戯れ言たれる侏儒
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慢性心不全の生化学指標

戯れ言たれる侏儒 / 2008.09.25 00:30 / 推薦数 : 0

心不全のバイオマーカーはこのブログで以前に

心不全マーカーとしてのBNPの意義
http://blog.m3.com/reed/20080710/_BNP_
NT-proBNPについて
http://blog.m3.com/reed/20070906/NT-proBNP
(コメントもいただいていますので参照ください)

としてとりあげました。
きょうはちょっと古いのですが、TnTとの関連についての論文で勉強しました。

血中心筋TnTなどで早期発見,病態把握,予後予測が可能に
慢性心不全は左室収縮能が低下する病態で,一般的に進行性ではあるものの,その臨床経過は多様である。
例えば,心不全症状が代償されたまま全く症状の悪化を見ない症例もあれば,急速に悪化して死亡への転帰を取る症例もあり,必ずしも全症例が徐々に悪化していくとは限らない。このような病態を,客観的に血液検査で評価できればたいへん有用である。
そこで,兵庫県立尼崎病院循環器内科の佐藤幸人医長,鷹津良樹部長らは,長年心不全患者において血中心筋トロポニンT(TnT)測定を用いた微小心筋傷害の検出に関する臨床研究を行っている。
TnTは専門施設でなくても簡便に測定できるうえ,臓器特異性が非常に高いことなどから,心不全の早期発見,病態把握,予後予測などの指標として確立されることが期待される。

心不全一般の心筋傷害の検出へ
佐藤医長が心不全の診断指標としてTnTの臨床研究を始めたのは1995年,京都大学から県立尼崎病院に転出した直後のことだ。
同医長は「近隣の開業医から心不全と診断された患者の紹介が相次いだ。
しかし,電話だけでは共通の簡便な指標がないため患者の症状がなかなか把握できなかった」と当時を振り返る。
心不全の診断をするためには,心電図,胸部X線,心臓超音波などによる検査をするのが一般的だが,いずれも主観が入りやすいうえ,心不全の状態を把握するにはある程度の経験が必要である。
したがって,心不全の診断は必ずしも容易ではない。
「例えば,肝臓疾患の患者ならGOTやGPTの数値を聞けば,どのような患者かは想像できる。ところが,心不全に関してはこうした施設間較差のない指標がほとんどなかった」という。 
そこで,同医長はどのような施設でも判定できる客観的な心不全の指標を探すことにした。
心不全のメカニズムを考えながら,いくつかの候補を検討したが,「臓器特異的で,心筋梗塞でなじみがある」という条件で絞り込んでいった結果,TnTが残った。
トロポニンは心筋フィラメント上の蛋白質であり,TnTは傷害された心筋細胞から検出されると推定されている。
TnTは急性心筋梗塞,不安定狭心症などの急性冠症候群患者では多数の報告があるが,同医長は「慢性心不全においても,TnT測定が心筋傷害の指標として有用なのではないか」と考えた。
同医長らの拡張型心筋症患者での検討では,TnTが観察期間中,持続的に高値を示した患者群では,左室収縮能が悪化し,予後不良であった。
一方,TnTが低値であった患者は経過中,左室収縮能の改善が見られ,予後良好であった。
また,非拡張相の肥大型心筋症患者における検討では,約50%の患者で非拡張相であるにもかかわらずTnTが上昇しており,これらの患者では経過中,心臓超音波検査により収縮能低下と中隔の壁厚減少が見られた。
最近では,心筋症だけでなく心筋梗塞後,高血圧性心疾患,弁膜症,先天性心疾患などの心不全一般での検討も行っている。
その結果,これらの患者のなかにもTnTが持続高値を示す予後不良な患者が存在した。
これらの結果を踏まえ,同医長は「予後不良な心不全患者では心筋傷害が生じており,TnTはそれを反映して高値であると考えられる」と結論付ける。

 

BNPとTnTを同時測定
次に,佐藤医長らは心不全における血中脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)とTnTの同時測定を試みた。
心不全で心房あるいは心室に負荷がかかると心房,心室から心臓ホルモンが分泌される。
おもな心臓ホルモンには,心房から分泌される心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)と心室から分泌されるBNPとがある。特にBNPは心不全患者での心室の心不全状態を直接反映して心室から分泌されており,BNP測定により心不全時の心負荷の程度を知ることが可能と考えられている。
1998年からBNP測定は外来患者にも適用が拡大され,その簡便さから需要が急速に伸びている。
BNP測定は,
(1)早期心不全の把握
(2)心不全の重症度の把握
(3)心不全の予後予測
(4)心不全の治療指標

として有用とされている。
   
同医長らのBNP,TnT同時測定と心不全患者の予後の検討では,BNP,TnTはそれぞれ心不全の予後予測の指標ではあるが,異なる意味を持ち,組み合わせることでより予後不良な一群を検出できることが示された(図 1 )。


「理論的にはBNPは現在の心不全の状態を示し,TnTはその心不全状態の原因となった心筋傷害を示している」()という。


現在,同医長らはBNPとTnTの同時測定を,慢性心不全の治療指標として検討を進めている。
治療の第 1 目標は「心不全状態を改善してBNPを低下させること」であり,第 2 目標は「心不全状態の原因となった心筋傷害を改善してTnTを低下させることにある」と考えている。

N末端proBNP,H-FABPなどの新しい指標も
心不全において,心筋傷害が生じる機序の解明も進みつつある。
従来,心筋傷害は心負荷,レニン・アンジオテンシン(R-A)系活性,サイトカイン,交感神経活性などにより生じるとされている(図 2 )。

 

佐藤医長らは微小心筋傷害により上昇するTnTが,心筋線維化の指標であるコラーゲン,炎症マーカーC反応性蛋白質(CRP),交感神経活性を反映するカテコールアミンなどの各液性因子と相関するかどうか解析を行った。
心不全患者を対象に,TnTを高値群と低値群に分けて解析したところ,TnT高値群で微小心筋傷害が見られる症例では交感神経活性,線維化,炎症反応が亢進していることが示唆された。
さらに,最近になって心不全を評価する新しい指標として,N末端proBNPや心臓型脂肪酸結合蛋白質(H-FABP)が登場している。
N末端proBNPとTnTの同時測定により,最も予後不良な心不全患者を検出することが可能であった。
H-FABPは心筋細胞質に比較的豊富に存在する分子量15kDaの小分子蛋白質であり,急性心筋梗塞では同じ細胞質内にあるミオグロビンと同様,鋭敏な遊出動態を示すと言われている。
N末端proBNP,H-FABPについて,同医長は「N末端proBNPはより早期に心負荷を,H-FABPはより微小な心筋傷害を検出できる可能性がある」との見方を示す。

より初期に,より迅速な検出を
今後,人口の高齢化に伴い,心不全患者が増加するのは間違いない。
心不全の危険因子としては,高血圧,糖尿病,高脂血症などがある。
検診が一般化しているわが国では,これらの危険因子を早期に発見することが可能である。
このようにして,医療機関にかかっているリスクの大きい患者の心不全発症を未然に防ぐことが次の課題である。
佐藤医長は「心不全のリスクを背負う高血圧,糖尿病,高脂血症群に対して,それぞれの疾患ごとの検査に心筋傷害や心負荷について鋭敏な生化学指標のスクリーニングを行うことが今後は必要なのではないか。
特に高血圧では生化学指標による治療効果の検討も必要かもしれない」と提言する。
最近では,トロポニン,BNPなどの迅速測定機器も開発されている。全血を用いるので従来の血清,血漿分離が不要であり,15分程度で結果が判明する。
しかも,だれでも簡単に判定できる。
「迅速測定機器の能力が発揮できる場は,慢性心不全ではなく急性心不全である。現在の急性心不全の治療は血行動態指標により行われているが,正確な迅速測定機器の導入が進めば,生化学指標による統一した治療法が確立できるかもしれない。また,外来患者においても,カテコールアミン点滴などの心不全治療も安全に行えるようになるかもしれない」という。
心不全におけるTnT,BNPなどの生化学指標は専門施設でなくても簡便に,再現性,定量性をもって繰り返し測定できるという大きな利点がある。
しかも,臓器特異性が非常に高い。したがって,「将来,心臓病における標準的検査として確立されること」を同医長は期待している。
 
出典 Medical Tribune 2005.1.27
版権 メディカル・トリビューン社

<コメント>
「1週間以内に、NT-proBNP,BNP,HANPのうち2項目以上を併せて実施した場合は、主たるもの1つに限り算定する」という保険請求上の制限があります。
したがって実施日の記載が必要になりますが、1週間以上間隔があいていれば他の検査は可能という解釈となります。
(以前、心エコーとBNPの同月内の実施は一定の”しばり”があったのですが、それはなくなったようです)
TnTは保険適応が「急性心筋梗塞、心筋炎、狭心症」ということなので、心不全という病名は適応外です。

