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きょうのタイトルの内容は、2011.8.7の当ブログで勉強した論文と同じソースです。
たこつぼ心筋症の症状は多様
http://blog.m3.com/reed/20110807/1
医学雑誌により同じ論文でもフォーカスの当て方が違うのは新聞記事と同様です。
読み比べてみるのも一興と思って勉強し直してみました。
 
たこつぼ型心筋症に多様な臨床的特徴
初の大規模臨床研究で明らかに
ライプチヒ大学(独ライプチヒ)内科学のIngo Eitel博士らは,ストレスが引き金となって発症する一過性の急性心不全であるたこつぼ型心筋症(stress cardiomyopathy;SC)の臨床的特徴を大規模集団で初めて調査した。
その結果,若年患者や男性患者,引き金となるストレス事象のない患者など,臨床的特徴はこれまで知られていたものより幅広いことが分かった。
詳細はJAMA(2011; 306: 277-286)に発表された。
<私的コメント>
たこつぼ型心筋症が「ストレスが引き金となって発症する」という定義でありながら、ストレス事象のない患者がいる、というのは何だか禅問答のようです。
ストレス(心理的、身体的)の定義自体もはっきりしません。
この論文に意義を見出すとすれば、 「stress cardiomyopathy(SC)という呼称は引き下げるべき」という結論にすることではないでしょうか。
 
71%でストレス事象を同定
SCは著明な冠動脈疾患が認められない急性で重度ではあるが,可逆性の左室機能不全で,閉経後女性に多く発症する。
この疾患の臨床的特徴は単一施設の小規模集団では検討されているが,多施設の大規模集団のデータはこれまで報告されていない。
また,入院時に速やかに診断を確定することも依然として難 しい。
 
そこでEitel博士らは今回,SCの臨床スペクトルを包括的に定義し,SCが疑われる患者の診断における心血管核磁気共鳴法(CMR)による検査に基づく指標の有効性を検討するため,2005年1月~10年10月に欧州と北米の三次医療センター7施設で前向き試験を実施。
連続するSC患者256例を対象に,急性症状を呈して最初に来院した時点と,その1~6カ月後の2回評価を行った。
 
対象となったSC患者の平均年齢は69歳で,女性が89%(227例),閉経後女性が81%(207例)であった。
50歳以下の女性は20例(8%)で,男性も11%存在した来院前の48時間以内に重大なストレス事象が同定できた患者は71%(182例)で,内訳は心理的ストレスが30%, 身体的ストレスが41%であった。
また,最初の来院時に心電図異常が87%に認められた。冠動脈造影では,193例(75%)の冠動脈が健康と判定され た。
CMR画像では全例に左室心尖部のバルーン状拡張と中等度~重度の左室機能低下が認められ,バルーン状拡張では4つの異なるパターンが同定された。
 
画像に基づく4基準で診断可能
また,SCはCMR画像に
(1)典型的パターンの左室機能不全
(2)心筋浮腫
(3)著明な壊死あるいは線維形成がない
(4)心筋炎症のマーカーが 見られる
-という基準を適用することで正確に同定できることが分かった。
追跡評価時のCMR画像では,全例で左室駆出率の完全な正常化と著明な線維形成を伴わず,炎症マーカーが認められた。
 
今回,発症前のストレス事象が明確に同定できたのは全体の3分の2のみであったが,以前の報告では89%とこれより高率であった。
このことから,Eitel博士らは「ストレス事象が同定できなくてもSCの可能性は排除されないため,SCの誘発機序は血管系や内分泌系,中枢神経系の関与など,これまで報告されていたよりも複雑と考えられる。
こうした臨床面での多様性がSCの認識をあいまいにし,治療方針に影響を与える可能性がある。
そのため,今回明らかになったSCが広い臨床スペクトルを持つという結果について十分認識することは,SCが疑われる患者を正しく診断,治療する上で不可欠である」と指摘。
さらに「CMR画像はSCの診断に有益で,SCに関連する機能と組織のすべての変化を検証できる可能性がある。したがって,急性症状が現れた時点で直ちにこの検査によりSCを診断することや,SCの可能性を排除することが可能かもしれない」と述べている。
 
出典 Medical Tribune 2011.9.1
版権 メディカル・トリビューン社
 
 
<私的コメント>
諸外国では
stress induced cardiomyopathy
broken heart syndrome
neurocardiogenic stunning
neurogenic stress cardiomyopathy
neurogenic stunned myocardium
apical balooning

などと呼ばれているようです。
このように、統一的呼称呼称がないので何となくすっきりしません。
AHAではどのような病名になっているのでしょうか。
 
「外因性のカテコラミン過剰投与による心筋障害はたこつぼ心筋症の病態モデルの一つ」ということになっているようです。
個人的な話になって恐縮ですが、在局中に心筋肥大を起こす目的でイソプロテレノールをラットに注射して、サクリファイス後に心筋重量/体重をコントロールのラットと比較したことがありました。
心筋をホモジネートしてNEやcyclic AMP などを測定したのですが研究目的も曖昧なままの実験だったので地方会で1回発表しただけになってしまいました。
ラットには申し訳ないことをしたと思っていますが、今にして思えば「たこつぼ心筋症」の実験をしていたことになります。
心筋を部位別に検討すれば少しはまともな研究になっていたかも知れません。
もちろん、当時には「たこつぼ心筋症」の概念はありませんでした。
要するに 、私のような凡人にはセレンディピティがなかっただけの話なんです。

<心臓MRI検査 関連サイト>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A0%B8%E7%A3%81%E6%B0%97%E5%85%B1%E9%B3%B4%E7%94%BB%E5%83%8F%E6%B3%95
■心臓MRI検査ではシネMRI(cine MRI)による左室収縮能の評価、遅延造影MRIによる心筋梗塞や心筋線維化の評価、冠動脈MRAなどが知られている。
■cine MRI
心電図同期を利用して心臓の動きを1心拍16~40コマの動画として撮影する方法である。
SSFP法(ステディー・ステート・フリープリセッション法)では造影剤を用いないでも高い血液信号が得られる。2010年現在、最も正確な心機能測定法とされている。
心基部から心尖部まで連続した短軸シネ MRIを撮影しシンプソン法を用いて左室容積、左室駆出率や左室重量を計測する。
■遅延増強効果
Gd造影剤を静注して約10分後撮影する方法を遅延造影MRIという。
正常心筋が低信号を示すが梗塞心筋や線維化が認められた場合は高信号を示す。糖尿病患者の無症候性心筋梗塞など心臓超音波検査でも検出ができない病変の検出も可能である。
冠動脈MRA(whole heart coronary MRA)
■16列マルチスライスCTとほぼ同等の検出率を示すが撮影時間が10分以上と長い。
64列マルチスライスCTと比較すると診断感度がやや劣るとされている。
3TのMRIでは64列マルチスライスCTに匹敵すると考えられている。

<私的コメント>
最近、循環器関連の講演会に出席すると、動画で説得力のある
シネMRIのプレゼンテーションがしばしばあります。
とてもimpressiveです。
開業医にわからないことは、この検査方法がどのくらい普及しているのか(臨床現場で普通に使用されているのか)、どこの医療機関でやってもらえるのか、適応はどのあたりまで認められるのか、保険適応があるのか、自己負担はいくらぐらいなのか、といったことです。

 
 
たこつぼ心筋症 関連サイト
たこつぼ心筋症の成因
http://blog.m3.com/reed/20100701/1

たこつぼ心筋症
http://blog.m3.com/reed/20070831/1

たこつぼ心筋症 その2
http://blog.m3.com/reed/20070929/1


たこつぼ心筋障害
http://blog.m3.com/reed/20100817/1


たこつぼ心筋症の症状は多様
http://blog.m3.com/reed/20110807/1
 
<自遊時間 その1>
本日のgoogleホリデーロゴはフレディマーキュリーでした。
http://www.youtube.com/watch?v=VfVAcw0ZJW4

http://www.youtube.com/watch?v=a-AvdINht5U
 

<自遊時間 その2>  
ちょっと前の新聞に、天野祐吉氏のエッセイが出ていました。
東日本大震災の被災地の人達へのお見舞いのメッセージを込めたサントリーのCMについてです。
「上を向いて歩こう」と「見上げてごらん夜の星を」を、サントリー一座(伊右衛門など、サントリーのCMに所縁のある人達)のすごい顔ぶれでやっていること、そしてこの顔ぶれに一貫した好みがあって、”サントリー調”というトーンを作り出している、という内容でした。
世の中にはイメージ作りに成功した商品が数多くあります。
昔のメルセデス、現代ではアップル社の製品。
飲み物ではやはりサントリーがトップでしょうか。
オーディオ製品もアイデンティティーのある製品も数多くあります。
音の善し悪しは別として、CMはあまり見かけませんが、YAMAHAなんかもデザイン的に一貫性を持っていて感心します。

 

 
トレンツ・リャド ライの薔薇
http://blog.livedoor.jp/miles1950/archives/1093168.html


(当院ではリャドのリトグラフが3作あって待合室に時々飾っています。)
 

 
 
読んでいただいて有り難うございます。
コメントをお待ちしています。

その他に
「葦の髄」循環器メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/
(循環器専門医向き)
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21 http://wellfrog.exblog.jp/ 
(内科医向き)
「井蛙」内科メモ帖 
があります。 
 
 
 
 
 

 
   

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たこつぼ心筋症の症状は多様、診断には心血管MRIが有用
強いストレスがきっかけで生じるストレス心筋症(たこつぼ心筋症)の臨床的な特徴はこれまで考えられていたより多様であること、また、その診断において、心血管MRI(CMRI)における特徴的な収縮パターンや可逆的組織変化の存在が有用な情報であることが、前向き研究で明らかになった。独Leipzig大学のIngo Eitel氏らが、JAMA誌2011年7月20日号に報告した。

