戯れ言たれる侏儒
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スタチンで血圧低下

戯れ言たれる侏儒 / 2008.08.27 00:41 / 推薦数 : 0

スタチンのclass effectとして血圧がわずかだが下がるというお話です。
血圧計の目盛りとしてわずか1目盛り程度。
測定誤差がきちんと補正されているのか。
どのような測定法だったのかは元文献をあたっていないのでわかりません。
そして、このわずかな血圧低下が本当に心血管イベントの有意な抑制につながるのか。

スタチン系薬で血圧が有意に低下
正常血圧でも降圧効果認められる
〔ニューヨーク〕カリフォルニア大学サンディエゴ校(カリフォルニア州ラホヤ)家庭・予防医学のBeatrice A. Golomb博士らが実施した大規模ランダム化二重盲検試験で,スタチン系薬はプラセボと比べて,血圧を緩徐ながらも有意に低下させることが示された。詳細はArchives of Internal Medicine(2008; 168: 721-727)に発表された。

脂質低下作用と同等の降圧作用
水溶性スタチンと脂溶性スタチンはいずれも収縮期血圧(SBP)値と拡張期血圧(DBP)値を低下させ,その効果は正常血圧者でも認められた。
この緩徐な降圧効果は,これまでに報告されている
スタチン系薬による脳卒中リスクの低下や心血管イベントの減少に寄与するものと考えられる。

今回の研究では,スタチン系薬によってSBP値とDBP値がともに低下することが示された。
さらに,この降圧効果は,正常血圧で降圧薬による治療を受けていない"Pre-Hypertension"の人でも認められた。Golomb博士は「この効果は,ほとんどの水溶性スタチンと脂溶性スタチンによる脂質低下作用に匹敵する」としている。
 
また,同博士は「スタチン系薬による降圧効果は,そのプラークの進展抑制効果のみでは説明できない心血管への速やかな効果に関連するものと考えられる」とし,「スタチン系薬による降圧効果は緩徐である。しかし,脳卒中発症率とLDLコレステロール(LDL-C)値との関連性は一貫していないものの前者は血圧と強く関連するため,この降圧効果は同薬による一過性脳虚血発作や脳卒中の減少に寄与している可能性がある」と考察している。
 
さらに,スタチン系薬による降圧効果は,ベースライン時に血圧が高かった者を除外した解析で顕著であった。
 
なお,被験者の多くは非高血圧者で,研究には比較的低用量のスタチン系薬が用いられた。

治療後6か月で有意に低下
今回の研究対象は,心血管疾患(CVD)や糖尿病の既往歴がなく,LDL-C値115~190mg/dLの男女973例。
被験者はシンバスタチン投与群,プラバスタチン投与群,プラセボ群のいずれかに割り付けられた。
 
ITT解析の結果,スタチン系薬(シンバスタチンおよびプラバスタチン)群ではSBP値が2.2mmHg(P=0.02),DBP値が2.4mmHg(P<0.001)低下し,プラセボ群に比べ有意に血圧が低下した。
 
また,HDLコレステロール(HDL-C)値が中央値(50mg/dL)を超える者ではSBP値が4.7mmHg低下した(P<0.001)が,HDL-C値が中央値を下回る者ではSBP値の低下はわずか1.5mmHgであった(P=0.30)。
 
なお,DBP値は,HDL-C値が中央値を超える者では2.8mmHg低下し(P=0.01),同値が中央値を下回る者ではDBP値の低下は2.7mmHgであった(P=0.01)。
 
さらに,ベースライン時のSBP値が140mmHg超かつDBP値が90 mmHg超の者を除外し,降圧薬を使用せずに8か月間追跡した。
その結果,追跡開始1か月時点ではスタチン系薬群でSBP値とDBP値が低下したものの,有意ではなかった。
開始6か月時点では,プラセボ群に比べスタチン系薬群において, SBP値とDBP値のベースライン時からの有意な低下が認められた(P<0.05)。
これらの血圧の変化は,スタチン系薬による治療の中止後2か月で消失した。
 
同博士らは「この知見は,スタチン系薬の経時的効果に関するさらなる情報を提供するものである」としている。

他疾患患者での効果は不明
今回の研究では,シンバスタチン投与群,プラバスタチン投与群のいずれにおいてもSBP値とDBP値が2.4~2.8mmHg低下した。
この結果は,降圧薬による影響を受けていない者で得られた。
血圧に対するスタチン系薬の効果は,被験者が既に使用していた降圧薬との相互作用に純粋に起因するものでないということは興味深い。
しかし,糖尿病や心血管疾患の既往のある患者,LDL-C値がきわめて高いか,またはきわめて低い患者,高血圧患者などで同様の効果が得られるか否かは不明である。
 
スタチン系薬が血圧を低下させる機序には,強力な血管拡張因子である内皮一酸化窒素合成酵素の発現亢進や活性化,内皮機能の改善,血流による血管拡張が関与すると考えられている。
スタチン系薬は,アンジオテンシンII 1型受容体の発現の低下を引き起こすと言われている。
 
また,
内皮機能や血管拡張に対するスタチン系薬の効果は,その抗酸化作用によるものであると考えられており,HDL-C値が低い者や糖尿病患者などでは効果が消失あるいは減弱すると言われている。

出典 Medical Tribune 2008.8.21
版権 メディカル・トリビューン社

 

<関連サイト>

高血圧 | Minds 医療情報サービス
MindsID S0028666
スタチンは血圧を下げるか?: ランダム化比較試験のメタアナリシス
http://minds.jcqhc.or.jp/G0000085_S0028666_0004.html
脂質異常症治療薬として広く用いられているスタチンを用いた臨床試験において,血圧に及ぼす影響を解析したメタアナリシスの成績である。全体として収縮期血圧-1.9mmHgと僅かながら有意な降圧効果が認められ,その程度は,血清脂質の変化とは関係なく,血圧高値において大きい傾向があった。
降圧効果が小さいため,降圧薬としてのスタチンの使用は勧められないが,多面的作用の存在を示唆する成績である。高血圧に限らず,メタボリック症候群あるいは生活習慣病の総合的な改善を図る上で考慮されるべき情報である。(石光俊彦)


MindsID S0023232
The Brisighella Heart Study研究における異なる脂質低下療法と血圧コントロールとの関係 
http://minds.jcqhc.or.jp/G0000085_S0023232_0004.html
近年,高脂血症を伴う高血圧患者数は着実に増加してきており,降圧薬とともに脂質低下薬としてスタチン製剤がよく用いられるようになってきた。
このような治療において,スタチン製剤が降圧効果をもたらすという報告も出てきている。
そこで,本研究では,イタリアにおけるBrisighellia Heart Studyの参加者の中から高脂血症と高血圧を合併する患者を選出し,スタチン製剤を投与した場合とスタチン以外の脂質低下薬を投与した場合とで,脂質低下効果および降圧効果を検討した。
その結果,脂質低下薬を投与して脂質が低下すると降圧効果がみられた。
高血圧と高コレステロール血症の著明なものほど血圧が低下しやすく,その際,LDL-コレステロールの低下度には両剤で差がないが,スタチン製剤群で特に降圧効果が著明であった。
スタチン製剤と非スタチン製剤で降圧効果になぜ差がみられたか明らかではないが,スタチン製剤の動脈硬化改善作用が強力なことが降圧効果をより著明にもたらした可能性が考えられる。
 <コメント>
降圧の実数値が記載されていないため、どの程度の降圧かを知りたいところです。

<番外編>

〔独デュッセルドルフ〕ザーナ病院(デュッセルドルフ)ドイツ西部糖尿病健康センターのStephan Martin教授は「毎日,1片のビターチョコレートを摂取するだけで血圧が下がり,血管内皮機能が改善される可能性がある」と糖尿病アップデートで報告した。

低用量のポリフェノールでも有効
ポリフェノールが心血管リスクを低下させることは広く知られ,さまざまな試験で,高用量ポリフェノールが血圧と血管内皮機能に与える優れた効果が実証されている。
 
そこで,ケルン大学では低用量のポリフェノールでも効果があるのか,またポリフェノールを含むチョコレートを毎日食べると実際に血圧が下がるのかを検証すべく,正常高値血圧(前高血圧あるいはステージI)だが,ほかに心臓危険因子のない54~73歳の44人に市販のビターチョコレートまたはポリフェノール非含有のホワイトチョコレートを毎日6.3g摂取させた(30kcal/日)。
 
18週間後,ビターチョコレート群で収縮期血圧が平均2.9mmHg,拡張期血圧が平均1.9mmHg下がり,前高血圧(プレ・ハイパーテンション)罹患率が86%から68%に低下した。一方,ホワイトチョコレート群では変化はなかった。
体重,血中脂質,血糖値,酸化ストレスマーカーは両群とも不変であったが,ポリフェノールと酸化窒素の血漿濃度はビターチョコレート群で上昇していた。
 
Martin教授は「患者には,毎日,一片のビターチョコレートを摂取させるのがよいだろう。ただし,すべてのビターチョコレートのポリフェノール含有量が同じとは限らず,しかもチョコレート製品にその含有量は明示されていない」と述べた。
出典 Medical Tribune 2008.8.14
版権 メディカル・トリビューン社

