル,降圧薬の使用などの心血管危険因子に関連する因子で調整したCox proportionalハザードモデルでこれらの死亡リスクを算出したところ,心血管疾患死のハザード比は,正常者と比べて男性ではグレード1群が 1.24〔95%信頼区間(CI)1.12~1.38〕,グレード2群が1.23(同1.03~1.47),女性では同様に1.12(同 1.01~1.24),1.44(同1.24~1.68)といずれもリスクが有意に上昇した。
また,脳卒中による死亡リスクについても,男性ではグレード 1群が1.31(95%CI 1.12~1.50),グレード2群が1.38(同1.08~1.77),女性では順に1.30(同1.12~1.50),1.70(同 1.36~2.11)とそれぞれ有意なリスク上昇が示された。
 
なお,総死亡については,男性ではグレード1群1.09(95%CI 1.04~1.15),グレード2群1.17(同1.06~1.28)と有意なリスク上昇が示された。
女性ではそれぞれ1.02(同 0.96~1.08),1.23(同1.11~1.35)とグレード1では有意ではなかったが,グレードの進行に伴う傾向を見たトレンドP値は有意だっ た。
 
今回の検討では,降圧薬服用なしでSBP140 mmHg未満,拡張期血圧(DBP)90mmHg未満の正常血圧者と高血圧者に分けた検討も行われた。
その結果,高血圧者だけでなく,正常血圧者でもグ レード1,2の網膜症と総死亡,心血管疾患死,脳卒中による死亡のいずれも網膜正常例と比べて有意なリスク上昇が示された(
 
図表
 
近年,正常血圧の段階でも心血管疾患リスク上昇の可能性があると指摘されていたが,今回の検討結果がそうした正常血圧の段階でのリスク上昇解明の手がかりになることが期待される。
<私的コメント>
「正常血圧の段階でも心血管疾患リスク上昇の可能性がある」 ・・・ちょっと理解しにくい表現でした。「網膜症があれば」という但し書きが抜け落ちていたとも思えません。
 
西連地 利己 准教授のコメント
高血圧性網膜症の進行とその心血管疾患リスクについては,米国高血圧合同委員会第7次報告(JNC-7)や欧州における高血圧ガイドライン(ESH- ESC 2007)などで,Keith-Wagener-Barker分類グレード3~4の網膜症における心血管疾患リスク上昇が指摘されている。
しかし,グレード1~2の軽度網膜症でリスク上昇が認められるのか,また,一般住民においてもそのような傾向があるのかどうかは分かっていなかった。
今回,眼底所見が評価項目に含まれた住民健診のデータから,軽度網膜症の段階から一般住民においても心血管疾患死亡リスクが上昇することが明らかになった。
特筆に値するのは,正常血圧者においてもそのようなリスクが確認された点である。
これには仮面高血圧が関与していると推測しているが,定かではない。
今後,この背景が明らかになれば,正常血圧の段階からの心血管疾患リスク上昇の機序が解明されるのではないか。
<私的コメント>
動脈硬化の原因は実に多様(多要素、multifactorial)です。
脂質異常、糖尿病、高血圧の各専門家は、その原因をしばしば我田引水的に自らの専門フィールドで語ろうとします。
昔から、AMIで救急搬送される患者は、かなりの割合でその危険因子が不明であるということを臨床医は経験で知っています。
講演会を聴きに行くと、その臨床事実(リアルワールド)をつい忘れて講演内容に酔いしれてしまいます。

出典  Medical Tribune 2012.1.26
版権  メディカルトリビューン社

 
 

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高血圧患者の初診

戯れ言たれる侏儒 / 2012.02.07 00:10 / 推薦数 : 0
東北労災病院 高血圧内科・部長による「高血圧患者を初診で診察する際の心得」についての解説記事で勉強しました。

問診の勘所:高血圧の罹病期間は注意深く聞く
日本人の高血圧人口は4,000万人です。
高血圧は一般内科医が診る患者の中で最も多い疾患の1つだと思います。
特に2008年からは40歳以上の被保険者に特定健診が義務付けられましたので,高血圧患者が発見される機会も増えてきたと思われます。
先のアンケートでも,半数以上の方は患者の3分の1超が 高血圧であると答えています。
患者数が多い分,病態もさまざまで,すぐに薬物治療が必要な患者がいる一方で,まず非薬物療法で開始すべき患者もいます。
初診では,直ちに投薬すべきかどうかの判断が重要になると思います。
 
そこでまず把握したいのが,血圧の推移と臓器障害の情報です。
外来では,「症状はないが健診で血圧が高いから受診を勧められた」あるいは「症状があって 自分で血圧を測ってみたら高かった」というような方が多いと思います。
「親が高血圧で脳卒中になったので心配だ」というような方もいます。
まず,どれくらいの期間,高血圧が続いていたのかを聞き取りましょう。
かなり以前から高血圧を指摘されていた方であれば,その影響は臓器に現れる可能性が高く,降圧薬を速やかに開始した方がよいことが多いと思います。
 
一方,最近になって血圧が上がってきたという場合は,臓器の変化が読み取れない可能性があります。
この場合,ストレスや不眠,あるいは体重の増加など, 血圧を上昇させる外的要因,身体変化についてもよく聞き取る必要があります。
痛み止めなどの薬も血圧を上昇させることがありますので,服用中の薬については念入りに聴取します。
 
なんらかの原因で一過性に血圧が上がった方に,そのときの血圧だけで判断して,強力な降圧薬を投与すると,低血圧の副作用が発生しやすくなります。
高血圧の履歴を正確に把握することが大切です。
健診を初めて受けて高血圧を指摘された方の多くが,かなり以前から血圧が高かったとしても,「初めて高血圧を指摘された」と答えますので,健診をいつごろから受診していたかについても把握する必要があります。
 
検査の主眼:薬物治療開始のタイミングを把握
次に検査です。
臓器障害のチェックと併存するリスクの有無を明らかにします。
臓器障害については,通常,一般医家で行えるのは,胸部写真と心電図,尿一 般と血液生化学(肝機能,腎機能,尿酸,脂質,糖代謝)ではないかと思います。
さらに細かい検査として,頸部エコーや心エコー,足関節上腕血圧比 (ABI)の計測などがあります。
それらの計測が可能な施設では積極的に利用し,臓器障害を明らかにするとよいでしょう。
以上のデータと問診,血圧値から 患者の重症度を明らかにし,治療方針を決定します(表1)。
 
 
なお,病院で測定する血圧は変動しやすいため,日を替えて複数回血圧を測定し,判定するのが原則です(表2)。
 

Ⅱ度以上の高血圧の場合は基本的に,薬物治療を即開始することが多いと思います。
Ⅰ度の高血圧の場合は,高血圧以外のリスクや臓器障害を慎重に見極めて 薬物治療を開始するか,まず非薬物療法でいくかを判断します。
臓器障害が全くない患者では,白衣高血圧の存在を念頭に置き,家庭血圧を記録してもらってから,薬物療法を考慮するという選択もあります。
 