ストレス心筋症は、強いストレスがきっかけで生じる一過性の急性心不全で、世界に先駆けて日本で報告された。

閉経女性に多く、左室機能不全を特徴とし、発症時は重症でも転帰は一般に良好で、合併症はまれといわれている。
この病気の患者には、左室心尖部の無収縮という特異的な左室収縮パターンが報告されてい る。

ストレス心筋症の患者は、受診時には急性冠症候群と同様の臨床徴候を示す患者が多く、欧米では急性冠症候群が疑われる患者の約2%がストレス心筋症という報告がある。

だが、発症早期にそれらを区別する診断法は明らかではなかった。

そこで著者らは、欧州と北米の多くの患者を対象として、ストレス心筋症の幅広い臨床症状を包括的に定義し、ストレス心筋症疑い患者の鑑別に役立つCMRIマーカーを同定しようと考えた。

05年1月から10年10月まで、欧州と北米の7カ所の3次医療センターで前向き研究を実施した。

連続する256人(平均年齢69歳)のストレス心筋症患者を、受診時および症状発現から1〜6カ月後に評価した。

受診時には、心電図、経胸壁心エコー、冠動脈造影、心室造影、血液検査、心臓血管MRイメージング(CMRI)などを実施した。

ストレス心筋症の診断は、下記の条件を満たした場合とした。
(1)急性の心イベントで、胸痛と呼吸困難のいずれかまたは両方を主症状とする
(2)冠動脈1枝の灌流部分を超える領域の左室収縮異常(左室心尖部と左室中央部のいずれかまたは両方、もしくは左室基部の無収縮または収縮障害)を伴う一過性の収縮期機能不全
(3)50%を超える冠動脈の閉塞または血管造影で示される急性のプラーク破綻なし
(4)心電図に現れた新たな異常(ST上昇またはT波逆転波形)または中等度の心トロポニン値の上昇
(5)褐色細胞腫なし
(6)心筋炎または貫壁性梗塞を示すCMRIでの後期ガドリニウム増強なし

1〜6カ月後に、心電図とCMRIや心エコー、血液検査を行って診断を確認した。

患者の89%(227人)が女性だった。全体の81%(207人)が閉経女性、8%(20人)は50歳以下の女性で、男性は11%(29人)だった。男女間の年齢には差はなかった(P=0.64)。

88%(225人)は受診時に急性冠症候群と同様の症状を示した。

発症のきっかけとなる強いストレスを発症前48時間以内に経験していた患者は182人(71%)で、感情的なストレス(身内や友人あるいはペットの死亡、 人間関係での衝突など)は77人(30%)、肉体的ストレス(周術期または術後、急性呼吸不全など)は105人(41%)だった。

心電図の異常は222人(87%)に認められた。

トロポニンTの上昇は231人(90%)に見られた。
 
冠動脈血管造影は256人全員に行われ、82%(210人)が典型的な左室心尖部無収縮、17%(44人)が左室中央部無収縮、1%(2人)が左室基部無 収縮を呈した。193人(75%)の冠動脈は健康な状態で、6%(16人)には心外膜冠動脈に75%を超える狭窄が見られたが、壁運動の異常とは関係のな い領域だった。
残る18%(47人)の患者には軽症(狭窄が50%未満)のアテローム動脈硬化のみが見られた。
急性のプラーク破綻は1件もなかった。
1% (2人)が冠動脈攣縮を示した。

CMRIのデータは239人(93%)について得られた。

検査は入院から3日(中央値)の時点で行われていた。

全員が左室駆出分画の低下(47.7%、94%信頼区間47.1-50.3%)を示し、中等症から重症の左室機能不全が検出された。

それらは以下のような 4通りの局所的な無収縮のパターンを示した。
左室心尖部無収縮(197人、82%)、両心室の無収縮(81人、34%)、左室中央部無収縮(40人、 17%)、左室基部無収縮(2人、1%)。

81%に心筋浮腫がみられ、67%に心筋炎症の存在が示された。

胸水は33%に見られたが、両室無収縮を示す患者群に有意に多かった。
心内膜浸出液は43%に認められ、心筋炎症を有する患者に多かった。

後期ガドリニウム増強(LGE)を指標とする心筋の線維化が見られたのは9%で、5SDを超えるLGEは認められなかった。

患者には当初、急性冠疾患の標準治療が行われていたが、冠動脈狭窄がないことが確認された後には、主にうっ血性心不全に対する支持療法に変更されていた。

院内死亡は4人で、死因は心室細動(2人)、心原性ショック(1人)、低酸素性脳損傷(1人)だった。

それら4人と退院後に死亡した4人を除く248人について追跡が可能だった。
158人(62%)が中央値97日の時点で再びCMRI検査を受けていた。全員の左室駆出分画が正常(66.3%、 64.1-68.2%)になっており、拡張末期と収縮末期の容積も正常化、心筋の炎症マーカーも有意に低下していた。
臨床的に意義のある線維化は見られなかった。

得られた結果は、ストレス心筋症の臨床的な特徴は、これまでに報告されていたより多様であること、また、初診時にCMRIによって得られる、典型的なパターンの左室機能不全、心筋浮腫や心筋の炎症などの可逆的組織変化、非可逆的な組織変化である線維化の不在、といった情報がストレス心筋症診断において重要なマーカーであることを示唆した。

原文

Clinical Characteristics and Cardiovascular Magnetic Resonance Findings in Stress (Takotsubo) Cardiomyopathy
http://jama.ama-assn.org/content/306/3/277.short
 

出典 NM online 2011.8.5
版権 日経BP社

 
 

J Cardiol Jpn Ed Vol.5 No.1
「たこつぼ型心筋症の成因に症例から迫る」
■1991年日本で最初に報告。
Takotsubo Cardiomyopathy
<私的コメント>英語ではampulla(octopus) pot 。どうしてこちらにしなかったんでしょうか。
■いまだに成因が明らかではない。
■脳・心臓連関という新たな成因追求への取り組みも提唱されている。

■定義
急性心筋梗塞に類似した胸痛と心電図変化を有しながら、おsれに伴う左心室心尖部を中心とした壁運動異常が一つの冠動脈の支配領域を超えて、典型例では特異な 「ツボ型 」を呈する。壁運動異常は短期間でほぼ正常化し冠動脈造影には有意の狭窄を認めない。
■心筋症分類(AHA-ACC2006年)では後天性一次性心筋症に区分される。
■いまだに成因が明らかではない。
■脳・心臓連関という新たな成因追求への取り組みも提唱されている。
■”逆たこつぼ”などの亜型の報告や、
stress induced cardiomyopathy
broken heart syndrome
neurocardiogenic stunning
neurogenic stress cardiomyopathy
neurogenic stunned myocardium
apical balooning
など疾患名の変更提唱も海外からなされていることから、我が国からの名称の統一化が期待される。
■類似病態はくも膜下出血・脳出血(neurogenic stunning)、心筋炎、褐色細胞腫で惹起され臨床的には判別が重要となる。
■ことに、発作型の褐色細胞腫および外因性のカテコラミン過剰投与による心筋障害は「たこつぼ」心筋症の病態モデルの一つである。
■カテコラミン心筋障害の心電図異常および壁運動異常はたこつぼ型心筋症に比して多彩かつ短時間で変化する。
■高齢女性に好発(女性で6-8倍)するがその成因は不明である。
■心尖部壁運動異常が高頻度である理由は不明であるが、病理学的には程度の差異はあるが全心筋に心筋障害が観察される。

 

読んでいただいて有り難うございます。コメントをお待ちしています。
その他
「葦の髄」循環器メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/
(循環器専門医向き)
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21 http://wellfrog.exblog.jp/ 
(内科医向き)
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この度の東北地方太平洋沖地震により被災されました方々に、心よりお見舞い申し上げます。
犠牲になられた方、そしてご遺族の皆様に対し、深くお悔やみを申し上げます。
また、福島第一原発事案(事故)で避難中の方、そして計画停電中の首都圏の方にお見舞い申し上げます。
また、被災者支援や原発復旧作業などの災害対策に全力を尽くされている作業員の皆様に敬意を表します。
 
 
2009年7月の第39回先進医療専門家会議で、拡張型心筋症に対する「免疫吸着療法」は「不適」と評価されました。
第39回先進医療専門家会議議事録 - 厚生労働省
しかし、その後も慶大や北里研究所病院を中心として研究が進められています。日本医事新報の「週一話」のコーナーに、北里大学北里研究所病院循環器内科の馬場彰泰副部長が「拡張型心筋症の免疫吸着療法」というタイトルで寄稿されています。

 

 

日本医事新報 No.4500 2010.7.24 P86-87
■拡張型心筋症は、遺伝因子を背景として、ウイルス性心筋炎等が契機となり、遷延する自己免疫異常によって生じると想定されている。
抗心筋自己抗体の抗原としては、ミオシン、β1アドレナリン受容体、M2ムスカリン受容体などの報告がある。
従来より抗ミオシン抗体は単独では心筋炎は生じないとされていたが、いくつかの心筋抗体(抗トロポニンⅠ抗体、抗β1アドレナリン受容体抗体)は健常マウスもしくはラットに持続投与することで、拡張型心筋症類似の心病変を誘発することが最近になって明らかとなった。
■これらの心筋抗体を除去する試みは、約10年以上前から主にドイツで行われており、少なくとも現在までに200例以上の実施例が報告されている。
■初期の検討では重症心不全例(NYHA 3度以上)に行われたが、治療例の2年生存率は約8割と、それ以外の標準的心不全治療による約6割を上回る予後改善効果も期待されている。
■このアフェレシス治療には、血漿交換療法、二重濾過血漿交換療法、免疫吸着療法などがある。
現在ドイツや本邦で臨床試験が実施されているのは、このうち免疫吸着療法である。
■初期の検討では重症心不全例(NYHA 3度以上)に行われたが、治療例の2年生存率は約8割と、それ以外の標準的心不全治療による約6割を上回る予後改善効果も期待されている。
■このアフェレシス治療には、血漿交換療法、二重濾過血漿交換療法、免疫吸着療法などがある。
現在ドイツや本邦で臨床試験が実施されているのは、このうち免疫吸着療法である。