<関連サイト>
第72回日本循環器学会レポート(5)
心血管疾患のバイオマーカー,新たな可能性を探る
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/0804/080407.html
■NT-proBNPは,前高血圧の段階から異常値を示す
■NT-proBNPは腎機能の影響を明らかに強く受ける

NT-proBNP迅速測定機の臨床的有用性が示される
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/doctoreye/dr080421.html
■NT-proBNPは心不全の診断,予後予測指標として登場したが,最近では外来での心不全治療のガイドとして用いられたり(Lancet 2000; 355:1126-1130),LIFE(Losartan Intervention For Endpoint reduction in hypertension)試験(J Hypertens 2004;22:1597-1604)やCOPERNICUS(Carvedilol Prospective Randomized Cumulative Survival)試験(Circulation 2004;110:1780-1786)などのように,高血圧,慢性心不全の薬剤多施設研究に用いられるなど,その使用頻度は今後ますます高まるものと期待されている。
■本来,NT-proBNPは遠心分離した血清を検査室でエクルーシスという機器を用いて測定するのであるが,Cardiac ReaderRは全血を用いてベッドサイドで使用可能な小型の迅速測定機であり,NT-proBNP測定では最初の簡便な測定機である(いずれもRoche Diagnostics社)。
■今後,従来のエクルーシスによるNT-proBNPとともに,迅速,簡便性を重視した小型測定機のニーズはますます高まると考えられる。わが国ではCardiac Readerをさらに進化させたハンディタイプのコバス h 232(重量650g,充電可能,心筋トロポニンT,NT-proBNP,ミオグロビン,D-dimerが定量可能)が昨年7月より発売されている。携帯可能となったことで,遠隔地,僻地医療における心リスク指標としての用途のほか,災害時の心疾患発生時,さらには在宅医療への応用も可能と考えられ,今後の発展に期待したい。
 

心不全の診断?生化学マーカーを活用する
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?id=M3925801&year=2006&type=article
■ガイドラインに記載されたもののなかでは,ノルエピネフリン,レニン,アンジオテンシン II,アルドステロン,バソプレシン,エンドセリン(ET)-1,腫瘍壊死因子(TNF)α,インターロイキン(IL)-6が心臓刺激因子,心房性(A型)ナトリウム利尿ペプチド(ANP),BNP,アドレノメデュリンが心保護因子である。
■BNPに追加する第 2 のマーカーの 1 つとして注目しているのが,炎症のマーカーだ。BNPとともに高い予後予測能を示したIL-6も有用と考えられるが,測定の煩雑さやコストの点で一般臨床向けとは言えない。
近年循環器疾患を含めた幅広い領域で有用性が報告され,普及が進んでいる高感度C反応性蛋白質(CRP)だ。
ただし,IL-6もCRPも心不全に特異的なマーカーではないため,感染症などの影響を受けやすい。
使用の際は他の炎症性疾患を鑑別する必要がある。
一方,BNPとトロポニンT(TnT)の組み合わせが慢性心不全の予後予測に有用であることを主張している研究者もいる。
■心房細動を合併した心不全患者では,心房への負荷が繰り返されて心房筋が線維化し,心不全の代償機転として亢進するはずのANPの分泌が不十分になる。
このため,BNPの上昇に比べ,ANPの上昇の程度が低く,ANP/BNP比が心房損傷の指標になる可能性がある。
■腎不全合併では,血漿BNP値は“見かけ上”高値を示しやすい。
BNPの一部は腎から排泄されるため,腎機能が低下するとBNP排泄量が減少し,心機能とは関係なく血中濃度が上昇するためだ。

<きょうの一曲> 秋桜
山口百恵  秋桜 Momoe Yamaguchi - Cosmos
http://jp.youtube.com/watch?v=nb-PvxXRsNM&feature=related
山口百恵 「秋桜」 
http://jp.youtube.com/watch?v=SruhoPj97bU&feature=related
山口百恵~最後の生放送出演で「秋桜」を歌う
http://jp.youtube.com/watch?v=loGAMBs-ZkY&feature=related
秋桜  さだまさし
http://jp.youtube.com/watch?v=hslKwT7yzIo
徳永英明 秋桜
http://jp.youtube.com/watch?v=ff32sD1Kdr4&feature=related
秋桜  福山雅治
http://jp.youtube.com/watch?v=v-LPBQPkYNE&feature=related
夏川りみ / 秋桜
http://jp.youtube.com/watch?v=oIheQv633cU&feature=related

(「秋桜」の歌詞の内容は、「認知症」のおばあさんを見事に言い表していると何かで読んだことがあります。さてどうでしょうか。)

読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。
他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
「井蛙内科/開業医診療録(2)」
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網膜と循環器疾患

戯れ言たれる侏儒 / 2008.09.09 00:13 / 推薦数 : 2

当院では開業以来、「無散瞳眼底カメラ」で定期的に眼底検査をするように心がけて来ました。
無散瞳のため眼圧などを気にしなくて済むのはよいのですが、撮影の際の光量が大きいため患者さんは再検をいやがります。
そして眼科へ通院中の方も多く、実際は検査をなかなかさせていただけないのが実情です。
開業されている先生ならわかっていただけることですが、今やこちらが頭を下げて患者さんに検査をお願いする時代になってきているのです。

最近、循環器疾患と眼底についての、きわめて臨床的な論文が目に留まりました。
開業医にとっては大規模臨床試験の結果よりインパクトがあるかも知れません。

個人的な話で恐縮ですが、当院のポラロイドによる眼底カメラがポラロイドフィルムの製造中止により近々「おしゃか」になります。
エコー装置、レントゲン装置や胃カメラの装置もそうですが「もとがとれた」頃には装置が使えなくなってしまいます。

眼底カメラについては本体はいたって正常に作動しています。

それだけに不条理を感じてしまいます。

 

高齢者の網膜細静脈径の拡大が心血管疾患リスクに関与
〔ニューヨーク〕 国立シンガポール大学(シンガポール)のTien Yin Wong博士らは,高齢者における網膜血管径と冠動脈性心疾患(CHD),脳卒中の発生との関係について前向きな住民対象コホート研究を行い,5 年のフォローアップにより,拡大した網膜細静脈径は心血管疾患リスクと独立して関連するとの結論を得た。
詳細はArchives of Internal Medicine(2006; 166: 2388-2394)に発表された。

微小循環の標的化に有用性
Wong博士らは「高齢者において,網膜細静脈径の拡大とCHD,脳卒中との関連,網膜細動脈径の縮小とCHDとの関連を立証した」と述べている。
対照的に,網膜微小血管の局所病変は,CHDと脳卒中のいずれとも関連しないことを見出している。

同博士らは,この知見は次の2点で臨床応用の可能性があると説明している。
(1)高齢者の心血管疾患罹患率と死亡率の低減に関して,微小循環を特異的に標的にすることの有用性を立証している。降圧薬(ACE阻害薬など)には,本来の降圧作用の範囲を超えて微小血管の構造と機能に対して直接的に有益な作用を有するものもあるというエビデンスが増加している。
したがって,このような薬剤は心血管疾患の予防と治療に新たな薬効をもたらすものと考えられる。
(2)今回の研究と他の研究から収集したデータは,網膜写真からの網膜血管径測定により,心血管リスク予測に対する新たな情報が得られる可能性があることを示唆している。

今回の研究は米国の4施設で実施され,69~97歳(平均年齢79歳)の男女1,992例を登録した。
網膜像は視神経乳頭と黄斑との間を中心として撮影した。写真はデジタル化し,コンピュータ支援法を用いて評価した。
評価処理中は品質管理方法を実施した。
フォローアップ開始後5年間にCHDが115例,脳卒中が113例発生した。

網膜細静脈径の最大四分位数と最小四分位数を比較した結果,CHD発生率は,拡大した網膜細静脈径では11.7%,縮小した網膜細静脈径では8.1%であった。
また,脳卒中発生率は,網膜細静脈径の拡大では8.4%,同径の縮小では5.8%であった。

細動脈径はCRP値と関連
多変量解析を行い,年齢,性,人種,細動脈径,収縮期血圧(SBP),拡張期血圧(DBP),糖尿病,血糖値,喫煙,年間喫煙本数,HDLコレステロール値,LDLコレステロール値について調整した。
網膜細静脈径の最大四分位数と最小四分位数を比較すると,網膜細静脈径の拡大がCHD発生とリスク比(RR)3.0で,また脳卒中発生とRR 2.2で関連することがわかった。

C反応性蛋白質(CRP),総頸動脈と内頸動脈の内膜中膜肥厚度に対して付加的な調整を行ったが,これらの関連に対して影響は少なかった。

網膜細動脈径の最大四分位数と最小四分位数の比較を行った多変量解析により,網膜細動脈径の縮小はCHD発生と関連する(RR 2.0)が,脳卒中発生とは関連しない(RR 1.1)ことがわかった。