なお,減塩や減量など高血圧の非薬物療法は,患者の生活実態を把握した上で,実行可能な目標を設定することが求められます。
指導に当たっては,患者の食生活や身体活動に関するアンケートを行い,その内容に基づいて,ピンポイントに指導するのがよいと考えます。
 
家庭血圧の測定は可能な限り最初の段階から指導します。
家庭での自己血圧測定により,白衣高血圧,仮面高血圧を診断できますし,薬物療法,非薬物療法の効果を評価しやすくなり,治療に対するアドヒアランスも向上します。
 
ところで,一般医家の先生から,2次性高血圧の鑑別の仕方が分からないとよく言われます。
高血圧の90%以上は本態性高血圧ですから,まずは本態性と考えて問診や検査を進めます。
その過程で特殊な症状,検査所見が見られた場合,あるいは降圧薬を3剤投与しても目標レベルまで血圧が下がらないというような場合に,2次性高血圧を疑って精査する,あるいは専門医に紹介するという姿勢でよいと思います。
<私的コメント>
私もそんな感じで初診の高血圧患者の診察を行っています。
しかし、こういった方法では必ず二次性高血圧の見逃しが出て来ます。
理屈では初診のチェックが重要と分かっていても左右の血圧差のチェックも行わないのが実情ではないでしょうか。
もっとも最近ではABIの計測が出来るため、四肢血圧のチェック漏れはなくなっています。
高血圧患者の心電図、胸部写真のチェック漏れもしばしばある私としては、検査は「思い立ったが吉日」の方がよいのでは、と思います。
 
腎性の高血圧は尿所見やクレアチニンから,睡眠時無呼吸による高血圧は肥満体質や昼間の眠気などから比較的容易に推測できます。
低カリウム血症が見られれば副腎性のものが考えられます。
<私的コメント>
正常K性原発性アルドステロン症の見逃しが心配です。
 
また,胃薬に含まれる甘草製剤や非ステロイド抗炎症薬(NSAID)が高血圧の原因になることもありますので,薬剤は念入りに聴取しましょう。
 
出典  Medical Tribune 2012.1.26
版権  メディカルトリビューン社

 
 

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減塩の第一歩は食塩摂取量の適正評価
こうしたジレンマがある中で,どのように減塩指導を進めていけばよいのか。
土橋医長は「各個人の食塩摂取量を正しく知ることが基本。摂取量が分かれば,目標達成に向けての具体的な指導と,指導の評価が可能になる」と指摘する。
 
食塩摂取量の評価法には,食事内容に基づく評価と尿中Na排泄量の測定による評価の2通りの方法がある(表3)。
 

図表
 
一般のクリニックなどで実施しやすいのは,1日ないし数日間の食事内容を詳しく聞き取り,食塩量を推測する方法だが,実測値との間にはやや差がある。
最も信頼性が高いのは,24時間蓄尿し,Na排泄量を求めて食塩摂取量を算定する方法だ。
客観的評価が可能なため,多くの疫学研究や INTERSALTなどの疫学研究でも用いられている。
ただ,日中オフィスなどで働いていて蓄尿が難しい患者が少なくない上,反復して測定するのも難し い。
 
そこで,より簡便な測定法として「減塩モニター」が開発された(写真)。
夜間尿(8時間相当)をプールし,それを基に24時間尿中Na排泄量を推定する。
24時間蓄尿に比べ信頼度は劣るものの,毎日家庭での自己測定が可能で,日常生活習慣の改善効果も期待できる。
 
photo
 
減塩モニターの有用性は,九州医療センターに通院する高血圧患者34例に健康ボランティア25例を加えた59例で検証されている。
同モニターを用い て30日間の尿中食塩排泄量を測定した結果,最初の10日間の平均は8.5±1.6g/日であったが,最後の10日間は8.3±1.5g/日と有意に低下した。
この間の減塩指導は,ごく一般的で画一的なものだったという。
 
同医長は「血圧を毎日測るように,減塩モニターで食塩排泄量を反復して測定することで,食塩摂取量への意識が高まり,それが日常生活の見直しへフィード バックされる。減塩を始める動機付けや確認のセルフモニタリング・ツールとして有用」とし,クリニックなどでの積極的な使用を勧める。
 
肥満の是正も減塩効果アップにつながる
減塩効果を上げるための重要なポイントとなるのが肥満の是正だ。
一般に肥満者では過食傾向があり,たとえ薄味を心がけていても,食事全体の量が多くなれば食塩摂取量は増えていく。
実際,土橋医長が高血圧患者290例(男性123例,女性167例)を調べると,男性の39%,女性の18%がメタボリックシ ンドロームと診断された。
これらの患者の尿中食塩排泄量は10.1g/日で,非メタボリックシンドローム例の8.5g/日と比べて有意に多かった。
 
翻って考えれば,肥満を伴うメタボリックシンドローム患者にカロリー制限による減量を指導すれば,おのずと食塩摂取量も減る可能性があるといえる。
ま た,メタボリックシンドローム合併高血圧例には食塩感受性が高いことが報告されており,「減塩の効果がより期待できる」(土橋医長)と言う。
 
減塩による降圧効果は実証済み
では,こうした減塩対策は血圧値にどのように影響するのか。
同センターにおける最近10年間の,尿中食塩排泄量と血圧管理状況を見ると,24時間家庭蓄 尿を繰り返すことによって,食塩排泄量は1998年の9.8g/日から2010年には8.5g/日まで低下。
6g/日未満の達成率も12.6%から 23.6%まで改善した。
減塩指導と降圧薬治療の進歩が相まって,収縮期血圧も143mmHgから129mmHgへと大幅に是正された(図2)。
 
図表
 
土橋医長は「尿中食塩排泄量の反復測定と,患者個々のライフスタイルに合わせた減塩指導の成果」としながらも,一方で,6g/日未満の達成例が4分の1弱にとどまっていることに「あらためて減塩の難しさを実感する」と評す。
 
減塩は高血圧の予防はもとより,心血管イベントやがんの予防にも有効だ。
そのため日本では半世紀も前から減塩が叫ばれ,啓発活動も広く展開されてきた。
しかし前述のように,減塩意識が必ずしも食塩摂取量の減少に結び付いてこなかった。
 
減塩を厳格に達成するには,今後何が必要なのだろう。同医長は「多様なライフスタイルに合った減塩手法の提供が急務だが,個人の努力だけでは限界がある。医師や栄養士だけでなく行政や外食産業などへの働きかけ,協力も欠かせない。食品の食塩表示を変えるのも一案。現在義務付けられているNa表示では, 食塩量を把握するためにはNa量を2.5倍しなければならないが,食塩量が表示されれば,国民の意識は高まっていくだろう。こういった点を少しずつ改善していくことが求められる」と指摘する。
 
日本における食育と減塩
高血圧,肥満,糖尿病などの生活習慣病を予防するには,生活習慣が確立する以前の介入,つまり幼児期から青年期にかけての“食育”が効果的といわれる。
幼いころから身に付いたライフスタイルを成人になってから修正するのは大変だからだ。