 

 

 

以下は新聞記事からです。

血中の原因物質除去
心臓移植でしか助からない重い心臓病患者の症状を、病気の原因物質を除去する治療法で改善させることに、北里研究所病院と慶応義塾大学のチームが成功した。

患者によっては移植を待つ間に人工心臓を装着しなくて済むようになるほか、移植を前提にしない長期温存療法の実現につながる可能性があるという。
鹿児島市で開催する日本心臓病学会で二十七日発表する。

人工透析のように治療治療法を実施したのは北里研病院の馬場彰泰副部長と慶大の吉川勉・助 教授ら。

対象は心臓の筋肉が伸びきって機能不全を起こす「拡張型心筋症」の患者。
同症は病状が進行すると心臓移植が必要になる重い病気で、国内の患者数は約一万七干人。
年間約二干人が死亡している。
心臓移植を必要とする患者の九割がこの病気だ。
同症を巡っては、京都大学の本庶佑特任教授らが2003年、心臓の細胞(心筋細胞)の中にあるたんぱく質を異物として認識してできる抗体によって発症することをマウスで突き止めた。

馬揚副部長らぼヒトでもこうした抗体があり、同症を引き起こしていることを確認。同症患者の六割が該当した。
治療法はまず、腐気の原因となる抗体が血中に含まれている患者を選別。

関節リウマチなどの治療に使う「自已抗体除去法」と呼ぶ方法で、人工透析のように血液から原因抗体を取り除く。
研究チームは心臓移植が必要 な同症患者のうち原因抗体が見つかった三人(女性二人、男性一人でいずれも五十歳代)に治療法を実施。
治療前は心臓から血液を送り出す能力が健康な人の半分以下だったのが、治療後は八割程度と日常生活に支障のないレベルまで回復した。
三カ月程度で原因物質は増えてくるが、再治療で除去できる。
ドイツでも同 様の抗体除去法を約百人の患者に実施。七割の患者で治療効果が認められ、二年以上移植せずに生存している患者がいるという。

画期的な成果
大阪夫学の澤芳樹教授(心臓血管外科)の話(抗体ができている患者だけという)条件が限られるとはいえ、画期的な成果だと言える。

心臓の血液を送り出す能力 が人工心臓を付ける一歩手前の状態から、正常の一歩手前まで回復した効果は大きい。
特に症状が悪化している場合では有効だろう。
心不全を起こしているような重い患者にとって、移植や人工心臓装着の代替治療になるかどうかは現時点では判断できない。
症例数を増やし様々な角度から評価していく必要がある

出典 日経新聞・朝刊  2006.9.25
版権 日経新聞社

 

【拡張型心筋症—心移植せず治療。臨床研究に注目。抗体取り除く「免疫吸着療法」。効果に慎重意見も】
臓器移植でしか助からないとされる心臓の病気、拡張型心筋症の新しい治療法として「免疫吸着療法」が注目されている。
特殊な装置で体内の血液をろ過し、病気の原因を除去する手法だ。
まだ、いくつかの医療機関で有効性を確認する臨床研究が始まった段階だが、脳死移植医療が進展しないなか、期待は大きい。

「臓器移植が進まない現実では、何らかの救済策が求められる」。慶応義塾大学の吉川勉・准教授が新たに免疫吸着療法の臨床研究をスタートさせた背景をこう語る。


1997年に施行された臓器移植法のもと国内での心臓移植はこれまで69症例が実施された。

だが、430人が移植の希望を申請しており、実施まで2年は 待つというのが現実。
7月には改正臓器移植法が本格的に施行され、本人の意思が不明な場合でも家族が承諾すれば脳死での移植が可能になったが、今後、急速 に心臓移植が増えるとみる専門家は少ない。

◇「移植待ち」の大半

心臓移植が必要になる病気にはいくつかあるが、移植を待つ患者の8〜9割が拡張型心筋症とされる。

国内の患者数は約2万人で年間2000人が亡くなる。
心臓の筋肉(心筋)に何らかの異常が発生し、血液を全身に送り出す力が弱まってしまう病気だ。

原因が分からず、少しずつ弱まっていく心臓を見守りながら心臓移植を待つケースが多かった。

「ただ、必ずしも原因不明ではなくなってきた」と吉川准教授 は言う。
今では遺伝的な要因とウイルス感染や免疫系の異常などが複雑に絡み合っているとみられている。
リウマチやアレルギーなどの自己免疫疾患と同じよう に、体を守るはずの免疫系が間違って自分自身を、拡張型心筋症だと心筋を攻撃している可能性がある。

心筋を攻撃する抗体は血液中にある。

血液をろ過して抗体を取り除き、攻撃をなくそうと狙うのが免疫吸着療法だ。
ドイツでは90年代から臨床試験が進められ、200例以上実施された。
今回国内での臨床研究には慶大病院のほか、国立循環器病研究センターや北里研究所病院など全国8施設が参加し、症状の重い40人の患者を対象に効果を確認する計画だ。

治療は1回あたり血液の液体成分1.5リットルを特殊なろ過装置に通す。1日おきに5回実施する。その後、3ヵ月後にもう一度同じ処置を繰り返す。腎臓病患者の人工透析に近いイメージだ。


2006年に17人を対象に実施された小規模臨床研究では、ある程度の効果があった。

心臓移植を考えていたある男性患者の場合、治療を受けた後は自分の足で歩いて退院でき、その後も日常生活を送れるようになったという。

◇未解明の部分多く

ただ、拡張型心筋症に対する免疫吸着療法には慎重な意見もある。

信州大学の池田宇一教授は「まだ本当に何が効いているのかが分からない。“ブラックボックス”が多い」と話す。

血液をろ過すると、抗体以外にも様々な物質が取り除かれる。

もともと抗体が増えていない人でも効果があったという報告もあり、狙った抗体ではなく別の物質がなくなった結果、症状が緩和された可能性もある。

ほかの自己免疫疾患でも抗体を取り除く治療法はあるが、抗体は一度取り除いてもしばらくすると増えるケースが多い。

拡張型心筋症の場合、一度減少した抗体は1年たっても増えないという報告もある一方、処置前の状態に戻ってしまったという報告もある。

信州大学が独自に進めている臨床研究でも8人の患者に試みたところ、「処置後すぐは症状の改善がある程度みられたが、1年以上たった効果については疑問 も残る」(笠井宏樹・信大助教)。

ドイツ以外の欧州各国でも免疫吸着療法が広まらない現状も、何が効いているのか、どんな患者であれば特に効果が期待でき るのか絞り込めない点にあるとみている。

こうした課題を踏まえつつ、池田教授は「多くの症例を比較してどんなタイプの症例に特に有効か手掛かりが見つかればいいだろう」と臨床研究に期待も込める。

免疫系の働きを抑える薬との併用が効果的かもしれないとみる。
 
出典 日経新聞・夕刊  2010.8.6
版権 日経新聞社

 

<関連サイト>
拡張型心筋症|慶應義塾大学病院 KOMPAS
人工透析のようなカラムを用いて、拡張型心筋症の患者さんの血清に存在する抗心筋自己抗体の除去を行うことで心機能の改善を認めることが報告されています。
日本では当院においてはじめて臨床応用を行い、現在までに17例(共同研究施設を含む)に治療を行っています。
まだ確立された治療ではありませんが、 拡張型心筋症による治療抵抗性心不全の場合に考慮すべき治療と思われます。
当院が全国の中核施設となって、現在臨床試験を推進中です。

 
[PDF] 拡張型心筋症による重症心不全に対する免疫吸着療法重症心不全の「免疫吸着療法」を発表:信州大学医学部

 


拡張型心筋症に対する免疫吸着療法の治験について
http://www.kitasato-u.ac.jp/hokken-hp/consultation/guide/diagnosis/circulation/immunoadsorption.html
 
[PDF] PowerPoint プレゼンテーション
 
拡張型心筋症に対する「免疫吸着療法」 
http://yaplog.jp/hurst/archive/150

 

拡張型心筋症に新治療
http://blog.m3.com/reed/20101224/1

~心筋症~  病因解明・治療に新展開
http://blog.m3.com/reed/20100627/2
 
 
 
その他
「葦の髄」循環器メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/
(循環器専門医向き)
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
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 井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
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井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
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井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
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(内科医向き)
「井蛙」内科メモ帖 
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/  
があります
 

 

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兵庫県立尼崎病院循環器内科の佐藤幸人先生の書かれた経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA)に関する記事で勉強しました。
このPTSMAは2004年の保険適応となっています。
この手技は、外科手術に比較して低侵襲性であるものの、人為的に心筋壊死を作成する手技のために合併症として完全房室ブロック(CAVB),心室中隔穿孔、左前下行枝へのエタノール注入による広範囲心筋梗塞、死亡例も報告されています。
このPTSMAは「心筋焼灼」という言葉から「電気的」焼灼がイメージされますが中隔心筋へ高濃度エタノールを注入するalcohl ablationです。

 

経皮的中隔心筋焼灼術は遠隔期に突然死の危険性高い
オランダからの注意喚起報告
研究の背景:症状の改善は得られるが長期成績は不明
閉塞性肥大型心筋症(HOCM)は労作時の胸痛や呼吸困難,時として失神を生じる。
薬物治療としてはβ遮断薬やCa拮抗薬が用いられる。薬剤抵抗性のHOCMでは,心筋中隔切除術やDDDペーシングとともに,冠動脈に高濃度エタノールを注入して左室流出路狭窄の原因となる肥厚した中隔心筋を壊死させる経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA)がある。