網膜細動脈径が縮小している第 1四分位数の患者は,比較的高齢であることが多く,高血圧でSBPとDBPがともに高いことが多く,現在喫煙者であることはまれであった。

網膜細動脈径が拡大している第 4四分位数の患者は,比較的若年であることが多く,アフリカ系米国人が多く,SBPは低いがDBPが高く,空腹時血糖値と総コレステロール値が高く,現在喫煙者であることが多かった。

細動脈径の拡大はCRP高値と関連し,細静脈径の拡大もCRP高値と関連していた。

脈径拡大と炎症マーカーに関連
現在利用可能なデータから,虚血が今回の知見と関連性のある重要因子であると解釈すべきではない点が強調されていることは重要である。
「網膜細静脈径の拡大と心血管疾患との関連を示したわれわれの研究と他の研究からの知見を,虚血により説明するのは難しい」とWong博士らは説明している。
ほかに,以前に実施された動物実験と臨床試験から示唆されるように低酸素症,炎症,内皮機能不全が関与する可能性がある。
また,以前の臨床試験では,細静脈径の拡大はCRP値やインターロイキン(IL)-6値などの炎症マーカー値と関連することが明らかにされた。

同博士らは,以前に実施された高齢者におけるCHDと脳卒中の予防に関する調査は,おもに大血管のアテローム動脈硬化や脂質値などの危険因子に集中していたと説明している。

高齢者コホートにおいて,細静脈径の拡大は脳卒中と有意に関連することを最初に立証したのはエラスムス医療センター(オランダ・ロッテルダム)のM. Kamran Ikram博士らの研究である。
今回の研究は,これらの知見をCHD発生に広げ,網膜細動脈径と網膜細静脈径を別々に研究することの重要性を立証し,網膜血管径から高齢者における心血管リスクの予測に関する情報が得られるとする新たなエビデンスを提供している。
 
出典 Medical Tribune 2007.5.31
版権 メディカル・トリビューン社

 「Heart and Kidney - 私たちの近くにあるもの」
制作 Heart and Kidney制作委員会
(シオノギ製薬 配布物)

 網膜症は糖尿病と同等に冠動脈疾患死のリスクを高める
オーストラリア・シドニー大学視力研究センターのJie Jin Wang氏らは,糖尿病の有無にかかわらず,網膜症そのものが冠動脈疾患(CHD)死の独立したリスクファクターであるとの住民研究結果をHeart オンライン版に報告した。

中等度の網膜症を有する糖尿病患者で死亡リスクは6倍以上,非糖尿病者でも2倍以上に
オーストラリアの住民研究(Heart 2006; 92: 1583-1587 ,Arch Ophthalmol 1998; 116: 83-89)から,糖尿病患者199例,非糖尿病者2,768例のサブグループを抽出し,網膜症の有無と重症度分類(軽度または中等度)別に,CHDによる死亡の動向が12年間追跡された。

追跡期間中におけるCHDによる全死亡者数は353例(11.9%)。各サブグループのうち,糖尿病患者群における網膜症者数は57例(28,6%),非糖尿病者群では268例(9.7%)であった。

解析の結果,網膜症・糖尿病のいずれも呈していない場合のCHD死亡率は0.010/人年であったのに対し,網膜症のみを有する人では0.015/人年で,糖尿病のみを有する人の0.016/人年と同等にCHDによる死亡リスクが増加していた。

また,年齢,性,喫煙歴,高血圧・糖尿病の有無を補正した後においても,糖尿病を合併している場合〔ハザード比(HR)2.21,95%信頼区間(CI)1.20~4.05〕,糖尿病のない場合(HR 1.33,95%CI 1.02~1.83)の双方で網膜症はCHD死亡の独立した予測因子であることが示された。

さらに,中等度網膜症を呈する人では,CHD死亡リスクが糖尿病がある場合で6.68(95%CI 2.24~20.0),糖尿病がない場合でも2.29(95%CI 1.10~4.76)と糖尿病の有無にかかわらず,網膜症によりリスクが高まることが明らかになった。

Wang氏らは「今回の検討から,網膜症はCHDリスク増加の指標となる可能性が示唆された」とコメント。
また,網膜症とCHDの直接の関連は不明としながらも,細小血管の障害と炎症を病態の主体とする網膜症が虚血性心疾患につながる動脈硬化の進展のシグナルとなっているのではないかと考察している。

出典 Medical Tribune 2008.8.12
版権 メディカル・トリビューン社


糖尿病網膜症は心不全発症の独立予測因子
糖尿病網膜症の存在は心不全発症の独立した予測因子であると,オーストラリア,米国,シンガポールの共同研究グループがJournal of the American College of Cardiologyの4月22日号に発表した。
 
細小血管障害は,糖尿病患者の心不全のおもな原因である糖尿病心筋症の病因に大きなかかわりがあると考えられている。
同グループは,腎機能正常で臨床的に冠動脈疾患や心不全のない中年期の2型糖尿病患者1,021例を前向きに追跡し,糖尿病の代表的な細小血管障害である網膜症が心不全の発症を予測するかを検討した。
 
被験者のうち125例が網膜症合併例であった。9年間の追跡で106例に心不全の発症が認められ,累積発症率は網膜症のない群が8.5%であったのに対し,網膜症合併群では21.6%と高率であった。
 
年齢,性,人種,喫煙,糖尿病罹病期間,インスリン使用,血圧,血清脂質,その他の危険因子を調整した結果,網膜症のある群はない群と比べて心不全を発症するリスクが2.5倍以上高かった〔ハザード比(HR)2.71,95%信頼区間(CI)1.46~5.05〕。この関係は血糖コントロール,頸動脈硬化,血管内皮機能障害の血清マーカーを調整後も有意であった(HR 2.20,95%CI 1.08~4.47)。
 
同グループは「この結果は,糖尿病患者の心不全発症における細小血管障害の関与を支持するものである」としている。

Cheung N, et al. J Am Coll Cardiol 2008; 51: 1573-1578.

出典 Medical Tribune 2008.5.1

版権 メディカル・トリビューン社

 

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きょうは「肥満者や高齢者の心血管系イベントに対する一次予防・二次予防」について勉強しました。

 

特別企画
Round Table Discussion
日本人の心を護る
虚血性心疾患から心不全の発症を防ぐ

近年増加している,肥満者や高齢者の心血管系イベントに対する一次予防・二次予防について,薬剤溶出性ステントの使用経験も含め,循環器専門医の意見を伺った。

小川 久雄 氏(司会)
 熊本大学大学院循環器病態学教授
境野 成次 氏 
 天草地域医療センター循環器科医長
菊田 浩一 氏 
 新別府病院循環器科部長
角田 等 氏 
 熊本大学大学院循環器病態学
松村 敏幸 氏 
 労働者健康福祉機構熊本労災病院 循環器科部長
下村 英紀 氏 
 福岡徳洲会病院循環器科部長
岡 秀樹 氏 
 健康保険人吉総合病院循環器科部長
宮本 信三 氏 
 健康保険八代総合病院循環器内科部長
坂本 知浩 氏 
 済生会熊本病院循環器科
(発言順)

小川 
近年わが国では,肥満者や高齢者が著しく増加しています。この方たちは,糖尿病や高血圧の発症リスクを高め,ひいては,心血管系イベント(CVD)や心血管死を増やすため,大きな問題となっています。
 
そこで本日は,”肥満者や高齢者のCVDをいかに防ぐか?”について,考えてみたいと思います。
 
はじめにCVDの一次予防のあり方について伺いましょう。

メタボリックシンドロームの一次予防は血圧管理から
境野 
メタボリックシンドローム(MetS)の構成因子には,血圧高値,耐糖能異常,脂質代謝異常がありますが,基盤を成すのは肥満(内臓脂肪蓄積)であり,CVDの一次予防は,内臓肥満に伴うインスリン抵抗性がポイントになると思います。
これには,運動と体重管理が重要ですが,現実的には,肥満の方で最初に発症しやすい高血圧を,CVDの発現抑制が認められているARBを用いて厳格にコントロールするようにしています。
ARBの糖尿病新規発症抑制にも期待しています。

菊田 
肥満者は,内臓脂肪の蓄積により,インスリン抵抗性や,TNF-α・PAI-1の発現増加,抗動脈硬化作用をもつアディポネクチンの低下などが起こり,CVDが発現しやすい状態にあります。
また肥満者では,インスリン抵抗性や脂肪細胞の肥大化により,アンジオテンシンII(AII)の産生が亢進しています(図1)。
CVD抑制のためには,血圧を厳格にコントロールすることが最も重要であると考えています。
薬剤による治療介入を行う場合,降圧効果に差がないのであれば,患者さんの病態により適している薬剤,肥満者のようにAIIが亢進した状態が予めある場合にはARBを用いた降圧療法が最適だと考えます。