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ANBP2

戯れ言たれる侏儒 / 2008.08.26 00:01 / 推薦数 : 0

第22回国際高血圧学会/第18回欧州高血圧学会の記事でANBP2の勉強をしました。
 

ANBP2
高齢高血圧患者の長期生命予後
ACE阻害薬と利尿薬に有意差なし
ACE阻害薬と利尿薬を基礎薬とした治療の予後改善効果をPROBE法で比較,ALLHATと異なり「心血管イベント+総死亡」の抑制にACE阻害薬が優れるとの結果が話題を呼んだコホート研究ANBP2の10年近い追跡結果が発表された。
本解析では総死亡に有意差はなかったが,モナシュ大学(オーストラリア・メルボルン)のChristopher Reid氏によると,長期追跡でも,両群の総死亡に有意差は認められなかったという。

喫煙や糖尿病などが有意に関連
2003年に報告されたANBP2の対象は,65~84歳,SBP160mmHgかつまたはDBP90mmHg以上の高齢高血圧患者6,083例。
ベースラインの平均年齢は71.9歳,平均血圧168/91mmHgで,喫煙者は7%であった。
対象をACE阻害薬,利尿薬を基礎薬とする2群にランダムに割り付け,中央値で4.1年追跡した結果,血圧は両群とも26/12mmHgと同等の降圧が得られたにもかかわらず,1次評価項目の「心血管イベント+総死亡」のリスクは利尿薬群に比べてACE阻害薬群で有意水準ぎりぎり(P=0.05)で11%減少。
死亡については有意差には至らなかったものの,ACE阻害薬群で10%減少した。
 
通常,臨床試験の追跡期間は3~5年程度で,長期転帰に関するデータはほとんどないのが現状だ。
そこでReid氏らは,中央値で9.3年まで追跡期間を延長。
総死亡,心血管死の発生率,関連要因を評価した。
 
中央値で9.3年,5万3,260人・年の追跡の結果,総死亡の発生率は1,000人・年当たり利尿薬群25.6,ACE阻害薬群25.1であった。
Cox比例ハザードモデルによる利尿薬群に対するACE阻害薬群のハザード比(HR)は,年齢,性,心血管疾患の既往,糖尿病,SBPなどによる調整後で0.96〔95%信頼区間(CI)0.86~1.07〕と,両群に有意差は認められなかった。
心血管死のHRも1.04で,両群に有意差はなかった。
 
一方,10年後の生存には,糖尿病非合併,SBP低値,喫煙なしや婚姻状況などが有意に関連することがわかった。
実際,喫煙者では喫煙歴なしの2.46倍,糖尿病合併例では非合併例の1.50倍,離婚例で1.76倍に,総死亡のリスクが増大したという。
 
試験終了後の降圧治療について情報がないなどの限界を指摘したうえで,同氏は「10年後の生存には,5年の試験期間中にACE阻害薬,利尿薬のいずれの治療に割り付けられたかは関連しなかった」とした。

出典 Medical Tribune 2008.8.7
版権 メディカル・トリビューン社

<関連サイト>
ANBP2 
http://www.ebm-library.jp/circ/doc/html/c2001466.html
 (目的)
高齢の高血圧患者において,ACE阻害薬と利尿薬との転帰を比較する。一次エンドポイントは全心血管イベントまたは全死亡。
 (桑島先生のコメント)
 2002年の国際高血圧学会で発表されたときは,さほど反響をよばなかったが,今回はALLHATの発表後まもなく,まったく違った結果ということで俄然注目された。高齢者の,特に男性ではACE阻害薬の脳心血管合併症が利尿薬よりも良かったという結果であるが,ALLHATも含めて人種差の理解なしには日本人にその結果の適応は難しいことが実感させられる。
ALLHATとの基本的な違いは,二重盲検法ではなく,本試験はオープン試験である。対象者がALLHATでは黒人が約35%占めるのに対して,本試験では主に白人である。降圧薬がALLHATでは非サイアザイドのchlorthalidoneに対して,本試験ではサイアザイドのhydrochlorothiazideが推奨されている。追加薬としてはALLHATではβ遮断薬,reserpine,clonidineなど交感神経抑制系であるのに対し,本試験ではβ遮断薬,Ca拮抗薬,α遮断薬である。5年間での他の降圧薬併用率が利尿薬40.7%,ACE阻害薬43.0%であったのに対して,本試験ではそれぞれ33%,35%であった。また治療前血圧も大きく異なり,ALLHATでは146/84mmHgであるのに対して,本試験では168/91mmHgと高い。リスク因子や合併症もALLHATでは脳心血管合併症をすでに有している例が52%前後であるのに対し,本試験では13%である。糖尿病もALLHATでは36%前後であるのに対し,本試験では7%にすぎない。
このような様々な臨床背景,プロトコールの違いが,異なった結果をもたらしたと考えられる。しかし二つの臨床試験が伝えるメッセージはどの降圧薬を選択するかではなく,しっかり血圧を下げることの重要性である。
(結論)
高齢の高血圧患者において,ACE阻害薬で降圧治療を開始した場合,利尿薬と比べ降圧効果は同等であるものの,特に男性において良好な転帰をもたらすと思われる。

<自遊時間>
8月4日の
「脈圧と拡張期血圧」
http://blog.m3.com/reed/20080804/1
の中の<自遊時間>で「日本医師連盟」についてとりあげさせていただきました。
実は今月、「日本医師連盟」の”上納金”の案内があり、8月23日が集金締め切り日とのFAXが医師会支部の”班長”から届いていました。
以前から、この「日本医師連盟」については不満を持っていたため、勇気を奮って今年こそ支払いを断ろうと決めたことはすでにお話しました。

案の定、8月23日に督促のFAXが届きました。

文面は「以前FAXにてご連絡した医師連盟の寄付金ですが、集金締切日を過ぎまだご確認できておりません。つきましては当院までお持ちいただきますよう宜しくお願いいたします。A会員:30,000円となります。集金時に領収書をお渡しいたします。」というものでした。

早速、8月25日の朝、”班長”の診療所に電話を入れました。
こちらの気持ちを伝えたら、「実は私も医師会入会時に疑問に思い、医師会に問い合わせたことがある」ということでした。
そして「班内のある一人の先生には声をかけなくてもいいと上から言われている」という言質を取ることも出来ました。

想像するに、K党をはっきり支持しているような会員からはとらないように、ということか、うるさいないしはむつかしい(?)会員からは無理して集金しなくてもよいということだと思いました。

全員”寄付金”を支払っていると思っていたのに意外で、勇気づけられる言葉でした。

実はちょっと前に別の用件で医師会(本部ではありません)に電話した際に、事務に医師連盟のことをついでに聞いたことがありました。
返ってきた言葉は「入会は任意であり、かつ寄付金である」という非常にあっけらかんとしたものでした。

私はこのまま、”寄付”は断るつもりです。
私に対して、医師会からの脱会勧告でも出ればその時点で考えます。

皆さんはどうされますか?

 

読んでいただいてありがとうございます。
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ふくろう医者の診察室
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特別企画
「CKD 診療ガイド―高血圧編―」発刊!
そのポイントと上手な使い方を聞く  その2(2/2)

蛋白尿の原因として注目される糸球体足細胞とネフリンの障害
―そもそも,RA系抑制薬によってどうして蛋白尿が減るのでしょう。
「ACE阻害薬やARBの蛋白尿減少機序は,従来,糸球体内圧などの腎血行動態で説明されてきました。アンジオテンシンII(A II)は輸出細動脈を収縮し糸球体内圧を上げ,メサンギウム基質を増やし糸球体硬化を進めますが,ACE阻害薬やARBはこれを抑えるからです。しかし近年,蛋白尿の機序について糸球体足細胞(podocyte)の障害が注目されています」

―足細胞とはどんなものですか。
「足細胞は,基底膜の尿腔側にあって内皮細胞,基底膜とともに糸球体毛細血管で血清蛋白を保持するための障壁を形成します(図3)。

 

糖尿病や慢性腎炎などで糸球体毛細血管の内圧が上がると,足細胞にかかる張力が増大します。これが続くと,足細胞は平坦化しeffacement(消失)と呼ばれる腎生検所見を呈します。これは,足細胞表面のAT1受容体が増え,足細胞がアポトーシスに陥ったためと考えられます。
そして,足突起と足突起の間のスリット膜を構成する分子として,1998年Tryggvasonらがネフリンを同定しました。ネフリンは,足細胞と同様に,糸球体毛細血管の透過選択性の維持に必須の分子です。慢性腎炎患者で尿蛋白量とネフリン発現量の相関をみた結果,両者に負の相関があることも確認されています」

バルサルタンはネフリンを増やし足細胞のアポトーシス抑制(ラット)
―それではARBは,足細胞に対してどのように作用するのですか。
「Mifsudらは,糖尿病性腎症ラットの足細胞を電子顕微鏡で観察しました。糖尿病ラットでは顕著な足細胞のeffacementが見られましたが,ARBバルサルタンを投与しておくとeffacementは正常化しました」

―ネフリンにはどう働きますか。
「ネフリンに関しては,Davisらの興味深い検討があります。彼らは糖尿病ラットの糸球体で免疫染色を行い,ネフリン発現が著明に低下する点を見出しました。ところが,バルサルタンを16週間単剤投与したラットでは,ネフリンは対照と同程度に回復。一方,Ca拮抗薬アムロジピンを併用したラットでは,ネフリンは増加しませんでした(図4)。