そこで,日本では2005年に食育基本法が交付され,翌年に5年間の食育基本計画が策定された。
このプランでは,
(1)食育に関心を持つ国民の割合を 90%以上にする(2)朝食を食べない子供をなくす
(3)食事バランスガイドなどを参照する国民の割合を60%以上とする
(4)メタボリックシンドローム の認知度を60%以上にする—などの目標が掲げられている。
また,食育の場として,家庭,学校・保育所を挙げ,それぞれが協調して食育にまい進することを 提唱している。

食育では,当然ながら食塩やエネルギーの適正量摂取も重要な柱となるが,実行するのは難しいようだ。
例えば,土橋医長が地域の3歳児の食塩摂取量を調べ たところ,平均4.4g/日と同年代(平均体重14kg)の必要所要量を上回っており,過剰摂取(10g/日以上)しているケースも少なくなかった。
味覚はだいたい幼児から小児期にかけて形成される。
そして年齢が上がるほど,濃い味に慣れた舌を変えるのは難しくなっていく。
 
幼小児を抱える母親は20~30歳代が多く,減塩よりもダイエットの関心が高い世代といえる。
日本高血圧学会の減塩ワーキンググループは,減塩レシピを作成して具体的な減塩方法を提唱しているが,こうした母親への啓発にも力を入れていくことが重要だ。
同医長は「幼児期からの減塩の実践が生活習慣病を未然に防ぐ第一歩となる」と力説する。
 
出典  Medical Tribune 2012.1.26
版権  メディカルトリビューン社

 
 
 
 
 
 

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減塩の臨床的効果の評価とともに,減塩を進めていく上での課題や具体策を,滋賀医科大学生活習慣予防センターの上島弘嗣特任教授(同 大学名誉教授)と九州医療センター高血圧内科の土橋卓也医長にインタビューした記事で勉強しました。
2011年に発表された2件の論文を引き金として,減塩の臨床的効果をめぐる論争が展開された。
1つはJAMAに報告された観察研究,もう1つはコクランレビューのメタ解析で,ともに減塩が心血管リスクや死亡の上昇を招く可能性を指摘した。
しかし,このデータについては異論が噴出しており,米食品医薬品局(FDA)もあらためて減塩を推進する旨の声明を出した。
では,これまで減塩について多くの検討を重ねてきた日本の研究者は,今回の報告をどのように受け止めているのか。
 
減塩効果に疑問を呈した2論文の解析方法に重大な瑕疵あり
減塩論争の発端となった論文の1つは,ベルギー・ルーベンス大学の研究グループによる観察研究(JAMA 2011; 305: 1777-1785)。
欧州の地域住民を対象とした2件の前向きコホート研究(FLEMEGHO:1985~90年,EPOGH:99~2001年)の参 加者のうち,心血管疾患のない成人男女3,681例(平均40.9歳,追跡期間中央値7.9年)を抽出。
24時間尿中ナトリウム(Na)排泄量別に3群に 分けて,総死亡,心血管死,高血圧の発生を比較したところ,Na排泄量の最も少ない群で,心血管死のリスクが上昇傾向にあったという。
つまり,食塩摂取量が少ないほど,心血管死のリスクが高いと解しうる。

 

上島教授は,この試験の目的自体は妥当であるが,解析方法に大きな問題があると指摘する。
「最大の誤りは,調査期間が10年以上違う2件のコホート研究 を併せて解析してしまっていることだ。イベント発生率を比べても,古いコホートであるFLEMEGHOは高く,新しいコホートのEPOGHは低い。喫煙率 も同様で,学歴も前者で低く,後者で高いという差がある。このように背景因子の大きく異なる集団をプールして一緒に解析するのは非科学的。なぜこのような 方法を取ったのか,首をかしげざるをえない」
 
もう1つは,24時間尿中Na排泄量を調べるための蓄尿の仕方だ。通常,尿量は男性の方が多いはずだが,このデータではむしろ女性が上回っている(表1)。
また,1日の尿量が3,000mLを超える人が多いのに2,500mLしか蓄尿されず,それ以上の排泄量がある人の尿量が反映されていない。
 

では,コクランレビューのメタ解析はどうか。
対象は,2008年10月までに発表された追跡期間6カ月以上のランダム化比較試験(RCT)で,減塩指導か減塩対策による介入を行い,死亡や心血管疾患の発生を指標として検討したもの。
この選択基準に合致した論文は7件あり,対象総数は6,489例(正常血 圧3,518例,高血圧758例,両者の混在1,981例,心不全232例),観察期間は7~36カ月(最長12.7年)だった。
メタ解析の結果,656 例が死亡していたが,総死亡,心血管死の相対リスクは正常血圧者と高血圧者で差がなかった。
一方,心不全患者の全死亡リスクは2.59倍に上昇していた。
この結果について解析したグループは「死亡や心血管死を抑制する減塩のベネフィットは明らかにならなかった」とコメントしている。
 
しかし上島教授は,このメタ解析にも重大な問題点があると指摘する。
まず,取り上げた研究の追跡期間が短すぎるという点だ。
中には7カ月というものもあり,これで結論を出すのは無理があるという。
さらに,減塩効果を均質な集団で比較していない点を挙げる。
「正常血圧者と高血圧,心不全などの患者の減塩は 全く別のもの。
次元の違う集団をメタ解析しても正しい結論は出てこない。
この論文から分かるのは,心不全という特殊な病態を抱えた患者では,減塩が良くないということだけ。
心不全患者は,既にループ利尿薬などを多量に使っているケースがほとんどで,そこへさらに厳しい減塩を行っている。
そうした治療方針そ のものも疑問だし,そのデータを踏まえて,減塩による心血管死抑制のベネフィットが明らかでないと言うのは不適切だ」

 

 

減塩効果を高めるには全国的な環境整備が不可欠

ルーベンス大学グループによる観察研究やコクランレビューに対する,他の日本人研究者の評価も上島教授の考えに集約されるようだ。
同教授も「2つの論文 によって,これまでわが国で積み重ねてきた減塩対策に水を差されることはない。むしろ,論争が起こったことで,減塩への関心がいっそう高まる可能性がある」と前向きにとらえる。
 
そこで問題となるのは,さらなる減塩対策をどう進めていくかだ。
日本人の平均食塩摂取量は,20~30g/日余り取っていた時代から見るとかなり減少した。
しかし現在でも11g/日と,高血圧ガイドラインの目標(6g/日未満)にはほど遠く,世界的に見てもかなり多い。最新のNIPPON DATAによると,食塩摂取量が多く,野菜・果物摂取量が少ないと,10年以内の循環器疾患死亡リスクが高くなる(表2)。
逆に,国民全体で1日当たり1g減塩すれば,収縮期血圧が1mmHg,2g減塩すれば2mmHg下がり,それによって脳卒中など心血管イベントによる死亡者数が大幅に減るという試算もあるという。
 