高齢者の冠危険因子に応じた降圧療法
小川 
高齢者のCVDの発現抑制についてはいかがでしょうか。

境野 
一般的なCVDのリスク因子は高齢者でも同じですが,高齢者では加齢に伴い腎機能が低下し,血圧が上昇している症例が多い点で異なります。
腎機能低下は血圧上昇を招き,逆に血圧上昇は腎機能低下をもたらすという,高齢者はまさにこの悪循環のなかにいることが予想されます。
CASE-Jでは,カンデサルタンが腎機能の悪化を特に高齢者で大きく抑制することを認めました。
高齢者の降圧療法においても,カンデサルタンをベースに用いることが適切だと考えています。

CVDと慢性腎臓病の一次予防
小川 
CVDのリスク因子として慢性腎臓病(CKD)が注目されていますね。

角田 
肥満をベースとするMetSの方,特にその構成因子保有数が増えるに従い,CKDのリスクが高まります(図2)。
腎機能障害は,糖尿病以上に,CVDの発現に最も大きく寄与する因子であることがCASE-Jで示されており,高血圧治療において腎機能を保っていくことは非常に重要です。
CKDは腎疾患というより,むしろ動脈硬化性疾患としてとらえ,われわれ循環器専門医が積極的にCKDの重要性を認識していくべきだと思います。
CKDを発症している方では,すでに全身の動脈硬化が進行していますが,CKDはさらに動脈硬化を進行させ,逆に動脈硬化はCKDを悪化させるという悪循環を形成します。
CKDを発症すると,血圧は130/80mmHg未満,LDLコレステロール120mg/dL未満と,通常の目標値より厳しくコントロールしていかなければなりません。
より早期にCKDを発見し,治療介入していくことが大切です。

松村 
CKDはCVDの明らかなリスク因子ですが,それだけではなく,CVD後の治療や予後にも影響します。
例えば冠インターベンション(PCI)を実施する際,腎障害がある方では,造影剤1つ使うにしても造影剤腎症を懸念し,細心の注意を払わねばなりません。
さらに,CKD患者さんでは,治療薬剤の選択肢が狭くなります。このような理由から,腎保護を意識した治療は非常に重要ですが,腎保護を臨床的に実感することは困難です。
したがって,カンデサルタンのように,日本人で腎機能障害の進行抑制が認められている薬剤を中心に用いています。

下村 
カンデサルタンは,安定した降圧効果に加え,CKDの進行抑制や,糖尿病の新規発症抑制もCASE-Jで認められており,リスク因子の管理,CVDの抑制により効果的であると考えています。

CVDの二次予防を目的としたリスク管理
小川 
続いて,糖尿病合併高血圧症患者さんに対するインターベンション,二次予防について伺いたいと思います。

下村 
糖尿病合併高血圧症患者さんは腎機能低下例が多いので,造影剤の使用量を極力少なくして造影剤腎症の予防に努めています。
再狭窄は薬剤溶出性ステント(DES)の登場により減少したものの,生命予後は改善されていないため,生命予後の改善には,新規病変のイベントを抑制していかなければなりません。
そのためには,薬剤介入によって血圧・血糖を厳格にコントロールしていく必要があります。
また,糖尿病患者さんは全身性の動脈硬化を有しているため,PCI施行前に脳血管,腎血管,末梢血管をきちんと評価したうえでインターベンションを行うよう心がけています。

岡 
糖尿病患者さんの冠動脈はびまん性に病変があるうえに従来のベアメタルステント(BMS)を使用したインターベンションでも再狭窄率が高いため,再狭窄抑制効果の高いDESの使用を念頭に置きます。
ただ,DESは長期にわたる強力な抗血小板療法が必要であるため,当院では抗血小板薬の忍容性を確認したうえで使用する方針としています。
また,PCI後の再発抑制のために,薬剤療法のみならず,運動療法や食事療法も含めた包括的心臓リハビリテーションを積極的に行っています。

境野 
二次予防のためには,血圧,血糖,脂質とも一次予防より厳格な管理が必要ですので,積極的に薬剤による治療を行っています。
当院ではPCI後のフォローは実地医家の先生方にお願いしていますので,実地医家の先生方とのコミュニケーションにも力を入れています。

角田 
私も,二次予防のためにはリスク因子の厳格な管理が必要だと考えます。
血圧にはARBまたはACE-I,血糖管理にはチアゾリジン系薬剤,脂質管理には水溶性スタチンといった,エビデンスのある薬剤を中心に選択しています。
そして,二次予防でも生活習慣の改善,特に運動をしっかり行うことが大切だと思います。

デバイスの選択と二次予防
小川 
DESの使用頻度と効果についてはいかがでしょうか。

菊田 
当院では約7割でDESを使用しています。
DESを使用した場合,PCI後6か月以降の冠動脈造影で再狭窄はほとんど認めず,責任病変を治すということだけを考えれば非常に有効です。
しかし,DESでは遅発性ステント血栓症のリスク軽減のため,長期にわたり抗血小板薬を服用しますが,抜歯や手術をする場合には抗血小板薬を中止すべきか非常に悩みます。PCI時,DESを用いるかBMSを用いるかは,冠動脈だけでなく,患者さんの全身状態と社会的状況をみて選択するのが大事だと思います。

宮本 
急性冠症候群(ACS)にDESは保険適用外ですので,DESの使用頻度は各施設のACSの割合や,elective PCI(ePCI)の件数の比率によって影響を受けると思います。
当院では,ACSが約3割を占め,その患者さんにはBMSを使っていますが,ePCIでは,術前に薬剤の副作用などを説明し,ほぼ100%DESを使っています。

松村 
当院のDES使用頻度は8割ぐらいです。再狭窄はDESのほうが少ないため,コスト面でもDESが優勢だと考えています。ACSに対するDESの使用に関しては,今後の大きな課題であると考えています。

DES後のカンデサルタン投与の意義を探る4Cトライアル
小川 
最後に,PCI後降圧療法を必要とする患者さんにカンデサルタンを投与する意義についてご意見をお聞かせください。

坂本 
心筋梗塞後は,心機能低下や心不全の発症が懸念されます。
カンデサルタンは慢性心不全患者を対象にしたCHARMで,心筋梗塞の発症を抑制することが示されており,PCI後の心機能が低下した患者さんに,カンデサルタンを使う意義があると考えます。
さらに糖尿病がある場合,再発リスクが約2.6倍高まることがFinnish studyで示されています。
ARBに糖代謝の改善が期待できることからも,PCI後のフォロー薬にカンデサルタンを用いる意義は非常に大きいと考えます。
Ogaki研究では,PCI後6か月以上が経過し,心電図異常を認めないなど,症状が安定した患者さんにカンデサルタンを投与した結果,2年間でCVDの再発をほぼ半減しました(図3)。
この研究では,PCI後の再狭窄を免れた症例を対象としているという点が,再狭窄リスクの減少が期待されるDES使用者と共通しており,DES使用例の予後を予測できるものです。現在進行中の4C トライアルでは,DES使用例の降圧療法や心不全治療を必要とする患者さんを対象に,従来治療にカンデサルタンを追加する群としない群に分け,カンデサルタンの有効性を検討しています(図4)。
2,200例の登録を目標としており,現在,全国38施設のご協力をいただき,約650例の登録をいただいておりますが,まだまだ多くの先生方のご協力が必要です(表1)。
ご興味のある先生は,熊本大学循環器内科ホームページ(
http://www.kumadai-junnai.com/「→RCTへのお誘い」)をご覧いただくか,私どもにご連絡いただき,一緒に本研究にご参加いただきたいと思います。

小川 
DES使用例に対する介入試験は,報告が非常に少なく,インパクトの大きい試験になると期待しています。
本日は,PCIを専門とする先生方から,「肥満者,高齢者のCVDの一次予防,二次予防には,CVDのリスク因子を発症させないこと,発症している場合には厳格にコントロールしていくことが重要である」ことをお話しいただきました。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?phrase=OGAKI&perpage=0&order=0&page=0&id=M4047761&year=2007&type=allround
(図表については、上記のサイトでご確認ください)

出典 Medical Tribune 2007.11.22
版権 メディカル・トリビューン社

<コメント>
あまりにも盛りだくさんな内容で、テーマが絞り込まれていないような印象を受けました。
結局はARB,しかもスポンサーのカンデサルタンという結論なのでしょうか。
以下は武田薬品から配布されたOGAKI Studyのパンフからです。

 

 

三塩清巳 「阿蘇外輪山」 油彩10号
http://page17.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/v64675852 

 

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心不全とQRS時間延長

戯れ言たれる侏儒 / 2008.07.26 00:04 / 推薦数 : 0

心不全患者の単純な心電図QRS時間の延長から臨床的にどこまで考えるか?
心不全の増悪で入院し左室駆出率(LVEF)の低下がみられる患者では、QRS持続時間が延長している例が多く、QRS持続時間延長は退院後の高い疾患罹患率および死亡率の独立の予測因子であることが明らかとなった。
心不全入院患者は退院後の疾患罹患率および死亡率が高いことが知られているが、入院中のQRS持続時間の予後予測因子としての価値はあまり検討されていなかった。