 

このとき両群の降圧は同等で,アルブミン尿はバルサルタン群のみ減少していました。以上の結果から,バルサルタンの尿蛋白減少作用にはネフリン回復が強くかかわると推測できます。
このように,腎糸球体の微細構造とARBによる腎保護作用は並行して解明されてきました。Tryggvasonらのネフリン同定以降,ARBの腎保護作用のとらえ方も大きく変化したと言えるでしょう(図5)」

SMART;バルサルタンは高血圧合併糖尿病性腎症のアルブミン尿を抑制
―バルサルタンのそうした腎臓での好ましい作用は,臨床でも確認されていますか。
「バルサルタンが早期腎症患者の微量アルブミン尿を有意に減らすことは,2002年のMARVAL試験ですでに確認されています。
日本でのエビデンスとしては,滋賀医科大学の柏木教授が昨年発表したSMART試験があります。SMARTでは糖尿病性腎症150人をバルサルタン群とアムロジピン群に割り付け,6か月間観察しました。そして,試験終了時のHbA1c,血圧値は2群間で差がなく,両群で131/75mmHgと十分な降圧を達成したにもかかわらず,尿中アルブミン排泄量はアムロジピン群で増加,バルサルタン群で減少。群間差が認められました(図6)。


 

さらに,終了時の収縮期血圧130mmHg未満例と以上例を比べると,バルサルタン群では両方で微量アルブミン尿が同等に減っていました。この結果は,バルサルタンの腎保護作用が降圧に依存したものではないことを示唆しています。
微量アルブミン尿患者は,1年間に2.8%が顕性腎症に進展し,3%がCVDなどで死亡します(図7)。

これこそ,CKDの恐ろしさと早期介入の必要性を端的に表した図ですが,SMARTはその解決策を提示した画期的な臨床試験と言えるでしょう。透析大国と呼ばれる日本の状況も,ARBを活用することで5,6年後には患者数が減少に転じるのではないかと,強く期待しています」

出典 Medical Tribune 2008.8.21
版権 メディカル・トリビューン社

 

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最近、某メーカーのMRさんが「CKD診療ガイド-高血圧編-」の小冊子を持ってきてくれました。
しかし、これらのガイドラインは開業医にとって読み込む時間がないので、行間までガイドライン発刊の趣旨を十分に理解することができません。
そんな時に、専門家のコメントに巡り会うと効率よく勉強することが出来ます。
きょう届いた新着のMedical Tribune誌で勉強しました

 

特別企画
「CKD 診療ガイド―高血圧編―」発刊!
そのポイントと上手な使い方を聞く   その1(1/2)
このたび「CKD診療ガイド―高血圧編―」が発行された。
昨年刊行された「CKD診療ガイド」は,CKDキャンペーンに大きな役割を果たしているが,今回の「高血圧編」は降圧療法について詳しく説明した冊子である。
その編集を担当した防衛医科大学校腎臓内科准教授の熊谷裕生氏に,本冊子のポイントと上手な使い方についてお話を聞いた。
そのなかで,CKD患者の高血圧治療では,降圧と同時に尿蛋白減少を追求しなければならないこと,その点では基礎と臨床の両面でARBの有効性が証明されており,とりわけバルサルタンのエビデンスが出揃っていることが示された。

熊谷氏は,ARBの使用量増加が近い将来での透析患者減少に結びつくのではないかと期待を表明している。

高血圧-CKDの悪循環を断ち切れ!
―なぜ今回,「CKD診療ガイド―高血圧編―」を作られたのですか。
「昨年発行されたCKD診療ガイドは高い関心を集め,学会刊行物としては異例のヒットとなりました。ただあのガイドで"降圧療法"に言及したのは3ページに過ぎず,CKD患者の血圧管理について,もう少し詳しく知りたいという声が相次いで寄せられました。そこで今回,日本腎臓学会と日本高血圧学会がCKD対策合同委員会を作り,木村玄次郎委員長を中心にこの課題に取り組むことになったのです」

―CKD患者における血圧管理の重要性は,どこにあるのでしょうか。
「CKDは,心血管疾患(CVD)と末期腎不全(ESRD)の両方の強力な危険因子です。この点が明らかになり,国民的に対策を強化する目的で,CKDのキャンペーンが始まりました。高血圧は,このCVDとESRD,両方の危険因子です。しかも,高血圧はCKDを促進し,CKDは高血圧を悪化させるという悪循環を形成しています。したがって,適切な降圧療法で,この悪循環を断ち切ることが何よりも求められています」

降圧と尿蛋白減少を同時に追求
―では,CKD患者における血圧管理の基本的考え方を教えてください。
「CKD患者の降圧目標は130/80 mmHg未満としました。尿蛋白が1g/日以上の場合,さらに厳格に125/75mmHg未満を目指します。血圧が低いほど腎機能(GFR)低下の進展を抑えられるからです。ただし,血圧値を外来血圧だけで判断してはいけません。外来血圧が125/75mmHgだと,自宅では100/60mmHgといった例もありますから,家庭血圧計を活用し日常での血圧状態の把握に努めてください。
第二のポイントは,尿蛋白抑制の重要性です。滋賀医科大学の荒木らは,糖尿病患者216人を対象に検討を行い,最初の2年間にアルブミン尿が50%以上減った患者は,その後8年間のCVDや腎不全による入院,死亡が著明に低下したと報告しています(図1)。

このデータは,尿蛋白減少がCKD進展とCVD発症をともに予防することを示す,世界に誇りうる成績です。CKDでは降圧と同時に尿蛋白を減らす高血圧治療が求められています。第三に,CKD患者では厳格な降圧が必要ですが,急激な降圧は避けなければなりません。腎機能を低下させるおそれがあるので,2~3か月をかけ,状態を見ながら降圧目標を達成するようにします

第1選択薬はACE阻害薬かARB
―CKD患者の高血圧治療では,どんな降圧薬を用いるべきでしょうか。
「第1選択薬は,RA系抑制薬すなわちACE阻害薬かARBです(図2)。

ACE

阻害薬やARBでは腎保護作用,とりわけ尿蛋白減少作用が明確に認められているからです。CKD患者ではACE阻害薬かARBを用いてしっかりと血圧を下げること,副作用には注意を払いつつ,十分な尿蛋白減少作用が得られるまで,増量することがポイントとなります」

―第2選択薬としては,何を使えばよいのですか。
「第2選択薬としては,利尿薬またはCa拮抗薬を挙げました。体液量過剰の食塩感受性高血圧の場合,利尿薬を用います。この場合,腎機能が正常ならサイアザイド系,腎機能が低下していたらループ利尿薬を選びます。CVDハイリスク例では,Ca拮抗薬が第2選択薬として推奨されます。第3選択薬は,第2選択薬にしなかったCa拮抗薬か利尿薬となります。単剤で130/80mmHgまで降圧することは容易ではありません。ほとんどの臨床試験では,降圧目標を達成するために3~5剤の多剤併用が行われていることを指摘しておきます」

RA系抑制薬開始時は慎重な観察を
―腎機能の低下例では,使用しにくい降圧薬も少なくありませんね。
「腎機能低下例では,用量調節を要する降圧薬も少なくありません。この点から,冊子の末尾に,"腎機能低下時の降圧薬投与量"を付けました。各社の協力を得て,腎機能別に主な降圧薬の投与量をまとめましたので,活用してほしいですね」

―RA系抑制薬の使用に際しては,どんな点に注意すべきですか。
「CKD患者の高血圧ではRA系の抑制が最も重要です。しかし,ときに血清クレアチニン(Cr)上昇や高カリウム(K)血症を生じる例があります。Cr上昇は輸出細動脈の拡張を示す薬理効果なので,投与前値の30%または1mg/dL以内の上昇なら問題はありません。しかし,これを超える上昇を示す場合は,背景に両側性の腎動脈狭窄や心不全,脱水などが潜む例もあり,休薬して腎臓専門医に紹介すべきです。特に高齢者では,夏場の脱水に注意してください。血清Kの上昇もしばしば見られます。この場合も軽度上昇は問題ありませんが,5.5mEq/Lを超す場合は専門医に相談してください()。ACE阻害薬もARBも,使い始めの3か月間は2週に1回程度採血を行い,CrやKに注意を払うことが必要です

出典 Medical Tribune 2008.8.21
版権 メディカル・トリビューン社

 

<コメント1>
「CKDは,心血管疾患(CVD)と末期腎不全(ESRD)の両方の強力な危険因子です。・・・ 高血圧は,このCVDとESRD,両方の危険因子です。しかも,高血圧はCKDを促進し,CKDは高血圧を悪化させるという悪循環を形成しています。したがって,適切な降圧療法で,この悪循環を断ち切ることが何よりも求められています」
・・・いみじくも私達が今まで疑問に思っていた「ニワトリかタマゴか」といった話です。
CKDでわかりにくいのは、腎障害に至った原因(病因、Pathogeny)を問題にしていないところにあると私は思っています。
この疑問は今も私の中で解決されていません。