わが国の「肥大型心筋症の診療に関するガイドライン2007年改訂版」では,PTSMAは症状の改善は得られるが長期成績は不明とのことで,
(1)ニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能分類Ⅲ度以上の症状を有し,薬剤抵抗性で,安静時ないし薬剤負荷時に30mmHg以上の左室内圧較差を認めるHOCM,
(2)左室内圧較差を原因とする意識消失発作を有し,安静時ないし薬物負荷時に30mmHg以上の圧較差を認めるHOCM,
(3)左室内圧較差(30mmHg以上)が関与する薬物治療抵抗性の発作性心房細動
―について,ClassⅡ※1またはClassⅡa※2の適応があると記載されている。

今回オランダから,薬剤抵抗性のHOCMに対するPTSMD※3には,長期間観察を行うと突然死の危険性があるというショッキングな内容の注意勧告が発表された(Circ Heart Fail 2010; 3: 362-369)。


Long-term outcome of alcohol septal ablation in patients with obstructive hypertrophic cardiomyopathy: a word of caution.
(Circ Heart Fail 2010; 3: 362-369)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/20332420

 

研究のポイント:3人に1人に有害事象,心筋中隔切除術の5倍の発生頻度
91例のHOCM(平均年齢54歳)に経カテーテル的に冠動脈中隔枝へPTSMAを行った。
ランダム化比較試験(RCT)は行いにくいので,その結果をpropensity scoreを用いて,心筋中隔切除術を行った40例と対比した。
一次エンドポイントは心臓死+致死性不整脈を含む突然死からの生還,二次エンドポイントは非心臓死+他の非致死性合併症である。

平均5.4年の経過後,PTSMA群では38%が一次または二次エンドポイントに到達し,21%が一次エンドポイントに到達した。
平均6.6年後における一次エンドポイント回避率はPTSMA群で有意に低く(P=0.01),1,5,8年後ではPTSMA群96%,86%,67%,心筋中隔切除術群100%,96%,96%であった()。

 


一次エンドポイントの年発生率はPTSMA群4.4%に対し,心筋中隔切除術群0.9%であった。propensity scoreを用いた解析では,PTSMAが一次エンドポイントの有意な予測因子となった。

佐藤先生の考察:ICDの植え込みも同時に検討する必要がある
PTSMAを受けた患者では,長期観察を続けると3人に1人に有害事象が生じ,その発生頻度は心筋中隔切除術の5倍であるという大変ショッキングな内容である。
この論文の著者らは,有害事象は術直後ではなく,遠隔期に認められたことを強調している。
術直後は合併症がないように見えても,5~10年経過してみないとわからないということである。

さらに,突然死した症例ではほとんどの症例が突然死の危険因子(失神の既往,突然死の家族歴など)がない症例であり,全例植え込み型除細動器(ICD)が植え込まれておらず,ICDが植え込まれた患者では突然死が見られなかった。
心筋焼灼後の心筋梗塞による瘢痕形成が致死性不整脈の原因と考えられている。
心筋焼灼という手技自体が一次エンドポイントの危険因子であり,注入エタノールの量は危険因子ではなかった。
結論として論文著者らは,薬剤抵抗性HOCM患者の第一選択治療は心筋中隔切除術であると述べている。

わが国では冠動脈疾患同様,HOCMでも外科手術よりもカテーテル治療のほうが選択される傾向にあるかもしれない。
その場合,今後はICDの植え込みも同時に検討する必要があると思われる。
突然死の危険因子がない患者でも,PTSMA後に突然死が生じているからである。


※1 手技,治療が有効,有用であるというエビデンスがあるか,あるいは見解が広く一致していない
※2 エビデンス,見解から有用,有効である可能性が高い
※3 原著論文ではalcohol septal ablation(ASA)としているが,日本のガイドラインの表記に従い,経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA)とした

出典 MT pro 2010.6.28
版権 メディカルトリビューン社


<経皮的中隔心筋焼灼術 関連サイト>
経皮的中隔心筋焼灼術:PTSMA
http://www.nms.ac.jp/nms/naika1/shinryo/PTSMA/index.html

経皮的中隔心筋焼灼術
http://www.mimuro-hp.sango.nara.jp/sinryo_jyunkan06.htm
■PTSMA : Percutaneous transluminal septal myocardial ablation
■ 1995年英国のSigwart博士らが始めた経皮的中隔心筋焼灼術は,左室内で流出路を圧排する異常な肥大心筋に灌流する冠動脈左前下行枝の側枝である中隔枝にエタノールを極少量注入して,異常肥大心筋をピンポイントに焼灼し,肥大心筋を痩せさせる(薄くする)ことによって左室内圧較差を消滅させる治療法です。
(私的コメント;左室内圧と大動脈圧の術後の改善を示した図は説得力があります)

経皮的中隔心筋焼灼術の適応について
http://www.jhf.or.jp/q&adb/6/5403.html
■この治療のためには、
第一に、治療が必要かつ奏効するような心筋肥大であることが前提になります。
第二に、症状があり、薬剤抵抗性であること。
第三に、圧較差が50ミリ以上あることが必要です。
しかも、そうした条件を満たしていたとしても、心筋壊死治療後の瘢痕による不整脈や突然死の危険があり得るとする考えもあります。
実施にはかなりの慎重さを要すします。
(私的コメント;左室流出路圧較差30mmHg以上を有する症例の予後は不良という報告があります。Maronら)

[PDF] 経皮的中隔心筋焼灼術とペース メーカー療法の併用により左室内 圧較差の消失に成功した閉塞性肥大型心筋症の1例
http://www.jcc.gr.jp/blue/jc-pdf/365-6(L).pdf

 

その他
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第15回日本冠動脈外科学会で「虚血性心筋症に対する左室形成術を再検証する-STICH trialをうけて」というタイトルのシンポジウムが行われました。

虚血性心筋症(ICM)そして虚血性拡張型心筋症(IDCM)を復習し直す機会として、このシンポジウムの記事で勉強しました。
##虚血性心筋症に対する左室形成術
##適切な症例選択と手技で効果
虚血性心筋症(ICM)に対する左室形成術(SVR)の効果を検討したSTICH(Surgical Treatment of Ischemic Heart Failure)trialは昨年,有効性を否定する結論を出し,世界中で議論を巻き起こした。
試験方法や手技を中心にさまざまな問題点が指摘され,取り下げを求める心臓外科医も少なくない。
第15回日本冠動脈外科学会のシンポジウム「虚血性心筋症に対する左室形成術を再検証する-STICH trialをうけて」(座長=国立循環器病研究センター・北村惣一郎名誉総長,東京大学大学院重症心不全治療開発講座・許俊鋭特任教授)では,わが国の心臓外科医が,適切な症例選択と手技により効果が得られることを主張した。

心筋症に対する移植以外の外科治療で最有力候補とされるSVR。初めての前向き臨床研究として行われたSTICH trialで,CABGにSVRを追加しても,CABG単独群を上回る予後は得られないことが示された(5年生存率72%)。
これに対して,
○左室瘤症例も含まれている
○左室容積の測定が一部の症例にしか行われていない
○術前LVESVIが83mL/m2と小さい
○SVRによる容積減少率は19%で,有効性を示唆している報告に比べて明らかに低い
○執刀医の経験が十分であったか疑わしい
など,さまざまな問題点が指摘されている。
 
シンポジストらは,ICMに対するSVRは,あまり大きくなっていない心臓に対しては高い効果が得られないが,コンセプトをよく理解した外科医が適切な適応選択,手技のもとで行えば,予後改善効果が十分に期待できるという点で一致した。

出典 Medical Tribune 2010.9.16
版権 メディカルトリビューン社

<関連サイト>
##適応はLVESVI 90mL/m2超えた時期/術前LVESVIに応じた縮小目標で
慶應義塾大学心臓血管外科の古梶清和専任講師らは,ICMに対するSVRの適応は左室収縮末期容積係数(LVESVI)が90mL/m2を超えた時期が適当との考えを示した。
また,心事故回避には,術前LVESVIに基づいて算出した術後左室拡張末期容積係数(LVEDVI)を目標に縮小することが望まれるとした。

#縮小目標設定後に心事故減少
古梶専任講師らは,1996~2010年5月にICM 33例(平均年齢61歳)にSVRを行った。
術前のLVESVIは平均116mL/m2,LVEDVIは158mL/m2,左室駆出率(LVEF)は27%。術後容積減少率は49%と高い。
5年非イベント(死亡または心事故)率は80%,非心事故率55%と,STICH trialに比べて予後は良好だった。

予後因子について多変量解析すると,術前LVESVIだけが有意な因子で,大きいほど生存率が低下することがわかった。
予後改善が見られなかったSTICH trialでは約80mL/m2だったことから,同専任講師は,SVRを行うのは90mL/m2を超えた時点が適当だろうとした。

さらに,心事故の影響因子について多変量解析すると,術前LVESVIと術後の心室性期外収縮残存が有意な因子だった。
心事故を起こした群と起こさなかった群で左室容積の推移を比較すると,心事故群では術後減少した容積が再び増加する傾向が認められ,これがおもな死因である心不全や不整脈につながっていると考えられた。
術後の容積増加は,左室が適切な大きさとなるようなSVRを行えば回避できる可能性がある。
そこで,その大きさを心事故との関連から検討したところ,術後LVEDVIの目標を,術前LVESVIに0.438を乗じ,56を加えた値とすることが妥当であるとの結果を得た。
この考え方に沿ったSVRを開始した2001年以降,心事故が明らかに減少する成績(図)が得られたという。