EVEREST試験のレトロスペクティブな事後解析
本研究は、心不全で入院したLVEF≦40%の患者を対象とした二重盲検プラセボ対照無作為化試験Efficacy of Vasopressin Antagonism in Heart Failure Outcome Study With Tolvaptan(EVEREST)のレトロスペクティブな事後解析である。
2003年10月~2006年2月に北米、南米、ヨーロッパの359地区から4,133例が登録された。

登録時にペースメーカーもしくは植込み型除細動器を使用していた1,029例、およびベースライン時にQRS持続時間の報告がなかった142例を除外した2,962例が解析の対象となった。
そのうち、1,641例はベースライン時のQRS持続時間が正常(<120ms)であり、1,321例が延長(≧120ms)していた。主要評価項目は、全原因死亡、および心血管死/心不全による入院の複合エンドポイントの2つとした。

フォローアップ期間中央値9.9ヵ月におけるおもな結果は以下のとおり。
●全原因死亡率:QRS持続時間延長群で有意に高い
・QRS持続時間正常群:18.7%
・QRS持続時間延長群:28.1%
 (ハザード比:1.61、95%信頼区間:1.38~1.87) 
 
●心血管死/心不全による入院の複合エンドポイント:QRS持続時間延長群で有意に高い
・QRS持続時間正常群:32.4%
・QRS持続時間延長群:41.6%
 (ハザード比:1.40、95%信頼区間:1.24~1.58)
 
●補正後のQRS持続時間の延長と主要評価項目の関連
・QRS持続時間の延長と全原因死亡リスクの増加が有意に相関
 (ハザード比:1.24、95%信頼区間:1.02~1.50)
・QRS持続時間の延長と心血管死/心不全による入院のリスクの増加が有意に相関
 (ハザード比:1.28、95%信頼区間:1.10~1.49)
 
●QRS持続時間延長群のうち、入院中の最終の心電図検査でQRS持続時間が正常化していたのは105例(3.6%)にすぎなかった。

 

 「Heart and Kidney - 私たちの近くにあるもの」
制作 Heart and Kidney制作委員会
(シオノギ製薬 配布物)

<監修者のコメント>
本研究は、心不全患者の単純な心電図QRS時間の延長から、循環器診療において、その予後と最新の治療選択に関する臨床的意義をどこまで考察できるか? という重要なトピックを扱っている点から取り上げた。

まず、重要な点は、左室収縮不全による心不全入院患者において、QRS延長(≧120ms)は対象者の44%と高頻度に見られ、ハードエンドポイントである総死亡を補正前では61%、補正後においても24%の増加と明確に予後不良に関連している点である。
入院時に延長していたQRS時間は、その後、短縮することもあるが、それはまれで、例え短縮しても予後不良に関連している。

また、QRS時間の予後への影響は、心不全のその原因に冠動脈疾患の有無に関わらない。

本研究対象者の左室機能が低下した心不全患者では、β遮断薬、レニンアンジオテンシン抑制薬(ACE阻害薬かアンジオテンシン受容体拮抗薬)、利尿薬(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬を含む)等の十分な薬物療法をしているにもかかわらず、一年以内に25%以上が死亡している。

その死因の2/3以上は、心不全死か突然死である。

この重症心不全患者の心不全死に対する最新治療として、QRS時間の延長から、次の手段として心臓同期化療法(CRT)の適応を考える必要がある。
一般的に、左室収縮能が低下した患者において、QRS時間の延長は左室壁の部位により収縮期がずれる左室同期不全を意味する。
実際に組織ドップラーをも用いた心エコーによる検討では、左室駆出分画35%未満のQRS>120 msを示す患者の60%以上に、左室同期不全がみられる。
このような例では、両室ペーシングによる心臓同期化療法(CRT)により、機能的僧房弁逆流の改善や心筋酸素消費量の低下がみられ、長期的には左室リモデリングが改善することが期待できる。
以前、本誌2007年11月26日号にとりあげたEF35%未満でNYHAIIIの心不全患者を対象にCRTの有用性を検討した無作為化試験RethinQ研究では、QRSの延長がない(<130ms)の心不全患者にCRTを行っても、運動耐容能の改善作用は期待できないことが示されている。

([監修] 自治医科大学 循環器科 教授 苅尾七臣)
http://www.carenet.com/news/cardiology/newsnow/det.php?nws_c=4742

<原著>
Clinical implications of QRS duration in patients hospitalized with worsening heart failure and reduced left ventricular ejection fraction.
Wang NC et al. JAMA. 2008; 299: 2656-2666.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18544725?ordinalpos=26&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.Pubmed_RVDocSum

<コメント>
気になったところ2点。
レトロスペクティブなら、そのついでに入院前の心不全のない時点での心電図上のQRS持続時間が検討されていれば知りたいこと。
もう1点はQRS持続時間以外にl-VATの検討がされていないこと。

 

 トレンツ・リャド『モナコの薔薇』
http://page8.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/h65345391

 <自遊時間> 
ついに判を押しました。

超音波診断装置(エコー)選びも最終段階。
数日前から業者の動きも慌ただしくなり、値引き競争になっていました。
こちらも半日単位で購入予定機種がコロコロ変わるいい加減さ。
開業医ゆえ、上位機種、さらには中級機種は最初から候補になっていません。
具体的には東芝のNemioXG、日立のApron EUB-7000HV、GEのLOGIQ P6の3機種が候補でした。

最終的に今日契約したのはGEでした。

コンパクトということも魅力ですが、何だか感性に訴えるものがあったからです。
決定打となったのはデジタルRAWデータ・マネージメントでした。
そして以下の言葉でした。
「GE Healthcareでは先生方の検査環境や患者様のことを念頭に置いて、日本を含む世界中の開発チームが密接にリンクしながら24時間365日、超音波診断装置を開発し続けています。」

LOGIQ P5
http://stg-japan.gehealthcare.com/cwcjapan/static/rad/us/msujlogiqp5.html

A fresh look at Ultrasound.
先生方がお探しの超音波診断装置がここにあります。
http://stg-japan.gehealthcare.com/cwcjapan/static/rad/us/index.html

 

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きょうは、すでに臨床現場でおなじみのBNPについて復習してみました。
このBNPについては以前に
NT-proBNPについて
http://blog.m3.com/reed/20070906/NT-proBNP
で、NT-proBNPとの両者間の比較をしました。

私自身、NT-proBNPを一時期使っていましたが、最近はBNP一辺倒です.
それは上記のブログでコメントをいただいたのがきっかけでした。
先生方はBNPとNT-proBNPをどのように使い分けておみえでしょうか。

 

BNPの産生部位
BNPは1988年にわが国の基礎研究者である松尾久壽、寒川賢治、南野直人らの研究グループによってブタの脳内から発見されたペプチドである。
この研究グループが、脳内の新しいペプチドの系統的な検
索の途上でブタの脳内から発見したものである(注)。
 
その後の研究で、BNPは構造と分布が動物の種でかなり異なることが判明した。
すなわちヒトでもBNPが発現・分布しているが、脳にはきわめて少なく、心臓が主要なBNPの合成器官であることがわかった。
心房でもBNPは産生・分泌されているが、その組織の重量等を考慮するとBNPの主要な産生の部位は心臓、中でも心室と考えられている。

脳性と呼ばれる理由
先に述べたように、BNPはヒトにおいて心臓から産生・分泌されるペプチドであることが後に判明したが、種による分布の差が多く、たまたまブタの脳で検索している時に発見されたため、このように命名されて発表された(ブタではたまたま脳内のBNP濃度が高かったが、ヒトでは低く、ヒトの脳で検索していたら発見できなったといわれる)。
これが脳性と呼ばれる理由である。

これが誤解を招くとして、B型ナトリウムペプチド(B-type natriuretic peptide)と呼んでいる論文も最近で多くみられる。

BNPの心保護作用
BNPの作用はBNPがその受容体に結合して細胞内にシグナル伝達して作用が発揮される(図1)。

 

ナトリウムペプチドの受容体は現在NPR-A(natriuretic peptide receptor - A)、NPR  - B、NPR - Cの3種類報告されており、NPR-A、NPR -  Bはグアニレートシクラーゼドメインが結合しているが、NPR - Cにはなく、この受容体は別名クリアランス受容体とも呼ばれる(図2)。


 
BNPはNPR-A受容体に主に結合して作用を発揮すると考えられている。
したがって、ANPとは半減期は異なるが作用はほぼ同じである。
BNPを静脈内投与すると、血圧が低下し、利尿作用が発揮される。
現在では図1に示すように、当初示された腎臓、血管、副腎、中枢だけではなく、心臓に働き、他にも骨や、紬胞にも働くことが明らかとなっている。
 
BNPの心保護作用では、心臓に直接働く作用がまず挙げられる。
以前は心臓にナトリウム利尿ペプチドの受容体はないといわれていたが、最近の研究から、心臓にもNPR- Aが発現し、心筋細胞に働いて肥大を抑制し、線維芽細胞にも働いてその増殖を抑制し、コラーゲン線維の産生を抑制する作用のあることがわかっている。
また心不全の時などにはBNPの血中濃度は増加するが、心臓以外にも働いて間接的に心臓を保護する作用を有している。
 