とはいえ,減塩は容易ではない。
特に難しいのが健康な一般人への啓発だ。
高血圧や心不全などの通院患者では,合併症の予防という動機付けが比較的簡 単で,しっかりした知識と情報を伝えれば,ある程度の減塩は可能になる。
しかし健康人の場合は,減塩への意識が薄く,舌は濃い味,おいしい味に流れてしま う。
 
それを変えるには,国全体の環境整備が欠かせない。
例えば,現在,食品や調理品に表示されているNaに加えて塩分も明記し,食塩への注意を喚起するのも 1つの手だ。
また,加工品の塩分量を少しずつ減らしていくことも大事だ。
同教授は「日本人の舌を濃い味文化から薄味文化に転換していくのは大変だが,減塩 のためにはそのハードルを越えていく必要がある」と話す。
 

減塩の意義や臨床効果は日本で確認されている
土橋医長も今回の論争を巻き起こした2件の研究には否定的で,「欧米諸国に比べ食塩摂取量の多い日本では,高血圧の管理,そして心血管イベントの予防という観点から減塩の意義は極めて大きい」と主張する。
 
とはいえ,日本人の食文化に深くかかわっている食塩摂取を減らすのは容易ではない。
同医長らのグループはアンケートを行い,高血圧患者の多くは減塩の意識を強く持っているものの,それが尿中食塩排泄量に反映されていないことを確かめている(図1)。
また,日本全体で見ても食塩摂取量は,目標の6g/日未満からはるかに遠い11g/日で足踏みしているのが実情だ。
 
 

出典  Medical Tribune 2012.1.26
版権  メディカルトリビューン社


 
<番外編>
武田薬品が高血圧治療薬アジルサルタンの承認を厚生労働省より取得
1月18日: 武田薬品は、高血圧治療薬アジルサルタン(アジルバ)の製造販売承認を厚生労働省より取得したことを発表した。

本承認は国内で実施された4つのフェーズ3試験に基づいており、カンデサルタンと比較した試験では、軽度から中等度の高血圧患者636人において、アジル サルタンによる治療を受けた群で、座位拡張期血圧、24時間自由行動下血圧などにおいて有意に高い降圧効果が示され、安全性と忍容性は同等であった。


本薬剤は、武田薬品が創製した1日1回経口投与の新規ARBである。

https://www.tcross.co.jp/details.php?category=market&no=1534

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EPIC-Norfolk

戯れ言たれる侏儒 / 2012.02.01 00:34 / 推薦数 : 0
腹部肥満と運動不足が高血圧と冠動脈疾患リスクに影響:EPIC-Norfolk
Impact of Abdominal Obesity and Physical Inactivity on the Relationship Between Systemic Hypertension and Risk of Coronary Heart Disease in Apparently Healthy Men and Women 
 
高血圧が冠動脈疾患(coronary heart disease: CHD)のリスク因子であることは周知されている。
しかし,腹部肥満や運動不足などの因子が,高血圧とCHDのリスク増大にどう影響するかは明らかにされていない。
今回,Rheaume氏らは,欧州における大規模疫学研究EPIC(European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition)の一部をなす英国Norfolkの大規模地域住民コホート研究EPIC-Norfolkにおいてこれを検討し,腹部肥満が有意な CHDのリスク因子であることを明らかにした。 

 
■ ウエスト周囲径が大きい群,身体活動度の低い群で収縮期血圧が上昇
Rheaume氏らは,EPIC-Norfolkコホートの登録者25,000例以上(45~74歳)のうち,21,830例(男性9,580例,女性 12,250例)を対象に,腹部肥満および身体活動度と高血圧に伴うCHDリスクとの関連を検討した。
追跡期間11.4年の間に発生したCHDイベントは 2,191件であった。

対象者を,身体活動度については,高い,やや高い,やや低い,低いの4レベルに,ウエスト周囲径(waist circumference: WC)については,男性は小(91cm未満),中(91~98.7cm),大(98.7cm超),女性は小(76.1cm未満),中 (76.1~84.9cm),大(84.9cm超)の各3レベルに層別化して検討した。

その結果,男性では身体活動度が同レベルの場合,WCが大きいほど平均収縮期血圧(SBP)が高くなること,また,WCが同レベルの場合,身体活動度の低 い群は身体活動度の高い群に比べ平均SBPが有意に高いことが示された(WC小・中群:p<0.001,WC大群:p=0.02)。


 
女性でも同様に,身体活動度が同レベルの場合,WCが大きいほど平均SBPは高くなり,WCが同レベルの場合,身体活動度の低い群の平均SBPは身体活動度の高い群より有意に高かった(p<0.001)。

平均拡張期血圧(DBP)についても,男女とも,平均SBPと同様の傾向が示された。

 
■ 正常血圧群でも腹部肥満によりCHDリスクが増大する
男女とも,高血圧とWCは,年齢,喫煙,糖尿病,ホルモン療法など,典型的なリスク因子で補正後も有意なCHDのリスク因子であった。

男性では,WC小・正常血圧群を1とした場合のCHDハザード比は,WC大・正常血圧群2.78,WC大・高血圧群3.32と,CHDリスクが増大した。
また,WC大・正常血圧群のCHDリスクは,WC小・高血圧群と同程度であった。

 
女性でも,WC小・正常血圧群を1とした場合のCHDハザード比は,WC大・正常血圧群2.23,WC大・高血圧群3.11であり,同様の結果が示された。

今回のRheaume氏らの検討では,腹部肥満と運動不足がともに血圧上昇につながること,腹部肥満と高血圧がCHDの独立かつ追加的なリスク因子であり,正常血圧群でも腹部肥満を伴えばCHDリスクが増大することが示された。

最後にRheaume氏は,「腹部肥満と高血圧はCHDの独立リスク因子であり,相互にCHDリスク増大に寄与することが示された」と述べ,CHDの一次 予防においては,身体活動度を上げ腹部肥満の解消を図れば,血圧上昇に伴うCHDリスクの増大を抑制できる可能性があると結論した。

さらに,WC測定と身 体活動度の評価は,臨床現場において高血圧リスクの高い患者,すなわちCHDリスクをもつ患者を見極める指標になるかもしれないと指摘した。

さらに講演後の質疑応答においてRheaume氏は,BMIに関してもWCと同様の結果が得られているものの,WCのほうがBMIより強力なCHD予測因子であったことを明らかにした。
     (BiomedisOnline編集部)
 
■監修者(自治医科大学内科学講座循環器内科学部門・ 苅尾七臣 主任教授のコメント

高血圧における冠動脈疾患リスク:腹部肥満と低い身体活動度により修飾
本研究は,20,000人以上の地域住民の長期観察研究において,
1)腹部肥満と低い身体活動度が相加的に血圧レベルを上昇させ,
2)高血圧と腹部肥満が それぞれ独立して,相加的に将来の冠動脈疾患の発症リスクを増加させることを明らかにしている。