<コメント2>
「CKD患者の降圧目標は130/80 mmHg未満としました。尿蛋白が1g/日以上の場合,さらに厳格に125/75mmHg未満を目指します。血圧が低いほど腎機能(GFR)低下の進展を抑えられるからです。ただし,血圧値を外来血圧だけで判断してはいけません。外来血圧が125/75mmHgだと,自宅では100/60mmHgといった例もありますから,家庭血圧計を活用し日常での血圧状態の把握に努めてください。」
・・・実地医家としては、「ではどうすればいいの」といいたくなってしまいます。
有名な「久山町研究」でも、健診時の血圧が140mmHg未満では脳梗塞の発生は少なく、しかもそれ以下の降圧はあまり意味がないというデータがあります。
CKDと脳梗塞では違うといってしまえばそれまでですが、学会では久山町を上回るような「CKDと血圧」に関する日本でのエビデンスを把握しているのでしょうか。
そして、ガイドラインの中に書かれている「降圧目標は収縮期139mmHg未満かつ拡張期80mmHg未満である」の記述。
この「かつ」の持つ重みはどれほどあるのでしょうか。
そろそろ拡張期圧の呪縛から解かれたいと思うのは私だけでしょうか。
実際には拡張期80mmHg未満を目指すのに収縮期圧が110mmHg以下となることは十分にありうることです。
きっと患者のQOLと服薬コンプライアンスは・・・。

<参考サイト>  降圧ターゲットはSBP単独に
http://blog.m3.com/reed/20080821/_SBP_

<コメント3>
「腎機能が正常ならサイアザイド系,腎機能が低下していたらループ利尿薬を選びます。・・・この場合,腎機能が正常ならサイアザイド系,腎機能が低下していたらループ利尿薬を選びます。」
・・・CKDについての話ですから、「腎機能が正常なら」という言い方はおかしいと思いました。
逆に、昔々ある学会で、心不全の発表で「NYHA1°は本当に心不全ですか?」と質問されて壇上で炎上した先生がみえました。
さて、降圧利尿剤としてサイアザイド系にこだわる理由がよくわかりません。
サイアザイド系の使用により(潜在性?)腎不全が(顕在性?)腎不全に移行しないという保障があるのでしょうか。
代謝系に悪影響を及ぼすサイアザイド系ではなく、ループ系(たとえばオイテンシン)を最初に使うのはどうしていけないのでしょうか。
私自身が降圧剤を服用するとしても、サイアザイド系は少量でも服用したいとは思いません。
先生方はいかがでしょうか。

読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。
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血圧 日内変動

戯れ言たれる侏儒 / 2008.08.22 00:25 / 推薦数 : 0

第22回国際高血圧学会/第18回欧州高血圧学会の記事より「日内変動」の勉強をしました。

ABPMで確認された治療抵抗性高血圧の心血管疾患リスクはより高い
治療抵抗性高血圧(RH)は心血管疾患リスクが高いことが知られている。
バルセロナ大学(スペイン・バルセロナ)内科学のAlejandro de la Sierra氏らは,24時間自由行動下血圧測定(ABPM)レジストリー調査において,RH患者の実態を調査。
外来血圧でRHと診断された患者の約3分の1はABPMではRHが否定される白衣高血圧であったが,ABPMにおいてもRHと診断された患者群では,ABPMでRHが否定された群よりも心血管疾患リスクがより高かったことを報告した。

治療抵抗性高血圧の約3分の1はABPMで正常血圧
スペイン高血圧学会が支援するプロジェクトであるCARDIORISC-MAPAPRESプロジェクトでは,1,000人以上の医師の参加により5万1,573人の患者が登録。全参加者がABPMを実施し,調査機関が一括してデータ分析を実施した。
今回の分析対象は全体の80%だった。
 
RHの定義を,利尿薬を含む3種類の降圧薬を最大量服薬してもSBP 140mmHgまたは/かつDBP 90mmHg以上とした場合に該当したのは全体の12%(6,262人)だった。
 
1剤以上の降圧薬で外来血圧 140/90mmHg未満にコントロールされている7,672人(対照群)とRH群を比較したところ,RH群では高齢,肥満,糖尿病,脂質異常症の割合が有意に高く,喫煙率については対照群が有意に高かった。さらに,心血管疾患(CVD)の有無については両群で有意差がなかったが,標的臓器障害(TOD)についてはRH群で約3割,対照群で約2割と有意にRH群が多くなっていた(P<0.001)。
Non-dipperの割合はRH群63.5%,コントロール群60.9%であり,RH群での頻度が有意に高かった。
外来血圧とABPの比較では,外来血圧よりABPのほうが低い傾向にあり,特にRH群の外来血圧との差が大きかった。外来血圧ではRHでもABPでは正常血圧(ABP130/80mmHg未満)と診断された頻度を見たところ,36.5%であった。
また,日中の平均血圧135/85 mmHg未満は44.1%,夜間血圧120/ 70mmHg未満は31.8%存在した。
 
次に,外来血圧でRH,かつABPでもSBP 130mmHg以上またはDBP 80mmHg以上だった群を真のRH群(3,978人)として,外来血圧ではRHだったがABPは130/80mmHg未満であった白衣高血圧群(2,284人)と比較したところ,真のRH群のほうが若年,男性,糖尿病,喫煙の割合がそれぞれ有意に高かった。
また,白衣高血圧群よりも真のRH群でのTODやCVDの頻度が有意に高率であった()。
 
以上の結果から,Sierra氏は,ABPMはRHの診断において不可欠であると指摘した。

 

早朝高血圧患者へのα遮断薬追加投与で微量アルブミン尿が減少
2年前のISHで発表されたJMS-1研究の結果から,日本人の早朝高血圧患者へのα遮断薬追加投与による厳格な早朝血圧管理が,早朝のSBPを特異的に低下させ,微量アルブミン尿を改善することが明らかになった。
今回,自治医科大学循環器内科の苅尾七臣教授は,さらなる検討の結果,厳格な早朝血圧管理とα遮断薬の服薬がそれぞれ独立した因子として尿中アルブミン/クレアチニン比(UAR)の低下に寄与することを報告した。

厳格な早朝血圧管理とα遮断薬は相加的に微量アルブミン尿を抑制
JMS-1研究の対象は,外来通院中で3か月以上降圧薬を変更しておらず,α遮断薬もしくはβ遮断薬を使用していない安定した高血圧患者で,かつ家庭血圧測定において早朝1回目に測定したSBPの3日間平均値が135mmHg以上の早朝高血圧患者。
オープンラベルによる多施設ランダム化比較試験により,611例をα遮断薬(ドキサゾシン)追加投与群(以下,追加群)と対照群に割り付けた。追加群はドキサゾシンを1mgから最大4mgまで増量し,それでもSBP 135mmHg未満にならない場合はβ遮断薬(アテノロール)25mgを追加投与した。
両群の年齢や性,BMI,喫煙率などに差はなく,心血管疾患既往歴や糖尿病の割合も同等であったが,脂質異常症については,追加群で有意に低かった。
両群の薬剤投与状況は,平均薬剤数が1.6剤でCa拮抗薬は約6割に,RA系阻害薬も約7割に使用されていた。
 
ベースラインのUARは対照群で21mg/gCr,追加投与群で23mg/gCr。
試験開始6か月後のUARは,対照群では変化がなく,追加群では対照群と比べて有意に低下したが,3.4mg/gCrの減少にとどまっていた。
しかし,ベースラインで微量アルブミン尿と診断された全体の39%に限定して検討すると,対照群(111例)では8.1mg/gCrの減少であったのに対し,追加群(127例)では27.9mg/gCr減少,両群間で有意差が認められた(P<0.001)。
 
早朝SBPとUARの変動の関係を見たところ,試験対象患者全体では正の相関が確認されたが,追加群のみで検討したところ,血圧が上昇した場合でもUARは低下しており,正の相関は見られなかった。
そこで,多変量解析でUAR低下におけるSBP低下とα遮断薬使用の影響を見たところ,それぞれ有意な関係が認められ,かつ,SBP低下とα遮断薬使用それぞれの因子による相互作用は認められなかった。
 
苅尾教授は「厳格な早朝血圧管理とα遮断薬の追加投与は,アルブミン尿や早朝高血圧を相加的に改善させうる」と述べ,特にこの傾向が微量アルブミン尿を有する早朝高血圧患者で顕著であったとした。

 

仮面高血圧・白衣高血圧もIFG,糖尿病新規発症のリスクに
高血圧の持続による糖代謝への悪影響を示す報告は多いが,白衣高血圧(WC)や仮面高血圧(MH)による糖代謝への影響に関する報告は少ない。
PAMELA studyの試験責任者であるミラノ-ビコッカ大学(伊ミラノ)臨床医学のGiuseppe Mancia氏は,WCやMH患者では,糖尿病や空腹時血糖異常(IFG)へ移行しやすいことを報告した。