つまりBNPは腎臓に働いてNa利尿作用を有し、血管に働いて増加した血管抵抗を抑制する作用を有し、また心不全の時に亢進したレニン-アルドステロンの分泌・産生を抑制する作用を有している。
 
炎症を抑えたり、細胞外マトリックスを抑える作用のあることも報告されている。
心不全時にこれらの作用はすべて心保護につなが
ると考えられる。
(注)この研究グループはANPのアミノ酸配列を最初に同定し、またCNPという第3のナトリウム利尿ペプチドも発見している。

(著者 独協医大循環器内科助教授  錦見俊雄先生)

出典 日本医事新報 No.4324  2007.3.10

版権 日本医事新報社


<参考ブログ>
血中BNP検査は心不全の治療に不可欠な検査
http://www.m-junkanki.com/topics/topics4h.html
急激な変動がないために、検査の再現性、定量性が安定している。

心不全の診断―BNPガイド下診断
http://www.gik.gr.jp/~skj/lecture/okamoto02.php3

 

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第72回日本循環器学会特集の記事で勉強しました。

メタボリックシンドローム診断基準
高リスク群のウエスト周囲径は男性85cm,女性80cm以上が適切
 

算出されたウエスト周囲径は統計学的にも有意
東北大学大学院循環器病態学講座の多田智洋氏らは,慢性心不全患者を対象とした大規模追跡試験であるCHART-2中間報告をもとに,メタボリックシンドローム診断基準におけるウエスト周囲径について検討。
その結果,高リスク群のウエスト周囲径は男性85cm以上,女性80cm以上とすることが望ましいと報告した。

算出されたウエスト周囲径は統計学的にも有意
今回の検討対象は,東北地方25施設が参加して2006年10月に開始された大規模な前向き追跡試験CHART-2の参加者。
米国心臓病学会慢性心不全診断治療ガイドラインにおいてステージB,C,Dの安定期に該当する慢性心不全患者で,2008年2月までに5,791例(男性4,070例,女性1,721例)が登録されている。
 
登録患者の背景をメタボリックシンドロームの構成因子で見ると,全体に占める糖代謝異常の割合は50.3%,脂質代謝異常は74.0%,高血圧は77.6%であった。
これらメタボリックシンドロームの危険因子保有数の全体の平均は2.02個で,危険因子を2個以上有する患者の割合は全体の74.1%であった。
 
ウエスト周囲径と危険因子数の相関に関する検討では,ウエスト周囲径が増大するにつれて危険因子数が増加する傾向が認められた。
なお,危険因子を2個以上有する例におけるウエスト周囲径の値は男性85cm以上,女性80cm以上であった。
 
一方,これらの登録症例で心血管合併症の発症危険度の高い,危険因子数2個以上となる症例でのウエスト周囲径のカットオフ値を受信者動作特性(ROC)曲線で算出すると,男性84.8cm,女性81.8cmとなった。
 
以上の結果から,心不全で心血管疾患危険因子を2個以上有するメタボリックシンドロームのような高リスク患者でのウエスト周囲径のカットオフ値は,男性85cm,女性80cmが最適なものと考えられたという。

成人男子の大規模追跡研究
体重減少によりすべてのパラメータが改善
名古屋大学大学院循環器内科の近藤隆久氏らは,日本人男性の大規模追跡調査から,体重減少は脂質や空腹時血糖の改善につながり,尿酸や血圧も低下させることを明らかにした。
この効果は年齢や肥満の程度にかかわらず得られるという。

年齢や肥満度に関係なく効果あり
対象は,2001年に18~55歳だった,高血圧,糖尿病,脂質代謝異常症の既往がなく,薬物治療も受けていない男性1万6,844人。
体重,HDLコレステロール(HDL-C),総コレステロール(TC),トリグリセライド,空腹時血糖,尿酸,血圧を5年にわたり毎年測定した。
 
体重の変化と各検査値との相関を見ると,体重の減少幅が大きくなるほどHDL-C値の上昇幅も大きくなるという有意な正の相関が認められた(相関係数0.36)。
また,体重減少とTC値,トリグリセライド値,空腹時血糖値の変動では相関係数はそれぞれ-0.33,-0.28,-0.16と,いずれも有意な負の相関が示された。
 
体重減少による各検査値への影響に関しては,とりわけHDL-Cの上昇とTCの低下が著しく,トリグリセライド,空腹時血糖値の低下幅はTCの低下幅に比べれば小さい傾向にあった。
体重減少と尿酸,収縮期血圧,拡張期血圧にもすべて有意な負の相関が認められ,体重減少とともに数値は低下していた。
 
一方,これらの相関について, BMIのレベルで分けて検討したところ,BMI25未満,BMI25以上30未満,BMI30以上のいずれの群でも,体重減少と各検査値の相関は全体の相関と同様の傾向を示した。
また,年齢別に分けても,30歳未満,30歳以上40歳未満,40歳以上のいずれの群でも全体での相関と同様だった。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41191052&year=2008
出典 Medical Tribune 2008.5.8
版権 メディカル・トリビューン社

 

<番外編>
第72回日本循環器学会特集
心不全
mtDNAヘリカーゼTwinkle過剰発現マウスで心筋梗塞予後が改善
九州大学循環器内科の井上敬測氏らは,ミトコンドリアDNA(mtDNA)の複製に必須なヘリカーゼであるTwinkle過剰発現はmtDNAコピー数を増やし,心筋梗塞後の心筋リモデリングを抑制し,生存率を改善したとするマウスでの実験結果について報告。
「Twinkleは心筋梗塞後の心不全を防ぐ新しい治療ターゲットになる可能性がある」と述べた。

心機能低下やリモデリングを抑制
同科では,ミトコンドリア電子伝達系由来の活性酸素により惹起されるmtDNAの機能異常が心筋リモデリングと心不全に関連すること,ミトコンドリア転写因子A(TFAM)の過剰発現マウスではmtDNAコピー数が増加し,心不全におけるミトコンドリア機能障害が改善することなどを報告している。TwinkleはmtDNA コピー数を調節することが知られて おり,今回はマウスを用いて,Twinkle過剰発現による心筋梗塞4週間後の心機能改善効果について検討した。
 
その結果,野生型(WT)に比べて,Twinkleを過剰発現させたトランスジェニックマウス(TG)ではmtDNAコピー数が有意に増加し,心筋梗塞後の左心機能が有意に改善した〔左室駆出率(LVEF):WT群43.9±1.9%,TG群55.6±1.3%,P<0.05〕。
同様に,TG群では心筋梗塞後の心肥大や心筋リモデリングが有意に抑制され,拡張末期圧(WT群11.6±1.0mmHg,TG群8.0±0.3mmHg),胸水貯留がそれぞれ有意に減少した(P<0.01)。一方,遠隔期に進行性外眼筋麻痺症を発症するTwinkle遺伝子変異マウス(Mutant)では,心筋リモデリングと心不全に対する保護的な作用は認められなかった。
 
ミトコンドリア機能については, Sham手術後のWT群に比べて,TG群では心筋梗塞後もシトクロム酵素活性が正常に保たれ,非梗塞部位の心筋組織の過酸化脂質が有意に少なかった(P<0.05)。心筋梗塞後の生存率は,WT群,Mutant群に比べて,TG群で有意に改善され,Twinkle過剰発現が心筋梗塞の予後を改善する可能性が示された。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41191061&year=2008
出典 Medical Tribune 2008.5.8
版権 メディカル・トリビューン社 

 

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第80回米国心臓協会学術集会(AHA 2007)
の記事で勉強しました。

心血管疾患制圧に向け新たなエビデンス加わる
〔米フロリダ州オーランド〕 第80回米国心臓協会学術集会(AHA 2007)が11月4日から4日間,当地で開かれた。
今回の参加者は約2万6,000人で,米国外からの参加が約9,000人を占めた。
同学術集会恒例のLate-Breaking Clinical Trialsセッションで示されたエビデンスは,心血管疾患の診断・治療を塗り替えるインパクトを持つ。

prasugrelは出血リスク増加も  虚血性イベント抑制で勝る
ハーバード大学Brigham and Women's病院(ボストン)心血管部門のElliot M. Antman教授らは,30か国707施設の参加を得て実施した第 III 相試験TRITON-TIMI38※を報告。
経皮的冠動脈インターベンション(PCI)施行予定の急性冠症候群(ACS)患者に対するアスピリン併用療法において,新規抗血小板薬prasugrelは通常量のクロピドグレルに比べて出血リスクを有意に増大させるものの,虚血性イベントを有意に抑制することを明らかにした。