身体活動度は,余暇時間と仕事に関連した身体活動の両方を含めて,生活習慣質問票により評価している。

とくに血圧レベルが低いほど,腹部肥満の冠動脈疾患への相対リスクが増大している。

すなわち,高血圧になってしまえば,肥満の影響は薄れ,高血圧の影響が前面に出てきている。

一方,血圧レベルがその前段階の前高血圧(120~139/80~89mmHg)においても,さらに正常血圧においても,腹部肥満の冠動脈疾患リスクは2.5倍程度あり,腹部肥満のない高血圧患者と同程度である。

本研究の追跡期間は10年間の長期にわたる。

腹部肥満患者の多くにおいて,とくに運動量が少ない例では,ベースライン時において正常血圧あるいは前高血圧であっても,その長期追跡期間中に高血圧へ進展した可能性がある。

地域住民を対象とした自治医科大学コホート研究においても,前高血圧は脳卒中リスクとなっており1),とくに60歳未満の成人において,5年目以降のリスクとなっている2)

また,肥満の前高血圧の規定因子としてのインパクトは若年ほど強かった3)

以上より,身体活動度を増加させ,腹部肥満を改善することで,相加的に血圧レベルの増高が抑制され,さらに降圧を超えた冠動脈疾患のリスク減少が期待できる。

肥満の抑制は,若年・成人の正常血圧あるいは前高血圧の段階においてこそ重要と考える。
 
引用文献
1) J Clin Hypertens (Greenwich) 2007;9(9):677-683
2) J Hypertens 2010;28(8):1630-1637
3) Hypertens Res 2008;31(7):1323-1330
 
http://www.biomedisonline.jp/aha2011hl/8419/Oral.php
(動画あり)
 
 
 

 
 

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第34回日本高血圧学会でのシンポジウムの「アンチエイジング」の記事で勉強しました。
アンチエイジング目指す高血圧研究成果が明らかに
動脈stiffnessの増大や血管リモデリングといった血管の老化は,高血圧の病態と深くかかわっている。
第34回日本高血圧学会〔会長=自治医科大学内科学講座循環器内科学部門・島田和幸教授(同大学病院長)〕のシンポジウム「アンチエイジングからみた 高血圧研究」(座長=愛媛大学大学院分子心血管生物・薬理学・堀内正嗣教授,大阪大学大学院臨床遺伝子治療学・森下竜一教授)では,アンチエイジングの視 点でとらえた最先端の高血圧研究の成果が報告され,長寿遺伝子によるレニン・アンジオテンシン系の抑制,抗酸化作用を有するARB,スタチン,タウリンなどによる抗老化作用の可能性や,脈波伝播速度が全身老化の指標としても有望であることを示す報告などが注目を集めた。

Sirtuin 1遺伝子による長寿機序
レニン・アンジオテンシン系抑制が関与
長寿遺伝子として知られるsirtuin (SIRT)1による延命効果に,レニン・アンジオテンシン(RA)系の抑制が関与することが判明した。
九州大学大学院先端心血管治療学講座の市来俊弘教 授らが,赤ワインに含まれるポリフェノールの一種,レスベラトロール(RSV)のSIRT1活性化機序を検討する中で明らかにした。
 
AT1受容体発現を抑制
SIRT1はヒストンや転写因子の脱アセチル化により抗炎症作用などを発現し,長寿をもたらす。
RSVはSIRT1の活性化を介して,多くの種で延命効果を発現する。

市来教授らは,
(1)ARBのfonsartanが高血圧自然発症ラット(SHR)の寿命を2倍に延長
(2)AT1受容体欠損マウスは長寿
—などの報告に着目。
RSVによるSIRT1活性化がAT1受容体の発現と機能に及ぼす影響を検討した。

まず,ラット大動脈由来培養平滑筋細胞(VSMC)をRSV(100μM)で刺激すると,12時間後をピークにmRNA・蛋白レベルでAT1受容体発現が有意に抑制された。
この作用はSIRT1拮抗薬のニコチナマイド添加により消失することから,SIRT1活性化を介すると推測された。
 
そこで,アデノウイルスベクターを用いて,VSMCにSIRT1を過剰発現させたところ,ウイルス量,すなわちSIRT1発現量に依存してAT1受容体発現が減少。
SIRT1活性化が,AT1受容体発現をダウンレギュレーションすることが分かった。
 
機能的にも,VSMCに空ベクターを感染させた群ではアンジオテンシンⅡ(AⅡ)刺激によりERKの活性化が生じたが,SIRT1を含むベクターで SIRT1を過剰発現した群ではERK活性化が生じないことから,SIRT1の活性化がAⅡの作用を抑制することが証明された。
 
一方,RSVはAⅡにより誘導されるインターロイキン(IL)-6 mRNA発現を濃度依存性に抑制。
これには,RSVによる転写因子CREBとNF-κBの抑制が関与していた。
 
In vivoでの検討により,RSVを投与したマウスでは,AⅡ持続注入によるIL-6産生や冠動脈周囲の線維化が抑制されることも判明した。
ヒドララジンではこうした抑制は認められず,降圧を介した効果でないことも確認された。
 
同教授は「SIRT1による長寿機序には,AT1受容体の発現減少を介したRA系抑制が少なくとも一部関与している」と結論した。
なお,今回用いられたRSV量は赤ワイン125~250瓶に相当するという。


ARB,スタチン,タウリン
幹細胞・血管内皮前駆細胞の活性化介する抗老化作用に期待
日本大学腎臓高血圧内分泌内科学の福田昇教授らは,抗酸化作用を有するARBやスタチン,抗酸化食品のタウリンなどが,血管内皮前駆細胞 (EPC)の機能改善,心臓・腎臓の幹細胞増加を介して高血圧性臓器障害や血管傷害の修復を促し,抗老化作用を発現する可能性を指摘した。

“保存的再生医療”を提唱
最近,幹細胞やEPCが成人臓器にも存在し,臓器障害や血管内皮傷害を修復していることが分かってきた。
一方,高血圧や糖尿病,メタボリックシンドロー ムなど酸化ストレス状態では,組織幹細胞,EPCなど自己修復細胞の機能が低下,最終的に心血管疾患に至ると考えられる。
 
そこで,福田教授らはこれら自己修復細胞に着目。
高血圧性臓器障害,血管傷害における役割と,抗酸化薬,抗酸化食品による抗老化作用を解明するため検討を行った。

脳卒中易発症高血圧ラット(SHR-SP)に食塩を負荷すると,組織AⅡによる酸化ストレスによってEPC数,EPCコロニー形成能の低下や心筋幹細胞,腎髄質幹細胞〔Label-retaining cell(LRC)〕の著明な減少が認められる。
この食塩負荷SHR-SPにARBを投与すると,
(1)抗酸化薬tempolと同等にEPC数が増加(ロサルタン)
(2)EPCコロニー形成能が著明に改善(ロサルタン,バルサルタン,カンデサルタン)
(3)心筋幹細胞が有意に増加(カンデサルタン)
(4) 腎髄質LRC数が有意に増加(バルサルタン)
—が判明した。