10年後の代謝リスクを検討
PAMELA studyは,ミラノ近郊Monza地域住民25~74歳からランダムに選択された3,200人によるコホートスタディ。
1回目の調査が1990年に,2回目の調査は2000年に実施され,2回の調査を完了したのが1,412人であった。
このうち1回目の調査で糖尿病やIFGと診断された者を除く1,310人が今回の分析の対象となった。
血圧の分類については,WC群は外来血圧140/90mmHg以上でABP 125/79mmHg未満,MH群は外来血圧140/90mmHg未満でABP 125/79mmHg以上とし,両者がカットオフ値以上となる場合は持続性の高血圧(SH群),未満となる場合は正常血圧(正常群)と定義した。
正常群と他の3群の患者背景を比較すると,正常群の年齢が有意に低く,男性の割合が少なく,BMIが低かった。
また血圧や脂質,血糖値についても正常群が有意に良好な数値だった。
なお,空腹時血糖値は正常群で約85 mg/dL,他の3群で90mg/dL前後であった。
 
糖尿病新規発症,IFGを発症した頻度を見ると,正常群ではそれぞれ2.0%,3.6%であったのに対し,他の3群は同等の結果で,それぞれ6%超,11%超であった。
次に,ベースラインの年齢,性,薬物治療および血糖値を調整し,正常群と比較した他の3群の糖尿病新規発症やIFGのオッズ比を算出した。
その結果,糖尿病新規発症単独では,各群リスク上昇が認められたが,それぞれ有意差はなかった。
しかし,糖尿病新規発症とIFGを合わせて比較したところ,WC群1.8(95%信頼区間1.1~3.6),MH群2.3(同1.1~4.9),SH群2.3(同1.1~4.9)でそれぞれ有意に高くなっていた。
さらに,糖尿病新規発症やIFGに影響する独立した因子を多変量解析で求めたところ,ベースラインの血糖値,BMI,降圧薬の使用,24時間DBPが挙がった。

Mancia氏は「WCやMHはSHと同程度の糖尿病新規発症やIFGのリスク因子となりうる。
正常群以外の3群では,ベースライン時に血糖レベルが高く,これが最も影響していると考えられるが,血圧を含めたその他の因子も影響していたことがわかった」と述べた。

出典 Medical Tribune 2008.8.7
版権 メディカル・トリビューン社


 「Heart and Kidney - 私たちの近くにあるもの」
制作 Heart and Kidney制作委員会
(シオノギ製薬 配布物)

<番外編>
第21回国際高血圧学会
第5回アジア・太平洋高血圧学会
第29回日本高血圧学会
出典 Medical Tribune 2006.12.7
版権 メディカル・トリビューン社


血圧値だけでなくその変動にも留意を
24時間自由行動下血圧測定(ABPM),家庭血圧測定(HBPM)などの技術的進歩や優れた臨床・疫学研究により,血圧変動の臨床的重要性を示すエビデンスが得られている。
東北大学大学院薬学研究科臨床薬学の今井潤教授は,大迫研究のデータに基づいてさまざまな血圧変動のリスクを考察,「血圧異常の診断・治療では血圧値だけでなくその変動に留意し,“hypertension”とともに“hypervariation”も銘記すべき」と述べた。

白衣高血圧も無害とは言えない
血圧変動は,一般に不規則な(random)変動と周期的な(periodic)変動に分けられる。
不規則な血圧変動は精神的・身体的活動性の変化や環境に対する反応によってもたらされ,短期的な血圧変動を反映する。
例えば,入浴時や排便時に突然死が多いことが報告されており,不規則な血圧変動と心血管イベントの関連が示唆される。
これに対し,周期的な血圧変動には日,週,月,年単位の変動があり,日内血圧変動として白衣高血圧,仮面高血圧,早朝高血圧,夜間高血圧,職場高血圧などが挙げられる。
今井教授らが1986年にABPM,HBPMを用いて開始した大迫研究では,日内血圧変動の臨床的な重要性を示す種々の知見が得られている。
 
それによると,心血管死の相対ハザードは,白衣高血圧と正常血圧で同等であったのに対し,高血圧と仮面高血圧では正常血圧に比べ有意に高かった。
一方,白衣高血圧は,外来血圧および家庭血圧がともに正常な場合に比べ持続性高血圧の発症リスクが高かったことから,白衣高血圧であっても無害とは言えないことが示唆された。
 
また,
(1)日中の自由行動下血圧の変動が大きく,心拍数の変動が小さいほど心血管死の相対ハザードが有意に増大する(2)家庭血圧の日ごとの変動が大きいほど心血管イベントが増加する
(3)夜間睡眠時の血圧降下が少ないnon-dipperや夜間の血圧が日中よりも高いinverted-dipperは心血管死リスクが高く,夜間血圧が過度に低下するextreme-dipperでは同リスクは低い
ことも明らかとなった。

特徴的な血圧変動に臨床的意義
ところで,仮面高血圧は,起床後に血圧の上昇が見られる早朝高血圧とほぼ同様だが,大迫研究では仮面高血圧患者の予後はきわめて不良であった。
早朝高血圧の原因として,降圧薬の作用時間が不十分なことや,血圧の日内変動の異常が指摘されているが,実際,大迫研究では早朝高血圧の半数がnon-dipperあるいはinverted-dipperであったという。
近年注目を集めているモーニングサージは,睡眠中に下降していた血圧が起床後急速に上昇することで,この現象は一般にextreme-dipperで見られる。
しかし,大迫研究ではextreme-dipperの心血管死リスクは低かったことから,今井教授は「少なくとも一般集団ではモーニングサージによる心血管死リスクは低いと考えられる」とした。
 
さらに,同教授らは,早朝および日中の血圧上昇が脳出血のリスク因子であるのに対し,夜間の血圧上昇は脳梗塞や虚血性心疾患のリスク因子であることも見出している。
 
最後に,同教授は「従来,高血圧の診断・治療の基本情報は血圧値であり,血圧変動は情報の信頼性の低さの同義語であったが,最近は特徴的な血圧変動そのものの臨床的意義が認識されるようになった」と締めくくった。

 

早朝高血圧は脳卒中リスクとの関連低い
薬剤投与による血圧日内変動の抑制が脳血管イベント抑制のカギ
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/ish2006/200610/501662.html
2006. 10. 17
「早朝高血圧は脳卒中リスクとの関連性は低い」と語るスペイン・サンティアゴ大病院のCarlos Calvo氏。
長時間血圧測定において、脳血管イベントの発生を予測するのは、早朝高血圧(モーニングサージ)ではなく、昼間の血圧と夜間の血圧の差--スペイン・サンティアゴ大病院のCarlos Calvo氏らは、地域住民の24時間血圧を約3年間追跡した臨床試験から、16日の一般口演セッション「脳卒中、アンジオテンシン」でこんな成果を報告した。薬剤投与によって日内変動を正常に戻すことが、脳卒中のリスク低下につながる、という。

夜間と昼間の血圧の差が大きいほど、心臓や脳、腎臓などの臓器障害リスクを高めることはよく知られている。
研究グループは、MAPEC(Monitorizacion Ambulatoria de la Presion arterial y Eventos Cardiovasculares)と名付けた試験を実施し、日中の血圧と夜間の血圧の差(DNR)およびモーニングサージと、脳血管イベント発症の関連性を調べた。

対象は地域住民2643人(平均51.9歳)。自由行動下24時間血圧測定(ABPM)により2142人が高血圧症と診断され、正常血圧の501人のうち7割は白衣高血圧を呈していた。血圧は7時から23時までは20分ごと、夜間は30分ごとに測定し、48時間続けた。

3.2年間(中央値)の追跡の結果、年齢や性別、糖尿病、高血圧治療で調整すると、脳血管イベントの発生は、
(1)夜間の睡眠時に血圧が低下しないnon-dipper型では年間100人当たり0.47人、
(2)夜間の血圧が昼間より高いriser型ではさらに高く2.22人だった。これに対して、
(3)夜間の血圧が昼間より低下するdipper型(正常型)では0.21人、
(4)昼間血圧に対して夜間血圧が20%以上低下するextreme-dipper型では0.31人
と少なかった。

また脳血管イベントが発生した人の試験開始時のDNRは、発生しなかった人に比べて有意に小さく、日内変動が極めて少ない状況が脳血管イベントに関連することが示された(P<0.001)。
さらにイベント発生群では開始時のDNRよりも試験終了時のDNRが低く、およそ3年間の追跡期間中、血圧の日内変動が減少(悪化)していたことが分かった。

一方、モーニングサージの血圧値によって4群に分けて脳血管イベントの発生を比べたところ、最も血圧値が小さい群の発生が最も多い結果となり、モーニングサージは無病生存を予測するものではないことが示された。


ISHスペシャルインタビュー   2006. 9. 5(一部抜粋)
高血圧診療の温故知新   今井 潤氏
家庭血圧の世界基準を決めた大迫研究
健康意識を高める活動が大きな研究に発展
http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/gakkai/ish2006pre/interview/200609/501317_2.html
――家庭血圧に着目されたのもそのころですか?
今井 
いえ、家庭血圧には以前から興味を持っていました。
「血圧は診察室で医師や看護師が測るもの、血圧測定は医療行為の一つ」と考えられていた時代です。
しかし、血圧は刻々と変化するもので、診察室での値も一時点のものにすぎず、従って、家庭で測り続ければ、より正確な血圧情報を把握できると考えました。
そして、家庭血圧計の精度が向上し普及が進めば、いずれ家庭血圧が高血圧診療の中心をなすだろうと予測していました。
――その数年後、エポックとなる大迫研究がスタートします。
これはどのような経緯で始まったのでしょう。
今井 
大迫町は今年、市町村合併で花巻市となりましたが、岩手県の中央部に位置する典型的な農村です。
ここに県立大迫病院があり、当時、大学の同級生である永井謙一先生が院長をしていました(現、岩手県立宮古病院院長)。
彼は、地域医療の立場から脳卒中の予防や早期発見の対策を模索しており、たまたま同級会で一緒になった時、「住民自らが率先して健康意識を高めるいい方法はないだろうか」と相談してきたのです。
そこで私のほうから「家庭で毎日、血圧を測ってもらい、健康作りに役立ててはどうだろう」と提案しました。
二人の方向性が一致していることが分かり、早速準備を進めました。
永井先生たちは、家庭血圧を測る意味を行政や住民に説明し、協力を求める。
一方、我々は乏しい研究費をやりくりして町の全世帯(約3000世帯)に家庭血圧計を配る。こうして大迫研究が動き出しました。
1987年のことです。