イベント19%減,出血32%増
Prasugrelはチエノピリジン系薬で,活性代謝物が血小板ADP受容体P2Y12に特異的に結合し,その機能を抑制する点はクロピドグレルと同じであるが,より迅速に高い血小板凝集阻害効果を発現し,不応症が少ないとされる。
 
今回の対象は,PCI施行予定の中~高リスクのACS患者 1 万3,608例。不安定狭心症/非ST上昇型心筋梗塞が74%,ST上昇型心筋梗塞が26%を占めた。
対象を,
(1)クロピドグレル群(C群:初期用量300mg/日,維持用量75mg/日)
(2)prasugrel群(P群:初期用量60mg/日,維持用量10mg/日)の2 群にランダムに割り付け,全例にアスピリンを併用して,二重盲検で 6 ?15か月(中央値12か月)追跡した。
 
その結果,1 次評価項目の心血管死,非致死性心筋梗塞(MI)・脳卒中の発生率は,C群の12.1%に対してP群では9.9%と19%の有意(P=0.0004)なリスク減少を示した。

対象の94.5%(ベアメタルステントのみは47.5%)がステントを使用したが,ステント血栓症は,C群2.4%に対してP群は1.1%と52%の有意(P<0.0001)なリスク減少を示した。
これに対し,重要安全性評価項目である冠動脈バイパス術(CABG)に関連しないTIMI大出血(ヘモグロビン 5 g/dL超の低下)は, C群1.8%に対しP群は2.4%と32%の有意(P=0.03)なリスク増加を示した。
P群の出血リスク増大はCABG関連TIMI大出血では4.73倍(P<0.001),致死性出血では4.19倍(P=0.002)に及んだ。

脳卒中,TIA既往例は除外すべき
そこでpost hoc解析として,有効性と安全性を加味して心血管死,非致死性MI・脳卒中,CABGに関連しないTIMI大出血の発生を総合評価したところ,P群では13%の有意(P=0.004)なリスク減少が認められた。
両群の総死亡に有意差はなかった。
ただし,4 %を占めた脳卒中/一過性脳虚血発作(TIA)既往例では,P群で37%の有意なリスク増加が認められ,クロピドグレルが優れる結果となった。
16%を占めた75歳以上の高齢者,体重60kg未満例では,両群に有意差は認められなかった。
 
Antman教授は「脳卒中/TIA既往例はprasugrel投与例から除外すべきで,75歳以上,体重60kg未満例については,現在進行中のサブ解析から利益が得られる維持用量を明らかにできる可能性がある。
残りの対象には,維持用量10mg/日の投与により総合的な利益が得られた」と結論した。

※ TRial to assess Improvement in Therapeutic Outcomes by optimizing platelet InhibitioN with prasugrel Thrombolysis In Myocardial Infarction 38

<参考サイト> 

TRITON-TIMI38

http://www.theheart.org/article/823247.do
prasugrel

プラスグレルとアスピリンでステント血栓症リスクが減少
http://www.nejinews.co.jp/news/business/eid487.html
(プラスグレルの出血リスクについてはさらっとしか触れられていません)

2007年アメリカ心臓学会レポート
http://physician.pfizer.co.jp/cardiology/report/aha/2007/13.html#PS12-4
京都大学大学院医学研究科 循環器内科学 赤尾 昌治
抗血栓治療に伴う出血:リスク・ベネフィットのバランス
Bleeding with Antithrombotic Therapy: Balancing Risk and Benefit
(F Van de Werf, Leuven, Belgium)
多くの臨床研究の結果から,ACS患者における大出血の頻度は3~15%の範囲内で報告されており,これはSTEMIとNSTEMIの間には差はないとされる。
大出血を起こすリスク因子としては,高齢者,女性,腎不全,出血の既往,などが挙げられ,出血や輸血の施行は,poor clinical outcomeと相関が高いとされる。
CRUSADE研究で,入院中の輸血は全体で14.9%であり,腎不全,高齢が輸血と強く相関しており,輸血を受けた者は死亡あるいは再梗塞のリスクが有意に高かった。
輸血がpoor outcomeに関与する機序としては,血行動態を代償するためにカテコラミン分泌が増加すること,また輸血による一酸化窒素(NO)の消費のために炎症が惹起されるなどが考えられる。
以上より,ACSに対する抗凝固薬,抗血小板薬の使用に当たっては,予想されるリスク・ベネフィットのバランスを考慮することが常に重要である。

先述のように,OASIS-5研究でfondaparinuxがenoxaparinに比べて大出血が少なく,またACUITY研究においてbivalirudin単独投与群がheparin+GP IIb/IIIa受容体拮抗薬群に対して有効性は劣らず出血が減少する,などの知見は重要である。

aspirin を使用するACS患者において,clopidogrel追加投与の短期投与と長期投与の有効性および安全性を比較したCURE研究において,clopidogrelは一次エンドポイント(心血管死+非致死性心筋梗塞+脳卒中)の発生を有意に抑制し,大出血の発生率はclopidogrel群で有意に高かったが,生命にかかわる出血の発生率に有意差はみられなかったとして,出血と一次エンドポイントのバランスを強調している。
TRITON-TIMI38研究のprasugrelでは,clopidogrelに比して有意な出血リスクの増加が示されたが,これらは脳出血の既往のある患者に集中しており,脳出血既往の有無が抗血小板薬の選択に影響を与えることを示唆する。

血小板GP IIb/IIIa受容体拮抗薬abciximabは,ISAR-REACT2研究などの結果から,STEMIでもNSTEMIでも少し出血が多くなるが,net outcomeの改善が期待でき,ベネフィットがリスクを上回るとした。

以上のように,リスク・ベネフィットのバランスを考えることは非常に重要であり,侵襲的PCIは適応を充分に吟味すること,また出血のハイリスク群にはfondaparinux,bivalirudinが推奨されること,またNSTEMIのハイリスク群にはGP IIb/IIIa受容体拮抗薬が良いことを挙げている。
また,穿刺は可能な限り橈骨アプローチで行うこと,またPPI(プロトンポンプ阻害薬)による消化管出血予防の重要性を述べて発表を締めくくっている。


 

黒沢吉蔵  「尾瀬遥か」 日本画 P10 
http://page12.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/p118143090

スタチンでは心不全患者の有意な心血管イベント抑制には至らず
至適治療を受けている慢性心不全患者へのスタチンの追加投与は,心血管イベントの有意な減少には至らないことが判明した。
欧州を中心に,5,000例を超える高齢心不全患者に対し,ロスバスタチンの予後改善効果を検討したCORONA※試験の結果から,イエーテボリ大学(スウェーデン・イエーテボリ)ウォーレンバーグ研究所のAke Hjalmarson氏が発表した。

「入院」は有意に減少
 CORONAは,従来の臨床試験で除外されていた収縮不全患者におけるスタチン療法の役割を明らかにする目的で計画された。
対象は,60歳以上の虚血性の収縮不全患者で,左室駆出率(EF)がニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能分類 III /IV度では40%以下,同 II 度では35%以下,心不全に対する至適治療を受けており,スタチン未使用または使用の必要がないなどの条件を満たす5,011例。
2週間以上のプラセボrun-in期間の後,
(1)プラセボ
(2)ロスバスタチン(10mg/日)
―の 2 群にランダムに割り付け,中央値で2.7年追跡した。患者背景は,平均年齢73歳,女性が24%を占め,NYHA II 度37%,III 度62%,IV度1.5%で,60%に心筋梗塞,12%に脳卒中の既往が認められた。
LDLコレステロール(LDL-C)は137mg/dLであった。
 
追跡の結果, 36か月後にはLDL-C,高感度C反応性蛋白はプラセボ群に比べて,ロスバスタチン群(スタチン群)でそれぞれ絶対値で34%(P<0.0001),37%(P<0.0001)有意に低値だった。
1 次評価項目の心血管死,非致死性心筋梗塞・脳卒中は,プラセボ群29.3%に対し,スタチン群では27.5%と 8 %のリスク減少を示したものの有意差には至らなかった(図,P=0.12)。
2 次評価項目については,入院数を除き,総死亡,総冠動脈イベント,心血管死のいずれも,両群に有意差は認められなかった。
入院数はスタチン群で有意(P=0.007)に減少したが,これは心血管疾患,心不全に基づく入院の有意な減少を反映していた。
安全性については,筋症状(プラセボ群207例,スタチン群225例),血清クレアチンの 2 倍化(順に32例, 23例)を含めて,スタチンにより有意な増加を示した有害事象は認められなかった。
 
以上を踏まえ,Hjalmarson氏は「今回の対象における心血管死の病因は,アテローム血栓性のイベントによるものではなく,主として心室拡張や瘢痕化に関連した電気的なイベントの可能性がある」との解釈を示した。
一方,プレスカンファレンスの司会を務めたAHA学術集会プログラム委員会のGordon F. Tomaselli委員長は「今回の結果からは,スタチンを投与中の患者の左室機能が低下したからといって投与を中止する必要はないが,スタチンの適応なしに,脂質低下を超えた効果のために同薬を虚血性の左室不全患者に投与することもない」とコメントした。