出典 Medical Tribune 2010.9.16
版権 メディカルトリビューン社


##心機能とMR改善,長期予後良好 ただしリモデリング進行所見が
国立循環器病研究センター心臓血管外科の戸田宏一医長らは,SVRにより重症ICMの心機能や僧帽弁閉鎖不全症(MR)の改善が認められ,長期予後も良好だったことを明らかにした。
ただし,長期経過においてリモデリング進行と推測されるデータが認められたことから,薬物療法の必要性も示唆した。

#LVESVIが112mL/m2から40%減
戸田医長らは,過去10年間にSVRを行ったLVEF 35%未満のICM 34例(平均年齢63歳)で,術後の心機能,左心形態や長期予後を検討した。
34例のニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能分類は平均2.9度,Ⅲ~Ⅳ度が71%。LVEF 25%,LVESVI 112mL/m2,左室拡張末期径(LVDd)63mm,左室収縮末期径(LVDs)52mmで,中等度以上のMRは62%認められた。

On-pump 冠動脈バイパス術(CABG)後にSVRと乳頭筋接合術,MRには強制的僧帽弁輪形成術を行った。
入院死亡は2例(6%)で,いずれも低心拍出量症候群が原因だった。
術後,LVEFは33%へ有意に改善。LVESVIも66mL/m2まで低下し,約40%の容積減少が得られた(図)。
NYHA心機能分類,脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)も有意に改善した。

ただし,5年後まで経過観察すると,MR gradeの有意な改善は持続して認められたが,LVDdの減少は3年以降有意ではなくなり,1か月後よりも増加していた。
同医長は「リモデリングとしてよいかは議論があるだろうが,LVESVIの減少効果が報告されているβ遮断薬,アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬などの薬物療法が,SVR後の長期予後改善に必要ではないか」と述べた。

遠隔期非イベント(死亡または心事故)率は4年後で約70%(心臓死は1例)と良好だった。
SVR後の死亡または心事故の影響因子について多変量解析を行うと,術前LVDd 65mm以上(ハザード比7.41)が有意な因子であることがわかった。
実際,LVDd 65mm以上群の遠隔期予後は65mm未満群に比べて有意に不良だったという。

出典 Medical Tribune 2010.9.16
版権 メディカルトリビューン社


##広範akinesis呈するIDCMは術後左室大きいと遠隔期予後不良
北海道大学病院循環器外科の若狭哲氏らは,広範なakinesis(左室壁無収縮)を呈する虚血性拡張型心筋症(IDCM)に対するSVRの予後因子について検討。
術前左室が小さいと術後の入院死亡リスクが高く,術後左室が大きいと遠隔期死亡リスクが高いことを報告した。

#術後左室大きいと術前も大
若狭氏らは2003年以降,IDCM 74例にSVRを実施してきた。
このうち広範なakinesisを呈した46例(平均年齢62.5歳)が今回の対象。左室瘤症例,心エコーなどの臨床所見が不十分な症例,術前LVEFが40%を超える症例は含まれていない。
術前NYHA心機能分類は平均3.2度。BNPは1,468pg/dL。MR gradeは2.8。LVDd 67.9 mm,左室内径短縮率(LVFS)14%,LVEF 27.9%,LVESVI 117.4 mL/m2。
術式はオーバーラッピング手術が約6割。CABGは9割近くで同時施行された。

術後,MR gradeは平均0.4まで有意に改善。
LVDd 60.3mm,LVFS 17.5%,LVEF 33.9%,LVESVI 71.0mL/m2と,心エコーパラメータも有意な改善が認められた。LVESVIの減少率は38.7%だった。

予後(平均27.1か月)を調べたところ,死亡は11例(23.9%),心臓死は5例(10.9%)。
5年生存率は全体で64.8%,非心臓死77.7%と患者背景を考えると良好だった。予後因子を検討すると,術前LVDdが小さい(64.5mm以下)と術後の入院死亡リスクが高く,術後LVDdが大きい(63.2mm以上)と遠隔期死亡リスクが高いことがわかった(図)。
術後左室が大きい症例は術前も大きく,左室収縮も不良であり,また同時施行したCABGの効果が十分得られなかった。
遠隔期死亡リスクは大動脈弁置換術を要した症例でも高かったという。

出典 Medical Tribune 2010.9.16
版権 メディカルトリビューン社


<STICH trial 関連サイト>
STICH trial
http://blogs.yahoo.co.jp/hirofu222/40086148.html
心室再建術の効果は根拠がない
http://www.doljapan.com/special/acc/2009/html/06.html
The STICH Trial
What Does It Tell Us and Where Do We Go From Here?
http://stroke.ahajournals.org/cgi/content/full/36/7/1619
Clinical Trials
Surgical Treatment for Ischemic Heart Failure (STICH) Trial
http://www.cts.usc.edu/clinicaltrials-stichtrial.html
Physician biases plague STICH trial progress, but enrollment on the rise, investigators say
http://www.theheart.org/article/116229.do
Physician biases plague STICH trial progress, but enrollment on the rise, investigators say
http://www.theheart.org/article/116229.do

篠田雅典 『磐梯高原の朝』 日本画
http://www.seikougarou.co.jp/sell/shinodamasanori/1058.html

 

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たこつぼ心筋障害

戯れ言たれる侏儒 / 2010.08.17 00:11 / 推薦数 : 0
数ヶ月前、当地区で日循地方会が開催されました。
プログラムをチェックしていると、いまだに(?)「タコツボ心筋障害」に関する演題が多いのは驚きです。

日循の専門医誌「循環器専門医」Vol.No.2 2009 P363-368にタコツボ心筋障害の提唱者の佐藤光先生が「タコツボ心筋障害」を書かれています。
「日本で発見された循環器疾患」の副題がつけられています。

きょうはその論文の中でで「細胞生理学とタコツボ心筋障害」の勉強をしました。
(ちょっと日本語が難解でした)


■細胞生理学的見地から、Lyonがタコツボ心筋障害をcatechoramine-induced acute myocardial stunningを解き明かしてくれている。
Lyon A. et al.:Stress(Takotsubo) cardiomyopathy : a novel pathophysiological hypothesis to explain catechoramine-induced acute myocardial stunning. Nat Clin Pract Cardivasc Med 2008;5:22-29
タコツボ心筋障害をstress cardiomyopathyとして捉え、高濃度のアドレナリンがcardiomyocyteのシグナル伝達回路に刺激を与え、アドレナリン作動性受容体・G2蛋白連結型受容体に、さらにはβ2−adrenorecepterに影響を与える。
心筋の心尖部にはβ−adrenorecepterが多いために「タコツボ(apical balooning)」が起きる、と説明。
この論文では、むしろ前半の佐藤先生の「苦労話し」とそれに続く「心尖部が丸くなる理由?」の方が興味深いかも知れません。

■心尖部が丸くなる理由?
●タコツボ(様)心筋障害の多くは、心尖部が丸くなる。
この球状こそが左室内圧を均等に分散させ、心破裂を防ぐのに有利な形態であろうと推定される。
●心基部が過収縮により圧較差を示す症例も多い(HOCM型)。
●期外収縮後に圧較差の増強がみられるBrockenbrough-Braunwald-Morrow現象が認められた、という報告もある。
●治癒期にドブタミン負荷等で圧較差が再現される場合もある。
その場合にはS状中隔を示すことも多い。
●心室内に血栓が形成され多発性栓塞の原因になることがある。
●心基部に膨隆が現れる場合がある(逆タコ)。
●VSRや心タンポナーデや心室破裂の報告もある。
(一部、文章を改変しました)

<関連サイト>
たこつぼ心筋症の成因(未完)
http://blog.m3.com/reed/20100701/1
たこつぼ心筋症
http://blog.m3.com/reed/20070831/1
たこつぼ心筋症 その2
http://blog.m3.com/reed/20070929/1

たこつぼ心筋障害
http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/pamph71.html

■発症後急性期にはQT時間が延長するため、「トルサード・ド・ポアンツ」(一過性心室細動)から突然死を起こす場合があって、予後が良好とは限らないことがわかってきました。

たこつぼ心筋症(LVAB syndrome)で終わらすな・・・
http://intmed.exblog.jp/6044943/
■一過性のLVAB( left-ventricular apical balloning syndrome)は収縮期機能障害、心尖部・中部の運動性減少と基部の運動増加するのが特徴で、急性の心理的・身体的ストレスが原因で主に女性の多く、胸痛と心電図異常を伴い、心不全も生じることがある。
心電図異常は前壁梗塞とV1-3よりV4-6のST上昇が目立つ事、後側誘導のreciprocal changeが無いこと、前胸部・広範な誘導での深いT陰転化、QT間隔の著明延長などで鑑別可能なことがある。
心理的ストレスが生じる値、一過性のLVAB syndrome、日本ではとくに“たこつぼ心筋症”とよばれている。
一過性LVAB sydromeのうちに血中カテコラミン値増加が追跡している間に消失することが報告されている。
心尖部がアドレナリン作動性刺激に特に感受性が高いことが知られている。


<2010.12.10追加>
たこつぼ型心筋症(Apical ballooning syndrome)

患者では精神的ストレスに対して内皮機能と心血管反応が低下する
目的
本研究は、たこつぼ型心筋症(ABS)の患者では、急性の精神的ストレスに対する血管および内皮の機能的反応が異常であるとの仮説について検討することを目的とした。

背景
ABSは、閉経後女性での発症例が圧倒的に多い一過性の心筋症であり、急性の精神的ストレスによって引き起こされる可能性がある。ABSの機序は、明らかになっていない。

方法
ABSの女性患者(n=12、ABSのため入院、またはABSの診断を受けてから6カ月以上経過した者)、対照群の閉経後女性(n=12)、および心筋梗塞(MI)の女性患者(n=4)を対象に、ベースラインと続いて行われる3種類の急性精神的ストレス負荷試験施行後に、急性の精神的ストレスに対する内皮機能および心血管反応のパラメータとして、反応性充血を末梢動脈トノメトリー(PAT)によって測定した。
血漿中カテコラミン濃度は、ベースラインと3種類の精神的ストレス負荷試験施行後に測定した。