 
EPCコロニー内にはAⅡ産生系のすべての構成因子の存在が認められ,ARBによるEPC機能の改善はARBの直接作用と考えられた。
 
一方,スタチンにはpleiotropic作用が存在し,強い抗酸化作用を示す。
同教授らも,アトルバスタチンによりEPCコロニー形成能の改善,EPC数の有意な増加,酸化ストレスの有意な減少を見いだした。
 
臨床的にも,本態性高血圧症患者30例におけるロサルタンとサイアザイド系利尿薬・トリクロルメチアジドのクロスオーバー試験で,ロサルタンによる EPCコロニー形成能の有意な改善が判明(P<0.01)。
さらに,食生活による抗老化を検討する目的で,健康ボランティアにタウリン3g/日を2週間投 与したところ,酸化ストレスの有意な低下とEPCコロニー形成能の有意な改善が確認された(ともにP<0.05)。
 
こうした成績を踏まえ同教授らは,幹細胞やEPCの修復機能の改善により心血管疾患を防ぎアンチエイジングを目指す“Conservative regenerative medicine(保存的再生医療)”を提唱しており,「高血圧患者における老化予防の観点からは,抗酸化薬であるARBやスタチン,抗酸化食品のタウリンや,今回成績は示さなかったがマグネシウムが推奨される」との見解を示した。


脈波伝播速度が全身老化の指標に
血管年齢の評価や高血圧性臓器障害の指標として上腕-足首脈波伝播速度(baPWV)が日常診療で広く応用され,その上昇が心血管疾患のリスクであることが分かってきた。
そうした中,愛媛大学加齢制御内科の小原克彦准教授らは,抗加齢ドック受診者での検討を基に,baPWVが血管老化だけでなく, 全身老化の指標としても有用であることを明らかにした。
 
認知機能と有意な負の相関示す
老化は,老年医学的には要介護へ至るプロセスととらえられる。
小原准教授らは,抗加齢ドック受診者約1,000例を対象に,baPWVと多彩な老化指標との関連性を検討した。
 
脳血管障害,中でも小血管病とbaPWVとの強い相関が報告されているが,同准教授らも,年齢や血圧で補正後も無症候性ラクナ,微小脳出血を伴う群で,それぞれbaPWVが有意に上昇することを見いだした(順にP<0.0001,P=0.008)。
 
こうした成績からは,baPWVと認知機能低下との関連がうかがわれる。
 
実際,年齢,性,血圧で補正後もbaPWVは,
(1)海馬を含む側頭葉内側部萎縮の指標である側脳室下角面積で評価した萎縮の程度が高いほど有意に上昇 (P<0.0001)
(2)タッチパネル式認知機能テストの点数と有意な負の相関を示す(r=−0.2,P=0.0008)
—などの事実が明らかになっ た。
 
一方,筋肉減少症や骨塩量低下は,老年症候群や脆弱性(frailty)の重要な要因となる。
この点についてbaPWV高値は,
(1)男性では筋肉減少 症の指標である体重当たりの大腿筋横断面積と有意な負の相関を示し,内臓肥満と筋肉減少症を合併するsarcopenic obesityと関連
(2)女性では骨塩量低下と関連
(3)開眼片足保持時間の低下,重心動揺の増加など立位動揺性の増大,起立性血圧変動の増加など,転倒リスクと相関
—といった知見も判明した。
また,baPWV高値が関節リウマチと関連するとの報告もあるという。
 
同准教授は,老化のプロセスは多様だが,baPWVで評価される動脈stiffnessが,要介護へと至る病態の共通要因として働いている可能性を指摘()。
「“人は血管とともに老いる”という言葉は,血管老化が単に寿命を決定するだけでなく,要介護の重要な決定要因でもあることを示唆している」と述べた。
 
図表
 
出典  Medical Tribune 2011.11.24
版権  メディカルトリビューン社

 
<番外編>
本日届いた日内会誌にKYOTO HEART Studyについての興味深い投稿がありました。
専門医部会 シリーズ:日本発臨床研究の紹介と反省点を語る
(日内会誌 第101巻 第1号 H24.1.10P190~196)
 
KYOTO HEART Study
http://blog.m3.com/reed/20090911/KYOTO_HEART_Study
 

 

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高齢者高血圧の治療現場

戯れ言たれる侏儒 / 2012.01.27 00:39 / 推薦数 : 0
第34回日本高血圧学会での島田和幸会長による会長講演「高齢者高血圧の研究」の記事で勉強しました。

地域医療の現場から高齢者高血圧を追究
第34回日本高血圧学会で島田和幸会長は「高齢者高血圧の研究-地域医療の現場から」と題する会長講演(座長=高知医科大学・小澤利男名誉教授)を行った。
米タフツ大学リサーチフェローを経て,1981年以降高知医科大学(現高知大学)老年病科で10年,次いで自治医科大学で20年にわたり,高齢者高血圧にフォーカスした研究の軌跡を語り,高齢者高血圧の治療が極めて今日的な問題であることを示した。
 
高齢者血圧の規定因子は構造的要因が優位
高知医科大学に赴任した1980年代前半,加齢に伴う心拍出量の減少は必ずしも一様ではなく,日常活発に活動している高齢者では心拍出量は意外にも維持されていることがCirculationに報告され,生理的加齢変化の考え方に大きな変革がもたらされた。
当時提唱されたsuccessful agingの概念は,個々人の生活習慣や生活環境によって老化が左右されることを示し,島田会長にとって,従来加齢変化と考えられていた多くの現象を根本から見直す契機となった。
それにはまず,心血管系の正常加齢変化とは何かを明らかにしなければならない。
高知県の地域住民ボランティアを正常対象者とし て,精力的な研究が開始された。
 
まず,同大学の理工学系の研究者らとの共同研究を通じて生物統計学の手法を取り入れ,地域ボランティアの測定値を基に,年齢,調圧反射機能,SBP,血漿カテコールアミンの相関関係を検証。
大動脈硬化が起こると,頸動脈内の圧受容体が血管壁の張力変化を感知しにくくなり,結果として交感神経が亢進し,血圧上昇の一因となることを証明した。
すなわち高血圧の病態は,神経・液性循環調節因子よりも,心血管系が肥大し,血管が硬くなるという構造的要因が加齢とともに優位になることが明らかになった。
 
実際に健康若年者と健康老年者を比較すると,心係数や末梢血管抵抗に大きな変化は見られない。
しかし健康高齢者と高血圧高齢者を比較すると,後者で末梢血管抵抗係数や左室重量係数が有意に増加する。
当時,60歳以上を対象とした研究はほとんどなく,一連の成果をHypertensionに報告すると,“much needed data”と高い評価を受けた。
 