また翌年からは、20歳以上の住民全員を対象にしたABPの測定も始めました。
住民が自分で測る家庭血圧と違ってABPの場合は、町の保健師さんが各家庭を訪問し、装着や取り外しを行なわなければなりません。
しかも測定装置は5~6台しかないので、それを持って毎日一軒ずつ回る。
とても大変な作業で、研究をここまで継続できたのは保健師さんたちの熱意に負うところが大きかったと感謝しています。

――家庭血圧を利用した臨床疫学研究は世界でも初めて。得られたデータは高く評価され、家庭血圧のグローバル・スタンダードとなりましたね。
今井 
大迫研究は厳密なデザインを組んで始めたスタディではありません。
当初は、地域住民の健康作りに協力しながら、家庭血圧やABPに関する基礎データを集められればという程度の発想でした。
しかし、5年、10年と調査を続けていると、住民の中には脳卒中を発症したり、死亡する方が出てきます。
すると、予後と家庭血圧やABPとの関係が捉えられるようになる。
つまり、コホート研究、前向き研究という格好になってくるわけです。

こうした研究の成果として、まず、家庭血圧、ABPの再現性の良さが明らかになりました。
再現性がいいということは、診断・治療の基準になり得ることを示唆しています。
次に、家庭血圧、ABPは随時血圧に比べ、予後予測能の高いことがわかりました。
そこで、予後との関係から家庭血圧の基準値を求め、「135/85mmHg以上」を高血圧と設定しました。
この基準は日本高血圧学会のガイドラインはもちろんのこと、JNC7やWHO/ISHのガイドラインにも採用されています。

大迫研究はその後、MRI検査、糖尿病などの代謝機能、認知機能などもチェック項目に加えており、今後さらに追跡を続けることで、高血圧診療に結びつく新たなエビデンスを生み出していきたいと考えています。

――大迫研究の成果を基に、現在進めている大規模介入試験HOMED-BPについても簡単にご紹介ください。
今井 
大迫研究によって家庭血圧の診断基準はほぼ固まりました。
しかし、家庭血圧をどこまで下げたらいいのかはまだ分かっていません。
HOMED-BPはこれを明らかにするための介入試験です。
対象は40歳以上の本態性高血圧患者。
まず患者に1~2週間、家庭血圧を測ってもらい、それに基づいてCa拮抗薬、ACE阻害薬、ARBの3群に分けます。
各群3000例ずつの合計9000例。
これを7年にわたって追跡し、どの降圧薬が有効か、どのレベルまで家庭血圧を下げれば脳心血管イベントの発生が少ないかを比較します。
現在、登録患者は4600例ほど。息の長い研究ですが、これによって、まだ世界のどこにもない家庭血圧の至適降圧目標レベルを設定できるものと期待しています。

<自由時間>
昨日、1か月前に発注していた超音波装置(GE社製LOGIQ P5)が納品されました。
わが診療所が一気に近代化された感じです。
循環器領域に限らず、エコーは非侵襲的でかつ臨床診断上きわめて有用な検査法です。
何を今更というところですが、(恥ずかしながら今までの装置にはついていなかった)カラードップラーやCWも測定出来るため検査しながら勉強(勉強しながら検査?)して守備範囲を少しずつ広げていくつもりです。
老後のいい「おもちゃ」となりそうです。

 

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第22回国際高血圧学会/第18回欧州高血圧学会特集

降圧ターゲットはSBP単独に
「血圧管理はSBPにターゲットを絞るべき」とする見解を,王立医科大学国際循環器センター(ロンドン)臨床薬理・治療学のPeter Sever教授が示した。
同様のステートメントはレスター大学(英レスター)循環器科のBryan Williams教授やウメオ大学(スウェーデン・ウメオ)公衆衛生学,臨床医学のLars H. Lindhorlm教授との共著でLancet(2008; 371: 2219-2221)に掲載された。

特に50歳以降は重要
血圧が年齢によって変化することはよく知られている。
米国の国民健康調査であるNHANES(National Health and Nutrition Examination Survey)IIIでは,未治療高血圧患者における高血圧の型が年代別に解析されているが,それによると,50歳まではDBPとSBPが連動して変化するが,50歳以上ではほとんどが収縮期高血圧であることが示されている。
拡張期高血圧については,50歳以下では起こりうるが,50歳以上ではまれであることも示された()。


また,加齢による自然経過としてSBPは50歳以降も上昇するが,DBPは低下傾向であることを示す報告もある(Hypertension 1995; 25: 305-313)。
冠動脈疾患の予測因子としてSBPとDBPのどちらが重要なのかを年代別に比較した検討においても,50歳まではDBPのほうが強い予測因子となりうるが,50歳以降はSBPが重要であり,特に60歳以降についてはDBPが予測因子にならないという結果となっていた(Circulation 2001; 103: 1245-1249)。
 
臨床試験のエビデンスでは,Syst-EURやSHEPをはじめとして,収縮期高血圧のエビデンスが拡張期高血圧を凌駕している。
また,欧州各国による統計データでも,DBP 90mmHgとSBP 140mmHgの降圧目標値に対して,SBPの目標値に到達しない頻度がDBPの頻度よりも圧倒的に多いことが示されている。
このような状況について,Sever教授は「DBPにもSBPと同様の関心が寄せられていることが,SBPの降圧目標値が達成されない要因になっている」と指摘する。

効果的な降圧治療へ
SBPの目標値については,通常の場合140mmHgであるが,高リスク患者では130mmHgとされている。
Sever教授は今後の降圧治療を展望し,
(1)大半の患者の診断・治療においてSBPを単独指標にすべき
(2)SBPは50歳以上の高血圧を規定する因子
(3)DBPを目標値とし続けることは,不適切な治療につながる
(4)50歳未満ではDBP管理も重要であるが,SBPが主要なターゲットであることには変わりない
―の4点を挙げた。
 
公衆衛生学的にも,心血管疾患予防の観点からSBPにターゲットを絞ることが有用である,と同教授は強調し,「今後はSBP単独の目標値を置き,臨床医や患者に対してシンプルなメッセージを送ることで,より効果的な降圧治療を推進すべき」と述べた。

出典 Medical Tribune 2008.8.7
版権 メディカル・トリビューン社

 

<コメント>
こんなクリアカットな結論の発表は滅多にありません。
誰もが思っていたことを明快にしてくれました。
すっきり。
こんな研究、大好きです。
ついでに言えば血圧の測定値。
数字が一人歩きしているように思いませんか。
そもそもの測定値の定義づけがはっきりしないのです。

最近、血圧測定値について思い浮かべることがあります。
たとえはあまりよくないかも知れません。
それは各地の気温です。
全国で一番暑い市町村は熊谷だの多治見だのといった類の話です。
そんなのは百葉箱の置いている場所(最近は百葉箱は用いないようです。いずれにしても器械の設置場所)でなんとでもなるわけで、直接比較するほうがおかしいのです。
数字で示されたりスライドなどで統計処理されたきれいな図を見せられると妙に納得させられます。
しかし、そのもとになる血圧測定値は・・・。

百葉箱
http://ngy.sakura.ne.jp/hyakuyoso.htm
気温をはかるための器械
http://www.sendai-jma.go.jp/wadai/sokki/sokki2.html

 

もう・・・高血圧判定は収縮期だけでよいのでは? by Lancet 
http://intmed.exblog.jp/7260067/

大学の一研究者のひとりごと
http://blog.goo.ne.jp/stat-hiro/e/82ec4b1ab450917b39f56bbe477d494a
収縮期血圧、拡張期血圧、脈圧、平均血圧 
http://intmed.exblog.jp/2279280/
脈圧と拡張期血圧
http://blog.m3.com/reed/20080804/1
収縮期・拡張期血圧
http://blog.m3.com/reed/20071122/1

 

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ONTARGETサブ解析

戯れ言たれる侏儒 / 2008.08.20 00:05 / 推薦数 : 0

「第22回国際高血圧学会/第18回欧州高血圧学会」で発表された「ONTARGETサブ解析」で勉強しました。
このONTARGETのサブ解析では非常に興味のある結果が得られました。
すなわちACE阻害薬+ARB併用療法によるいわゆる「RAS二重阻止」は腎障害を進行させる可能性があるということです。