結果
精神的ストレス負荷後のPATスコア(反応性充血)は、ABS患者群のほうが閉経後対照群より有意に低かった(p<0.05)。
精神的ストレス負荷時のPATスコアは、ABS患者群のほうがMI患者群や閉経後対照群より有意に低かった(p<0.05)。
MI群における急性精神的ストレス負荷時のPATスコアには、閉経後対照群との差はみられなかった。
また、ABS群における急性精神的ストレス負荷試験施行後のカテコラミン濃度は、閉経後対照群と比較して有意に上昇していた(p<0.05)。

結論
ABS既往歴を有する患者では、急性の精神的ストレスに対して血管反応性は上昇し、内皮機能は低下する。
この結果は、血管運動機能不全がこのまれな心筋症の病因に関わる一機序である可能性を示している。


Endothelial Function and Vascular Response to Mental Stress Are Impaired in Patients With Apical Ballooning Syndrome
Elizabeth A. Martin, et al
J Am Coll Cardiol, 2010; 56:1840-1846
http://ds-pharma.jp/medical/gakujutsu/jacc/archive/jacc1012_1840.html

 
<2011.9.30追加>
たこつぼ型心筋症の概念
1)急性心筋梗塞に類似した発症経過
2)急性に左心室心尖部を中心とした領域の低収縮と心基
   部の過剰収縮を呈している
3)その収縮異常は、2週間以内に劇的に改善する
4)心収縮異常は、一枝の支配領域を超えている
5)責任病変と妥当な冠動脈に器質的病変を示さない
 (冠動脈の臨床・下 日本臨床2003:61:728-732)
 
<自遊時間>



 
第2次世界大戦終戦を記念してニューヨークの繁華街タイムズスクエアに設置された高さ8メートルの「勝者のキス」像前でポーズを取るカップル。日本の降伏で戦争が終結した65年前のこの日、喜びに沸くタイムズスクエアで水兵が看護師にキスをする瞬間をとらえた写真「勝者のキス」は、ライフ誌の表紙を飾り有名になった
http://www.jiji.com/jc/offtime?p=prm201008-photo19&j6

 


 
http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20100624_vjday_in_times_square_nurse_dies/
 
NY、数百組が「勝者のキス」 対日戦勝65年祝い



 
http://www.kahoku.co.jp/news/2010/08/2010081501000123.htm
タイムズスクエアには今年、対日戦勝65年を記念してニューヨーク市が「勝者のキス」を模した約8メートルの巨大レプリカ像を設置。
カップルたちはレプリカの周囲でキスを交わし合った。

 
勝利のキス
http://blog.goo.ne.jp/hara-mihoko/e/fe1cad9605360b7a7a3d8640e71ce63e
(私的コメント:フレンチキス?)

Has 'Kissing Sailor' Mystery Been Solved?



 
ロベール・ドアノー 「パリ市庁舎前のキス」1950年撮影
http://valeny.exblog.jp/6007675/

ロベール・ドアノー写真展「パリ・ドアノー」
http://blog.goo.ne.jp/sitedoi/e/845bb425ad27491f5735da48e747f7da

パリ・ドアノー ロベール・ドアノー写真展
http://minusblog.jugem.jp/?eid=1224413

今もパリの片隅で写真の人物たちがこうして息づいているような...。
http://hurec.bz/mt/archives/2008/08/967_199209_1932.html
http://chie2.exblog.jp/10341523/

 


 
"接吻"(クリムト作)
http://ja.wikipedia.org/wiki/ファイル:Gustav_Klimt_016.jpg
(極め付きのキスはこれです)

 
<きょうの一曲>
Rachmaninoff plays Chopin Nocturne Op. 9 No. 2
http://www.youtube.com/watch?v=kj3CHx3TDzw&feature=related

 
 
その他
「葦の髄」循環器メモ帖
http://yaplog.jp/hurst/
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
 井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/ 
(内科医向き)
「井蛙」内科メモ帖 
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/  
があります。      
 

 
 

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たこつぼ心筋症の成因

戯れ言たれる侏儒 / 2010.07.01 00:57 / 推薦数 : 2
最近の日本心臓病学会誌に「たこつぼ心筋症」の特集がありました。
題して
私は考える「たこつぼ型心筋症の成因に症例から迫る」
Vol.5 No.1 2010 J Cardiol Jpn Ed P111~138

です。
たこつぼ(型)心筋症ないし心筋障害の類似疾患
札幌医科大学医学部第二内科 土屋和文先生

 
逆たこつぼ型心筋症を呈した褐色細胞腫
国立循環器病センター心血管内科 大塚頼隆先生

 
たこつぼ型心筋症に心室中隔穿孔を合併した1例
横浜市立大学附属市民総合医療センター 南一敏先生

 
流出路狭窄を繰り返し、ランジオロール持続投与が有効であったたこつぼ心筋症の1例
弘前大学大学院医学研究科救急災害医学講座 花田裕之先生

 
冠微小血管攣縮の関与
熊本大学大学院生命科学研究部循環器病態学 小島淳先生
■現在、たこつぼ型心筋症の成因として、以下の機序が考えられている。
1. 多枝攣縮
2. 冠微小血管攣縮
3. カテコラミンによる心筋障害
4. 交感神経性気絶心筋
■たこつぼ型心筋症の場合、心尖部を中心に比較的広範囲に壁運動低下が認められ、壁運動異常も可逆的であることから、原因として冠微小血管攣縮が考えられる。
■高濃度エピネフリンにより心筋細胞内で陽性変力作用を呈するβ1-Gsシグナル伝達系からβ2-Giシグナル伝達系への転換により陰性変力作用を起こすという仮説がある。(Lyonら、stimulus traficking)。
■心基部にはノルエピネフリン含量や交感神経繊維密度が高いが、心尖部はアドレナリン受容体密度が高い。
(→アドレナリン刺激に対する反応は心尖部で強い)
■冠微小循環障害は心尖部バルーニングの結果として機械的な壁応力が上昇することにより生じている可能性がある。
■冠微小血管攣縮により心尖部を一時的に収縮不全に陥らせたとしても、心基部の過収縮は説明できず、現時点ではたこつぼ型心筋症の原因はカテコラミンによる心筋障害が考えやすいかも知れない。

 
<関連サイト>
たこつぼ心筋症
http://blog.m3.com/reed/20070831/1

たこつぼ心筋症 その2
http://blog.m3.com/reed/20070929/1

特異な心電図変化を認め,「たこつぼ心筋障害」が関与した病態と診断した1 例
https://square.umin.ac.jp/saspe/archive/31/31th_03.pdf

緊急掲載 新潟県中越沖地震でも3人の患者が発生
「たこつぼ型心筋障害」を広島から世界に発信
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/200707/503859.html
■「たこつぼ型心筋障害」は1990年、当時広島市民病院に勤務していた佐藤氏らのグループにより世界で初めて報告された。
2006年には、新潟県中越地震で被災後に多発したことを示す調査結果が明らかにされ、ストレスとの関連からもその名が知られるようになった。
最近は海外からの報告も相次いでおり、注目を集めている。
■たこつぼ型心筋障害は、高齢の女性に圧倒的に多く発症します。
広島市民病院循環器科のたこつぼ型心筋障害75例では、発症の平均年齢は73歳でした。
また2001年に報告されたわが国での多施設共同研究88症例の結果でも、平均年齢67±13歳、女性比86%とされています。
この点において、男性に好発する急性心筋梗塞とは対照的です。

 

 

<きょうの一曲>
Libertango-European Jazz Trio
http://www.dailymotion.com/video/x19azu_libertangoeuropean-jazz-trio_music


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かつて原因不明とされた心筋症ですが,細胞工学,遺伝子工学などの手法を用いて病因解明が進み,治療法にも新たな展開が見られるます。
第74回日本循環器学会のプレナリーセッション「Cardiomyopathy UP to DATE」(座長=高知大学老年病・循環器・神経内科学・土居義典教授,ロンドン大学心血管科学研究所・William J. McKenna所長)での記事で勉強しました。

##~拡張型心筋症~ 細胞内蛋白の質制御機構の破綻が関与
トロント大学(カナダ)のPeter P. Liu氏は,拡張型心筋症(DCM)の成因に,細胞内蛋白の“質”を制御するprotein quality controlメカニズムの破綻による異常蛋白の蓄積がかかわっているなどの知見を明らかにした。

#異常蛋白の蓄積が引き金に
まずLiu氏らは,アクチンフィラメントの切断・重合阻止などの調節蛋白ゲルソリンが,HIF-1α,DNase Iの活性化や,抗アポトーシス生存因子のダウンレギュレーションなどのメカニズムを介して,心不全の進展に重要な役割を担うことを,動物実験で見出した。

一方,熱ショック蛋白α-B-crys-tallinのミスセンス突然変異は,異常蛋白のアミロイド沈着を伴ってデスミン関連心筋症を引き起こす。通常,生体内には細胞内蛋白の分解経路としてユビキチン・プロテアソーム系(UPS)とオートファジー(自食作用)・リソソーム系の2つの経路が存在し,細胞内でうまく折り畳まれずに生じたunfoldの蛋白や凝集体などの異常蛋白を処理し,細胞内蛋白の質を制御している。
したがって,UPSの障害による異常蛋白の増加,その結果生じるオートファジーの過剰な活性化は心筋細胞障害,細胞死を来す。

そこで同氏らは,DCM患者のプロテオミクス解析,遺伝子発現解析などによりDCM関連遺伝子候補を探索。ストレス反応蛋白がカスパーゼを介して細胞死の活性化を来し,DCMに関連することを突き止めた。