同会長は,高齢者高血圧の研究について「高齢者の究極のテーマは,老いてなおいかに健やかさを保つかであり,心拍出量が何%低下したかではなくて,最大の関心は脳卒中にだけはなりたくないということだ」と指摘。研究のフォーカスは,高齢者高血圧による臓器障害,特に心疾患以上にQOLに深刻な影響をもた らす脳血管障害となった。
同会長は,MRIを導入して高血圧の高齢者における無症候性脳血管障害の定量的な解析を開始した。
この試みは全国でも初の試みであり,同時にこの時 期,24時間血圧計が臨床で使えるようになったため,いち早く血圧日内変動と脳血管障害の関連を追究し,dipper,non-dipperの概念を提唱。
ラクナ梗塞の数は夜間の血圧降下が少ないnon-dipperで有意に多いことを1992年にHypertensionに報告。「
脳卒中は夜間の血圧低下によって発症する」という当時の定説を覆した。
 
1991年に自治医科大学に赴任後は,日本各地で地域医療に従事する同大学出身者と連携して,高齢者高血圧と脳卒中の関連をさらに広範に追究していった。
 
超高齢者,要介護老人の降圧治療をどうするか
 当時,兵庫県淡路島の診療所に在勤していた苅尾七臣氏(現自治医科大学循環器内科主任教授)は,島田会長との共同研究を通じて,夜間の血圧が過度に低下するextreme-dipperもnon-dipperと同様に無症候性脳血管障害が増加していることを報告。
その後,起床直後に血圧が急上昇する morning surge群で無症候性脳梗塞の頻度が有意に高い(P=0.02)ことを見いだし,同会長と共著でCirculationに報告した。
 
これらの長年にわたる先駆的な研究の蓄積から,現在は外来以外の血圧が重要であることが周知となっている。自治医科大学関連グループが約1,000例の 高血圧患者で外来血圧と家庭血圧を調べたところ,外来・家庭のいずれでも高血圧の範ちゅうに入る例が38%,外来血圧のみ高い白衣高血圧が18%,外来は 正常だが家庭血圧が高い仮面高血圧が23%,いずれの血圧も正常値を示すものが21%だった。
同会長は現在,約2万例の高血圧患者を対象とする前向き観察 研究HONEST studyを進めており,降圧薬の投与を開始した症例で外来血圧と家庭血圧を測定し,心血管イベントの発症との関連を調べている。
同会長は同試験の意義に ついて,現在の診療形態において家庭血圧をどう理解し臨床に組み込むか,示唆となる研究と位置付ける。
 
心血管イベントの予防のために,高齢者高血圧をどう治療すべきか。
最近,米国心臓病学会財団(ACCF)/米国心臓協会(AHA)指針は,80歳以上でもSBPは140mmHg未満とするが,忍容性を考慮して140~145mmHgも許容される。
同時にgeneal health conditionもサポートすべきとした。
同会長は,これは非常に重要なメッセージであるとして,「地域医療にとって切実な問題である超高齢者や要介護 老人の降圧治療をどうするかなど,定量的なルールを明確にすべき問題は少なくない」と結んだ。
 
出典 Medical Tribune  2011.11.12
版権 メディカル・トリビューン社

 

読んでいただいて有り難うございます。
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「葦の髄」循環器メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/
(「葦の髄から循環器の世界をのぞく」の補遺版
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
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(内科医向き)
「井蛙」内科メモ帖
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があります。  
 
 
 
 

 

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酸化ストレス関連の新規マーカー
d-ROMsテストとBAPテストを提唱
高血圧性血管障害の成因には,酸化ストレスが重要な役割を果たしていると考えられている。
しかし,内膜肥厚やプラークの有無などは超音波検査で評 価できるが,画像上把握できない,サロゲートマーカーとして日常診療上有用かつ簡便な酸化ストレスマーカーは十分ではないのが現状だ。
三井記念病院(東京都)総合健診センターの山門實所長は,酸化ストレスの新規マーカーとして,diacron-Reactive Oxygen Metabolites(d-ROMs)テストとBiological Anti-Oxidant Potential(BAP)テストの導入を提唱。
人間ドック受診者での検討で,いずれも血圧の上昇に伴って数値が上昇するなど,高血圧性血管障害の多くの臨床指標との相関が示されたと,第34回日本高血圧学会〔会長=自治医科大学内科学講座循環器内科学部門・島田和幸教授(同大学病院長)〕で報告した。
 
複数の臨床指標と有意な相関
d-ROMsテストは,血清中の活性酸素代謝物であるヒドロペルオキシドを測定・数値化し,酸化ストレス度としたテスト。
BAPテストは,血清中の抗酸 化物の鉄還元能を測定することにより抗酸化度を推定するテストである。
これらが酸化ストレスマーカーとして有用か,2010年4月~11年3月に同センターの人間ドック受診者で統計学的に検討した。
 
対象は,高血圧をはじめとする生活習慣病の治療中ではなく,かつインフォームド・コンセントが得られた3,045人。
内訳は男性1,968人(平均年齢 60.6±9.2歳),女性1,077人(同61.5±8.2歳)だった。
D-ROMsとBAPは生化学自動分析装置試薬(ウイスマー研究所)を東芝 Acute自動分析装置に適応して測定。
高血圧性血管障害は頸動脈内膜中膜複合体厚(IMT)を超音波で評価した。
 
d-ROMsテストおよびBAPテストの結果と有意な相関が認められた臨床指標は,SBP,DBP,BMI,LDL/HDL,トリグリセライド(TG),空腹時血糖値,HbA1c,HOMA-IR,高感度C反応性蛋白(CRP)だった。
 
血圧値との関連では,男性はSBP 120mmHg以上でd-ROMsが有意に高値となり,BAPも140mmHg以上で有意に上昇した。
また,DBP 80mmHg以上でd-ROMsが有意に上昇,BAPは90~99mmHgで有意な上昇を示した。
女性ではSBP 140mmHg以上でd-ROMsが有意に上昇,BAPは90mmHg台で有意となった。
DBPでは既に80mmHg台で酸化ストレスが有意に上昇,抗酸化能も同様だった。
さらに,男女ともにIMT 2.1mm以上でd-ROMsのみ有意に上昇した。
多変量解析の結果,特に男性でd-ROMsテストがBMI,食塩摂取量,実年齢に次ぐ高血圧の独立した予知因子であることが分かった。
女性は,BMI,実年齢,食塩摂取量が独立の予知因子だった。
 
山門所長は「特に酸化ストレスの指標d-ROMsは正常高値血圧群で既に有意な高値を示し,とりわけ男性で高血圧性血管障害の有用なマーカーになりうる可能性がある」と述べた。

出典 Medical Tribune  2011.11.24
版権 メディカル・トリビューン社

 
 
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中年期の血圧変化がCVDのライフタイムリスクを決める
米7研究70万人・年の分析結果
米・ノースウエスタン大学のNorrina Allen氏らは,米国の7研究約70万人・年を分析した結果,中年期の血圧の上昇が心血管疾患(CVD)のライフタイムリスク(死亡までに発症する絶対 累積リスク)に大きなインパクトを与えており,41~55歳の間に正常血圧を維持したか正常血圧に低下した群でリスクが低く,55歳までに高血圧を起こし た群でリスクが高かったと報告した(Circulation 2011年12月19日オンライン版)。
中年期において高血圧の発症を防ぐか遅らせることが,CVDを予防する上で重要と指摘している。
 