たしかJIKEI HEART Studyでは多くの患者でこの「RAS二重阻止」がされていました。

ONTARGETサブ解析
ACE阻害薬+ARB併用療法    CKD患者で急性腎不全による透析が増加
心不全を伴わない心血管イベントの高リスク患者に対して,ACE阻害薬ramiprilとARBテルミサルタンの心血管イベント抑制効果に有意差はなかったものの,テルミサルタンのramiprilに対する非劣性を証明,一方,両者の併用療法がイベント抑制効果の増強をもたらすことなく有害事象の増加を招くことを明らかにした大規模臨床試験ONTARGETの発表は,記憶に新しい。
そのサブ解析では,ステージ3~4の慢性腎臓病(CKD)患者では,ramipril群に比べて併用群で急性腎不全による2か月以内の透析が増加したなどの新知見が判明した。

心血管イベント抑制は同等
主解析の対象は,心血管疾患の既往,臓器障害を伴う糖尿病のいずれかを有する55歳以上(平均年齢66.4歳)の高リスク患者2万5,620例。
エアランゲン大学病院(独エアランゲン)のRoland E. Schmieder氏によると,CKDのサブ解析では,このうち推算糸球体濾過量(eGFR)60mL/分/1.73m2未満(ステージ3~4)の6,249例をランダム化した。
 
1次評価項目の「心血管死+心筋梗塞+脳卒中+心不全による入院」の発生率は,1,000人・年当たりramipril群50.77,併用群51.58と両群に有意差はなく〔相対リスク(RR)1.01〕,Kaplan-Meier曲線でも主解析に比べて発生率は高かったものの,3群間に有意差はなかった。
 
次に,事前に設定された腎1次評価項目の「死亡+全透析+血清クレアチニン値の2倍化」は,ramipril群13.6%,テルミサルタン群13.5%,併用群14.6%で,ramipril群とテルミサルタン群に有意差はなかったが〔ハザード比(HR)1.00〕,併用群ではHR1.08と,リスクが有意(P=0.044)に増大した。
 
そこで,透析期間2か月超の慢性透析と,2か月以内の急性透析に分けて比較したところ,慢性透析は群間に有意差はなかったのに対し,急性透析のHRはテルミサルタン群1.47(P=0.2833),併用群2.10(P=0.024)となり,ramipril群に比べて前者で有意ではないが47%のリスク増大が,併用群で2.1倍の有意なリスク増大が確認された。

RAA系二重阻害は専門医監督下で
オックスフォード大学(英オックスフォード)のPeter Sleight名誉教授は,まず全例での主解析において,併用群ではramipril群に比べてSBPで約2mmHg降圧が優れたにもかかわらず,イベント抑制に反映されなかった理由を考察した。
 
同名誉教授は,心血管疾患の既往を伴う高齢の集団では,2mmHgの血圧低下が腎不全,低血圧などをより多く惹起し,腎血管の問題を生じた可能性を指摘。
体液量の枯渇した高齢者では,併用療法によるレニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAA)系の過度のブロックは危険かもしれない。今後,RAA系の二重阻害は,例外的に専門医の監督下でのみ実施されるべきだ」との解釈を示した。
 
一方,同名誉教授らが実施したベースラインのSBP値による層別化解析(対象2万5,595例)によると,1次評価項目の発生率は,SBPの上昇に伴って有意(P<0.0001)な増加が認められた。
脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA;1次評価項目には含まれない)で,こうした傾向はより顕著であり,一方,心筋梗塞,心血管死の発生率には,SBP値による有意な相違はなかった。
 
同名誉教授は「正常高値またはステージ1の高血圧患者では,SBPの低下による利益は主として脳卒中またはTIAの減少によるものであり,その他の転帰についての利益はほとんどないようだ」と結論した。

出典 Medical Tribune 2008.8.7
版権 メディカル・トリビューン社

 

 「Heart and Kidney - 私たちの近くにあるもの」
制作 Heart and Kidney制作委員会
(シオノギ製薬 配布物)

<関連サイト>
注目の降圧薬臨床試験 ONTARGET
http://blog.m3.com/reed/20080404/__ONTARGET
ONTARGETの結果を考察する
http://blog.m3.com/reed/20080412/ONTARGET_
糖尿病からみたONTARGET
http://blog.m3.com/reed/20080413/_ONTARGET
RAS二重阻止
http://blog.m3.com/reed/20071014/RAS_

厳格な降圧がもたらす心保護効果http://medical.nikkeibp.co.jp/all/special/micardis/ontarget/001.html
(ARBの心保護効果とACE阻害薬との併用による相乗効果が期待されるという内容でしたが、今回のONTARGETのサブ解析の結果では・・・)
RAS抑制による厳格な降圧がもたらす臓器保護
ミカルディスの大規模臨床試験ONTARGET
http://medical.nikkeibp.co.jp/all/special/micardis/ontarget/pdf/micardis_0220.pdf
(ここでも併用効果の期待が述べられていました) 

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HYVETサブ解析

戯れ言たれる侏儒 / 2008.08.19 00:08 / 推薦数 : 0

HYVET では80歳以上の超高齢者を対象とした降圧療法の意義が検証され,利尿薬とACE阻害薬を用いて積極的に降圧療法を行った群のほうが脳卒中の発症が少ないという結果が示されました。
この試験はこのブログでも以前とりあげました。
HYVET
http://blog.m3.com/reed/20080407/HYVET
HYVET試験アゲイン
http://blog.m3.com/reed/20080511/1

新着のメディカル・トリビューン誌で、このHYVET試験のサブ解析が紹介されていました。 

 

第2部:第22回国際高血圧学会/第18回欧州高血圧学会特集
臨床試験  HYVETサブ解析
認知症発症リスクは有意差認められずも14%減少
80歳以上の超高齢者でも,積極的な降圧療法により予後が改善することを証明した大規模臨床試験HYVET―。
今回報告されたサブ解析からは,プラセボに比べて利尿薬インダパミド±ACE阻害薬ペリンドプリルによる積極的治療により,有意差は認められなかったものの,認知症の発症リスクが14%減少することなどがわかったという。

メタアナリシスでは有意差も
HYVETは,80歳以上でSBP160~199mmHg,DBP 110mmHg未満の高血圧患者3,845例を対象としたプラセボ対照二重盲検試験。
降圧目標150/80mmHgを目指し,インダパミド徐放剤(1.5mg/日)±ペリンドプリル(2~4mg/日)による実薬群の有用性を評価した。
試験は,実薬群で総死亡の有意な減少が判明し中央値1.8年の追跡で早期終了。
1次評価項目の全脳卒中は有意差に至らなかったものの30%リスクが減少,総死亡,心血管イベントは,それぞれ21%,34%の有意なリスク減少を示すことが明らかになった。
 
インペリアルカレッジ(ロンドン)のRuth Peters氏によると,認知機能に関するサブ解析の対象は3,336例。
ベースラインの平均年齢は83.5歳,平均坐位SBP173.0mmHg,脳卒中の既往が6.5%,Mini-Mental State Examination(MMSE)スコアの中央値は26であった。
 
2年間の追跡の結果,血圧は実薬群で15/5.9mmHg低下。認知症発症は1,000人・年当たりプラセボ群の38に対して,実薬群では33であった。
Cox比例ハザードモデルによる解析では,降圧治療により14%のリスク減少を示したが,有意差はなかった()。


 
高血圧治療に関するプラセボ対照二重盲検試験で,認知症について評価しているのはPROGRESS,Syst-Eur,SHEPの3試験のみ。
そこで,HYVETを加えた4試験でメタアナリシスを実施したところ,相対リスク(RR)は0.87となり,実薬群で13%の有意(P=0.045)なリスク減少が確認されたという。

実薬群で一貫してイベント抑制
一方,同カレッジのNigel S. Beckett氏らは,主解析と同じく3,845例を対象に,事前に設定された性,年齢,心血管疾患の既往の有無,初期SBP値などのサブグループ別に,総死亡,全心血管イベント発生を検討した。
 
その結果,総死亡,全心血管イベントともに,サブグループ間で交互作用は認められず,実薬群で一貫してリスク減少が確認された。
ことに総死亡については,女性,80~84.9歳,心血管疾患の既往なしの各群で,全心血管イベントについては,男女とも,80~84.9歳,心血管疾患既往なし,初期SBP160~199mmHgと180mmHg以上の各群で,有意なリスク減少が認められた。
 
同氏は「サブグループ解析の結果により,全超高齢者に対する降圧治療に,さらなる支持が加わった」と結論した。

出典 Medical Tribune 2008.8.7
版権 メディカル・トリビューン社

 

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第51回日本腎臓学会学術総会ランチョンセミナー
「腎障害を伴う高血圧の薬物治療」
で勉強しました。
演者の土肥 靖明 先生は新進気鋭の方です。
最近、ベニジピン(商品名コニール)の学術講演を、ある講演会でお聞きし、講演後の懇親会でご本人と少しお話をしました。


現在,日本の透析患者数は26万人と推定されるが,水面下にはその予備軍である糸球体濾過量(GFR)60mL/min/1.73m2未満の患者が約1,926万人,GFR50mL/min/1.73m2未満の患者が約418万人存在するとみられる。
 