異常蛋白が蓄積すると,unfoldの蛋白の反応が活性化され,細胞内シグナル経路を修飾してリモデリングを惹起,同時にカルシウム(Ca)の過剰存在下でカスパーゼを活性化し,最終的にアポトーシスに至る。
異常蛋白の蓄積はまた,炎症細胞を介する経路からも,細胞死や線維化を招く。

以上から,同氏は「異常蛋白の蓄積減少,異常ストレスの除去,UPS系やオートファジー・リソソーム系メカニズムの改善は,新しいDCM治療につながる可能性がある」とした。

##~拡張型心筋症による重症心不全~ 免疫吸着療法が代替療法として有望
自己免疫異常は,ウイルス感染,遺伝子異常とともに心筋症の三大病因を成す。
慶應義塾大学循環器内科の吉川勉准教授らは,抗心筋自己抗体陽性のDCMによる重症心不全患者に対し,抗体を除去する免疫吸着療法が,新たな治療選択肢となる可能性を示した。

#BNP,LVEFなどが改善
吉川准教授らは,DCM患者の85%にミオシン重鎖,β1アドレナリン受容体,ムスカリンM2受容体,Na-K-ATPase,ラミニン,ミトコンドリアなどの抗心筋自己抗体が検出されることを明らかにしている。
そこで,DCMによる重症心不全患者16例(男女各8例,年齢53歳)を対象に,抗体を除去する免疫吸着療法が心機能,神経体液性因子やサイトカインなどに及ぼす影響を検討した。

今回免疫吸着療法に用いられたのは,低抗原性で免疫グロブリン(Ig)G3サブクラスに高親和性のトリプトファンカラム。
1回2時間血漿2,000mLを処理するセッションを3~5回実施した。患者の背景因子は,ニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能分類III度12例,IV度4例で,β1アドレナリン受容体抗体陽性が14例,ムスカリンM2受容体抗体陽性13例,アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)が7例,β遮断薬が16例に使用されていた。

検討の結果,血漿脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)はベースラインの752±156pg/mLから免疫吸着療法施行後432±96pg/mLへ(P=0.016),左室駆出率(LVEF)は18±2%から施行3か月後に21±2%へ(P=0.039),6分間歩行距離は314±39mから施行後360±30mへ(P=0.01),それぞれ有意に改善。
しかし,血漿中の炎症性サイトカイン腫瘍壊死因子(TNF)α,インターロイキン(IL)- 6は施行前後で有意な変化はなかった。
今回の結果を受けて,免疫吸着療法の有用性を検証する大規模臨床試験が進行中であるという。

同准教授は「トリプトファンカラムを用いて抗心筋自己抗体を除去する免疫吸着療法は,DCMによる重症心不全の有望な代替療法となる可能性がある」と述べた。

##~肥大型心筋症~ QOLと長期生存改善には総合管理が不可欠
肥大型心筋症(HCM)の予後に影響する主要な決定因子は心臓突然死と心不全の進行であり,これらの防止が患者管理の鍵となる。
榊原記念病院(東京都)の高山守正副院長は,同院での取り組みについて解説した。

#家族向けトレーニングコースも
同院ではHCM患者に対し,次のような総合管理方針を定めている。
(1)薬物治療の調整
(2)的確な心エコーや心臓MRI評価
(3)心臓突然死のリスク層別化
(4)適応例への植え込み型除細動器(ICD)の積極的使用
(5)薬物治療抵抗性の有症状患者への経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA)
(6)PTSMA不適切例への外科的中隔心筋切開切除術(7)PTSMAまたは外科手術後,不動が長引いた患者への心臓リハビリテーション
(8)患者家族への心脳蘇生法の教育
(9)ICD適応外患者への自動体外式除細動器(AED)の自宅設置(10)外来での定期的なフォローアップ。

薬物療法に関し高山副院長は,閉塞性HCM(HOCM)では,ACE阻害薬,ARBはガイドラインでも禁忌であるにもかかわらず,紹介例の24%に投与されていたと注意を促した。

また,HCMの状況やリスク評価におけるMRIの役割を強調。
しかし,リスク評価によっても致死性不整脈の発生時期は予期できないとして,ICD植え込みの重要性を指摘した。

一方,同院におけるPTSMAの適応は,
(1)適切な薬物治療下でNYHA心機能分類IIm~IV度
(2)安静時または誘発時の圧較差>30mmHgである。
2007年12月17日~10年3月1日に63例に施行し,圧較差の有意な改善,ペースメーカー植え込み3例,ICD植え込み8例との成績を得ている。

また,心脳蘇生法の家族向けトレーニングコースを20年以上にわたって毎月実施しており,これにはAEDの使用方法なども含まれる。
現在,ICD適応外のHCM患者4例が,自宅にAEDを設置しているという。

同副院長は「HCM患者のQOLや長期生存改善には,コメディカルの役割や家族の協力を含めた総合管理が欠かせない」と強調した。

出典 Medical Tribune 2010.4.15
版権 メディカル・トリビューン社



(東京・白金台 「八芳園」 2010.6.12撮影)


<きょうの一曲>
2008ピティナ・入賞者記念コンサート 中村芙悠子/シューベルト:3つのピアノ曲 D.946 第1番 変ホ長調
http://www.youtube.com/watch?v=WKTCfHybg78

シューベルト : 3つのピアノ曲(即興曲)
http://www.piano.or.jp/enc/dictionary/composer/schubert/000309.html


その他

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青少年運動選手の突然死予防に心電図検査が有用であるという記事で勉強しました。
何の変哲もない報告のようですが、米国では運動選手の心電図検査は任意であるケースが多いようです。

心臓突然死
http://yaplog.jp/hurst/archive/39

で見る限り日本やイタリアの方が、この分野では進んでいるようです。

米国の文献を読んでいてアレって思うようなことがあります。
どうやら医療情勢が日本と違っている場合もあるようです。
米国の論文が必ずしも世界標準とは限りません。
「一つの国の論文」という捉え方も必要な場合もありそうです。
米国一の野球チームを決める試合を「ワールドシリーズ」と呼ぶ国です。

米国 青少年運動選手の突然死予防
ルーチンのECGは費用効果高い
■スタンフォード大学心血管医学のMatthew Wheeler博士らは「米国では青少年スポーツ選手の突然死リスクを心電図(ECG)により評価することは,費用と救命効果の点で妥当である」との研究結果をAnnals of Internal Medicine(2010; 152: 276-286)に発表した。
#費用効果低いとされてきた通説
■米国ではこれまで「プロレベルの競技に参加する前の青少年スポーツ選手へのルーチンのECG検査は,救命に役立つかもしれないが費用がかかりすぎる」との見解が主流だった。
しかし,今回の研究結果はそれとは対照的であった。

■筆頭研究者のWheeler博士は「今回の研究から,ECGと病歴,身体検査の併用が,スポーツ選手における潜在的な心疾患へのスクリーニング戦略として望ましいことがわかった。この方法により,米国の医療制度で一般的に許容される範囲の費用で,ほとんどの選手を救命できるだろう」と述べている。

■今回の研究目的は,スクリーニング費用を科学的に検証し,ECGによるスクリーニングが青少年スポーツ選手で実施されない理由が費用にあるのか否かを明らかにすることだった。
同博士は「そのためには,長期的な救命効果の可能性とは関係なく,どの程度費用がかかるのかを概算する必要があった」と述べている。
研究責任者でスタンフォード肥大型心筋症センターのEuan Ashley所長によると,今回の研究では費用効果の科学的分析を試みたことになる。

■現在,肥大型心筋症(HCM)などの疾患を検出するルーチンのスクリーニング法として,多くのプロスポーツ選手に対してECG検査が義務付けられているが,大学生や高校生などの青少年の選手は対象外で,通常,身体検査と病歴の提出のみが課せられている。
その理由としては,ECG検査は有用だが費用がかかりすぎるためとするのが一般論であった。特に,死亡率が低い集団ではそのように考えられていた。

伊での長期成果がきっかけに
■しかし,1982年から青少年のスポーツ選手に対するルーチンのECGスクリーニングを義務付けているイタリアで,検査導入後に競技中の突然死が約90%減少したとする研究結果が発表され,同様の検査が米国でも実施可能かどうか検討された。

■Wheeler博士は「イタリアの研究では,25年間にわたるスクリーニングの綿密な記録が残されており,それがわれわれにとってスクリーニングの有用性を示す情報源となった」と述べている。

■同博士らは,イタリアでの研究結果に基づいて,疾患罹患率やスクリーニング方法の違いなど,米国とイタリアで異なる変数を調整したモデルを作成した。
さらに,この問題を検討した多数の小規模研究データも収集し,解析した。

■その結果,ECGをスクリーニングに加えると合計費用は1人当たり89ドルとなるが,検査人数1,000人当たり年間2.1人を救命できることが明らかになった。合計費用には初回検査と追加検査,および治療費が含まれている。
共同研究者で同大学内科/医療研究政策学のPaul Heidenreich准教授は「今回の研究では,検査から治療までの合計費用を検討している。
これはスクリーニングが医療システムに与える影響を検討するうえで不可欠である」と述べている。
また,年間1人救命するための費用効果比は4万2,900ドルとなることがわかった。

■共同研究者で同大学医療研究政策学/心血管医学のMark Hlatky教授は「費用と効果の比には,スクリーニングをすれば追加の費用がかかることが反映されるが,死亡率の減少による恩恵が得られる。1人当たり年間5万ドル未満の費用増加は,米国では一般的に費用効果が高いとして許容される範囲である。10万ドルを超える場合は許容されないことが多い」と説明している。


HCMはスポーツ選手の死因のトップ
■スポーツ選手の突然死はまれであるが,スポーツ選手のECG所見では,若齢選手のHCM,QT延長症候群などによる突然死の徴候に注意が向けられる。
米国ではHCMはスポーツ選手の死因の1位を占めている。