※ Controlled Rosuvastatin Multinational Trial in Heart Failure

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M4050281&year=2007

出典 Medical Tribune 2007.12.13
版権 メディカル・トリビューン社

 <コメント>
何だか哲学的なコメントです。
要は「慢性心不全患者へのスタチンの追加投与は,心血管イベントの有意な減少には至らない」というネガティブデータということです。
枯れた田畑(傷害心筋をもつ慢性心不全)に用水の水をやっても(スタチンによるアテローム血栓の除去)「時既に遅し」ということなんでしょう。

<参考サイト> ORONA試験
至適治療を受けている慢性心不全患者に対するスタチン追加療法の新たな知見
-米国心臓協会学術集会にて発表、CORONA試験-
http://www.astrazeneca.co.jp/activity/press/2007/07_11_06.html
 

塩野義製薬など、慢性心不全患者に対するスタチン追加療法の新たな知見を発表
http://health.nikkei.co.jp/release/drug/index.cfm?i=2007110604676j5
塩野義製薬など、慢性心不全患者に対するスタチン追加療法の新たな知見を発表
 

試験責任医師であるノルウェー、オスロのRikshospitalet 大学病院心臓病学 John Kjekshus教授は「CORONA試験の結果によって、慢性心不全患者の医学研究/知見に大きな進歩が見られました。
慢性心不全患者のスタチン治療への反応は心不全でない人と比べて明らかに異なるのです。
我々は心不全に対する至適治療が施されている患者群に対し、きわめて効果の強いスタチンを追加しました。
試験結果から、患者の主な死因はアテローム性動脈硬化性イベントではなく、むしろすでに回復不能の損傷を受けていた心臓の状態が悪化したことに起因していたことが示唆されました。
従って、CORONA試験の結果から、アテローム性動脈硬化症の終末像である心不全に至る前に、スタチン投与により早期に介入することの重要性が強調されました」と話しています。

<コメント>
莫大な資金をかけた大規模臨床試験では、結果がネガティブで転んでもただでは起きません。
試験責任者の文章力が問われます。

 

医療ニュース【提供:毎日新聞社】 2008/06/17

<IGFBP―4>

心筋細胞の分化促す、たんぱく質発見 千葉大院教授ら、マウスで実験

心臓の形成に重要な働きをするたんぱく質を、小室一成・千葉大大学院教授らが発見した。
幹細胞の培養に使うと、10~20%の高い割合で心筋細胞が発生するという。
人にも存在し、重篤な心臓病の新たな治療法につながるか注目される。
心筋細胞の再生には、人工多能性幹細胞(iPS細胞)や胚(はい)性幹細胞(ES細胞)が注目されている。
だが、心筋細胞に分化する割合は1%程度だった。
研究チームは、心筋細胞への分化を促すたんぱく質が存在すると考えた。
マウスで実験した結果、「IGFBP―4」というたんぱく質を幹細胞の培養に使うと、10~20%の割合で心筋細胞が発生することを突き止めた。
また、孵化(ふか)直後のオタマジャクシで、このたんぱく質の働きを止めると、心臓が小さくなったり消滅することも分かった。
現在の重症心不全の治療は薬物治療が主流だが、生存率は5年で平均約50%。
心臓移植も国内で年間10例前後にとどまる。
小室教授は「このたんぱく質を使い、心筋細胞内の幹細胞を刺激し、心筋の再生を可能にしたい」と話す。
5日付の英科学誌ネイチャー電子版に発表した。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/news/20080617ddm016040104/

 

読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。

他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
「井蛙内科/開業医診療録(2)」
http://wellfrog2.exblog.jp/
2008.5.21~ 「井蛙内科/開業医診療録」 
http://wellfrog.exblog.jp/ 
~2008.5.21
があります。

 

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今春の日循総会の会長講演で勉強しました。 

第72回日本循環器学会

会長講演
心不全の新しい治療標的分子を発見
松崎 益徳 氏

松崎会長は,会長講演で「心不全の病態生理とその分子機序―病態理解の変遷と新しい治療概念」と題して講演。
循環生理学から開始し,新しい治療標的分子の発見に至るまでの約30年間の研究を振り返った。

臨床応用を視野に入れた研究も
心不全を理解するには,まず心臓の生理を知る必要がある。研究前半の約15年間は,心電図,心エコー,心臓カテーテルなどを用いて循環生理学の研究に取り組んだ。
そのなかで,心臓の機能的・構造的異常が心不全に関係することもわかってきた。
 
後半の15年間では,心不全の病態生理を解明するため分子生物学的研究に取り組んだ。
心臓の収縮時には,心筋細胞の外から膜電位依存性にL型カルシウム(Ca)チャンネルを介して少量のCaが流入するのをきっかけに,筋小胞体から大量のCaイオン(Ca2+)がリアナジン受容体(RyR)を介して放出され,細胞質内のCa2+濃度が急激に上昇する。
また拡張時には,細胞質内のCa2+が筋小胞体にCa2+ATPaseを介して速やかに取り込まれる。
こうした心筋細胞のCa2+動態が心不全でいかに制御されているのか研究した。
 
一連の研究の結果,不全心では,RyRの機能不全のため筋小胞体からCa2+がリークしており,これが細胞質内のCa2+過負荷,さらには心臓の収縮・拡張障害に関係していることや,RyRの機能不全に酸化ストレスや過リン酸化が関係していることが明らかになった。
また,不全心では,筋小胞体へのCa2+取り込み障害があることも確認された。
一方,既に心不全治療に用いられているβ遮断薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)が,こうしたCa2+動態の異常を改善することもわかった。
 
このように新しい治療標的分子が明らかになってきたことから,松崎会長の教室では,臨床応用を視野に入れた研究も進めている。
RyRの機能不全を薬物で制御することは可能か,筋小胞体へのCa2+取り込み障害をいかに改善するかなどについて検討しているという。

出典 Medical Tribune 2008.5.8
版権 メディカル・トリビューン社

<参考サイト>

心不全治療
http://www.gik.gr.jp/~skj/lecture/okamoto03.php3
慢性心不全の病態と新しい治療戦略 
http://www.m-junkanki.com/lectures/0407chf/Ex-chf1.htm

 

リアナジン受容体(RyR)

【日本心不全学会速報】2005. 10. 21
日本発の新しい心不全治療薬、リアナジン受容体安定化作用薬の開発に意欲
山口大学医学部循環病態内科学教授のは10月20日、会長講演「慢性心不全の病態と新しい治療戦略-Ca2+ホメオスターシスを中心に」の中で、新しい心不全治療薬の開発に対する強い意欲を示した。

同氏は講演で、不全心筋でのCa2+過負荷について解説。自らの研究グループが、Ca2+過負荷の原因が心筋細胞内節小胞体のリアナジン受容体(RyR)からのCa2+リークにあることを証明した経緯を説明した。
また、このリークを阻止する物質についても積極的に研究を進めており、その中でもリアナジン受容体を安定化させる作用のある物質が新薬として期待できるとした。

講演の最後に同氏は、慢性心不全の治療戦略の変遷についてまとめ、1995年以降は、不全心の保護、突然死の予防に力点があると強調。
その上で、今後は循環不全の改善と神経内分泌因子の是正、さらには不全心保護と心筋構造タンパク障害の修復と予防が治療戦略の柱になるとの展望を語った。

その中で、循環不全の改善と神経内分泌因子の是正では、「リアナジン受容体安定化作用薬の登場が決め手となってくれれば」と期待をこめ、また、不全心保護と心筋構造タンパク障害の修復と予防では、再生療法が解決策となっていくとの見解を示した。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/200510/404778.html
出典 日経メディカル  2005.10
版権 日経BP社

田崎広助『朱富士(A)』 リトグラフ【額付】
http://page11.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/n64318232

<番外編>
昨年の夏からこのブログを続けています。
何だかんだで9か月になりました。
ブログを始める前は、出不精でMRさんの講演会の招待はことごとく断っていました。
しかし、始めてからは「取材」で出来るだけ参加するようになりました。
どうしても循環器領域の講演会への出席が多いのですが、各専門分野のホットな話が聴けます。
必ず「目からウロコ」の話があるので楽しみです。
最近では質問をしたりすることもあります。
随分な変わりようです。

ごく最近では、m3のブログでお馴染みの森下竜一先生の講演「ARBと糖尿病」を聴きました。まさに立て板に水。
随分勉強になりました。

森下先生。当日質問したのは実は私です。

他に
「井蛙内科/開業医診療録」 
http://wellfrog.exblog.jp/ 
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 

があります。

 

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ENHANCE 試験の発表以来何かと話題のエゼチミブ(商品名:ゼチーア)で勉強しました。


エゼチミブ(商品名:ゼチーア)
http://blog.m3.com/reed/20070927/1
 

エゼチミブの臨床的有用性を考える
http://blog.m3.com/reed/20080116/1
 

ENHANCE試験