慢性腎臓病(CKD)対策が急がれる状況のもと,第51回日本腎臓学会学術総会において,新しい日本人のGFR推算式が発表された。
同総会では,名古屋市立大学大学院医学研究科心臓・腎高血圧内科学准教授の土肥靖明氏が腎障害を伴う高血圧の薬物療法について講演し,CKD治療におけるCa拮抗薬には腎輸出細動脈を拡張し,尿蛋白を減少させる薬剤が推奨されるなか,L型およびT型CaチャネルをブロックするCa拮抗薬ベニジピン塩酸塩(コニールR錠)の位置づけを明らかにした。
 

司会
東北大学大学院医学系研究科 腎・高血圧・内分泌学分野教授
伊藤 貞嘉 氏 
演者
名古屋市立大学大学院医学研究科 心臓・腎高血圧内科学准教授
土肥 靖明 氏

ベニジピンはラットのNO依存性弛緩反応を改善
高血圧の持続により蛋白尿,腎障害・腎不全を来す一方,腎性高血圧にみられるように腎障害が高血圧の原因になることもありうる。
また最近では,微量アルブミン尿が心血管系疾患の危険因子の1つとして認識されるようになった。
このように高血圧と腎障害,心血管系疾患は密接に関連しているが,土肥氏は「いわゆる心腎連関の一部には血管内皮機能低下が絡んでいる」と指摘した。
 
同氏らの研究によると,高血圧自然発症ラットの腎抵抗動脈ではNO依存性の内皮弛緩反応が低下するが,ベニジピンの投与により正常血圧ラットと同レベルにまで改善することが明らかになった。
この効果は,検討したCa拮抗薬のうちベニジピンに特有なことから,同氏は「ベニジピンは,降圧に依存しない血管内皮改善作用を有することが示唆された」と考察している。
 
一方,種々の大規模臨床試験の結果から,心血管死は血圧が高値であるほど増加し,降圧治療により減少することが知られている。
同様に,腎機能は降圧に伴い改善し,とりわけ初期の厳格な降圧が重要であることが明らかになっている。

L型・T型Ca拮抗薬であるベニジピンは尿中アルブミン排泄量の改善に寄与
「高血圧治療ガイドライン2004」では,腎障害患者の降圧目標を130/80mmHg未満とし,一次選択薬としてACE阻害薬またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)を推奨している。またRENAAL研究において,ARBはプラセボに比べ末期腎不全に至るリスクを28%低下させ,腎機能を維持するうえでは厳格な降圧とともにレニン・アンジオテンシン(RA)系の抑制が重要であることを示した。
 
全身血圧の上昇に伴う腎輸入細動脈の自動調節の破綻により糸球体に流入する血流が増加している場合,RA系抑制薬は腎輸出細動脈を拡張して糸球体内圧を低下させ,過剰濾過,尿蛋白を是正する作用が知られている。
しかし,腎障害患者のうちRA系抑制薬単独で降圧目標をクリアできる例は25%に満たないという報告(Chobanian AV, et al: Hypertension 42: 1206-1252, 2003)があり,多くの症例においては複数の降圧薬の併用が求められるのが実情である。
昨年発表されたヨーロッパの「高血圧管理ガイドライン(ESH-ESC 2007)」では,RA系抑制薬との併用薬としてCa拮抗薬,利尿薬が推奨されている。
 
L型Caチャネルのみに作用するCa拮抗薬は,腎輸入細動脈を拡張するものの腎輸出細動脈は拡張しないことから,血圧が十分に低下しない場合はかえって糸球体内圧の上昇を来すと考えられている。
一方,ベニジピンはL型CaチャネルのみならずT型Caチャネルにも作用することから,腎輸入細動脈とともに腎輸出細動脈も拡張し,糸球体内圧を改善する効果が期待される。
実際,ベニジピン投与後は全身血圧が下降するとともに,腎輸入・輸出細動脈が拡張し,糸球体内圧が低下すると報告されている。
また,Dahl食塩感受性ラットを用いた実験では,ベニジピンは単独で同等の降圧効果を示す用量の他のCa拮抗薬と比較して,単独治療,RA系抑制薬との併用治療のいずれにおいても尿中アルブミン排泄量を減少させた(図1)。


以上より,ベニジピンとRA系抑制薬の併用は,他のCa拮抗薬とRA系抑制薬の併用に比べ,より腎機能を改善することが期待されている。

腎保護作用が期待されるCa拮抗薬をRA系抑制薬と併用する
土肥氏らは,微量アルブミン尿が検出された高齢者高血圧患者をベニジピン+ARB群,他のCa拮抗薬+ARB群の2群に分けて血圧および尿中アルブミン排泄量を検討した結果,血圧は両群で同等に低下したが,尿中アルブミン排泄量はベニジピン+ARB群で有意に低下したのに対し,他のCa拮抗薬+ARB群では有意な低下は認められなかったことを示した(図2)。


これらの結果を血圧低下度で補正したところ,ベニジピン+ARB群では降圧効果を超えた腎保護作用が示唆された。
 
以上の結果を踏まえ,同氏は「L型およびT型CaチャネルをブロックするベニジピンとARBを併用することで,腎輸入細動脈に比べ腎輸出細動脈がより拡張し,糸球体内圧が低下して尿蛋白減少効果が示された可能性がある」と指摘した。
また,別の報告では,ベニジピン服用時は,治療前に比べ,糸球体濾過圧が低下することを示唆する結果が得られている。
 
同氏は,最近のメタ解析の結果から降圧薬の臓器保護作用について,
1)脳卒中予防効果はCa拮抗薬がAC E阻害薬に優り,ARBはACE阻害薬と同等,
2)虚血性心疾患予防効果はACE阻害薬がCa拮抗薬,ARBに優る,
3)腎保護効果はRA系抑制薬がCa拮抗薬に優る,
4)降圧効果はCa拮抗薬がRA系抑制薬に優ると考えられるとした。
そのうえで同氏は,腎障害を伴う高血圧の治療についてはRA系の抑制とともに厳格な降圧が重要であると重ねて強調し,「RA系抑制薬で降圧目標に達しない場合,ベニジピンのように強力な降圧効果を示し,腎保護作用が期待されるCa拮抗薬を併用する意義は大きい」と述べ,講演を締めくくった。

出典 Medical Tribune 2008.8.7
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昨秋のエプレレノン(商品名セララ)の発売で「アルドステロン」は一定の盛り上がりがありました。
きょうは、「原発性アルドステロン症」を勉強しました。

アルドステロン研究の現在
http://blog.m3.com/reed/20080623/1
アルドステロン・ブレイクスルー
http://blog.m3.com/reed/20080704/1

原発性高アルドステロン症:まれだが診断と治療が重要
Primary Hyperaldosteronism: Rare, but Important to Diagnose and Treat

高血圧患者における原発性高アルドステロン症の有病率の推定値には、選択されない患者において20%にも及ぶものから1%に過ぎないものまである。

この研究では、20年間にギリシャのある高血圧診療所を受診した連続する患者1,616人を対象に、原発性高アルドステロン症の有病率を検討した。
患者はすべて治療抵抗性の高血圧(利尿薬1種類および他の薬物2種類でコントロールされておらず、自宅または自由行動下の血圧測定で確認された)であった。
すべての患者について、コントロールされた状況でアルドステロン/レニン比(aldosterone-to-renin ratio:ARR)および血清アルドステロン濃度を測定した。
両方の測定値が上昇していた患者338人に対し、塩負荷による抑制試験 および4日間のfludrocortisone試験を行い、原発性高アルドステロン症であるかを確認した。
原発性高アルドステロン症が確認されたすべての患者に対し、spironolactone単独療法を行い、血圧のコントロールに必要であれば他の薬剤を追加した。

患者182人(ARR高値の患者の53.8%、患者全体の11.3%)で、原発性高アルドステロン症が確認された。
これらの患者すべてにおいて、spironolactone単独療法開始後2~4週間以内に統計学的に有意な血圧低下が認められ、spironolactone単独(37%)または他の薬物との併用により、すべての患者で血圧の目標値が達成された。

コメント:
高血圧症例の約10%が治療抵抗性で、原発性高アルドステロン症が(この研究におけるように)それらの症例の約10%を占めるとすると、全体での有病率は約1%となる。
しかしそれでも、症例の発見は重要である。
というのも、原発性高アルドステロン症では、本態性高血圧と比較して標的臓器の障害のリスクがより高いと考えられ、また高アルドステロン症は治療が容易であるからである。
低カリウム血症は、感度も特異度も低い。ARRおよび血清アルドステロン値は非特異的であり、確定診断(例、場合によっては特定の降圧薬を中止後に、塩負荷による抑制試験を実施)は、費用がかかり、リスクを伴う可能性がある。
エディトリアル執筆者は、ARRおよび血清アルドステロン濃度が高値である患者、またはアルドステロン阻害薬の経験的な投与に反応しない患者は、専門施設に紹介するよう勧めている。

Bruce Soloway, MD
Published in Journal Watch General Medicine July 22, 2008
Douma S et al. Prevalence of primary hyperaldosteronism in resistant hypertension: A retrospective observational study. Lancet 2008 Jun 7; 371:1921. (
http://dx.doi.org/10.1016/S0140-6736(08)60834-X)
Kaplan NM. Deja vu for primary aldosteronism. Lancet 2008 Jun 7; 371:1890. (