■全米では,500人に1人がHCMである。HCMでは遺伝的欠陥により心筋が肥大し,心拍リズムに異常を来し,心停止リスクが高まる。無症候のまま突然死することもある。
スポーツ選手でHCMが発見されれば,激しい練習をやめることが推奨される。


出典 Medical Tribune 2010.4.22
版権 メディカル・トリビューン社

 

 

<きょうの「『葦の髄』循環器メモ帖>
心臓突然死
http://yaplog.jp/hurst/archive/39

その他

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~2009.10.15
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(内科医向き)
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第72回日循 心筋症

戯れ言たれる侏儒 / 2008.06.13 00:36 / 推薦数 : 0

第72回日本循環器学会特集の記事で「心筋症」を勉強しました。

~ EV関連DCM ~
TLR8発現量多いほど臨床転帰悪い
エンテロウイルス(EV)は拡張型心筋症(DCM)における炎症反応との関連性が報告されている。
岩手医科大学第二内科・循環器医療センターの佐藤衛氏は,ヒトToll様受容体(TLR)8とそのアダプター分子,MyD88EV関連DCMにおけるEV複製と関係しているかを検討。
両分子の発現量が多いほど臨床転帰が悪いと報告した。

DCM群でTLR8とMyD88発現量が有意に多い
心筋組織からEV RNAが検出されたDCM患者72例(平均年齢57±1歳)を対象とし,左室機能が正常な20例(同56±6歳)を対照群とした。
年齢,性,収縮期血圧,拡張期血圧などは両群間に差が認められた。
TLR8,MyD88のmRNAおよびEV RNA(プラス鎖,マイナス鎖)の発現量は逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)で求め,免疫染色によりこれらの分子の細胞ソースを確認した。平均426日間の追跡調査を行い,臨床イベント(総死亡および心不全発症)を検討した。
 
その結果,TLR8とMyD88のmRNA発現量は対照群と比べてDCM群で有意に多く(P<0.01),DCM群におけるTLR8 mRNA発現量とMyD88 mRNA発現量には正の相関が認められた(r=0.60,P<0.001)。
同様に,TLR8 mRNA発現量とEV RNAの発現量にも正の相関が認められた(r=0.76,P<0.01)。
一方,TLR8,MyD88ともに,左室容量とは正の相関,左室駆出率とは負の相関が認められた。
免疫染色ではEV蛋白陽性心筋細胞にTLR8とMyD88の発現が認められた。
 
追跡期間中,心臓死が3例(4.2%),心不全が11例(15.3%)あり, TLR8の発現量が最も多い第3三分位群では他の2群に比べて心イベント回避生存率が有意に低かった。
同様の結果はMyD88に関しても得られた。
 
以上から,佐藤氏は「EV関連DCM患者におけるTLR8とMyD88発現量はEV RNA複製に対する免疫応答に関与しており,臨床転帰にも関係している」と結論した。

~ MMP-2 ~
サルコメア遺伝子変異を有するHCM患者の予後予測に有用
マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)-2が肥大型心筋症(HCM)の予後を規定する左室機能不全や心筋リモデリングに関係していると報告されていることから,金沢大学循環器内科の舛田英一氏らは,サルコメア遺伝子変異を有するHCM患者を対象に,この知見の臨床的妥当性を検討。MMP-2の血中濃度が心イベント予測のマーカーとして有用であることが示唆されたという。

カットオフ値800ng/mL
舛田氏らは,サルコメア遺伝子変異を有するHCM患者31例(平均年齢56.4歳)に対して,酵素免疫アッセイ法を用いてMMP-2の血中濃度を測定。平均48か月の追跡期間中の心イベント(心不全または心室細動による入院)および心臓死を検討した。
 
心エコー所見は,心室中隔壁厚(IVST)13.7±4.9mm,左室後壁厚(PWT)10.4±2.4mm,最大左室壁厚(MWT)15.1±5.4mm,左室拡張末期径(LVDd)49.0±9.0mm,左室内径短縮率(FS)31.1±12.3%,左房径(LAD)41.8±5.5mm,血中MMP-2値は883±266ng/mLだった。
 
Nojiらの報告(Circ J,2004)で,FS 25%以上のHCM患者の平均がMMP-2値800ng/mLと対応することが示唆されていることから,今回の患者をMMP-2値800ng/mL未満(A群)と800ng/mL以上(B群)に分けた。
その結果,A・B群間で IVST(P=0.01),LVDd(P=0.02),FS(P=0.002),MMP-2(A群685±98,B群1,069±238;P<0.0001)に有意差が認められた。
また,各患者のMMP-2値をグラフにプロットしたところ,心イベントが発生しなかった患者のMMP-2値は800ng/mL前後に集まることが確認された。
 
同氏は「サルコメア遺伝子変異を有するHCM患者では,血中MMP-2値800ng/mLが予後予測のカットオフ値と考えられるかもしれない」と結んだ。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41191062&year=2008

 

<参考サイト>

拡張型心筋症
http://www.geocities.jp/study_nasubi/c/c54.html
原因不明の心不全で、本症の病因としてウイルス感染との関連が注目され、本症の心筋からPCR法など分子生物学的方法によりエンテロウイルスやC型肝炎ウイルスなどのウイルスゲノムが検出されており、検討が続けられている。

Toll様受容体
http://ja.wikipedia.org/wiki/Toll%E6%A7%98%E5%8F%97%E5%AE%B9%E4%BD%93
動物の細胞表面にある受容体タンパク質で、種々の病原体を感知して自然免疫(獲得免疫と異なり、一般の病原体を排除する非特異的な免疫作用)を作動させる機能がある。
脊椎動物では、獲得免疫が働くためにもToll様受容体などを介した自然免疫の作動が必要である。

感染に応答する宿主免疫機構
http://www.biken.osaka-u.ac.jp/biken/BioScience/page12/index_12.html#midashi07
Toll様受容体のシグナル伝達機構には、どのような分子機構が関与しているのだろうか。
先述のように、 IL-1受容体、および、Toll様受容体の細胞質内領域には、TIRドメインと呼ばれる共通の領域が存在する。この領域は、TIRドメインを持つMyD88という細胞質内に存在するアダプター分子と会合する。
この会合は、最終的には、NF-κB, MAPK(mitogen-activated protein kinase)カスケードを活性化に至るシグナル伝達経路を活性化する。
この経路は、IL-1受容体、Toll様受容体ファミリーに共通の経路である。
MyD88は、Toll様受容体刺激によるサイトカイン産生誘導に必須である

Increased Circulating Matrix Metalloproteinase-2 in Patients With Hypertrophic Cardiomyopathy With Systolic Dysfunction
http://ci.nii.ac.jp/naid/110002667539/
Changes in the release and activity of MMP-2 and TIMP-2 may be associated with the mechanisms responsible for cardiac remodeling in patients with HCM.

<MR面会備忘録(H20.6.12>   

月1回のMRとの面談の中での話です。
■J-PREDICT(Japan Prevention Trial of Diabetes by Pitavastatin in Patients with Impaired Glucose Tolerance)が進行中。
耐糖能異常患者におけるHMG-CoA reductase阻害薬pitavastatinの糖尿病予防効果の検討。
http://www.ebm-library.jp/circ/doc_japan/J0056.html
目的: 主要アウトカム評価項目:1回の経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)陽性に基づく新規糖尿病の発症;空腹時血糖値に基づく新規糖尿病の発症。
副次アウトカム評価項目:臨床診断に基づく新規糖尿病の発症;新規糖尿病発症までの時間;耐糖能の改善;心筋梗塞;うっ血性心疾患;狭心症;血行再建術施行;脳出血;脳梗塞;くも膜下出血;一過性脳虚血発作など。
■「リバロ」カナダで販売
2008/06/05-19:07 興和、11年にカナダで販売へ=高コレステロール血症治療剤を

http://www.jiji.com/jc/zc?k=200806/2008060500826
医薬品製造の興和(名古屋市)は5日、子会社で英現地法人のコーワ・ファーマシューティカル・ヨーロッパと、ベルギーの化学・医薬大手ソルベイグループのカナダ現地法人ソルベイ・フォーマが、高コレステロール血症治療剤「ピタバスタチンカルシウム」(国内製品名「リバロ錠」)のカナダでの販売についてライセンス契約を締結したと発表した。
■合剤の降圧剤が今後目白押しで発売予定。
タケダがアムロジピンのジェネリックを発売予定(?)。その後ブロプレスとの合剤(?)
もし本当だとすれば「CASE-J試験」っていったい何だっただというお話。

「CASE-J」
http://www.takeda.co.jp/press/article_1289.html
CASE-J試験は、日本人のハイリスク高血圧症患者4,728例を対象に、わが国の高血圧症治療薬として最も繁用されているアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)のブロプレスとカルシウム拮抗薬のアムロジピンとを比較した、日本で最初の大規模臨床試験です。
・心血管系イベント発症抑制に対し、ブロプレスはアムロジピンと同程度の抑制効果が認められました(発症率は両群とも5.7%)。<主要評価項目>
・全死亡の発症率は両群間で有意差はありませんでした。しかしながら、肥満度の高い患者層でブロプレスはアムロジピンと比較してそのリスクを49%減少させました(p=0.045)。
<副次評価項目>
・ 糖尿病の新規発症に対し、ブロプレスはアムロジピンと比較して新規発症リスクを36%減少させました(p=0.030)。さらに、肥満度が高くなるほどブロプレス群はアムロジピン群と比較してより顕著に糖尿病の新規発症を抑制しました。


第一三共がオルメテックとカルブロックの合剤(?)
今後ARB+CCBの合剤の流れ?

ガセネタかも知れません。

 

読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。

他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
「井蛙内科/開業医診療録(2)」
http://wellfrog2.exblog.jp/
2008.5.21~ 「井蛙内科/開業医診療録」 
http://wellfrog.exblog.jp/ 
~2008.5.21
があります。

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