55歳で高血圧なら85歳までに最大で男性7割,女性5割がCVD発症
Allen氏らは,追跡期間10年以上のコホート研究を集めたCardiovascular Lifetime Risk Pooling Projectのデータを用い,研究条件に適合した7研究の6万1,585人を対象に,55歳時から心血管疾患の発症または死亡まで69万5,394人・ 年追跡した。
 
血圧のカテゴリーは,米国合同委員会第7次報告(JNC-7)にのっとり,正常血圧120mm/80mmHg未満,前高血圧:120~139 /80~89mmHg,ステージ1高血圧:140~159/90~99mmHg,ステージ2高血圧:160/100mmHg以上,とした。
 
その結果,CVDのライフタイムリスクは男性52.5%(95%CI 51.3~53.7%),女性39.9%(同38.4~41.0%)で,冠動脈疾患(CHD)については男性30.9% (同29.8~31.9%),女性17.5%(同16.6~18.3%),脳卒中については男性11.2%(同10.3~12.1%),女性14.7% (同13.6~15.8%)だった。
 
55歳時の正常血圧は男性25.7%,女性40.8%で,前高血圧は男性49.7%,女性47.5%だった。
各疾患のライフタイムリスクは男女ともに血圧のカテゴリーが高いほど増加していた。
 
血圧のカテゴリーが高いほどCVDのライフタイムリスクが8%に達する年齢は低下した。特にアフリカ系米国人女性においては,血圧のカテゴリーが最も低い群と高い群でCVD 9年,脳卒中21年という開きがあった。同じ血圧カテゴリーではアフリカ系米国人は白人より8%を超える年齢が低かった。
 
平均41~55歳の中年期に,半数は血圧カテゴリーが変わらなかった。
血圧カテゴリーは男性では約20%が低下し,約30%は上昇。女性では約40%は上昇し,約10%のみ低下しており,女性で中年期の血圧上昇が目立った。
 
男女ともにその間正常血圧を維持しているか正常血圧に下がった群でCVDのライフタイムリスクが最も低く(21.8~41.0%)で,正常血圧を 維持あるいは正常血圧に低下した群の間ではライフタイムリスクは同等だった。
それに対し,55歳までに高血圧を発症するか,高血圧が続いていた場合はリス クが最も高く,男性では最大69.0%,女性では最大49.4%が85歳までにCVDを発症すると見積もられた()。
 

表
 
血圧の経時的変化をリスクの個別化,予防戦略に取り入れるべき
なお,この期間を通して高血圧だった男性は脳卒中のリスクが高く,高血圧に移行した男性はCVD,CHDのリスクが高かった。
一方,女性はこの間に高血圧に移行した場合脳卒中のリスクが高く,高血圧が続いた場合CVD,CHDのリスクが高い傾向があった。
 
Allen氏らは「CVDのリスクは高血圧の期間の長さに依存することが示唆された」とし,血圧の測定値のみならず経時的血圧変化をリスクの個別化,CVDの予防戦略に取り入れることが有用としている。 (木下 愛美)
 
出典 MT pro  2011.12.26
版権 メディカル・トリビューン社
 
 

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ALTITUDE試験中止

戯れ言たれる侏儒 / 2011.12.28 00:03 / 推薦数 : 2
レニン阻害薬アリスキレンのALTITUDE試験中止を発表
ノバルティスファーマ,DMC勧告を受け
ノバルティスファーマは,12月20日に腎機能障害合併の2型糖尿病患者におけるレニン阻害薬アリスキレンの心血管保護効果を検討したわが国を含む国際共同第Ⅲ相臨床試験ALTITUDEの中止を発表した(同日プレスリリース)。
従来の降圧薬治療例への同薬上乗せ群において,有害事象の発現頻度がプラセボ群に比べて増加したため,同試験の独立データモニタリング委員会(DMC)が試験中止を勧告。
同社はこれを受け,試験中止を決定した。
 
懸念のある患者は医師への相談を呼びかけ
アリスキレンは,レニン-アンジオテンシン-システム(RAS)の起点に位置する酵素レニンを直接阻害し,降圧に作用する全く新しい降圧薬であり,欧米では2007年,わが国では09年に承認された。
ALTITUDE試験では,腎機能障害合併の2型糖尿病患8,602例を対象に(日本37施設206例),ACE阻害薬またはアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)を含む従来治療へのアリスキレン上乗せ投与による心血管保護効果が検討されていた。
しかし,同試験の第7回中間データレビューにおいて,投与開始後18~24カ月で非致死性脳卒中,腎合併症,高カリウム(K)血症,低血圧の発現頻度増加が報告されたため,同試験を監督しているDMCが試験中止を勧告。

これを受けて,ノバルティスファーマは試験中止を同社の公式サイトで発表するとともに,患者の安全確保の観点から,懸念のある患者は医師に相談するよう呼びかけた。

また,同社はアリスキレンが承認されている各国当局と現在協議を行っているが,欧州医薬品庁(EMA),カナダ保健省は,12月22日にそれぞれの公式サイト(EMAカナダ保健省)で,ACEまたはARBを服用中の糖尿病合併患者へのアリスキレン投与を中止するよう求めた。              (田上 玲子)

出典 MT pro 2011.12.26
版権 メディカル・トリビューン社

 
<私的コメント>
今回の発表内容では腎機能障害を伴った2型糖尿病患者へのラジレスに問題があるということです。
しかし、今後は2型糖尿病の有無にかかわらずラジレスと他のRAS抑制剤の併用も問題となりそうです。
 「腎機能障害を伴った2型糖尿病患者」にラジレスを(他のRAS抑制剤を併用しない)単独投与には問題がないかどうかということも気になります。
当然のことながら「腎機能障害を伴なわない2型糖尿病患者」 へのRAS抑制剤との併用投与も慎重さを要求されます。
現時点では、 糖尿病の合併の有無にかかわらずRAS抑制剤との併用に問題があるのか、「腎機能障害を伴った2型糖尿病患者」へのRAS抑制剤との併用投与に限局したことなのか、はっきり結論づけられてはいないようです。
腎機能障害の定義も知りたい所ですが、ALTITUDE試験の元文献にあたらないとわかりません。
 
<関連サイト>
ノバルティス、腎機能障害を伴うリスクの高い糖尿病患者さんを対象にした「ラジレス」 によるALTITUDE試験の中止を発表
http://www.novartis.co.jp/news/2011/pr20111221_01.html
 
糖尿病患者へのラジレスとARB/ACE併用は留意が必要
 
 
読んでいただいて有り難うございます。
コメントをお待ちしています。
その他
「葦の髄」循環器メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/
(「葦の髄から循環器の世界をのぞく」の補遺版
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
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井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21 http://wellfrog.exblog.jp/ 
(内科医向き)
「井蛙」内科メモ帖
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/
(「井蛙内科開業医/診療録」の補遺版)
があります。

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